説明

カメラモジュール及び電子機器

【課題】光学構造体と固体撮像素子を実装した素子基板との分離が容易でありながらも両者を確実に結合することが可能なカメラモジュール及びそのようなカメラモジュールを備えた電子機器の提供を目的とする。
【解決手段】レンズ6の焦点位置を調整できる光学構造体5と、レンズ6に対応させて固体撮像素子を実装した素子基板1との間に、中間構造体8が配置されている。光学構造体5及び中間構造体8の内の少なくとも一方、たとえば中間構造体8が他方、たとえば光学構造体5を嵌合するための嵌合部11と、この嵌合部11による嵌合状態を維持するために両者を係止するための係止部9,10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの焦点位置を調整できる光学構造体を有するカメラモジュール、及びそのようなカメラモジュールを実装した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラモジュールとして、レンズを含む光学構造体と、固体撮像素子とを組み合わせたものが公知である(例えば特許文献1参照)。また、レンズの焦点位置を調整できる自動焦点機能付きイメージモジュール(カメラモジュール)も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電子撮像装置は、配線基板に対して固体撮像素子をレンズ組立体の内側に、かつ同軸に配設した電子撮像装置(カメラモジュール)である。特許文献1に記載の電子撮像装置では、固体撮像素子のケース外周に係止部を設け、また、マウント(レンズ組立体)に爪部を形成して、レンズ組立体を固体撮像素子に対して係止部と爪部との係合を介して取り付けるようにしている。このような特許文献1に記載の電子撮像装置では、固体撮像素子のケース外周に係止部を設けているのでケースの外形による制約があり、電子撮像装置(カメラモジュール)を小型化する上で問題があった。また、固体撮像素子以外の回路部品を接続する基板が別途必要になり、部品点数が増えるという問題があった。また、係合部分がケース外周、マウントの端部に限られることから、確実な係合が保証されないという問題があった。
【0004】
図9は特許文献2に記載の自動焦点機能付きイメージモジュールの斜視断面図である。この特許文献2に記載の自動焦点機能付きイメージモジュールは、イメージパッケージング(固体撮像素子を実装したパッケージ)とレンズブレードユニット(光学構造体)とを主要構成とする。イメージパッケージングは、センサー111、基板112、センサーカバー113及びセンサーフィルター114からなる。センサー111は画像イメージデータを感知する役割を果す。センサー111は基板112上に位置し、センサーカバー113はセンサー111及び基板112を外部で囲んでおり、センサーフィルター114はセンサーカバー113及びセンサー111間で光のみを通過させ、外部環境を遮断する。
【0005】
レンズブレードユニットはアクチュエータの役割を果すが、これは外部から電流が印加される弾性手段116と、弾性手段116により誘導電流が流れるように巻き回されたコイル119と、コイル119に流れる電流により電磁気場が形成されるように設けられたマグネット120と、コイル119及びマグネット120により発生した電磁気力によって上下で力を受けるレンズブレード118と、レンズブレード118の中央部に連結して上下運動するレンズ117とからなる。また、弾性手段116を支持するためにセンサーカバー113の外側に位置するホルダー115を備える。
【0006】
上述のような特許文献2に記載の自動焦点機能付きイメージモジュールでは、コイル119の端子ともなる弾性手段116に別途リード線を接続する必要があり、組立工程が煩雑になること、部品点数が増加すること等の問題があった。また、イメージパッケージングとレンズブレードユニットとの連結が容易ではなく、また、一度連結するとイメージパッケージングとレンズブレードユニットとを分離することが困難であり、いずれか一方のみが不良の場合にも両方を不良として処理することになるという問題があった。また、光学構造体と素子基板とを接着する際に光学構造体の接着面を洗浄する必要があること、接着剤を硬化するための加熱が必要であること等から、光学構造体への悪影響が生じるという問題もあった。
【0007】
更に、他の従来技術としての特許文献3に記載の撮像モジュールは、CNOSセンサを実装した回路基板に固着された第2のケースの上部に、レンズを保持した第1のケースが付勢ばねにより上方へ(回路基板から離隔する方向へ)付勢された状態で第2のケースに対して擦動可能に組みつけられており、第1のケースには係止レバーが、第2のケースには係止片がそれぞれ設けられている。そして、使用状態においては係止レバーと係止片との係合を解除することにより、レンズを保持する第1のケースが第2のケースに対して付勢ばねの付勢力によって回路基板か離隔する方向へ突出する。この場合、第1のケースが保持するレンズと回路基板に実装されたCMOSセンサとの間の距離がレンズの焦点距離になる。一方、収納時(非使用時)には、第1のケースが回路基板側へ押されることにより、係止レバーと係止片とが係合し、第1のケースの回路基板からの突出量が小さくされた状態になる。
【0008】
特許文献3に記載の撮像モジュールでは更に、係止片を第1のケースの擦動方向に沿って第2のケースに複数備えることにより、第2のケースに対する第1のケース、換言すれば回路基板とレンズとの間の距離を調整する構成も開示されている。このような特許文献3に記載の撮像モジュールでは、レンズを保持した第1のケースのみを容易に取り換えることが可能である。
【特許文献1】特開平11−295576号公報
【特許文献2】特開2003−75712号公報
【特許文献3】特開2003−319268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1に記載の電子撮像装置は、固体撮像素子を実装したケースをレンズ組立体に係合することから小型化に限界があり、部品点数も増加するという問題があった。更に、確実な係合が保証されないという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の自動焦点機能付きイメージモジュールでは、自動焦点機能のためのコイル端子の接続が煩雑になり、部品点数も増加する。また、イメージパッケージングとレンズブレードユニットとを分離することが困難であり、不良発生の確率が高くなるのでコスト増加が避けられず、コスト低減が容易ではないという問題があった。更に、光学構造体と素子基板とを熱硬化型接着剤で接着する際に光学構造体が表面の洗浄及び接着剤を熱硬化させるための加熱により影響を受けるという問題があった。
【0011】
特許文献3に記載の撮像モジュールでは第1のケース又は回路基板が不良である場合にはそれぞれを良品と交換することが容易に可能である。しかし、係止レバー及び係止片による第1のケースの第2のケースに対する係止は、第1のケースの第2のケースに対する突出量を規定するための機能しか有していない。また、レンズは第1のケースに固定されて保持されている。更に、第2のケースに対して第1のケースが、第2のケースの外側に第1のケースが嵌合した状態で擦動移動可能な構成が採られているので、両者の嵌合にはある程度の余裕が必要であり、この余裕は経時的に拡大していわゆるがたつく状態になる虞がある。以上のことから、特許文献3に記載の撮像モジュールでは、第1のケースと第2のケースとの間の係合には確実性が乏しく、従って回路基板に実装されたCMOSセンサの受光面に対する第1のケースが保持するレンズの光軸の直交性の維持が保証されない虞がある。
【0012】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、上述した各従来技術が有する問題点を解決することを主たる目的とする。本発明は端的には、焦点位置の調整が可能な状態でレンズを保持した光学構造体と、固体撮像素子を実装した素子基板に固着された中間構造体とを、嵌合部による嵌合で固定的に結合し、その嵌合状態を係合部による係合で維持し、また係合部による係合を解除することで光学構造体と中間構造体との嵌合をも容易に解除し得る構成を採る。これにより、光学構造体と中間構造体との確実な結合、換言すれば光学構造体と素子基板との確実な結合を実現することにより、固体撮像素子の受光面に対するレンズの光軸の直交性が確実に保証され、しかも光学構造体と中間構造体(ひいては固体撮像素子を実装した素子基板)との分離が容易なカメラモジュールを提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、光学構造体と中間構造体との間の結合を接着剤を使用せずに実現することにより、小型化、部品点数の削減を図りながらも光学構造体と中間構造体との確実な結合が可能であり、接着剤を使用する際に必要な洗浄及び接着剤の熱硬化のための加熱による悪影響を回避しうるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明に係る電子機器は上述のような本発明に係るカメラモジュールを用いることにより、小型化、部品点数の削減が可能で、組立てが簡略化できる電子機器を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るカメラモジュールは、レンズの焦点位置を調整できる光学構造体と、前記レンズに対応させて固体撮像素子を実装した素子基板とを備えるカメラモジュールにおいて、前記光学構造体と素子基板との間に配置される中間構造体が設けられ、前記光学構造体及び中間構造体の内の少なくとも一方は、他方の構造体を係止するための係止部を備え、前記光学構造体及び中間構造体の内の少なくとも一方は、他方の構造体を嵌合するための嵌合部を備えることを特徴とする。
【0016】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、光学構造体と中間構造体とが嵌合部による嵌合によって確実に結合され、更にその結合状態が係止部による係止でもって維持される。一方、係止部の係止を解除することにより、光学構造体と中間構造体との嵌合部による嵌合を解除して光学構造体と中間構造体(ひいては固体撮像素子を実装した素子基板)との分離が容易になる。
【0017】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記中間構造体は素子基板に固定してあることを特徴とする。
【0018】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、中間構造体が素子基板に固定されていることにより、中間構造体を介しての光学構造体の素子基板に対する位置関係が正確に規定される。
【0019】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記係止部は少なくとも2箇所に設けてあることを特徴とする。
【0020】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、2箇所に設けられた係止部により中間構造体(及び素子基板)に対する光学構造体の位置決めが正確に行なわれる。
【0021】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記係止部の内の少なくとも2つの係止部は係止部が設けられた一方の構造体から突出し、他方の構造体を挟むように構成された挟持用突起部であることを特徴とする。
【0022】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、一方の構造体は、他方の構造体の側面を挟んで係止するように構成された挟持用突起部を一対(2つ)備えることから、他方の構造体を確実に挟持することができ、安定した係止ができる。
【0023】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記光学構造体は前記レンズの入光面側から見た外周形状が矩形状であり、該矩形状の前記係止部が設けられた辺とは異なる辺に前記嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、光学構造体はレンズ入光面側(表面側)から見た外周形状が矩形状(入光面側から見た平面視が矩形状)であり、この矩形形状の4辺の異なる辺に係止部と嵌合部とが設けられていることから、矩形形状の少なくとも3辺が係止部及び嵌合部により固定される。
【0025】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記光学構造体は前記レンズの入光面側から見た外周形状が矩形状であり、該矩形状の角部側に偏倚した位置に前記係止部を備えることを特徴とする。
【0026】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、光学構造体はレンズ入光面側(表面側)から見た外周形状が矩形状(入光面側から見た平面視が矩形状)であり、矩形状の外周側面と円筒状のレンズ(及び駆動用のコイル)の外周側面との間に有効に利用可能な光学構造体の角部空間が形成される。
【0027】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記光学構造体及び前記中間構造体は、接着剤を用いることなしに、前記係止部及び嵌合部により結合されていることを特徴とする。
【0028】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、中間構造体と光学構造体との結合に際して接着剤が利用されないので、特に熱硬化型接着剤を用いる際に必須の硬化のための加熱工程が不要になる。
【0029】
本発明に係るカメラモジュールでは、前記素子基板はリードレスチップキャリア型の基板であることを特徴とする。
【0030】
このような本発明に係るカメラモジュールでは、素子基板はリードレスチップキャリア型としたので、素子基板の接続端子部を電子機器の機器基板(マザーボード)に容易に接続できる。
【0031】
本発明に係る電子機器は、本発明に係るカメラモジュールを機器基板に実装してあることを特徴とする。
【0032】
このような本発明に係る電子機器では、カメラモジュールが機器基板に実装されているので、本発明に係るカメラモジュールの特徴を有する電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0033】
前記のような本発明のカメラモジュールによれば、中間構造体と光学構造体とが嵌合部による嵌合によって確実に固定され、更に係止部による係止によって嵌合部による嵌合が確実に維持されるので、2種類の係止部材を使用することにより光学構造体と中間構造体との確実な位置決めと係止とが可能になる。また上記のような構成により、固体撮像素子の受光面に対するレンズの光軸の直交性が確実に保証される。しかも、係止部による係止を解除することにより嵌合部による嵌合をも解除することが出来るので、光学構造体と中間構造体(ひいては固体撮像素子を実装した素子基板)とが容易に分離可能になる。従って、光学構造体を素子基板(より具体的には素子基板に固定された中間構造体)に結合した後の特性検査において光学構造体又は素子基板のいずれか一方のみに不良発生が判明した場合には、不良発生が判明した方のみを容易に交換することが可能になる。この結果、全体としての不良発生率を小さくでき、ひいては製造コストの削減が実現される。また、中間構造体と光学構造体との結合に際して特に熱硬化型接着剤を用いた場合に必須の加熱工程が不要になるので、光学構造体(レンズ、コイル等)への熱による影響が生じないカメラモジュールを提供することができる。
【0034】
また本発明に係るカメラモジュールによれば、光学構造体はレンズ入光面側(表面側)から見た外周形状が矩形状(入光面側から見た平面視が矩形状)であるので、矩形状の外周側面と円筒状のレンズ(及び駆動用のコイル)の外周側面との間に形成される光学構造体の角部空間を有効に利用できる。従って、挟持用突起部又は切欠部を設けても光学構造体の矩形(平面視形状)の大きさを大きくする必要がない。
【0035】
前記のような本発明の電子機器によれば、上記のようなカメラモジュールを備えることにより、小型化、部品点数の削減が可能で、組立てが簡略化された電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【0037】
(実施の形態1)
まず実施の形態1として本発明に係るカメラモジュールの構成について説明する。図1は本発明に係るカメラモジュールの概略平面図である。具体的には、レンズの入光面側から見た構成を示す。図において1は素子基板である。この素子基板1の同一面には、固体撮像素子2(図2参照)及び固体撮像素子2との間で信号の送受を行なう画像信号処理用のプロセッサであるDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)3が実装されている。DSP3は固体撮像素子2との間のみならず、素子基板1の外部(例えば、電子機器の機器基板等)との間でも信号の送受を行なう。素子基板1には抵抗等のチップ部品4が適宜実装してある。
【0038】
素子基板1の表面には光学構造体5が配置されている。光学構造体5の中心には外部の光(画像光、映像光)を固体撮像素子2へ導入するレンズ6が配置されている。即ち、レンズ6に対応して固体撮像素子2が素子基板1に実装されている。光学構造体5はレンズ6の入光面側から見た外周形状が矩形状に形成されており、平面形状が矩形状の枠部7を構成している。素子基板1と光学構造体5との間には中間構造体8が配置されている。中間構造体8は光学構造体5を係止する(又は逆に、光学構造体5は中間構造体8を係止する)ための係止部9、10を枠部7の一部側面に備えている。更に、中間構造体8は光学構造体5を嵌合する(又は逆に、光学構造体5は中間構造体8を嵌合する)ための嵌合部11を枠部7の一部側面に備えている。矩形状の枠部7の異なる辺に分かれて少なくとも2点(2箇所)の係止及び1点(1箇所)の嵌合により、中間構造体8(素子基板1)に対する光学構造体5の位置決めを確実に行なえると共に確実な係止(嵌合)が可能になる。
【0039】
中間構造体8と光学構造体5とを係止(嵌合)するのみでよく、相互に固着(接着)する必要はないので光学構造体5の取り外しが容易であり、光学構造体5を素子基板1に嵌合(係止)した後の特性検査において不良が判明し、素子基板1の交換が必要な場合、逆に光学構造体5の交換が必要な場合にそれぞれを容易に交換(リペア)できる。また、中間構造体8と光学構造体5との結合に際し、接着剤を利用しないので、特に熱硬化型接着剤を用いた場合に硬化のための加熱工程が不要となり光学構造体5を構成するレンズ、コイル等への熱による影響を回避することができる。
【0040】
2箇所の係止部9、10は、中間構造体8から突出し、光学構造体5を挟むように構成された挟持用突起部24(図5、図6参照)である。係止部9、10は、対になっており、互いに対向させて枠部7を双方向から挟持することにより、中間構造体8が光学構造体5を確実で安定して係止(保持)できるように構成してある。係止部9、10(挟持用突起部24、切欠部25(図5〜図7参照))の平面上の位置を枠部7の角部側に偏倚した位置とすることによりレンズ6等の円周形状の部材(円筒状の部材)と矩形状の枠部7との間に形成される枠部7の角部空間を有効に利用でき、光学構造体5の平面面積が大きくなることを防ぐことができる。また、嵌合部11は、光学構造体5から突出する突起部と、この突起部に対応する中間構造体8の側面の切欠部とで構成し、これら突起部と切欠部とが嵌合するようにしてある。つまり、凹凸関係が逆の嵌合部を設けることにより、確実で安定した嵌合が可能となる。
【0041】
図2は図1の矢符A−A方向での拡大概略断面図である。図1と同一要素には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略する。素子基板1にはチップ状態で固体撮像素子2が実装(ダイボンド、ワイヤボンド)してある。固体撮像素子2の周囲の素子基板1には中間構造体8が例えばエポキシ樹脂接着剤等を用いて固定(接着)されている。中間構造体8を素子基板1に固定することにより光学構造体5の係止位置を正確に規定することができる。中間構造体8はプラスチック(合成樹脂)を成型したものを予め用意しておく。中間構造体8には固体撮像素子2に対応する位置に窓部12が形成されている。窓部12には光学フィルタ13(赤外線をカットするための光学フィルタ)が貼付されている。なお、光学フィルタ13としては、赤外線カットフィルタ以外には、光学ローパスフィルタや単なる保護用フィルタ等、他の光学フィルタでも良く、複数の機能を兼ね備えるものを用いてもよい。
【0042】
中間構造体8に係止された光学構造体5は、その中央部に複数のレンズを適宜組み合わせて構成したレンズ6を備えている。光学構造体5の枠部7の内側には磁石14が配置され、磁石14の内側にはコイル15が配置されている。磁石14、コイル15は光学構造体5に内蔵されて同心円状に形成されており、レンズ6の周囲に同心円状に配置されている。コイル15にコイル電流を流すことにより磁石との間で吸引力又は反発力を発生させ、コイル15の位置を適宜上下動させることができる。コイル15はレンズ6を保持するレンズ保持部16と一体に移動するように構成してあり、コイル電流を調整することにより、レンズ6の焦点位置を適宜調整することができる。つまり、光学構造体5はレンズの焦点位置を調整可能な構成としてある。なお、コイル15及びレンズ保持部16は適宜の板バネ(不図示)を用いて空間で支持する形態にしてある。
【0043】
図3は図1の矢符B−B方向での概略断面図である。図1、図2と同一要素には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略する。素子基板1には、チップサイズパッケージで構成されたDSP3が実装(ボールボンド)してある。嵌合部11では、光学構造体5から突出した突起部19(図6、図7参照)が中間構造体8の方へ延長して嵌合する状態の概略を示している。
【0044】
図4は図1の矢符X方向から見た拡大概略側面図である。図1〜図3と同一要素には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略する。中間構造体8には素子基板1の角部の切欠部へ突出する突起部17が形成してあり、素子基板1と中間構造体8との位置決めを容易にでき、かつ正確にできるようにしてある。光学構造体5の側面からコイル15に接続されたコイル端子18が導出してあり、光学構造体5の側面に沿って素子基板1まで延在させてある。中間構造体8の側面に嵌合する突起部19(嵌合部11に対応)が光学構造体5から突出して、中間構造体8の切欠部20に適宜嵌合するように形成してある。コイル端子18は光学構造体5の側面に形成された突起部21に適宜嵌合するように構成され、光学構造体5に固定される。コイル端子18は突起部19に沿って素子基板1に形成されたコイル接続端子部22まで延在し、相互に接続できる構成としてある。なお、この状態では、コイル端子18はコイル接続端子部22に接触していなくても良く、後述の機器基板(マザーボード)への実装において、半田付け等によりコイル端子18の機器基板での配線部に電気的に接続されればよい。
【0045】
素子基板1はリードレスチップキャリア型の基板(セラミック基板)で構成される。リードレスチップキャリア型とすることでカメラモジュールを小型化でき、カメラモジュールを実装する電子機器(実施の形態2参照)本体を小型化することができる。素子基板1の端部側面にはコイル接続端子部22の他に画像信号処理用の端子(固体撮像素子1及び画像信号処理回路としてのDSP3への接続端子)として接続端子部23が形成してある。コイル接続端子部22は流す電流が大きいことから接続端子部23よりも大面積の端子とすることにより、確実な接続を可能として接続抵抗を低減し、抵抗による発熱を防止している。素子基板1をリードレスチップキャリア型の基板にしたことにより、素子基板1のコイル接続端子部22、接続端子部23を電子機器の機器基板(マザーボード)50(図8参照)に接続する場合に、接続が容易にできる。
【0046】
コイル端子18を素子基板1に形成されたコイル接続端子部22まで延在させることにより、素子基板1の接続端子部23を電子機器の機器基板(マザーボード)50に半田付け等で接続する場合に同時にコイル端子18及びコイル接続端子部22をも機器基板50に接続することができ、コイル15(コイル端子18)の接続工程を簡略化できる。つまり、自動焦点カメラモジュールを電子機器に実装する場合の部品点数、工程数を削減することができる。
【0047】
コイル端子18に対応するコイル接続端子部22は、素子基板1でのDSP3の実装位置と反対側の位置に配置してある。画像信号に比較して大きな電流を流すコイル端子18を画像信号処理回路の実装位置と反対側の位置から取り出すことにより、コイル電流による画像信号処理回路に対する熱的、電磁的影響を低減させている。
【0048】
図5は図1の矢符Y方向から見た拡大概略側面図である。図1〜図4と同一要素には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略する。素子基板1にはDSP3及びチップ部品4が実装されている。中間構造体8には素子基板1の角部の切欠部及び矢符Y方向から見た素子基板1の側面中間部の切欠部へそれぞれ突出する突起部17、17が形成してあり、素子基板1と中間構造体8との位置決めを容易にでき、かつ正確にできるようにしてある。素子基板1の側面には接続端子部23が形成してある。係止部9(10)に対応して挟持用突起部24、切欠部25が形成してある。挟持用突起部24は、中間構造体8から突出して、光学構造体5を挟むように構成してある。また、挟持用突起部24は、光学構造体5に形成された切欠部25に嵌合するように構成してある。挟持用突起部24切欠部25は相互に嵌合することから確実な係止が可能となる。
【0049】
図6は図1の矢符X方向から見た概略分解側面図である。図1〜図5と同一要素には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略する。係止部9、10に対応して、中間構造体8から光学構造体5の方へ突出した形状で挟持用突起部24が一対形成してある。挟持用突起部24は弾性を有するように適宜の曲率を立ち上がり部分に有しており、板状に延長している。挟持用突起部24の先端には係止用爪部26が形成してある。係止用爪部26により挟持用突起部24を切欠部25から外れないようにでき、係止状態をより安定にして、光学構造体5と中間構造体8とが容易に分離しないようにしている。
【0050】
嵌合部11に対応して、光学構造体5には突起部19が、中間構造体8には切欠部20がそれぞれ形成してある。光学構造体5は中間構造体8の側面の切欠部20に嵌合する突起部19を備えることから、挟持用係止部24とは異なる形態(凹凸の形態を逆の形態)で嵌合することができ、光学構造体5と中間構造体8とを相互に互い違いに嵌合する形態にできるので、安定した確実な嵌合ができる。また、光学構造体5から中間構造体8に向かって突出するので、突起部19にコイル15の端子であるコイル端子18を当接して延長する(延在させる)ことができる。切欠部20には突起部19の先端に形成してある係止用爪部27(図7参照)に対応するより深い切欠部28が形成してある。係止用爪部27により突起部19を切欠部20から外れないようにでき、係止状態を安定にしてより確実な係止ができるので、光学構造体5と中間構造体8とが容易に分離しないようにできる。なお、光学構造体5と中間構造体8との結合強度が充分であれば、係止用爪部27及び切欠部28を設けなくとも、単に切欠部20に突起部19を嵌合させるのみでもよい。
【0051】
図7は図1の矢符Y方向から見た概略分解側面図である。図1〜図6と同一要素には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略する。係止部9に対応して、中間構造体8には挟持用突起部24が、光学構造体5には切欠部25がそれぞれ形成してある。挟持用突起部24は切欠部25に対応し、相互に嵌合する形態としてあるので、確実な係止ができる。切欠部25は光学構造体5の角部側に偏倚した位置に配置してある。また、嵌合部11に対応して、光学構造体5には突起部19が、中間構造体8には切欠部20がそれぞれ形成してある。突起部19の先端には係止用爪部27が形成してある。突起部19にはコイル端子18が固定して、素子基板1の方へ延長してある。
【0052】
(実施の形態2)
次に実施の形態2として、本発明に係るカメラモジュールの製造方法について説明する。つまり、レンズ6の焦点位置を調整できる光学構造体5と、レンズ6に対応させて固体撮像素子2を実装した素子基板1と、光学構造体5及び素子基板1の間に配置される中間構造体8とを備えるカメラモジュールの製造方法である。本発明に係るカメラモジュールの製造方法は、素子基板1に固体撮像素子2を実装した後、固体撮像素子2の外周の素子基板1に中間構造体8を固定する工程と、中間構造体8と光学構造体5とを係止する工程とを備える。光学構造体5と素子基板1に固定した中間構造体8とを係止するのみでカメラモジュールを構成することができるので、従来必要であった中間構造体8と光学構造体5との接着工程を省略でき、接着工程での加熱が不要になるので、光学構造体5を構成するレンズ6、磁石14に与える熱的影響を排除することができる。
【0053】
本発明に係るカメラモジュールの製造方法は、更に、中間構造体8と光学構造体5とを係止した状態で素子基板1のコイル接続端子部22、接続端子部23に所定の信号を供給し、レンズ6の焦点位置を調整するために光学構造体5に内蔵されたコイル15から導出されて接続端子部23まで延在するコイル端子18にコイル電流を供給することによりカメラモジュールの特性を検査する工程を備える。つまり、コイル電流を流してレンズ6を駆動することにより、素子基板1の動作試験に加えて光学構造体5の動作試験(自動焦点機能試験)を同時に行なう。中間構造体8と光学構造体5とを係止した状態での特性検査を行なうことにより、嵌合工程を終了した時点での特性不良への対応が容易にできる。即ち、不良品である素子基板1又は光学構造体5の交換が容易に行なえる。特に、高価な光学構造体5を素子基板1から容易に分離できるので、素子基板1が不良である場合に光学構造体5はそのまま有効に利用できることになり、製造コストの削減効果が大きい。
【0054】
本発明に係るカメラモジュールの製造方法は、更に、中間構造体8を固定する工程の前又は中間構造体8と光学構造体5とを係止する工程の前に、固体撮像素子2を実装した素子基板1の特性を検査する工程を備える。素子基板1の特性を検査した後に光学構造体5を係止することにより、不良の素子基板1へ光学構造体5を係止することを防止できるので、高価な光学構造体5を無駄に使うことがなくなる。
【0055】
(実施の形態3)
次に実施の形態3として、本発明に係る電子機器について説明する。図8は本発明に係る電子機器の概略ブロック図である。本発明に係る電子機器は本発明に係るカメラモジュールを備える電子機器であるので、本発明に係るカメラモジュールが有する特徴を備えた電子機器とすることができる。電子機器は例えば携帯電話機であり、機器基板(マザーボード)50を備える。機器基板50はガラスエポキシ樹脂等で構成され、適宜の配線パターンが形成してある。機器基板50には、各種の制御を実行する際の制御部となる中央演算処理装置としてのCPU51、カメラモジュール52(本発明に係るカメラモジュール)、アナログ信号処理部53、表示制御部54、コーデック55等の回路部品が配置してある。これらの回路部品の機器基板50への実装は、これらの回路部品を機器基板50に適宜位置合わせした後、半田リフローにより半田付けして行なう。なお、機器基板50への回路部品の配置は一例に過ぎず、これに限るものではない。
【0056】
機器基板50の周囲には携帯電話機として機能するために必要な主液晶モジュール56、副液晶モジュール57、RF/IF部(ラジオ周波数/中間周波数部)58、マイク59、スピーカ60等が配置してあり、機器基板50に接続してある。
【0057】
本発明に係る電子機器では、機器基板50と素子基板1とを位置合わせした後、機器基板50と素子基板1とを電気的に接続する。つまり、機器基板50の上に形成された接続端子(不図示)と素子基板1の接続端子部23とを位置合わせして半田リフローにより接続する。コイル端子18はコイル接続端子部22にまで延長されており、コイル接続端子部22はリードレスチップキャリア型の基板の接続端子部23と同様に形成してあることから、この半田リフローの際にコイル端子18をコイル接続端子部22及び機器基板50の接続端子に同時に接続することができる。
【0058】
(実施の形態4)
次に実施の形態4として、本発明に係る電子機器の製造方法について説明する。つまり、レンズ6の焦点位置を調整するためのコイル15を有する光学構造体5と、レンズ6に対応させて固体撮像素子2を実装した素子基板1と、光学構造体5及び素子基板1の間に配置される中間構造体8と、光学構造体5の側面から取り出されて中間構造体8の側面に沿って素子基板1に形成された接続端子部23まで延在しているコイル端子18とを備えるカメラモジュールを機器基板に接続する電子機器の製造方法である。
【0059】
本発明に係る電子機器の製造方法は、素子基板1に固体撮像素子2を実装した後、固体撮像素子2の外周の素子基板1に中間構造体8を固定する工程と、中間構造体8と光学構造体5とを係止する工程と、素子基板1と機器基板50とを位置合わせした後、素子基板1のコイル接続端子部22及び接続端子部23と機器基板50の接続端子(不図示)とを電気的に接続することによりコイル端子18をコイル接続端子部22及び機器基板50の接続端子と接続する工程とを備える。素子基板1と機器基板50との電気的な接続と併行してコイル端子18と機器基板50との電気的な接続をすることができ、コイル端子18を接続するための別の工程が不要となり、コイル端子接続工程を簡略化でき、電子機器の製造が簡単になり、コストの低減が可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではない。例えば、係合部9、10として、中間構造体8に挟持用突起部24を設けたものについて説明したが、同様の挟持用突起部を光学構造体5に設ける構成としてもよい。この場合、光学構造体5に設けた切欠部25と同様の切欠部を中間構造体8に設ければよい。また、素子基板の接続端子部を電子機器の機器基板(マザーボード)に半田付け等で接続する場合に同時にコイル端子も機器基板に接続するためであれば、必ずしも中間構造体を設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るカメラモジュールの概略平面図である。
【図2】図1の矢符A−A方向での拡大概略断面図である。
【図3】図1の矢符B−B方向での概略断面図である。
【図4】図1の矢符X方向から見た拡大概略側面図である。
【図5】図1の矢符Y方向から見た拡大概略側面図である。
【図6】図1の矢符X方向から見た概略分解側面図である。
【図7】図1の矢符Y方向から見た概略分解側面図である。
【図8】本発明に係る電子機器の概略ブロック図である。
【図9】従来の自動焦点機能付きイメージモジュールの斜視断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 素子基板
2 固体撮像素子
5 光学構造体
6 レンズ
7 枠部
8 中間構造体
9、10 係止部
11 嵌合部
19 突起部
20、25 切欠部
24 挟持用突起部
26、27 係止用爪部
50 機器基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの焦点位置を調整できる光学構造体と、
前記レンズに対応させて固体撮像素子を実装した素子基板とを備えるカメラモジュールにおいて、
前記光学構造体と素子基板との間に配置される中間構造体が設けられ、
前記光学構造体及び中間構造体の内の少なくとも一方は、他方の構造体を係止するための係止部を備え、
前記光学構造体及び中間構造体の内の少なくとも一方は、他方の構造体を嵌合するための嵌合部を備えること
を特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記中間構造体は素子基板に固定してあることを特徴とする請求項1記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記係止部は少なくとも2箇所に設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記係止部の内の少なくとも2つの係止部は係止部が設けられた一方の構造体から突出し、他方の構造体を挟むように構成された挟持用突起部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記光学構造体は前記レンズの入光面側から見た外周形状が矩形状であり、該矩形状の前記係止部が設けられた辺とは異なる辺に前記嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記光学構造体は前記レンズの入光面側から見た外周形状が矩形状であり、該矩形状の角部側に偏倚した位置に前記係止部を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のカメラモジュール。
【請求項7】
前記光学構造体及び前記中間構造体は、接着剤を用いることなしに、前記係止部及び嵌合部により結合されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のカメラモジュール。
【請求項8】
前記素子基板はリードレスチップキャリア型の基板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のカメラモジュール。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つに記載のカメラモジュールを機器基板に実装してあることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−116740(P2007−116740A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356057(P2006−356057)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【分割の表示】特願2003−413975(P2003−413975)の分割
【原出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000131348)株式会社シコー技研 (168)
【Fターム(参考)】