説明

カメラ・モジュールが画像データを転送する方法およびコンピュータ

【課題】消費電力の低減を図りながら静止画像データの転送をするカメラ・システムを提供する。
【解決手段】静止画像アプリケーション202がカメラ・モジュール100に一定の転送周期でフレーム転送コマンドを発行する。各転送周期においてカメラ・モジュールがサスペンド状態からウェイクアップして静止画像データを生成し、転送が終了するとサスペンド状態に遷移する。カメラ・モジュールは各転送周期でサスペンド状態に遷移することができるため消費電力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ・モジュールが動画像データよりも小さいフレーム・レートで連続的にホスト装置に画像データを転送する技術に関し、さらに詳細にはデータ転送の際のカメラ・モジュールとホスト装置の消費電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
単体で存在するディジタル・カメラは、静止画像を撮影するスティル・カメラと動画像を撮影するビデオ・カメラに大別することができる。スティル・カメラでもビデオ・カメラでも電源を投入して撮影準備状態に入ると液晶モニターに被写体の画像が表示される。ユーザは液晶モニターの画像を確認しながら静止画像または動画像を撮影してカメラ本体にデータを記録する。
【0003】
ノートブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPCという。)、タブレット型コンピュータ、または多機能携帯電話などのホスト装置には、テレビ電話や周囲環境の撮影を目的にしたカメラ・モジュールを搭載することがある。通常、カメラ・モジュールが撮影した画像データはノートPCのアプリケーションが受け取ってホスト装置の記録媒体に記録される。したがって、ノートPCに組み込まれたカメラ・モジュールは、画像データを処理および記録するアプリケーションと組み合わせられることで、単体で存在するディジタル・カメラに対応するカメラ・システムを構成しているといえる。
【0004】
このようなカメラ・システムには、静止画像だけを必要とするアプリケーション・プログラム(アプリケーション)を実装することも可能である。カメラ・モジュールは、撮影準備状態に入ると30fpsといった動画像のフレーム・レートでシステムに画像データを転送する。この場合の動画像データは、撮影対象となる画像をモニターすることを目的にしているため通常は本来の動画像データよりも画素数を低く設定している。なお、フレーム・レートは1枚の静止画像を作成する複数の撮像素子の集合体が出力する画素信号で構成された画像データを1フレームとしたときに、単位時間で生成または転送されるフレーム数(fps)をいう。1枚の静止画像は1フレームに対応する。
【0005】
アプリケーションは、受け取ったモニター用の動画像データの中から静止画像を選択するタイミングを決定する。そして、決定したタイミングでカメラ・モジュールは本来の画素数の静止画像データを転送する。あるいは、本来の画素数の動画像デーを転送している途中でそこから直接静止画像データを取得することもできる。すなわちカメラ・システムで静止画像を取得するためには、アプリケーションまたはユーザが必要な静止画像を選択するまでの所定の時間の間、モニター用の画素数または本来の画素数の動画像データを取得する必要がある。
【0006】
特許文献1は、動画像を処理するために消費する電力を削減した異常監視装置を提供する。異常監視装置は、常時は動画処理部分の動作を休止し、音声による異常検知をトリガとして動画処理部分の動作を開始する。特許文献2は静止画像データを動画像フォーマットに格納して画像表示装置に出力する際に、静止画像データを出力する側の消費電力を低減させる画像表示システムを開示する。デジタル・ビデオ・カメラは、ディジタル・テレビからの画像転送要求コマンドに基づく静止画像データの転送動作を行った後は、ディジタル・テレビが送る画像転送要求コマンドを受信するまで、低消費電力モードで動作する。
【0007】
非特許文献1は、USBで接続されたカメラ・モジュールからスティル・イメージを取得するStill Image Captureを規定する。同文献には、ホスト装置がビデオ・ストリーミングを一旦中断してスティル・イメージを取得した後に再度ビデオ・ストリーミンの転送モードに復帰したり、ビデオ・ストリーミングを中断しないで専用のバルク・スティル・イメージ・パイプを使用してスティル・イメージを転送したりすることが記載されている。
【0008】
非特許文献2、3は、ロー・パワー・モードといわれるUSBデバイスの選択サスペンド(Selective Suspend)について記載している。選択サスペンドでは、USBクライアント・ドライバが、USBデバイスがアイドルであると決定したときにUSBバス・ドライバにリクエスト・パケットを送る。当該USBハブに接続されているすべてのUSBデバイスがアイドルになると、それを受けてUSBバス・ドライバが当該USBハブに繋がるUSBバスをアイドル状態に遷移させ、そのバスの状態遷移を検知したUSBデバイスが選択サスペンド状態に遷移する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−120595号公報
【特許文献2】特開2008−187536号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】USB Device Class Definition for Video Devices, REvision1.1 June 1,2005
【非特許文献2】Universal Serial Bus Specification Revision 2.0
【非特許文献3】Power saving of using USB Selective Suspend Support Whitepaper, Intel Mobile Platforms Group Version 0.3, May 20,2003, Kris Fleming
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カメラ・モジュールは、画像データの転送をしていないときはサスペンド状態に遷移することができる。しかしこれまでのカメラ・システムでは、ホスト側が静止画像データしか必要がない場合でもモニター用の動画像データを送る必要があり、一定の周期で静止画像データを転送しようとしても、その動画像のデータ転送を終了するまでカメラ・モジュールはサスペンド状態に遷移することができなかった。さらに撮影準備段階で動画像データを転送するためバスのデータ・トラフィックが必要以上に増大し、さらに、ストリーミング・データを処理するためのCPUの負荷も増大してホスト装置の消費電力も必要以上に増大していた。
【0012】
ノートPCには、テレビ電話やビデオ撮影などの動画像データを利用するさまざまアプリケーションが存在する。ノートPCが電池駆動で動作するときはカメラ・システムの消費電力を極限まで低減する必要があるため、カメラ・システムを動作させるときはAC/DCアダプタを接続してAC電力を使用するのが一般的である。しかし近年、動画像データのフレーム・レートより小さいフレーム・レートで連続的に静止画像データを取得したいアプリケーションが開発されてきている。
【0013】
たとえば、会議中にノートPCを使っているユーザの顔の向きを1〜2秒ごとに取得した静止画像で判断して、顔が画面とは異なる方向を向いているときや画面から離れたときにはディスプレイのバックライトを停止させたり、プロセッサのクロック周波数を低下さえたりして省電力状態に移行させ、顔が画面に向いたときは復帰させるようなアプリケーションを考えることができる。
【0014】
このようなアプリケーションを実現しようとしたときには、これまでのカメラ・システムでは消費電力が大きいため、ノートPCが電池駆動のときには動作させることはできない。また、遠隔地でノートPCを電池駆動するときに動画像の利用は困難だとしてもある程度の周期で送られてくる静止画像を使ってテレビ会議をしたい場合もある。
【0015】
そこで本発明の目的は、消費電力の低減を図りながらカメラ・モジュールからホスト装置に画像データを転送する方法を提供することにある。さらに本発明の目的はカメラ・システムの消費電力を低減しながら動画像データより小さいフレーム・レートで連続的に静止画像データを転送する方法を提供することにある。さらに本発明の目的はホスト装置が要求するフレーム・レートの維持と消費電力の低減の両立を図りながら画像データを転送する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような方法を実現するカメラ・システム、カメラ・モジュール、コンピュータ、およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、イメージ・センサを含むカメラ・モジュールからホスト装置に画像データを転送する方法を提供する。カメラ・モジュールは画像データの転送に必要な時間帯以外は、撮影状態より消費電力の少ないロー・パワー状態に遷移する。ホスト装置はカメラ・モジュールに対して順番に画像データの転送要求をする。転送要求があるとカメラ・モジュールはロー・パワー状態から撮影状態に遷移する。撮影状態に遷移したカメラ・モジュールは画像データを生成してホスト装置に転送する。転送が終了したことに応答してカメラ・モジュールはロー・パワー状態に遷移する。
【0017】
本発明によれば、カメラ・モジュールはモニター用の動画像データを転送する必要がなくホスト装置が必要な画像データだけを転送するため、転送動作をしていないときはロー・パワー状態に遷移することができる。したがってカメラ・モジュールの消費電力だけでなく、画像データのトラフィックが必要最小限まで低減するためそれを処理するバスおよびCPUの消費電力も低減することができる。
【0018】
転送要求は一定の転送周期で発行してもよい。ホスト装置は許容できるフレーム・レートの下限値または転送周期の上限値を設定することができる。静止画像転送モードでは、各転送周期においてカメラ・モジュールが必ずロー・パワー状態に遷移する必要がある。したがって、各転送周期において撮影状態に遷移している実動作時間から計算した転送周期の最小値と、ホスト装置が要求するフレーム・レートから計算した転送周期の最大値の間に実用的な転送周期を設定すると、ホスト装置の要求を満たしながらカメラ・モジュールがロー・パワー状態に遷移する時間を確保することができる。各転送期間に転送する画像データは複数のフレームでもよいが1フレームとすることでロー・パワー状態に遷移する時間を長くして消費電力を最大限まで低減することができる。
【0019】
実動作時間は、カメラ・モジュールの固有の性能により左右されるが、各転送期間でキャリブレーションをしないであらかじめ取得したパラメータ値をカメラ・モジュールに設定することで実動作時間を短縮することができる。カメラ・モジュールの実動作時間を短縮すると、各転送期間においてロー・パワー状態に遷移している時間を長くしたり、同一のロー・パワー状態に遷移する時間に対して転送周期を短く(フレーム・レートを大きく)したりすることができるので、カメラ・モジュールの消費電力の低減とフレーム・レートの増大の両立を図ることができる。
【0020】
あらかじめ取得したパラメータ値は、最初の転送期間においてカメラ・モジュールが撮影条件に適合するようにキャリブレーションを実行して取得したパラメータ値とすることができる。キャリブレーションをスキップして2番目以降の転送期間におけるパラメータ値を固定する方法は、撮影当初の撮影条件が変化しないことを前提にしている。
【0021】
しかし実際には撮影条件が撮影当初から変化して、ホスト装置が望ましい画質の画像データを取得できなくなることがある。これに対応するために、ホスト装置が静止画像データを評価した結果に基づいてカメラ・モジュールにキャリブレーションを再実行するようにリクエストすることができる。ホスト装置またはカメラ・モジュールはキャリブレーションを再実行して取得したパラメータ値を設定することができる。パラメータは、ローリング・シャッタの露光時間およびホワイト・バランスを含んで構成することができる。
【0022】
ホスト装置は定期的に受け取った画像データを評価して、転送要求の間隔を変更することができる。たとえば、被写体の変化が大きくなったときは間隔を短くし、変化が小さくなったときは間隔を長くする。転送要求の間隔を変更すると、不必要な画像データの転送をしなかったり、必要なタイミングで画像データを転送したりすることができるため、ホスト装置の満足度を充足させながらカメラ・システムの消費電力を効果的に低減することができる。
【0023】
ホスト装置はコンピュータで構成することができる。この場合、カメラ・モジュールとシステムの接続はUSBインターフェースを使用することができる。本発明は、カメラ・システムの消費電力を大幅に低減しながら、たとえば1〜2fpsのフレーム・レートで静止画像データを転送することができるため、電池駆動の携帯式コンピュータにそのようなフレーム・レートで転送される画像データを利用したアプリケーションを実装できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、消費電力の低減を図りながらカメラ・モジュールからホスト装置に画像データを転送する方法を提供することができた。さらに本発明によりカメラ・システムの消費電力を低減しながら動画像データより小さいフレーム・レートで連続的に静止画像データを転送する方法を提供することができた。さらに本発明によりホスト装置が要求するフレーム・レートの維持と消費電力の低減の両立を図りながら画像データを転送する方法を提供することができた。さらに本発明により、そのような方法を実現する、カメラ・システム、カメラ・モジュール、コンピュータ、およびコンピュータ・プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ノートPC10で実現したカメラ・システムのハードウェアの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】カメラ・モジュール100の概略の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】カメラ・システムを構成するノートPC10に搭載されたソフトウェアの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】静止画像転送モードにおけるカメラ・モジュール100の動作状態を説明する図である。
【図5】静止画像転送モードにより画像データを転送する手順を説明するフローチャートである。
【図6】静止画像転送モードの特徴を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[カメラ・システムのハードウェア構成]
図1は、ノートPC10で実現したカメラ・システムのハードウェアの構成を示す機能ブロック図である。CPU11はメモリ・コントローラとPCI Expressコントローラを内蔵しており、メイン・メモリ13、ビデオ・カード15およびチップ・セット19に接続されている。ビデオ・カード15にはLCD17が接続されている。チップ・セット19は、SATA、USB、PCI Express、LPCなどのコントローラおよびRTC(Real Time Clock)などを内蔵している。SATAコントローラにはHDD21が接続されている。USBコントローラはUSBホスト・コントローラ、ルート・ハブ、および入出力ポートを構成する複数のハブで構成されている。
【0027】
カメラ・モジュール100は、USB2.0規格またはUSB3.0規格に適合するUSBデバイスである。カメラ・モジュール100は、差動信号でデータ転送する1対または3対のUSBバス50でUSBコントローラのUSBポートに接続されている。カメラ・モジュール100が接続されるUSBポートは、ハブを他のUSBデバイスと共用してもよいが、USBシステムの選択サスペンド機構を利用してカメラ・モジュール100の電力を効果的に制御するためには当該USBポートがカメラ・モジュール100の専用のハブに接続されていることが望ましい。カメラ・モジュール100は、ノートPC10の筐体に組み込む組込タイプでもよいし、ノートPC10の筐体に取り付けたUSBコネクタに接続する外付けタイプでもよい。
【0028】
また、カメラ・モジュール100は、ワイヤレスUSBでノートPC10に接続してもよい。本発明にかかるカメラ・システムは従来から存在していた動画像転送モードに加えて新規な静止画像転送モードで画像データを転送することができる。カメラ・モジュール100は、動画像転送モードまたは静止画像転送モードのいずれかで画像データを転送する。
【0029】
ここに、カメラ・システムを構成するノートPC10のシステムは、CPU11、チップ・セット19、メイン・メモリ13などのハードウェアと、図3に示す静止画像アプリケーション202、各階層のデバイス・ドライバ207、209、211、231、静止画像転送サービス205およびオペレーティング・システム203などのソフトウェアで構成される。なお静止画像転送モードは静止画像アプリケーション202が静止画像を取得する際に使用する転送モードであるが、その内容は後に説明する。
【0030】
EC25は、コンピュータ10の筐体内部の温度を制御したり、デバイスの電力を制御したり、さらキーボードやマウスの動作制御をしたりするマイクロ・コントローラである。EC25は、CPU11とは独立して動作する。EC25には電池パック27およびDC/DCコンバータ29が接続され、さらに、図示しないキーボード、マウス、充電器、および排気ファンなどが接続される。EC25は、電池パック27、チップ・セット19およびCP1U11と通信することができる。電池パック27は、図示しないAC/DCアダプタが接続されていないときにDC/DCコンバータ29に電力を供給する。DC/DCコンバータ29は、コンピュータ10を構成するデバイスに電力を供給する。
【0031】
[カメラ・モジュール]
図2は、カメラ・モジュール100の概略の構成を示す機能ブロック図である。カメラ・モジュール100は、静止画像転送モードにおいてVGA(640×480)、QVGA(320×240)、WVGA(800×480)およびWQVGA(400×240)などの画像データを転送することができる。光学機構101は、光学レンズおよび光学フィルタなどで構成され、被写体の像をイメージ・センサ103に結像させる。
【0032】
イメージ・センサ103は、画素を構成するフォト・ダイオードに蓄積された光量に対応する電荷を電気信号に変換して出力するCMOSイメージ・センサ、ノイズを抑圧するCDS回路、ゲインを調整するAGC回路、アナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換回路などで構成され、被写体の像に対応するディジタル信号を出力する。イメージ・センサ103は、動画像転送モードで動作するときに30fpsのフレーム・レートで画像データを生成することができる。
【0033】
CMOSイメージ・センサは、ローリング・シャッタといわれる電子シャッタを備えている。ローリング・シャッタは、1または数ラインを1ブロックにして撮影環境に最適になるように露光時間を制御する。ローリング・シャッタは1フレーム期間またはインターレース方式の場合は1フィールド期間に各画素を構成するフォト・ダイオードに蓄積される信号電荷を撮影の途中にリセットしてシャッタ・スピードに相当する光の蓄積期間を制御する。なお、イメージ・センサ103は、CMOSイメージ・センサに代えてCCDイメージ・センサを採用することもできる。
【0034】
イメージ・シグナル・プロセッサ(ISP)105は、画素欠陥およびシェーディングを補正する補正処理、イメージ・センサ103の分光特性を人間の視感度に合わせて補正するホワイト・バランス処理、RGBベイヤー配列の信号から一般的なRGBデータを出力する補間処理、イメージ・センサ103のカラー・フィルターが持つ分光特性を理想特性に近づける色補正処理などを行う画像信号処理回路である。ISP105はさらに、被写体の解像感を高めるための輪郭補正処理およびLCD17の非線形な入出力特性を補正するガンマ処理などを行う。
【0035】
エンコーダ107は、ISP105から受け取った画像データを圧縮する。エンド・ポイント・バッファ109は、システムとの間で双方向に転送するデータを一時的に記憶することでUSBデータ転送のための複数のパイプを形成する。シリアル・インターフェース・エンジン(SIE)111は、エンド・ポイント・バッファ109から受け取った画像データをUSB規格に適合するようにパケット化してトランシーバ113に送ったり、トランシーバ113から受け取ったパケットを解析してペイロードをMPU115に送ったりする。SIE111は、USBバス50が所定の時間以上アイドル状態のときに、サスペンド状態に遷移するためにMPU115に割り込みをかける。SIE111は、USBバス50がレジュームしたときにサスペンドしているMPU115を動作させる。
【0036】
トランシーバ113は、USB通信のための送信用のトランシーバと受信用のトランシーバを含む。MPU115は、USB転送のためのエニュメレーションを実行し、さらに撮影および画像データの転送をするためにカメラ・モジュール100の動作を制御する。カメラ・モジュール100は、USB規格に規定するパワー・マネジメントに準拠する。MPU115は、SIE111から割り込みがかかったときに、内部クロックを中断させて自らも含めてカメラ・モジュール100をサスペンド状態に遷移させる。
【0037】
MPU115は、USBバス50がレジュームしたときにカメラ・モジュール100をパワー・オン状態または撮影状態に復帰させる。MPU115は、システムから受け取ったコマンドを解釈して動画像転送モードまたは静止画像転送モードで画像データを転送するように各部の動作を制御する。MPU115は、静止画像転送モードによる画像データの転送を開始するときは、最初にローリング・シャッタの露光時間(露光量)、ホワイト・バランス、およびAGC回路のゲインなどのキャリブレーションを行い、その時点での撮影環境に最適なパラメータ値を取得してイメージ・センサ103およびISP105の所定のレジスタに設定する。
【0038】
露光時間のキャリブレーションは、CMOSイメージ・センサの出力信号から測光選択領域の輝度信号の平均値を計算し、この計算した輝度信号を目標レベルに一致させるようにパラメータ値を調整することで行う。MPU115は露光時間のキャリブレーションの際にAGC回路のゲインも併せて調整する。ホワイト・バランスのキャリブレーションは、被写体の色温度によって変化する白の被写体に対するRGB信号のバランスを調整することで行う。
【0039】
動画像転送モードで画像データを転送するときは、カメラ・モジュールは転送期間中にサスペンド状態に遷移することはないため、一旦レジスタに設定したパラメータ値が消失することはない。そして、MPU115は、動画像転送モードで画像データを転送するときは、撮影中も適宜キャリブレーションを実行してそれらのパラメータ値を更新する。
【0040】
これに対して静止画像転送モードで画像データを転送するときは、転送周期毎にカメラ・モジュールはサスペンド状態に遷移するため、接続されているイメージ・センサーに依っては、同センサーの内部レジスタに設定されたパラメータ値の一部またはすべてが消失する。撮影を間欠で繰り返しながら逐次サスペンド状態に遷移するという使い方が想定されていないため、内部レジスタの値をサスペンド状態で保持する設計上の動機がなかったためである。静止画像転送モードでは、キャリブレーションを先頭の転送周期で撮影するときにだけ行い、それ以降の転送周期での撮影では撮影条件に変化がないことを前提にして最初のキャリブレーションで取得したパラメータ値をウェイクアップの都度設定することができる。
【0041】
2番目以降の各転送周期でキャリブレーションをスキップすることで、画像データの転送中にカメラ・モジュール100がサスペンド状態に遷移する時間を一層長くしたり、転送周期を短くしてもサスペンド状態に遷移する時間を所定値以上に確保して十分な消費電力の低減を図ったりすることができるようになる。MPU115は、静止画像転送モードで画像データを定期的に転送するときは、キャリブレーションを最初の転送のときにだけ行うようにイメージ・センサ103およびISP105の動作を制御する。このときMPU115はキャリブレーションをして取得したパラメータ値を最初の静止画像データの転送の際にシステムに送り、2番目以降の転送周期の際にはシステムから受け取ったパラメータ値を設定することができる。
【0042】
MPU115は静止画転送モードのときに、システムからキャリブレーションの指示を受け取ったときには直後のデータ転送の前にキャリブレーションを実行して新たなパラメータ値を設定すると共に当該パラメータ値をシステムに送る。なお、パラメータ値をシステムに送らないでフラッシュROM119に記憶しておき、MPU115はフラッシュROM119から読み出したパラメータ値を各転送周期において設定することもできる。フラッシュROM119は、MPU115が実行するプログラムおよびキャリブレーションを必要としないパラメータ値も記憶する。MPU115は、システムから受け取ったコマンドを解釈して、キャリブレーションを実行したり各転送周期で転送するフレーム数を変更したりすることができる。
【0043】
カメラ・モジュール100は、USBバスから電力の供給を受けて動作するバス・パワード・デバイスである。ただし、カメラ・モジュール100は、独自の電力で動作するセルフ・パワード・デバイスであってもよい。セルフ・パワード・デバイスである場合は、MPU115はUSBバス50の状態に追従するように独自に供給を受けている電力を制御する。
【0044】
カメラ・モジュール100は、USB規格に基づいて選択サスペンド状態とパワー・オン状態の間を遷移する。カメラ・モジュール100は、選択サスペンド状態のときに複数のロー・パワー状態に遷移してよい。カメラ・モジュール100は、静止画像転送モードで動作するときには、画像データを送るためにパワー・オン状態に遷移する必要がないときに最も消費電力の少ないロー・パワー状態に遷移することが望ましい。最も消費電力の少ない選択サスペンド状態のときの消費電力は、パワー・オン状態または撮影状態のときの10%以下であることが望ましい。
【0045】
なお、図1および図2は本実施の形態を説明するために、本実施の形態に関連する主要なハードウェアの構成および接続関係を簡略化して記載したに過ぎないものである。ここまでの説明で言及した以外にも、カメラ・システムを構成するには多くのデバイスが使われる。しかしそれらは当業者には周知であるので、ここでは詳しく言及しない。図で記載した複数のブロックを1個の集積回路もしくは装置としたり、逆に1個のブロックを複数の集積回路もしくは装置に分割して構成したりすることも、当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。
【0046】
[カメラ・システムのソフトウェア構成]
図3は、ノートPC10に搭載されたソフトウェアの構成を示す機能ブロック図である。動画像アプリケーション201は、カメラ・モジュール100から動画像データを取得してLCD17に表示したりHDD15に記録したりする周知のプログラムである。動画像アプリケーション201は、テレビ電話プログラムまたは動画像撮影プログラムとすることができる。動画像アプリケーション201は、動画像データから静止画像のスナップ・ショットを取得することができる。
【0047】
静止画像アプリケーション202は、カメラ・モジュール100から静止画像転送モードで画像データを取得して分析したり記録したりする新規なプログラムである。静止画像アプリケーション202は、ユーザの指示を受け取るためのユーザ・インターフェースを備えていても良い。静止画像アプリケーション202は、ノートPC10がAC/DCアダプタから電力の供給を受けている間に実行してもよいが、カメラ・システムは小さな消費電力で動作するので電池パック27から電力の供給を受けている間に動作させることができる。静止画像アプリケーション202は、ユーザの顔の向きを判断してノートPC10の電力を制御するプログラムとしたり、機械装置の状態を監視するプログラムとしたり、テレビ電話のプログラムとしたりあるいは長時間にわたって環境の変化の様子を撮影するプログラムとすることができる。
【0048】
ストリーミング・サービス203は、OSが提供するサービス・プログラムで動画像転送モードでの動画像データを動画像アプリケーション201に送ったり、静止画像データを取得するためのモニター用の動画像データを動画アプリケーション201に送ったり、さらに動画像アプリケーション201が発行したコマンドをUSBカメラ・ドライバ207に渡したりする。静止画像転送サービス205は、OSのユーザ・モードで動作する新規のプログラムで、静止画転送モードで転送される静止画像データを静止画像アプリケーション202に送ったり、静止画像アプリケーション202からのコマンドをUSBカメラ・ドライバ207に送ったりする。
【0049】
USBカメラ・ドライバ207は、カメラ・モジュール100の動作を制御したりデータ転送を制御したりするデバイス・ドライバである。USBクラス・ドライバ209は、USBビデオ・クラスに定義された共通の処理を行うデバイス・ドライバである。USBバス・ドライバ211は、USBコントローラに接続されたUSBバスの動作を制御する。
【0050】
USBバス・ドライバ211は、USBカメラ・ドライバ207からカメラ・モジュール100を選択サスペンドに遷移させる指示を受け取ったときに、カメラ・モジュール100に接続されたUSBバス50をアイドル状態に遷移させ、レジュームさせる指示またはデータ転送の指示を受け取ったときにUSBバスをアクティブ状態(レジューム状態)に遷移させる。USBホスト・コントロール・ドライバ213は、USBデバイスに対するデータ転送とUSBホスト・コントローラの動作を制御する。
【0051】
[静止画像転送モードの手順]
つぎに、図4、図5を参照して静止画像転送モードによりカメラ・モジュール100が画像データを転送する手順を説明する。図4は、静止画像転送モードにおけるカメラ・モジュール100の動作状態を説明する図である。図4(A)は全体動作を示し、図4(B)は最初の転送周期の詳細を示し、図4(C)は2番目以降の転送周期の詳細を示している。図5は、静止画像転送モードにより画像データを転送する手順を説明するフローチャートである。
【0052】
図4(A)において、2個目の画像データを転送するためのフレーム転送コマンドを発行する時刻t1と3個目の画像データを転送するためのフレーム転送コマンドを発行する時刻t2間の時間、および時刻t2と4個目の画像データを転送するためのフレーム転送コマンドを発行する時刻t3の間の時間のように2番目以降の画像データを転送するためにフレーム転送コマンドを発行する一定の時間間隔を転送周期Tという。
【0053】
ブロック301では、USBバス50はアイドル状態に遷移し、さらにカメラ・モジュール100は選択サスペンド状態に遷移している。静止画像転送モードではストリーミング・サービス203は実行しないためCPU11の負荷はその分だけ小さい。パラメータ値を設定するカメラ・モジュール100の各種レジスタはクリアされている。時刻t0で静止画像アプリケーション202が転送開始コマンドをUSBカメラ・ドライバ207に送る。転送開始コマンドは画像データの転送周期Tと転送フレーム数を含む。
【0054】
ここでは一例として転送周期を1秒とし、転送フレーム数を1フレームとする。この場合はフレーム・レートが1fpsとなる。フレーム・レートは、もし転送周期を2秒にすれば0.5fpsになり、転送フレーム数を2フレームとすれば2fpsとなる。USBカメラ・ドライバ207は、USBクラス・ドライバ209を介してUSBバス・ドライバ211に転送開始コマンドから生成した1個目のフレーム転送コマンドを送る。
【0055】
ブロック303では、USBバス・ドライバ211がUSBバス50をレジュームさせて1個目のフレーム転送コマンドをカメラ・モジュール100に送る。SIE111は、USBバス50がレジュームしたことを検知するとMPU115にクロックを送って動作させる。MPU111は時刻tw0で動作を開始してフレーム転送コマンドを実行しカメラ・モジュール100をウェイクアップさせる。
【0056】
ブロック305では、MPU115は、各種レジスタにフラッシュROM119に格納されたキャリブレーションの必要のない固定パラメータ値を設定し、さらに、露光時間、ホワイト・バランスおよびAGC回路のゲインなどのパラメータ値を取得するためにイメージ・センサ103およびISP105にキャリブレーションを実行させて取得したパラメータ値を各レジスタに設定する。
【0057】
さらにMPU115は、キャリブレーションして取得したパラメータ値をUSBカメラ・ドライバ207からの要求を受けて送付する。USBカメラ・ドライバ207は、受け取ったパラメータ値をメイン・メモリ13に記憶する。さらにMPU115はすべての画素のローリング・シャッタを順番にリセットして時刻tx0に到達する。ウェイクアップした時刻tw0から撮影の準備が完了した時刻tx0までは1〜2秒程度必要とする。
【0058】
ブロック307ではローリング・シャッタのリセットが終了すると時刻tx0で順番に画素を走査して画像信号を読み出して1個目のフレームの画像データの転送を開始する。SIE111は、エンコーダ107から出力された画素データを所定のブロックごとにパケット化して静止画像アプリケーション202に出力する。MPU115は、イメージ・センサ103が1フレームの画像データだけを生成するように制御する。ブロック309でMPU115は、1フレーム分の画像データの出力を時刻ty0で完了する。この時点でカメラ・モジュール100の電力状態はパワー・オン状態を維持するかまたはそれよりわずかに消費電力が少ないロー・パワー状態に遷移してもよいが、最も消費電力が少ない選択サスペンド状態にはまだ遷移しない。
【0059】
時刻tx0から時刻ty0までの時間は、イメージ・センサ103のフレーム・レートが30fpsであることより、ほぼ1/30秒(33ミリ秒)である。ブロック311では、1個目の画像データの転送が完了したことを検出したUSBカメラ・ドライバ207は、時刻t0rでUSBバス・ドライバ211にカメラ・モジュール100をサスペンド状態に遷移させるためのバス停止コマンドを送る。バス停止コマンドを受け取ったUSBバス・ドライバ211は、USBバス50をアイドル状態に遷移させる。
【0060】
時刻ts0でUSBバス50がアイドル状態に遷移したことを検出したSIE111は、ブロック313でMPU115に割り込みをかけて、カメラ・モジュール100を最も消費電力の少ない選択サスペンド状態に遷移させる。選択サスペンド状態に遷移するとレジスタに設定されたパラメータ値は消去されるため、次回の読み出しの際には再度パラメータ値の設定が必要になる。
【0061】
時刻t0から時刻t1までの時間はキャリブレーションの時間を含むために転送周期より長い。ブロック315では、時刻t1で1個目の画像データの転送が完了したことを確認したUSBカメラ・ドライバ207が、2個目のフレーム転送コマンドをカメラ・モジュール100に送る。USBカメラ・ドライバ207は、2個目のフレーム転送コマンドを送る際に、ブロック305でカメラ・モジュール100から取得したパラメータ値も一緒に送る。2個目のフレーム転送コマンドを送るためにUSBバス・ドライバ211がUSBバス50をレジュームさせる。
【0062】
カメラ・モジュール100はUSBバス50がレジュームしたことを検出すると、時刻tw1でウェイクアップする。1個目のフレームの画像データを転送する場合と異なり、MPU115は2個目以降のフレームの画像データを転送する際には、キャリブレーションをしない。MPU115はフラッシュROM119に格納された固定パラメータ値とUSBカメラ・ドライバ207から取得したキャリブレーションの必要なパラメータ値を各レジスタに設定する。
【0063】
つづいてMPU115は、ローリング・シャッタのリセットをしてから1フレーム分の画像データを生成し時刻ty1で出力を完了する。時刻t1で2個目のフレーム転送コマンドが発行されてから画像データが生成できる状態になるまでの撮影準備時間は、パラメータの設定時間を約3ミリ秒とすれば、ローリング・シャッタのリセット時間との合計で約36ミリ秒以下とすることができる。したがって時刻t1から時刻ty1までの時間は、それに1フレーム分の画像データの生成時間(33ミリ秒)を加えて約70ミリ秒以内とすることができる。なお、画像データは数ライン分が生成されると1フレーム分生成するのを待たないで所定のパケット単位で転送されるため出力の時間は無視することができる。
【0064】
時刻ty1で1フレーム分の画像データの転送が完了したことを検出したUSBカメラ・ドライバ207は、時刻t1rでカメラ・モジュール100を最も消費電力の少ない選択サスペンド状態に遷移させるためにUSBバス・ドライバ211にバス停止コマンドを送る。USBバス50がアイドル状態に遷移すると時刻ts1でカメラ・モジュール100は、選択サスペンド状態に遷移する。時刻ty1から時刻ts1までの時間は、時刻t1から時刻ty1までの時間に比べて十分に短い。
【0065】
時刻tw1から時刻ts1までの時間は、2番目以降の各転送周期においてカメラ・モジュールが撮影状態に遷移している時間でこれを実動作時間Taという。同様に最初の転送周期で撮影状態に遷移する時刻tw0から選択サスペンド状態に遷移する時刻ts0までの時間を実動作時間Tbという。転送周期Tに対する実動作時間Ta、Tbの割合が小さいほど単位画像データに対するカメラ・モジュール100の消費電力は低下する。
【0066】
静止画像アプリケーション202は、画像データの転送を開始したあとはいつでもカメラ・モジュール100に転送終了コマンドを発行して静止画像データの転送を終了することができる。ブロック316では、カメラ・モジュール100が転送終了コマンドを受け取っていればブロック317に移行して静止画像転送モードを終了して選択サスペンド状態に遷移する。転送終了コマンドを受け取っていない場合は、ブロック319に移行する。
【0067】
本実施の形態では、画像データを転送する際に、カメラ・モジュール100のキャリブレーションを最初の転送周期のときにだけ行い、2番目以降の転送周期では撮影条件が変化しないという仮定に基づいてそれ以前にキャリブレーションをして取得したパラメータ値を使用する。しかし、静止画像転送モードでの画像データの転送を長い時間継続すると、主として照度に関する撮影条件が変化して鮮明な画像が得られなくなる可能性がある。
【0068】
静止画像アプリケーション202は、受け取った画像データから顔の向きを認識できなくなったと判断した場合や、周知の方法で画質の低下を認識したときに、キャリブレーションを再実行する再実行コマンドを発行する。ブロック319では、静止画像アプリケーション202が再実行コマンドを発行したときはブロック321に移行する。ブロック321でカメラ・モジュール100はブロック305と同様の手順でキャリブレーションを実行し、取得したパラメータ値をUSBカメラ・ドライバ207に送る。
【0069】
USBカメラ・ドライバ207はパラメータ値を受け取ったあとにフレーム転送コマンドを発行するときは、更新されたパラメータ値をカメラ・モジュール100に送る。カメラ・モジュール100は、それ以降の転送周期においてUSBカメラ・ドライバ207から受け取った更新されたパラメータ値をレジスタに設定して新たな画像データを生成する。ブロック315に戻って、USBカメラ・ドライバ207は、静止画像アプリケーション202から取得した転送開始コマンドに基づいて一定の周期でフレーム転送コマンドを発行し、カメラ・モジュール100は同様の手順で3番目以降の各転送周期で静止画像データを静止画像アプリケーション202に送る。
【0070】
静止画像アプリケーション202が再実行コマンドを発行しないときはブロック323に移行する。静止画像アプリケーション202は、取得した画像データを分析して変化が激しくなったり単調になったりしたときに、転送周期を変更することができる。ブロック323では、静止画像アプリケーション202が転送周期の変更の必要性を判断し、必要なときはブロック325に移行し、必要がないときはブロック315に戻る。
【0071】
ブロック325では、静止画像アプリケーション202がUSBカメラ・ドライバ207に転送周期を変更する変更コマンドを送る。USBカメラ・ドライバ207はそれ以降のフレーム転送コマンドを変更された転送周期でカメラ・モジュール100に送る。静止画像アプリケーション202がその必要性に基づいて転送周期、すなわちフレーム・レートを変更することで、単位時間当たりで必要とする量の画像データを最も消費電力の少ない方法で取得することができるようになる。
【0072】
従来の方法でカメラ・モジュール100から静止画像を取得する場合は、静止画像の取得が完了するまでストリーミング・サービス203が動画像アプリケーション201に送り続ける動画像データから動画像アプリケーション201が静止画像を取得していた。したがって、多くの画像データが無駄に捨てられることになり、ストリーミング・サービス203を実行するCPU11の消費電力も増大する。静止画像転送モードでは、カメラ・システム10が最小限必要な動作をして1フレームの画像データを転送すればよいために、カメラ・モジュール100の消費電力に加えて、CPU11の消費電力およびUSBバス50の消費電力も大幅に低減することができる。
【0073】
本実施の形態では1フレームに相当する画像データの転送には約33ミリ秒を費やす。転送周期を1秒としたときに、各転送周期において複数のフレームを転送するようにしてもサスペンド状態に遷移している時間を確保できるためある程度のフレーム数までは消費電力の低減効果を期待することができる。したがって、各転送周期において転送する画像データのフレーム数は2以上としてもよい。
【0074】
[静止画像転送モードの特徴]
静止画像転送モードは、画像データを順番にまたは一定の転送周期で転送する点で動画像転送モードに類似する面がある。動画像は単位時間当たりに更新される静止画像の集合であるため、両者は転送される画像データのフレーム・レートで区別することができる。
【0075】
動画像はフレーム・レートが大きいほど滑らかな動きの映像となるが、その分だけデータ量が多くなる。フレーム・レートとしては、NTSC方式では30fps、PAL方式およびSECAM方式では25fps、携帯電話・移動体端末向け1セグメント部分受信サービス(ワンセグ)では15fpsが使用されている。したがって静止画像転送モードは、これらに規定されるフレーム・レートより小さいフレーム・レートで画像データを転送する転送方法ということができる。
【0076】
本発明の主要な特徴は、各転送周期において選択サスペンド状態に遷移して画像データを転送することで、ある程度のフレーム・レートは必要とするが動画像のフレーム・レートまでは必要としない用途に対して消費電力の少ないデータ転送を実現することにある。静止画像転送モードの転送周期は、消費電力の低減効果に対する期待値からの最小限界値とアプリケーションが要求するフレーム・レートからの最大限界値で規定される。そして各転送周期においてキャリブレーションをスキップする意義は両方からの要求を最大限に満たす点にある。
【0077】
図4(B)に示すキャリブレーションを行うときの時刻tw0から時刻ts0までの実動作時間をTbとし、図4(C)に示すキャリブレーションをスキップしたときの時刻tw1から時刻ts1までの実動作時間をTaとしたときに、Tb/TおよびTa/Tはそれぞれ単位静止画像当たりの省電力効果を示しており、これを電力低減率ηということにする。
【0078】
電力低減率は、従来のようにサスペンドしないカメラ・モジュール100の消費電力に対する静止画像転送モードの消費電力の割合を示す。図6は、転送周期Tと電力低減率ηの関係を示す図である。ライン401は、各転送周期でキャリブレーションをスキップしたときの電力低減率を示し、ライン403は各転送周期でキャリブレーションを実施したときの電力低減率を示している。
【0079】
横軸の転送周期Tは、その逆数がフレーム・レートに相当する。いずれも転送周期が増大するとそれに反比例して電力低減率が低下する。ここで電力低減率が低下するとは、電力低減効果が向上するという意味になる。ライン401、403で転送周期がそれぞれ実動作時間Ta、Tbのときは電力低減率が1.0になって、カメラ・モジュール100はサスペンド状態に遷移しなくなる。実動作時間Ta、Tbは選択サスペンド状態から復帰して画像データを生成するまでの待ち時間と実際に画像データを生成および出力する時間で構成され、カメラ・モジュールの固有の性能に依存する。
【0080】
実動作時間Ta、Tbを所与の値としたときに、各転送周期でサスペンド状態に遷移するためには、転送周期に理論的な下限値、またはフレーム・レートの理論的な上限値が存在することになる。たとえばキャリブレーションをしない場合の実動作時間Taが約70ミリ秒の場合には、30ミリ秒のサスペンド遷移時間を加えた100ミリ秒を転送周期の理論的な下限値として考えることができる。この値はフレーム・レートに換算すると10fpsになる。キャリブレーションをする場合は、実動作時間Tbが約1〜2秒と大きいため2秒を転送周期の理論的な下限値として考えることができる。この値はフレーム・レートに換算すると0.5fpsに相当する。
【0081】
静止画像転送モードは、カメラ・モジュール100が連続的にパワー・オン状態を維持する場合に比べて電力低減率がある程度大きいことが期待され、また、アプリケーションが目的を果たすためには動画像ほどではないとしてもある程度の頻度で画像データが更新される必要がある。ここに静止画像転送モードに対して電力低減率ηの上限値に対する要求がでて、静止画像アプリケーション202から転送周期の上限値またはフレーム・レートの下限値に対する要求がでてくる。
【0082】
図6で電力低減率の上限値がη1だとすれば、キャリブレーションをしない場合は電力低減率をη1以下にするためには転送周期をT1以上にする必要がある。キャリブレーションをする場合は電力低減率をη1以下にするためには転送周期をT2以上にする必要がある。アプリケーションの要求による転送周期Tの上限値をTxとすれば、キャリブレーションをしない場合は転送周期をT1とTxの間に設定することができ、キャリブレーションをする場合はT2とTxの間に設定することができる。
【0083】
図6から明らかなように、静止画像アプリケーション202の要求するフレーム・レートが大きくなって転送周期TxがT2より小さくなった場合は、キャリブレーションをすると静止画像転送モードを実現できなくなる。また、電力低減率ηの上限値がη2未満まで低下させようとした場合には転送周期TがT2よりも長くなってキャリブレーションをすると静止画像転送モードを実現できなくなる。また、キャリブレーションをしても実現できる転送周期に対して、キャリブレーションをしないほうが電力低減率は小さくなる。
【0084】
一例では電力低減率の上限値を0.1としたときの転送周期の下限値は、キャリブレーションしない場合は約1秒(フレーム・レートの上限値は1fps)でキャリブレーションした場合は20秒(フレーム・レートの上限値は0.05fps)となる。また、電力低減率の上限値を0.2まで緩和したときの転送周期の下限値は、キャリブレーションしない場合は0.5秒(フレーム・レートの上限値は2fps)でキャリブレーションした場合は10秒(フレーム・レートの上限値は0.1fps)となる。したがって、静止画像転送モードの実用的な転送周期は、電力低減率の上限値とアプリケーションが要求するフレーム・レートの下限値で決定することができる。
【0085】
これまで、カメラ・モジュールをシステムに接続するインターフェースにUSBを例示して説明したが、インターフェースは、IEEE1394などのローカル・インターフェースでもよい。また、カメラ・モジュールは有線または無線のネットワークでノートPC10に接続してもよい。また、USBカメラ・ドライバ207のフレーム転送コマンドと停止コマンドで各転送周期におけるカメラ・モジュール100のウェイクアップと選択サスペンド状態への遷移を制御する例を説明したが、本発明では転送開始コマンドを受け取ってから転送終了コマンドを受け取るまでのパワー・ステートの制御をカメラ・モジュール100のファームウェアで実行することもできる。
【0086】
たとえば、カメラ・モジュール100は静止画像アプリケーション202から指示された転送周期で画像データを転送する際に、サスペンド状態への遷移のタイミングと撮影状態への遷移のタイミングを自らが決定することができる。このときサスペンド状態の間は、時間を計測する最小限の回路にだけ電力を供給したり、コンデンサに蓄積した電荷の放電時間を利用したりして、ウェイクアップのタイミングを取得するように構成してもよい。
【0087】
カメラ・モジュール10がキャリブレーションして取得したパラメータ値は、一旦、USBカメラ・ドライバ207に送りUSBカメラ・ドライバ207がフレーム転送コマンドを送るたびにカメラ・モジュールに送る例を説明したが、パラメータ値は、フラッシュROM119に記憶して静止画像転送モードのときには、ウェイクアップのたびに、MPU115が各レジスタに設定するようにしてもよい。
【0088】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0089】
10 カメラ・システム
100 カメラ・モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージ・センサを含むカメラ・モジュールからホスト装置に画像データを転送する方法であって、
前記ホスト装置が前記カメラ・モジュールに対して順番に画像データの転送要求をするステップと、
ある転送要求から次の転送要求までの各転送期間において前記カメラ・モジュールがロー・パワー状態から撮影状態に遷移するステップと、
前記カメラ・モジュールが画像データを生成するステップと、
前記カメラ・モジュールが前記ホスト装置に前記画像データを転送するステップと、
前記転送が終了したことに応答して各転送期間において前記カメラ・モジュールが前記ロー・パワー状態に遷移するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記画像データの転送要求をするステップが、一定の転送周期で転送要求をする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転送周期が、各転送周期において前記撮影状態に遷移している実動作時間と、前記ホスト装置が必要とするフレーム・レートから計算した時間の間に設定されている請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各転送期間に転送する前記画像データが1フレームの画像データである請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各転送期間において、撮影条件に適合させるためのキャリブレーションをスキップしてあらかじめ取得したパラメータ値を前記カメラ・モジュールに設定する請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記あらかじめ取得したパラメータ値が、最初の転送期間において前記カメラ・モジュールが前記キャリブレーションを実行して取得したパラメータ値である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスト装置が前記画像データを評価するステップと、
前記評価の結果に基づいて前記ホスト装置が前記カメラ・モジュールに前記キャリブレーションを再実行するようにリクエストするステップと、
前記再実行して取得したパラメータ値を前記カメラ・モジュールが設定するステップと
を有する請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ホスト装置が前記画像データを評価するステップと、
前記評価の結果に基づいて前記ホスト装置が前記画像データの転送要求の間隔を変更するステップと
を有する請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
イメージ・センサを含むカメラ・モジュールから画像データを受け取ることが可能なコンピュータに、
前記カメラ・モジュールを撮影状態からロー・パワー状態に遷移させる機能と、
前記カメラ・モジュールに対して順番にフレーム転送コマンドを発行する機能と、
あるフレーム転送コマンドから次のフレーム転送コマンドまでの各転送期間において前記カメラ・モジュールを前記ロー・パワー状態から前記撮影状態に遷移させる機能と、
前記カメラ・モジュールが前記フレーム転送コマンドに応答して生成した画像データを受け取る機能と、
前記画像データを受け取ったことに応答して各転送期間において前記カメラ・モジュールを前記ロー・パワー状態に遷移させる機能と
を実現させるコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
イメージ・センサを含み動画像データを出力することが可能なカメラ・モジュールと、
前記カメラ・モジュールに接続され前記カメラ・モジュールに順番に画像データの転送要求をするホスト装置とを有し、
前記カメラ・モジュールは前記ホスト装置から受け取ったある転送要求から次の転送要求までの各転送期間の間に撮影状態とロー・パワー状態の間での電力遷移を繰り返しながら画像データを前記ホスト装置に転送するカメラ・システム。
【請求項11】
各転送期間において前記撮影状態に遷移したときに前記カメラ・モジュールは最初の撮影条件に適合させるためにキャリブレーションをして取得したパラメータ値を設定する請求項10に記載のカメラ・システム。
【請求項12】
前記ホスト装置は、前記パラメータ値を更新するように前記カメラ・モジュールに要求する請求項10または請求項11に記載のカメラ・システム。
【請求項13】
イメージ・センサを含むカメラ・モジュールから画像データを受け取るインターフェースと、
前記カメラ・モジュールに対して順番に画像データの転送要求をする転送要求部と、
ある転送要求から次の転送要求までの各転送期間において前記カメラ・モジュールを撮影状態とロー・パワー状態に遷移させるように制御する電力制御部と、
前記カメラ・モジュールから画像データを受け取る画像処理部と
を有するコンピュータ。
【請求項14】
前記インターフェースがUSBである請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項15】
前記コンピュータが、電池駆動で動作する携帯式コンピュータである請求項13または請求項14に記載のコンピュータ。
【請求項16】
前記カメラ・モジュールが前記携帯式コンピュータの筐体に取り付けられている請求項15に記載のコンピュータ。
【請求項17】
前記カメラ・モジュールが前記コンピュータから電力の供給を受ける請求項15または請求項16に記載のコンピュータ。
【請求項18】
ホスト装置に動画像データを転送することが可能なカメラ・モジュールであって、
被写体の像を結像する光学機構と、
前記光学機構が結像した光を電気信号に変換するイメージ・センサと、
前記イメージ・センサの出力信号を処理する画像信号処理回路と、
前記ホスト装置に対するインターフェース回路と、
前記カメラ・モジュールの動作を制御するプロセッサとを有し、
前記プロセッサは、前記ホスト装置から画像データの転送コマンドを順番に受け取るたびに前記カメラ・モジュールを撮影状態とロー・パワー状態の間を遷移させながら前記ホスト装置に画像データを転送するカメラ・モジュール。
【請求項19】
前記カメラ・モジュールは前記撮影状態に遷移したときに少なくとも露光時間とホワイト・バランスのパラメータを最初に取得したパラメータ値に設定する請求項18に記載のカメラ・モジュール。
【請求項20】
前記ロー・パワー状態の消費電力は前記撮影状態の消費電力に対して10%以下である請求項18または請求項19に記載のカメラ・モジュール。
【請求項21】
イメージ・センサを含みホスト装置に動画像データを出力することが可能なカメラ・モジュールに、
前記ホスト装置に連続的に画像データを転送するための転送コマンドを受け取る機能と、
前記転送コマンドに基づいてロー・パワー状態から撮影状態に遷移する機能と、
画像データを生成して出力する機能と、
前記画像データの出力が完了した後に前記ロー・パワー状態に遷移する機能と、
前記撮影状態への遷移と前記画像データの出力と前記ロー・パワー状態への遷移を繰り返す機能と
を実現させるコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58961(P2013−58961A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196887(P2011−196887)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】