説明

カニューレ

【課題】本発明は、眼外科機器、より詳細には、後区眼外科機器に関する自己シール(密封)カニューレ及び開口部閉鎖カニューレを提供する。
【解決手段】カニューレが、本体とシールディスクとキャップとを有する。シールディスクが、本体内に配置されており且つキャップによって押し付けられている。シールディスクにおける所定の角度の付いた切込みは、顕微鏡を使った手術器具が眼の中にカニューレを通って挿入されることを可能とする。取り去りの後で、シールディスクにおける切込みが閉じられ、眼球内の圧力の損失を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼外科機器、より詳細には、後区眼外科用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微手術器具が、通常は、外科医によって、人体、特に眼の手術において、より詳細には、硝子体、血液、傷跡組織、又は水晶体レンズの除去のための手術において繊細で制限された間隙から組織を除去するために使用されている。このような各器具は、制御装置と外科医が組織を切開し除去するために使用する外科用ハンドピースとを含んでいる。後区手術に関して、ハンドピースは、硝子体切削プローブ、レーザプローブ、又は組織を切断又は破断させるための超音波破砕機(ultrasonic fragmenter)であっても良く、長い空気圧(気圧)ライン及び/又は電力ケーブル、光学ケーブル、又は注入流体を外科の手術部位に供給するため及び手術部位から流体及び切り取られた/破断された組織を抜き取り又は吸引するための可撓性管によって制御装置に接続されている。ハンドピースの切断、注入、吸引機能は、外科用ハンドピース(例えば、往復運動又は回転する切断ブレード又は超音波振動針)のために電力を供給するだけでなく、注入流体の流れを制御し且つ流体及び切断/破断された組織の吸引のための真空源(大気に対して)を提供する、遠隔制御装置によって制御されている。制御装置の各機能は、外科医によって手動で制御されており、普通、脚踏み式スイッチ又は比例制御によって制御されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
後区手術の間に、外科医は、通常、手術の間にいくつかのハンドピース又は各器具を使用する。この手術は、これら各器具を切開部内に挿入し且つ切開部から取り去ることが必要となる。この繰り返される取り去り及び挿入は、切開部位において外傷性傷害を眼に引き起こし得る。この懸案事項に取り組むために、ハブを有したカニューレが、少なくとも1980年中頃までに開発された。これらの各装置は、付属のハブ(hub)を有する細管から成る。その細管が、ハブに至るまで眼の切開部内に挿入され、このハブが停止部の役割を果たし、管が眼に完全に入ることを防止する。大抵の場合、ハブが、不注意による取り去りを防止するために、眼に縫合される。各外科器具は、管を通して眼の中に挿入することができ、管によって、各器具による繰り返される接触から切開部側壁を保護する。加えて、外科医は、器具が管を通して眼の中に挿入されるときに器具を操作することによって、器具を使用して、手術の間に眼の位置を決めることを補助できる。先行技術のカニューレの不利点は、眼の表面上に突出する高さ部分があることと、器具の交換又は除去の際に眼球内の圧力損失を制御するための手段がないことを含んでいる。与圧された球体である眼は、外科装置が存在しないときに、水性の又は硝子状の物質を開いたカニューレから吐出する。先行技術のカニューレを使用すると、眼球内の圧力の損失は、カニューレをシールして液体及び組織の圧出を防止するために、管内にプラグの又はキャップを挿入することによって防止される。これは、大抵、付加的な器具類、並びに他のOR人員の補助を必要とする時間を要する過程であり、術後の感染症のリスクを増加させる。
【0004】
従って、器具の取り去り時に自己シールし、こうして、プラグ、キャップ、及びこれら各装置を取付け且つ取り去るために要求される器具類の必要性を解消するカニューレの必要性が存続する。このような装置は、外科手術のために必要とされる所要時間を減らし且つ他のOR人員への依存を減らす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、先行技術を改良することによって、器具の取り去り時に自己シールするカニューレを提供することである。カニューレは、一般的に管と付属のハブとから成る。切開部にアクセスする(出し入れする)ことが許容され、且つカニューレをシールするために器具の取り去り時に閉じられる切り込み又はスリットを有するシールディスクが、ハブ内に配置される。
従って、本発明の目的は、カニューレを提供することにある。
本発明の別の目的は、器具の交換又は取り去り時に自己シールするシールディスクを有するカニューレを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、プラグ、キャップ、及び他のシール器具類の必要性を解消するカニューレを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、眼の表面上に突出する外形が低いカニューレを提供することにある。
本発明の他の目的、特徴及び利点は、図面を参照することにより明白になり、図面及び請求項からなる以下の記載を参照することにより明白となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜図4に最もよく示されているように、カニューレ10は、一般的に本体12とシールディスク14とキャップ16とから成る。本体12とキャップ16とは、ステンレス鋼、チタン、又は熱可塑性プラスチックのような任意の適した材料から作られてもよい。本体12が、一体化され又は別個の各部品として形成されることもある管18とハブ20とを備える。管18が、眼球の強膜130を通して延び、後部チャンバ140に入るために十分な長さから成る。ハブ20は、一般的に、管18内の穴19に向けられた漏斗形状を有するために、約18〜24度の間の角度(最も好ましくは約22度)で傾斜の付いた又はテーパの付いた遠位フロア(floor)22を有する内部空洞24を備える筒形状である。空洞24は、約0.1016〜0.127mm(0.040〜0.050inches)(最も好ましくは約0.11684mm(0.046inches))の間又は任意の他の適した直径を有してもよい。空洞24は、一般的に、約0.0635〜0.0889mm(0.025〜0.035inches)(最も好ましくは約0.07366mm(0.029inches))間の深さまで近位面28から遠位フロア22へ延びている。ハブ20の近位面28は、一般的に、約0.0127〜0.0381mm(0.005〜0.015inches)(最も好ましくは約0.02032mm(0.008inches))の間の深さまで面28内に埋め込まれた円周方向の凹設面(rabbet)32を有する平坦部である。凹設面32は、0.1524〜0.1778mm(0.060〜0.070inches)(最も好ましくは約0.15748mm(0.062inches)の間の直径を有してもよい。図4に最もよく示されているように、キャップ16が、チューブ状の側壁44によって形成されたシール表面42を含んでいる。側壁44は、また、シール表面42が近位面28と接触するようにハブ20を全体的に受容するための大きさであり且つ形状であるくぼみ穴45を形成する。シール表面42は、約0.04064〜0.0508mm(0.016〜0.020inches)(最も好ましくは約0.04572mm(0.018inches))の間の深さを有している。キャップ16が、穴45と連通する、穴45と向かい合った開口部49を含んでいる。開口部49が、開口部49と空洞24に向かって概略漏斗形状及び傾斜の付いている近位表面17によって形成されている。
【0007】
シールディスク14は、概略円形であり、切込み40を含み、ハブ20の凹設面32内で嵌合するような大きさであり且つ形状である。シールディスク14は、好ましくは約0.0127〜0.0381mm(0.005〜0.015inches)(最も好ましくは約0.0254mm(0.010inches)の間の厚みを有する。シールディスク14は、ゴム又は任意の適したエラストマーのような任意の適切な材料から作られてもよいが、ミシガン州、ミッドランドのDowCornigCorporationによって市販されているSilasticシリコーンゴム(登録商標)のようなシリコーンゴムから作られるのが最も好ましい。切込み40は、シールディスク14を全体的に又は部分的に交わるシールディスク14のほぼ中心に設けられており且つシールディスク14の厚みを通って全体的に延びている。切込み40は、任意の適した角度が使用されてもよいが、約40〜50度(最も好ましくは45度)間の角度で作られることが好ましい。シールディスク14が、ハブ20の凹設面32内に定置されている。キャップ16の空洞45は、ハブ20を覆って嵌合し、例えば、ほぼ0.00254〜0.00762mm(0.001〜0.003inches)(最も好ましくは約0.00508mm(0.002inches))の間でシールディスク14をわずかに押し付ける。キャップ16は、圧接又は接着剤のような任意の適切な機構によって所定の位置に保持されてもよいが、キャップ16とハブ20のチューブ状の側壁44の間で干渉又は摩擦嵌合されることによって所定の位置に保持されることが最も好ましい。
【0008】
操作の間に、図5に最もよく示されるように、管18が、眼球の強膜130を通して挿入される。顕微鏡を使った手術の器具50は、開口部49、切込み40、空洞24、管18を通して挿入され、後部チャンバ140内に挿入される。キャップ16の表面17の漏斗形状と空洞24の遠位フロア22とは共に、外科器具50を穴19内に向けることを補助する。空洞24は、シールディスク14のための空間が外科器具50の動作を妨げること又は外科器具50に対する摩擦を増加させること無しに内部に変形されることを可能とさせる。外科医が、各器具を引き抜く又は交換することを望むときに、外科器具50が、カニューレ10から引き抜かれる。図3に示されるように、切込み40が、その最初の閉じられた位置に復帰し、それにより、管18をシールする。切込み40の角度は、シールディスク14をシールするために役立ち且つ液体と組織の損失を防止する。
【0009】
第二の実施形態では、図6に示されるように、ハブ20’は、ハブ20と同様の構造からなり、一般的に筒形状であり、凹設面32よりもより深く且つシールディスク14とキャップ16’との両方を受容するために十分な深さから成る凹設面32を含む。縁62は、ハブ20’から近くに延び、且つハブ20’の円周の周りに、連続的なフランジを備えてもよく、又はハブ20’の円周の周りに規則正しい又は不規則な間隔で配置された複数のフランジを備えてもよい。縁62は、任意の適切な形状から成ってもよいが、ハブ20’の側壁の65の近位部分に作られた所定の角度の付いた又は湾曲した切り込みとすることが最も好ましい。キャップ16’は、一般的に筒形状であり、及び外壁64の円周に溝60を有する。キャップ16’が、シールディスク14に近位するハブ20’の凹設面32’内に受容されており、それにより、所定の位置にシールディスク14が保持される。キャップ16’は、シールリング14をわずかに押し付け、かつ溝60内に縁62を折り重ね、圧接又は曲げることによって所定の位置に保持される。
【0010】
本発明の特定の実施形態が、上記に記載されているが、これらの記載は、例示と説明の目的のために与えられる。上記のシステム及び方法からの変形品、変化品、改良品、及び新案品は、本発明の範囲又は精神から逸脱すること無しに採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態のカニューレの頂部分解斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態のカニューレの頂部斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施形態のカニューレの拡大断面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態のカニューレの分解断面図である。
【図5】カニューレ内に挿入された外科器具を使用することを除けば、図4と同様な本発明の第一の実施形態のカニューレの拡大断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態のカニューレの拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)管と、該管の反対側に凹設面と前記管に流体的に接続された内側空洞とを備えたハブとを有する本体と、
b)前記凹設面内に配置され、切込みを有するシールディスクと、
c)開口部を有し且つ前記ハブに受容されたキャップと、
を備え、前記キャップが、前記シールディスクを前記凹設面内に保持し、前記開口部が、前記シールディスクにアクセスできるようにするカニューレ。
【請求項2】
前記本体が、外科用ステンレス鋼から作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項3】
前記本体が、チタンから作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項4】
前記本体が、熱可塑性プラスチックから作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項5】
前記シールディスクが、シリコーンゴムから作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項6】
前記シールディスクが、エラストマーから作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項7】
前記切込みが、所定の角度を付けて作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項8】
前記キャップの前記開口部は、前記シールディスクを通して前記管と連通している請求項1に記載のカニューレ。
【請求項9】
前記キャップが、外科用ステンレス鋼から作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項10】
前記キャップが、チタンから作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項11】
前記キャップが、熱可塑性プラスチックから作られている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項12】
前記キャップが、漏斗形状の近位表面をさらに備えている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項13】
前記内側空洞は、漏斗形状の遠位面を備える請求項1に記載のカニューレ。
【請求項14】
a)管と、該管の反対側に凹設面と漏斗形状の遠位面を有し且つ前記管に流体的に接続された内側空洞とを備えたハブとを有する本体と、
b)所定の角度の付いた切込みを有し、前記凹設面内に配置されたシールディスクと、
c)開口部を有し且つ前記ハブに受容されたキャップと、
を備え、前記キャップが、前記シールディスクを前記凹設面内に保持し、前記開口部が、前記シールディスクにアクセスできるようにするカニューレ。
【請求項15】
前記本体が、外科用ステンレス鋼から作られている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項16】
前記本体が、チタンから作られている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項17】
前記本体が、熱可塑性プラスチックから作られている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項18】
前記キャップが、外科用ステンレス鋼から作られている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項19】
前記キャップが、チタンから作られている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項20】
前記キャップが、熱可塑性プラスチックから作られている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項21】
前記キャップが、漏斗形状の近位表面をさらに備えている請求項14に記載のカニューレ。
【請求項22】
a)管と、該管の反対側に凹設面と漏斗形状の近位面を有し且つ前記管に流体的に接続された内側空洞とを備えたハブとを有する本体と、
b)所定の角度の付いた切込みを有し、前記凹設面内に配置されたシールディスクと、
c)前記ハブに受容されたキャップと、
を備え、それにより、前記シールディスクを前記凹設面内に保持し、前記キャップが、漏斗形状の近位表面と開口部を有するカニューレ。
【請求項23】
前記本体が、外科用ステンレス鋼から作られている請求項22に記載のカニューレ。
【請求項24】
前記本体が、チタンから作られている請求項22に記載のカニューレ。
【請求項25】
前記本体が、熱可塑性プラスチックから作られている請求項22に記載のカニューレ。
【請求項26】
前記キャップが、外科用ステンレス鋼から作られている請求項22に記載のカニューレ。
【請求項27】
前記キャップが、チタンから作られている請求項22に記載のカニューレ。
【請求項28】
前記キャップが、熱可塑性プラスチックから作られている請求項22に記載のカニューレ。
【請求項29】
a)管と、該管の反対側に凹設面と前記管に流体的に接続された内側空洞とを備えたハブとを有する本体と、
b)前記凹設面内に配置され、切込みを有するシールディスクと、
c)開口部を有し且つ前記ハブに受容されたキャップと、
を備え、前記キャップが、前記シールディスクを前記凹設面内に保持し、前記開口部が、前記シールディスクにアクセスできるようにするカニューレ。
【請求項30】
a)管と、該管の反対側に凹設面と前記管に流体的に接続された内側空洞とを備えたハブとを有する本体と、
b)前記凹設面内に配置され、切込みを有するシールディスクと、
c)開口部を有し且つ前記ハブに受容されたキャップと、
を備え、前記キャップが、前記シールディスクを前記凹設面内に保持し、前記開口部が、前記シールディスクにアクセスできるようにするカニューレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−307384(P2008−307384A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151500(P2008−151500)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(500319044)アルコン,インコーポレイティド (87)