説明

カカオ原料の処理方法

【課題】カカオマス、カカオパウダー等を主成分とするカカオ原料が持つ収斂味を簡便な方法で除去すること。
【解決手段】カカオマス及び/又はカカオパウダーを主成分とするカカオ原料と、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキンの溶液とを、ガレート型カテキンの固形分重量が前記カカオ原料中のタンパク質重量の0.00005〜0.003倍になるように混合する工程、得られる混合物中で反応物を生成させる工程、及び生成された反応物を除去する工程によって、安価なカカオ原料が持つ臭みを容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価なカカオマス、カカオパウダー等を主成分とするカカオ原料に含まれるカカオ成分の収斂味を容易に除去できるカカオ原料の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カカオ豆は、その独特な風味を活かしてチョコレートやココア等の原料として使用されている。カカオ豆の風味は、産地での発酵や乾燥及びその後の原料加工工程における焙煎等によって形成される。これらの工程で形成される風味や味質などの品質は、カカオ豆の品種、産地、生産者等によって異なることが知られている。一般的に低品位豆に分類されるカカオ豆を使用して製造したチョコレートやココアは、食した場合に本来の好ましい味質とは異なる不快な収斂味、渋味やエグ味(以下、単に収斂味という)が感じられることが多く、製品としての品質が低いものにとどまってしまうのが通常である。そのため、収斂味をマスキングすることが最低条件であり、そのための方法はこれまでに数多く提案されている。
【0003】
単純にチョコレートの風味を向上させる手段としては、例えば、磨砕工程後であって、砂糖等を混ぜ合わせる混合工程前のカカオマスにバニリンを添加し均一に混合したカカオマスに砂糖、ココアバター、レシチン等を混合したチョコレートが提案されているが(特許文献1)、この程度の処理では低品位豆の収斂味の除去は不可能である。
【0004】
その他、カカオ原料に対して何らかの処理工程を加え収斂味を低減する技術として、カカオ豆又はカカオニブに約40重量%以上の濃度のエタノール液を添加し、これを密封容器中に封入し、加熱後開放し、ついで焙焼あるいは乾燥させてなるカカオ豆又はカカオニブを磨砕してカカオマスとし、これをコンチェにて処理し含有されているエタノール分をほぼ完全に揮散させて製造したチョコレート(特許文献2)、焙炒カカオマスに酸素ガスを吹き込んで酸素ガス泡を均一に分散させ、しかる後一定時間保持することにより得たカカオマスを使用して製造したチョコレート(特許文献3)、その他、カカオ豆焙炒時にカカオ豆のpHを調整し、或いは、カカオ豆に還元糖等を添加してメイラード反応を促進させ、フレーバーに改良を施す方法(特許文献4)、アンモニアガスをカカオ豆に吸着させて焙炒する方法(特許文献5)等がある。しかしながら、これらの方法は低品位豆由来の収斂味を十分除去できるほどの効果はなく、また製造工程の煩雑さ、及び製造コストが高くなるなどのデメリットが非常に大きい。
【0005】
前記課題の解決を試みた提案として、カカオマス及びその加工品の味質を改良するにあたり、水分量が0.1〜3.0%の条件下でカカオマスまたはカカオマス含有物にポリフェノールオキシダーゼを作用させることによって、不快な収斂味を低減させたチョコレートがある(特許文献6)。しかしながら、前記特許文献6の実施例ではチョコレートを作製する際にいずれも粉乳を添加しているため、その影響により収斂味がかなり軽減されている。そのため、比較例1〜4の収斂味の評価についても不快感がない結果となっており、根本的な解決には至っていない。また、ポリフェノールオキシダーゼなどの特定の酵素による処理法では使用できるカカオ豆が限定されるため汎用性に乏しい。
【0006】
他にもポリフェノール由来の収斂味を軽減させる提案としては、ポリフェノールをポリフェノールのナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはカリウム塩にする方法(特許文献7)、大豆ホエー中の分子量800〜2000の非蛋白質成分を含有させる方法(特許文献8)、その他にスクラロース、ステビア、アスパルテーム等の高甘味度甘味剤を添加したり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを添加したりする方法(特許文献9、10)等がある。これらの方法は、飲料等の水分を多く含有する食品での効果は確認されているが、チョコレートのような水分をほとんど含有しない食品についての効果は確認できていない。
【0007】
また、アミノ酸やペプチド等のフレーバー前駆物質組成を得ることを目的として、カカオ豆にプロテアーゼを添加した方法があるが(特許文献11)、この方法では、風味が向上するアミノ酸は確かに得られるが、酵素処理を行うため、逆に風味に悪影響を与えるアミノ酸までも産生されてしまう。また、製造方法も非常に煩雑であるというデメリットがある。
【0008】
このように、現状のところ、カカオ原料の収斂味を除去するアプローチは、より風味の強い物質を添加する方法、及びカカオ原料に対して何らかの処理を施す方法に分類される。前者の場合、安価なカカオ原料が持つ不快な収斂味を除去していないため必然的に臭みを感じる。一方、後者の場合は処理が煩雑であったり、高価な製造設備が必要であったりと非常にデメリットが大きく、容易に収斂味を除去できる方法は未だ提案されていない。
【0009】
また、ガレート型カテキンは、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)のような分子内にガロイル基を有するものであり、生理活性が非常に高いことで知られていることから、機能性の向上を目的として食品に添加されることは多く行われているが、カカオ原料の収斂味の除去を目的としてはこれまでに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2670325号公報
【特許文献2】特開平02−215347号公報
【特許文献3】特開平03−015344号公報
【特許文献4】特公昭53−031943号公報
【特許文献5】特公昭62−025013号公報
【特許文献6】特許第4505150号公報
【特許文献7】特開2003−128664号公報
【特許文献8】特開2004−073196号公報
【特許文献9】特開平10−248501号公報
【特許文献10】特開2008−061593号公報
【特許文献11】特開平09−000156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、カカオマス、カカオパウダー等を主成分とするカカオ原料が持つ収斂味を簡便な方法で除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに可食性溶媒に溶解したガレート型カテキン溶液をカカオ原料に混合することによって、非常に簡便にカカオ原料が持つ収斂味を除去できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
カカオマス及び/又はカカオパウダーを主成分とするカカオ原料と、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキンの溶液とを、ガレート型カテキンの固形分重量が前記カカオ原料中のタンパク質重量の0.00005〜0.003倍になるように混合する工程、
得られる混合物中で反応物を生成させる工程、及び
生成された反応物を除去する工程
を有することを特徴とするカカオ原料の処理方法に関する。
【0014】
また、本発明は、前記可食性溶媒がエタノール又はエタノール水溶液である前記カカオ原料の処理方法に関する。
【0015】
また、本発明は、前記カカオ原料が、未発酵カカオ豆由来のカカオ原料を主原料とする前記カカオ原料の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、チョコレートの臭みの原因となるカカオ原料が持つ収斂味を、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキン溶液を添加するというこれまでにない非常に簡便な方法で除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のカカオ原料の処理方法は、
カカオマス及び/又はカカオパウダーを主成分とするカカオ原料と、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキンの溶液とを、ガレート型カテキンの固形分重量が前記カカオ原料中のタンパク質重量の0.00005〜0.003倍になるように混合する工程、
得られる混合物中で反応物を生成させる工程、及び
生成された反応物を除去する工程
を有することが特徴である。
【0018】
本発明に使用する「カカオマス及び/又はカカオパウダーを主成分とするカカオ原料」とは、カカオマス及びカカオパウダーから選択される1種以上を主として構成されるカカオ原料単体、またはカカオ原料の混合物を指す。また、前記カカオ原料は必要により砂糖、ブドウ糖、乳糖等の糖質や粉乳等の粉末原料を混合してもよいが、40〜60℃条件下で流動性のある液状となることが好ましい態様である。40〜60℃の条件下で液状となっても流動性が低い場合、所望の油脂を添加し、流動性を増加させるのが好ましい。
前記カカオ原料における無脂カカオ成分、即ち油脂分を除いたカカオ成分の含有量は特に限定されないが、目的とするチョコレートの種類に合わせて調整するのが好ましい。なお、後述の可食性溶媒が残存しても問題ないのであれば、カカオ原料として、チョコレートを用いてもよい。
【0019】
前記カカオ原料の流動性増加を目的として添加する油脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ココアバター及びココアバター代替脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、サンフラワー油などの各種植物性油脂、牛脂、豚脂、魚脂、乳脂などの各種動物性油脂などの中の1種以上から選択される。
【0020】
本発明では、前記カカオ原料と、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキンの溶液とを混合する。
ガレート型カテキンとは、分子内にガロイル基を有するカテキンであるが、本発明におけるガレート型カテキンとは、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)を指し、これらは精製品の他、粗製品でも良く、これらを含有する天然物若しくはその加工品でも良い。また、ECgとEGCgとの比率は特に限定はなく、ECg又はEGCg単独であってもよい。
使用する前記ガレート型カテキンの固形分重量が、カカオ原料中に含有されるタンパク質重量の0.00005〜0.003倍である。前記ガレート型カテキンの固形分重量が0.00005倍未満の場合、処理後のカカオ原料での収斂味の除去が不十分であり、一方、0.003倍を越えると、ガレート型カテキン自体が持つ苦味等の影響が生じる可能性が大きい。前記ガレート型カテキンの固形分重量は、カカオ原料中に含有されるタンパク質重量の0.0005〜0.001倍であることが好ましい。
なお、カカオ原料中に含有されるタンパク質は、食品中のタンパク質定量に一般的に用いられるケルダール法等の分析方法を用いて定量すればよい。
【0021】
本発明では、前記ガレート型カテキンは、前記カカオ原料と混合する前に、可食性溶媒に溶解することに特徴がある。前記ガレート型カテキンを粉末のような固体状で用いると、カカオ原料が持つ収斂味を除去できない。
前記可食性溶媒としては、水やエタノール等、ガレート型カテキンが溶解される食品に添加可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0022】
中でも、前記可食性溶媒は、エタノール若しくはエタノール水溶液であることが好ましい態様である。エタノールはガレート型カテキンの溶解性が高く、且つ揮発温度が比較的低いため、本発明の方法により処理したカカオ原料を、チョコレートのコンチング工程や焼き菓子の焼成工程等の熱を要する工程で揮発され、最終製品中に成分として残らない可能性が非常に高い。また、エタノール水溶液を用いる場合のエタノール濃度は50容量%以上であることが好ましく、75容量%以上が特に好ましい。なお、エタノール水溶液を可食性溶媒として使用する場合、カカオ原料に添加した際の水分量が1重量%以下であることが好ましい。
【0023】
前記可食性溶媒中のガレート型カテキンの溶解濃度は、混合時にカカオ原料に影響を与えない範囲ならば特に限定されないが、0.1重量%以上であることが好ましい。
また、前記可食性溶媒は複数の溶媒を組み合わせても良いし、溶質としてもガレート型カテキンの他に可食性溶媒に溶解可能な物質(例えば、糖質)を混合しても特に問題ない。
【0024】
本発明のカカオ原料の処理方法では、前記カカオ原料と、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキンの溶液を混合することによって、得られる混合物中で反応物を生成させる点にも一つの特徴がある。この反応物は、溶液状の混合物の液面付近に上澄みとして析出しているものであり、成分については不明であるが、後述のように除去することで収斂味が顕著に低減する。
前記反応物の生成条件としては、特に限定はないが、ガレート型カテキンの溶液を均一に攪拌するために、カカオ原料が液状となる温度条件、即ち40〜60℃の範囲に前記混合物の温度を調整することがより好ましい。また、カカオ原料中にガレート型カテキンの溶液が均一に分散するように攪拌すればよく、混合時間も特に限定はない。
【0025】
次いで、本発明のカカオ原料の処理方法は、生成された前記反応物を除去する点にも一つの特徴がある。前記反応物を除去しない場合、カカオ原料の収斂味こそ感じにくいものの、ガレート型カテキンが持つ風味を感じやすくなる。
前記反応物は溶液状のカカオ原料の液面付近に析出されるため、カカオ原料を固化させた後に、刃物や金属ベラなどを用いて手でまたは機械で削って取り除いたり、カカオ原料が液状の状態のときにスプーンや茶漉しなどを用いてすくい取ったり、さらには装置で除去できれば方法は特に限定されない。
【0026】
チョコレートの主原料のもとであるカカオ豆は、通常、産地での発酵や乾燥及びそのあとの原料加工工程において焙焼等を行う。このように発酵されているカカオ原料の場合、フレーバー物質の含有量が多いため、比較的効果を感じにくい。一方、未発酵のカカオ原料の場合、フレーバー物質の含有量が少ないため、収斂味を非常に強く感じる。
本発明のカカオ原料の処理方法では、前記発酵されているカカオ原料はもちろんであるが、特に、未発酵カカオ豆由来のカカオ原料を主原料とするカカオ原料を用いる際に収斂味の低減効果をより顕著に実感することができる。
具体的には、本発明のカカオ原料の処理方法により得られたカカオ原料を使用してチョコレートを製造した際にその効果は著しく奏される。
本発明のカカオ原料の処理方法の効果をより顕著に感じるのは、チョコレート作製時における未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分の含有量が15〜30重量%の範囲である。
【0027】
また、本発明のカカオ原料の処理方法は、アミノ酸等のフレーバー物質添加、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素処理など他の処理方法と併用することも可能である。複数の処理方法を行う場合、その順番は特に限定されないが、水を要する酵素処理を行う際は最後に行うのが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の数字は重量部、「%」は重量%を意味する。
【0029】
(カカオ原料1〜3の作製)
先ず表1の配合に従い原料を混合し、カカオ原料1〜3を作製した。なお、表1中のタンパク質の含有量は、カカオ原料中に含有されるタンパク質の重量%を示し、その値はケルダール法を用いて測定した。また、カカオ原料はいずれも安価な東南アジア産の原料を使用した。
【0030】
【表1】

【0031】
(ガレート型カテキン溶液1〜4の作製)
次に表2の配合に従いガレート型カテキンの溶液1〜3とガレート型カテキンを含まない溶液4を作製した。なお、ガレート型カテキンには太陽化学(株)の「サンフェノンEGCg」を用いた。
【0032】
【表2】

【0033】
(実施例1〜7)
先に作製したカカオ原料1〜3、及び溶液1〜4を表3の配合で混合し(温度45℃、攪拌時間3分)、次いで、液状の混合物の液面付近に析出された膜状の物質を茶漉しを用いて除去して、処理済カカオ原料を得た(実施例1〜7)。
表3では、混合物中のカカオ原料に由来するタンパク質重量、ガレート型カテキンの固形分重量、タンパク質に対するガレート型カテキンの比率(カテキン/タンパク)と、混合物中に膜が生成したこと(○)を示す。なお、ガレート型カテキンの含有量は、サンフェノンEGCgの純度を90%として算出した。
【0034】
【表3】

【0035】
(比較例1〜5)
次に表4に記載の配合でカカオ原料1〜3、及び溶液1〜4を混合し、前記実施例と同様に処理した(比較例1〜5)。但し、比較例3は生成された膜状の物質の除去を行わなかった。また、表3中の膜生成の「△」は、非常に微量の膜が生成されたことを示し、「×」は膜が生成されなかったことを示す。
【0036】
【表4】

【0037】
(試験例:チョコレートの風味試験)
次に本発明の処理方法の効果を確認するために、実施例1〜5、及び比較例1〜4で得られた処理済カカオ原料を、砂糖38.8部、各実施例及び比較例のカカオ原料48.2部、ココアバター12.8部、バニリン0.1部、レシチン0.1部の配合で各原料を混合し、各々のカカオ原料からチョコレート1〜9を作製した。チョコレートの製造方法は、各原料を混合後、ロール掛けにより約20〜25μmに微粉砕化し、60℃条件で4時間半コンチングを行った。また、粒度の測定はマイクロメーターを用いた。
【0038】
また、実施例6及び比較例5で得られた処理済カカオ原料を、砂糖42.8部、各実施例及び比較例のカカオ原料45.0部、ココアバター12.0部、バニリン0.1部、レシチン0.1部の配合で各原料を混合し、先と同様の方法でチョコレート10、11を作製した。
【0039】
次に作製したそれぞれのチョコレート1〜11の風味の評価を行った。評価方法は30名のパネラーにそれぞれのチョコレートを試食してもらい、風味を−5〜5点の間の整数値で評価してもらった。
実施例1〜5、及び比較例1〜4の処理済カカオ原料を使用したチョコレート1〜9の結果を表5に示した。「風味」の点数は30名の平均点を示し、「t−value」は比較例4をカカオ原料として使用したチョコレート9とのt−検定の結果を示した。
また、実施例6及び比較例5の処理済カカオ原料を使用したチョコレート10、11についても、同様の試験を行った結果を表6に示し、t−検定には比較例5に対しての結果を示した。
表中、「E−10」は「×10-10」、「E−09」は「×10-9」、「E−06」は「×10-6」、「E−04」は「×10-4」を示す。
【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
表6の結果より、実施例1〜5のいずれもガレート型カテキンを全く添加しないチョコレート9に比べて風味の有意性が得られる結果となった。一方、ガレート型カテキンの含有量が少ないチョコレート6や、含有量が多いチョコレート7は、チョコレート9に比べると多少の風味の改善は見られるものの、その差に有意性は得られなかった。更に、生成された膜の除去を行わなかったチョコレート8は、t値が0.368(>0.05)であり、チョコレート9とほとんど差がない結果となった。また、発酵したカカオ原料を使用したチョコレート10、11の結果を見ると、風味の差に有意性は得られるが、その差は未発酵カカオ原料を使用したものに比べて小さい結果であり、風味の値もチョコレート1とチョコレート10ではほとんど差のない結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオマス及び/又はカカオパウダーを主成分とするカカオ原料と、可食性溶媒に溶解したガレート型カテキンの溶液とを、ガレート型カテキンの固形分重量が前記カカオ原料中のタンパク質重量の0.00005〜0.003倍になるように混合する工程、
得られる混合物中で反応物を生成させる工程、及び
生成された反応物を除去する工程
を有することを特徴とするカカオ原料の処理方法。
【請求項2】
前記可食性溶媒がエタノール又はエタノール水溶液であることを特徴とする請求項1記載のカカオ原料の処理方法。
【請求項3】
前記カカオ原料が、未発酵カカオ豆由来のカカオ原料を主原料とすることを特徴とする請求項1又は2記載のカカオ原料の処理方法。

【公開番号】特開2013−70646(P2013−70646A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210788(P2011−210788)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】