説明

カフ付き医療チューブ

シリコーン製のカフ付き気管チューブは、その外側表面上に2個のテーパ付きの凹部(17)および(18)を有し、これら凹部には弾性カフ6の両側の端部を接着剤または溶剤により接着する。2個の低丈であるリブ(22)および(23)を各凹部(17)および(18)の内側端縁でチューブ回りに延在させて、外方に突出させ、接着剤または溶剤がカフ(6)の膨張可能部分(10)に拡散するのを防ぐ。カフ(6)には、カフの周囲に延在し、かつ膨張可能部分(10)の長さ方向に互いに離れる幾つかの低丈であるリブ(9)を設け、均一な膨張を支援する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状シャフトおよび管状シャフトの一部に沿って同軸状に延在する膨張可能な封止用カフを有する種類のカフ付き医療チューブであって、カフの両側の端部を接着剤または溶媒によりシャフトのそれぞれに対応する環状の取り付け領域でシャフトと接着する、該カフ付き医療チューブに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、これに限定するものではないが、カフ付き気管チューブに関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、気管チューブは膨張可能な封止用のカフを患者側の末端に有する。カフが収縮した状態で挿管中にカフはチューブ壁の近接し、次に空気注入ラインからカフに空気を注入することで、カフは膨張して気管壁に接触することで患者組織に対して封止を生ずる。このようにして、気管に沿うガス流路はチューブのボア(孔)に沿う流れに限定される。
【0004】
カフはチューブに沿って同軸状に延在する管状形状をしており、両側の端部またはカラーで気管チューブのシャフト外壁に取り付ける。この取り付けは、一般的に、カラーとシャフト壁との間に塗布した溶剤または接着剤により、または熱結合により行う。これらの取り付け方法は、PVCおよび他の若干のプラスチックで製造したチューブに対しては良好に作用するが、収縮時にシャフトに緊密に嵌合するよう構成するシリコーンまたは他の高弾性材料により製造したカフに使用するには問題がある。このようなカフの場合、カフ領域から膨張可能にすることを意図する領域に向かってカフ結合用の接着剤が侵入する傾向がある。このことは、劣悪に画定された取り付け境界と膨張時の不規則形状となる恐れがある。さらに、若干の接着剤では硬化時間が長くなり、良好な結合を形成するのが一層困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のものに代替可能なカフ付き医療チューブおよびカフ付き医療チューブの製造方法を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、上述の種類のカフ付き医療チューブを提供し、本発明カフ付き医療チューブは、各取り付け領域に、各領域の内側端部でシャフトの表面から突出する隆起した環状のリブを設け、接着剤または溶剤が取り付け領域を越えてカフの膨張可能部分に流れ込むのを制限する構成としたことを特徴とする。
【0007】
患者側端部側の取り付け領域は、望ましくはカフ端部を取り付けるための凹部を有するものとし、望ましくは、両方の取り付け領域は、カフの対応する各端部を取り付けるための凹部を有するものとする。各凹部は対応する各カフ端部に向かって深くなる截頭円錐形となるよう傾斜させる。望ましくは、両方の凹部を截頭円錐形となるよう傾斜させ、各凹部は逆向きに傾斜させる。一方の端部における各凹部の深さは、望ましくはカフの厚さとほぼ等しくし、したがってシャフトの表面とカフの表面との間でほぼ段差のない移行部が存在するようにする。カフを望ましくは弾性材料とし、その膨張可能部部が収縮時にシャフトを密接に包囲するようにする。シャフトおよびカフは望ましくはシリコーン材料とする。カフは、望ましくは、複数の丈の低い環状のリブを、そのカフ内面に互いに離して膨張可能部分に沿って設けることができる。
【0008】
本発明の他の態様によれば、カフ付き医療チューブの製造方法を提供し、この製造方法は、環状の取り付け領域を有する管状のシャフトを形成するシャフト形成ステップであって、前記取り付け領域は前記シャフトに沿って互いに離して設け、また互いに隣接する領域端部で前記シャフト表面上に突出する環状のリブによりそれぞれ境界を画定するようにした、該シャフト形成ステップと、カフの少なくとも両側の端部で前記シャフト上に密接に装着する膨張可能な封止用のカフを設けるカフ形成ステップと、接着剤または溶剤を前記取り付け領域に塗布するステップと、前記カフを前記シャフトに接着するステップであって、前記カフの両側の端部を対応する前記取り付け領域上に配置して、接着剤または溶剤により接着された端部間における前記カフの膨張可能部分を除いて前記取り付け領域で接着するステップと、を有する。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、カフ付き医療チューブを提供し、このカフ付き医療チューブは、管状のシャフトおよびこのシャフトの一部に沿って同軸状に延在する膨張可能な封止用のカフを有するカフ付き医療チューブであって、前記カフの両側の端部で前記シャフトに取り付け、前記カフを弾性材料とし、収縮時にその全長に沿って前記シャフトを密接に包囲し、前記カフは、前記カフ長さに沿って膨張可能部分の内面に互いに離して設けた環状のリブを複数個有し、これらリブにより前記カフを一様に膨張できるようにしたことを特徴とする。
気管チューブおよびその製造方法を、添付図面につき実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明チューブにおけるカフを膨張させた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明チューブにおけるカフを取り外した状態の斜視図である。
【図3】本発明チューブにおけるカフを取り外した状態の患者側端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明チューブは、装置側端部3の近傍にフランジ2を有する湾曲した管状のシャフト1を備え、このフランジ2により、チューブを気管切開位置に保持する。円筒状の接続部4をシャフト1に取り付け、フランジ2の装置側の側面から突出させる。フランジ側とは反対側である患者側端部5の近傍に、管状の封止カフ6を、両側の端部におけるカラー7および8でシャフト1の外側表面に取り付ける。カフ6、シャフト1およびフランジ2を、すべて比較的柔軟なシリコーン材料で成形する。自然状態で収縮したカフ6はほぼ円筒状であり、シャフト1の表面近傍に沿って存在する。カフ6は、その膨張可能部分に沿って互いに離して、カフ内部に幾つかの環状のリブ9を設け、このリブの目的については後で説明する。小口径の空気注入ライン11を、シャフト1に沿う成形チャネル12内に接着してチューブに沿って延在させる。空気注入ライン11はシャフト1の片側に沿って延在し、すなわちシャフト1の曲率平面から90度ずれた側面に配置する。空気注入ライン11は、カフ6の機械側端部におけるカラー7の下側に突入させ、空気注入ライン11の患者側端部13を膨張可能部分10の下側で終端させ、低丈である2個の楔形の突起14間に保持する(図2参照)。これら突起14は、閉塞防止構造として機能し、カフ6が空気注入ライン11の端部13への流れを閉じる弁作用をしないよう防止し、またカフが空気注入ラインの端部によって損傷しないように保護する。
【0012】
カフ6の2個のカラー7および8を、それぞれの取り付け領域17および18(図2および3参照)でシャフト1の外側表面に固定する。これら領域17および18を、浅い環状の凹部19および20として、シャフト1の表面に設ける。凹部19および20は、それぞれ截頭円錐面を形成するよう傾斜し、その外方端部ではより深く、その内方端部ではシャフト表面と同じレベルとし、このことを図3により明確に示す。このようにして、カフ6におけるカラー7および8の端部は、それぞれ、凹部19および20におけるより深い端部に配置することがわかる。凹部19および20のより深い端部における深さを約0.38mmとし、シャフトにカフのカラー7および8を接着するために用いる接着剤の厚さを考慮に入れたカフ材料の厚さとほぼ等しくする。このようにして、シャフト1の表面とカフ6の両端部における表面との間に段差移行部が存在しない。
【0013】
シャフト1には、2個の低丈である環状のリブ22および23の形式とした、他の表面形状部を設け、これらリブを各凹部19および20の内側端部、すなわち互いに近接する凹部の端部に配置する。リブ22および23は、シャフト1表面から約0.2mm突出させ、接着剤または溶剤が凹部19および20の外部に漏れ出てカフ6の内部に流れ込むのを制限するダムとして作用する。
【0014】
チューブは、シャフト1およびフランジ2をシリコーンから一体ピースとして、より硬い材質である接続部4の周りに成形することにより、製造する。接着剤を空気注入ライン用のチャネル12に塗布し、空気注入ライン11をフランジ2内の孔26に挿通し、次にチャネルに配置し、これにより患者側端部13を2個の楔形の突起14間に配置する。次に接着剤を2個の凹部19および20の周りに塗布し、カフ6の端部におけるカラー7および8が凹部内に位置するようにシャフト1上にカフ6を装着する。当然のことながら接着剤または溶剤は、直接凹部19および20に塗布する代わりに、カラー7および8の内面に塗布できる。カフ6の形状および弾性により、カフは収縮時にその全長に沿ってシャフト1表面に近接し、また密接包囲する。リブ22および23がない場合、凹部19および20内の接着剤は、カフ6の内面とシャフト1表面との間から毛管作用で凹部の外部に漏れ出ようとする。これにより、接着領域は一様な境界でなくなり、このことは膨張時の膨張可能部分10の形状を歪めることになる。この問題は、シリコーンに使用する接着剤の硬化時間が比較的長く、したがって、シャフトに1個のカラーを一度に接着することをより困難にするため、深刻である。しかし、凹部19および20の截頭円錐形状は、シャフト1の外側表面とカフ6との間におけるそれらが合流する位置で滑らかに段差のない移行を確実にし、カフが凹部表面と緊密な接触を持つように、凹部が円筒形状である場合よりも、その長さの大部分に沿って配置できることを確実にする。凹部19および20のテーパはまた、リブ22および23の領域内でチューブの外側表面をより滑らかにする。カフ6の両側端部の移行領域にも存在する滑らかな表面は、気管切開部に対する侵襲性のないチューブの挿管および抜管を容易にする。このことはカフ6の患者側端部を挿管するために、カフの機械側端部よりも重要であり、所要に応じて機械側端部で従来の接着方法を使用することは可能であるが、望ましくは両側端部を同様の方法で接着する。
【0015】
カフ6を膨張させるためには、例えばシリンジ(図示せず)により空気注入ライン11を経て空気を注入し、これにより患者側端部13から流出しカフ6とシャフト1の外側表面との間の潜在的空間内に流入する。カフ6の内側の周りにあるリブ9は、空気注入ライン11の患者側端部13の両側にあって互いに隣接するリブ間に画定される環状チャネル内に初期的に流入させるように、空気をチューブ周りに導入させる。圧力が増加するにつれて、これらリブ9はシャフト1の表面から離れるように持ち上げられ、空気が隣接する環状チャネル内に流入することを可能にして、順次にこの展開を行う。このことにより、カフ6が対称に膨張することを確実にする。
【0016】
本発明は他のカフ付き医療チューブにも使用することができ、気管チューブに限定するものではない。チューブは、ワイヤなどのらせん状補強材により補強することができる。本発明はシリコーンチューブに対して特定の利点を持つけれども、様々な異なるプラスチックのチューブに使用することができる。カフ内部にリブを設ける場合シャフト上にリブを設けることなく使用することができ、またはシャフト上にリブを設ける場合、カフにリブを設けることなく使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のシャフト(1)、およびこのシャフトの一部に沿って同軸状に延在する膨張可能な封止用のカフ(6)を有するカフ付き医療チューブであって、前記カフ(6)の両側における端部(7および8)を、前記シャフト(1)のそれぞれに対応する環状の取り付け領域(17および18)で接着剤または溶剤により前記シャフト(1)に取り付ける、該医療チューブにおいて、各取り付け領域(17および18)に、各領域の内側端部で前記シャフト(1)の表面から突出する隆起した環状のリブ(22および23)を設け、接着剤または溶剤が前記取り付け領域を越えて前記カフ(6)の膨張可能部分(10)に流れ込むのを制限する構成としたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載のカフ付き医療チューブにおいて、患者側端部(5)側の少なくとも一つの前記取り付け領域(18)は、カフ(6)の端部(8)を取り付けるための凹部(18)を有する、カフ付き医療チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載のカフ付き医療チューブにおいて、両方の取り付け領域は、カフ(6)のそれぞれに対応する端部(7および8)を取り付けるための凹部(17および18)を有する、カフ付き医療チューブ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のカフ付き医療チューブにおいて、凹部(17,18)は、前記カフ(6)のそれぞれに対応する端部に向かって深くなる截頭円錐面を形成するように傾斜させたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のカフ付き医療チューブにおいて、両方の凹部(17および18)は截頭円錐面を形成するよう傾斜させ、前記凹部は互いに逆向きに傾斜させたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載のカフ付き医療チューブにおいて、凹部(17,18)の一方の端部における深さを、前記カフ(6)の厚さとほぼ等しくし、したがって前記シャフト(1)の表面と前記カフ(6)の表面との間にはほぼ段差のない移行部が存在するようにしたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のカフ付き医療チューブにおいて、前記カフ(6)を弾性材料とし、カフの膨張可能部分(10)は収縮時に前記シャフト1を密接して包囲するよう構成したことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のカフ付き医療チューブにおいて、前記カフ(6)および前記シャフト(1)を、シリコーン材料としたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載のカフ付き医療チューブにおいて、前記カフ(6)には、カフ内面に低丈である環状の突起(9)を複数個、膨張可能部分(10)に沿って互いに離して設けたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。
【請求項10】
カフ付き医療チューブの製造方法において、環状の取り付け領域(17および18)を有する管状のシャフト(1)を形成するシャフト形成ステップであって、前記取り付け領域は前記シャフトに沿って互いに離して設け、また互いに隣接する領域端部で前記シャフト表面上に突出する環状のリブ(22および23)によりそれぞれ境界を画定するようにした、該シャフト形成ステップと、カフの少なくとも両側の端部で前記シャフト上に密接に装着する膨張可能な封止用のカフ(6)を設けるカフ形成ステップと、接着剤または溶剤を前記取り付け領域(12および18)に塗布するステップと、前記カフ(6)を前記シャフト(1)に接着するステップであって、前記カフの両側の端部(7および8)を対応する前記取り付け領域上に配置して、接着剤または溶剤により接着された端部(7および8)間における前記カフの膨張可能部分を除いて前記取り付け領域で接着するステップと、を有する方法。
【請求項11】
管状のシャフト(1)およびこのシャフトの一部に沿って同軸状に延在する膨張可能な封止用のカフ(6)を有するカフ付き医療チューブであって、前記カフの両側の端部(7および8)で前記シャフトに取り付け、前記カフを弾性材料とし、収縮時にその全長に沿って前記シャフトを密接に包囲し、前記カフ(6)は、前記カフ長さに沿って膨張可能部分(10)の内面に互いに離して設けた環状のリブ(9)を複数個有し、これらリブにより前記カフを一様に膨張できるようにしたことを特徴とする、カフ付き医療チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−514529(P2010−514529A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544440(P2009−544440)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004879
【国際公開番号】WO2008/081163
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC