説明

カップ式自動販売機のカップ廃棄装置

【課題】商品取出口部に放置された飲料入りのカップの廃棄を確保しながら、その廃棄時において、カップ内の飲料などが高く飛び散るのを抑制することができるカップ式自動販売機のカップ廃棄装置を提供する。
【解決手段】商品取出口部5に搬入されたカップCが放置されたときに、カップCを商品取出口部5から搬出し、廃棄するカップ式自動販売機のカップ廃棄装置であって、カップCの廃棄時に、カップホルダ22をカップ当接プレート45の付近に移動させ、カップホルダ22に保持されたカップCをカップ当接プレート45に当接させながら、カップホルダ22を所定方向に移動させることにより、カップCを前トレイ39a上に落下させ、その後、前トレイ39a上に落下したカップCを、可動レール33によって押圧し、カップ廃棄口42に送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーやジュースなどの飲料をカップに入れて販売するカップ式自動販売機に関し、特に、利用者による取り忘れなどによって商品取出口部に放置された飲料入りのカップを、商品取出口部から搬出し、廃棄するカップ式自動販売機のカップ廃棄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカップ廃棄装置として、例えば、本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。このカップ廃棄装置は、カップを搬送するカップ搬送機構と、廃棄されるカップを収容するカップ廃棄用容器と、このカップ廃棄用容器の上方に設けられたカップ廃棄部とを備えている。カップ搬送機構は、カップをカップステージ上に載置するとともに両側から把持した状態で保持するカップホルダを有しており、このカップホルダを前後左右に移動させることによって、カップを搬送する。また、カップ廃棄部は、カップホルダに保持されたカップを、カップホルダから離脱させるための左右2つのストッパと、これらのストッパとカップ廃棄用容器との間に設けられ、カップホルダから離脱したカップをカップ廃棄用容器に案内するシュートとを有している。両ストッパは、互いにカップの幅よりも狭い間隔を隔てて対向する位置と、後方から前方へのカップの通過を許容する位置との間で、各々が鉛直軸線回りに回動自在に構成されている。また、シュートは、横断面が矩形の筒から成り、下方に向かってテーパ状に形成されている。
【0003】
このように構成されたカップ廃棄装置は、販売時に、カップ搬送機構によって商品取出口部に搬入された飲料入りのカップが所定時間、放置されたときに、そのカップを次のようにして廃棄する。まず、商品取出口部に搬入したカップを保持するカップホルダを後退させることにより、商品取出口部からカップを搬出し、そのカップが両ストッパの後方に位置するよう、カップホルダを移動させる。次いで、カップホルダを前進させ、両ストッパをカップで押し開きながら、カップを両ストッパの前方に搬送する。そして、カップホルダを後退させる。この場合、カップホルダに保持されたカップは、両ストッパによって後方への移動が阻止され、それにより、カップがカップホルダから離脱し、落下する。この落下したカップは、シュートを介して、下方に案内され、カップ内の飲料とともにカップ廃棄用容器に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−122545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のカップ廃棄装置では、シュートやカップ廃棄用容器に対して比較的高い位置に位置するカップホルダからカップを落下させるため、そのカップが、シュートの傾斜した内面やカップ廃棄用容器内の底面に当たったときの衝撃により、カップ内の飲料が上方に高く飛び散ることがある。また、カップ廃棄用容器内に廃液となった飲料が溜まっている場合には、その飲料も上方に飛び散る。
【0006】
また、カップ式自動販売機では一般に、内部に多数の機器を内蔵し、それらの機器を限られたスペースに効率良く配置する必要がある。例えば、カップ廃棄部の上方に、販売時にカップをカップホルダに供給するカップ供給装置が配置されることがある。カップ供給装置の下端部には通常、カップが適正に供給されたか否かを検出するセンサが設けられている。しかし、上述したように、飲料入りのカップの廃棄時に、上方に飛び散った飲料が、上記センサに付着すると、カップ供給装置からカップが供給されたか否かを判別することが不能になることがあり、この場合、自動販売機における飲料商品の販売を継続できなくなるおそれがある。したがって、上記のカップ廃棄装置には、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、商品取出口部に放置された飲料入りのカップの廃棄を確保しながら、その廃棄時において、カップ内の飲料などが高く飛び散るのを抑制することができるカップ式自動販売機のカップ廃棄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、販売時に、カップを搬送しながらカップ内で飲料を調理し、カップを商品取出口部に背面側から搬入するカップ式自動販売機において、商品取出口部に搬入されたカップが放置されたときに、カップを商品取出口部から搬出し、廃棄するカップ式自動販売機のカップ廃棄装置であって、カップステージを有し、このカップステージにカップを載置した状態で保持するカップホルダと、このカップホルダを水平に移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを水平に搬送する水平搬送機構と、この水平搬送機構の下方に近接するように配置された平板状のトレイと、このトレイの側方に上下方向に貫通するように設けられたカップ廃棄口と、このカップ廃棄口の下方に配置され、カップ廃棄口から落下したカップを収容するカップ廃棄用容器と、トレイの上方に設けられ、廃棄すべきカップが当接することにより、カップを落下させるためのカップ当接部と、水平搬送機構を制御する制御手段と、を備えており、制御手段は、カップの廃棄時に、カップホルダをカップ当接部の付近に移動させ、カップホルダに保持されたカップをカップ当接部に当接させながら、カップホルダを所定方向に移動させることにより、カップをトレイ上に落下させ、その後、トレイ上に落下したカップを水平搬送機構によって押圧し、カップ廃棄口に送り出すことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、カップをカップステージに載置した状態で保持するカップホルダを、水平搬送機構によって移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを搬送する。販売時には、カップを搬送しながらカップ内で飲料を調理し、そのカップを商品取出口部に背面側から搬入する。この場合、商品取出口部に搬入されたカップが、利用者による取り忘れなどによって放置されると、次回の販売が行えなくなるので、そのカップを商品取出口部から搬出し、廃棄する。
【0010】
このカップの廃棄時には、制御手段によって水平搬送機構を制御することにより、まず、カップホルダをカップ当接部の付近に移動させる。すなわち、カップホルダに保持されているカップを、商品取出口部から搬出し、カップ当接部の付近に搬送する。次いで、そのカップをカップ当接部に当接させながら、カップホルダを所定方向に移動させ、それにより、カップをカップホルダのカップステージから離脱させ、トレイ上に落下させる。このトレイは、水平搬送機構の下方に近接するように配置されているため、従来に比べて、カップの落下距離が短く、したがって、カップ内の飲料の上方への飛び散りを抑制することができる。その後、トレイ上に落下したカップを、水平搬送機構によって押圧し、トレイの側方に設けられたカップ廃棄口に送り出す。これにより、カップは、カップ廃棄口から落下し、カップ廃棄用容器に収容され、カップの廃棄が完了する。
【0011】
以上のように、本発明によれば、カップホルダに保持されたカップを、カップホルダからカップ廃棄用容器に直接、落下させる従来に比べて、カップホルダからトレイ上に一旦落下させてから、カップ廃棄用容器に落下させるので、カップが一度に落下する距離を短くし、それにより、カップ内の飲料の上方への飛び散りを抑制することができる。したがって、本発明によれば、商品取出口部に放置された飲料入りのカップの廃棄を確保しながら、その廃棄時において、カップ内の飲料などが高く飛び散るのを抑制することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のカップ式自動販売機において、水平搬送機構は、前後方向に延びるとともに左右方向に移動自在の可動部を有し、カップホルダを可動部上において、その長さ方向に沿って移動させることにより、カップホルダに保持されるカップを前後方向に搬送する前後方向搬送機構と、可動部を左右方向に移動させることにより、カップホルダに保持されるカップを左右方向に搬送する左右方向搬送機構と、を有し、制御手段は、カップの廃棄時に、カップホルダに保持されたカップをカップ当接部に当接させながら、カップホルダを後方に移動させることにより、カップをカップステージから可動部上に落下させ、次いで、可動部上に落下したカップをカップ当接部に当接させながら、可動部をカップ廃棄口から離れる方向に移動させることにより、カップを可動部からトレイ上に落下させ、その後、可動部をカップ廃棄口に近づく方向に移動させることにより、トレイ上に落下したカップを可動部によって押圧し、カップ廃棄口に送り出すことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、水平搬送機構が、前後方向搬送機構および左右方向搬送機構を有している。前後方向搬送機構は、前後方向に延びるとともに左右方向に移動自在の可動部を有しており、この可動部上において、その長さ方向に沿ってカップホルダが移動し、これに保持されたカップを前後方向に搬送する。一方、左右方向搬送機構は、可動部を左右方向に移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを左右方向に搬送する。
【0014】
上記の水平搬送機構を備えたカップ廃棄装置では、カップの廃棄時に、カップホルダをカップ当接部の付近に移動させた後、カップホルダに保持されたカップをカップ当接部に当接させながら、カップホルダを後方に移動させる。これにより、カップが、カップホルダのカップステージから離脱し、可動部上に落下する。次いで、可動部上のカップをカップ当接部に当接させながら、可動部をカップ廃棄口から離れる方向に移動させる。これにより、カップが可動部から離脱し、トレイ上に落下する。この場合、カップは、トレイ上において、カップ廃棄口と可動部の間に位置する。その後、可動部をカップ廃棄口に近づく方向に移動させることにより、トレイ上のカップを可動部によって押圧し、カップ廃棄口に送り出す。これにより、カップは、カップ廃棄口から落下し、カップ廃棄用容器に収容される。
【0015】
以上のように、本発明によれば、カップホルダに保持されたカップを、カップステージから可動部上に落下させ、さらに可動部上のカップをトレイ上に落下させる。これにより、請求項1に係る発明に比べて、カップが一度に落下する距離を、より短くすることができ、カップ内の飲料の上方への飛び散りを、より一層抑制することができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のカップ式自動販売機のカップ廃棄装置であって、トレイは、カップ廃棄口に向かって前下がりに傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、飲料入りのカップがトレイ上に落下したときに、そのカップが倒れ、飲料がトレイ上にこぼれた場合でも、その飲料がカップ廃棄口に向かって流れ、そして、カップ廃棄口から流れ落ちて、カップ廃棄用容器に収容される。これにより、飲料がトレイ上に溜まるのを防止することができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ式自動販売機のカップ廃棄装置であって、カップ廃棄口から下方に延びるように設けられ、カップ廃棄口に送り出されたカップをカップ廃棄用容器に案内するカップ廃棄用シュートを、さらに備えていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、カップ廃棄口に送り出されたカップを、カップ廃棄用シュートを介して案内し、カップ廃棄用容器に簡単かつ確実に収容することができる。また、カップ内の飲料がトレイ上にこぼれ、カップ廃棄口に流れた場合、その飲料が、カップ廃棄用シュートを伝って流れ落ち、カップ廃棄用容器に収容される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるカップ廃棄装置を適用したカップ式自動販売機を示す正面図である。
【図2】カップ搬入スペース画成部を示す斜視図である。
【図3】カップ搬入スペース画成部を示しており、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のc−c線に沿う断面図である。
【図4】カップ搬送装置およびその周辺を示しており、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図5】カップホルダを示しており、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図6】カップホルダのカップステージの昇降動作を説明するための説明図である。
【図7】カップ搬送装置によるカップの搬送動作を説明するための説明図であって、(a)は平面図、(b)はカップホルダおよびその周辺を示す側面図であり、商品取出口部へのカップの搬入直前の状態を示している。
【図8】図7と同様の説明図であり、販売時に、カップホルダが販売位置に停止し、カップを商品取出口部に搬入した状態を示している。
【図9】図7と同様の説明図であり、テスト販売時に、カップホルダがテスト販売位置に停止した状態を示している。
【図10】商品取出口部に放置されたカップの廃棄処理を順に説明するための説明図である。
【図11】図10に続く説明図である。
【図12】図11に続く説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるカップ廃棄装置を適用したカップ式自動販売機を示している。この自動販売機1は、コーヒーやジュースなどの飲料をカップCに入れて販売するものであり、前面が開口した縦長ボックス状の販売機本体2(図4(b)参照)と、その前側に、左端部に設けられたヒンジ(図示せず)を介して鉛直軸線回りに回動自在に設けられ、販売機本体2の前面を開閉するメインドア3とを備えている。
【0022】
図1に示すように、メインドア3の上部には、販売される複数種類の飲料商品をそれぞれ表示する複数の商品プレート4が並設され、各商品プレート4の下部に商品選択ボタン4aが設けられている。また、メインドア3の中央付近には、自動販売機1の利用者が飲料入りのカップCを取り出すための商品取出口部5が設けられている。さらに、メインドア3には、商品取出口部5の右上に、紙幣を挿入するための紙幣挿入部6、硬貨を投入するための硬貨投入口7、および硬貨返却レバー8が設けられ、商品取出口部5の右下に、硬貨返却口9が設けられている。
【0023】
また、メインドア3の商品取出口部5は、前方に開口し、正面形状が矩形の取出口11と、この取出口11の背面側に設けられ、飲料入りのカップCが搬入されるスペースを画成するカップ搬入スペース画成部12とを有している。取出口11は、扉11aによって開閉されるようになっている。この扉11aは、販売待機時にロックされた状態で閉鎖されており、販売時の飲料提供時、すなわちカップCが商品取出口部5に搬入されたときに、ロックが解除されて自動的に開放され、その後、カップCが取り出されたときに自動的に閉鎖される。
【0024】
図2および図3に示すように、カップ搬入スペース画成部12は、背壁13、左右の側壁14、14および底壁15を有し、前面および上面が開放するボックス状に形成されている。背壁13には、前後方向に貫通する所定形状のカップ搬入口13aが形成されている。また、左右の側壁14、14には、互いに対向する発光素子および受光素子からなる光センサで構成されたカップセンサ14a、14aが設けられている。これらのカップセンサ14a、14aにより、商品取出口部5にカップCが存在するか否かが検出される。加えて、各側壁14の前端部には、上下2つの長孔状の取付け孔14b、14bが設けられており、これらの取付け孔14bを介して、カップ搬入スペース画成部12がメインドア3にねじ止めされている。また、底壁15には、その上面よりも一段低く、背壁13のカップ搬入口13aに連なる凹部15aが形成されている。
【0025】
図4は、カップCを搬送するカップ搬送装置21およびその周辺を示している。このカップ搬送装置21は、販売機本体2内に、メインドア3の商品取出口部5とほぼ同じ高さに設置されている。同図に示すように、カップ搬送装置21は、カップCを保持するカップホルダ22と、このカップホルダ22を前後左右に水平に移動させることにより、カップホルダ22に保持されたカップCを水平に移動させる水平搬送機構23と、これらを制御するマイクロコンピュータを有する制御装置(制御手段、図示せず)とを備えている。
【0026】
図4および図5に示すように、カップホルダ22は、ボックス状に形成されたケース24aを有する本体部24と、この本体部24のケース24aの下端部から前方に突出するように設けられ、カップCを載置した状態で支持するカップステージ25と、ケース24aの上端部から前方に突出するように設けられ、カップステージ25に載置されたカップCを両側から把持した状態で支持する左右2つの把持アーム26、26とを有している。
【0027】
カップステージ25は、平面形状が矩形の簀の子状に形成されており、本体部24内に設けられたカップステージ駆動機構(図示せず)により、図6に示すように、昇降駆動されるように構成されている。また、カップステージ25の基部25aには、下方に突出し、カップホルダ22を後述する販売位置およびテスト販売位置にロックするためのロック凸部25bが設けられている。このロック凸部25bは、図6に示すように、カップステージ25と一体に昇降するように構成されており、カップステージ25が最下位に位置するときには、本体部24の底面から下方に突出する。
【0028】
一方、左右の把持アーム26、26は、互いに左右方向に間隔を隔てて前後方向に延びるとともに、互いに反対方向に凸に湾曲するように形成されている。また、各把持アーム26は、本体部24内に設けられた把持アーム駆動機構(図示せず)により、基部26aにおいて鉛直軸線回りに回動駆動されるように構成されている。したがって、両把持アーム26、26が互いに近づくように回動することにより、カップステージ25に載置されたカップCを両側から挟むように把持し、両把持アーム26、26が互いに離れるように回動することにより、カップCを解放する。
【0029】
水平搬送機構23は、カップホルダ22を下方から支持した状態で、これを前後方向に水平に移動させることにより、カップホルダ22に保持されたカップCを前後方向に水平に搬送する前後方向搬送機構31と、この前後方向搬送機構31を下方から支持した状態で、カップホルダ22とともに左右方向に水平に移動させることにより、カップホルダ22に保持されたカップCを左右方向に水平に搬送する左右方向搬送機構32とを備えている。
【0030】
前後方向搬送機構31は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって構成され、前後方向に所定長さ延びるボックス状の可動レール33(可動部)を有している。図示は省略するが、この可動レール33内には、前端部および後端部に配置された前後2つのプーリ、およびこれらに巻き掛けられるとともに、カップホルダ22に連結された無端のタイミングベルトが設けられている。可動レール33の後端部には、ステッピングモータを内蔵するモータボックス34が設けられており、そのモータによって、後ろ側のプーリが回転駆動されることにより、タイミングベルトが回転し、それに伴い、カップホルダ22が、可動レール33上をこれに沿って前後方向に移動する。
【0031】
また、可動レール33の上面前端部の所定位置には、カップホルダ22の前記ロック凸部25bを係止することにより、カップホルダ22を販売位置およびテスト販売位置にそれぞれロックするための前ストッパ35aおよび後ストッパ35bが設けられている。これらのストッパ35a、35bは、互いに前後方向に所定間隔を隔てて配置され、いずれも可動レール33の上面に所定高さ突出するように固定されている。
【0032】
また、可動レール33は、前側の所定部分が左右方向搬送機構32で下方から支持されるとともに、後端部が左右方向に延びる後レール部36に、図示しないローラを介して、摺動自在に係合している。
【0033】
左右方向搬送機構32は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって構成され、左右方向に所定長さ延びるボックス状の固定レール37を有している。図示は省略するが、この固定レール37内には、左端部および右端部に配置された左右2つのプーリ、およびこれらに巻き掛けられるとともに、可動レール33に連結された無端のタイミングベルトが設けられている。固定レール37の左端部には、ステッピングモータを内蔵するモータボックス38が設けられており、そのモータによって、左側のプーリが回転駆動されることにより、タイミングベルトが回転し、それに伴い、可動レール33が、カップホルダ22とともに、固定レール37上をこれに沿って左右方向に移動する。
【0034】
以上のように構成されたカップ搬送装置21の下方には、固定レール37の下面に近接するように、金属板からなる平板状のパウダトレイ39が設けられている。このパウダトレイ39は、飲料調理用の粉末原料や液体(湯水や飲料)が、販売機本体2内の下部に配置された機器などに落下するのを防止するためのものであり、固定レール37の前後にそれぞれ配置された前トレイ39a(トレイ)および後トレイ39bで構成されている。前トレイ39aは、前後端部および左端部が上方に屈曲されており、また、右方に向かって前下がりに若干傾斜するように配置されている。
【0035】
また、前トレイ39aの右側には、販売時に、利用者の取り忘れなどによって商品取出口部5に放置された飲料入りのカップCを廃棄するためのカップ廃棄部41が設けられている。このカップ廃棄部41は、上下方向に貫通するカップ廃棄口42と、このカップ廃棄口42の下方に配置され、カップ廃棄口42から落下したカップCおよびそのカップC内の飲料を収容する廃棄用バケツ43(カップ廃棄用容器)と、カップ廃棄口42から下方に延びる筒状に形成され、廃棄されるカップCおよびそのカップC内の飲料を廃棄用バケツ43に案内する廃棄用シュート44(カップ廃棄用シュート)と、カップCの廃棄時に、カップCを当接させるカップ当接プレート45(カップ当接部)などを備えている。
【0036】
カップ当接プレート45は、所定形状の金属板を折曲げ加工や互いに組み付けることなどによって構成されており、販売機本体2の右側壁の内面にねじ止めによって固定されている。このカップ当接プレート45は、カップ廃棄口42の前端付近に起立するように配置された起立部45aと、この起立部45aの左上端部から左斜め後方に所定長さ延びる左当接部45bと、この左当接部45bの後端部から右方に所定長さ延びる後当接部45cとを有している。このカップ当接プレート45の左当接部45bおよび後当接部45cは、前トレイ39aの上方、より具体的には、カップホルダ22のカップステージ25と把持アーム26との間の高さに位置している。
【0037】
なお、図示は省略するが、販売機本体2内の後トレイ39bの上方には、各種の飲料を調理するための複数の粉末原料を供給する複数のキャニスタが、左右方向に並設されている。また、販売機本体2内のカップ廃棄口42の上方には、多数のカップを積み重なった状態で収納するとともに、販売時に最下位のカップを一つずつ下方に払い出し、カップホルダ22に供給するカップ供給装置が設置されている。なお、このカップ供給装置の下端部には通常、光センサで構成され、カップの払い出しの有無を検出するためのカップ払出しセンサなどが設けられている。
【0038】
次に、図7〜図9を参照して、販売時およびテスト販売時におけるカップ搬送装置21によるカップCの搬送動作について説明する。販売時に、利用者によって所望の飲料が選択されると、カップホルダ22がカップ供給装置の下方に移動し、供給されたカップCを、カップステージ25に載置するとともに両側から把持アーム26、26で把持することによって保持する。次いで、カップホルダ22が、前後左右に移動しながら、選択された飲料に応じて、所定の原料供給位置や飲料供給位置などに順に停止し、カップC内で飲料を調理する。そして、飲料の調理完了後、カップCを、メインドア3の商品取出口部5に背面側から搬入する。
【0039】
図7は、商品取出口部5へのカップCの搬入直前の状態を示している。同図に示すように、カップホルダ22が移動しながらカップCを搬送する場合、カップホルダ22の本体部24は、その底面が前ストッパ35aおよび後ストッパ35bよりも若干高く、可動レール33の上面から浮いた状態で移動する。また、カップホルダ22のカップステージ25は、最下位よりも若干高く、その基部25aに設けられたロック凸部25bが、本体部24内に収容された状態で、その底面よりも高い位置に位置している。さらに、前後方向搬送機構31の可動レール33は、商品取出口部5の真後ろに位置している。
【0040】
上述した図7に示す状態から、カップホルダ22は、前方に移動し、図8に示すように、カップCを商品取出口部5に背面側から搬入して、可動レール33の前端付近の販売位置に停止する。具体的には、カップホルダ22のカップステージ25および両把持アーム26、26が、カップ搬入スペース画成部12のカップ搬入口13aを介して、商品取出口部5に入り込んだ状態で、カップCを搬入する。その後、カップステージ25が、カップCを載置した状態のまま、最下位に下降する。これに伴い、ロック凸部25bが、本体部24の下面から突出し、前ストッパ35aの直ぐ前側に位置する。そして、前述したように、商品取出口部5の扉11aが自動的に開放し、飲料入りのカップCが利用者に提供される。
【0041】
この場合、例えば、カップホルダ22を後方に押し込み、商品取出口部5よりも奥側に手や物を入れるなどのいたずらが行われようとしても、カップホルダ22のロック凸部25bが、可動レール33の前ストッパ35aに前方から当接する。したがって、カップホルダ22は、後方への移動が阻止された状態で販売位置にロックされ、これにより、上記のようないたずらを防止することができる。
【0042】
また、この自動販売機1では、一般的なカップ式自動販売機と同様、オペレータがメインドア3を開放して、メンテナンスや原料補充などを行った後、自動販売機1が適正に動作するか否かを確認するためのテスト販売が行われる。このテスト販売では、メインドア3が開放されていること、およびテスト販売終了時のカップホルダ22の停止位置の制御以外は、各種機器が通常の販売時と同じ動作を行う。
【0043】
すなわち、テスト販売時には、販売時と同様にして、カップホルダ22が移動しながら、それに保持されたカップC内で飲料が調理される。そして、カップホルダ22が、前述した図7に示す状態から、前方に移動し、可動レール33の前端から後方に所定距離、離れたテスト販売位置に停止する。図9は、カップホルダ22がテスト販売位置に停止した、テスト販売終了時の状態を示している。なお、テスト販売時は、メインドア3が開放された状態で行われるが、図9では、カップホルダ22とメインドア3のカップ搬入スペース画成部12との位置関係を示すために、メインドア3が閉鎖された状態を示している。
【0044】
図9に示すように、テスト販売終了時には、カップステージ25および両把持アーム26、26が、商品取出口部5の背面、すなわちカップ搬入スペース12の背壁13よりも後ろ側に位置するように、カップホルダ22が停止する。その後、カップステージ25は、販売時と同様、最下位に下降する。これに伴い、ロック凸部25bが、本体部24の下面から突出し、後ストッパ35bの直ぐ後ろ側に位置する。これにより、カップホルダ22は、前方への移動が阻止された状態でテスト販売位置にロックされる。なお、テスト販売の終了後、オペレータにより、飲料入りのカップCがカップホルダ22から取り外され、廃棄用バケツ43に廃棄される。
【0045】
次に、図10〜図12を参照して、販売時に飲料入りのカップCが商品取出口部5に搬入された後、利用者による取り忘れなどによって商品取出口部5に放置されたカップCの廃棄処理について説明する。
【0046】
図10(a)は、カップホルダ22が販売位置に停止し、カップCを商品取出口部5に搬入した状態を示している。商品取出口部5の扉11aが開放した後、カップCが所定時間、取り出されず、そのことがカップセンサ14a、14aによって検出されると、カップCが商品取出口部5に放置されているとして、廃棄処理が実行される。
【0047】
まず、扉11aが閉鎖してロックされた後、カップステージ25が若干上昇し、それに伴い、ロック凸部25bがカップホルダ22の本体部24内に退避する。その後、図10(b)に示すように、カップホルダ22が後方に移動する。具体的には、カップホルダ22は、カップ廃棄部41のカップ当接プレート45の後端よりも後ろ側まで移動し、停止する。次いで、同図(c)に示すように、可動レール33が右方に移動する。具体的には、可動レール33は、カップ当接プレート45の後当接部45cよりも右方に移動し、停止する。
【0048】
次いで、図11(a)に示すように、カップホルダ22が前方に移動する。具体的には、カップホルダ22は、カップCがカップ当接プレート45の後当接部45cよりも前側に位置し、かつ本体部24が後当接部45cよりも後ろ側に位置するように、前方に移動し、停止する。次いで、同図(b)に示すように、可動レール33が左方に移動する。具体的には、可動レール33は、カップCがカップ当接プレート45の左当接部45bに近接するように左方に移動し、停止する。
【0049】
そして、カップホルダ22の両把持アーム26、26が互いに離れるように開き、カップCを解放した後、図11(c)に示すように、カップホルダ22が後方に移動する。具体的には、カップホルダ22は、カップ当接プレート45の後当接部45cよりも後ろ側まで移動し、停止する。この場合、カップステージ25に載置されていたカップCは、後当接部45cに当接し、後方への移動が阻止されることにより、カップステージ25から可動レール33上に落下する。
【0050】
次いで、図12(a)に示すように、可動レール33が左方に移動する。具体的には、可動レール33は、カップ当接プレート45の左当接部45bおよび後当接部45cよりも左方に移動し、停止する。この場合、可動レール33上のカップCは、左当接部45cに当接し、左方への移動が阻止されることにより、可動レール33からパウダトレイ39の前トレイ39a上に落下する。
【0051】
またこの場合、カップCが可動レール33から前トレイ39a上に落下する際に、そのカップCは、図12(b)に示すように、倒れた状態で、前トレイ39a上に落下することが多い。このようにカップCが前トレイ39a上で倒れた場合には、カップCの開口部が前トレイ39aの右方、すなわちカップ廃棄口42側に向き、カップC内の飲料がカップ廃棄口42側に流れる。前述したように、前トレイ39aは、右方に前下がりに傾斜しているので、前トレイ39a上にこぼれた飲料は、カップ廃棄口42側に流れ、廃棄用シュート44の内面を伝って流れ落ち、廃棄用バケツ43に収容される。これにより、飲料が前トレイ39上に溜まるのを防止することができる。
【0052】
その後、図12(c)に示すように、可動レール33が右方に移動する。具体的には、可動レール33は、カップ廃棄口42付近まで移動し、前トレイ39a上のカップCを押圧しながら、カップ廃棄口42に送り出す。そして、そのカップCは、カップ廃棄口42から落下し、廃棄用シュート44で案内されて、廃棄用バケツ43に収容される。以上により、カップCの廃棄処理が終了する。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、販売時における飲料の提供時には、カップホルダ22を、カップステージ25および両把持アーム26、26がカップCとともに商品取出口部5に進入した販売位置に停止させる。一方、テスト販売時における終了時には、カップホルダ22を、カップステージ25および両把持アーム26、26が商品取出口部5の背面(カップ搬入スペース画成部12の背壁13)よりも後ろ側に位置するテスト販売位置に停止させる。しかも、このテスト販売位置に停止したカップホルダ22は、カップホルダ22側のロック凸部25bおよび可動レール33側の後ストッパ35bにより、前方への移動が阻止された状態にロックされる。したがって、メインドア3を開放した状態で、テスト販売が終了した後、オペレータがカップホルダ22に触れても、カップホルダ22が前方へ移動することがないので、テスト販売終了後にメインドア3を閉鎖しても、カップホルダ22のカップステージ25や把持アーム26と、メインドア3側のカップ搬入スペース画成部12との衝突を確実に回避でき、それにより、それらの破損を確実に防止することができる。
【0054】
また、商品取出口部5に放置されたカップCの廃棄時には、そのカップCを、カップ搬送装置21でカップ廃棄部41側に搬送し、カップ当接プレート45を利用して、カップホルダ22のカップステージ25から可動レール33上に落下させ、さらに可動レール33からパウダトレイ39の前トレイ39a上に落下させる。そして、前トレイ39a上のカップCを、カップ廃棄口42に送り出し、廃棄用シュート44で案内しながら落下させ、廃棄用バケツ43に収容する。このように、カップホルダ22に保持されたカップCを、前トレイ39a上に一旦落下させてから、廃棄用バケツ43に落下させるので、カップホルダ22から廃棄用バケツ43に直接、落下させる場合に比べて、カップCが一度に落下する距離を短くでき、それにより、カップC内の飲料の上方への飛び散りを抑制することができる。その結果、カップCの廃棄時に飛び散る飲料が、カップ供給装置のカップ払出しセンサなどに付着するのを防止でき、自動販売機1における飲料商品の販売継続を確保することができる。
【0055】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、カップホルダ22に保持されたカップCを前トレイ39a上に落下させる際に、可動レール33上に一旦、落下させるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カップCをカップホルダ22から前トレイ39aに直接、落下させるようにしてもよい。この場合、カップホルダ22に保持されたカップCの廃棄時に、カップCが両把持アーム26、26から容易に離脱可能な状態にするとともに、図11(c)および図12(a)にそれぞれ示したカップホルダ22および可動レール33の動作を同時に行うよう、カップ搬送装置21を制御する。
【0056】
また、実施形態で示したカップ搬送装置21のカップホルダ22および水平搬送機構23や、カップ廃棄部41のカップ当接プレート45の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 カップ式自動販売機
5 商品取出口部
12 カップ搬入スペース画成部
21 カップ搬送装置
22 カップホルダ
23 水平搬送機構
25 カップステージ
31 前後方向搬送機構
32 左右方向搬送機構
33 可動レール(可動部)
39a 前トレイ(トレイ)
41 カップ廃棄部
42 カップ廃棄口
43 廃棄用バケツ(カップ廃棄用容器)
44 廃棄用シュート(カップ廃棄用シュート)
45 カップ当接プレート(カップ当接部)
45b 左当接部
45c 後当接部
C カップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
販売時に、カップを搬送しながらカップ内で飲料を調理し、当該カップを商品取出口部に背面側から搬入するカップ式自動販売機において、前記商品取出口部に搬入されたカップが放置されたときに、当該カップを前記商品取出口部から搬出し、廃棄するカップ式自動販売機のカップ廃棄装置であって、
カップステージを有し、このカップステージにカップを載置した状態で保持するカップホルダと、
このカップホルダを水平に移動させることにより、当該カップホルダに保持されたカップを水平に搬送する水平搬送機構と、
この水平搬送機構の下方に近接するように配置された平板状のトレイと、
このトレイの側方に上下方向に貫通するように設けられたカップ廃棄口と、
このカップ廃棄口の下方に配置され、当該カップ廃棄口から落下したカップを収容するカップ廃棄用容器と、
前記トレイの上方に設けられ、廃棄すべきカップが当接することにより、当該カップを落下させるためのカップ当接部と、
前記水平搬送機構を制御する制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、カップの廃棄時に、前記カップホルダを前記カップ当接部の付近に移動させ、当該カップホルダに保持されたカップを前記カップ当接部に当接させながら、前記カップホルダを所定方向に移動させることにより、前記カップを前記トレイ上に落下させ、その後、当該トレイ上に落下したカップを、前記水平搬送機構によって押圧し、前記カップ廃棄口に送り出すことを特徴とするカップ式自動販売機のカップ廃棄装置。
【請求項2】
前記水平搬送機構は、
前後方向に延びるとともに左右方向に移動自在の可動部を有し、前記カップホルダを当該可動部上において、その長さ方向に沿って移動させることにより、当該カップホルダに保持されるカップを前後方向に搬送する前後方向搬送機構と、
前記可動部を左右方向に移動させることにより、前記カップホルダに保持されるカップを左右方向に搬送する左右方向搬送機構と、を有し、
前記制御手段は、カップの廃棄時に、前記カップホルダに保持されたカップを前記カップ当接部に当接させながら、前記カップホルダを後方に移動させることにより、前記カップを前記カップステージから前記可動部上に落下させ、次いで、当該可動部上に落下したカップを前記カップ当接部に当接させながら、前記可動部を前記カップ廃棄口から離れる方向に移動させることにより、前記カップを前記可動部から前記トレイ上に落下させ、その後、当該可動部を前記カップ廃棄口に近づく方向に移動させることにより、前記トレイ上に落下したカップを前記可動部によって押圧し、前記カップ廃棄口に送り出すことを特徴とする請求項1に記載のカップ式自動販売機のカップ廃棄装置。
【請求項3】
前記トレイは、前記カップ廃棄口に向かって前下がりに傾斜するように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカップ式自動販売機のカップ廃棄装置。
【請求項4】
前記カップ廃棄口から下方に延びるように設けられ、当該カップ廃棄口に送り出されたカップを前記カップ廃棄用容器に案内するカップ廃棄用シュートを、さらに備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ式自動販売機のカップ廃棄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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