説明

カイ・ミラー

【課題】漕ぎ手に邪魔にならず、良い後方視野を与えるバック・ミラーを提供する。
【解決手段】バック・ミラーを櫂に備えることにより、後方視野を確保するとともに、艇に余計なでっぱりをつけずに済みます。バック・ミラーには曲面ミラー1を採用することにより、良好な後方視野を得ることができます。バック・ミラーをクリップ3により着脱式にすることにより、任意の櫂に必要な時に必要な数だけ取り付けられ、同時にバック・ミラーによる事故等を減らせます。さらにバック・ミラーに浮力をつけることにより、落とした時、水面や海面に浮くので回収が容易になります。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手漕ぎ艇のバック・ミラーに関します。
【背景技術】
【0002】
手漕ぎ艇であるカヌー、カヤック、シーカヤック、サーフスキーなどでは、前を向いて櫂(パドル)で漕ぎます。したがって、前方の何かにぶつかるということを避けることは可能です。ところが、大変艇幅が狭いため、後ろを振り向こうとするとバランスを崩しやすくなり、後ろから来る他の船などを見ることは容易にはできません。
【0003】
バック・ミラーを漕ぎ手前方の艇上に配置して後ろを見ようとしても、自分の体が邪魔をして見ることができず図2に示すように艇▲4▼からバック・ミラー▲6▼が飛び出す形になり、危険なものになりかねません。また、漕艇の邪魔になる為、より前方へ設置する必要があり、バック・ミラーが漕ぎ手から離れがちとなり、大変見にくくなります。
【0004】
以上のような理由から、通常の手漕ぎ艇はバック・ミラーを備えることなく、後ろから来る船に対して無防備極まりない状態になっています。また、手漕ぎ艇同士で船団を組むにあたり、後ろからついてくるはずの他の艇の確認が困難であり、離れ離れになる危険性があります。
【0005】
これらのことは、前後の違いはあるものの、櫂(オール)で漕ぐエイトなどのローイング・ボートにおいても同様のことが言えます。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
漕ぎ手が自分の後ろを見るにあたり、バック・ミラーを使うことは大変自然であり、安全であると考えられます。そのためにはバック・ミラーが漕ぎ手に危険なでっぱりとならず、また、良い後方視野を漕ぎ手に与えることが必要となります。
【0007】
そこで、この発明は、漕ぎ手に邪魔にならず、良い後方視野を与えるバック・ミラーを提供することです。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の手漕ぎ艇の為のバック・ミラーの課題を解決するための
第一発明は、櫂に備えるバック・ミラーです。
また、第二発明は、曲面ミラーを用いた第一発明のバック・ミラーです。
また、第三発明は、容易に着脱が可能な第一発明のバック・ミラーです。
また、第四発明は、水に浮く第一発明のバック・ミラーです。
また、第五発明は、曲面ミラーを用いた着脱可能で水に浮く第一発明の櫂に備えるバック・ミラーです。
【発明の効果】
【0009】
第一発明によれば、漕ぎ手は漕いでいる動作の中で、バック・ミラーにより自分の後方の任意の方向を目視確認できます。目とバック・ミラーの距離が、艇に設置するよりも櫂に設置したほうが短くなり、より広い後方視野とより良い視認性が得られます。また、櫂を任意の角度にすることにより、角度に応じた方向の後方視野を得ることもできます。また、艇に余計なでっぱりをつけることなく済みます。
【0010】
第二発明によれば 平面のバック・ミラーでは、後方視野が限られるため、カーブ・ミラーのような曲面ミラーを使用することにより、より広い後方視野が得られます。
【0011】
第三発明によれば、バック・ミラーを任意の櫂に必要な時に、必要な場所に、必要な数だけ、取り付けることが可能となります。また、万が一バック・ミラーが何かに引っかかったときでも、外すことができますし、また、外れることも期待できますので、バック・ミラーによる事故を減らすことが可能となります。
【0012】
第四発明によれば、バック・ミラーは、水に落とした時、浮力がつけられていなかったり、考慮されていなかったりすると、沈んでしまうため、水に浮くバック・ミラーとすることにより、落としたりした時、回収が容易になります。
【0013】
第五発明によれば、バック・ミラーを任意の櫂に必要な時に、必要な場所に、必要な数だけ、取り付けることが可能となり後方視野を確保できます。目とバック・ミラーの距離が、艇に設置するよりも櫂に設置したほうが短くなり、より広い後方視野とより良い視認性が得られます。
【0014】
また、取り外しが可能となることから、何らかに引っかかった時に外れてくれるため、より安全性の高いものとなります。外れたり、落としたりした時などに紛失しないように、水に浮くようにして回収を容易にしてあります。
【0015】
ただ櫂に取り付けられているので、その動きの中で後方を見ざるを得ず、平面ミラーでは後方視野が限定されます。そこで、曲面ミラーを採用することにより、より広い後方視野を得ることが可能となります。
【0016】
このように櫂にバック・ミラーを取り付けることにより、手漕ぎ艇にバック・ミラーを取り付けることなく済むために、艇に余計なでっぱりをつけることなく済み、より安全に後方視野を確保することが可能となります。
【0017】
したがって、カヌーやカヤック、シーカヤック、サーフスキーなど、前を向いて櫂(パドルなど)で漕ぐ艇のみならず、エイトやシングル・スカルなど後ろを向いて櫂(オールなど)で漕ぐ艇でも安全に自分の後方を確認することが可能となります。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の一実施形態として図1にカイ・ミラーを示します。カイ・ミラー自体は漕ぐ動作には不要な存在であるため、軽量で小さいほうが望まれます。したがって、およその大きさは3cm四方程度から15cm四方程度が考えられ、形状は円形、楕円形もしくは角を落とした長方形などの多角形等、引っかかりにくく、怪我や事故の起きにくい形状が望まれます。
【0019】
カイ・ミラーのミラー▲1▼は曲面ミラーを使用してあり、より広い視野が得られます。
【0020】
櫂(パドル)への取り付けは挟み込みにより取り付ければ、容易に取り外しが可能となりますが、漕ぐときの動きにより、カイ・ミラーがずれるほど弱いものではいけません。図1で示したカイ・ミラーではプラスチック・クリップ▲3▼を採用してあり、2−3mm厚、内径を櫂の柄の径より2−3mm程度小さくすることにより、取り付け、取り外し、および適度な固定を可能としています。
【0021】
本例のカイ・ミラーには浮力体をつけていません。カイ・ミラーの断面図(図3)に示すように曲面ミラー▲1▼の裏側空間▲8▼を空気室として、浮力を確保しています。
【0022】
何らかの理由で浮力を別途確保したい場合は、図4、5に示すように浮力体として発泡体▲10▼などを接着剤などでカイ・ミラー裏面に取り付けることもできます。このようにすることにより、このカイ・ミラーは沈まず、落としても水面に浮き、回収が容易です。
【実施例】
【0023】
図6に示す実施例では、櫂の一種であるパドルのロッド▲12▼にカイ・ミラー▲11▼を装着した様子を示し、図7に示すようにカイ・ミラー▲11▼をパドルのロッド▲12▼の中央部に設置した様子を示します。端部であれば、カイ・ミラーまでの距離が遠くなりますが、より真後ろの後方視野が得られます。図8に示すように両端部に設置するとより広い視野が得られます。
【0024】
しかし、カイ・ミラーの動きが大きく速いことから、動きに合わせて視線を移動しなければなりません。これらを避けるためにはパドル中央部に設置することが望まれます。この場合、カイ・ミラーまでの距離が小さく、広い後方視野を得られます。
【0025】
ただし、この場合肩越しに後方を確認することになりますが、図9に示すように本人の顔が大きく写りこむことがあります。
「他の実施形態」
【0026】
櫂の柄(シャフトやロッド)にカイ・ミラーを固定した場合を図10に示します。また、図11に櫂の水かき(ブレード)にカイ・ミラーを固定した場合を示します。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】カイ・ミラー
【図2】艇に取り付けられた場合のバック・ミラー
【図3】曲面ミラーの内部容積を空気室に利用した水に浮くカイ・ミラーの断面
【図4】フロート付きカイ・ミラーの組み立て図
【図5】フロート付きカイ・ミラー
【図6】パドルのロッドに装着したカイ・ミラーの様子
【図7】パドルのロッド中央に装着されたカイ・ミラー
【図8】パドルのロッド両端部に装着されたカイ・ミラー
【図9】漕ぎ手がカイ・ミラーに映り込む例
【図10】櫂(パドル)のロッドに固定されたカイ・ミラー
【図11】櫂(パドル)のブレードに固定されたカイ・ミラー
【符号の説明】
【0028】
1 曲面ミラー
2 基部
3 クリップ
4 艇
5 漕ぎ手
6 艇に固定されたバック・ミラー
7 後方視野
8 空気室
9 ねじ
10 発泡体
11 カイ・ミラー
12 パドル・ロッド
13 パドル・ブレード
14 ダブル・ブレード・パドル
15 漕ぎ手の右手
16 漕ぎ手の左手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手漕ぎ艇の櫂に備えるバック・ミラー
【請求項2】
曲面ミラーを使用した請求項1のバック・ミラー
【請求項3】
着脱できる請求項1のバック・ミラー
【請求項4】
水に浮く請求項1のバック・ミラー
【請求項5】
曲面ミラーを使用した着脱可能で水に浮く請求項1のバック・ミラー

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−219073(P2011−219073A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105820(P2010−105820)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(508139859)