説明

カップ部を有する衣類

【課題】 30歳代後半から40歳代の女性のバストに多い、柔らかくなって重力により下垂して上部に削げが生じたバストであっても、カップ部がバストに十分にフィットして、かつ造形性を高めることができるブラジャー等のカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】 補助カップ3は、本体カップ2の表面に、上下方向においては本体カップ2における少なくとも下カップ部22,23の中途から本体カップ上辺2aまでを覆い、左右方向においては本体カップ2の前中心部から脇端辺2cまでを覆うようにして被覆され、補助カップ3と本体カップ2とは、両カップの前中心部及び脇端辺において互いに逢着されており、補助カップ3の脇上端部は、本体カップ3の脇上端部と肩紐6との縫着部2Nを上方に越えた位置で肩紐6に縫着され、かつ補助カップ3の上辺における少なくとも肩紐6との縫着部に隣接する部分は、本体カップ2と遊離していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、特にカップ部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブラジャー等のカップ部を有する衣類においては、バストの形状を補整しかつ着用感に優れたものとするために、種々の工夫がなされてきた。
その中には、特許文献1、特許文献2のように、カップ部の表側に補助的な布片を取り付けて、バストの造形性を高めようとする技術が存在する。
例えば、特許文献1においては、カップの表側に補強布を重ねて設け、その下辺はカップに結合し、上端は肩紐に取り付けて、補強布が肩紐によって引かれることで、カップを前中央に引き寄せて、バストを寄せ上げる技術が開示されている。
また、特許文献2には、カップの表側に分離カップをバストトップからカップ下辺までを覆うように設け、分離カップにおけるカップ下部の上下方向中央部を強パワーとするとともに、分離カップ上端を肩紐に取り付けて、肩紐によって分離カップが引かれてバストが中央に寄せ上げられる際に、バストの全重量が肩紐に加わらないようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−154326号公報
【特許文献2】特開2005−281920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの特許文献1,2に記載の技術においては、バストを効果的に中心部に引き寄せかつ引き上げることで造形性を高めることができ、また、その際に特許文献2においては肩紐を介して肩に掛かる力が過重にならず着用感を改善することができる。
ところが、一般的に、30歳代後半から40歳代の女性のバストは、柔らかくなって重力により下垂して上部に削げが生じている。このようなバストの場合、従来の造形性を高めたブラジャーを使用して、脇側から前中心側やバストトップに向けて力を加えても、バスト上部までは必ずしも十分にボリュームを満たすことができなかった。
そのため、カップ上部がバストから離れて浮き上がってしまう現象である「浮き」が生じてしまい、カップがバストにフィットせず、バストの造形においても着用感においても満足できない問題があった。特に、この傾向は、フルカップブラジャーに比べてバストの寄せ上げ機能が高いとされる3/4カップブラジャー等に顕著である。
そして、補助布を用いてバストの寄せ上げを補助するものである特許文献1や特許文献2の技術も、前記のような問題を解決するものではなかった。
【0004】
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたもので、30歳代後半から40歳代の女性のバストに多い、柔らかくなって重力により下垂して上部に削げが生じたバストであっても、カップ部がバストに十分にフィットして、かつ造形性を高めることができるブラジャー等のカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るカップ部を有する衣類は、本体カップと補助カップからなるカップ部を有する衣類であって、補助カップは、本体カップの表面に、上下方向においては本体カップにおける少なくとも下カップ部の中途から本体カップ上辺までを覆い、左右方向においては本体カップの前中心部から脇端辺までを覆うようにして被覆され、補助カップと本体カップとは、両カップの前中心部及び脇端辺において互いに逢着されており、補助カップの脇上端部は、本体カップの脇上端部と肩紐との縫着部を上方に越えた位置で肩紐に縫着され、かつ補助カップの上辺における少なくとも肩紐との縫着部に隣接する部分は、本体カップと遊離していることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、本体カップの表側に被覆された補助カップが、前中心部は本体カップの前中心部に縫着されており、一方、補助カップの脇上端部はカップ本体とは別になっていて、本体カップの脇上端部と肩紐との縫着部を上方に越えた位置で肩紐に縫着され、かつ補助カップの上辺における少なくとも肩紐との縫着部に隣接する部分は、本体カップと遊離している。そのため、着用時に、補助カップの上辺における少なくとも肩紐との縫着部に隣接する部分は、本体カップとは遊離した状態で肩紐によって斜め上の方向に引き上げられる。
その際、補助カップは本体カップの上辺までを覆っていることから、補助カップの上部が本体カップの上部を抑えることになり、本体カップ上部がバストから浮くことを抑制することができる。
【0007】
さらに、補助カップと本体カップとは、左右方向においては前中心部と脇端辺が縫着された状態で、かつ補助カップは本体カップの少なくとも下カップ部の中途から上を覆っていることから、本体カップと補助カップの両方がそれぞれバック方向に緊締された上で、肩紐によって斜め上の方向に引き上げられることで、バストがトップ方向に寄せ上げられる。
なお、下垂したバストの場合、バストの下辺から持ち上げるよりは、むしろ、中途から上方に押圧する方が補整に効果的である。
そして、このように本体カップが本来備えているバストの造形機能と補助カップによる造形機能によって、バストが補整された際に、前記のとおり、補助カップの作用によって本体カップ上部がバストから浮くことが抑制されるから、従来のように、フィット感やバストの造形が低下することがない。
【0008】
また、本発明において、補助カップの下部は上部よりも伸縮しないものである場合は、補助カップによるバストの寄せ上げ作用はより強力なものとすることができる。
【0009】
また、本発明において、補助カップと本体カップとの前中心部における縫着は、カップワイヤー部の前中心側端部を含む箇所において縫着されている。
その場合、補助カップが肩紐による引張り力の作用を受ける際の本体カップとの固定部が、カップワイヤー部であることから、十分な支持力を有し、補助カップの肩紐によって引き上げられる作用がより十分に達成できる。
【0010】
また、本発明において、補助カップの脇端辺の下部が、土台布とバック布との縫着部まで延びて縫着されている場合は、補助カップは、土台布とバック布との縫着部である強固で安定した箇所でしかもバック布によるバック方向への引張りが作用する箇所に直接結合されていることから、より強力にバストを安定的に緊締することができる。
【0011】
また、本発明において、補助カップの下辺は、バストトップからカップワイヤー部の最下部までの3分の2の位置から20%上下の範囲内を通る。
その場合、下垂したバストについては、バストの下辺から持ち上げるよりは、むしろ、中途から上方に押圧する方が効果的であることから、補助カップの下辺が、バストトップからカップワイヤー部の最下部までの3分の2の位置から20%上下の範囲内に位置することで、バストを上げるのに効果的な、トップからほぼ3分の2あたりから上のバストに対して寄せ上げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、30歳代後半から40歳代の女性のバストに多い、柔らかくなって重力により下垂して上部に削げが生じたバストであっても、カップ部がバストに十分にフィットして、かつ造形性を高めることができるブラジャー等のカップ部を有する衣類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明によるカップ部を有する衣類の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の3/4カップのブラジャー1を、補助カップ3を分離した状態で表側から見た斜視図である。図2は、補助カップ3を取り付けたブラジャー1の表側の斜視図である。また、図3は、図2に示すブラジャー1を裏から見た図である。なお、ブラジャー1は、補助カップ3も含めて左右対称であるため、左右の一方のみによって説明する。
図1のとおり、本体カップ2は、上カップ部21、第1下カップ部22、第2下カップ部23、脇カップ部24からなり、これらを接ぎ合わせライン2L1〜2L3に沿って接ぎ合わせることで、バストトップ2Tを頂部とするカップ状の立体形状に形成されている。
本体カップ2の脇から下部にかけて、非伸縮性の土台布4が逢着され、本体カップ2はそれによって支持されている。
さらに、土台布4の脇側には伸縮性のバック布5が縫着されている。
また、本体カップ2の脇上端には、強い伸縮力の肩紐6の端部が、縫着部2Nにおいて縫着されている。
【0014】
図3に示すように、本体カップ2の下辺2bと土台布4との境界、すなわちバージスラインに沿って、裏側には厚手の布からなるテープ7tが縫着されており、その中にカップワイヤー71が装着されている。これらによって、カップワイヤー部7が形成されている。
本体カップ2の各部を接ぎ合わせた接ぎ合わせライン2L1〜2L3の裏面には、薄手のテープ2t1〜2t3が縫着されている(2L2の裏面の2t2は図示せず)。
本体カップ2の裏面すなわち肌側には、バストの造形をより高めるためにパッド8が、テープ2t1と7t内に、それぞれ上辺及び下辺を縫い合わされて取り付けられている。
また、土台布4とバック布5との縫着部9の裏面には、テープ9tが縫着され、その中に補強材である脇ボーン91が装着されている。
また、土台布4とバック布5の下辺全長に渡って、伸縮性のテープ10t1が縫着され、バック布5と土台布4の上辺全長から、本体カップ2の脇端辺2cに渡って同じく伸縮性のテープ10t2が縫着されている。なお、裏面においては、左右の本体カップ2の間の前中心部においても、テープ10t3、10t4が縫着されている。
【0015】
ここで、本体カップ2を、前記のように各部21〜24を接ぎ合わせて形成せず、一体的に作製することも可能である。また、パッド8、カップワイヤー71、脇ボーン91については、必ずしも備えなくてもよい。
ただし、補助カップ3を取り付ける前の本体カップ2からなるブラジャーは、バストの造形機能を有するものであることが必要である。
【0016】
次に、補助カップ3について、図1〜4によって説明する。
補助カップ3は、本体カップ2の下カップ部22,23の上側のほぼ3分の2と、上カップ部21と脇カップ部24の全部又は大部分を覆うように形成されている。補助カップ3の形状としては、本体カップ2のそれらの部分を合わせた形状に、台形状の脇上端部33を加えた形状をなしている。
そして、立体的には、本体カップ2の形状に沿うようにされている。そのために、本体カップ2の接ぎ合わせライン2L1に沿って、接ぎ合わせライン3L1が形成されている。本実施形態においては、補助カップ3の上部31は、下部32に比べて伸縮性を有するレース地の布を用いて形成されている。そして、前中心側辺3cから脇側の中途までに切り込みを入れた後に寄せ合わせて接いでおり、本体カップ2の接ぎ合わせライン2L1に合わせた接ぎ合わせライン3L1を構成し、本体カップ2の表面側に沿う立体形状にされている。
また、補助カップ3の下部32は、バストに対して寄せ上げる力を加えるのに適すように、非伸縮性又は伸縮性の少ない、パワーの強いレース地の布を用いて、上部31に接ぎ合わせライン3L2において縫合している。
ここで、補助カップ上部31と下部32とは、それぞれ、相対的にパワーの弱い布とパワーの強い布であって、それらを縫合しているが、1枚の布において、3L2の部分でパワーを切り替えた生地を用いてもよい。布地に伸縮パワーの強弱をつけるには、弾性力の異なる糸、例えば太さの異なるポリウレタン糸によって各領域を編成すること、挿入する弾性糸の本数を各領域によって異ならせること、編組織をそれぞれの領域で異ならせること等によってなすことができる。
【0017】
図4は、補助カップ3を裏から見た図である。
補助カップ3の脇上端部33における脇斜め上辺3eには、伸縮性のテープ3t1が縫着されており、肩紐6による引張力の上辺への伝達を補助している。
なお、本明細書においては、補助カップ3の上辺とは、本体カップ2の上辺2aと合致する箇所に3aの符号を付けて示す上辺3aに、脇斜め上辺3eを合わせたものを意味している。
また、脇上端部33の脇端辺3d2からさらに下部の脇端辺3d1にかけても、同様にテープ3t2が縫着されている。
【0018】
図2に、このような補助カップ3を本体カップ2の表面に取り付けて完成したブラジャー1を示す。
補助カップ3は、その上辺3aを本体カップ2の上辺2aと合致させ、そこから、本体カップ2の下カップ部22,23の上側のほぼ3分の2までを被覆している。ここで、補助カップ3の上辺3aは、少なくとも本体カップ2の上辺2までに達していることが必要であるが、美観を向上させる等のために、さらに上方にまで形成されていてもよい。
そして、補助カップ3の前中心部である前中心側辺3c上端部を、本体カップ2の前中心部に相当するカップワイヤー部7の前中心側端部7P1に合わせて、前中心側辺3cをカップワイヤー部7に沿って縫着している。
このように、補助カップ3の前中心側辺3cの全長をカップワイヤー部7に縫着して、縫着部3N1としている。しかし、肩紐6からの引張力によって本体カップ2の上部を抑える機能を果たすためには、補助カップ3の前中心部が本体カップ2の前中心部に強度上しっかりと連結されていることが肝要であり、そのためには、前中心側辺3cの上端部が強固に縫着されていれば、必ずしも前中心側辺3cの全長が縫着されている必要はない。
【0019】
また、補助カップ3の脇端上辺3fが肩紐6に、縫着部3N2において強固に縫着される。ここで、縫着部3N2は、本体カップ2と肩紐6との縫着部2Nよりも、肩紐6の上方に越えた位置とされている必要がある。また、肩紐6からの引張力によって補助カップ3の上部が本体カップ2の上部を抑えるためには、補助カップ3が本体カップ2とは別体として機能する必要がある。そのため、補助カップ3の少なくとも縫着部3N2に隣接する上辺部分3e、3aは、本体カップ2とは遊離している。
本実施形態においては、補助カップ3の脇斜め上辺3eと上辺3aの全体が本体カップ2から遊離している。ただし、補助カップ3の上辺3a部分が本体カップ2からのずり上がり等の上下のずれを防止するように、上辺3aの中央部分の一箇所c1で本体カップ2に留めている。下辺3bにおける留め部c2も同様であるが、これらは、補助カップ3と本体カップ2との間での力の伝達や強度的な作用をなすためのものではない。
【0020】
また、補助カップ3において、本体カップ2の上辺2aから上方に突出した部分である脇上端部33の脇端辺3d2を除いて、脇端辺3d1を3N3の部分で本体カップ2の脇端辺2cに縫着している。
この縫着部3N3は、下部においては、カップワイヤー部7の脇側端部7P3にまで達して、そこで強固に縫着されている。ここで、補助カップ3の本体カップ2と別体としての作用を増すためには、脇上端部33の脇端辺3d2は本体カップ2に縫着されていないことが望ましいが、場合によっては、脇斜め上辺3eとは異なって縫着されていても補助カップ3の上部における抑え機能が阻害されることはない。
【0021】
補助カップ3の下辺3bは、本体カップ2のバストトップ2Tから、本体カップ2の下カップ部下辺2bにほぼ相当するカップワイヤー部7の最下部7P2までの3分の2の位置を通る。すなわち、図2において、バストトップ2Tからカップワイヤー部最下部7P2までの長さ(D1とD2の合計)に対して、バストトップ2Tから補助カップ下辺までの長さ(D1)が約3分の2にされている。
これは、特に、下垂したバストの場合、バスト全体をバスト下辺から持ち上げることは補整の効果が少なく、バストトップからバスト下辺に至る3分の2あたりから上の位置を上方に押すと効果が高いためである。このような効果を果たすためには、補助カップ3の下辺3bの通る位置としては、前記3分の2の位置から上下に、D1とD2の合計値の20%の範囲内であることが好ましい。
また、補助カップ3の前中心側辺3cの本体カップ2への逢着部3N1は、カップワイヤー部7の前中心側端部7P1から始まり、当該前中心側端部7P1とカップワイヤー部の最下部7P2までのカップワイヤー部7に沿った長さの1/4〜3/4までとすることが好ましい。
それによって、補助カップ3の下端のそれ以外の部分はフリーな状態となり、補助カップ3がバストを持ち上げる際に、本体カップ2の下部から持ち上げる力はさらに必要ないこととなり、バストの補整作用を向上することができる。
このように、下辺3bは、本体カップ2とは別体となってバック側への引張力、及びトップ側への引き上げ力が伝達されることが好ましいことから、本体カップ2と遊離されている。ただし、中央部において前記c1での説明と同様に、強度的な必要性ではなく、ずり上がり等を防止するために留め部c2を設けている。
また、本実施形態では、必ずしも、補助カップ3の上下方向での被覆範囲は、本体カップ2の下カップ部22,23の中途までである必要はない。本体カップ2の下辺までの全体を覆った方が美観的に好ましい場合は、強パワーを備えないレースを補助カップ下部32の下方に続けて設けてもよい。また、バスト全体を下辺から押し上げたい場合は、下部32と同様にパワーの強い布地を下方に続けて設けてもよい。
【0022】
このようなブラジャー1を着用すると、補助カップ3は肩紐6との縫着部3N2によって、肩紐6に沿って引き上げられる。
その際、補助カップ3の上辺3a、3eにおける少なくとも肩紐との縫着部3N2に隣接する部分は、本体カップ2とは遊離した状態で肩紐6によって斜め上の方向に引張力P1が作用する。そして、補助カップ3の上辺は本体カップの上辺2aまでを覆っていることから、補助カップ3の上部が本体カップ2の上部を抑えることになり、本体カップ2上部がバストから浮くことを抑制することができる。
このように、本実施形態のブラジャー1においては、30歳代後半から40歳代のバストのように下垂して上部が削げたバストであっても、本体カップ2と補助カップ3からなるカップ部がバストにフィットした状態において、バストの補整、造形機能を達成することができる。
【0023】
次に、図5に示す実施形態においては、補助カップ3の脇端辺3d1における本体カップ2への縫着部3N3は、カップワイヤー部7の脇側端部7P3に強固に逢着されて、さらに、土台布4とバック布5との縫着部9にまで達して形成されている。
そのため、補助カップ3の特に下部32は、カップ本体2を越えた位置で、しかも強度的にも強固な土台布4とバック布5との縫着部9によって、バック布5からの引張力P2を加えられることができる。その他の構成と作用は、図1〜4の実施形態と同様である。
この実施形態においては、補助カップ3の下部32は、バック布5によるバック方向への引張力P2によって、カップの密着性を高められるとともに、本体カップ2を介してバストに緊締された状態で、肩紐6による引き上げ力によってバストに対する寄せ上げ力を作用させることができる。
【0024】
また、図6に示す実施形態においては、補助カップ3の脇端辺3d1における本体カップ2への縫着部3N3が、土台布4とバック布5との縫着部9にまで達し、さらに縫着部9に沿って形成されている。
そのため、補助カップ3の特に下部32は、カップ本体2を越えた位置で、しかも強度的にも強固な土台布4とバック布5との縫着部9が下部32の脇側の側辺を面的に引くことにより引張力P2を加えられることができる。その他の構成と作用は、図1〜4の実施形態と同様である。
【0025】
また、各実施形態においては、カップワイヤー71、カップワイヤー部7を備えるブラジャーを主として説明したが、本体カップ2についての説明で述べたように、カップワイヤーを備えないノンワイヤータイプのブラジャーであってもよい。
その場合、例えば、本体カップ2の脇カップ部24を形成する布を他の本体カップ2の部分よりも堅めの布を用いることによって、バストの脇を強く押さえることで、カップワイヤーを備えなくとも、本体カップ2による造形を高める等の構成を採用することが好ましい。
なお、カップワイヤーを備えない場合であっても、補助カップ3の下辺3bの位置や逢着部3N1の始端、終端の好ましい位置は、カップワイヤー部7を基準に説明したことを本体カップ2の下カップ部下辺2bを基準に置き換えた場合と同様である。すなわち、補助カップ3の下辺3bは、バストトップ2Tから本体カップ2の下カップ部下辺2bの最下部までの3分の2の位置から20%上下の範囲内の位置を通ることが好ましく、補助カップ3の前中心側辺3cの本体カップ2への逢着部3N1は、本体カップ2の下カップ部下辺2bの前中心側端部から始まり、当該前中心側端部と本体カップ2の下カップ部下辺2bの最下部までの本体カップ2の下カップ部下辺2bに沿った長さの1/4〜3/4までとすることが好ましい。
さらに、各実施形態においては、3/4カップブラジャーによって説明をしたが、バストの補整、造形機能を有するものであれば、フルカップブラジャー、1/2カップブラジャー等のタイプのブラジャーであってもよい。
また、各実施形態においては、バック布5の後端をホック等で掛け留めするタイプとしたが、前中心において土台布の左右を分離してホック等で掛け留めするフロントホックタイプであってもよい。
さらに、各実施形態においては、本発明の衣類をブラジャー1によって説明したが、ブラジャー以外でも、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着等のようにカップ部を備える衣類であれば適用可能である。
【実施例1】
【0026】
図5に示す本発明の実施形態のブラジャー1を作製して、30歳代後半から40歳代のモニター10名による評価を行った結果が表1〜3のとおりである。
ここで、本実施形態品に対して、対比を行った従来品は、出願人及び他社の商品であって、いずれも30歳代後半から40歳代の女性に好まれているものであり、3/4カップブラジャーにおける主要な商品で、次のとおりの特徴と仕様のものである。
従来品A:「バストアップタイプ」とされている。カップ裏のシートでバストをすくい上げて、バストアップさせるタイプである。パッドは備えない。
従来品B:「脇スッキリで、しっかりバストアップタイプ」とされている。バック脇をしっかりサポートしてバストアップさせるようにされている。カップの脇肌側に脇寄せリジット素材が用いられている。パッドを備える。
従来品C:「脇スッキリで、しっかり谷間メイクタイプ」とされている。バック脇のシートとカップ脇のパネルで、サイドからすっきりさせて谷間をつくるようにさせている。カップの外脇側に脇寄せシートが備えられている。パッドを備える。
評価は、それぞれ、本発明の実施例と各従来品を対比して、どちらが優れていると感じたかを項目別に問うた。本発明の実施例が優れているとの回答を丸印で、どちらともいえないとの回答を三角で、従来品の方がよいとの回答の場合をばつ印で示している。
【表1】

【0027】
評価試験の結果によると、造形性すなわちバストの形が、従来の造形機能を持つブラジャーを着けた場合よりも良くなったと感じる人数が、どの従来品に対しても多かった。
また、着用感(フィット性)についても、本発明の実施例のものが快適だと感じる人数がどの従来品に対しても多く、特に、従来品B、Cに比べると圧倒的に多かった。
さらに、各従来品よりも本発明の実施例を着用したいと感じる人数が多かった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態のブラジャーにおいて、補助カップ3を分離した状態での表側斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のブラジャーの表側斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のブラジャーの裏面図である。
【図4】本発明の実施形態の補助カップの裏面図である。
【図5】本発明の他の実施形態のブラジャーの表側斜視図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態のブラジャーの表側斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1‥ブラジャー、2‥本体カップ、21‥上カップ部、22‥第1下カップ部、23‥第2下カップ部、24‥脇カップ部、2a‥本体カップ上辺、2b‥本体カップ下辺、2c‥本体カップ脇端辺、2L1〜2L3‥接ぎ合わせライン、2T‥トップ部、2t1〜2t3‥テープ、2N‥縫着部、3‥補助カップ、31‥補助カップ上部、32‥補助カップ下部、33‥補助カップ脇上端部、3a‥補助カップ上辺、3b‥補助カップ下辺、3c‥補助カップ前中心側辺、3d1、3d2‥補助カップ脇端辺、3e‥補助カップ脇斜め上辺、3f‥補助カップ脇端上辺、3L1、3L2‥接ぎ合わせライン、3t1、3t2‥テープ、3N1〜3N3‥縫着部、4‥土台布、4a‥土台布上辺、5‥バック布、6‥肩紐、7‥カップワイヤー部、71‥カップワイヤー、7t‥テープ、7P1‥カップワイヤー部の前中心側端部、7P2‥カップワイヤー部の最下部、7P3‥カップワイヤー部の脇側端部、8‥パッド、9‥土台布とバック布縫着部、91‥脇ボーン、9t‥テープ、10t1〜10t4‥テープ、C1、C2‥留め部、P1、P2‥引張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体カップと補助カップからなるカップ部を有する衣類であって、
前記補助カップは、前記本体カップの表面に、上下方向においては本体カップにおける少なくとも下カップ部の中途から本体カップ上辺までを覆い、左右方向においては前記本体カップの前中心部から脇端辺までを覆うようにして被覆され、
前記補助カップと前記本体カップとは、両カップの前中心部及び脇端辺において互いに逢着されており、
前記補助カップの脇上端部は、前記本体カップの脇上端部と肩紐との縫着部を上方に越えた位置で前記肩紐に縫着され、かつ前記補助カップの上辺における少なくとも前記肩紐との縫着部に隣接する部分は、前記本体カップと遊離していることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記補助カップの下部は上部よりも伸縮し難いものであることを特徴とする請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記補助カップと前記本体カップとの前記前中心部における縫着は、カップワイヤー部の前中心側端部を含む箇所において縫着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記補助カップの前記脇端辺の下部は、土台布とバック布との縫着部まで延びて縫着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記補助カップの下辺は、バストトップからカップワイヤー部の最下部までの3分の2の位置から20%上下の範囲内の位置を通ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカップ部を有する衣類。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate