説明

カプセルトナーの評価方法、カプセルトナーの製造方法およびカプセルトナー

【課題】 製造工程において、容易に連続してコア粒子表面の被覆状態を評価するカプセルトナーの評価方法、カプセルトナーの製造方法およびカプセルトナーを提供する。
【解決手段】 輝度分布取得ステップにおいて、複数のコア粒子を撮像して得られた画像データに基いて、撮像した複数のコア粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布をコア粒子輝度分布として取得し、複数の樹脂微粒子を撮像して得られた画像データに基いて、撮像した複数の樹脂微粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布を樹脂微粒子輝度分布として取得する。評価ステップにおいて、コア粒子と樹脂微粒子との混合物を撮像して得られた画像データに基いて、撮像した混合物に対する平均輝度の個数基準の頻度分布を混合物輝度分布として取得し、取得した混合物輝度分布と、予め取得していたコア粒子輝度分布または樹脂微粒子輝度分布の少なくともいずれかと、に基いて、樹脂微粒子によるコア粒子の表面の被覆状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂微粒子によってコア粒子表面が被覆された被覆状態を評価するカプセルトナーの評価方法、カプセルトナーの製造方法およびカプセルトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用する画像形成装置は、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、および定着工程によって、記録媒体上にトナーからなる画像を形成する。帯電工程では、帯電部によって感光体の表面を均一に帯電する。露光工程では、帯電した感光体表面に、露光装置によってレーザ光を照射して静電潜像を形成する。現像工程では、現像部によって、感光体上の静電潜像を現像し、感光体上にトナー像を形成する。転写工程では、転写部によって感光体上のトナー像を記録媒体上に転写する。定着工程では、記録媒体上に転写されたトナー像を、定着部によって加熱し、トナー像を記録媒体に定着させる。
【0003】
定着工程における画像形成装置の消費エネルギを低減するために、軟化点の低い結着樹脂を用いた比較的低温で定着可能な低温定着用トナーの開発が進んでいる。しかしながら、軟化点の低い結着樹脂を使用すると、トナーの保存安定性が低下し、トナー凝集が発生してしまう。
【0004】
そのため、トナーの保存安定性を向上させることを目的として、コア粒子の表面を被覆材料によって被覆する表面改質処理が行われている。トナー母粒子を被覆してカプセルトナーを製造することで、トナー凝集を抑えることができる。
【0005】
特許文献1には、表面改質処理の方法として、スクリュー、ブレード、ロータなどの回転攪拌手段で粉体粒子に機械的攪拌力を付与することによって、粉体粒子を粉体流過路内で流動させ、流動状態にある粉体粒子に、スプレーノズルから液体を噴霧して、その噴霧液体に含まれる被覆材料によって粉体粒子表面を被覆する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法によれば、被覆材料と粉体粒子との密着性を高めることができ、かつ、表面改質処理に要する時間を短縮することができるとされる。
【0006】
また、特許文献2には、内核粒子表面に樹脂粒子および無機微粒子を付着させ、当該樹脂粒子を溶媒によって溶解することで、内核粒子表面に被覆層を形成するマイクロカプセルの製造方法が記載されている。特許文献2に記載の方法によれば、溶媒を用いた処理によって内核粒子表面に被覆層を形成した後、当該溶媒を乾燥させて除去することでマイクロカプセルが得られるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−10971号公報
【特許文献2】特開平3−293676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、カプセルトナーを製造するための方法は、数多く出願されているが、コア粒子の表面が被覆材で被覆できているかどうか、コア粒子の表面をどの程度被覆できているかなどコア粒子表面の被覆状態を評価する方法は十分に確立しておらず、たとえば、カプセルトナーを撮影した電子顕微鏡写真に画像解析を施して被覆状態を確認している。このような評価だと、結果が出るまでに時間がかかり、作業も煩雑であるので、製造工程に組み込むことはできず、製造条件を決定するために予め確認したり、一部のカプセルトナーを抜き出して確認することしかできない。
【0009】
本発明の目的は、製造工程において、容易に連続してコア粒子表面の被覆状態を評価するカプセルトナーの評価方法、カプセルトナーの製造方法およびカプセルトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、結着樹脂および着色剤を含むコア粒子の表面を、樹脂微粒子で被覆することにより得られるカプセルトナーにおける、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価する評価方法であって、
樹脂微粒子で被覆する前の複数のコア粒子を撮像して得られた画像データに基いて、コア粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、撮像した複数のコア粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布をコア粒子輝度分布として取得し、コア粒子を被覆する前の複数の樹脂微粒子を撮像して得られた画像データに基いて、樹脂微粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、撮像した複数の樹脂微粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布を樹脂微粒子輝度分布として取得する輝度分布取得ステップと、
前記コア粒子の表面を前記樹脂微粒子で被覆するために前記コア粒子と前記樹脂微粒子とを混合する混合処理において、前記コア粒子と前記樹脂微粒子との混合物を撮像し、撮像して得られた画像データに基いて、樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、コア粒子に未だ付着していない樹脂微粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、撮像した混合物全体に対する各平均輝度の個数基準の頻度分布を混合物輝度分布として取得し、取得した混合物輝度分布と、予め取得していた前記コア粒子輝度分布または前記樹脂微粒子輝度分布の少なくともいずれか一方とを比較して、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価する評価ステップとを有することを特徴とするカプセルトナーの評価方法である。
【0011】
また本発明は、前記評価ステップでは、前記樹脂微粒子輝度分布および前記混合物輝度分布に基いて、前記コア粒子の表面に未だ付着していない樹脂微粒子の残存状態を評価するか、または、前記コア粒子輝度分布および前記混合物輝度分布に基いて、前記樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子の生成状態を評価することで、前記被覆状態を評価することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記評価ステップでは、前記コア粒子輝度分布において個数頻度がピークとなる平均輝度であるコア粒子ピーク輝度と、前記樹脂微粒子輝度分布において個数頻度がピークとなる平均輝度である樹脂微粒子ピーク輝度とを決定し、
前記混合物輝度分布において、前記コア粒子ピーク輝度に対する個数頻度と、前記樹脂微粒子ピーク輝度に対する個数頻度との比を算出し、
算出された比を指標として前記被覆状態を評価することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、結着樹脂および着色剤を含むコア粒子と、樹脂微粒子とを準備する準備工程と、
前記コア粒子の表面を前記樹脂微粒子によって被覆するために、前記コア粒子と前記樹脂微粒子とを混合する混合処理を行う混合工程であって、上記の評価方法によって、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価し、評価結果に基いて前記混合処理を終了する混合工程と、
混合工程終了後に、前記コア粒子および前記樹脂微粒子を可塑化させる液体を噴霧し、前記コア粒子の表面に前記樹脂微粒子を融着させて被覆層を形成する被覆工程と、を有することを特徴とするカプセルトナーの製造方法である。
【0014】
また本発明は、上記のカプセルトナーの製造方法によって製造されたカプセルトナーであって、
前記コア粒子と、前記樹脂微粒子からなる被覆層とを備えることを特徴とするカプセルトナーである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、輝度分布取得ステップにおいて、複数のコア粒子を撮像して得られた画像データに基いて、撮像した複数のコア粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布をコア粒子輝度分布として取得し、複数の樹脂微粒子を撮像して得られた画像データに基いて、撮像した複数の樹脂微粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布を樹脂微粒子輝度分布として取得する。
【0016】
評価ステップにおいて、前記コア粒子と前記樹脂微粒子との混合物を撮像して得られた画像データに基いて、撮像した混合物に対する平均輝度の個数基準の頻度分布を混合物輝度分布として取得し、取得した混合物輝度分布と、予め取得していた前記コア粒子輝度分布または前記樹脂微粒子輝度分布の少なくともいずれかと、に基いて、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価する。
【0017】
コア粒子、樹脂微粒子および樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子を撮像して得られた画像データにおいて、各粒子を表わす画素の輝度に注目し、各粒子において、輝度がそれぞれ異なること、個数基準の頻度分布が異なることを利用してコア粒子表面の、樹脂微粒子による被覆状態を評価することができる。
【0018】
各粒子の撮像は、既存の撮像装置などを用いて連続して行うことができるので、得られた画像データに対して画像解析を行い、輝度分布を取得することで容易に被覆状態を評価することができる。
【0019】
また本発明によれば、前記評価ステップでは、前記樹脂微粒子輝度分布および前記混合物輝度分布に基いて、前記コア粒子の表面に未だ付着していない樹脂微粒子の残存状態を評価するか、または、前記コア粒子輝度分布および前記混合物輝度分布に基いて、前記樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子の生成状態を評価する。
【0020】
たとえば、コア粒子表面の被覆が進行すると樹脂微粒子の残存量が減少するので、樹脂微粒子の残存状態によって被覆状態を評価することができる。また、コア粒子表面の被覆が進行すると樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子の生成量が増加するので、樹脂微粒子の生成状態によって被覆状態を評価することができる。
【0021】
また本発明によれば、前記評価ステップでは、前記コア粒子輝度分布において個数頻度がピークとなる平均輝度であるコア粒子ピーク輝度と、前記樹脂微粒子輝度分布において個数頻度がピークとなる平均輝度である樹脂微粒子ピーク輝度とを決定し、前記混合物輝度分布において、前記コア粒子ピーク輝度に対する個数頻度と、前記樹脂微粒子ピーク輝度に対する個数頻度との比を算出し、算出された比を指標として前記被覆状態を評価する。
【0022】
混合前のコア粒子と、混合後に樹脂微粒子が付着したコア粒子とではピーク輝度は同じであり、混合前の樹脂微粒子と、混合後にコア粒子に付着していない樹脂微粒子とではピーク輝度は同じである。予めピーク輝度を決定しておき、混合物輝度分布において、ピーク輝度に対する個数頻度を見ると、被覆の進行に伴って変化するので、コア粒子および樹脂微粒子のそれぞれのピーク輝度における個数頻度の比によって被覆状態を評価することができる。
【0023】
また本発明によれば、コア粒子の表面を樹脂微粒子によって被覆するために、前記コア粒子と前記樹脂微粒子とを混合する混合処理を行う混合工程において、上記の評価方法によって、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価し、評価結果に基いて前記混合処理を終了する。
【0024】
これにより、所望の被覆状態で混合処理を終了することができるので、容易かつ確実に望ましい被覆層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コア粒子の平均輝度の分布を示す図である。
【図2】樹脂微粒子の平均輝度の分布を示す図である。
【図3】被覆コア粒子の平均輝度の分布を示す図である。
【図4】輝度分布の変化が、コア粒子表面の被覆状態の変化を示すことを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、結着樹脂および着色剤を含むコア粒子の表面を、樹脂微粒子で被覆することにより得られるカプセルトナー被覆状態を評価する評価方法である。
【0027】
本発明の評価方法は、大きくは(1)輝度分布取得ステップと(2)評価ステップとからなる。
【0028】
(1)輝度分布取得ステップ
輝度分布取得ステップでは、コア粒子および樹脂微粒子を撮影して、得られた画像データにおける画素の輝度値の分布を取得する。
【0029】
ここで、取得する輝度値の分布とは、コア粒子および樹脂微粒子のそれぞれにおいて取得するものであり、より詳細には、複数のコア粒子における平均輝度値の分布であり、複数の樹脂微粒子における平均輝度値の分布である。
【0030】
まず、平均輝度値について、コア粒子を例に説明する。
コア粒子を撮影して得られる画像データは、複数の画素からなるデータであり、それぞれの画素における画素値として輝度値を用いることができる。たとえば、コア粒子を撮影したときに、コア粒子の部分は明るく、コア粒子以外の部分は暗く写る場合、公知の画像解析技術を利用して、比較的明るい画素は、コア粒子を表わす画素、比較的暗い画素はコア粒子以外を表わす画素として、分離することができる。
【0031】
また、1つ1つの画素は、撮影に用いるCCD(光電結合素子)カメラの能力にもよるが、コア粒子1個よりも小さくすることで、1個のコア粒子が複数の画素によって表わすことができる。CCD素子の能力である解像度を高くすれば、1つの画素によって表わされる領域がより小さくなり、1個のコア粒子を表わす画素数は多くなる。
【0032】
本発明では、1個のコア粒子につき1つの輝度値を測定し、複数のコア粒子における輝度値の分布を輝度分布として取得する。ここで、1個のコア粒子における1つの輝度値をどのように測定するかが重要である。上記のように、1個のコア粒子は複数の画素によって表わされるが、コア粒子の表面状態は、多少の凹凸はあっても画素ごとに得られる輝度値が大きく変化するものではないから、1個のコア粒子における1つの輝度値を算術平均値(以下では単に「平均輝度」という)によって表わすことができる。たとえば、撮影して得られた画像データにおいて、1個のコア粒子が1000の画素から成る場合は、1000の画素における輝度値の総和を算出し、算出した輝度値の総和を画素数である1000で除して平均輝度を算出することができる。
【0033】
コア粒子は、1つ1つ表面状態が同じではないので、平均輝度は、コア粒子ごとに少しずつ異なっており、複数のコア粒子について平均輝度を測定すると、平均輝度には分布があることがわかる。
【0034】
図1は、コア粒子の平均輝度の分布を示す図である。横軸は平均輝度を示し、縦軸は個数頻度を示す個数基準の頻度分布である。図1に示す輝度分布から、コア粒子の平均輝度はおよそ70にピークがあり、平均輝度が90以上のものは、ほぼ頻度がゼロであることがわかる。
【0035】
次に、コア粒子の表面を被覆するための樹脂微粒子について説明する。樹脂微粒子もコア粒子と同様に扱うことができる。すなわち、樹脂微粒子をCCDカメラで撮影し、得られた画像データに基づいて、画像解析により、1個の樹脂微粒子を表わす複数の画素を他の画素から分離し、1個の樹脂微粒子を表わす複数の画素から平均輝度を算出し、平均輝度の分布を求める。
【0036】
樹脂微粒子は、コア粒子よりも小さいので、1個の樹脂微粒子を表わす画素数は、コア粒子よりも少なくなるが、1個の樹脂微粒子を表わす画素数が少なくとも10以上あればよい。
【0037】
図2は、樹脂微粒子の平均輝度の分布を示す図である。横軸は平均輝度を示し、縦軸は個数頻度を示す。図2に示す輝度分布から、樹脂微粒子の平均輝度はおよそ100にピークがあり、平均輝度が90未満のものは、ほぼ頻度がゼロであることがわかる。
【0038】
ここで、図1と図2の輝度分布を比較すると、コア粒子と樹脂微粒子とでは、分布が全く異なっており、平均輝度90を境に、コア粒子は低輝度側に分布し、樹脂微粒子は高輝度側に分布している。このように、撮影した画像データに基づく輝度分布は、コア粒子と樹脂微粒子とで大きく異なるので、輝度分布の違いを利用してコア粒子と樹脂微粒子とを区別することができる。
【0039】
樹脂微粒子によって表面が被覆されたコア粒子(以下では単に「被覆コア粒子」とよぶ)の状態を評価するためには、被覆コア粒子の輝度分布についても検証する必要がある。予めコア粒子表面に樹脂微粒子を被覆させた被覆コア粒子を準備し、コア粒子および樹脂微粒子と同様にCCDによる撮影、画像データの取得、平均輝度の算出および輝度分布の作成を行い、コア粒子の輝度分布および樹脂微粒子の輝度分布と比較した。
【0040】
図3は、被覆コア粒子の平均輝度の分布を示す図である。横軸は平均輝度を示し、縦軸は個数頻度を示す。なお、コア粒子の輝度分布および樹脂微粒子の輝度分布との比較を容易にするために図3では、被覆コア粒子の輝度分布に加えてコア粒子の輝度分布および樹脂微粒子の輝度分布も併せて示している。グラフAはコア粒子の平均輝度分布を示し、グラフBは樹脂微粒子の平均輝度分布を示し、グラフCは被覆コア粒子の平均輝度分布を示している。
【0041】
グラフCで表わされる被覆コア粒子の平均輝度分布と、グラフAで表わされるコア粒子の平均輝度分布とは、ほぼ一致している。これは、樹脂微粒子がほぼ透明であり、CCDカメラによって撮影された画像データにおいては、被覆コア粒子を表わす画素の輝度値と被覆されていないコア粒子を表わす画素の輝度値とが変わらないからである。
【0042】
ここで、樹脂微粒子によって表面が被覆されたコア粒子と、被覆されていないコア粒子とでは、平均輝度の分布は変わらないものとも考えられる。しかしながら、本発明で利用する輝度分布は、個数頻度に基づく輝度分布であるため、図1に示したようなコア粒子のみを撮影して得られた輝度分布および図2に示したような樹脂微粒子のみを撮影して得られた輝度分布と、樹脂微粒子およびコア粒子を混合した混合物の輝度分布とでは分布に大きな違いがある。またさらに、樹脂微粒子がコア粒子の表面を被覆するに従い、混合物としての輝度分布は変化するものであるので、このような分布の違いおよび分布の変化に基づいて樹脂微粒子によるコア粒子表面の被覆状態を評価することができる。
【0043】
図4は、輝度分布の変化が、コア粒子表面の被覆状態の変化を示すことを説明するための図である。図1〜3と同様に、横軸は平均輝度を示し、縦軸は個数頻度を示す。
【0044】
図1および図2に示したコア粒子および樹脂微粒子の輝度分布は、上記のようにコア粒子のみの輝度分布であり、樹脂微粒子のみの輝度分布である。コア粒子表面を樹脂微粒子で被覆しようとすると、コア粒子と樹脂微粒子とを混合した混合物の状態でたとえば、混合装置によって所定の時間流動させ、時間の経過に伴って樹脂微粒子によるコア粒子表面の被覆が進行することになる。
【0045】
したがって、コア粒子と樹脂微粒子との混合物の混合初期状態においては、コア粒子と樹脂微粒子とが独立して存在する状態であり、コア粒子の表面に樹脂微粒子は、ほとんど付着していない。
【0046】
このような混合初期状態において、混合物を撮影して得られた画像データに基づいて輝度分布を測定すると、図4のグラフDのような分布が得られる。混合初期状態では、樹脂微粒子の個数がコア粒子に比べて多くなるので、混合物について、個数頻度による輝度分布を測定した場合、個数の多い樹脂微粒子の分布が支配的となる。
【0047】
このような混合初期状態から、混合物を流動させるなどしてコア粒子の表面に樹脂微粒子が付着し始めると、樹脂微粒子が付着したコア粒子は、1個の粒子としてみなされるので、混合物に含まれる粒子全体の個数は減少することになる。そして、個数が減少する粒子は全て樹脂微粒子であり、コア粒子については、表面に付着する樹脂微粒子の数は多くなるが、混合物に含まれるコア粒子の個数は変化しない。
【0048】
したがって、混合物の輝度分布において、コア粒子の表面に樹脂微粒子が付着し始めると、樹脂微粒子に相当する分布が減少し始め、その一方でコア粒子に相当する分布が増加し始める。図4に示すグラフE〜Hは、混合物の輝度分布の変化を示している。混合物を流動させる時間が長くなると、コア粒子表面の樹脂微粒子による被覆が進行し、輝度分布被覆の進行に伴って輝度分布が変化することになる。
【0049】
流動させる時間、すなわち被覆工程の時間の経過に伴って、混合物の輝度分布はグラフEから順にグラフHまで変化する。このとき、樹脂微粒子に相当する分布の減少は進行し、コア粒子に相当する分布の増加も進行する。全ての樹脂微粒子がコア粒子の表面に付着すると、混合物の輝度分布は、コア粒子のみの輝度分布と同じとなる。
【0050】
コア粒子のみの輝度分布、樹脂微粒子のみの輝度分布および混合物の輝度分布は、上記のような特徴を表わすものであるので、これらの特徴を利用することで、樹脂微粒子によるコア粒子表面の被覆状態を評価することができる。
【0051】
・第1の評価方法
具体的には、たとえば、混合物の輝度分布を混合初期状態から一定の時間間隔で取得し、取得した輝度分布におけるコア粒子に相当する分布の変化を見て、コア粒子表面の被覆状態を評価する。図4に示す例であれば、コア粒子に相当する分布は、平均輝度70にピークを有するので、平均輝度が70における個数頻度を一定間隔で取得し、個数頻度が予め定める閾値以上となったときに、コア粒子表面が樹脂微粒子によって十分に被覆されたと評価することができる。
【0052】
また、予めコア粒子のみの輝度分布を取得しておき、ピークとなる平均輝度(以下では、「コア粒子ピーク輝度」という場合がある。)の個数頻度を最大値として決定する。実際に樹脂微粒子によってコア粒子表面を被覆する際に、混合物の輝度分布において、コア粒子のみの輝度分布におけるコア粒子ピーク輝度に当たる個数頻度を取得し、予め決定しておいた最大値の個数頻度に対する混合物の輝度分布の個数頻度が、所定の割合、たとえば90%以上となったときにコア粒子方面が樹脂微粒子によって十分に被覆されたと評価するようにしてもよい。
【0053】
・第2の評価方法
さらに、コア粒子に相当する分布のみではなく、混合物の輝度分布において、樹脂微粒子に相当する分布について評価してもよい。上記のように、混合物の輝度分布において、時間の経過に伴い、コア粒子に相当する分布は増加し、樹脂微粒子に相当する分布は減少する。これらの分布におけるそれぞれの個数頻度の比を1つの指標として、被覆状態を評価することもできる。
【0054】
混合物の輝度分布において、コア粒子ピーク輝度における個数頻度と、樹脂微粒子に相当する分布のピーク輝度である樹脂微粒子ピーク輝度における個数頻度とをそれぞれ一定間隔で取得し、これら2つの個数頻度の比を算出して指標とする。この比が予め定める閾値以上となったときに、コア粒子表面が樹脂微粒子によって十分に被覆されたと評価することができる。
【0055】
・第3の評価方法
コア粒子に相当する分布ではなく、被覆の進行に伴い減少する樹脂微粒子に相当する分布に着目して評価してもよい。図4に示す例であれば、樹脂微粒子に相当する分布は、平均輝度115にピークを有するので、樹脂微粒子ピーク輝度である115における個数頻度を一定間隔で取得し、個数頻度が予め定める閾値以下となったときに、コア粒子表面が樹脂微粒子によって十分に被覆されたと評価することができる。
【0056】
なお、コア粒子および樹脂微粒子は、いずれも固相(例えば粉体や粒子など)であってもよいし、一方が固相で他方が液相(例えばエマルジョンや分散体など)であってもよいし、いずれも液相であってもよい。
【0057】
また、平均輝度の輝度分布を取得するために、まずは平均輝度を取得する必要があるが、平均輝度を取得するためには、粒子1個を表わす画素が複数からなり、その画素の輝度値を個別に測定しなければならない。コア粒子の場合は、直径がミクロンオーダーの大きさであり、樹脂微粒子の場合は、直径がミクロン〜サブミクロンオーダーの大きさであるので、このような大きさの粒子であっても十分に撮影して輝度値を測定する必要がある。
【0058】
輝度値の測定が可能かどうかは、測定装置の機能によるが、たとえば、測定装置の解像度が、1画素あたりの撮像範囲として1辺が0.1μm(0.1μm×0.1μm)〜0.4μm(0.4μm×0.4μm)であれば好ましい。
【0059】
このような解像度でコア粒子および樹脂微粒子を撮影することができる装置として、シスメックス社製のフロー式粒子像分析装置(商品名 FPIA−3000)を用いることでコア粒子のみ、樹脂微粒子のみ、コア粒子と樹脂微粒子との混合物のそれぞれについて、連続的に粒子像を撮影して輝度値を測定することができる。
【0060】
以上のように、本発明はコア粒子、樹脂微粒子および混合粒子について撮影し、得られた画像データに基づいて取得した輝度分布によって、樹脂微粒子によるコア粒子表面の被覆状態を評価することができる。
【0061】
上記のようなフロー式粒子像分析装置を用いれば、コア粒子表面が樹脂微粒子で被覆された状態を連続的に評価することができ、被覆のための装置である混合装置や流動装置から連続的に粒子を抜き取り、混合処理と並行して被覆状態の評価を行うことで、混合処理の終点を容易かつ確実に検出することができる。
【0062】
また本発明の製造方法により製造されるカプセルトナーは、結着樹脂および着色剤を含むコア粒子と、コア粒子の表面を被覆する被覆層からなる。
【0063】
被覆層は、コア粒子表面の全面または一部に形成され、被覆層を構成する樹脂微粒子の一部が、コア粒子および隣合う微小樹脂粒子の少なくともいずれか一方と融着してなる被覆状態となることが望ましい。微小樹脂粒子同士が融着により一体化して、機械的強度の高い強固な被覆層が形成される。
【0064】
また、被覆層には、樹脂微粒子の形状がある程度残っているので、被覆層の表面に適度な微小凹凸が存在する。この微小凹凸によって、クリーニングブレードにトナーが引っ掛かり易くなり、クリーニング性が向上する。コア粒子表面全面に被覆層が形成されている場合、微小樹脂粒子材料として適宜好ましい樹脂材料を選択することによって、カプセルトナーの凝集が防止され、経時安定性に優れたカプセルトナーを得ることができる。
【0065】
また本発明の製造方法で用いる流動装置は、回転軸を含む回転撹拌手段の回転によって粉体流路内でコア粒子を流動させ、流動状態にあるコア粒子に、被覆層となる樹脂微粒子を含む液状体を噴霧手段から噴霧して、コア粒子の表面を被覆する。
【0066】
回転撹拌手段の最外周における周速は、70m/s以上120m/s以下が好ましく、粉体流路内壁の少なくとも一部に、粉体流路内壁に対するコア粒子の付着を防止する付着防止部が設けられることが好ましい。
【0067】
回転攪拌手段の周速が30m/s以上であるので、コア粒子および樹脂微粒子が粉体流路内を高速で流過する状態とすることができる。このような流動装置内では、コア粒子と樹脂微粒子との衝突による衝撃力が増大し、樹脂微粒子の一部分はコア粒子に埋没する。これによって、コア粒子と樹脂微粒子との接触面積を増加させることができ、さらにエタノールのような蒸発しやすく、かつコア粒子表面を膨潤させることのできる溶剤などを、噴霧することによって、樹脂微粒子とコア粒子との付着力を増大させることができ、コア粒子と樹脂微粒子との付着力が非常に大きくなり、コア粒子からの樹脂微粒子の離脱を確実に防止することができる。
【0068】
また装置内の温度としては、コア粒子のガラス転移温度以下に設定することで、コア粒子の変形量が小さく、コア粒子の形状を維持したまま樹脂微粒子で被覆することができる。
【0069】
これによって、たとえば不定形のコア粒子が球形化することによるクリーニング性の低下などの問題が発生しない。さらに、コア粒子および樹脂微粒子として用いる樹脂材料は特に限定されないので、材料の選択幅が拡大される。
【0070】
以下では本発明のカプセルトナーの製造方法について詳細に説明する。
本発明のトナーの製造方法は、流動装置として、回転軸を含む回転撹拌手段の回転によって粉体流路内でコア粒子を流動させる装置を使用する。回転撹拌手段は、たとえばロータである。ロータの最外周における周速は、70m/s以上120m/s以下が好ましい。
【0071】
ロータの最外周の周速とは、ロータの回転軸から最も遠い部分における周速度である。ロータの最外周の周速を、単に「回転部材の周速」という場合がある。
【0072】
以下では一例として、コア粒子と樹脂微粒子がいずれも固相(粒子)である場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0073】
本実施の形態のトナーの製造方法は、原料混合工程と、溶融混練工程と、粉砕工程と、分級工程と、樹脂微粒子調製工程と、噴霧工程と、乾燥工程とを含む。本実施の形態において、原料混合工程と、溶融混練工程と、粉砕工程と、分級工程とがコア粒子を作製するための工程である。
【0074】
このようなカプセルトナーは、噴霧工程において噴霧される低級アルコールなどの溶剤によってコア粒子表面が膨潤して軟化し、樹脂微粒子の一部分をコア粒子に埋没させることができ、樹脂微粒子とコア粒子との付着力を高めることができる。
【0075】
[原料混合工程]
原料混合工程では、コア粒子の原料である結着樹脂および着色剤、ならびに離型剤、電荷制御剤などの添加剤を混合する。
【0076】
(a)結着樹脂
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナーまたはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0077】
ポリエステルは透明性に優れ、凝集粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の結着樹脂に好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多価アルコールとしても、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また多塩基酸として無水トリメリット酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。なお、ポリエステルの主鎖および/または側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させ、水中での自己分散性ポリエステルも使用できる。またポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
【0078】
結着樹脂は、ガラス転移点が50℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点が50℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移点が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
【0079】
(b)着色剤
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
【0080】
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
【0081】
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0082】
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0083】
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0084】
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0085】
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0086】
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0087】
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
【0088】
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5〜20重量部、さらに好ましくは5〜10重量部である。
【0089】
着色剤は、合成樹脂用添加剤を混練物中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また合成樹脂用添加剤の2種以上を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、合成樹脂用添加剤の2種以上に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。
【0090】
(c)電荷制御剤
電荷制御剤としては、電子写真分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の制御剤を使用できる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。電荷制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
電荷制御剤はその全量もしくは一部を樹脂微粒子(被覆層)中に含ませても構わない。
【0091】
(d)離型剤
離型剤としては電子写真分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1.0〜8.0重量部である。
【0092】
原料混合工程では、結着樹脂、着色剤およびその他の添加剤を含むコア粒子原料を、混合機で乾式混合する。混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。原料混合工程においてコア粒子原料が混合されると、溶融混練工程に移る。
【0093】
[溶融混練工程]
溶融混練工程では、原料混合工程にて得られたコア粒子の原料混合物を溶融混練し、結着樹脂中に着色剤および他の添加剤を分散させる。
【0094】
混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。溶融混練工程にて溶融混練が行われ、結着樹脂中に着色剤などの成分が十分に分散すると、粉砕工程に移る。
【0095】
[粉砕工程]
粉砕工程では、溶融混練工程にて得られた溶融混練物を冷却して固化させ、粉砕する。粉砕に用いられる粉砕機としては、公知のものを用いることができ、たとえば超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナー)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。粉砕工程にて、溶融混練物が粉砕されると、分級工程に移る。
【0096】
[分級工程]
分級工程では、粉砕工程で得られた粉砕物中の微粉を除去し、コア粒子を得る。分級には、遠心力による分級、または風力による分級によって微粉を除去する公知の分級機を用いることができる。
【0097】
以上のような原料混合工程、溶融混練工程、粉砕工程および分級工程を経て得られるコア粒子は、体積平均粒径が4μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0098】
コア粒子の体積平均粒径が4μm以上8μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。またこの範囲まで小粒径化することによって、少ない付着量でも高い画像濃度が得られ、トナー消費量を削減できる効果も生じる。コア粒子の体積平均粒径が4μm未満であると、コア粒子の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。コア粒子の体積平均粒径が8μm超えると、コア粒子の粒径が大きく、形成画像の層厚が高くなり著しく粒状性を感じる画像となり、高精細な画像を得ることができないので望ましくない。またコア粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0099】
[樹脂微粒子調製工程]
樹脂微粒子調製工程では、乾燥された樹脂微粒子を調製する。乾燥方法はどのような方法を用いてもよく、たとえば熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などの方法を用いて乾燥樹脂微粒子を得ることができる。樹脂微粒子は、後の被覆工程において、コア粒子を被覆する材料として用いられる。樹脂微粒子をコア粒子表面の被覆材料として用いることによって、たとえば保存中にコア粒子に含まれる離型剤などの低融点成分の溶融による凝集の発生を防止することができる。
【0100】
樹脂微粒子は、たとえば、樹脂微粒子原料である樹脂をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができる。また樹脂のモノマー成分の重合によって得ることもできる。
【0101】
樹脂微粒子原料として用いられる樹脂としては、たとえば、トナー材料に用いられる樹脂を用いることができ、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体などが挙げられる。樹脂微粒子としては、上記例示した樹脂の中でも、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体を含むことが好ましい。アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体は、軽量で高い強度を有し、さらに透明性も高く、安価で、粒子径の揃った材料を得やすいなど多くの利点を有する。
【0102】
樹脂微粒子原料として用いられる樹脂としては、トナー母粒子に含まれる結着樹脂と同じ種類の樹脂であってもよく、違う種類の樹脂であってもよいけれども、トナーの表面改質を行う点において、違う種類の樹脂が用いられることが好ましい。樹脂微粒子原料として用いられる樹脂として、違う種類の樹脂が用いられる場合、樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度が、トナー母粒子に含まれる結着樹脂の軟化温度よりも高いことが好ましい。これによって、本実施形態の製造方法で製造されたトナーは、保存中にトナー同士が融着することを防止でき、保存安定性を向上させることができる。また樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度は、トナーが使用される画像形成装置にもよるけれども、80℃以上140℃以下であることが好ましい。このような温度範囲の樹脂を用いることによって、保存安定性と定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。
【0103】
樹脂微粒子は、体積平均粒径がトナー母粒子の平均粒径よりも充分に小さいことが必要であり、0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。また樹脂微粒子の体積平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。樹脂微粒子の体積平均粒径が0.05μm以上1μm以下であることによって、好適な大きさの突起部が被覆層表面に形成される。これによって本実施形態の製造方法で製造されるトナーは、クリーニング時にクリーニングブレードに引っ掛かり易くなり、クリーニング性が向上する。
【0104】
[被覆工程]
被覆工程では、流動装置によって、コア粒子の表面を樹脂微粒子で被覆するために、コア粒子と樹脂微粒子とを混合する混合処理を行い、コア粒子の表面に樹脂微粒子を付着させ、さらに溶剤を噴霧することにより、コア粒子および樹脂微粒子を膨潤、軟化させて樹脂微粒子による被覆層を形成する。
【0105】
流動装置の典型的な構成は、コア粒子および樹脂粒子を流動させる粉体流路と、溶剤を噴霧する噴霧手段と、コア粒子表面に樹脂微粒子が付着した状態で衝撃力を付与するための回転撹拌手段と、装置内の温度を調整するための温度調整用ジャケットと、粉体投入部と、粉体回収部とを含んで構成される。
【0106】
本発明の製造方法では、まず、回転撹拌手段を回転させながら、粉体流路内および回転撹拌手段の温度をこれらの外側に配設した温度調整用ジャケットに媒体を通じて所定の温度に調整する。これによって、粉体流路内の温度をコア粒子および樹脂微粒子が軟化変形しない温度以下に制御することができる。
【0107】
次に、回転撹拌手段の回転軸部材が回転する状態で、粉体投入部からコア粒子および樹脂微粒子を粉体流路に供給する。粉体流路に供給されたコア粒子および樹脂微粒子は、回転撹拌手段によって撹拌され、粉体流路内を一定方向に流動する。所定時間流動することにより、樹脂微粒子がコア粒子の表面に付着する。
【0108】
ここで、流動させる時間が短いと、コア粒子の表面に所望の量の樹脂微粒子が被覆しないので、最終的に得られるカプセルトナーにおいて、所望の被覆率となる被覆層を形成することができない。また、流動させる時間が長いと、流動中に樹脂微粒子が加熱されて、樹脂微粒子同士の凝集や、表面に樹脂微粒子が付着したコア粒子同士の凝集が生じてしまう。
【0109】
従来では、流動時間としては、予め樹脂微粒子によるコア粒子の被覆状態と流動時間との関係について実験的に取得しておき、取得しておいた関係に基づいて、所望の被覆状態を得るための流動時間を決定する。流動を開始すると、決定した流動時間だけ流動させ混合処理を終了させる。混合処理中は、被覆状態を確認しないか、確認するとしても、決定した時間が経過した時点で確認するだけである。
【0110】
本発明は、上記のように、フロー式粒子像分析装置などの画像解析装置を用いて、輝度分布を取得し、被覆状態を確認しながら混合処理を実行することができる。そして、たとえば、コア粒子のみの輝度分布に基づいて、コア粒子と樹脂微粒子の混合物の輝度分布における、コア粒子に相当するピーク輝度の個数頻度のモニタリングを行い、個数頻度が予め定める閾値(コア粒子のみの輝度分布におけるピーク個数頻度の90%)以上となった時点で、十分にコア粒子の表面が被覆されたものとして混合処理を終了する。なお、混合処理の終了とは、流動を停止するのではなく、溶剤の噴霧を開始することである。
コア粒子の表面が樹脂微粒子で被覆された状態で、溶剤の噴霧を開始する。
【0111】
噴霧溶剤としては、樹脂微粒子のコア粒子に対する濡れ性を向上させることができる液体を用いることができ、コア粒子を溶解しない液体であることが好ましい。また噴霧溶剤は、被覆層形成後に除去される必要があるので、蒸発し易い揮発性液体であることが好ましい。
【0112】
本発明で用いる噴霧溶剤としては、低級アルコールを含むことが好ましい。低級アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。噴霧溶剤がこのような低級アルコールを含むと、樹脂微粒子のコア粒子に対する濡れ性を高めることができ、コア粒子の表面全面または大部分に樹脂微粒子を付着させることが容易となる。また噴霧溶剤を除去するときの乾燥時間を一層短縮することができ、コア粒子同士の凝集を抑制することができる。
【0113】
樹脂微粒子の量としては、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を被覆することができる使用量であることが好ましい。たとえば、コア粒子100重量部に対して、3重量部以上10重量部以下の使用量で用いられることが好ましい。樹脂微粒子が3重量部未満であると、充分な被覆層を得ることができないおそれがある。樹脂微粒子が10重量部を超えると、被覆層の厚みが大きくなり過ぎ、構成材料によっては、定着性が低下するおそれがある。
【0114】
噴霧処理では、上記噴霧溶剤を樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子に噴霧する。噴霧処理は、混合処理と同じ装置によって混合処理から連続的に行われる。
【0115】
噴霧手段は、噴霧溶剤を貯留する貯留部と、キャリアガスを貯留するキャリアガス貯留部と、噴霧溶剤とキャリアガスとを混合し、得られる混合物を粉体流路内に向けて噴霧する液体噴霧ユニットとを備える。キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。液体噴霧ユニットとしては、市販品を用いることができ、たとえば、噴霧溶剤をチューブポンプ(商品名:MP−1000A、東京理化器械株式会社製)を通して二流体ノズル(商品名:AM6型、株式会社アトマックス製)に定量送液するように接続したものを使用することができる。
【0116】
噴霧処理における噴霧溶剤の噴霧は、次のようにして行う。まず温度がコア粒子のガラス転移温度以下に設定される粉体流路内を、樹脂微粒子が付着したコア粒子が流動している状態で噴霧溶剤が噴霧され、かつ撹拌による熱的エネルギが加えられることによって、コア粒子および樹脂微粒子が膨潤軟化する。本実施の形態では、2流体ノズルは、粉体流路内において、樹脂微粒子が付着したコア粒子が流動する方向とほぼ同じ方向に噴霧溶剤を噴霧するように設けられる。流動方向と2流体ノズルの噴霧方向との成す角度である噴霧角度は特に限定されないけれども、0°以上80°以下であることが好ましい。噴霧角度がこのような範囲であると、噴霧によって噴霧溶剤が粉体流路の内壁に不必要に付着することが防止される。また2流体ノズルによる噴霧の拡がり角度は、30°以上135°以下であることが好ましい。
【0117】
前述のように、回転部材の周速は、少なくとも30m/s以上に設定される。回転部材の周速が30m/s未満であると、コア粒子の流動速度が小さく、噴霧溶剤でコア粒子の表面を軟化させた状態であっても、コア粒子に対して流動エネルギが充分に付与されていないので、回転部材によって付与される衝撃力が不充分であり、強固な被覆層を形成することができない。
【0118】
また前述のように、粉体流路内の温度は、コア粒子のガラス転移温度以下に設定される。また粉体流路内の温度は、30℃以上コア粒子のガラス転移温度以下であることがさらに好ましい。粉体流路内の温度が、コア粒子のガラス転移温度を超えると、噴霧溶剤の噴霧時にコア粒子が軟化し過ぎ、コア粒子の凝集が発生するおそれがある。また粉体流路内の温度が30℃未満であると、噴霧溶剤の乾燥速度が遅くなり生産性が低下してしまう。
【0119】
また噴霧溶剤の使用量は、噴霧溶剤がコア粒子の表面全面を濡らす程度の量であることが好ましい。噴霧溶剤の使用量は、コア粒子の使用量によって決定される。また噴霧溶剤は、噴霧手段による噴霧時間、噴霧回数などによってその量を調整することができる。
【0120】
したがってコア粒子の平均粒径、コア粒子と樹脂微粒子との使用割合、コア粒子の材料および樹脂微粒子の材料などに応じて噴霧手段による単位時間当りの噴霧量を設定し、たとえばコア粒子の表面全面で、樹脂微粒子が融着して被覆層が形成された時点で、噴霧手段による噴霧溶剤の噴霧を終了すればよい。
【0121】
なお、上記では、本発明の評価方法の適用例として、噴霧処理以前の混合処理の終点を決定する例を示したがこれに限定されない。本発明の評価方法は、固相のみならず分散液などの液相でも適用することができるので、たとえば、コア粒子が流動している状態で、樹脂微粒子を分散させた噴霧溶剤を噴霧し、コア粒子表面を濡らすのと同時に樹脂微粒子を付着させるような場合であっても適用可能である。このような場合は、輝度分布に基づいて、所望の被覆状態に達した時点で分散液の噴霧を終了させることができる。
【0122】
コア粒子のみの輝度分布、樹脂微粒子の輝度分布、樹脂微粒子で被覆されたコア粒子の輝度分布は、粒子の添加順序や状態にかかわらず同じであるので、どのような被覆のさせ方であっても、本発明の評価方法により、被覆状態を評価することができる。
【0123】
[乾燥工程]
被覆層形成後の噴霧溶剤は、装置の一部からエアを抜くことによって乾燥される。噴霧溶剤の除去は、たとえば、乾燥機で噴霧溶剤を気化させてもよい。噴霧溶剤の除去には、たとえば、熱風受熱式乾燥機、伝導伝熱式乾燥機、凍結乾燥機などの通常用いられる乾燥機が用いられる。
【0124】
[外添工程]
被覆層が形成されたカプセルトナーには、さらに外添剤を添加してもよい。外添剤としては、たとえば、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウムなどの無機微粉体、またポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂、ナイロン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂微粉体が挙げられる。無機微粉体は、シリコーンオイル、シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などの疎水化処理剤で表面処理されてもよい。このような外添剤を用いることによって、流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善、感光体表面磨耗特性制御などの効果を得ることができる。
【0125】
外添剤の粒径としては、1次粒子の個数平均粒径が5nm以上40nm未満であることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることによって、外添剤のトナーからの脱離を防止することができる。また外添剤は、カプセルトナー100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下添加されることが好ましい。外添剤は、従来公知の混合機を用いてトナーに添加される。
【0126】
以上のような本発明の製造方法は、上記の構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。たとえば、本実施の形態では、溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕した後、分級による粒度調整を行う粉砕法によってコア粒子を得る場合を説明したが、これに限定されることなく、一般的なトナーの製造方法に従ってコア粒子を製造してもよい。たとえば、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法によってコア粒子を製造してもよい。
【0127】
本発明のカプセルトナーは、それ自体で1成分現像剤として用いることも可能であるが、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることもできる。キャリアとしては特に制限されず、この分野で常用されるものを使用できる。
【0128】
キャリアには、磁性材料粒子を樹脂で被覆したものが一般に用いられ、これを本発明でも用いることができる。またこの他にも磁性材料のみからなる粒子、樹脂粒子中に磁性粒子を分散した樹脂分散型キャリアなど、他の形態のキャリアを用いてもよい。
【0129】
キャリア表面を被覆する樹脂としては公知のものを使用でき、たとえば、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0130】
キャリアコアの磁性材料としても特に制限されず、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄などの酸化物、鉄、コバルト、ニッケルなどの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。またこれらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどが挙げられる。
【0131】
樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれも、一緒に用いるカプセルトナーに応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0132】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0133】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0134】
二成分現像剤におけるカプセルトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、カプセルトナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm)に例をとれば、現像剤中に、カプセルトナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、カプセルトナーを用いればよい。また二成分現像剤において、カプセルトナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
【0135】
(実施例)
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、特に限定されるものではない。以下において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。実施例および比較例における結着樹脂およびコア粒子のガラス転移温度、結着樹脂の軟化温度、離型剤の融点、コア粒子の体積平均粒径ならびに樹脂微粒子の粒子径は、以下のようにして測定した。
【0136】
[結着樹脂およびコア粒子のガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
【0137】
[結着樹脂の軟化温度]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm(9.8×10Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
【0138】
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
【0139】
[コア粒子の体積平均粒径]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:20μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
【0140】
[樹脂微粒子の1次粒子の個数平均粒径]
レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)を用いて測定を行った。測定試料(樹脂微粒子)の凝集を防ぐため、ファミリーフレッシュ(花王株式会社製)の水溶液中に測定試料が分散した分散液を投入・攪拌後、装置に注入し、2回測定を行い、平均を求めた。測定条件は、測定時間:30秒、粒子屈折率:1.4、粒子形状:非球形、溶媒:水、溶媒屈折率:1.33とした。測定試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒径側からの累積体積が50%になる粒径を粒子の体積平均粒径(μm)として算出した。
【0141】
[カプセルトナー製造装置]
カプセルトナー製造装置として、ハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、送液ポンプ(商品名:SP11−12、株式会社フロム製)を通して揮発性液体(エタノール)を二流体ノズル(商品名:HM−6型、扶桑精機株式会社製)に定量送液するように接続した噴霧ユニットを設けた装置を用いた。二流体ノズルは、揮発性液体の噴霧方向と、粉体の流動方向とのなす角度が0°になるように、取付け角度を設定した。また、粉体流路の全壁部に温度調整用ジャケットを設けた。温度調整用ジャケットの温度調整用制御装置としてはチラーを用いた。また、ガス排出部には、ガス検知器(商品名:XP−3110、新コスモス電機株式会社製)を設けた。
【0142】
〔樹脂微粒子の調製〕
スチレンとアクリル酸ブチルとを重合したものを凍結乾燥して、樹脂微粒子として、体積平均粒径が0.1μmであるスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子(ガラス転移点72℃、軟化点126℃)を得た。マイクロトラック(日機装)による測定の結果、シェルの1次粒子径は0.12μmであった。
【0143】
次に、これを藤崎電機製の4流体噴霧乾燥機により乾燥させた。乾燥した樹脂微粒子の粒子径をマイクロトラックにより測定した結果、体積平均粒子径3.1μmで、110℃でのケット法による水分測定の結果は、0.13%であり充分な乾燥が行われていた。
【0144】
〔コア粒子の製造例〕
〔コア粒子1の作製〕
・ポリエステル樹脂(商品名:タフトン、花王株式会社製、ガラス転移温度70℃、軟化温度130℃) 87.5%(100部)
・C.I.Pigment Blue 15:3 5.0%(5.7部)
・パラフィンワックス(商品名:HNP−10、日本精鑞株式会社製、融点70℃)
6.0%(6.9部)
・有機ホウ素化合物(商品名:LR−147、日本カーリット株式会社製)
1.5%(1.7部)
【0145】
以上の各成分を、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて前混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)にて溶融混練した。この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、体積平均粒径は6.5μmであり、ガラス転移温度が67℃のコア粒子1を作製した。
【0146】
〔コア粒子2の作製〕
・ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移点55℃、軟化点130℃) 87.5%(100部)
・C.I.Pigment Blue 15:3 5.0%(5.7部)
・離型剤(カルナウバワックス、融点82℃) 6.0%(6.9部)
・帯電制御剤(ボントロンE84、オリエント化学工業株式会社)
1.5%(1.7部)
【0147】
以上の各構成成分を、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて前混合した後、2軸押出混練機(商品名:PCM30、株式会社池貝製)にて溶融混練した。この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級してトナー母粒子を得た。トナー母粒子の体積平均粒径は6.5μmであり、ガラス転移点は56℃であった。
【0148】
(実施例1)
ハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)を用いて、被覆処理を行った。
【0149】
まず装置内温度を15℃以下に下げた後、回転軸部からのエアの供給量を5L/分に、二流体ノズルからのエアの供給量を5L/分に、ガス排出部からのエアの排出量を10L/分として、ハイブリダイゼーションシステムにコア粒子100重量部と、樹脂微粒子10重量部との混合物を投入し、回転攪拌部の最外周における周速度を80m/secとして、5分間攪拌を行って、樹脂微粒子の解砕処理を行った。
【0150】
少量サンプリングをし、電子顕微鏡による観察を行った結果、平均6〜7μmの異形粒子の表面に樹脂微粒子が付着した状態であった。また、一部球形のシェルと考えられる粒子も観察された。
【0151】
次に、エタノールを0.5mL/minの噴霧量で15分間噴霧した。その後、エタノールの噴霧を停止して10分間攪拌し、回転攪拌部を停止させた。このとき、回転軸部からのエアの供給量を5L/分に、二流体ノズルからのエアの供給量を5L/分に、ガス排出部からのエアの排出量を10L/分とした。エタノールの噴霧中において、ガス排出部222から排出された気体中のエタノールの蒸気濃度は約1.4vol%で安定していた。
【0152】
このとき、シスメックス株式会社製FPIA−3000により輝度分布を測定し、コア粒子のピーク輝度における個数頻度が閾値を超えた時点で噴霧を終了し、トナー1を得た。
【0153】
電子顕微鏡で表面観察を行ったところ、表面はコア粒子の凹凸が消え、平滑性が保たれていた。さらにトナーの断面観察を行い、被覆層の膜厚を確認したところ、平均0.34μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、87%と高いものであった。
【0154】
(実施例2)
前処理での処理速度を110m/sとした以外は、実施例1と同様の方法によりトナー2を得た。また、粒度分布からは粗大粉の発生は確認されなかった。
【0155】
また、トナー1と同じように電子顕微鏡で表面観察を行い、表面はコア粒子での凹凸感が消え、平滑性が保たれていた。更にトナー2の断面観察によって膜厚を確認したところ、平均0.23μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、96%と高いものであった。
【0156】
(実施例3)
前処理での処理速度を45m/sとした以外は、実施例1と同様の方法によりトナー3を得た。また、粒度分布からは粗大粉の発生は確認されなかった。
【0157】
また、電子顕微鏡で表面観察を行い、表面はコア粒子の凹凸が消え、平滑性が保たれていた。さらにカプセルトナーの断面観察によって膜厚を確認したところ、平均0.45μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、71%であった。
【0158】
(実施例4)
前処理での処理時間をなくした以外は、実施例1と同様の方法によりトナー4を得た。また、粒度分布からは粗大粉の発生は確認されなかった。
【0159】
また、電子顕微鏡で表面観察を行い、表面はコア粒子の凹凸が消え、平滑性が保たれていた。さらに断面観察によって膜厚を確認したところ、平均0.61μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、67%であった。
【0160】
(実施例5)
コア粒子1の代わりにコア粒子2を使った以外は、実施例1と同様の方法によりトナー5を得た。また、粒度分布からは粗大粉の発生は確認されなかった。
【0161】
また、電子顕微鏡で表面観察を行い、表面はコア粒子での凹凸感が消え、平滑性が保たれていた。更にトナー5の断面観察を行い、膜厚を確認したところ、平均0.41μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、75%であった。
【0162】
(比較例1)
回転部材の周速を20m/sとしたこと以外は実施例1と同様にして、トナー6を得た。また、粒度分布からは粗大粉の発生が認められた。
【0163】
電子顕微鏡で表面観察を行い、表面はコア粒子のような凹凸が多数残り平滑ではなかった。また、断面観察によって膜厚を確認したところ、平均0.91μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、43%であった。
【0164】
(比較例2)
回転部材の周速を135m/sとしたこと以外は実施例1と同様にして、トナー7を得た。また、粒度分布からは粗大粉の発生が認められた。
【0165】
電子顕微鏡で表面観察を行い、表面はコア粒子のような凹凸感が多数残り平滑性ではなかった。また、断面観察によって膜厚を確認したところ、平均1.02μmであり、また断面観察からの被覆率(被覆されている部分の周長さ/断面周長)は、39%であった。
【0166】
<収率>
カプセルトナーの収率を以下のようにして求めた。
収率[%] =
(トナー回収量[g])/(トナー母粒子および樹脂微粒子合計投入量[g])×100
◎:非常に良好。算出されたトナーの収率が95%以上である。
○:良好。算出されたトナーの収率が90%以上95%未満である。
△:実使用上問題なし。算出されたトナーの収率が80%以上90%未満である。
×:不良。算出されたトナーの収率が80%未満である。
【0167】
<付着状態>
実施例1〜5および比較例1、2について、カプセルトナー表面の付着状態を調べた。カプセルトナーをサンプリングし、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して倍率1000倍で観察を行い、目視で判断を行った。
【0168】
カプセルトナー表面に樹脂微粒子が凝集体とはならずに、均一に分散付着している状態を良好と判断できる。付着状態の判断基準は以下のとおりである。
○:凝集体が無く、トナー母粒子表面に均一に付着している。
△:若干の凝集体が観察される。
×:凝集体が多く観察され、トナー母粒子表面への付着量が不十分である。
【0169】
<被覆均一性>
実施例1〜5および比較例1、2で得られたトナーを用い、高温保存後のトナーの凝集物の有無によって、シェル層の層厚の均一性である被膜均一性を評価した。トナー20gをポリ容器に密閉し、50℃で48時間放置した後、トナーを取出し、目視によって凝集物の存在を確認した後、230メッシュのふるいに掛けた。ふるい上に残存するトナーの重量を測定し、この重量のトナー全重量(20g)に対する割合である残存量を求め、下記の基準で評価した。残存量の値が低いほど、トナーがブロッキングを起こさず、保存性が良好、すなわち被覆均一性に優れることを示す。
【0170】
被覆均一性の評価基準は以下のとおりである。
○:目視で凝集物がまったく確認されない。残存量が1%以下である。
△:目視で凝集物が確認されない。残存量が1%を超えて3%未満である。
×:目視で凝集物が少量確認される。残存量が3%以上である。
【0171】
<膜強度評価>
直径100μmのキャリア25gとカプセルトナー5gを20ccガラス製スクリュー管に取り、周波数35Hzにてシェイカーで30分混合した。その後、デベ(キャリアとトナーの混合物)を洗浄ろ過しキャリアだけを除去した。キャリアを除去したろ液の粒度分布測定を行い、初期のトナー粒子径との差異を確認した。
【0172】
初期のトナー粒度分布に比較し、微粒子が増えた量により、膜強度を評価した。
○:微粒子の増加率が5%以下である。
△:微粒子の増加率が5%を超えて8%以下である。
×:微粒子の増加率が8%を超えている。
【0173】
<フィルミング性>
日本工業規格(JIS)P0138に規定されるA4判の記録用紙上に、印字率が5%の原稿を3000枚連続印字した後、目視によって感光体に曇りがあるか否かを確認した。感光体に曇りがない場合を○(良好、フィルミングが発生していない)、曇りがある場合を×(不良、フィルミングが発生している)として評価した。
【0174】
<クリーニング性>
A4判の記録用紙上に、前記複写機にて印字率が5%の原稿を10万枚連続印字した後、クリーニングブレード通過後の感光体表面に透明テープ(商品名:メンディングテープ、住友スリーエム株式会社製)を貼付けて剥離した。感光体表面に貼付け剥離した透明テープを白紙に貼付け、分光測色濃度計(商品名:X−rite938、エス・ディー・ジー株式会社製)によって濃度を測定した。
【0175】
また予め透明テープを白紙に貼付けておき、その透明テープの部分の濃度についても前記分光測色濃度計で測定した。感光体表面に貼付け剥離した透明テープを白紙に貼付けた部分の濃度と、予め白紙に透明テープが貼付けられた部分との差を算出し、この差からクリーニング性を評価した。クリーニング性は、差が0.005以下を○(良好)0.005より大きく0.016未満を△(実使用可)、0.016以上を×(実使用不可)として評価した。
【0176】
<転写効率>
A4判の記録用紙上に、トナー付着量が0.6mg/cmになるように調整して、縦20mm、横50mmの長方形状のべた画像部を形成した。転写効率は、転写前の感光体上のトナーの重量と、紙面上に転写されたトナーの重量とをそれぞれ測定し、下記式に従って転写効率を算出した。
転写効率=(紙面上に転写されたトナーの重量)/(転写前の感光体上のトナーの重量)×100(%)
【0177】
転写効率が95%以上であれば◎(非常に良好)、90%以上95%未満であれば○(良好)、88%以上90%未満であれば△(実使用可)、88%未満であれば×(不良)として評価した。
【0178】
<総合評価>
以上の各評価結果を合わせて、以下のような基準で総合評価を行った。
◎:非常に良好。△と評価された項目および×と評価された項目がない。
○:良好。×と評価された項目がなく、△と評価された項目が1つである。
△:実使用可。×と評価された項目がなく、△と評価された項目が2つ以上である。
×:不良。×と評価された項目が1つ以上あるか、またはトナーとして使用することができなかった。
以上の評価結果を表1に示す。
【0179】
【表1】

【0180】
表1のように、本発明の評価方法で評価され、本発明の製造方法で製造された実施例1〜5のカプセルトナーであるトナー1〜5は、比較例1,2のカプセルトナーであるトナー6,7に比べてフィルミング性、クリーニング性、流動性および転写効率について優れていた。また、本発明の被覆状態の評価方法と膜厚などの特性には非常に高い相関性があり有効な処方であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含むコア粒子の表面を、樹脂微粒子で被覆することにより得られるカプセルトナーにおける、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価する評価方法であって、
樹脂微粒子で被覆する前の複数のコア粒子を撮像して得られた画像データに基いて、コア粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、撮像した複数のコア粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布をコア粒子輝度分布として取得し、コア粒子を被覆する前の複数の樹脂微粒子を撮像して得られた画像データに基いて、樹脂微粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、撮像した複数の樹脂微粒子に対する平均輝度の個数基準の頻度分布を樹脂微粒子輝度分布として取得する輝度分布取得ステップと、
前記コア粒子の表面を前記樹脂微粒子で被覆するために前記コア粒子と前記樹脂微粒子とを混合する混合処理において、前記コア粒子と前記樹脂微粒子との混合物を撮像し、撮像して得られた画像データに基いて、樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、コア粒子に未だ付着していない樹脂微粒子1個を表わす複数の画素の輝度値の平均値を平均輝度として算出し、撮像した混合物全体に対する各平均輝度の個数基準の頻度分布を混合物輝度分布として取得し、取得した混合物輝度分布と、予め取得していた前記コア粒子輝度分布または前記樹脂微粒子輝度分布の少なくともいずれか一方とを比較して、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価する評価ステップとを有することを特徴とするカプセルトナーの評価方法。
【請求項2】
前記評価ステップでは、前記樹脂微粒子輝度分布および前記混合物輝度分布に基いて、前記コア粒子の表面に未だ付着していない樹脂微粒子の残存状態を評価するか、または、前記コア粒子輝度分布および前記混合物輝度分布に基いて、前記樹脂微粒子が表面に付着したコア粒子の生成状態を評価することで、前記被覆状態を評価することを特徴とする請求項1記載のカプセルトナーの評価方法。
【請求項3】
前記評価ステップでは、前記コア粒子輝度分布において個数頻度がピークとなる平均輝度であるコア粒子ピーク輝度と、前記樹脂微粒子輝度分布において個数頻度がピークとなる平均輝度である樹脂微粒子ピーク輝度とを決定し、
前記混合物輝度分布において、前記コア粒子ピーク輝度に対する個数頻度と、前記樹脂微粒子ピーク輝度に対する個数頻度との比を算出し、
算出された比を指標として前記被覆状態を評価することを特徴とする請求項1記載のカプセルトナーの評価方法。
【請求項4】
結着樹脂および着色剤を含むコア粒子と、樹脂微粒子とを準備する準備工程と、
前記コア粒子の表面を前記樹脂微粒子によって被覆するために、前記コア粒子と前記樹脂微粒子とを混合する混合処理を行う混合工程であって、請求項1〜3のいずれか1つに記載の評価方法によって、前記樹脂微粒子による前記コア粒子の表面の被覆状態を評価し、評価結果に基いて前記混合処理を終了する混合工程と、
混合工程終了後に、前記コア粒子および前記樹脂微粒子を可塑化させる液体を噴霧し、前記コア粒子の表面に前記樹脂微粒子を融着させて被覆層を形成する被覆工程と、を有することを特徴とするカプセルトナーの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のカプセルトナーの製造方法によって製造されたカプセルトナーであって、
前記コア粒子と、前記樹脂微粒子からなる被覆層とを備えることを特徴とするカプセルトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113748(P2013−113748A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261058(P2011−261058)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】