説明

オープンショーケース

【課題】陳列室の開口に冷気エアーカーテンを適切に構成し、陳列室内の冷気漏洩を抑制すると共に、冷却性能の向上を図る。
【解決手段】陳列室8の前面開口12に冷気エアーカーテンを構成するオープンショーケース1において、陳列室8の底板10と、該底板と断熱壁3との間に吸込口16に連通するダクト9と、底板10の前側に位置して吸込口16を被覆する吸込口カバー18を備え、吸込口カバー18は断熱壁の開口下縁12Aより上方まで起立し、その上壁18Aには複数の通気孔20Aが形成されていると共に、吸込口カバー18より後方の陳列室8の底面は、底板10により閉塞されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面に開口する断熱壁内に陳列室が構成され、この陳列室の開口上部の吐出口から冷気を吐出し、開口下部の吸込口から吸い込むことにより、当該陳列室の開口に冷気エアーカーテンを構成して成るオープンショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のショーケースは、例えば特許文献1に示されるように、断面略コ字状の断熱壁の内側に間隔を存して仕切板と底板を設け、これらの内側を陳列室と成すと共に外側の断熱壁との間をダクトとしている。一方、断熱壁の開口上下縁にはダクトに連通した吐出口と吸込口をそれぞれ形成すると共に、背面に位置するダクト内には冷却器を、底板下方に位置するダクト内には送風機をそれぞれ設置し、この送風機により冷却器と熱交換した冷気を吐出口より吸込口に向かって吐出し、吸込口から吸い込むことによって開口に冷気のエアーカーテンを形成しつつ、陳列室内を冷却していた。
【0003】
この際、エアーカーテンを形成する冷気をダクト内に吸い込む吸込口には、断熱壁の開口下縁と略同一の高さ若しくはこれよりも低い高さに位置して、複数のスリットが形成された吸込口カバーが形成されている。係る特許文献1の構成では、隔壁にて区画された後側に陳列室の上前方に向けて開口したスリットが形成され、その前側に当該スリットよりも更に陳列室前方に向けて開口したスリットが形成されている。
【0004】
またこれ以外にも、図9に示すショーケース100では、陳列室101と下部のダクト102内とを区画する底板103は、陳列室101内の最下段に架設される棚104と近接する位置に設けられると共に、その前部の一段下がった位置に断熱壁105の開口下縁106と略面一とされ、ダクト102の吸込口を被覆する吸込口カバー107が設けられている。当該吸込口カバー107の上面及び該吸込口カバー107よりも一段上がった位置の底板103前部には、複数の通気孔108、109が穿設されている。
【0005】
しかしながら、係る構成では、断熱壁105の開口上縁に形成された吐出口に対し、通気孔108が形成された吸込口カバー107は、断熱壁105の開口下縁と略面一、若しくはこれよりも低い位置にまで下がった位置に設けられているため、エアーカーテンの上下の距離が大きくなり、エアーカーテンの乱れを招来する。これによって、湿気を多く含み温度の高い外気がエアーカーテンに巻き込まれ易くなり、ショーケースの冷却性能が低下する問題がある。
【0006】
また、吸込口カバー107に形成される通気孔108の面積は、最下段の棚104の前端から断熱壁105の開口下縁106の後端までにおける略水平面に形成されるものに限られる。そのため、エアーカーテンを形成する冷気の吸込流量を十分に確保することができず、冷気漏洩を招く。
【0007】
そこで、図10に示すショーケース110では、底板103の前部を断熱壁105の開口下縁106に向けて低く傾斜した吸込口カバー111を形成し、係る上前方に向けて傾斜した吸込口カバー111に複数の通気孔112と、棚104の前部下方に位置する底板103に通気孔109が穿設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−91807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記図10の構成は、通気孔112が傾斜して設けられる吸込口カバー111に形成されることで、図9の水平に形成された構成と比較して、通気孔面積を拡大することができることとなる。しかしながら、上述した如き特許文献1の構成と同様に、各通気孔112(スリット)は、陳列室の上前方に向けて開口しているため、図10において破線矢印にて示すように、陳列室11の上前方からの空気を吸い込み易くなる。特に、図9、図10に示すように、最下段の棚104の前部下方に位置する底板103にもダクトと連通する通気孔109が形成されているため、該通気孔109から吸い込まれる空気は、棚104の前部と底板103との間に潜り込むかたちで流入し、陳列室11前方からの空気流入を促進する気流を形成してしまう。
【0010】
陳列室の前面が大きく開口したオープンショーケースでは、当該開口の上縁から下縁に渡って冷気のエアーカーテンを整然と形成することで、陳列室内の冷気漏洩を抑制し、冷却性能の向上を実現するものであるが、このように、断熱壁の開口上縁において下方に向けて開口して形成される吐出口に対し、吸込口を被覆する吸込口カバーの各通気孔が陳列室の上前方に向けて形成されていると、陳列室の上前方の外気(暖気)をエアーカーテンに巻き込み外乱を生じさせ、陳列室内の冷気漏洩を招来すると共に、陳列室内への外気侵入が余儀なくされ、結果として冷却性能の悪化を招く問題がある。
【0011】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、陳列室の開口に冷気エアーカーテンを適切に構成し、陳列室内の冷気漏洩を抑制すると共に、冷却性能の向上を図ることができるオープンショーケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のオープンショーケースは、前面に開口する断熱壁内に陳列室が構成され、この陳列室の開口上部の吐出口から冷気を吐出し、開口下部の吸込口から吸い込むことにより、当該陳列室の開口に冷気エアーカーテンを構成して成るものであって、陳列室の底板と、この底板と断熱壁との間に構成され、吸込口に連通するダクトと、底板の前側に位置して吸込口を被覆する吸込口カバーを備え、この吸込口カバーは断熱壁の開口下縁より上方まで起立し、その上壁には複数の通気孔が形成されていると共に、この吸込口カバーより後方の陳列室の底面は、底板により閉塞されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、上記発明において、吸込口カバーと底板は一体に構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、上記各発明において、陳列室内に架設され、両側のスライドレールにより前方に引き出し可能とされた可動棚を備え、吸込口カバーは、両側のスライドレールより内側に位置していることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、上記各発明において、吸込口カバーの上壁は、斜め上前方に指向した後傾斜壁部とこの後傾斜壁部の前側に位置して斜め上後方に指向した前傾斜壁部から成る断面V字状を呈し、通気孔は後傾斜壁部と前傾斜壁部にそれぞれ形成され、V字の中心線に対して対称となる位置に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、上記発明において、吸込口カバーの上壁の底となる後傾斜壁部と前傾斜壁部との接続部は、断熱壁の開口下縁より上方に位置しており、当該上壁上の空間の両側端は、陳列室内に開放していることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、上記各発明において、断熱壁の開口下縁より上方に位置する吸込口カバーの前壁は、広告面とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前面に開口する断熱壁内に陳列室が構成され、この陳列室の開口上部の吐出口から冷気を吐出し、開口下部の吸込口から吸い込むことにより、当該陳列室の開口に冷気エアーカーテンを構成して成るオープンショーケースにおいて、陳列室の底板と、この底板と断熱壁との間に構成され、吸込口に連通するダクトと、底板の前側に位置して吸込口を被覆する吸込口カバーを備え、この吸込口カバーは断熱壁の開口下縁より上方まで起立し、その上壁には複数の通気孔が形成されているので、吸込口カバーの通気孔の位置を断熱壁の開口下縁より高くすることで、吐出口との距離を短くすることができる。
【0019】
これにより、吐出口から吐出された冷気の多くを吸込口カバーに形成された通気孔によりダクト内に吸い込むことができ、エアーカーテンを形成する冷気の吸込流量を十分に確保することが可能となる。そのため、エアーカーテンを整然と形成することが可能となって、外気の巻き込みによる熱エネルギーのロスを低減でき、ショーケース全体の冷却性能の向上を図ることができる。
【0020】
また、上記に加えて、この吸込口カバーより後方の陳列室の底面は、底板により閉塞されているため、陳列室内に架設される棚と底板との間に潜り込むかたちで吸い込まれることで形成される陳列室前方からの空気流入を促進する気流の発生を未然に回避することができる。そのため、陳列室前方からの外気の巻き込みを更に低減でき、より安定した冷気エアーカーテンの形成を実現することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、吸込口カバーと底板は一体に構成されていることにより、部品点数の削減を図ることができ、組立作業性が向上される。
【0022】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、陳列室内に架設され、両側のスライドレールにより前方に引き出し可能とされた可動棚を備え、吸込口カバーは、両側のスライドレールより内側に位置していることにより、可動棚を手前に引き出した際に、断熱壁の開口下縁より上方まで起立した吸込口カバーが当該可動棚の両側のスライドレールと干渉することを未然に回避することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、上記各発明に加えて、吸込口カバーの上壁は、斜め上前方に指向した後傾斜壁部とこの後傾斜壁部の前側に位置して斜め上後方に指向した前傾斜壁部から成る断面V字状を呈し、通気孔は後傾斜壁部と前傾斜壁部にそれぞれ形成され、V字の中心線に対して対称となる位置に配置されているので、後傾斜壁部と前傾斜壁部に形成された通気孔のそれぞれより上方の吐出口から吐出された冷気を吸い込むことができる。
【0024】
この際、後傾斜壁部は、斜め上前方に指向して形成されているため、当該後傾斜壁部の通気孔より陳列室の前上方からの冷気を吸い込むこととなるが、その前方に設けられる前傾斜壁部は、斜め上後方に指向して形成されているため、当該前傾斜壁部の通気孔より後方から吸い込む冷気流が形成され、これによって、陳列室の前上方から吸い込む冷気流を補正することができ、吸込空気の流れを略吐出口の方向からの流れとすることが可能となる。
【0025】
そのため、陳列室前方の外気をエアーカーテンに巻き込んでしまう不都合を著しく減少することができ、安定したエアーカーテンの形成を実現することが可能となり、結果として冷却性能の向上を図ることができる。
【0026】
また、係る吸込口カバーは、このように断面V字状に形成されているため、手前側に位置する前傾斜壁部に形成された通気孔が、ショーケース前方から見えにくい構成とすることができ、冷却性能を確保するために多く形成された通気孔が外観に現れにくくなる。これにより、外観の向上を図ることができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、上記発明に加えて、吸込口カバーの上壁の底となる後傾斜壁部と前傾斜壁部との接続部は、断熱壁の開口下縁より上方に位置しており、当該上壁上の空間の両側端は、陳列室内に開放していることにより、後傾斜壁部と前傾斜壁部との接続部、即ち、V字状の底の部分に溜まったゴミを上壁上の空間の両側端から掃き出し、断熱壁の開口下縁に沿って外部に掃き出すことができる。これにより、吸込口カバーの清掃性を向上させることができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、上記各発明に加えて、断熱壁の開口下縁より上方に位置する吸込口カバーの前壁は、広告面とされていることにより、商品が陳列される棚により近い位置において商品の説明や広告等を表示でき、効果的なディスプレイを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用したショーケースの斜視図である。
【図2】ショーケースの正面図である。
【図3】ショーケースの縦断側面図である。
【図4】ショーケースの下部拡大縦断側面図である。
【図5】吸込口カバー部分の拡大斜視図である。
【図6】吸込口カバー部分の拡大斜視図である。
【図7】吸込口カバー及び底板の斜視図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】従来のオープンショーケースの下部拡大断面図である。
【図10】従来のオープンショーケースの下部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明を適用したオープンショーケース1の斜視図、図2はオープンショーケース1の正面図、図3はオープンショーケース1の縦断側面図、図4はオープンショーケース1下部拡大縦断側面図、図5は吸込口カバー部分の拡大斜視図、図6は吸込口カバー部分の拡大斜視図、図7は吸込口カバー及び底板の斜視図、図8は図7の平面図をそれぞれ示している。
【0031】
本発明のオープンショーケース1は前面に開口する断面略コ字状の断熱壁3と、その両側に取り付けられた側板4によって本体2が構成されており、この断熱壁3の内側には間隔を存して背面に背面パネル6が配設され、この背面パネル6と断熱壁3間にダクト9が形成されている。また、背面パネル6の下端には、前方に延在する底板10、背面パネル6の上端には、断熱壁3の天井部3Aと所定間隔を存して天井パネル7が設けられており、これら背面パネル6、底板10及び天井パネル7の内側に前面に開口する陳列室8が構成されている。そして、底板10の下方には断熱壁3の底壁3Bと所定間隔を存して、ダクト9に連通する下部ダクト11が構成されている。
【0032】
この陳列室8内には、上下に商品陳列用の複数段の可動棚25・・・が架設されている。各可動棚25は、左右に形成されると共に、貯蔵室8の背面に設けられた棚支柱に着脱自在に係止される図示しない一対のブラケットと、棚板26などから構成され、当該棚板26は両側に設けられたスライドレール27、27によりブラケットに対し、前方に引き出し可能(前後移動自在)とされている。
【0033】
また、断熱壁3の下側には機械室28が構成されており、この機械室28内には後述する冷却器15と共に冷却装置の冷凍サイクルを構成する図示しない圧縮機、凝縮器や凝縮器用送風機などが配設されている。この機械室28の前面は、前面パネル29にて開閉自在に閉塞されている。
【0034】
一方、上記断熱壁3の前面開口12の上縁には、下向きに開口し、整流部材としての図示しないハニカム材が取り付けられた吐出口13が設けられている。この吐出口13は、陳列室8の開口上部に位置し、ダクト9に連通している。ダクト9と連通して構成される下部ダクト14の前端には、陳列室8の開口下部に位置して上面に開口する吸込口16が設けられる。
【0035】
底板10の下方の下部ダクト14内には、陳列室8内に冷気を供給するための冷却用送風機17が配設され、陳列室8のダクト9内には冷却装置の冷凍サイクルを構成する冷却器15が縦設されている。
【0036】
ここで、底板10及び吸込口16を被覆する吸込口カバー18について詳細に説明する。本実施例において、断熱壁3の底壁3Bとの間に所定間隔を存して下部ダクト14を構成する底板10は、断熱壁3の左右側端に渡って構成され、後述する吸込口カバー18より後方の陳列室8の底面を閉塞する。
【0037】
この底板10は、図2においてXにて示すように、断熱壁3の開口下縁12Aより所定寸法、高く配設され、その両端は、断熱壁3の開口下縁12Aと略同一の高さ寸法となるように一段低く折曲形成された段差部10Aとされる。本実施例では、当該段差部10Aは、陳列室8内の最下段に架設される可動棚25の各スライドレール27、27を回避すべく、断熱壁3の側端から所定寸法(図2にてYにて示す。)確保される。
【0038】
また、この底板10の後端は、図7に示すように、所定寸法上方に向けて折曲された後板10Bとされ、この後板10Bが、上記背面パネル6の前面に当接して配設されることで、下部ダクト14内とダクト9内とが連通して構成される。
【0039】
そして、本実施例では、この底板10の前側に位置して上記吸込口16を被覆する吸込口カバー18が設けられる。ここでは、当該吸込口カバー18は、底板10の両段差部10A、10Aを除く両端部に渡って、前端に一体に構成されている。
【0040】
即ち、この吸込口カバー18は、底板10と同様に、断熱壁3の開口下縁12Aより所定寸法、上方まで起立して構成され、その上壁18Aは、斜め上前方に指向した後傾斜壁部19と、この後傾斜壁部19の前側に位置して斜め上後方に指向した前傾斜壁部20から成る断面V字状とされる。
【0041】
これら後傾斜壁部19と、前傾斜壁部20のそれぞれには、当該断面V字の中心線(図8中、破線Tにて示す)に対して対象となる位置に、複数の通気孔19A・・、20A・・がそれぞれ形成されている。本実施例では、いずれの通気孔19A、20Aもそれぞれの傾斜壁部の傾斜方向に延在する長孔にて構成されている。そのため、限られた前後幅寸法において、各孔面積を拡大することができる。
【0042】
そして、吸込口カバー18の上壁18Aの底となるこれら後傾斜壁部19と、前傾斜壁部20との接続部18Bは、該吸込口カバー18と一体に構成される底板10の段差部10Aより上方に位置して、当該上壁18A上の空間の両側端が、各段差部10A上に向けて開放して形成されている。即ち、後傾斜壁部19と前傾斜壁部20の接続部18Aは、断熱壁3の開口下縁12Aより上方に位置して、その両側端は、陳列室8内に開放して構成される。本実施例では、図2にて示すように、後傾斜壁部19と前傾斜壁部20との接続部18Bは、所定寸法Zだけ、断熱壁の開口下縁12Aよりも高くなるように設定される。
【0043】
また、当該吸込口カバー18の前壁18Cは、断熱壁3の開口下縁12Aより所定寸法、上方にまで起立して構成されるが、当該前面は、陳列室8下部において該陳列室8内に陳列される商品等の広告面(POP)とされる。
【0044】
尚、当該吸込口カバー18は、図4に示すように断熱壁3の開口下縁12Aよりも陳列室8側に位置しているため、当該吸込口カバー18の前壁18C等に、万一結露等が生じた場合であっても、当該前壁18Cの前面や、後傾斜壁部19、前傾斜壁部20に沿って陳列室8側に落下し、ショーケース1外部を濡らすことなく適切に処理することが可能となる。
【0045】
以上の構成により、下部ダクト14内に配設された冷却用送風機17が運転されると、ダクト9内に配設された冷却器15にて冷却された冷気がダクト9内を上昇し、陳列室8の開口上部の吐出口13から開口下部に向けて吐出される。そして、開口12の下部に形成された吸込口16より当該吐出された冷気が吸い込まれることによって、陳列室8の開口12に冷気エアーカーテンが形成される。
【0046】
このとき、本実施例では、吸込口16を被覆する吸込口カバー18は、断熱壁3の開口下縁12Aより上方まで起立し、その上壁18Aに複数の通気孔19A、20Aが形成されているので、エアーカーテンを形成する冷気を吸い込む通気孔位置を断熱壁3の開口下縁12Aよりも高くすることができ、これによって、吐出口13との距離を短くすることができる。
【0047】
そのため、吐出口13から開口下部に向けて吐出された冷気の多くを吸込口カバー18に形成された通気孔19A、20Aにより下部ダクト14内に吸い込むことができ、エアーカーテンを形成する冷気の吸込流量を十分に確保することが可能となる。従って、エアーカーテンを整然と形成することが可能となって、外気の巻き込みによる熱エネルギーのロスを低減でき、ショーケース1全体の冷却性能の向上を図ることができる。
【0048】
特に、本実施例では、この吸込口カバー18より後方の陳列室8の底面は、底板10により閉塞されているため、従来のように、陳列室8内の最下段に架設される棚25と底板10との間に潜り込むかたちで吸い込まれることで形成される陳列室8前方からの空気流入を促進する気流の発生を未然に回避することができる。
【0049】
従って、陳列室8前方からの外気の巻き込みをより一層効果的に低減でき、より安定した冷気エアーカーテンの形成を実現することができる。
【0050】
また、上述したように、吸込口カバー18の上壁18Aは、斜め上前方に指向した後傾斜壁部19とこの後傾斜壁部19の前側に位置して斜め上後方に指向した前傾斜壁部20から成る断面V字状を呈しているため、後傾斜壁部19と前傾斜壁部20のそれぞれに形成された通気孔19A、20Aより、上方の吐出口13から吐出された冷気を吸い込むことができる。
【0051】
この際、後傾斜壁部19は、斜め上前方に指向して形成されているため、当該後傾斜壁部19の通気孔19Aより陳列室8の前上方からの冷気を吸い込むこととなるが、その前方に設けられる前傾斜壁部20は、斜め上後方に指向して形成されているため、当該前傾斜壁部20の通気孔20Aより後方から吸い込む冷気流が形成され、これによって、陳列室8の前上方から吸い込む冷気流を補正することができ、吸込空気の流れを略吐出口13の方向からの流れとすることが可能となる(図4の破線参照)。
【0052】
そのため、陳列室8前方の外気をエアーカーテンに巻き込んでしまう不都合を著しく減少することができ、安定したエアーカーテンの形成を実現することが可能となり、結果として冷却性能の向上を図ることができる。
【0053】
また、係る吸込口カバー18は、このように左右に延在する断面V字状に形成されているため、手前側に位置する前傾斜壁部20に形成された通気孔20Aが、ショーケース1前方から見えにくい構成とすることができ、冷却性能を確保するために多く形成された通気孔20Aが外観に現れにくくなる。これにより、外観の向上を図ることができる。
【0054】
更に、吸込口カバー18は、前面開口12の下部に位置して断面V字状を呈しているため、係る上壁18Aの底となる後傾斜壁部19と前傾斜壁部20との接続部18Bにゴミ等が溜まりやすくなるが、当該上壁18A上の空間の両端部は、底板10の段差部10Aに向けて(陳列室8内に)開放されているため、当該ゴミを上壁18A上の空間の両側端から掃き出し、段差部10A上にて受け、当該段差部10Aの前端より断熱壁3の開口下縁12Aに沿って外部に掃き出すことができる。これにより、格別に吸込口カバー18等を本体から取り外すことなく、安全に清掃することができる。
【0055】
また、本実施例では、上述したように、底板10は、断熱壁3の開口下縁12Aより所定寸法、高く配設され、その両端が断熱壁3の開口下縁12Aと略同一の高さ寸法となるように一段低く折曲形成された段差部10Aとされていると共に、吸込口カバー18は、底板10の両段差部10A、10Aを除く両端部に渡って、前端に一体に構成されている。
【0056】
そのため、吸込口カバー18は、陳列室8内に架設される可動棚25の両側のスライドレール27よりも内側に位置して構成されると共に、当該吸込口カバー18の後方に延在する底板10もその両側がスライドレール27を回避した段差部10Aとされていることにより、最下段の可動棚25を手前に引き出した際に、断熱壁3の開口下縁12Aより上方まで起立した吸込口カバー18が当該可動棚25の両側のスライドレール27、27と干渉することを未然に回避することができる。これにより、支障なく可動棚25の手前への引き出しを行うことができる。
【0057】
尚、本実施例では、上述した如き吸込口カバー18は底板10は一体に構成されているため、部品点数の削減を図ることができ、組立作業性が向上される。
【0058】
そして、吸込口カバー18の前壁18Cは、断熱壁3の開口下縁12Aより上方に起立しているが、上述したように広告面として使用することによって、商品が陳列される棚25により近い位置において商品の説明や当該商品のメーカーの広告等を表示でき、効果的なディスプレイを実現できる。
【符号の説明】
【0059】
1 オープンショーケース
2 本体
3 断熱壁
6 背面パネル
8 陳列室
9 ダクト
10 底板
10A 段差部
11 下部ダクト
12 前面開口
12A 下縁
13 吐出口
14 下部ダクト(ダクト)
15 冷却器
16 吸込口
17 冷却用送風機
18 吸込口カバー
18A 上壁
18B 接続部
18C 前壁
19 後傾斜壁部
19A、20A 通気孔
20 前傾斜壁部
25 可動棚
27 スライドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口する断熱壁内に陳列室が構成され、該陳列室の開口上部の吐出口から冷気を吐出し、開口下部の吸込口から吸い込むことにより、当該陳列室の開口に冷気エアーカーテンを構成して成るオープンショーケースにおいて、
前記陳列室の底板と、
該底板と前記断熱壁との間に構成され、前記吸込口に連通するダクトと、
前記底板の前側に位置して前記吸込口を被覆する吸込口カバーを備え、
該吸込口カバーは前記断熱壁の開口下縁より上方まで起立し、その上壁には複数の通気孔が形成されていると共に、該吸込口カバーより後方の前記陳列室の底面は、前記底板により閉塞されていることを特徴とするオープンショーケース。
【請求項2】
前記吸込口カバーと前記底板は一体に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオープンショーケース。
【請求項3】
前記陳列室内に架設され、両側のスライドレールにより前方に引き出し可能とされた可動棚を備え、
前記吸込口カバーは、前記両側のスライドレールより内側に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオープンショーケース。
【請求項4】
前記吸込口カバーの上壁は、斜め上前方に指向した後傾斜壁部と該後傾斜壁部の前側に位置して斜め上後方に指向した前傾斜壁部から成る断面V字状を呈し、前記通気孔は前記後傾斜壁部と前傾斜壁部にそれぞれ形成され、前記V字の中心線に対して対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のオープンショーケース。
【請求項5】
前記吸込口カバーの上壁の底となる前記後傾斜壁部と前傾斜壁部との接続部は、前記断熱壁の開口下縁より上方に位置しており、当該上壁上の空間の両側端は、前記陳列室内に開放していることを特徴とする請求項4に記載のオープンショーケース。
【請求項6】
前記断熱壁の開口下縁より上方に位置する前記吸込口カバーの前壁は、広告面とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載のオープンショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−135430(P2012−135430A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289579(P2010−289579)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】