説明

カッティングプロッタおよびそのカット方法

【課題】幅の広い被加工媒体に対し高品質なカット加工を施すカッティングプロッタを提供する。
【解決手段】
カッティングプロッタ1は、ガイドレール15aと、ガイドレール15aに沿って左右方向に移動可能なキャリッジ21と、キャリッジ21に搭載されて上下方向に移動可能なカッター刃26と、キャリッジ21を移動させる制御、および上下方向にカッター刃26を移動させる制御を行ってカット加工を施すコントロールユニットとを有し、コントロールユニットにより、ガイドレール15aに沿ってキャリッジ21を移動させる制御が行われるとき、シート材Mとキャリッジ21との間隔が、所定間隔よりも広い場合は、カッター刃26をシート材Mに食い込ませる方向に移動させる制御を加えた制御が行われ、所定間隔よりも狭い場合は、シート材Mに対してカッター刃26を離間させる方向に移動させる制御を加えた制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工媒体に対してカッター刃等の加工具を押し付けた状態で相対移動させることにより、カット加工を施すカッティングプロッタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記カッティングプロッタには、例えばシート状の被加工媒体を前後方向に移動させる制御、この前後方向に直交する左右方向に加工具を移動させる制御、および被加工媒体に対してカッター刃を押し付けまたは離隔させる制御を組み合わせて行うことにより、カット加工を施すタイプのものがある。このタイプのカッティングプロッタは、一般に、左右方向に延びて設けられたガイド部材(Yバーとも称される)に対してカッティングユニットが左右方向に移動自在に取り付けられ、このカッティングユニットに上記加工具が上下移動可能に搭載されて構成される。
【0003】
図14に、従来のカッティングプロッタにおけるガイド部材800の斜視図を示す。このガイド部材800は、左右方向に延びたガイド本体部810と、このガイド本体部810の前面に取り付けられて左右に延びるガイドレール820とから構成される。ガイド本体部810は、例えばアルミニウム材料を押し出しまたは引き抜き成形することにより形成される。ガイドレール820には、機械加工により溝部821,822が高精度に形成されており、この溝部821,822に対してカッティングユニット(図示せず)が左右方向へ移動自在に取り付けられる。また、ガイド部材800に下方には、上面に被加工媒体が載置されるプラテン830が位置している。
【0004】
このような構成より、カット加工を施す際には、使用する被加工媒体よりも左右幅の広いガイド部材800からなるカッティングプロッタを用いる必要がある。従来は、比較的左右幅の狭い(例えば、左右幅約50cm)被加工媒体を用いたカット加工が多く行われており、このような被加工媒体に対応させるため、左右幅約60cmのガイド部材800を用いてカッティングプロッタが構成されていた。このガイド本体部810は、押し出しまたは引き抜きにより成形されるため、厳密に真っ直ぐに製作することは困難であり、例えば左右幅約60cmのガイド部材800の場合には、約0.3mmの歪みが発生していた。
【0005】
特に、厚さ約2〜3mmの被加工媒体に対してカット加工を施す場合には、この約0.3mmの歪みにより加工具が被加工媒体に押し付けられる力(カット圧)が部分的に変化することにより、加工具の食い込み深さが不均一となってしまい、カット品質に影響を及ぼすことがある。
【0006】
そのため、ガイド本体部810に対してガイドレール820を取り付ける際、ガイドレール820とプラテン830との上下間隔が一定となるように、細かな調整を行いながら取り付けていた。こうすることで、ガイド本体部810に生じた約0.3mmの歪みが、カット品質に影響を及ぼすことを防止していた。上記カット圧の制御に関しては、従来種々の提案がなされている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−220594号公報
【特許文献2】特開平11−129197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで近年、左右幅の広い(例えば、約1.5m)被加工媒体に対してカット加工を施したいという要求がある。このような被加工媒体に対してカット加工を施すためには、約1.6mのガイド部材800を用いてカッティングプロッタを構成する必要がある。約1.6mのガイド部材800を押し出しまたは引き抜きにより成形すると、現在の成形技術では少なくとも約1mmの歪みが発生してしまう。このように、約1mmの歪みが生じたガイド部材800に対して、ガイドレール820を調整しながら取り付けたとしても、このガイド部材800の歪みがカット品質に与える影響を完全になくすことは困難であるという課題があった。また、ガイドレール820は、上記のように高精度な機械加工により製作されるため製造コストが高く、特に約1.6mの長さのガイドレール820を製作する場合には格段に高価になるという課題もあった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、製造コストを抑えつつ、幅の広い被加工媒体に対して高品質なカット加工を施すことができるカッティングプロッタ、およびそのカット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るカッティングプロッタは、シート状の被加工媒体(例えば、実施形態におけるシート材M)を支持する媒体支持手段(例えば、実施形態におけるプラテン12a)と、前記媒体支持手段に対向した状態で、前記媒体支持手段に支持された被加工媒体に対して搬送方向に相対移動されるとともに、前記搬送方向に対して直交する走査方向に延びて設けられたガイド部材(例えば、実施形態におけるガイドレール15a)と、前記ガイド部材に取り付けられて、前記ガイド部材に沿って前記走査方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに搭載されて、前記媒体支持手段に支持された被加工媒体に対して垂直な食い込み方向に移動可能な加工具(例えば、実施形態におけるカッター刃26)と、前記ガイド部材を前記搬送方向へ相対移動させる制御、前記ガイド部材に沿って前記キャリッジを移動させる制御、および前記食い込み方向に前記加工具を移動させる制御を行い、前記加工具により被加工媒体に対してカット加工を施す加工制御手段(例えば、実施形態におけるコントロールユニット50)とを有し、前記加工制御手段により、前記ガイド部材に沿って前記走査方向に前記キャリッジを移動させる制御が行われるとき、被加工媒体と前記キャリッジとの前記食い込み方向における間隔が、所定間隔よりも広い場合は、前記加工具を前記被加工媒体に食い込ませる方向に移動させる制御を加えた制御が行われ、前記所定間隔よりも狭い場合は、前記被加工媒体に対して前記加工具を離間させる方向に移動させる制御を加えた制御が行われる。
【0011】
なお、上記カッティングプロッタにおいて、前記キャリッジには、前記加工具を前記食い込み方向に移動させるソレノイド(例えば、実施形態における電磁石23、永久磁石28)が搭載されおり、前記加工制御手段は、前記ソレノイドへの供給電流を制御することにより、前記加工具を前記食い込み方向に移動させる制御を行う構成が好ましい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るカット方法は、シート状の被加工媒体を支持する媒体支持手段と対向し走査方向に延びたガイド部材に沿って移動可能なキャリッジに対して、前記媒体支持手段に支持された被加工媒体に対し直交する食い込み方向に移動可能に搭載された加工具を、前記被加工媒体に食い込ませた状態で相対移動させながらカット加工を施すカッティングプロッタを用いて行うカット方法であって、被加工媒体と前記キャリッジとの前記食い込み方向における間隔に応じて、前記加工具を前記食い込み方向に移動させる第1のステップと、前記第1のステップにおいて移動された前記加工具を、前記ガイド部材に沿って前記走査方向に移動させる第2のステップとを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るカッティングプロッタは、ガイド部材に沿って走査方向にキャリッジを移動させる制御において、被加工媒体とキャリッジとの食い込み方向における間隔に応じて、加工具を前記食い込み方向に移動させる制御を加えた制御が行われるように構成されている。この構成から、例えば歪みが生じたガイド部材をそのまま用いても、所望のカット圧(切り込み深さ)で加工具を被加工媒体に押し付けることが可能となる。よって、加工具の切り込み深さが部分的に変化することを自動で防止でき、全体として均一な切り込み深さのカット加工を施すことができる。また、本発明に係るカッティングプロッタにおいては、従来のようにガイド部材とガイドレールとを別々に形成して、調整しながら取り付けることで歪みの影響を抑える必要がなく、例えばガイドレールが一体形成されたガイド部材を用いることが可能である。よって、高価なガイドレールを別途作成する必要がなく、製造コストを大幅に低減できる。さらに、ガイド部材の歪みをある程度許容できるので、歪みの生じた例えば約1.6mの長さのガイド部材をそのまま用いて、左右幅約1.5mの被加工媒体に対して高品質なカット加工を施すことが可能となる。
【0014】
なお、上記カッティングプロッタにおいて、キャリッジに加工具を食い込み方向に移動させるソレノイドが搭載された構成が好ましい。このように構成した上で、例えばソレノイドへの供給電流を制御することにより、加工具の食い込み方向への移動応答性を高めることができるとともに、このときの加工具の移動量(移動位置)を高精度に制御可能となる。
【0015】
本発明に係るカット方法は、被加工媒体とキャリッジとの食い込み方向における間隔に応じて、加工具を食い込み方向に移動させる第1のステップと、加工具をガイド部材に沿って走査方向に移動させる第2のステップとを有する。このカット方法により、例えば歪みが生じたガイド部材をそのまま用いたとしても、所望のカット圧(切り込み深さ)で加工具を被加工媒体に押し付けることができる。よって、キャリッジの移動位置によって、加工具の切り込み深さが部分的に変化することを防止でき、全体として均一な切り込み深さのカット加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用したカッティングプロッタを示す正面図である。
【図2】上記カッティングプロッタのカッティングユニット周辺の斜視図である。
【図3】図2中のIII−III部分の断面図であって、(a)は支持台が下動した状態を、(b)は支持台が上動した状態をそれぞれ示す。
【図4】カッター刃のストロークとカット圧との関係を示したグラフである。
【図5】上記カッティングプロッタの制御系統図である。
【図6】ガイドレールの歪んだ状態を示す模式図である。
【図7】ストローク情報と電流値との関係を示した表である。
【図8】ストローク情報とカット圧との関係を示したグラフである。
【図9】食い込み時および離間時の制御を示したグラフである。
【図10】(a)はカット加工されたシート材の平面図を、(b)は各領域におけるストローク情報と電流値との関係(制御テーブル)を示した表である。
【図11】カット加工を施すときのフローチャートである。
【図12】実施例2に係るカッティングプロッタの正面図である。
【図13】実施例3に係るカッティングプロッタのブロック図である。
【図14】従来のカッティングプロッタに搭載されたガイドレールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について、実施例1〜3を挙げて説明する。なお、説明の便宜上、各図面に示す矢印方向を左右、前後、および上下と定義して説明を行う。
【実施例1】
【0018】
まず、本発明を適用した実施例1に係るカッティングプロッタ1の構成について、図1〜5を参照しながら説明する。図1はカッティングプロッタ1を前方から見た図を、図2は後述するカッティングユニット20周辺の斜視図を、図3は図2中のIII−III部分の断面図を、図4は後述する支持台22のストローク(キャリッジ21に対する支持台22の上下位置)とカット圧との関係を、図5はカッティングプロッタ1の制御系統図をそれぞれ示している。
【0019】
なお、以下においては、カット加工の対象であるシート状のシート材Mを前後に送る制御、後述するカッティングユニット20を左右に移動させる制御、および後述するカッター刃26を上下に移動させる制御を行うことにより、シート材Mに対して所望のカット加工を施す構成を例示している。
【0020】
カッティングプロッタ1は、図1に示すように、左右の支持脚11a,11bを有した支持脚11と、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部13aと、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部13bと、左右ボディ部13a,13bを繋ぐとともに中央ボディ部12の上側に離間して平行に延びた上ボディ部14とを備えて構成される。中央ボディ部12には、その上面に露出して左右に延びた平板状のプラテン12aが設けられている。
【0021】
上ボディ部14の内部には、左右に延びたガイド部材15が配設されている(図2参照)。このガイド部材15の下部には、複数のクランプ装置18が左右に並んで取り付けられている。クランプ装置18の前方先端部には、ピンチローラ18aが回転自在に取り付けられている。ピンチローラ15cの下方には、左右に延びる円筒状の送りローラ19がプラテン12aに露出して配設されている。この送りローラ19は、例えば中央ボディ部12に内蔵された前後駆動モータ(図示せず)により回転駆動される。
【0022】
クランプ装置18は、ピンチローラ18aが送りローラ19に押し付けられたクランプ位置と、送りローラ19に対して離間したアンクランプ位置とに設定可能となっている。この構成より、シート材Mをピンチローラ18aと送りローラ19との間に挟み、クランプ装置18をクランプ位置に設定した上で、前後駆動モータを駆動させて送りローラ19を回転させることにより、印刷シートMを所定距離だけ前方または後方に送ることができるようになっている。
【0023】
図2に示すように、ガイド部材15は左右方向に延びて配設されている。カッティングプロッタ1においては、左右幅約1.5mのシート材Mに対してもカット加工ができるように、このガイド部材15の左右幅は約1.6mとなっている。このガイド部材15は、例えばアルミニウム材料を押し出すまたは引き抜くことにより、前面側に左右に延びたガイドレール15aが一体的に形成されている。また、ガイド部材15の前面側には、ガイド溝15b,15cが左右に延びて形成されている。後述するキャリッジ21が、このガイド溝15b,15cに係合するように取り付けられ、カッティングユニット20がガイドレール15a(ガイド溝15b,15c)に沿って左右に移動自在となっている。なお、カッティングユニット20は、例えば右ボディ部13bの内部に搭載された左右駆動モータ(図示せず)により、左右へ移動される構成となっている。
【0024】
カッティングユニット20は、図3(a)に示すように、キャリッジ21、このキャリッジ21に対して上下移動可能に搭載された支持台22、およびキャリッジ21と支持台22とを繋ぐ戻しばね27を主体に構成される。なお、図3(a)は支持台22が下動した状態を、図3(b)は支持台22が上動した状態をそれぞれ示している。
【0025】
キャリッジ21には、中心部が空洞となった円筒状に形成された永久磁石28が、その中心軸を上下に向けた状態で取り付けられている。キャリッジ21の右側には、支持台22に取り付けられて上下に延びるスリット板30を挟むように、エンコーダ29が取り付けられている。エンコーダ29は、図示しない発光部および受光部を備えており、発光部と受光部との間に上記スリット板30が挟まれている。よって、支持台22が上下動されることにより、発光部から発光された検査光が、強弱と交互に強度が変化しながら受光部で検出される。このようにして検出された検査光の強度変化を基に、キャリッジ21に対する支持台22の上下位置が検出できるようになっている。
【0026】
キャリッジ21の底部には、案内棒24が上方に向けて立設されており、この案内棒24が、支持台22に形成された案内孔22aに挿通されている。この構成から、支持台22が上下動する際に、支持台22が案内棒24によりガイドされて真っ直ぐ上下動できるようになっている。
【0027】
支持台22には、上記永久磁石28の空洞部分と対向する位置に、円柱状の電磁石23がその中心軸を上下に向けた状態で取り付けられている。この電磁石23は、磁性材料からなる芯部材(図示せず)の外周部にコイル23aを巻き付けて構成される。この構成から、コイル23aに電流を供給して一時的に磁力を発生させることにより、この電磁石23と永久磁石28とが反発する力または引き合う力を利用して、キャリッジ21に対して支持台22を上下動させることができるようになっている。また、コイル23aに供給する電流の向きおよび大きさを制御することにより、支持台22を上下動させる方向、および支持台22に作用する力を制御可能となっている。支持台22の左部には、上下に貫通した保持孔22bが上下に貫通して形成されており、この保持孔22bに対して、下端部にカッター刃26が着脱可能に装着された保持部材25が挿入されて保持されている。
【0028】
戻しばね27は、キャリッジ21に対して支持台22が下動したときに、支持台22に対して上向きの付勢力を作用させるように、予めその長さおよび取り付け位置が調整されている。図3(a)は、電磁石23の磁力と永久磁石28の磁力とが反発して支持台22が下動するとともに、この下動した支持台22に対して戻しばね27による上向きの付勢力が作用して釣合った状態を示す。一方、図3(b)は、コイル23aに対して上記図3(a)とは反対方向に電流を流すことにより、電磁石23の磁力と永久磁石28の磁力とが引き合うように作用して、支持台22が上動した状態を示す。なお、コイル23aに電流が供給されていないときは、電磁石23に磁力が発生しておらず、このときのキャリッジ21に対する支持台22の上下位置は、図3(b)よりも上方(例えば、支持台22の底部と永久磁石28の下端部とが当接する位置)となっている。
【0029】
図4に、上記のように構成されたカッティングユニット20において、キャリッジ21に対して支持台22を下動させる向きにコイル23aに対して電流を供給した場合の、ストロークとカット圧(シート材Mにカッター刃26を押し付ける力)との関係を示す。図4の2本のラインはそれぞれ、コイル23aに電流値A8の電流を供給した場合と、電流値A9(>A8)の電流を供給した場合とを示す。この図4から分かるように、より大きな電流値の電流を供給することにより、電磁石23に大きな磁力を発生させることができて、大きなカット圧を作用させることができる。よって、コイル23aへの供給電流値を制御することにより、カット圧を制御することが可能である。また、同一電流値の電流を供給しても、ストロークに応じてカット圧が異なる構成となっている。
【0030】
図1に示すように、カッティングプロッタ1の左部には、コントロールユニット50が搭載されている。コントロールユニット50は、図5に示すように、カット形状データ読込部51、制御テーブル設定部52、操作部53、および駆動制御部54を主体に構成される。操作部53は、カッティングプロッタ1の上部に構成されている。カット形状データ読込部51および制御テーブル設定部52は、データが予め記憶されたROM(図示せず)や一時的にデータを記憶可能なRAM(図示せず)等からなり、中央ボディ部12の左端部分に内蔵された基板(図示せず)に搭載されている。カット形状データ読込部51は、カット加工用の形状データを読み込む部分であり、読み込まれた形状データは制御テーブル設定部52に出力される。操作部53は、オペレータが例えばカット加工を施すシート材Mの材質を選択したり、そのシート材の厚みを入力したりする部分であり、この操作部53に入力された設定データは制御テーブル設定部52に出力される。制御テーブル設定部52は、上記エンコーダ29と電気接続されている。
【0031】
この制御テーブル設定部52には、エンコーダ29において検出されたキャリッジ21に対する支持台22の上下位置、カット形状データ読込部51からの形状データ、および操作部53からの設定データが入力される。制御テーブル設定部52は入力された上記各データを基にして、後述するように、前後駆動モータの駆動制御、左右駆動モータの駆動制御、およびコイル23aへの電流供給制御に関する制御テーブルを設定する。駆動制御部54は、制御テーブル設定部52において設定された制御テーブルに基づいて、前後駆動モータおよび左右駆動モータの駆動制御を行うとともに、コイル23aに対する電流供給制御を行う。
【0032】
以上ここまでは、カッティングプロッタ1の構成について説明した。以下に、このカッティングプロッタ1を用いて、カッター刃26をシート材Mに食い込ませてカット加工を施す場合の作動について説明する。
【0033】
まず、ピンチローラ18aと送りローラ19との間にシート材Mを挟んだ上で、クランプ装置18をクランプ位置に設定するとともに、カット加工を施す部分(シート材Mの前端部分)をプラテン12aに載置させる。そして、コイル23aに対して電流供給制御を行い、シート材Mにカッター刃26を押し付けて食い込ませる。シート材Mにカッター刃26を食い込ませた状態のまま、前後駆動モータの駆動制御および左右駆動モータの駆動制御を行う。そうすることにより、カッター刃26に対してシート材Mを相対移動させて、所望の形状のカット加工を施すことができるようになっている。
【0034】
ところで、カッティングユニット20が取り付けられるガイド部材15(ガイドレール15a)の左右幅は、上述のように約1.6mとなっている。このガイド部材15は、押し出しまたは引き抜きにより成形されるが、この成形時に現在の製造技術では約1mmの歪みが生じてしまう。このように、約1mmの歪みが生じたガイド部材15(ガイドレール15a)を用いてカッティングプロッタ1を構成した場合、カッティングユニット20がガイドレール15aに沿って左右へ移動されるときに、カッター刃26がシート材Mに押し付けられる力(カット圧)が部分的に変化して、カッター刃26の食い込み深さが不均一となってしまいカット品質に影響を及ぼす虞がある。
【0035】
そこで、本発明を適用したカッティングプロッタ1においては、ガイド部材15に生じた歪みに起因するカット品質低下を防ぐために、カット加工に以下に説明する制御が行われる。この制御について、図6〜10を追加参照しながら、図11に示すフローチャートに沿って説明する。図6は歪んだガイドレール15aを模式的に示した図を、図7はストローク情報と電流値との関係を、図8はストローク情報とカット圧との関係を、図9は食い込み時および離間時の制御を、図10(a)はシート材の平面図を、図10(b)は制御テーブルDをそれぞれ示す。
【0036】
なお、以下においては、図10に示すように、シート材Mに対して前側から順に1つずつ同一形状の楕円のカット加工を施す場合を例示して説明する。つまり、図10に示す楕円70が、シート材Mに対して最初にカット加工される楕円であり、楕円70のカット加工が終了した後、楕円70の後方に隣接して楕円80がカット加工され、次に楕円80の後方に隣接して楕円90がカット加工されるようになっている。
【0037】
まず、図11に示すステップS101において、オペレータが操作部53を操作することによりシート材Mの種類や厚み等が入力され、このようにして入力された設定データが制御テーブル設定部52へ出力される。また、楕円70,80,90,…の形状データが、カット形状データ読込部51から制御テーブル設定部52へ出力される。制御テーブル設定部52は、このようにして入力された上記各データを基にして、楕円70のカット加工を施すための初期テーブルを設定する。この初期テーブルには、前後駆動モータおよび左右駆動モータの駆動制御、およびコイル23aへの電流供給制御が設定されている。また、初期テーブルは、例えばガイド部材15(ガイドレール15a)の歪みを考慮することなく、ガイド部材15(ガイドレール15a)とプラテン12aとが平行に位置しているという仮定の下で、所望のカット加工ができるように設定されたものである。
【0038】
ステップS102に進み、上記ステップS101において設定された初期テーブルのデータが駆動制御部54に出力される。駆動制御部54は、初期テーブルに従って前後駆動モータおよび左右駆動モータを駆動させるとともに、コイル23aへの電流供給制御を行うことにより、楕円70をカット加工する(図10参照)。このとき、カッター刃26を例えば食い込み位置71の上方に位置させておき、支持台22を下動させてカッター刃26を食い込み位置71に食い込ませる。このように食い込ませた状態で、カッター刃26に対してシート材Mを反時計回りに相対移動させて、カッター刃26を上記食い込み位置71に位置させる。そして、この食い込み位置71において支持台22を上動させることにより、カッター刃26をシート材Mから離間させて楕円70のカット加工が完了する。
【0039】
上記のようにして楕円70をカット加工するとき、シート材Mに対するカッター刃26の食い込み深さが一定となるように、コイル23aへの供給電流制御を行いながら、ゆっくりとカッター刃26に対してシート材Mを相対移動させてカット加工を施す。このように、ゆっくりとカット加工を行いながら、左右方向の例えば5cm毎の位置においてエンコーダ29により検出されたキャリッジ21に対する支持台22の上下位置が、制御テーブル設定部52へ出力されてストローク情報として記憶される。
【0040】
図6には、左右位置とストローク情報との関係を示している。図6は、ガイドレール15aからシート材Mまでが基準間隔(ガイドレール15aに歪みがない場合)の場合を「0」とし、基準間隔に対して狭くなる方向を−(マイナス)方向、拡大する方向を+(プラス)方向と定義している。この定義の下で、図6および図10に示すように、例えば「0」と示した右端部から2.5cm、7.5cm、12.5cm、17.5cm、…の5cm毎の各位置において、0、−2、−1、+1、…というストローク情報が得られたとする。
【0041】
続いてステップS103に進み、制御テーブル設定部52において、上記の各検出位置を中心として左右に例えば5cmの領域(2.5cmの位置を中心に領域R1、7.5cmの位置を中心に領域R2、12.5cmの位置を中心に領域R3、…)が設定される。さらに、この各領域をカット加工するときに、所望の食い込み深さとなるような電流値が領域毎に設定される。この電流値の設定は、図7に示すように、ストローク情報に基づいて設定される。また、図7に示すストローク情報と電流値との関係に、さらにカット圧を合わせて示したグラフが図8である。この図8から分かるように、ストローク情報に応じて電流値を制御することにより、所望の食い込み深さとなる所望カット圧P1に維持することができる。例えば領域R2の場合、ストローク情報は「−2」なので、図7を参照して電流値A3と設定される。
【0042】
よって、この領域R2をカット加工する場合には、コイル23aへの供給電流値がA3に制御されることにより、ガイドレール15aのこの部分(右端から7.5cm部分)が下方へ向けて歪んでいても、所望の食い込み深さとなるようなカット加工が可能となる。このようにして、領域毎に電流値を設定したものが、制御テーブルDのうちのコイル23aへの電流供給制御に関する部分であり(図10(b)参照)、これに前後駆動モータおよび左右駆動モータの駆動制御を加えて、制御テーブルDが構成される。なお、図4にも示したように、ストロークが大きくなるほど(電磁石23と永久磁石28とが上下に離れるほど)、所望カット圧P1を確保するために、より大きな電流値の電流を供給する必要があるため、図7および図8に示す電流値の大小関係は、A1<A2<A3<A4<A5<A6<A7となっている。
【0043】
ステップS104に進み、上記ステップS103において作成された制御テーブルDに基づいて、楕円80をカット加工する。まず、図10に示す食い込み位置81の上方にカッター刃26を位置させ、この状態で支持台22を下動させてカッター刃26を食い込ませる。このとき、例えば一気に支持台22を下動させて、カッター刃26を食い込み位置81に食い込ませると、移動時間を短縮できる一方でカッター刃26を破損する虞がある。そこで、本発明を適用したカッティングプロッタ1においては、ステップS102において検出されたガイドレール15aの歪み(ストローク情報)を反映させた上で、カッター刃26の損傷を防止しつつ移動時間を短縮させた制御を行っている。このカッター刃26をシート材Mに食い込ませる制御について、図9を参照しながら以下に説明する。
【0044】
上記の楕円70のカット加工が完了して、カッター刃26をシート材Mから離間させたとき、例えば電流値B1に制御することにより、永久磁石28に電磁石23を引き寄せて上昇位置に保持する。そして、楕円80のカット加工を開始するとき、電流値B1の状態でカッター刃26を食い込み位置81の上方に位置させ、電流値B2に制御することにより支持台22(カッター刃26)を下動させる(時間T1〜T2)。こうすることにより、カッター刃26を、高さ位置(シート材Mから距離)H4から高さ位置H3まで一気に下動させる。エンコーダ29により高さ位置H3まで下動したことが検出されると、支持台22を上動させるように電流値B3に制御し、カッター刃26の下動速度を減速させる(時間T2〜T3)。エンコーダ29により、支持台22の高さの変化がほぼ零になった(一定時間内における支持台22の高さ変化が一定値以下になった)ことが検出されると(高さ位置H2)、電流値B4に制御して下動させ、目標とする高さ位置H1に位置させる(時間T3〜T4)。
【0045】
その後、電流値B4よりも大きなカット圧を作用させるように電流値A4に制御し、所望の食い込み深さまで食い込ませる(時間T4〜T5)。このように、電流値A4に制御して大きなカット圧を作用させることにより、戻しばね27により生じる支持台22(カッター刃26)の上下振動を、短時間のうちに安定させることができる。以上説明したように、目標とする高さ位置H1の近傍まで一気に下動させた後、ゆっくりと高さ位置H1に位置させることで、カッター刃26を損傷させることなく短時間のうちに食い込ませることが可能となる。
【0046】
なお、上記においては、食い込み位置81のストローク情報が「0」の場合について説明した。食い込み位置81のストローク情報が、例えば「−2」の場合(食い込み開始前にカッター刃26が高さ位置H5(図9参照)に位置した場合)には、電流値B2で制御する時間T1〜T2を短縮させるように設定する。また、食い込み位置81のストローク情報が、例えば「+2」の場合(食い込み開始前にカッター刃26が高さ位置H6(図9参照)に位置した場合)には、電流値B2で制御する時間T1〜T2を延ばすように設定する。こうすることにより、食い込み位置81のストローク情報(ガイドレール15aの歪み)に応じて、カッター刃26を破損させることなく短時間でカッター刃26をシート材Mに食い込ますことができる。
【0047】
上記のようにして、カッター刃26をシート材Mに食い込ませた後、図10に示すように反時計回りに楕円80をカット加工する。このとき、食い込み位置81から境界点82までは領域R1(ストローク情報「0」)に含まれるため、上記制御テーブルDに基づいて電流値A4に制御してカット加工を施す。そうすることにより、食い込み位置81から境界点82までを、所望の食い込み深さでカット加工できる。次の境界点82から境界点83までは、領域R2(ストローク情報「−2」)に含まれるため、制御テーブルDに基づいて電流値A3に制御してカット加工を施す。こうすることにより、ガイドレール15aが下方に向けて歪んだ(下方に凸となった)状態であっても、この歪み量に関らず食い込み深さを一定に維持しながらカット加工を施すことが可能となる。
【0048】
同様に、境界点83から境界点84までは電流値A4、境界点84から境界点85までは電流値A5、境界点85から境界点86までは電流値A6、境界点86から境界点87までは電流値A5というように、カット加工を施す各領域に応じて電流値を制御しながら連続して楕円80をカット加工する。このようにしてカット加工を行うことにより、ガイドレール15aに生じている歪みの方向および歪み量に関係なく、所望の食い込み深さを維持しながら楕円80をカット加工することができる。また、この楕円80をカット加工するとき、制御テーブルDを参照することにより、全ての制御情報が得られるので、比較的高速でカッター刃26に対してシート材Mを相対移動させながらカット加工を施すことが可能である。
【0049】
そして、境界点88から食い込み位置81までカット加工を施した後、食い込み位置81にカッター刃26を位置させた状態でカッター刃26を上動させる。このとき、図9に示すように、カッター刃26を上動させる電流値B6に制御して、シート材Mに食い込んだ状態のカッター刃26を、高さ位置H1から高さ位置H7まで一気に上動させる(時間T6〜T7)。エンコーダ29により、エンコーダ29により高さ位置H7まで上動したことが検出されると、支持台22を下動させるように電流値B7に制御し、カッター刃26の上動速度を減速させる(時間T7〜T8)。
【0050】
そして、エンコーダ29により、支持台22の高さの変化がほぼ零になった(一定時間内における支持台22の高さ変化が一定値以下になった)ことが検出されると(高さ位置H8)、電流値B8に制御して上動させ、目標とする高さ位置H4に位置させる(時間T8〜T9)。その後、電流値B8よりも大きな上向きの力を作用させるように電流値B1に制御し、カッター刃26を上昇位置に保持する(時間T9以降)。このように、目標とする高さ位置H4の近傍まで一気に上動させた後、ゆっくりと高さ位置H4に位置させることで、短時間のうちにカッター刃26を上昇位置に移動させることが可能となる。
【0051】
なお、上記カッター刃26を食い込ませるときと同様に、食い込み位置81のストローク情報に応じて、時間T6〜T7が設定されるようになっている。食い込み位置81のストローク情報が例えば「−2」の場合には、電流値B6で制御する時間T6〜T7を短縮させるように設定する。一方、食い込み位置81のストローク情報が例えば「+2」の場合には、電流値B6で制御する時間T6〜T7を延ばすように設定する。
【0052】
ステップS105に進み、シート材Mを所定距離だけ前方に送った後、楕円80の後方側に楕円90をカット加工する。このときも、制御テーブルDに基づき、領域にR1〜R6に応じて電流値を制御しながら連続してカット加工を施す。このようにして、シート材Mの前端から順に楕円70,80,90…をカット加工することで、シート材Mへのカット加工が完了してこのフローは終了する。
【0053】
ところで、従来はガイド部材とガイドレールとを別々に作成し、ガイド部材に対してガイドレールを調整しながら取り付けることで、ガイド部材に生じた歪みによるカット品質低下を防止していた。一方、本発明を適用したカッティングプロッタ1においては、ガイド部材15およびガイドレール15aを、押し出しまたは引き抜きにより一体成形している。そのため、従来のようにして作成した場合と比較して、製造コストを大幅に低減することができる。また、ガイド部材に対してガイドレールを調整しながら取り付ける作業を省くことができるので、作業工数を減らして組立作業を簡易にすることが可能である。
【0054】
さらに、本発明を適用したカッティングプロッタ1は、エンコーダ29において検出されたストローク情報を基にして、ガイド部材15(ガイドレール15a)の歪みに対応させて電流値を制御する構成となっている。そのため、ガイド部材15の歪みに関らず、所望の切り込み深さとなるように自動で制御が行われるので、ガイド部材15の歪みをある程度許容しつつ、カット加工の品質を確保することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
図12を参照しながら、実施例2に係るカッティングプロッタ2について説明する。上述の実施例1に係るカッティングプロッタ1と同一部材には同一番号を付して説明を省略し、カッティングプロッタ1と比較して構成の異なる部分を中心に説明する。
【0056】
カッティングプロッタ2は、プロッタ本体2a、ディスプレイからなる操作部53、およびホストコンピュータ101を主体に構成される。ホストコンピュータ101には、カット形状データ読込部51および制御テーブル設定部52が内蔵されている。プロッタ本体2aは、カット形状データ読込部51、制御テーブル設定部52、および操作部53を備えていない点を除いては、上述のカッティングプロッタ1と同一構成となっている。プロッタ本体2aに搭載された駆動制御部54およびエンコーダ29は、ホストコンピュータ101の制御テーブル設定部52と電気接続されている。
【0057】
カッティングプロッタ2の作動について、図10(a)に示す楕円をカット加工する場合を例示して、以下に説明する。
【0058】
まず、カット加工を施すシート材Mをプロッタ本体2aにセットする。次に、操作部53を介してこのシート材Mの種類や厚みを入力する。制御テーブル設定部52には、操作部53からのシート材Mの種類や厚みに関する設定データや、カット形状データ読込部51からの形状データが入力される。そうすることにより、制御テーブル設定部52において、楕円70のカット加工を施すための初期テーブルを設定される。そして、この初期テーブルに基づいて、前端部の楕円70をカット加工する。このとき、上述の実施例1と同様に、エンコーダ29において検出されたキャリッジ21に対する支持台22の上下位置が、制御テーブル設定部52に出力されてストローク情報として記憶される。制御テーブル設定部52は、このストローク情報を基にして制御テーブルDを作成する。そして、上述の実施例1と同様に、楕円80,90,…をこの制御テーブルDを参照しながらカット加工する。
【0059】
このように、ホストコンピュータ101にカット形状データ読込部51および制御テーブル設定部52を内蔵させて、ディスプレイからなる操作部53を見ながら操作できる構成とすることにより、例えばカット形状データ読込部51に記憶されている形状データの更新や追加等を簡易に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0060】
図13を参照しながら、実施例3に係るカッティングプロッタ3ついて説明する。上述の実施例2に係るカッティングプロッタ2と同一部材には同一番号を付して説明を省略し、カッティングプロッタ2と比較して構成の異なる部分を中心に説明する。
【0061】
実施例3に係るカッティングプロッタ3は、ディスプレイからなる操作部53、ホストコンピュータ101、および複数のプロッタ本体2a,3a,4a,5a,…を主体に構成される。各プロッタ本体3a,4a,5a,…は、上述のプロッタ本体2aと同一構成となっており、各プロッタ本体に搭載された駆動制御部54およびエンコーダ29は、ホストコンピュータ101の制御テーブル設定部52と電気接続されている。このように構成することにより、複数のプロッタ本体2a,3a,4a,5a,…の各々を、1台のホストコンピュータ101により駆動制御できる。そのため、複数のプロッタ本体2a,3a,4a,5a,…を同時に稼動させるような場合に、特に有効な装置構成となる。
【0062】
上述の実施形態において、前後方向に隣接するように、同一形状の楕円70,80,90,…をカット加工する構成を例示して説明したが、この構成に限定されない。例えば楕円に限らず種々の形状や、左右方向に複数のカット加工を施す場合にも、本発明を適用することが可能である。
【0063】
上述の実施形態では、2つ目以降の楕円80,90,…のカット加工を施す際に、1つ目のカット時に得られたストローク情報を基に、カット加工を施す制御構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、2つ目以降の楕円80,90,…のカット加工時において、所望カット圧P1が維持されるように電流値を制御するとともに、この電流値を検出するように構成しておく。このようにして検出された電流値が、予め設定された閾値を超えたとき、閾値を超えた領域の制御テーブル(電流値)を修正する。そして、上記カット加工時に閾値を超えた楕円に対して、その次の楕円のカット加工時には、この修正した制御テーブルに基づいてカット加工を施すように構成すると、より高精度に所望の食い込み深さを維持しながら楕円をカット加工することが可能となる。
【0064】
また、上述の実施形態において、前後にシート材Mを送る制御と、ガイドレール15aに沿ってカッター刃26を左右に移動させる制御とを組み合わせて行うことにより、カッター刃26に対してシート材Mを相対移動させる構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、固定されたシート材に対して、カッター刃を前後および左右に移動させるタイプのカッティングプロッタに対しても、本発明を適用することが可能である。
【0065】
上述の実施形態においては、カッター刃26を用いてシート材Mにカット加工を施す構成を例示したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えばカッター刃26に代えて、被加工媒体に切削加工を施すエンドミルを用いたカッティングプロッタにも、本発明を適用することができる。
【0066】
上述の実施形態において、カッター刃26に対してシート材Mを相対移動させてカット加工を施すときに、例えばカッター刃26を細かく上下移動させることにより、シート材Mに対してカッター刃26を貫通させる部分と貫通させない部分とを形成することも可能である。このようなカット加工を行うことにより、シート材Mに対して楕円70,80,90,…が完全に分離しないようにすることができ、カット加工を施したシート材Mの搬送等が容易となる。
【0067】
上述の実施形態において、5cm毎にストローク情報して領域R1〜R6を作成し、これらの領域毎に所望カットP1となる電流値を設定する方法について説明したが、この構成に限定されない。例えば、5cm毎ではなく連続的にストローク情報を取得して、カット加工時にキャリッジ21の左右方向への移動位置に応じて電流値を連続的に制御する方法でも良い。
【0068】
なお、上述の実施形態では、初期テーブルに従って楕円70をカット加工しながらストローク情報を取得する方法について説明したが、本発明はこの方法に限定されない。例えば、カッター刃26をシート材Mに対して食い込まない程度の圧力で押し付けておき、その状態でカッター刃26とシート材Mとを相対移動させることで、ストローク情報を取得する方法も可能である。
【0069】
上述の実施形態に例示した制御以外に、次のような制御も可能である。例えば図10(a)に示す楕円70を食い込み位置71をからカット加工するときに、食い込み位置71におけるストローク情報に基づいて、楕円70のすべてをカット加工するようにしても良い。この場合、食い込み位置71におけるストローク情報は「0」なので、電流値A4に制御された状態で、楕円70がカット加工される。仮に、領域R4に含まれる食い込み位置79からカット加工するときは、電流値A5に制御された状態で、楕円70がカット加工される。このような制御を行うことにより、制御構成をシンプルにすることができ、カット加工に要する作業時間を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
M シート材(被加工媒体)
1 カッティングプロッタ
12a プラテン(媒体支持手段)
15 ガイド部材
15a ガイドレール(ガイド部材)
21 キャリッジ
23 電磁石(ソレノイド)
26 カッター刃(加工具)
28 永久磁石(ソレノイド)
50 コントロールユニット(加工制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被加工媒体を支持する媒体支持手段と、
前記媒体支持手段に対向した状態で、前記媒体支持手段に支持された被加工媒体に対して搬送方向に相対移動されるとともに、前記搬送方向に対して直交する走査方向に延びて設けられたガイド部材と、
前記ガイド部材に取り付けられて、前記ガイド部材に沿って前記走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジに搭載されて、前記媒体支持手段に支持された被加工媒体に対して垂直な食い込み方向に移動可能な加工具と、
前記ガイド部材を前記搬送方向へ相対移動させる制御、前記ガイド部材に沿って前記キャリッジを移動させる制御、および前記食い込み方向に前記加工具を移動させる制御を行い、前記加工具により被加工媒体に対してカット加工を施す加工制御手段とを有したカッティングプロッタにおいて、
前記加工制御手段により、前記ガイド部材に沿って前記走査方向に前記キャリッジを移動させる制御が行われるとき、
被加工媒体と前記キャリッジとの前記食い込み方向における間隔が、所定間隔よりも広い場合は、前記加工具を前記被加工媒体に食い込ませる方向に移動させる制御を加えた制御が行われ、
前記所定間隔よりも狭い場合は、前記被加工媒体に対して前記加工具を離間させる方向に移動させる制御を加えた制御が行われることを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項2】
前記キャリッジには、前記加工具を前記食い込み方向に移動させるソレノイドが搭載されおり、
前記加工制御手段は、前記ソレノイドへの供給電流を制御することにより、前記加工具を前記食い込み方向に移動させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のカッティングプロッタ。
【請求項3】
シート状の被加工媒体を支持する媒体支持手段と対向し走査方向に延びたガイド部材に沿って移動可能なキャリッジに対して、前記媒体支持手段に支持された被加工媒体に対し直交する食い込み方向に移動可能に搭載された加工具を、前記被加工媒体に食い込ませた状態で相対移動させながらカット加工を施すカッティングプロッタを用いて行うカット方法であって、
被加工媒体と前記キャリッジとの前記食い込み方向における間隔に応じて、前記加工具を前記食い込み方向に移動させる第1のステップと、
前記第1のステップにおいて移動された前記加工具を、前記ガイド部材に沿って前記走査方向に移動させる第2のステップとを有することを特徴とするカット方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−188427(P2010−188427A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32007(P2009−32007)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】