説明

カプロラクタム重合体原料の製造方法

【課題】
(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを用いて安定な品質の(4)カプロラクタム重合体原料を製造することである。
【課題手段】
(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含む(4)カプロラクタム重合体原料の製造方法であって、前記(1)から(3)のカプロラクタムの紫外線透過率を管理幅内に管理することを特徴とする、カプロラクタム重合体原料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプロラクタム重合体原料の製造方法に関するものである。詳しくは、安定した品質のカプロラクタム重合体原料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カプロラクタム重合体を主原料として他素材を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタムを、晶析などの精製方法により精製して繊維用原料、樹脂用原料、原料中間体などとして利用できる純度の高いカプロラクタム重合体原料を得る方法として特許文献1の方法が知られている。しかし、特許文献1の方法では、連続的に晶析による精製を行う場合に、処理量の変化や晶析率の変動により、得られるカプロラクタムの品質が変動する問題がある。また、由来が異なるなど、種類の異なる複数の解重合原料を解重合してカプロラクタムを得る場合、解重合して得られたカプロラクタムの品質はそれぞれ異なるのが通常であり、これを単純に混合すると、品質が劣位になったり、品質が変動するなど、安定した品質のカプロラクタムを得ることが困難である。
【特許文献1】特開平8−48666号公報(第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来技術が有していた問題点を解決し、カプロラクタム重合体原料を製造する方法であって所望の品質のカプロラクタム重合体原料を安定して得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含む(4)カプロラクタム重合体原料の製造方法であって、比較的品質変動の大きい(2)や(3)を用いる場合に、品質規格のうちの、紫外線透過率が管理幅を外れやすく、外れた場合には他の品質規格も管理幅を外れていることが多いことを見出した。しかし、紫外線透過率は管理幅を外れやすい一方、確認するのは他の品質規格と比較して容易であり、例えばオンライン紫外線透過率分析計により連続的に確認するのも比較的容易である。このため、紫外線透過率を安定的に管理幅内に管理することにより、他の品質規格についても管理幅内に効率的に管理できることを見出した。また、(1)から(3)のカプロラクタムの紫外線透過率とランベルトベールの式を用いて混合比率を決定することにより、管理幅内の紫外線透過率を有するカプロラクタム重合体原料を効率的に製造することができることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、以下の構成を有する。(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含む(4)カプロラクタム重合体原料の製造方法であって、前記(1)から(3)のカプロラクタムが混合される前後の品質をそれぞれの紫外線透過率を用いて管理することを特徴とする、カプロラクタム重合体原料の製造方法である。
【0006】
また、カプロラクタム重合体原料の紫外線透過率を、管理幅内にコントロールするために、前記(1)から(3)のカプロラクタムの混合比率を、それぞれの紫外線透過率とランベルトベールの式を用いて決定することを特徴とするカプロラクタム重合体原料の製造方法である。
【0007】
更に、前記(1)から(3)のカプロラクタムの紫外線透過率を連続的に管理することにより、(1)から(3)のカプロラクタムの混合比率を連続的に決定することを特徴とする、カプロラクタム重合体原料の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、カプロラクタム重合体原料を製造するに際し、所望の品質のカプロラクタム重合体原料を安定して得ることができるようになった。また、カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタムや、複数の解重合原料を解重合して得られる、比較的品質の変動が大きなカプロラクタム、バージンカプロラクタム等種類の異なるカプロラクタムを混合してカプロラクタムを製造する場合にも、所望の品質のカプロラクタム重合体原料を安定して得ることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含む(4)カプロラクタム重合体原料の製造方法であって、前記(1)から(3)のカプロラクタムが混合される前後の品質をそれぞれの紫外線透過率を用いて管理することを特徴とする、カプロラクタム重合体原料の製造方法である。以下本発明についてさらに詳述する。
【0010】
本発明で用いるカプロラクタム重合体原料は、(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含むものである。
【0011】
<(1)バージンカプロラクタム>
本発明で言うバージンカプロラクタムは、カプロラクタム重合抽出水から回収されたり、カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られる、いわゆる回収カプロラクタムやリサイクルカプロラクタムでなければいかなる製法で得られるカプロラクタムでも良く、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位や、ブタジエンを出発原料としてアミノカプロン酸やアミノカプロン酸エステル、アミノカプロニトリルなどを経て得られるカプロラクタムなどである。
【0012】
<(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム>
本発明で言う、カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタムは、カプロラクタムの重合工程で生成する重合抽出水から回収されるカプロラクタムであればいかなるものでも良く、いかなる添加剤を含んでいても良い。添加剤の例としては、重合度調節剤、末端基調整剤、酸化防止剤、酸化チタン、耐光剤などである。
【0013】
<(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料>
本発明で言うカプロラクタム重合体は、カプロラクタムを重合したものであれば、いかなるものであっても良い。通常、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、カプロラクタムのオリゴマー等であり、他モノマーとの共重合体であっても良い。共重合成分としては、ヘキサンメチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどのジアミン成分、またアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あるいはラウロラクタムなどのアミノカルボン酸成分などを挙げることができる。好ましくは、ポリカプロラクタム、カプロラクタムのオリゴマーである。これらのカプロラクタム重合体には、たとえば酢酸、安息香酸のような重合度調節剤、末端基調整剤などが含まれていても良い。
【0014】
また、本発明で用いるカプロラクタム重合体を含む解重合原料としては、カプロラクタム重合体を含む、好ましくはそれを50質量%以上含む製品、原料素材製造・素材加工・製品組み立て製造過程で発生する産業廃棄物、あるいは製品使用済み廃棄物などを挙げることができる。たとえば、工業用、衣料用、屋内外用の繊維構造物、あるいはこれらの繊維屑など、また工業用、家庭機器・器具用の樹脂構造物、あるいはこれらの樹脂屑などを挙げることができる。
【0015】
さらに具体的には、繊維構造物としては、漁網、船舶用ロープなどの工業用品、ユニホーム、インナーウエアー、ストッキング、ニットウエアー、水着、レインコート、防寒着などの衣料品、カーテン、カーペットなどの屋内用品、ロープ、網、タイヤコード、ベルト、シートなどの屋外用品、また繊維屑としては、製造過程で生じるポリマー糸屑、布帛の破砕屑、不良品屑、使用済み製品などを挙げることができる。
【0016】
樹脂構造物としては、家電製品用成型部品、飲料水成型容器、玩具用成型部品、家財用成型部品、住宅用成型部品などの家庭用品、自動車用成型部品、工業機械用成型部品、パッケージ、フィルムなどの工業用品、また樹脂屑としては、製造過程で生じるポリマー成型屑、フィルム屑、切り屑、不良品屑、使用済み製品などを挙げることができる。
【0017】
上記の解重合原料は上記形態のものを単独で使用しても良いし、これらを組み合わせて原料としても良い。
【0018】
また、これらは解重合原料として、ポリカプロラクタム、あるいはカプロラクタムのオリゴマー等と一緒に用いることもできる。カプロラクタムのオリゴマーは、例えばカプロラクタム重合工程で生成する重合抽出水に含まれる。これらの解重合原料は、カプロラクタム重合体を原料・素材構成として含んでおり、かつ、他原料・素材を含んでいても良い。
【0019】
解重合原料中に含まれるカプロラクタム重合体については、カプロラクタムを効率的に回収するために、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いる解重合原料におけるカプロラクタム重合体以外の原料・素材構成としては、特に制限はなくいかなる有機物、無機物が含まれていても良い。例えば他の繊維、ポリマー、添加物、顔料、染料、加工処理剤、金属繊維、フィラー、コーティング剤、油剤、などが含まれていても良い。たとえば、綿、麻、レーヨン等のセルロース系繊維、ウール、絹等のタンパク系繊維、アクリル系繊維、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン66、ポリウレタン、ポリアセタール、樹脂添加剤(酸化防止剤・紫外線吸収剤・難燃剤・耐熱剤・静電気防止剤・滑剤など)、カーボン・ブラック顔料、各種染料、ポリオレフィン系樹脂加工剤、繊維用油剤、繊維用加工処理剤、鉛繊維、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン、シリカ、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物などが含まれていても良い。カプロラクタム重合体以外の含有量が多いと、廃棄物量が増加する。
【0021】
本発明で行う解重合法は、いかなる方法でも良い。通常、カプロラクタム重合体は加熱により解重合され、触媒を用いても良く、水の不存在下でも(乾式)、存在下でも良い(湿式)。
【0022】
解重合圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれであっても良い。解重合温度は、通常、100〜400℃であり、好ましくは、200〜350℃、さらに好ましくは、220〜300℃である。温度が低いと、カプロラクタム重合体が溶融しないうえ、解重合速度が遅くなる。温度が高いと、不必要なカプロラクタム重合体の分解が起こり、回収カプロラクタムの純度低下をもたらす。
【0023】
触媒を用いる場合は、通常、酸、あるいは塩基触媒などを用いる。酸触媒としては、リン酸、ホウ酸、硫酸、有機酸、有機スルホン酸、固体酸、およびこれらの塩、また塩基触媒としては、アルカリ水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機塩基、固体塩基などが挙げられる。好ましくは、リン酸、ホウ酸、有機酸、アルカリ水酸化物、アルカリ塩などが挙げられる。さらに好ましくは、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
【0024】
触媒の使用量は、通常、カプロラクタム重合体成分に対して、0.01から50質量%である。好ましくは、0.1から20質量%、さらに好ましくは、1から10質量%である。触媒使用量は少ないと、反応速度が遅くなり、多いと、副反応が多くなるうえ、触媒コストがかさみ経済的に不利になる。
【0025】
湿式解重合の水使用量は、カプロラクタム重合体成分に対して、0.1から50質量倍である。好ましくは、0.5から20質量倍、さらに好ましくは、1から10質量倍である。水の使用量は、少ないと、反応速度が遅くなり、多いと、回収カプロラクタム水溶液の濃度が低くなり、カプロラクタムの取得上、不利になる。
【0026】
<(4)カプロラクタム重合体原料>
本発明で言う、カプロラクタム重合体原料は、(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含むカプロラクタムであればいかなるカプロラクタムでも良く、(1)から(3)のうちの1種類だけでも、2種類以上を含んでいても良く、カプロラクタム重合体の原料として使用される。好ましくは(1)から(3)のうちの2種類以上を含む。なかでも後述するように紫外線透過率幅を管理幅内に管理しやすい点から、上記(1)とその他のカプロラクタム、すなわち(2)、(3)等のカプロラクタムの一種以上を併用することが好ましい。
【0027】
また、(1)から(3)のカプロラクタムは未精製であっても、精製されたものでも良く、(1)から(3)のカプロラクタムを混合した後に精製しても、そのまま使用してもよい。
【0028】
本発明においては、カプロラクタム重合体原料を製造する際、上記(1)〜(3)のカプロラクタムの紫外線透過率を管理幅内に管理する。すなわち、カプロラクタムの品質については、品質規格のうち、紫外線透過率が品質の良否に影響を与えることが本発明者らの検討により判明したため、これを特定の管理幅内に制御することにより、他の品質規格についても管理幅内に管理できるのである。特に比較的品質変動の大きい前記(2)や(3)を用いる場合に、紫外線透過率が管理幅を外れやすく、これを安定的に管理幅内に管理することにより、他の品質規格についても管理幅内に管理できる。
【0029】
<紫外線透過率の測定方法>
本発明で言う紫外線透過率の測定方法は、紫外線の透過率を測定できればいかなる方法でも良く、カプロラクタム水溶液の濃度、測定に用いるセルの光路長は適当に定めて良いが、特定の箇所における紫外線透過率の測定方法は一定の方法で行う。測定方法の一例を以下に示す。
【0030】
カプロラクタム20.0gに水20.0gを加えて50質量%水溶液として、10mm長の石英セルを用いて、波長290nmにおける水を基準にした紫外線透過率を測定して求められる。
【0031】
<紫外線透過率を管理幅内に管理する方法>
本発明で言う、紫外線透過率を管理幅内に管理する方法は、工程内の特定の箇所におけるカプロラクタムの紫外線透過率について管理幅を定めて、その管理幅内に紫外線透過率を管理することで、所望する紫外線透過率を有するカプロラクタム重合体原料を製造できればいかなる方法でも良い。管理する箇所は、カプロラクタム合成工程や、カプロラクタム重合抽出水からのカプロラクタム回収工程、カプロラクタム重合体解重合工程後のどの段階でも良い。
【0032】
紫外線透過率を測定することにより、例えばカプロラクタム合成工程であるベックマン転位工程やカプロラクタム回収工程、カプロラクタム重合体解重合工程、精製工程であるイオン交換工程、晶析工程、蒸留工程、水素添加工程等における不具合を発見し、正常化させることで紫外線透過率を管理幅内に管理することができる。
【0033】
また、前記(1)から(3)のカプロラクタムを混合してカプロラクタム重合体原料を製造するにおいて、紫外線透過率が管理幅よりも低いカプロラクタムを使用する場合には、管理幅よりも紫外線透過率の高いカプロラクタムを混合することにより、得られるカプロラクタムの紫外線透過率を上昇させることができる。通常(1)のカプロラクタムは、紫外線透過率が高いため、紫外線透過率の調整に好ましく用いることができる。特に紫外線透過率の変動の大きい(2)や(3)のカプロラクタムの品質が低下した場合、(2)や(3)の混合比率を下げることにより、カプロラクタム重合体原料の紫外線透過率を管理幅内に管理することができる。
【0034】
カプロラクタム重合体原料に関する紫外線透過率の管理幅については、カプロラクタム水溶液濃度50%、セルの光路長10mmの測定条件で、85%以上に管理するのが好ましい。好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上である。紫外線透過率はより高いのが好ましいが、安定的に管理幅内で品質変動が少ないカプロラクタムを製造できるのが好ましい。
また、紫外線吸光度は、紫外線透過率から一義的に決まるため、本発明の手段として用いる紫外線透過率の管理または確認を、紫外線吸光度の管理または確認で行っても良い。
【0035】
<混合比率の決定方法>
本発明で言う、紫外線透過率とランベルトベールの式を用いたカプロラクタムの混合比率の決定方法は以下の通りである。吸光度(A)と紫外線透過率(T%)に関して、以下のランベルトベールの式が成り立つ。
【0036】
吸光度:A=log(100/T)=ε・C・L
(ε:吸光係数、C:カプロラクタム水溶液濃度、L:セルの光路長)
紫外線透過率:T(%)=100×(I/I
(I:試料への入射光強度、I:試料からの透過光強度)
このように紫外線吸光度は、紫外線透過率から一義的に決まるため、紫外線透過率を管理幅内に管理することは、紫外線吸光度について管理幅内の紫外線透過率を与える紫外線吸光度の幅内に管理することと同じである。
【0037】
このため、混合比率の決定は、混合後のカプロラクタムの紫外線吸光度が、管理幅内の紫外線透過率を与える紫外線吸光度になるように混合比率を決めることで達成される。すなわち、混合前の各カプロラクタムの紫外線吸光度と各カプロラクタムの混合割合の積を積算したものが、所望する紫外線吸光度の幅内にある混合比率を求めることにより達成される。
本発明の一般的方法を例示すれば、カプロラクタムサンプル1(紫外線透過率T%、吸光度A)、と2(紫外線透過率T%、吸光度A、但しT%>T%>T%)を混合して得られる混合カプロラクタムが、管理下限の紫外線透過率T%、及び吸光度Aとなるときの、サンプル2の混合割合をX%とすると、以下の式が成り立つ。
=log(100/T
=(1−X/100)A+(X/100)A
=(1−X/100)log(100/T)+(X/100)log(100/T
この式を満たすXがこの値よりも小さな値を取る時に、Tは管理下限以上の紫外線透過率となるため、サンプル2の混合比率はX%以下に管理する。
【0038】
<紫外線透過率を連続的に確認して、混合比率を連続的に決定する方法>
本発明で言う、紫外線透過率を連続的に確認して、混合比率を連続的に決定する方法は、連続的に確認した紫外線透過率の値と、上記の混合比率の決定方法に基づき、連続的に前記(1)から(3)のカプロラクタムの混合比率を決定し、管理幅内の紫外線透過率を有するカプロラクタム重合体原料を製造できればいかなる方法でも良い。紫外線透過率の確認方法としては、例えばオンライン紫外線透過率分析計を用いて紫外線透過率を連続的に確認する。この値を元に、管理幅内の紫外線透過率を有するカプロラクタムを与える、各カプロラクタムの混合比率を計算により求めることができる装置で、各カプロラクタムの混合比率を決定する。これにより決定された混合比率で各カプロラクタムを連続的に混合しうる装置で各カプロラクタムを混合し、管理幅内の紫外線透過率を有するカプロラクタム重合体原料を得る。本発明で言う、「連続的」とは「管理幅内に紫外線透過率を管理するために必要な程度の頻度」であり、3時間に1回以上であることが好ましい。好ましくは1時間に1回以上、更に好ましくは30分間に1回以上である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例は、何ら本発明を限定するものではない。
【0040】
実施例1
以下の2種類のカプロラクタムを連続的に混合してカプロラクタム重合体原料を製造した。
(A)バージンカプロラクタムとカプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタムの混合物を精製して得られるカプロラクタム
(B)ナイロン6を主原料とするネット及び衣料を解重合して得られたカプロラクタムを、精製して得られるカプロラクタム
(A)の紫外線透過率は製造開始から終了まで安定して95%(吸光度0.022)であった。一方、(B)の紫外線透過率は製造開始から終了までの間に、90%(吸光度0.046)から88%(吸光度0.056)に直線的に低下した。カプロラクタム重合体原料の紫外線透過率に関する管理幅の下限は93%(吸光度の管理幅の上限0.032)としており、(B)の混合比率を紫外線透過率を93%に管理できる比率に、(A)と(B)の紫外線透過率とランベルトベールの式から求められる(B)の混合比率に変化させた。
【0041】
製造開始時と終了時に関して解重合で得られたカプロラクタムを混合できる最大限の混合比率に関して以下の式が成立する。
【0042】
(1)(B)の紫外線透過率が90%の時の(B)の最大混合比率X90%について
log(100/93)=(1−X90/100)×log(100/95)
+(X90/100)×log(100/90)
90=39 (解重合で得られるカプロラクタムの混合比率は39%以下)
(2)(B)の紫外線透過率が88%の時の(B)の最大混合比率X88%について
log(100/93)=(1−X88/100)×log(100/95)
+(X88/100)×log(100/88)
88=28 (解重合で得られるカプロラクタムの混合比率は28%以下)
このため、製造開始から終了までの間、(B)の混合比率は39%から28%に直線的に低下した。この比率で混合して得られたカプロラクタム重合体原料は93%の紫外線透過率を有し、繊維用原料、樹脂用原料、原料中間体などとして利用できる高い品質を有していた。
【0043】
比較例1
実施例における(A)と(B)の混合比率を、製造開始時に定めた混合比率に固定する以外は実施例1と同様の方法でカプロラクタム重合体原料の製造を行った。得られたカプロラクタム重合体原料は紫外線透過率の管理幅の下限である93%を下回り品質が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含む(4)カプロラクタム重合体原料を、工業的に有利な方法で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)バージンカプロラクタム、(2)カプロラクタム重合抽出水から回収されるカプロラクタム、及び(3)カプロラクタム重合体を含む解重合原料を解重合して得られるカプロラクタム、のうち少なくとも1つを含む(4)カプロラクタム重合体原料の製造方法であって、前記(1)から(3)のカプロラクタムの紫外線透過率を管理幅内に管理することを特徴とする、カプロラクタム重合体原料の製造方法。
【請求項2】
管理幅内の紫外線透過率を有するカプロラクタム重合体原料を得るために、前記(1)から(3)のカプロラクタムの混合比率を、それぞれの紫外線透過率とランベルトベールの式を用いて決定することを特徴とする、請求項1に記載のカプロラクタム重合体原料の製造方法。
【請求項3】
前記(1)から(3)のカプロラクタムの紫外線透過率を連続的に確認することにより、(1)から(3)のカプロラクタムの混合比率を連続的に決定することを特徴とする、請求項1または2に記載のカプロラクタム重合体原料の製造方法。

【公開番号】特開2007−99646(P2007−99646A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289050(P2005−289050)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】