説明

カップホルダ

【課題】良好な容器出し入れ性と保持性を維持しながら部品数を減じ、構造も簡単で製作費を低減可能にする。
【解決手段】ホルダ本体1が容器底面を受け止める収容部11を形成し、収容部11に容器を入れるときその容器から受ける負荷により第1軸部16aに対する第1ガイド溝26及び第2軸部16bに対する第2ガイド溝27の各案内を伴って収容部内から収容部外へ退避する方向へ揺動して容器Aの径方向の動きを拘束する当接部材2と、当接部材2を突出方向へ付勢している付勢手段3とを備えているカップホルダである。工夫点は、ホルダ本体が収容部の周囲に設けられて当接部材2の一部を出没可能な開口部13及び開口部13に対応して収容部の周囲外面に一体に突出形成した支持部14,15を有している。当接部材2が支持部に対し第1ガイド溝26に対する第1軸部16aの嵌合及び第2ガイド溝27に対する第2軸部16bの嵌合を介し組み付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の飲料用容器(この容器には缶,コップ,ペットボトル等を含む)を拘束状態に支持し得るようにしたカップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカップホルダは、径の異なる各種飲料用容器を拘束状態に支持して車両の振動などが加わっても容器の倒れや容器内の液体の漏洩を防ぐと共に、これら容器を出し入れするとには簡単かつ確実に操作できるようにする必要がある。従来構造には、それら必要条件を満足するため色々な工夫を施したものがあるが、その一つとして本出願人は先に特許文献1に記載のカップホルダを開発した。
【0003】
このカップホルダは、ホルダ本体が容器底面を受け止め可能な略凹状収容部を形成しており、その収容部の周囲に取り付けられた保持ユニットを有している。保持ユニットは、ホルダ本体の収容部に取り付けられるケースと、缶等の容器を収容部内に入れるときその容器から受ける負荷により第1軸部に対する第1ガイド溝、及び第2軸部に対する第2ガイド溝の各案内作動を伴って収容部内から収容部外へ退避する方向へ揺動して容器の径方向の動きを拘束する当接部材と、前記当接部材を突出方向へ付勢している付勢手段とを備えている
【0004】
この構造特徴は、当接部材が容器をホルダ本体側収容部に入れる挿入時において、容器から受ける負荷により収容部外へ揺動する関係で、収容部の内周側に傾斜する構造に比べて、容器の大小に係わらず当接部材のほぼ同じ箇所を容器周囲に当接し、それによって保持性が容器の外径の大小によって影響され難くなり、良好な出し入れ性及び保持特性を維持できる。
【特許文献1】特開2006−1428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来構造では、ホルダ本体と共にケースと当接部材及び付勢手段が必要であり、また、ホルダ本体に対するケースの取付構造も考慮しなくてはならず、部品数が多く構造も複雑なため、製作コストが高かった。そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解消して、良好な容器出し入れ性及び保持性を維持しながら、部品数を減じ、かつ構造も簡単で製作費を低減可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、ホルダ本体が缶等の容器底面を受け止める略凹状収容部を形成しており、前記収容部に容器を入れるときその容器から受ける負荷により第1軸部に対する第1ガイド溝、及び第2軸部に対する第2ガイド溝の各案内を伴って前記収容部内から収容部外へ退避する方向へ揺動して前記容器の径方向の動きを拘束する当接部材と、前記当接部材を突出方向へ付勢している付勢手段とを備えているカップホルダにおいて、前記ホルダ本体は、前記収容部の周囲に設けられて前記当接部材の一部を出没可能な開口部、及び前記開口部に対応して前記収容部の周囲外面に一体に突出形成した支持部を有し、前記当接部材が前記支持部に対し前記第1ガイド溝に対する前記第1軸部の嵌合及び前記第2ガイド溝に対する前記第2軸部の嵌合を介し組み付けられることを特徴としている。
【0007】
以上の本発明は請求項2〜4のように具体化されることがより好ましい。すなわち、
(ア)前記支持部には前記第1軸部及び第2軸部が突設されると共に、前記当接部材には前記第1軸部が嵌合する略直線状の前記第1ガイド溝及び前記第2軸部が前記第1軸部を支点として回転可能に嵌合する非直線状の前記第2ガイド溝が設けられている構成である(請求項2)。
(イ)前記支持部は、前記収容部の周囲外面のうち前記開口部の両側縁部に沿って突出形成されている構成である(請求項3)。
(ウ)前記当接部材は前記開口部から突出する押圧子及び前記支持部の外側に配置される側板を一体に有していると共に、前記付勢手段はトーションバネでありその一端を前記押圧子の背面側に係止し、他端を前記支持部側に係止している構成である(請求項4)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、当接部材を保持する支持部をホルダ本体に一体に突出形成しているため、特許文献1と同じ機能を達成するための部品数を削減でき、組立も容易となって安価に製作できる。
【0009】
請求項2の発明では、例えば、相対的に大きくなるホルダー本体側に単純形状の各軸部を設け、相対的に小さくなる当接部材側に複雑形状の各ガイド溝を形成する方が成形容易になる。また、溝形状からは、例えば、容器が収容部に斜めに挿入される場合や保持状態から斜めに引き抜かれる場合に、第2軸部が第2ガイド溝内で第1軸部を支点として回転されることで当接部材に加わる負荷を吸収し易くなる。
【0010】
請求項3の発明では、当接部材を両側の支持部で確実に支持できることに加え、開口部の両側縁部に沿って突出している両支持部の存在で開口部から外側が目視し難くなって外観特性を維持し易くなる。
【0011】
請求項4の発明では、例えば、支持部に対し当接部材を組み付けた状態でトーションバネをセットすれば完成するため、組立作業を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用したカップホルダを図面に基づいて説明する。図1及び図2はカップホルダ構成を示し、図3及び4は作動を示し、図5は変形例を示している。この説明では、構造、組立、作動、変形例の順に詳述する。
【0013】
(構造)形態例のカップホルダは、図1と図2に例示されるように、ホルダ本体1と少なくとも1以上の当接部材2及び当接部材2の数に応じた付勢手段であるトーションバネ3からなる。すなわち、このホルダ本体1は、筒部10の内側に略凹状収容部11を形成しており、収容部11に容器Aを入れるときその容器から受ける負荷により第1軸部16aに対する第1ガイド溝26、及び第2軸部16bに対する第2ガイド溝27の各案内作動を伴って収容部11内から収容部外へ退避する方向へ揺動して容器Aの径方向の動きを拘束する当接部材2と、当接部材2を突出方向へ付勢しているトーションバネ3とを備えている。
【0014】
ここで、筒部10は、樹脂成形品であり、収容部11を区画している有底円筒状をなしている。筒部10の上縁にはフランジ部12が設けられている。筒部10の周囲には、当接部材3を外側より収容部11内に出没可能にする複数の開口部13と、開口部13に対応して周囲外面に一体に突出形成されている上下に長い片状の支持部14,15とを有している。
【0015】
収容部11は、上から挿入される容器Aを底面11aで受け止める。収容部11の径は、飲料用缶、ペットボトル、紙コップなど各種形態で一般的に提供される容器Aのうち、比較的大型の容器外径より若干大きく設定されている。フランジ部12は、支持部14,15を見にくしたり、ホルダ本体2が車両用コンソールボックス等の設置箇所側に設けられる取付用凹所に装着されたとき縁取り用として機能する。各開口部13は、フランジ部12の下側に設けられて上下に長い略矩形状の開口である。この例では、各開口部13が筒部10の中心から90〜120°の角度を保って設けられている。
【0016】
支持部14,15は、開口部13の両縁部に突出されて上下に長い片状となっている。支持部14,15には、第1軸部16a及び第2軸部16bが支持部同士の対向面と反対側の外面(以下、単に外面という)にそれぞれ突設されている。各第1軸部16aは筒部10の外周から離れ箇所に設けられ、第2軸部16bは筒部10の外周に接近した箇所に設けられている。また、両支持部のうち、一方の支持部14には、トーションバネ3の他端3bを係止する掛止部14aが突出形成されている。
【0017】
これに対し、当接部材2は、支持部14,15を極力見えなくなるように覆うと共に、筒部10の外周に離接可能に当接する左右の側板20,20と、両側板20を連結している上連結板部21と、各側板20の内側に設けられて側板20との間に支持部用配置空間を区画している内側部22と、両側壁20に一体化された後側部分に設けられて掛止部14aを側板20と内側部22との間の隙間から後方へ逃がす切欠部23と、連結板部21の前中間部から前方へ突出されている押圧子24と、上連結板部21の後側及び下側を欠如している中空部25とを一体に形成している。
【0018】
両側板20には、下側に位置した略直線形の第1ガイド溝26、及び上側に位置した非直線形の第2ガイド溝27が設けられている。第1ガイド溝26は、下に行くほど筒部10の外周から離れる下向き傾斜溝となっており、第1軸部16aが摺動自在に嵌合したり第1軸部16aをがたつきなく逃げる溝形状である。第2ガイド溝27は、第1ガイド溝26より上側に設けられて、溝幅を第2軸部16bより大きくした形状、つまり通常状態で第2軸部16bが接しながら摺動する上辺部27aを有し、その上辺部27aの下側に逃げ用の空間27bを形成している。
【0019】
換言すると、上辺部27aは第1ガイド溝26とほぼ同じ傾きに設けられている。空間27bは、概略三角形に設けられており、上辺部27aをその三角形の一辺に形成した状態となっている。そして、第2ガイド溝27は、通常状態で第2軸部16bを上辺部26aに沿ってがたつきなく摺動可能にする。しかし、当接部材2(の押圧子24)に対し負荷が斜め方向に加わったとき等には、図3(b)に示されるごとく第2軸部16bが第1軸部16aを支点として上辺部27aから下側の空間27bに回転して逃げ、それにより当接部材2に加わる負荷を緩和したり吸収可能にする。
【0020】
押圧子24は、図1(b)のごとく概略V形を横にした状態に形成されており、突出先端24bがV形の2辺の交わる箇所とすると、上側傾斜部24aが上連結板部21側から突出先端24bに向けて斜め下向きに傾斜し、下側傾斜部24cが中空部25の下側から突出先端に向けて斜め上向きに傾斜している。
【0021】
(組立)以上の当接部材2及びトーションバネ3がホルダ本体1に組み付けられると本発明のカップホルダとして完成される。この組立操作において、当接部材2は、各支持部15,16が各側板20と対応する内側部22との間の空間に挿入されるよう配置されるが、その際、各第1軸部16aが対応する第1ガイド溝26に嵌合されると共に、各第2軸部16bが対応する第2ガイド溝27に嵌合される。すると、当接部材2は、各支持部15,16に対し、第1ガイド溝26に対する第1軸部16aの嵌合及び第2ガイド溝27に対する第2軸部16bの嵌合を介し組み付けられる。この状態から、トーションバネ3が組み付けられる。トーションバネ3は、カール状に巻いた部分の一端3aが押圧子24の背面側に係止され、カール状に巻いた部分の他端3bが付勢力を発現した状態で掛止部14aに係止される。
【0022】
作製されたカップホルダは、当接部材2がトーションバネ3の付勢力により押圧子24を開口部13から収容部11内に最大まで突出した状態となっている。この非使用状態において、当接部材2は、図3(a)に示されるごとく各第1軸部16aが対応する第1ガイド溝26において筒部10の外周から離れる側の内端(溝下側内端)に嵌合し、各第2軸部16bが対応する第2ガイド溝27において上辺部27aの筒部10の外周から離れる側の内端に嵌合した状態で、両側板20の前端面を筒部10の外周に当接している。
【0023】
(作動)以上のカップホルダにおいて、当接部材2は、容器Aが図2のごとく筒部10の収容部11内に挿入されたり引き抜かれるときに次のように作動する。つまり、上記した図3(a)の非使用状態において、容器Aが収容部11内に挿入されると、押圧子24の上側傾斜部24aに当たる。すると、当接部材2は、同(b)のごとく上側傾斜部24aに加わる容器Aの下向き方向の負荷(荷重)により、トーションバネ3の付勢力に抗して、又、第1軸部16aが第1ガイド溝26に沿って、第2軸部16bが第2ガイド溝27の上辺部27aに沿って摺動しながら、押圧子24を容器外径に応じた量だけ開口部13を介して収容部11から収容部外へ退避する。
【0024】
そして、当接部材2は、容器Aの外径とほぼ一致するまで退避されると、容器Aの更なる挿入を許容する。図3(c)はそのようにして飲料用容器Aが収容部11の内底面に着底し、押圧子24の先端24bで容器径方向の動きを拘束している状態である。この構造では、当接部材2が容器Aの外径の大小に関わらず、又、容器の挿入過程及び引き抜き過程において、常に、その先端24b(上側傾斜部24aと下側傾斜部24bとで形成されている先端角部)を容器Aの周囲に当接するため、安定した保持状態を維持でき、しかも、容器Aを引き抜くときに該容器に過大な負荷が加わり難く、引き抜き時の感触も良好となる。なお、容器Aが図3(a)の位置まで引き抜かれると、当接部材2がバネチャージされたトーションバネ3の付勢力により元の非使用状態に復帰される。
【0025】
図3(d)は、容器Aが急速に引き抜かれたり斜めに引き抜かれるときの作動を模式的に示している。この構造では、容器Aが収容部11に対し保持状態から斜めに引き抜かれると(斜めに挿入される場合も同じ)、第2軸部16bが第2ガイド溝27の上辺部27aから空間27b内に入り第1軸部16aを支点として回転されることで当接部材2に加わる負荷を吸収したり緩和できるようになっている。
【0026】
(変形例)以上の形態例では、ホルダ本体1の外周に2つの当接部材2を設けているが、当接部材2の使用数はホルダ本体1の大きさ、及び製造費との兼ね合いで単一にしたり、3以上に設定することができる。その例としては、図5(a)に示すごとく当接部材2をホルダ本体側筒部10内の中心から120°間隔で3箇所設ける構成、同(b)に示すごとく90°間隔で4箇所に設ける構成が挙げられる。これらの場合には、容器Aの中心を筒部10内(収容部11)の中心と一致させた状態で拘束状態に支持でき、また当接部材2の配置個数が増す毎に個々のトーションバネ3のバネ圧を小さくても確実に保持できるものとなる。
【0027】
このように本発明は、請求項1で特定した構成を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。一例として、第1軸部16a及び第2軸部16bは支持部14,15ではなく当接部材2側に設け、第1ガイド溝26及び第2ガイド溝27は支持部14,15側に設ける構成である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明形態のカップホルダを分解した分解斜視図、(b)は当接部材を左右中間で切断した状態で示す構成図である。
【図2】上記カップホルダを使用状態で示す斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は上記カップホルダに容器を保持したり取り出す際の当接部材の動きを示す部分断面図である。
【図4】上記カップホルダに容器を保持したときの作動を示す平面図である。
【図5】(a),(b)は上記カップホルダを変形した例を図4と同様な態様で示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…ホルダ本体(10は筒部、11は収容部、12はフランジ部、13は開口部)
2…当接部材(20は両側板、21は上連結板部、22は内側部、25は中空部)
3…トーションバネ(付勢手段)
14,15…支持部(14aはバネ用掛止部)
16a…第1軸部
16b…第2軸部
24…押圧子(24aは上側傾斜部、24bは突出先端、24cは下側傾斜部)
26…第1ガイド溝
27…第2ガイド溝(27aは上辺部、27bは逃げ用空間)
A…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ本体が缶等の容器底面を受け止める略凹状収容部を形成しており、前記収容部に容器を入れるときその容器から受ける負荷により第1軸部に対する第1ガイド溝、及び第2軸部に対する第2ガイド溝の各案内を伴って前記収容部内から収容部外へ退避する方向へ揺動して前記容器の径方向の動きを拘束する当接部材と、前記当接部材を突出方向へ付勢している付勢手段とを備えているカップホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記収容部の周囲に設けられて前記当接部材の一部を出没可能な開口部、及び前記開口部に対応して前記収容部の周囲外面に一体に突出形成した支持部を有し、
前記当接部材が前記支持部に対し前記第1ガイド溝に対する前記第1軸部の嵌合及び前記第2ガイド溝に対する前記第2軸部の嵌合を介し組み付けられることを特徴とするカップホルダ。
【請求項2】
前記支持部には前記第1軸部及び第2軸部が突設されると共に、前記当接部材には前記第1軸部が嵌合する略直線状の前記第1ガイド溝及び前記第2軸部が前記第1軸部を支点として回転可能に嵌合する非直線状の前記第2ガイド溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記支持部は、前記収容部の周囲外面のうち前記開口部の両側縁部に沿って突出形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカップホルダ。
【請求項4】
前記当接部材は前記開口部から突出する押圧子及び前記支持部の外側に配置される側板を一体に有していると共に、前記付勢手段はトーションバネでありその一端を前記押圧子の背面側に係止し、他端を前記支持部側に係止していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカップホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−89592(P2010−89592A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260209(P2008−260209)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】