説明

カテーテル型光音響用プローブ

【課題】カテーテル型光音響用プローブにおいて、外部からの光散乱の原因となる液体の侵入を防ぎつつ、スムーズに超音波検出器を手前方向に走査可能とする。
【解決手段】外部シース31は、管腔に挿入される。外部シース31の内部は液体で満たされており、内部シース32は、その外部シース31内を管腔の延在方向に沿って移動可能である。内部シース32内には、超音波検出器21と、例えばレンズ22及びミラー23で構成される光照射部とが配置される。外部シース31は、外部シースの外側に存在する液体をろ過するフィルタ24、25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル型光音響用プローブに関し、更に詳しくは、管腔内に挿入され、管腔内において光音響信号の検出を行うカテーテル型光音響用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、レーザパルスなどのパルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、例えば生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
ここで、特許文献1には、血管などに挿入して使用するカテーテル型の超音波探触子が記載されている。血管内に挿入されるカテーテルチューブは、生理食塩水などの液体で満たされている。カテーテルチューブ内には回転ワイヤが挿通され、回転ワイヤの先端には超音波振動子が取り付けられる。回転ワイヤにより超音波振動子をカテーテルチューブ内で回転させることで、超音波ビームをラジアル走査することができる。
【0005】
カテーテルチューブが液体で満たされているのは、超音波伝播を確保するためである。超音波振動子の周囲に気泡が存在すると、超音波はその気泡によって散乱・反射し、超音波画像の画質が劣化する。気泡をなくすための方策として、カテーテルチューブの先端に開口を設け、気泡をカテーテルチューブの外側に押し出すことが考えられる。しかし、その場合、開口を通して外側からカテーテルチューブ内に血液等が侵入することも可能になり、好ましくない。
【0006】
上記の問題に対し、特許文献1では、カテーテルチューブの先端部分を、気体通過性かつ液体非通過性を持つ部材で構成する。このようにすることで、気泡をカテーテルチューブの外に追いやることを可能にしつつ、外側からカテーテルチューブ内に血液等が侵入することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−126184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カテーテル型の光音響用プローブについても、光音響信号の伝播を確保するために、チューブ内が液体で満たされている必要がある。チューブ先端に開口を設けることで、チューブ内の気泡を追い出すことができるが、血液が開口を通してチューブ内に侵入し、その侵入した血液が観察対象に照射すべき光を散乱したり吸収したりすることで、十分な強度の光を観察対象に照射することができなくなる可能性がある。一方で、特許文献1のように、気体通過性及び液体非過性の部材を用いると、チューブ内への液体の侵入が完全に遮断される。この場合、超音波振動子(超音波検出器)を手前方向に走査するときに、超音波振動子をスムーズに走査することができなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、気泡を除去し、外部からの光散乱の原因となる液体の侵入を防ぎつつ、スムーズに超音波検出器を手前方向に走査可能なカテーテル型光音響用プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のカテーテル型光音響用プローブは、管腔内に挿入され、内部が液体で満たされる外部シースと、前記外部シース内を前記管腔の延在方向に移動可能な内部シースと、前記内部シースの中に配置された光照射部、及び超音波検出器とを備え、前記外部シースが、該外部シースの外側に存在する液体をろ過するフィルタを有することを特徴とするカテーテル型光音響用プローブを提供する。
【0011】
本発明のカテーテル型光音響用プローブでは、前記フィルタを前記外部シースの先端付近に有する構成とすることができる。先端付近に設けるフィルタは1つには限られず、複数のフィルタを設けてもよい。
【0012】
前記管腔が血管である場合、前記フィルタが少なくとも血液中の赤血球をろ過するものであることが好ましい。換言すれば、フィルタは、外部シースの外側から内側に侵入する血液のうち、少なくとも赤血球を除去できるものであることが好ましい。
【0013】
前記フィルタは、限界ろ過膜としてもよい。前記限外ろ過膜はポリスルホン膜とすることができる。前記ポリスルホン膜は、加圧側が前記外部シースの外側を向くように取り付けられていることが好ましい。
【0014】
上記に代えて、前記フィルタが、多孔質メンブレンであってもよい。
【0015】
前記内部シースは、前記外部シース内をラジアル方向に走査可能とすることができる。
【0016】
本発明は、また、被検体に照射すべき光を出射する光源ユニットと、管腔内に挿入され、前記被検体内の光吸収体が前記光を吸収することで発生した光音響信号を検出するカテーテル型光音響用プローブと、前記検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する超音波ユニットとを備え、前記カテーテル型光音響用プローブが、管腔内に挿入され、内部が液体で満たされる外部シースと、該外部シース内を前記管腔の延在方向に移動可能な内部シースと、該内部シースの中に配置された光照射部、及び超音波検出器とを含み、前記外部シースが、該外部シースの外側に存在する液体をろ過するフィルタを有することを特徴とする光音響画像生成装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカテーテル型光音響用プローブは、液体で満たされた内部に内部シースを移動可能に収容する外部シースが、外部シースの外側に存在する血液等の液体をろ過するフィルタを有している。このフィルタにより、外部シース内の液体中に存在する気泡を外部シースの外側に追いやることができる。また、フィルタが外部シース外側と内側との間の液体の移動を一部制限することで、外部シースの外側に存在する液体中の、光散乱の原因となるような物質が外部シースの内側に侵入することを防ぐことができる。このとき、液体の流れが完全に遮断されることがないため、外部シース内で内部シースを手前方向にスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態のカテーテル型光音響用プローブを示す断面図。
【図3】カテーテル型光音響用プローブにおいて内部シースを移動した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置10は、超音波探触子11、超音波ユニット12、及びレーザユニット13を備える。レーザユニット13は、被検体に照射すべき光を出射する。出射するレーザ光の波長は、観察対象に応じて適宜設定すればよい。レーザユニット13を出射したレーザ光は、光ファイバ14を通り、超音波探触子11まで導光される。
【0020】
超音波探触子11は、例えば血液などの管腔内に挿入されるカテーテル型の光音響用プローブである。超音波探触子11は、レーザユニット13から導光されたレーザ光を被検体に向けて照射する。また、超音波探触子11は、被検体内の光吸収体が照射されたレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。
【0021】
超音波ユニット12は、ケーブル15によって超音波探触子11と接続されており、超音波探触子11で検出された光音響信号を受信する。超音波ユニット12は、受信した光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。超音波ユニット12は、例えば表示モニタ上に、生成した光音響信号を表示する。
【0022】
図2は、超音波探触子11の断面を示す。超音波探触子11は、外部シース31と内部シース32とを含む。外部シース31は、血管などの管腔に挿入される。外部シース31の内部は、例えば生理食塩水などの液体で満たされている。内部シース32の外径は外部シース31の内径よりもよりも小さく、外部シース31は内部シース32をその内部に収容する。内部シース32は、外部シース31内を管腔の延在方向に沿って移動可能に構成される。また、内部シース32は、外部シース内でラジアル方向に回転可能である。
【0023】
内部シース32は、光ファイバ14、レンズ22、ミラー23、超音波検出器21、及びウィンドウ26をその内部に収容する。レンズ22及びミラー23は、被検体に対して光照射を行う光照射部を構成する。レンズ22は、光ファイバ14を用いて導光されたレーザ光の径を拡大して、ミラー23方向に出射する。ミラー23は、被検体に向けてレーザ光を反射する。なお、光照射部の構成は任意であり、レンズ22とミラー23との組み合わせには限定されない。
【0024】
ウィンドウ26は、光透過性を有し、かつ超音波透過性を有する部材で形成される。ミラー23で反射した光は、ウィンドウ26を介して被検体に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたレーザ光を吸収することで光音響信号が発生する。超音波検出器21は、ウィンドウ26を介して被検体内からの光音響信号を受信する。
【0025】
外部シース31の外側には、管腔内に存在する液体、例えば血液が存在する。外部シース31は、外部シースの外側に存在する液体をろ過するフィルタ24、25を有する。例えば外部シース31は、外部シース31の先端(遠位端)の近傍にフィルタ24、25を有する。フィルタ24、25は、例えば血液中の赤血球及びそれと同等以上の大きさを有する物質をろ過する。言い換えれば、フィルタ24、25は、赤血球及びそれと同等以上の大きさの物質は通過させずに、血液中の他の成分や気体などは通過させる。
【0026】
フィルタ24、25は、例えば限界ろ過膜である。フィルタ24、25には、ポリスルホン膜を用いることができる。そのポリスルホン膜を、加圧側が外部シース31の外側に向くように取り付ける。あるいは、これに代えて、フィルタ24、25に、多孔質メンブレンを用いることもできる。なお。フィルタ24、25は、同じ種類のフィルタであってもよいし、相互に異なる種類のフィルタでもよい。また、フィルタを2つ設ける必要はなく、2つのフィルタ24、25のうちの何れか一方のみとしてもよい。
【0027】
図3は、内部シース32を手前側に移動させた状態を示す。手動或いは何らかの駆動手段を用いて、内部シース32を図2に示す位置から手前側に引いたとする。そのとき、外部シース31の先端部分において、内部シース32の移動に伴って負圧が生じる。仮に、気泡を除去するための開口が外部シース31の先端に設けられていたとすると、その負圧により、血液が外部シース31内に侵入することになる。特に、赤血球は、光散乱の原因となるため、赤血球が外部シース31内に侵入することを防ぎたい。本実施形態では、外部シース31の先端付近にフィルタ24、25を設けており、これらフィルタにより例えば赤血球をろ過することで、外部シース31内に赤血球が侵入することを防ぐことができる。一方で、赤血球及びそれと同等以上の大きさを有する物質は除去されるものの、その他の成分の外部シース31への侵入は許容されるため、内部シース32を円滑に手前方向に移動させることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、超音波探触子11にて光音響信号を検出し、超音波ユニットにて光音響画像を生成することとしたが、被検体に対する超音波の送受信を行い、超音波ユニットにて光音響画像の生成に加えて超音波画像の生成を行うこととしてもよい。すなわち、超音波探触子11の超音波検出器21から被検体に対する超音波の送信を行い、超音波検出器21にて送信した超音波に対する反射超音波を検出し、超音波ユニット12が、検出された反射超音波を超音波探触子11から受信し、受信した反射超音波に基づいて超音波画像を生成してもよい。超音波ユニット12は、例えば生成した光音響信号と超音波信号と、合成して或いは並べて表示モニタ上に表示することができる。
【0029】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のカテーテル型光音響用プローブは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10:光音響画像生成装置
11:超音波探触子
12:超音波ユニット
13:レーザユニット
14:光ファイバ
15:ケーブル
21:超音波検出器
22:レンズ
23:ミラー
24、25:フィルタ
26:ウィンドウ
31:外部シース
32:内部シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内に挿入され、内部が液体で満たされる外部シースと、
前記外部シース内を前記管腔の延在方向に移動可能な内部シースと、
前記内部シースの中に配置された光照射部、及び超音波検出器とを備え、
前記外部シースが、該外部シースの外側に存在する液体をろ過するフィルタを有することを特徴とするカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項2】
前記フィルタを前記外部シースの先端付近に有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項3】
前記管腔が血管であり、前記フィルタが少なくとも血液中の赤血球をろ過するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル型光音響プローブ。
【請求項4】
前記フィルタが、限界ろ過膜であることを特徴とする請求項1から3何れかに記載のカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項5】
前記限外ろ過膜がポリスルホン膜であることを特徴とする請求項4に記載のカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項6】
前記ポリスルホン膜が、加圧側が前記外部シースの外側を向くように取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項7】
前記フィルタが、多孔質メンブレンであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載のカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項8】
前記内部シースが、前記外部シース内をラジアル方向に走査可能であることを特徴とする請求項1から7何れかに記載のカテーテル型光音響用プローブ。
【請求項9】
被検体に照射すべき光を出射する光源ユニットと、
管腔内に挿入され、前記被検体内の光吸収体が前記光を吸収することで発生した光音響信号を検出するカテーテル型光音響用プローブと、
前記検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する超音波ユニットとを備え、
前記カテーテル型光音響用プローブが、管腔内に挿入され、内部が液体で満たされる外部シースと、該外部シース内を前記管腔の延在方向に移動可能な内部シースと、該内部シースの中に配置された光照射部、及び超音波検出器とを含み、前記外部シースが、該外部シースの外側に存在する液体をろ過するフィルタを有することを特徴とする光音響画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22171(P2013−22171A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158571(P2011−158571)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】