カメラ制振装置
【課題】撮影モードに応じた撮影者による装置調整を不要とし、装置の小型化および回路構成の簡単化を図ることができるカメラ制振装置を提供する。
【解決手段】ピッチ用連結部230およびロール用連結部240は、上板201をカメラ装置100の略重心直下で支持することにより、カメラ装置100の自重を支えることができる。カメラ装置100が傾いた場合、カメラ装置100の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じる。この場合、前側ばね部250および後側ばね部270は、カメラ装置100の偏心分の荷重を受けることができる。また、そのばね部は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動による荷重を受けることができる。アクチュエータ290は、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御することができる。
【解決手段】ピッチ用連結部230およびロール用連結部240は、上板201をカメラ装置100の略重心直下で支持することにより、カメラ装置100の自重を支えることができる。カメラ装置100が傾いた場合、カメラ装置100の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じる。この場合、前側ばね部250および後側ばね部270は、カメラ装置100の偏心分の荷重を受けることができる。また、そのばね部は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動による荷重を受けることができる。アクチュエータ290は、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影者の肩部で支持されながら被写体を撮影するカメラ装置の振動を制御するカメラ制振装置に係り、特にカメラ装置の振動制御技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TV番組製作や、映画製作、 ホームビデオなどで使用されるカメラ装置では、装置の振動による映像のブレを防止するための種々の補正技術があり、その補正技術は、パッシブ型とアクティブ型に大別される。
【0003】
パッシブ型の技術には、機械的にカメラ装置の振動を抑制するステディカムがある(たとえば特許文献1)。ステディカムでは、たとえば撮影者が専用のベストを着用し、そのベストの下部にカメラ装置がアームにより弾性支持される。この場合、カメラ装置とその他部材とのバランスを利用することにより、撮影者の身体の動きにより発生するカメラ装置の振動が抑制される。
【0004】
アクティブ型の技術には、レンズや光学部品を駆動することによりカメラ装置の振動を補正するレンズ駆動方式や、可変プリズム方式、鏡筒駆動方式、CCD駆動方式などの光学的補正技術、および、カメラ装置の振動による映像のブレを画像処理を用いて補正するCCD切出し方式などの電子的補正技術がある。
【0005】
各種光学的補正技術では、角変位を利用した位置制御を行っている。具体的にはレンズ駆動方式では、カメラ装置の振動が検出されると、アクチュエータで補正用レンズを駆動することにより手振れ補正を行っている(たとえば特許文献2)。可変プリズム方式では、2枚のレンズの間に高屈折率液体を封入した構造のプリズムが用いられ、一方のレンズにモータが接続されている。この方式では、カメラ装置の振動が検出されると、モータが一方のレンズの一端部を他方のレンズに対して接近離間させて光軸補正を行うことにより手振れ補正を行っている(たとえば特許文献3)。
【0006】
鏡筒駆動方式では、カメラ装置の振動が検出されると、内部にCCDおよびレンズのユニットが設けられている鏡筒部をアクチュエータで駆動して光軸補正を行うことにより手振れ補正を行っている(たとえば特許文献4)。CCD駆動方式では、カメラ装置の振動が検出されると、CCDを駆動部で光軸中心へ駆動することにより、手振れ補正を行っている(たとえば特許文献5)。
【0007】
CCD切出し方式では、画面に必要な撮影画面よりも広い撮影面を有するCCDを用い、CCDの撮像から所定領域を切り出す。そして、検出された画像全体の動きに応じて、その切出し領域を移動させることにより手振れ補正を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上のような補正技術のうちの可変プリズム方式では、原理上、色収差が発生するため、画質が悪化する。鏡筒駆動方式は、レンズ交換式であるため、テレビカメラには使用することはできない。CCD駆動方式では、光の3原色に対応する3CCDの場合、3CCDを高精度で同期しながら駆動させる必要があるが、それは技術的に不可能である。それら光学的補正技術では、角変位を利用した位置制御を行っているため、ジャイロセンサから得た角速度を角変位に変換する積分回路が必要である。しかも、位置制御では、カメラ装置を移動距離分を補正してその位置を元に戻しているため、撮影者がカメラ装置を意図的に動かした場合、補正映像に不自然な動きが入る虞がある。このため、その撮影者の意図的動作と振動との区別を行う必要がある。その結果、その区別を行う判定回路がさらに必要となるため、複雑な回路となる。CCD切出し方式では、大きなサイズの3CCDを用意しなければならず、コストが増大する。しかも、その方式は、ハイビジョンには適当ではない。
【0009】
以上のことから、現在、以上のような補正技術のうちのステディカムおよびレンズ駆動方式のみがテレビカメラなどの業務用カメラに適用されている。しかしながら、ステディカムでは、装置が大型なものとなる。また、その制振特性が単一であるため、撮影者が静止した状態で撮影するモードと撮影者が移動した状態で撮影するモードの両方を満足することができない。また、レンズ駆動方式では、補正用レンズによって収差が発生するため、画質が悪化する。さらに、レンズ駆動方式も、角変位を利用した位置制御を行う光学的補正技術であるから、上記のように補正映像に不自然な動きが入る虞があり、かつ複雑な回路が必要となる。
【0010】
【特許文献1】特表平8−503763号公報
【特許文献2】特開2002−131797号公報
【特許文献3】特開2003−149702号公報
【特許文献4】特公平5−105966号公報
【特許文献5】特公平6−10872号公報
【0011】
したがって、本発明は、撮影モードに応じた撮影者による装置調整を不要とし、装置の小型化および回路構成の簡単化を図ることができるのはもちろんのこと、映像への不自然な動きの混入を防止することができ、かつその画質の悪化を防止することができるカメラ制振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のカメラ制振装置は、撮影者の肩部で支持されながら被写体を撮影するカメラ装置の振動を制御する制振装置であって、カメラ装置を載置して支持する第1基板と、第1基板に対向して配置されるとともに、肩部に載せられて支持される第2基板と、第1基板と第2基板との間に設けられ、第1基板をカメラ装置の略重心直下で支持する支持手段と、第1基板と前記第2基板との間に設けられ、第1基板からの荷重を受ける弾性部材と、第1基板と前記第2基板との間に設けられ、第1基板に生じた振動を制御する振動制御手段とを備え、弾性部材は、第1基板の振動により生じた荷重を受けるとともに、カメラ装置の重心位置が支持手段の支持位置から移動したときに生じる荷重を受けることを特徴としている。
【0013】
本発明のカメラ制振装置では、第1基板をカメラ装置の略重心直下で支持している支持手段を備えているので、その支持手段がカメラ装置の自重を支えることができる。ここで、カメラ装置が傾いた場合、カメラ装置の重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、本発明のカメラ制振装置では、第1基板からの荷重を受ける弾性部材を備えているので、弾性部材がカメラ装置の偏心分の荷重を受けることができる。また、弾性部材は、カメラ装置の重心位置が偏心しないときでも、カメラ装置の振動により生じた荷重を受けることができる。そして、第1基板に生じた振動を制御する振動制御手段を備えているので、振動制御手段が、カメラ装置の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置の振動を制御することができる。
【0014】
以上のように本発明のカメラ制振装置では、撮影モードに応じた撮影者による装置調整が不要となるのはもちろんのこと、振動制御手段がカメラ装置の自重を支える必要がなく、カメラ装置の回転慣性分の荷重のみに対する抵抗力を発生すればよいので、振動制御手段の小型化を図ることができ、その結果、装置の小型化を図ることができる。
【0015】
本発明のカメラ制振装置は、制振性能を向上させるために種々の構成を用いることができる。たとえば、第1基板の角速度を検出する角速度検出手段を備え、振動制御手段は、角速度検出手段により検出された第1基板の角速度に基づき、第1基板に生じた振動に対する抵抗力を発生することにより振動の制御を行うことができる。
【0016】
この態様では、振動制御手段による振動制御は、カメラ装置の移動距離分の補正を行いその位置を元に戻す従来の位置制御を行う装置とは異なり、第1基板に生じた振動に対して、その角速度に基づいた抵抗力を発生しているだけである。これにより、撮影者がカメラ装置を意図的に動かした場合、その撮影者の動作に沿った上でカメラ装置の振動の制御を行うことができるので、補正映像に不自然な動きが入らない。したがって、映像への不自然な動きの混入を防止することができ、かつその画質の悪化を防止することができる。また、その撮影者の意図的動作と振動との区別を行うことが不要となるから、その区別を行う判定回路が不要となる。さらに、積分回路が不要となるから、回路構成が簡単となる。
【0017】
振動制御手段は、カメラ装置のピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の少なくとも一方向を制御し、支持手段は制御方向に対応して設けられる軸受部である構成を用いることができる。この態様では、カメラ装置に対応して選択した方向で、カメラの装置の振動の制御を行うことができる。
【0018】
第1基板および第2基板に摺動可能に設けられ、第1基板および第2基板の面内方向に対する支持手段の面内方向の位置を調整する位置調整手段を備えることができる。たとえばカメラ装置のレンズ鏡筒部のレンズを交換した場合、カメラ装置の重心位置が移動するが、上記態様では、位置調整手段を用い支持手段の面内方向の位置を調整することにより、支持手段の位置を常にカメラ装置の略重心直下に合わせることができる。
【0019】
上記のような位置調整手段による支持手段の位置調整を自動で行うことができる。具体的には、第1基板の水平面あるいは前記第2基板に対する傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、傾斜角度検出手段により検出された傾斜角度に基づき、位置調整手段を駆動する位置調整用駆動手段とを備えることができる。この場合、支持手段の第1基板に対する支持位置は、位置調整用駆動手段による位置調整手段の駆動によって、カメラ装置の略重心直下となるように自動調整することができる。
【0020】
具体的には、カメラ装置を三脚などの水平面に載置した場合、たとえばカメラ装置のレンズ鏡筒部のレンズを重量の異なるものに交換したとき、カメラ装置の重心位置が移動する。この場合、上記態様では、傾斜角度検出手段が第1基板の水平面に対する傾斜角度を検出し、位置調整用駆動手段がその傾斜角度がゼロとなるように位置調整手段を駆動することにより、支持手段の第1基板に対する支持位置がカメラ装置の略重心直下となるように自動調整することができる。また、たとえば撮影者がカメラ装置のレンズを被写体に向けるためにカメラ装置を傾斜させた場合、カメラ装置の重心位置が移動する。この場合、上記態様では、傾斜角度検出手段が第1基板の第2基板に対する傾斜角度を検出し、位置調整用駆動手段がその傾斜角度がゼロとなるように位置調整手段を駆動することにより、支持手段の第1基板に対する支持位置がカメラ装置の略重心直下となるように自動調整することができる。なお、このように傾斜角度検出手段が第1基板の第2基板に対する傾斜角度を検出する態様は、カメラ装置を三脚などの水平面に載置した場合にも適用することができるのは言うまでもない。
【0021】
以上のように支持手段の第1基板に対する支持位置は、位置調整用駆動手段による位置調整手段の駆動によって、カメラ装置の略重心直下となるように自動調整されるので、弾性部材の伸縮を常に初期負荷状態に維持することができるとともに、振動制御手段の可動範囲の中央に維持することができる。したがって、装置の制振機能を常に最大限発揮することができる。
【0022】
カメラ装置とそのカメラ装置の電源手段との間に電源分岐手段を着脱可能に設け、振動制御手段へは、カメラ装置の電源手段から電源分岐手段を通じて電力が供給される構成を用いることができる。この態様では、カメラ装置の電源手段を用いることができる。また、カメラ装置のレンズ鏡筒部に設けられる光学系を調整する光学系調整部を第1基板あるいは第2基板に備え、光学系調整部は、カメラ装置のレンズ鏡筒部から隔離している構成を用いることができる。この態様では、撮影者は、カメラ装置のレンズ鏡筒部から隔離している光学系調整部を用いて、レンズへの各種操作を行うことができるので、光学系に直接触れる必要がないのはもちろんのこと、光学系調整によるカメラ装置の振動発生を防止することができる。
【0023】
また、カメラ装置に着脱可能に設けることができる。この態様では、カメラ装置への取付手段として、カメラ装置の三脚への取付用のもの(既存のカメラ取付ネジや取付フックなど)を利用することができる。この場合、取付手段を設けるためのカメラ装置の本体部への加工の必要がない。このように制振装置は外付け方式であるから、カメラ装置とサイズが略同等の各種カメラ装置に適用することができる。
【0024】
振動制御手段としては、アクチュエータあるいは可変ダンパ機構を用いることができる。また、振動制御手段の非動作状態時に、第1基板の第2基板に対する位置を固定するロック機構を備えることができる。たとえば電源手段のオフ時、カメラ装置が回転すると、振動制御手段はカメラ装置の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生しない。このため、弾性部材が大きく撓み、カメラ装置の振動変位が増幅したりカメラ装置が位相のずれにより意図しない方向に傾斜する等して、カメラ装置の位置が不安定になる。しかしながら、上記態様では、ロック機構により第1基板の第2基板に対する位置を固定しているので、カメラ装置の位置の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のカメラ制振装置によれば、撮影モードに応じた撮影者による装置調整を不要とするのはもちろんのこと、振動制御手段がカメラ装置の自重を支える必要がなく、カメラ装置の回転慣性分の荷重のみに対する抵抗力を発生すればよいので、振動制御手段の小型化を図ることができる等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(1)第1実施形態
(1−1)実施形態の構成
(A)カメラシステムの構成
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るカメラ制振装置(以下、制振装置)200が適用されるカメラシステム1の構成を表す概略正面図である。カメラシステム1はカメラ装置100および制振装置200を備えている。カメラ装置100は、本体部101を備え、本体部101の底面部の中央には凹部101Aが形成されている。
【0027】
本体部101の前端部にはレンズ鏡筒部102が設けられ、本体部101の後端部には、電源分岐ボックス104(電源分岐手段)を介して電源部103(電源手段)が設けられている。電源分岐ボックス104は、本体部101および電源部103に対して着脱可能となっている。なお、以下の図面では、レンズ鏡筒部102が設けられている側を前側、電源部103が設けられている側を後側と表記している。また、撮影者が前側を向いたときの右側を装置の右側、撮影者が前側を向いたときの左側を装置の左側と表記している。
【0028】
レンズ鏡筒部102はレンズを備えている。レンズ鏡筒部102の内部には、レンズのフォーカス、アイリス、および、ズームのそれぞれを調整する調整部材やモータなどが設けられている。本体部101の下面部には、カメラ装置の振動を制御する制振装置200が着脱可能に取り付けられている。制振装置200による振動制御は、ピッチ方向およびロール方向の2方向で行われる。
【0029】
(B)制振装置の構成
図2は制振装置200の全体構成を表す斜視図である。図3は制振装置200の構成を表し、(A)は装置200の左側面図、(B)は装置200の上面図、(C)は装置200の右側面図である。図4は制振装置200の前側空間の構成を表し、(A)は前側空間の前面図、(B)は図3(B)の4B−4B線断面図である。図5は制振装置200の後側空間の構成を表し、(A)は後側空間の後面図、(B)は図3(B)の5B−5B線断面図である。図6は、制振装置200の下面部の構成を表す下面図である。図7は、制振装置200の制御方法を説明するためのブロック図である。なお、図3(A)で表される装置200の上下方向は、実際のものと逆になっている。
【0030】
制振装置200は、カメラ装置100を載置して支持する上板201(第1基板)と、撮影者の肩部に載せられて支持される下板202(第2基板)を備えている。上板201および下板202は、所定の間隔をおいて対向配置されている。上板201および下板202の中央部には、カメラ装置100の凹部101Aに対応する上側凸部201Aおよび下側凸部202Aが形成されている。上板201と下板202の間の前側(凸部201A,202Aより前側)には、前側空間200Aが形成され、上板201と下板202の間の後側(凸部201A,202Aより後側)には、後側空間200Bが形成されている。
【0031】
上側凸部201Aは、カメラ装置100の凹部201Aに係合する。上板201における上側凸部201Aの前面側にはカメラ取付ネジ203が設けられ、カメラ取付ネジ203は、カメラ装置100の下面部の相手部材に螺合される。上板201における上側凸部201Aの後面側にはカメラ取付フック204が設けられ、カメラ取付フック204は、カメラ装置100の下面部の相手部材に係合される。これにより制振装置200は、カメラ装置100の本体部101の下面部に着脱可能に取り付けられている。
【0032】
下板202の下側凹部202Aには肩パッド205が設けられている。下板202の前端部には、レンズ鏡筒部102内部のレンズのフォーカス、アイリス、および、ズームのそれぞれを調整するリモコン式の光学系調整部206(図1のみに図示)が設けられている。光学系調整部206は、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102から隔離している。
【0033】
(B−1)前側空間の構成
上板201と下板202の間の前側空間200Aには、上側前後調整部210(位置調整手段)、下側前後調整部220(位置調整手段)、ピッチ用連結部230(支持手段)、ロール用連結部240(支持手段)、および、前側ばね部250が設けられている。上側前後調整部210および下側前後調整部220は、上板201および下板202に対するピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後方向の位置を調整する。ピッチ用連結部230およびロール用連結部240は、たとえばカメラ装置の略重心直下に配置され、カメラ装置100の自重を支えている。前側ばね部250は、たとえばカメラ装置100が載置された上板201が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を受ける。
【0034】
上側前後調整部210は、図3,4に示すように、スライド機構211、スライドベース212、ネジ受部213、送りネジ214、ネジ台座215、および、調整ハンドル216を備えている。スライド機構211は、横方向に一対設けられている。スライド機構211は、上板201の前後方向に延在するガイドレール211Aと、ガイドレール211Aに摺動可能に設けられているスライド211Bを有している。スライドベース212の上面部には、スライド機構211が固定されている。スライドベース212の下面部には、ネジ受部213が固定されている。送りネジ214の後端部は、ネジ受部213に螺合している。送りネジ214の前端部は、ネジ台座215により回転可能に支持されている。調整ハンドル216は、送りネジ214の前端部に固定され、制振装置200の外部に配置されている。
【0035】
このような上側前後調整部210では、調整ハンドル216を回転操作すると、スライド機構211においてスライド211Bがガイドレール211Aに沿って移動することにより、スライドベース212が前後に移動する。これにより、上側前後調整部210の下面部に固定されたピッチ用連結部230が、上側前後調整部210の上面部に固定された上板202に対して前後に移動する。
【0036】
下側前後調整部220は、図3,4に示すように、スライド機構221、スライドベース222、ネジ受部223、送りネジ224、ネジ台座225、および、調整ハンドル226を備えている。スライド機構221は、横方向に一対設けられている。スライド機構221は、下板202の前後方向に延在するガイドレール221Aと、ガイドレール221Aに摺動可能に設けられているスライド221Bを有している。スライドベース222の下面部には、スライド機構221が固定されている。スライドベース222の上面部には、ネジ受部223が固定されている。送りネジ224の後端部は、ネジ受部223に螺合している。送りネジ224の前端部は、ネジ台座225により回転可能に支持されている。調整ハンドル226は、送りネジ224の前端部に固定され、制振装置200の外部に配置されている。
【0037】
このような下側前後調整部220では、調整ハンドル226を回転操作すると、スライド機構221においてスライド221Bがガイドレール221Aに沿って移動することにより、スライドベース222が前後に移動する。これにより、下側前後調整部220の上面部に固定されたロール用連結部240が、下側前後調整部220の下面部に固定された下板202に対して前後に移動する。
【0038】
ピッチ用連結部230は、図3,4に示すように、ピッチ用保持板231、ピッチ用シャフト232、ピッチ用ベアリング233(図8,9のみに図示)、および、ピッチ用ベアリングホルダ234を備えている。ピッチ用保持板231は、スライドベース212の下面に一対固定されている。ピッチ用保持板231は、各スライド機構211の略直下に配置されている。ピッチ用シャフト232は、ロッド状をなし横方向に延在するとともに、その両端部は、ピッチ用保持板231に固定されている。ピッチ用ベアリング233は、ピッチ用保持板231の間に一対配置され、ピッチ用シャフト232を回転可能に支持している。ピッチ用ベアリングホルダ234は、各ピッチ用ベアリング233に設けられ、その内部でピッチ用ベアリング233を固定している。
【0039】
このようなピッチ用連結部230では、ピッチ用シャフト232がピッチ用ベアリング233のなかで回転すると、ピッチ用シャフト232の両端部が固定されたピッチ用保持板231がピッチ軸回りに回転する。これにより、上側前後調整部210および上板201がピッチ用保持板231とともにピッチ軸回りに回転する。
【0040】
ロール用連結部240は、図3,4に示すように、ロール用保持板241、ロール用シャフト242、ロール用ベアリング243、および、ロール用ベアリングホルダ244を備えている。ロール用保持板241は、ピッチ用保持板231の間に配置される。ロール用シャフト242は、ロッド状をなし前後方向に延在するとともに、その後端部は、ロール用保持板241に固定されている。ロール用ベアリング243は、ロール用シャフト242の前端部に配置され、ロール用シャフト242を回転可能に支持している。ロール用ベアリングホルダ244は、下側前後調整部220のスライドベース222の中央部に固定され、その内部でロール用ベアリング243を固定している。
【0041】
このようなロール用連結部230では、ロール用シャフト242がロール用ベアリング243のなかで回転すると、ロール用シャフト232の後端部が固定されたロール用保持板241がロール軸回りに回転する。これにより、ピッチ用連結部230、上側前後調整部210および上板201が、ロール用保持板241とともにロール軸回りに回転する。
【0042】
前側ばね部250は、図3,4に示すように、前側空間におけるピッチ用連結部230の横方向に一対配置されている。前側ばね部250は、ばね251(弾性部材)およびばね台座252を備えている。ばね251は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面および下板202の上面に固定されたばね台座252に支持されている。このような前側ばね部250では、上板201が傾いた場合、横方向一対のばね251が、カメラ装置100の偏心分の荷重を上板201を通じて受ける。また、ばね251は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を上板201を通じて受けることができる。
【0043】
(B−2)後側空間の構成
上板201と下板202との間の後側空間200Bには、ガタ防止部260、後側ばね部270、角速度検出部280(角速度検出手段)、および、アクチュエータ290(振動制御手段)、および、制御部300が設けられている。ガタ防止部260は、上板201と下板202の間での横方向のガタの発生を防止する。後側ばね部270は、たとえばカメラ装置100が載置された上板201が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を受ける。角速度検出部280は、上板201のピッチ方向およびロール方向の角速度を検出する。アクチュエータ290は、カメラ装置100が載置された上板201が傾いた場合、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御する。制御部300は、角速度検出部280により検出された各方向の角速度に基づき、アクチュエータ290の動作制御を行う。
【0044】
ガタ防止部260は、図3,5に示すように、上板201および下板202の後端部に配置されている。ガタ防止部260は、上板201の後端部に固定される係合部材261と、下板202の後端部に固定されるガイド部材262とを有している。係合部材261の下端部には突起261Aが形成され、ガイド部材262には垂直方向に延在するスリット262Aが形成されている。ストッパ260では、突起261Aがスリット262Aに沿って案内されることにより、上板201と下板202の間での横方向のガタの発生が防止される。
【0045】
後側ばね部270は、図3,5に示すように、後側空間200Bの前側の横方向に一対配置されている。後側ばね部270は、ばね271(弾性部材)およびばね台座272を備えている。ばね271は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面および下板202の上面に固定されたばね台座272に支持されている。このような後側ばね部270では、上板201が傾いた場合、横方向一対のばね271が、カメラ装置100の偏心分の荷重を上板201を通じて受ける。また、ばね271は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を上板201を通じて受けることができる。
【0046】
角速度検出部280は、図3に示すように、上板201の下面部に取り付けられ、図7に示すように、ピッチ用ジャイロセンサ281およびロール用ジャイロセンサ282を有する。ピッチ用ジャイロセンサ281は、上板201のピッチ方向の角速度を検出し、ロール用ジャイロセンサ282は、上板201のロール方向の角速度を検出する。
【0047】
アクチュエータ290は、図3,5に示すように、後側空間200Bの後側に一対配置され、ヨーク291、コイル292、および、磁石293を備えている電磁アクチュエータである。ヨーク291は、下板202の上面部に固定される底部291Aと、底部291Aの両端部および中央部から上方へ向けて延在する3つの縦板部291Bを有している。縦板部291Bと上板201との間に隙間が形成されている。コイル292は、中央部の縦板部291Bの周囲に配置され、その上端部は、上板201の下面に固定されている。コイル292の下端部と底部291Aとの間には隙間が形成されている。磁石293は、コイル292に対向するようにして両端部の縦板部291Bの上端部に固定されている。アクチュエータ290は、配線およびコントロール基板(図示略)を通じて、電源分岐ボックス104に電気的に接続されている。
【0048】
このようなアクチュエータ290の駆動では、角速度検出部280により検出された上板201の角速度に基づき、コイル292に電流を流す。この場合、アクチュエータ290への電力は、電源部103から電源分岐ボックス104を通じて供給される。すると、コイル292と磁石293との間に電磁力が生じることにより、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置100の振動が制御される。
【0049】
(C)制振装置の制御方法
制御部300は、図7に示すように、ピッチ用抵抗力算出回路301P,ロール用抵抗力算出回路301R、右側加算回路302A,左側加算回路302B、および、右側増幅回路303A,左側増幅回路303Bを備えている。ピッチ用抵抗力算出回路301Pは、ピッチ用ジャイロセンサ281からの角速度の検出値に基づき、右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290に必要な抵抗力を算出する。一方、ロール用抵抗力算出回路301Rは、ロール用ジャイロセンサ282からの角速度の検出値に基づき、右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290に必要な抵抗力を算出する。
【0050】
ここで、抵抗力算出回路301P,301Rによる抵抗力の算出法は、スカイフック理論を用いる。スカイフック理論は、空中を走る架空の線に物体が宙づり(スカイフック)の状態におかれているかのように、その物体のスムーズな移動を実現するサスペンション制御理論として利用されている技術である。本実施形態の計算モデルでは、たとえば地面とカメラ装置との間にばねを設けるとともに、カメラ装置を重心直下の支点で支持している。そして、ピッチ方向のモデルの場合、ピッチ方向で、スカイフックダンパを架空の線に接続し、ロール方向のモデルの場合、ロール方向で、スカイフックダンパを架空の線に接続している。このようなピッチ方向およびロール方向のモデルそれぞれで運動方程式を立てると、数式1,2が得られる。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
なお、数式1,2において、θp2はピッチ方向の下板の角変位、θP1、dθp1/dt,d2θp1/dt2は上板のピッチ方向の角変位,角速度,角加速度、kp1はピッチ方向のばね定数、Cp1はピッチ方向の粘性係数、lp1はピッチ方向における支点から上板の重心までの距離、Jp1はピッチ方向の慣性モーメント(能率)である。θr2はロール方向の下板の角変位、θr1,dθr1/dt,d2θr1/dt2は上板のロール方向の角変位,角速度,角加速度、kr1はロール方向のばね定数、Cr1はロール方向の粘性係数、lr1はロール方向における支点から上板の重心までの距離、Jr1はロール方向の慣性モーメント(能率)である。mは上板の質量、gは重力定数である。
【0054】
ピッチ方向の抵抗力Fp1は、数式3で示されるように、数式1の第2項である。ピッチ方向の抵抗力Fp1は、粘性係数Cp1をパラメータとして可変にすることにより決定される。ロール方向の抵抗力Fr1は、数式4で示されるように数式2の第2項である。ロール方向の抵抗力Fr1は、粘性係数Cr1をパラメータとして可変にすることにより決定される。
【0055】
【数3】
【0056】
【数4】
【0057】
ピッチ用抵抗力算出回路301Pは、以上のように右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290が発生する抵抗力を算出した後、それぞれに対応するピッチ用右側信号PRおよびピッチ用左側信号PLを右側加算回路302A,左側加算回路302Bに出力する。
【0058】
一方、ロール用抵抗力算出回路301Rは、以上のように右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290が発生する抵抗力を算出した後、それぞれに対応するロール用右側信号RRおよびロール用左側信号RLを右側加算回路302A,左側加算回路302Bに出力する。
【0059】
右側加算回路302Aは、ピッチ用右側信号PRおよびロール用右側信号RRを加算し、その加算値は、右側増幅回路303Aによる増幅後、右側のアクチュエータ290へ出力される。一方、左側加算回路303Bは、ピッチ用左側信号PLおよびロール用左側信号RLを加算し、その加算値は、左側増幅回路303Bによる増幅後、左側のアクチュエータ290へ出力される。これにより、右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290は、カメラ装置100のピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0060】
(1−2)実施形態の動作
カメラ装置100に適用された制振装置200の動作について、おもに図8,9を参照して説明する。図8は、制振装置200の静止状態を表し、(A)は、図3(C)の概略構成を表す拡大図、(B)は図5(B)の概略構成を表す拡大図である。図9は、制振装置200の動作状態を表し、(A)は、図8(A)の静止状態からピッチ方向で動作が行われた状態を表す拡大図、(B)は、図8(B)の静止状態からロール方向で動作が行われた状態を表す拡大図である。図8,9では、前側ばね部250の図示を省略し、図8(B),9(B)では、各構成部材を重ねて表している。
【0061】
カメラ装置100に振動が生じていない場合、たとえば上板201と下板202が平行となっている制振装置200は静止状態にある。静止状態では、カメラ装置100が載置された上板201は、カメラ装置100の略重心直下に位置するピッチ用連結部230およびロール用連結部240により支持されている これにより、ピッチ用連結部230およびロール用連結部240は、たとえばカメラ装置100の略重心直下に配置され、カメラ装置100の自重を支えている。この場合、上板201に振動が生じていないから、角速度検出部280により上板201の角速度は検出されず、左右一対のアクチュエータ290は制御部300により作動されていない。
【0062】
なお、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102のレンズや光学部品を交換した場合、カメラ装置100の重心位置が移動している。この場合、上側前後調整部210,下側前後調整部220を用いてピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後位置を調整することにより、それら連結部230,240の位置をカメラ装置の略重心直下に合わせる。
【0063】
カメラ装置100に振動が生じ、図9(A)に示すように、上板201がピッチ用シャフト232を中心としてピッチ方向の後側に傾き、かつ図9(B)に示すように、上板201がロール用シャフト242を中心として図の左側に傾いた場合、上板201に印加された力に応じて、前側ばね部250および後側ばね部270の左右一対のばね251,271が伸縮することにより、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を受ける。
【0064】
ここで、角速度検出部280では、ピッチ用,ロール用ジャイロセンサ281,282がカメラ装置100の振動により生じた上板201の角速度を検出し、制御部300は、その角度検出値をもとに右側,左側のアクチュエータ290に必要な抵抗力を算出し、右側,左側のアクチュエータ290は、その算出値に基づき、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0065】
具体的には、図7に示すように、ピッチ用ジャイロセンサ281が上板201のピッチ方向の角速度を検出し、ロール用ジャイロセンサ282が上板201のロール方向の角速度を検出する。
【0066】
制御部300では、ピッチ用ジャイロセンサ281による上板201のピッチ方向の角速度検出値をもとに、ピッチ用抵抗力算出回路301Pが、右側,左側のアクチュエータ290のそれぞれが発生する抵抗力を算出し、それぞれに対応するピッチ用右側信号PRおよびピッチ用左側信号PLを右側,左加算回路302A,302Bに出力する。
【0067】
一方、制御部300では、ロール用ジャイロセンサ282による上板201のロール方向の角速度検出値をもとに、ロール用抵抗力算出回路301Rが、右側,左側のアクチュエータ290のそれぞれが発生する抵抗力を算出し、それぞれに対応するロール用右側信号RRおよびロール用左側信号RLを右側,左加算回路302A,302Bに出力する。
【0068】
右側加算回路302Aは、ピッチ用,ロール用右側信号PR,RRを加算し、その加算値は、右側増幅回路303Aにより増幅される。右側のアクチュエータ290は、その増幅された加算値に基づき、カメラ装置100のピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。一方、左側加算回路302Bは、ピッチ用,ロール用左側信号PL,RLを加算し、その加算値は、左側増幅回路303Bにより増幅される。左側の側のアクチュエータ290は、その増幅された加算値に基づき、カメラ装置100のピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0069】
この場合、右側,左側のアクチュエータ290によるピッチ方向の抵抗力は、上板201がピッチ用シャフト232を中心としてピッチ方向前側に向けて回転するような力である。一方、右側,左側のアクチュエータ290によるロール方向の抵抗力は、上板201がロール用シャフト242を中心として図のロール方向右側に向けて回転するような力である。
【0070】
このように右側,左側のアクチュエータ290は、ピッチ方向,ロール方向で検出された上板201の角速度に基づき抵抗力を発生することにより、上板201のピッチ方向およびロール方向の振動が制御される。なお、第1実施形態では、上板201のピッチ方向およびロール方向の両方向の振動を同時に制御する例をあげて制振装置200の動作について説明したが、第1実施形態では、ピッチ方向およびロール方向のそれぞれで検出された角速度に基づき右側,左側のアクチュエータの制御を線形的に行っているから、ピッチ方向のみあるいはロール方向のみの振動の制御を行うことができるのは言うまでもない。
【0071】
以上のように第1実施形態の制振装置200では、上板201をカメラ装置100の略重心直下で支持しているピッチ用連結部230およびロール用連結部240を備えているので、それら連結部230,240がカメラ装置100の自重を支えることができる。ここで、カメラ装置100が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、第1実施形態の制振装置100では、上板201からの荷重を受ける前側ばね部250,後側ばね部270を備えているので、ばね部250,270がカメラ装置100の偏心分の荷重を受けることができる。また、前側ばね部250,後側ばね部270は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を受けることができる。そして、上板201に生じた振動を制御するアクチュエータ290を備えているので、アクチュエータ290が、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御することができる。
【0072】
以上のように第1実施形態の制振装置200では、撮影モードに応じた撮影者による装置調整が不要となるのはもちろんのこと、アクチュエータ290がカメラ装置100の自重を支える必要がなく、カメラ装置100の回転慣性分の荷重のみに対する抵抗力を発生すればよいので、アクチュエータ290の小型化を図ることができる。
【0073】
特に、アクチュエータ290による振動制御は、カメラ装置の移動距離分の補正を行いその位置を元に戻す従来の位置制御を行う装置とは異なり、上板201に生じた振動に対して、その角速度に基づいた抵抗力を発生しているだけである。これにより、撮影者がカメラ装置100を意図的に動かした場合、その撮影者の動作に沿った上でカメラ装置100の振動の制御を行うことができるので、補正映像に不自然な動きが入らない。したがって、映像への不自然な動きの混入を防止することができ、かつその画質の悪化を防止することができる。また、その撮影者の意図的動作と振動との区別を行うことが不要となるから、その区別を行う判定回路が不要となる。さらに、積分回路が不要となるから、回路構成が簡単となる。
【0074】
また、上側前後調整部210,下側前後調整部220を用いてピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後位置を調整することにより、それら連結部230,240の位置を常にカメラ装置100の略重心直下に合わせることができる。さらに、カメラ装置100の本体部101および電源部103に対して着脱可能な電源分岐ボックス104を設け、電源分岐ボックス104を通じてアクチュエータ290へ電力を供給するので、カメラ装置100の電源部103を用いることができる。
【0075】
加えて、撮影者は、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102から隔離している光学系調整部206を用いて、レンズへの各種操作を行うことができるので、レンズや各光学部品に直接触れる必要がないのはもちろんのこと、光学系調整によるカメラ装置100の振動発生を防止することができる。また、カメラ取付ネジ203およびカメラ取付フック204を用いて、制振装置200をカメラ装置100に着脱可能に設けているので、カメラ取付ネジ203およびカメラ取付フック204として、カメラ装置100の三脚への取付用のもの(既存のカメラ取付ネジや取付フック)を利用することができる。この場合、制振装置200のカメラ装置100への取付手段を設けるための本体部101への加工の必要がない。このように制振装置200は外付け方式であるから、カメラ装置100とサイズが略同等の各種カメラ装置に適用することができる。
【0076】
(2)第2実施形態
図10は、本発明の第2実施形態に係る制振装置400の構成を表す右側面図である。図11は、制振装置400の前側空間400Aの構成を表し、(A)は図10の11A−11A線断面図、(B)はユニバーサル用連結部410の構成部材の一部を表す斜視図である。図12は、制振装置400の後側空間400Bの構成を表し、(A)は図10の12A−12A線断面図、(B)は図10の12A−12A線断面図、(C)はピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430の構成を表す斜視図である。図13は、ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430の概略構成を説明するための側断面図である。図13では、後側ばね部440,450の図示を省略している。第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、第1実施形態と同様な作用を有する構成要素の説明は省略している。
【0077】
第2実施形態は、第1実施形態とは振動制御の方向が異なっており、第2実施形態の振動制御は、ピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の3方向で行われる。具体的には、第2実施形態では、支持手段として、第1実施形態のピッチ用連結部230およびロール用連結部の代わりに、ユニバーサル用連結部410を用いる。振動制御手段として、第1実施形態のアクチュエータ290の代わりに、ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430を用いている。これに対応して、角度検出部280にはヨー用ジャイロ路センサが追加されるとともに、制御部300にヨー方向用の抵抗力算出回路、増幅回路、加算回路が追加される。これにより、ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430の動作制御が行われる。
【0078】
ユニバーサル用連結部410は、図11(A)に示すように、ユニバーサル用保持板411、ユニバーサル用シャフト412、ユニバーサル用ベアリング413、および、ユニバーサル用ベアリングホルダ414を備えている。ユニバーサル用保持板411は、スライドベース212の下面に一対固定されている。ユニバーサル用保持板411は、各スライド機構211の略直下に配置されている。ユニバーサル用シャフト412は、ロッド状をなし横方向に延在するとともに、その両端部は、ユニバーサル用保持板411に固定されている。ユニバーサル用ベアリング413は、ユニバーサルシャフト412の中央部に配置され、ユニバーサルシャフト412をユニバーサルに支持している。
【0079】
ユニバーサル用ベアリング413は、図11(B)に示すように、内輪413Aおよび外輪413Bを有する自動調心型球面滑り軸受である。内輪413Aは、外輪413Bに球面接触しており、外輪413Bは、内輪413Aのピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の3方向の動きに対応可能なようにユニバーサルに支持されている。
【0080】
このようなユニバーサル用連結部410では、ユニバーサル用シャフト412がピッチ用ベアリング233のなかで回転すると、ユニバーサル用シャフト412の両端部が固定されたユニバーサル用保持板411がユニバーサルに動く。これにより、上側前後調整部210および上板201がユニバーサル用保持板411とともにユニバーサルに動く。
【0081】
ピッチ・ロール用アクチュエータ420は、図12(A),12(C),13に示すように、後側ばね部270の後側において、横方向に3つ配置されるとともに、ヨーク421、コイル422、磁石423、および、支持部材424を備えている電磁アクチュエータである。ヨーク421は、上板201に固定されるとともに、横方向に開口している略直方体形状をなしている。コイル422は、ヨーク421の内部で支持部材424に支持されている。磁石423は、一対のヨーク421の互いに当接している側面部の内側に配置され、コイル422に対向している。支持部材424は、垂直方向に開口している略直方体形状をなし、一対のヨーク421の互いに当接している側面部を囲むようにして配置されている。
【0082】
この場合、制御部200では、中央のアクチュエータ420の追加に対応して、中央のアクチュエータ420に必要な抵抗力を算出するための回路が、左右のアクチュエータ420と同様に設けられている。中央のアクチュエータ420は、特にピッチ方向への抵抗力を得るために設けており、大きな抵抗力が必要でない場合には設けなくてもよい。
【0083】
このようなピッチ・ロール用アクチュエータ420の駆動では、角速度検出部280により検出された上板201のピッチ・ロール方向の角速度に基づき、コイル422に電流を流す。すると、コイル422と磁石423との間に、図13の垂直方向の電磁力が生じることにより、カメラ装置100のピッチ・ロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置100の振動が制御される。
【0084】
ヨー用アクチュエータ430は、図12(B),12(C),13に示すように、ピッチ・ロール用アクチュエータ420の後側に配置されるとともに、ヨーク431、コイル432、磁石433、および、支持部材434を備えている電磁アクチュエータである。ヨーク431は、下板202に固定されるとともに、垂直方向に開口している略直方体形状をなしている。コイル432は、ヨーク431の内部で支持部材434に支持されている。磁石433は、ヨーク431の側面部の内側に配置され、コイル432に対向している。支持部材434の後端部はT字状をなし、そのT字状の中央部がヨーク431の内部において垂直下方に延在し、その下端部にコイル432が固定されている。支持部材434の前端部は、ピッチ・ロール用アクチュエータ420の支持部材424の側面部に固定されている。
【0085】
このようなヨー用アクチュエータ430の駆動では、角速度検出部280により検出された上板201のヨー方向の角速度に基づき、コイル422に電流を流す。すると、コイル422と磁石423との間に、図13の紙面方向の電磁力が生じることにより、カメラ装置100のヨー方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置100の振動が制御される。
【0086】
ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430では、上記のようにピッチ・ロール用アクチュエータ420の支持部材424およびヨー用アクチュエータ430の支持部材434が一体化されている。この場合、ピッチ・ロール方向では、コイル422を支持する支持部材424が、磁石423が固定されたヨーク421に対して、ピッチ・ロール方向で移動可能となっている。ヨー方向では、コイル432を支持する支持部材434が、磁石433が固定されたヨーク431に対して、ヨー方向で移動可能となっている。
【0087】
第2後側ばね部440は、ピッチ・ロール用アクチュエータ420のヨーク421の前端部の横方向に一対配置されている。第2後側ばね部440は、ばね441(弾性部材)およびばね台座442を備えている。ばね441は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面に固定されたばね台座(図示略)および下板202の上面に固定されたばね台座442に支持されている。
【0088】
第3後側ばね部450は、ヨー用アクチュエータ430の支持部材424の後端部下側の横方向に一対配置されている。第3後側ばね部450は、ばね451(弾性部材)およびばね台座452を備えている。ばね451は、コイル状をなし、その両端部は、支持部材424の下面に固定されたばね台座452および下板202の下面に固定されたばね台座(図示略)に支持されている。
【0089】
第4後側ばね部460は、ヨー用アクチュエータ430の支持部材424の後端部上側の横方向に一対配置されている。第3後側ばね部460は、ばね461(弾性部材)およびばね台座462を備えている。ばね461は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面に固定されたばね台座(図示略)および支持部材424の上面に形成された突起462に支持されている。
【0090】
このような後側ばね部270,第2〜4後側ばね部440,450,460では、上板201が傾いた場合、横方向一対のばね271,441,451,461が、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を上板201を通じて受ける。また、ばね271,441,451,461は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を上板201を通じて受けることができる。なお、第2後側ばね部440および第3後側ばね部450を設けているので、後側ばね部270は、必要に応じて設けなくてもよい。第4後側ばね部460のばねの延在方向は、ヨー方向に変更してもよい。
【0091】
以上のように第2実施形態の制振装置200では、上板201をカメラ装置100の略重心直下で支持しているユニバーサル用連結部410を備えているので、その連結部410がカメラ装置100の自重を支えることができる。ここで、カメラ装置100が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、第2実施形態の制振装置400では、上板201からの荷重を受ける前側ばね部250,後側ばね部270,第2〜4後側ばね部440,450,460を備えているので、それらばね部270,440,450,460がカメラ装置100の偏心分の荷重を受けることができる。また、ばね部270,440,450,460は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を受けることができる。そして、上板201に生じた振動を制御するピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430を備えているので、それらアクチュエータ420,430が、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御することができる。
【0092】
(3)変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば上記実施形態では、本発明の振動制御手段として、電磁アクチュエータを用いたが、たとえばその他種類のアクチュエータやMRダンパなどの可変ダンパ機構を用いてもよい。また、制御部300では、角速度に基づいた抵抗力の算出法においてスカイフック理論を用いたが、これに限定されるものではなく、角速度依存の制御理論であればよい。さらに、角速度検出手段としてジャイロセンサを用いたが、これに限定されるものではなく、角速度検出センサであればよい。
【0093】
また、たとえば上記実施形態では、位置調整手段として、支持手段の前後方向位置を調整する前後調整部を用いたが、これに加えて、支持手段の横方向位置を調整する横方向調整部を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、ピッチ方向およびロール方向の2方向あるいはピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の3方向を制御する構成としたが、これに限定されるものではなく、ピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向のうちの一方向を制御する構成としてもよい。
【0094】
加えて、上記のような位置調整手段による支持手段の前後位置調整を自動で行うようにしてもよい。なお、以下の態様では、その前後位置調整の自動化を第1実施形態の制振装置200に適用しているが、第2実施形態の制振装置400に適用できるのは言うまでもない。
【0095】
たとえば図14に示すように、上板201にその傾斜角度を検出する傾斜角度センサ501(傾斜角度検出手段)を設けるとともに、調整ハンドル216,226の代わりに、送りネジ214,224を回転させるモータ511,521を設ける。この態様では、上板201が傾斜した場合、モータ511,521は、傾斜角度センサ501により検出された傾斜角度に基づき、送りネジ214,224を回転させることにより、ピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後位置を調整する。この場合、傾斜角度センサ501により検出された上板201の傾斜角度がゼロとなるように前後位置調整を行うことにより、支持手段であるピッチ用連結部230およびロール用連結部420がカメラ装置の略重心直下に位置するように自動調整することができる。
【0096】
上記態様は、カメラ装置100を三脚などの水平な基台に配置する場合に好適である。たとえば、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102のレンズを重量の異なるものに交換した場合、カメラ装置100の重心が移動する。しかしながら、上記態様では、そのようなカメラ装置100の重心位置の移動に自動で対応することができる。
【0097】
また、たとえば、下板202にもその傾斜角度を検出する傾斜角度センサ501(傾斜角度検出手段)を設けることにより、上板201のみが傾斜した場合だけでなく、上板201および下板202が傾斜した場合にも自動で対応することができる。具体的には、上板201側の傾斜角度センサ501により検出された上板201の傾斜角度と、下板202側の傾斜角度センサ501により検出された下板202の傾斜角度との差を演算し、その演算された値がゼロとなるように前後位置調整を行うことにより、支持手段であるピッチ用連結部230およびロール用連結部420がカメラ装置の略重心直下に位置するように自動調整することができる。
【0098】
上記態様は、カメラ装置100が撮影者の肩部で支持される場合に好適である。たとえば、撮影者がカメラ装置100のレンズを下方の被写体に向けた場合、ピッチ用連結部230およびロール用連結部420の位置がカメラ装置の略重心直下から移動する。このため、後側ばね部270のばね271が、重心位置の偏心分の荷重を受ける結果、伸びてしまい、後側ばね部270のばね271の振動中心がアクチュエータ290の可動範囲から上側へ外れる。その結果、アクチュエータ290が、上板201側へ移動することができない。しかしながら、上記態様では、カメラ装置100の重心位置の移動に自動で対応することができるから、上記のような不具合を回避することができる。
【0099】
以上のような態様では、ピッチ用連結部230およびロール用連結部420がカメラ装置100の略重心直下となるように自動調整されるので、前側ばね部250および後側ばね部270の伸縮を常に初期負荷状態に維持することができるとともに、アクチュエータ290の可動範囲の中央に維持することができる。したがって、装置200の制振機能を常に最大限発揮することができる。
【0100】
さらに、アクチュエータ290の非動作状態時に対応するために、図15に示すように上板201の下板202に対する位置を固定するロック機構600を備えることができる。なお、図15では、上板201、下板202、および、ロック機構600以外の構成部材の図示は省略している。
【0101】
ロック機構600は、固定カギ部610、回転カギ部620、および、固定ネジ630を備えている。ロック機構600は、上板201および下板202の後端部の両端部に配置されている。固定カギ部610の上端部は、2つのネジ611により上板610に固定され、固定カギ部610の下端部には、固定ネジ630が係合する凹部610Aが形成されている。回転カギ部620の下端部は、ネジ621回りに回転可能にネジ621に設けられ、回転カギ部620の上端部には、固定カギ部610の凹部610Aに係合する固定ネジ630が固定されている。このようなロック機構600では、アクチュエータ290の非動作状態時に、回転カギ部620の上端部をネジ621回りに回転させることにより、回転カギ部620上端部の固定ネジ630を固定カギ部610の下端部の凹部610Aに係合させる。これにより、上板201の下板202に対する位置が固定される。
【0102】
上記態様では、アクチュエータ290が非動作状態にある場合、ロック機構600により上板201の下板202に対する位置を固定しているので、カメラ装置100の位置の安定化を図ることができる。このようなロック機構は種々の変形が可能であり、たとえば上板201および下板202の一方の板に薄板を固定し、他方の板に把持具を固定してもよい。この態様では、把持具が薄板を把持することにより上板201の下板202に対する位置を固定する。この態様では、把持具の操作を自動で行うことができ、この場合、把持具を遠隔操作するためのスイッチを光学調整部206に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカメラ制振装置が適用されるカメラシステムの構成を表す概略正面図である。
【図2】図1のカメラ制振装置の全体構成を表す斜視図である。
【図3】図1のカメラ制振装置の構成を表し、(A)は装置の左側面図、(B)は上面図、(C)は(B)の右側面図である。
【図4】図1のカメラ制振装置の前側空間の構成を表し、(A)は前側空間の前面図、(B)は図3(B)の4B−4B線断面図である。
【図5】図1のカメラ制振装置の後側空間の構成を表し、(A)は後側空間の後面図、(B)は図3(B)の5B−5B線断面図である。
【図6】図1のカメラ制振装置の構成を表す下面図である。
【図7】図7は、制振装置の制御方法を説明するためのブロック図である
【図8】本発明の第1実施形態に係る制振装置の静止状態を表し、(A)は、図3(C)の前側空間の構成を表す拡大図、(B)は図4(B)の構成を表す拡大図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る制振装置の動作状態を表し、(A)は、図8(A)の静止状態からピッチ方向で動作が行われた状態を表す拡大図、(B)は、図8(B)の静止状態からロール方向で動作が行われた状態を表す拡大図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るカメラ制振装置の構成を表す右側面図である。
【図11】図10のカメラ制振装置の構成を表し、(A)は図10の11A−11A線断面図、(B)はユニバーサル用連結部の構成部材の一部を表す斜視図である。
【図12】図10のカメラ制振装置の構成を表し、(A)は図10の12A−12A線断面図、(B)は図10の12A−12A線断面図、(C)はピッチ・ロール用アクチュエータおよびヨー用アクチュエータの構成を表す斜視図であるである。
【図13】本発明の第2実施形態に係るカメラ制振装置のピッチ・ロール用アクチュエータおよびヨー用アクチュエータの概略構成を説明するための側断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る制振装置の変形例の右側面を表す拡大図である。
【図15】本発明の第1,2実施形態に係る制振装置の他の変形例を表し、(A)は後側空間の右側面図、(B)は(A)の15B−15B線断面図である。
【符号の説明】
【0104】
100…カメラ装置、103…電源部(電源手段)、104…電源分岐ボックス(電源分岐手段)、200,400…カメラ制振装置、201…上板(第1基板)、202…下板(第2基板)、203…カメラ取付ネジ、204…カメラ取付フック、206…光学調整部、210…上側前後調整部(位置調整手段)、220…下側前後調整部(位置調整手段)、230…ピッチ用連結部(支持手段)、240…ロール用連結部(支持手段)、250…前側ばね部、251…ばね(弾性部材)、270…後側ばね部、271…ばね(弾性部材)、280…角速度検出部(角速度検出手段)、290…アクチュエータ(振動制御手段)410…ユニバーサル用連結部(支持手段)、420…ピッチ・ロール用アクチュエータ(振動制御手段)、430…ヨー用アクチュエータ(振動制御手段)、440…第2後側ばね部、441…ばね(弾性部材)、450…第3後側ばね部、451…ばね(弾性部材)、460……第4後側ばね部、461…ばね(弾性部材)、501…傾斜角度センサ(傾斜角度検出手段)、511,521…モータ(位置調整用駆動手段)、600…ロック機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影者の肩部で支持されながら被写体を撮影するカメラ装置の振動を制御するカメラ制振装置に係り、特にカメラ装置の振動制御技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TV番組製作や、映画製作、 ホームビデオなどで使用されるカメラ装置では、装置の振動による映像のブレを防止するための種々の補正技術があり、その補正技術は、パッシブ型とアクティブ型に大別される。
【0003】
パッシブ型の技術には、機械的にカメラ装置の振動を抑制するステディカムがある(たとえば特許文献1)。ステディカムでは、たとえば撮影者が専用のベストを着用し、そのベストの下部にカメラ装置がアームにより弾性支持される。この場合、カメラ装置とその他部材とのバランスを利用することにより、撮影者の身体の動きにより発生するカメラ装置の振動が抑制される。
【0004】
アクティブ型の技術には、レンズや光学部品を駆動することによりカメラ装置の振動を補正するレンズ駆動方式や、可変プリズム方式、鏡筒駆動方式、CCD駆動方式などの光学的補正技術、および、カメラ装置の振動による映像のブレを画像処理を用いて補正するCCD切出し方式などの電子的補正技術がある。
【0005】
各種光学的補正技術では、角変位を利用した位置制御を行っている。具体的にはレンズ駆動方式では、カメラ装置の振動が検出されると、アクチュエータで補正用レンズを駆動することにより手振れ補正を行っている(たとえば特許文献2)。可変プリズム方式では、2枚のレンズの間に高屈折率液体を封入した構造のプリズムが用いられ、一方のレンズにモータが接続されている。この方式では、カメラ装置の振動が検出されると、モータが一方のレンズの一端部を他方のレンズに対して接近離間させて光軸補正を行うことにより手振れ補正を行っている(たとえば特許文献3)。
【0006】
鏡筒駆動方式では、カメラ装置の振動が検出されると、内部にCCDおよびレンズのユニットが設けられている鏡筒部をアクチュエータで駆動して光軸補正を行うことにより手振れ補正を行っている(たとえば特許文献4)。CCD駆動方式では、カメラ装置の振動が検出されると、CCDを駆動部で光軸中心へ駆動することにより、手振れ補正を行っている(たとえば特許文献5)。
【0007】
CCD切出し方式では、画面に必要な撮影画面よりも広い撮影面を有するCCDを用い、CCDの撮像から所定領域を切り出す。そして、検出された画像全体の動きに応じて、その切出し領域を移動させることにより手振れ補正を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上のような補正技術のうちの可変プリズム方式では、原理上、色収差が発生するため、画質が悪化する。鏡筒駆動方式は、レンズ交換式であるため、テレビカメラには使用することはできない。CCD駆動方式では、光の3原色に対応する3CCDの場合、3CCDを高精度で同期しながら駆動させる必要があるが、それは技術的に不可能である。それら光学的補正技術では、角変位を利用した位置制御を行っているため、ジャイロセンサから得た角速度を角変位に変換する積分回路が必要である。しかも、位置制御では、カメラ装置を移動距離分を補正してその位置を元に戻しているため、撮影者がカメラ装置を意図的に動かした場合、補正映像に不自然な動きが入る虞がある。このため、その撮影者の意図的動作と振動との区別を行う必要がある。その結果、その区別を行う判定回路がさらに必要となるため、複雑な回路となる。CCD切出し方式では、大きなサイズの3CCDを用意しなければならず、コストが増大する。しかも、その方式は、ハイビジョンには適当ではない。
【0009】
以上のことから、現在、以上のような補正技術のうちのステディカムおよびレンズ駆動方式のみがテレビカメラなどの業務用カメラに適用されている。しかしながら、ステディカムでは、装置が大型なものとなる。また、その制振特性が単一であるため、撮影者が静止した状態で撮影するモードと撮影者が移動した状態で撮影するモードの両方を満足することができない。また、レンズ駆動方式では、補正用レンズによって収差が発生するため、画質が悪化する。さらに、レンズ駆動方式も、角変位を利用した位置制御を行う光学的補正技術であるから、上記のように補正映像に不自然な動きが入る虞があり、かつ複雑な回路が必要となる。
【0010】
【特許文献1】特表平8−503763号公報
【特許文献2】特開2002−131797号公報
【特許文献3】特開2003−149702号公報
【特許文献4】特公平5−105966号公報
【特許文献5】特公平6−10872号公報
【0011】
したがって、本発明は、撮影モードに応じた撮影者による装置調整を不要とし、装置の小型化および回路構成の簡単化を図ることができるのはもちろんのこと、映像への不自然な動きの混入を防止することができ、かつその画質の悪化を防止することができるカメラ制振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のカメラ制振装置は、撮影者の肩部で支持されながら被写体を撮影するカメラ装置の振動を制御する制振装置であって、カメラ装置を載置して支持する第1基板と、第1基板に対向して配置されるとともに、肩部に載せられて支持される第2基板と、第1基板と第2基板との間に設けられ、第1基板をカメラ装置の略重心直下で支持する支持手段と、第1基板と前記第2基板との間に設けられ、第1基板からの荷重を受ける弾性部材と、第1基板と前記第2基板との間に設けられ、第1基板に生じた振動を制御する振動制御手段とを備え、弾性部材は、第1基板の振動により生じた荷重を受けるとともに、カメラ装置の重心位置が支持手段の支持位置から移動したときに生じる荷重を受けることを特徴としている。
【0013】
本発明のカメラ制振装置では、第1基板をカメラ装置の略重心直下で支持している支持手段を備えているので、その支持手段がカメラ装置の自重を支えることができる。ここで、カメラ装置が傾いた場合、カメラ装置の重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、本発明のカメラ制振装置では、第1基板からの荷重を受ける弾性部材を備えているので、弾性部材がカメラ装置の偏心分の荷重を受けることができる。また、弾性部材は、カメラ装置の重心位置が偏心しないときでも、カメラ装置の振動により生じた荷重を受けることができる。そして、第1基板に生じた振動を制御する振動制御手段を備えているので、振動制御手段が、カメラ装置の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置の振動を制御することができる。
【0014】
以上のように本発明のカメラ制振装置では、撮影モードに応じた撮影者による装置調整が不要となるのはもちろんのこと、振動制御手段がカメラ装置の自重を支える必要がなく、カメラ装置の回転慣性分の荷重のみに対する抵抗力を発生すればよいので、振動制御手段の小型化を図ることができ、その結果、装置の小型化を図ることができる。
【0015】
本発明のカメラ制振装置は、制振性能を向上させるために種々の構成を用いることができる。たとえば、第1基板の角速度を検出する角速度検出手段を備え、振動制御手段は、角速度検出手段により検出された第1基板の角速度に基づき、第1基板に生じた振動に対する抵抗力を発生することにより振動の制御を行うことができる。
【0016】
この態様では、振動制御手段による振動制御は、カメラ装置の移動距離分の補正を行いその位置を元に戻す従来の位置制御を行う装置とは異なり、第1基板に生じた振動に対して、その角速度に基づいた抵抗力を発生しているだけである。これにより、撮影者がカメラ装置を意図的に動かした場合、その撮影者の動作に沿った上でカメラ装置の振動の制御を行うことができるので、補正映像に不自然な動きが入らない。したがって、映像への不自然な動きの混入を防止することができ、かつその画質の悪化を防止することができる。また、その撮影者の意図的動作と振動との区別を行うことが不要となるから、その区別を行う判定回路が不要となる。さらに、積分回路が不要となるから、回路構成が簡単となる。
【0017】
振動制御手段は、カメラ装置のピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の少なくとも一方向を制御し、支持手段は制御方向に対応して設けられる軸受部である構成を用いることができる。この態様では、カメラ装置に対応して選択した方向で、カメラの装置の振動の制御を行うことができる。
【0018】
第1基板および第2基板に摺動可能に設けられ、第1基板および第2基板の面内方向に対する支持手段の面内方向の位置を調整する位置調整手段を備えることができる。たとえばカメラ装置のレンズ鏡筒部のレンズを交換した場合、カメラ装置の重心位置が移動するが、上記態様では、位置調整手段を用い支持手段の面内方向の位置を調整することにより、支持手段の位置を常にカメラ装置の略重心直下に合わせることができる。
【0019】
上記のような位置調整手段による支持手段の位置調整を自動で行うことができる。具体的には、第1基板の水平面あるいは前記第2基板に対する傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、傾斜角度検出手段により検出された傾斜角度に基づき、位置調整手段を駆動する位置調整用駆動手段とを備えることができる。この場合、支持手段の第1基板に対する支持位置は、位置調整用駆動手段による位置調整手段の駆動によって、カメラ装置の略重心直下となるように自動調整することができる。
【0020】
具体的には、カメラ装置を三脚などの水平面に載置した場合、たとえばカメラ装置のレンズ鏡筒部のレンズを重量の異なるものに交換したとき、カメラ装置の重心位置が移動する。この場合、上記態様では、傾斜角度検出手段が第1基板の水平面に対する傾斜角度を検出し、位置調整用駆動手段がその傾斜角度がゼロとなるように位置調整手段を駆動することにより、支持手段の第1基板に対する支持位置がカメラ装置の略重心直下となるように自動調整することができる。また、たとえば撮影者がカメラ装置のレンズを被写体に向けるためにカメラ装置を傾斜させた場合、カメラ装置の重心位置が移動する。この場合、上記態様では、傾斜角度検出手段が第1基板の第2基板に対する傾斜角度を検出し、位置調整用駆動手段がその傾斜角度がゼロとなるように位置調整手段を駆動することにより、支持手段の第1基板に対する支持位置がカメラ装置の略重心直下となるように自動調整することができる。なお、このように傾斜角度検出手段が第1基板の第2基板に対する傾斜角度を検出する態様は、カメラ装置を三脚などの水平面に載置した場合にも適用することができるのは言うまでもない。
【0021】
以上のように支持手段の第1基板に対する支持位置は、位置調整用駆動手段による位置調整手段の駆動によって、カメラ装置の略重心直下となるように自動調整されるので、弾性部材の伸縮を常に初期負荷状態に維持することができるとともに、振動制御手段の可動範囲の中央に維持することができる。したがって、装置の制振機能を常に最大限発揮することができる。
【0022】
カメラ装置とそのカメラ装置の電源手段との間に電源分岐手段を着脱可能に設け、振動制御手段へは、カメラ装置の電源手段から電源分岐手段を通じて電力が供給される構成を用いることができる。この態様では、カメラ装置の電源手段を用いることができる。また、カメラ装置のレンズ鏡筒部に設けられる光学系を調整する光学系調整部を第1基板あるいは第2基板に備え、光学系調整部は、カメラ装置のレンズ鏡筒部から隔離している構成を用いることができる。この態様では、撮影者は、カメラ装置のレンズ鏡筒部から隔離している光学系調整部を用いて、レンズへの各種操作を行うことができるので、光学系に直接触れる必要がないのはもちろんのこと、光学系調整によるカメラ装置の振動発生を防止することができる。
【0023】
また、カメラ装置に着脱可能に設けることができる。この態様では、カメラ装置への取付手段として、カメラ装置の三脚への取付用のもの(既存のカメラ取付ネジや取付フックなど)を利用することができる。この場合、取付手段を設けるためのカメラ装置の本体部への加工の必要がない。このように制振装置は外付け方式であるから、カメラ装置とサイズが略同等の各種カメラ装置に適用することができる。
【0024】
振動制御手段としては、アクチュエータあるいは可変ダンパ機構を用いることができる。また、振動制御手段の非動作状態時に、第1基板の第2基板に対する位置を固定するロック機構を備えることができる。たとえば電源手段のオフ時、カメラ装置が回転すると、振動制御手段はカメラ装置の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生しない。このため、弾性部材が大きく撓み、カメラ装置の振動変位が増幅したりカメラ装置が位相のずれにより意図しない方向に傾斜する等して、カメラ装置の位置が不安定になる。しかしながら、上記態様では、ロック機構により第1基板の第2基板に対する位置を固定しているので、カメラ装置の位置の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のカメラ制振装置によれば、撮影モードに応じた撮影者による装置調整を不要とするのはもちろんのこと、振動制御手段がカメラ装置の自重を支える必要がなく、カメラ装置の回転慣性分の荷重のみに対する抵抗力を発生すればよいので、振動制御手段の小型化を図ることができる等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(1)第1実施形態
(1−1)実施形態の構成
(A)カメラシステムの構成
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るカメラ制振装置(以下、制振装置)200が適用されるカメラシステム1の構成を表す概略正面図である。カメラシステム1はカメラ装置100および制振装置200を備えている。カメラ装置100は、本体部101を備え、本体部101の底面部の中央には凹部101Aが形成されている。
【0027】
本体部101の前端部にはレンズ鏡筒部102が設けられ、本体部101の後端部には、電源分岐ボックス104(電源分岐手段)を介して電源部103(電源手段)が設けられている。電源分岐ボックス104は、本体部101および電源部103に対して着脱可能となっている。なお、以下の図面では、レンズ鏡筒部102が設けられている側を前側、電源部103が設けられている側を後側と表記している。また、撮影者が前側を向いたときの右側を装置の右側、撮影者が前側を向いたときの左側を装置の左側と表記している。
【0028】
レンズ鏡筒部102はレンズを備えている。レンズ鏡筒部102の内部には、レンズのフォーカス、アイリス、および、ズームのそれぞれを調整する調整部材やモータなどが設けられている。本体部101の下面部には、カメラ装置の振動を制御する制振装置200が着脱可能に取り付けられている。制振装置200による振動制御は、ピッチ方向およびロール方向の2方向で行われる。
【0029】
(B)制振装置の構成
図2は制振装置200の全体構成を表す斜視図である。図3は制振装置200の構成を表し、(A)は装置200の左側面図、(B)は装置200の上面図、(C)は装置200の右側面図である。図4は制振装置200の前側空間の構成を表し、(A)は前側空間の前面図、(B)は図3(B)の4B−4B線断面図である。図5は制振装置200の後側空間の構成を表し、(A)は後側空間の後面図、(B)は図3(B)の5B−5B線断面図である。図6は、制振装置200の下面部の構成を表す下面図である。図7は、制振装置200の制御方法を説明するためのブロック図である。なお、図3(A)で表される装置200の上下方向は、実際のものと逆になっている。
【0030】
制振装置200は、カメラ装置100を載置して支持する上板201(第1基板)と、撮影者の肩部に載せられて支持される下板202(第2基板)を備えている。上板201および下板202は、所定の間隔をおいて対向配置されている。上板201および下板202の中央部には、カメラ装置100の凹部101Aに対応する上側凸部201Aおよび下側凸部202Aが形成されている。上板201と下板202の間の前側(凸部201A,202Aより前側)には、前側空間200Aが形成され、上板201と下板202の間の後側(凸部201A,202Aより後側)には、後側空間200Bが形成されている。
【0031】
上側凸部201Aは、カメラ装置100の凹部201Aに係合する。上板201における上側凸部201Aの前面側にはカメラ取付ネジ203が設けられ、カメラ取付ネジ203は、カメラ装置100の下面部の相手部材に螺合される。上板201における上側凸部201Aの後面側にはカメラ取付フック204が設けられ、カメラ取付フック204は、カメラ装置100の下面部の相手部材に係合される。これにより制振装置200は、カメラ装置100の本体部101の下面部に着脱可能に取り付けられている。
【0032】
下板202の下側凹部202Aには肩パッド205が設けられている。下板202の前端部には、レンズ鏡筒部102内部のレンズのフォーカス、アイリス、および、ズームのそれぞれを調整するリモコン式の光学系調整部206(図1のみに図示)が設けられている。光学系調整部206は、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102から隔離している。
【0033】
(B−1)前側空間の構成
上板201と下板202の間の前側空間200Aには、上側前後調整部210(位置調整手段)、下側前後調整部220(位置調整手段)、ピッチ用連結部230(支持手段)、ロール用連結部240(支持手段)、および、前側ばね部250が設けられている。上側前後調整部210および下側前後調整部220は、上板201および下板202に対するピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後方向の位置を調整する。ピッチ用連結部230およびロール用連結部240は、たとえばカメラ装置の略重心直下に配置され、カメラ装置100の自重を支えている。前側ばね部250は、たとえばカメラ装置100が載置された上板201が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を受ける。
【0034】
上側前後調整部210は、図3,4に示すように、スライド機構211、スライドベース212、ネジ受部213、送りネジ214、ネジ台座215、および、調整ハンドル216を備えている。スライド機構211は、横方向に一対設けられている。スライド機構211は、上板201の前後方向に延在するガイドレール211Aと、ガイドレール211Aに摺動可能に設けられているスライド211Bを有している。スライドベース212の上面部には、スライド機構211が固定されている。スライドベース212の下面部には、ネジ受部213が固定されている。送りネジ214の後端部は、ネジ受部213に螺合している。送りネジ214の前端部は、ネジ台座215により回転可能に支持されている。調整ハンドル216は、送りネジ214の前端部に固定され、制振装置200の外部に配置されている。
【0035】
このような上側前後調整部210では、調整ハンドル216を回転操作すると、スライド機構211においてスライド211Bがガイドレール211Aに沿って移動することにより、スライドベース212が前後に移動する。これにより、上側前後調整部210の下面部に固定されたピッチ用連結部230が、上側前後調整部210の上面部に固定された上板202に対して前後に移動する。
【0036】
下側前後調整部220は、図3,4に示すように、スライド機構221、スライドベース222、ネジ受部223、送りネジ224、ネジ台座225、および、調整ハンドル226を備えている。スライド機構221は、横方向に一対設けられている。スライド機構221は、下板202の前後方向に延在するガイドレール221Aと、ガイドレール221Aに摺動可能に設けられているスライド221Bを有している。スライドベース222の下面部には、スライド機構221が固定されている。スライドベース222の上面部には、ネジ受部223が固定されている。送りネジ224の後端部は、ネジ受部223に螺合している。送りネジ224の前端部は、ネジ台座225により回転可能に支持されている。調整ハンドル226は、送りネジ224の前端部に固定され、制振装置200の外部に配置されている。
【0037】
このような下側前後調整部220では、調整ハンドル226を回転操作すると、スライド機構221においてスライド221Bがガイドレール221Aに沿って移動することにより、スライドベース222が前後に移動する。これにより、下側前後調整部220の上面部に固定されたロール用連結部240が、下側前後調整部220の下面部に固定された下板202に対して前後に移動する。
【0038】
ピッチ用連結部230は、図3,4に示すように、ピッチ用保持板231、ピッチ用シャフト232、ピッチ用ベアリング233(図8,9のみに図示)、および、ピッチ用ベアリングホルダ234を備えている。ピッチ用保持板231は、スライドベース212の下面に一対固定されている。ピッチ用保持板231は、各スライド機構211の略直下に配置されている。ピッチ用シャフト232は、ロッド状をなし横方向に延在するとともに、その両端部は、ピッチ用保持板231に固定されている。ピッチ用ベアリング233は、ピッチ用保持板231の間に一対配置され、ピッチ用シャフト232を回転可能に支持している。ピッチ用ベアリングホルダ234は、各ピッチ用ベアリング233に設けられ、その内部でピッチ用ベアリング233を固定している。
【0039】
このようなピッチ用連結部230では、ピッチ用シャフト232がピッチ用ベアリング233のなかで回転すると、ピッチ用シャフト232の両端部が固定されたピッチ用保持板231がピッチ軸回りに回転する。これにより、上側前後調整部210および上板201がピッチ用保持板231とともにピッチ軸回りに回転する。
【0040】
ロール用連結部240は、図3,4に示すように、ロール用保持板241、ロール用シャフト242、ロール用ベアリング243、および、ロール用ベアリングホルダ244を備えている。ロール用保持板241は、ピッチ用保持板231の間に配置される。ロール用シャフト242は、ロッド状をなし前後方向に延在するとともに、その後端部は、ロール用保持板241に固定されている。ロール用ベアリング243は、ロール用シャフト242の前端部に配置され、ロール用シャフト242を回転可能に支持している。ロール用ベアリングホルダ244は、下側前後調整部220のスライドベース222の中央部に固定され、その内部でロール用ベアリング243を固定している。
【0041】
このようなロール用連結部230では、ロール用シャフト242がロール用ベアリング243のなかで回転すると、ロール用シャフト232の後端部が固定されたロール用保持板241がロール軸回りに回転する。これにより、ピッチ用連結部230、上側前後調整部210および上板201が、ロール用保持板241とともにロール軸回りに回転する。
【0042】
前側ばね部250は、図3,4に示すように、前側空間におけるピッチ用連結部230の横方向に一対配置されている。前側ばね部250は、ばね251(弾性部材)およびばね台座252を備えている。ばね251は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面および下板202の上面に固定されたばね台座252に支持されている。このような前側ばね部250では、上板201が傾いた場合、横方向一対のばね251が、カメラ装置100の偏心分の荷重を上板201を通じて受ける。また、ばね251は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を上板201を通じて受けることができる。
【0043】
(B−2)後側空間の構成
上板201と下板202との間の後側空間200Bには、ガタ防止部260、後側ばね部270、角速度検出部280(角速度検出手段)、および、アクチュエータ290(振動制御手段)、および、制御部300が設けられている。ガタ防止部260は、上板201と下板202の間での横方向のガタの発生を防止する。後側ばね部270は、たとえばカメラ装置100が載置された上板201が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を受ける。角速度検出部280は、上板201のピッチ方向およびロール方向の角速度を検出する。アクチュエータ290は、カメラ装置100が載置された上板201が傾いた場合、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御する。制御部300は、角速度検出部280により検出された各方向の角速度に基づき、アクチュエータ290の動作制御を行う。
【0044】
ガタ防止部260は、図3,5に示すように、上板201および下板202の後端部に配置されている。ガタ防止部260は、上板201の後端部に固定される係合部材261と、下板202の後端部に固定されるガイド部材262とを有している。係合部材261の下端部には突起261Aが形成され、ガイド部材262には垂直方向に延在するスリット262Aが形成されている。ストッパ260では、突起261Aがスリット262Aに沿って案内されることにより、上板201と下板202の間での横方向のガタの発生が防止される。
【0045】
後側ばね部270は、図3,5に示すように、後側空間200Bの前側の横方向に一対配置されている。後側ばね部270は、ばね271(弾性部材)およびばね台座272を備えている。ばね271は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面および下板202の上面に固定されたばね台座272に支持されている。このような後側ばね部270では、上板201が傾いた場合、横方向一対のばね271が、カメラ装置100の偏心分の荷重を上板201を通じて受ける。また、ばね271は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を上板201を通じて受けることができる。
【0046】
角速度検出部280は、図3に示すように、上板201の下面部に取り付けられ、図7に示すように、ピッチ用ジャイロセンサ281およびロール用ジャイロセンサ282を有する。ピッチ用ジャイロセンサ281は、上板201のピッチ方向の角速度を検出し、ロール用ジャイロセンサ282は、上板201のロール方向の角速度を検出する。
【0047】
アクチュエータ290は、図3,5に示すように、後側空間200Bの後側に一対配置され、ヨーク291、コイル292、および、磁石293を備えている電磁アクチュエータである。ヨーク291は、下板202の上面部に固定される底部291Aと、底部291Aの両端部および中央部から上方へ向けて延在する3つの縦板部291Bを有している。縦板部291Bと上板201との間に隙間が形成されている。コイル292は、中央部の縦板部291Bの周囲に配置され、その上端部は、上板201の下面に固定されている。コイル292の下端部と底部291Aとの間には隙間が形成されている。磁石293は、コイル292に対向するようにして両端部の縦板部291Bの上端部に固定されている。アクチュエータ290は、配線およびコントロール基板(図示略)を通じて、電源分岐ボックス104に電気的に接続されている。
【0048】
このようなアクチュエータ290の駆動では、角速度検出部280により検出された上板201の角速度に基づき、コイル292に電流を流す。この場合、アクチュエータ290への電力は、電源部103から電源分岐ボックス104を通じて供給される。すると、コイル292と磁石293との間に電磁力が生じることにより、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置100の振動が制御される。
【0049】
(C)制振装置の制御方法
制御部300は、図7に示すように、ピッチ用抵抗力算出回路301P,ロール用抵抗力算出回路301R、右側加算回路302A,左側加算回路302B、および、右側増幅回路303A,左側増幅回路303Bを備えている。ピッチ用抵抗力算出回路301Pは、ピッチ用ジャイロセンサ281からの角速度の検出値に基づき、右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290に必要な抵抗力を算出する。一方、ロール用抵抗力算出回路301Rは、ロール用ジャイロセンサ282からの角速度の検出値に基づき、右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290に必要な抵抗力を算出する。
【0050】
ここで、抵抗力算出回路301P,301Rによる抵抗力の算出法は、スカイフック理論を用いる。スカイフック理論は、空中を走る架空の線に物体が宙づり(スカイフック)の状態におかれているかのように、その物体のスムーズな移動を実現するサスペンション制御理論として利用されている技術である。本実施形態の計算モデルでは、たとえば地面とカメラ装置との間にばねを設けるとともに、カメラ装置を重心直下の支点で支持している。そして、ピッチ方向のモデルの場合、ピッチ方向で、スカイフックダンパを架空の線に接続し、ロール方向のモデルの場合、ロール方向で、スカイフックダンパを架空の線に接続している。このようなピッチ方向およびロール方向のモデルそれぞれで運動方程式を立てると、数式1,2が得られる。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
なお、数式1,2において、θp2はピッチ方向の下板の角変位、θP1、dθp1/dt,d2θp1/dt2は上板のピッチ方向の角変位,角速度,角加速度、kp1はピッチ方向のばね定数、Cp1はピッチ方向の粘性係数、lp1はピッチ方向における支点から上板の重心までの距離、Jp1はピッチ方向の慣性モーメント(能率)である。θr2はロール方向の下板の角変位、θr1,dθr1/dt,d2θr1/dt2は上板のロール方向の角変位,角速度,角加速度、kr1はロール方向のばね定数、Cr1はロール方向の粘性係数、lr1はロール方向における支点から上板の重心までの距離、Jr1はロール方向の慣性モーメント(能率)である。mは上板の質量、gは重力定数である。
【0054】
ピッチ方向の抵抗力Fp1は、数式3で示されるように、数式1の第2項である。ピッチ方向の抵抗力Fp1は、粘性係数Cp1をパラメータとして可変にすることにより決定される。ロール方向の抵抗力Fr1は、数式4で示されるように数式2の第2項である。ロール方向の抵抗力Fr1は、粘性係数Cr1をパラメータとして可変にすることにより決定される。
【0055】
【数3】
【0056】
【数4】
【0057】
ピッチ用抵抗力算出回路301Pは、以上のように右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290が発生する抵抗力を算出した後、それぞれに対応するピッチ用右側信号PRおよびピッチ用左側信号PLを右側加算回路302A,左側加算回路302Bに出力する。
【0058】
一方、ロール用抵抗力算出回路301Rは、以上のように右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290が発生する抵抗力を算出した後、それぞれに対応するロール用右側信号RRおよびロール用左側信号RLを右側加算回路302A,左側加算回路302Bに出力する。
【0059】
右側加算回路302Aは、ピッチ用右側信号PRおよびロール用右側信号RRを加算し、その加算値は、右側増幅回路303Aによる増幅後、右側のアクチュエータ290へ出力される。一方、左側加算回路303Bは、ピッチ用左側信号PLおよびロール用左側信号RLを加算し、その加算値は、左側増幅回路303Bによる増幅後、左側のアクチュエータ290へ出力される。これにより、右側のアクチュエータ290および左側のアクチュエータ290は、カメラ装置100のピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0060】
(1−2)実施形態の動作
カメラ装置100に適用された制振装置200の動作について、おもに図8,9を参照して説明する。図8は、制振装置200の静止状態を表し、(A)は、図3(C)の概略構成を表す拡大図、(B)は図5(B)の概略構成を表す拡大図である。図9は、制振装置200の動作状態を表し、(A)は、図8(A)の静止状態からピッチ方向で動作が行われた状態を表す拡大図、(B)は、図8(B)の静止状態からロール方向で動作が行われた状態を表す拡大図である。図8,9では、前側ばね部250の図示を省略し、図8(B),9(B)では、各構成部材を重ねて表している。
【0061】
カメラ装置100に振動が生じていない場合、たとえば上板201と下板202が平行となっている制振装置200は静止状態にある。静止状態では、カメラ装置100が載置された上板201は、カメラ装置100の略重心直下に位置するピッチ用連結部230およびロール用連結部240により支持されている これにより、ピッチ用連結部230およびロール用連結部240は、たとえばカメラ装置100の略重心直下に配置され、カメラ装置100の自重を支えている。この場合、上板201に振動が生じていないから、角速度検出部280により上板201の角速度は検出されず、左右一対のアクチュエータ290は制御部300により作動されていない。
【0062】
なお、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102のレンズや光学部品を交換した場合、カメラ装置100の重心位置が移動している。この場合、上側前後調整部210,下側前後調整部220を用いてピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後位置を調整することにより、それら連結部230,240の位置をカメラ装置の略重心直下に合わせる。
【0063】
カメラ装置100に振動が生じ、図9(A)に示すように、上板201がピッチ用シャフト232を中心としてピッチ方向の後側に傾き、かつ図9(B)に示すように、上板201がロール用シャフト242を中心として図の左側に傾いた場合、上板201に印加された力に応じて、前側ばね部250および後側ばね部270の左右一対のばね251,271が伸縮することにより、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を受ける。
【0064】
ここで、角速度検出部280では、ピッチ用,ロール用ジャイロセンサ281,282がカメラ装置100の振動により生じた上板201の角速度を検出し、制御部300は、その角度検出値をもとに右側,左側のアクチュエータ290に必要な抵抗力を算出し、右側,左側のアクチュエータ290は、その算出値に基づき、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0065】
具体的には、図7に示すように、ピッチ用ジャイロセンサ281が上板201のピッチ方向の角速度を検出し、ロール用ジャイロセンサ282が上板201のロール方向の角速度を検出する。
【0066】
制御部300では、ピッチ用ジャイロセンサ281による上板201のピッチ方向の角速度検出値をもとに、ピッチ用抵抗力算出回路301Pが、右側,左側のアクチュエータ290のそれぞれが発生する抵抗力を算出し、それぞれに対応するピッチ用右側信号PRおよびピッチ用左側信号PLを右側,左加算回路302A,302Bに出力する。
【0067】
一方、制御部300では、ロール用ジャイロセンサ282による上板201のロール方向の角速度検出値をもとに、ロール用抵抗力算出回路301Rが、右側,左側のアクチュエータ290のそれぞれが発生する抵抗力を算出し、それぞれに対応するロール用右側信号RRおよびロール用左側信号RLを右側,左加算回路302A,302Bに出力する。
【0068】
右側加算回路302Aは、ピッチ用,ロール用右側信号PR,RRを加算し、その加算値は、右側増幅回路303Aにより増幅される。右側のアクチュエータ290は、その増幅された加算値に基づき、カメラ装置100のピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。一方、左側加算回路302Bは、ピッチ用,ロール用左側信号PL,RLを加算し、その加算値は、左側増幅回路303Bにより増幅される。左側の側のアクチュエータ290は、その増幅された加算値に基づき、カメラ装置100のピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0069】
この場合、右側,左側のアクチュエータ290によるピッチ方向の抵抗力は、上板201がピッチ用シャフト232を中心としてピッチ方向前側に向けて回転するような力である。一方、右側,左側のアクチュエータ290によるロール方向の抵抗力は、上板201がロール用シャフト242を中心として図のロール方向右側に向けて回転するような力である。
【0070】
このように右側,左側のアクチュエータ290は、ピッチ方向,ロール方向で検出された上板201の角速度に基づき抵抗力を発生することにより、上板201のピッチ方向およびロール方向の振動が制御される。なお、第1実施形態では、上板201のピッチ方向およびロール方向の両方向の振動を同時に制御する例をあげて制振装置200の動作について説明したが、第1実施形態では、ピッチ方向およびロール方向のそれぞれで検出された角速度に基づき右側,左側のアクチュエータの制御を線形的に行っているから、ピッチ方向のみあるいはロール方向のみの振動の制御を行うことができるのは言うまでもない。
【0071】
以上のように第1実施形態の制振装置200では、上板201をカメラ装置100の略重心直下で支持しているピッチ用連結部230およびロール用連結部240を備えているので、それら連結部230,240がカメラ装置100の自重を支えることができる。ここで、カメラ装置100が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、第1実施形態の制振装置100では、上板201からの荷重を受ける前側ばね部250,後側ばね部270を備えているので、ばね部250,270がカメラ装置100の偏心分の荷重を受けることができる。また、前側ばね部250,後側ばね部270は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を受けることができる。そして、上板201に生じた振動を制御するアクチュエータ290を備えているので、アクチュエータ290が、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御することができる。
【0072】
以上のように第1実施形態の制振装置200では、撮影モードに応じた撮影者による装置調整が不要となるのはもちろんのこと、アクチュエータ290がカメラ装置100の自重を支える必要がなく、カメラ装置100の回転慣性分の荷重のみに対する抵抗力を発生すればよいので、アクチュエータ290の小型化を図ることができる。
【0073】
特に、アクチュエータ290による振動制御は、カメラ装置の移動距離分の補正を行いその位置を元に戻す従来の位置制御を行う装置とは異なり、上板201に生じた振動に対して、その角速度に基づいた抵抗力を発生しているだけである。これにより、撮影者がカメラ装置100を意図的に動かした場合、その撮影者の動作に沿った上でカメラ装置100の振動の制御を行うことができるので、補正映像に不自然な動きが入らない。したがって、映像への不自然な動きの混入を防止することができ、かつその画質の悪化を防止することができる。また、その撮影者の意図的動作と振動との区別を行うことが不要となるから、その区別を行う判定回路が不要となる。さらに、積分回路が不要となるから、回路構成が簡単となる。
【0074】
また、上側前後調整部210,下側前後調整部220を用いてピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後位置を調整することにより、それら連結部230,240の位置を常にカメラ装置100の略重心直下に合わせることができる。さらに、カメラ装置100の本体部101および電源部103に対して着脱可能な電源分岐ボックス104を設け、電源分岐ボックス104を通じてアクチュエータ290へ電力を供給するので、カメラ装置100の電源部103を用いることができる。
【0075】
加えて、撮影者は、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102から隔離している光学系調整部206を用いて、レンズへの各種操作を行うことができるので、レンズや各光学部品に直接触れる必要がないのはもちろんのこと、光学系調整によるカメラ装置100の振動発生を防止することができる。また、カメラ取付ネジ203およびカメラ取付フック204を用いて、制振装置200をカメラ装置100に着脱可能に設けているので、カメラ取付ネジ203およびカメラ取付フック204として、カメラ装置100の三脚への取付用のもの(既存のカメラ取付ネジや取付フック)を利用することができる。この場合、制振装置200のカメラ装置100への取付手段を設けるための本体部101への加工の必要がない。このように制振装置200は外付け方式であるから、カメラ装置100とサイズが略同等の各種カメラ装置に適用することができる。
【0076】
(2)第2実施形態
図10は、本発明の第2実施形態に係る制振装置400の構成を表す右側面図である。図11は、制振装置400の前側空間400Aの構成を表し、(A)は図10の11A−11A線断面図、(B)はユニバーサル用連結部410の構成部材の一部を表す斜視図である。図12は、制振装置400の後側空間400Bの構成を表し、(A)は図10の12A−12A線断面図、(B)は図10の12A−12A線断面図、(C)はピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430の構成を表す斜視図である。図13は、ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430の概略構成を説明するための側断面図である。図13では、後側ばね部440,450の図示を省略している。第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、第1実施形態と同様な作用を有する構成要素の説明は省略している。
【0077】
第2実施形態は、第1実施形態とは振動制御の方向が異なっており、第2実施形態の振動制御は、ピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の3方向で行われる。具体的には、第2実施形態では、支持手段として、第1実施形態のピッチ用連結部230およびロール用連結部の代わりに、ユニバーサル用連結部410を用いる。振動制御手段として、第1実施形態のアクチュエータ290の代わりに、ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430を用いている。これに対応して、角度検出部280にはヨー用ジャイロ路センサが追加されるとともに、制御部300にヨー方向用の抵抗力算出回路、増幅回路、加算回路が追加される。これにより、ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430の動作制御が行われる。
【0078】
ユニバーサル用連結部410は、図11(A)に示すように、ユニバーサル用保持板411、ユニバーサル用シャフト412、ユニバーサル用ベアリング413、および、ユニバーサル用ベアリングホルダ414を備えている。ユニバーサル用保持板411は、スライドベース212の下面に一対固定されている。ユニバーサル用保持板411は、各スライド機構211の略直下に配置されている。ユニバーサル用シャフト412は、ロッド状をなし横方向に延在するとともに、その両端部は、ユニバーサル用保持板411に固定されている。ユニバーサル用ベアリング413は、ユニバーサルシャフト412の中央部に配置され、ユニバーサルシャフト412をユニバーサルに支持している。
【0079】
ユニバーサル用ベアリング413は、図11(B)に示すように、内輪413Aおよび外輪413Bを有する自動調心型球面滑り軸受である。内輪413Aは、外輪413Bに球面接触しており、外輪413Bは、内輪413Aのピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の3方向の動きに対応可能なようにユニバーサルに支持されている。
【0080】
このようなユニバーサル用連結部410では、ユニバーサル用シャフト412がピッチ用ベアリング233のなかで回転すると、ユニバーサル用シャフト412の両端部が固定されたユニバーサル用保持板411がユニバーサルに動く。これにより、上側前後調整部210および上板201がユニバーサル用保持板411とともにユニバーサルに動く。
【0081】
ピッチ・ロール用アクチュエータ420は、図12(A),12(C),13に示すように、後側ばね部270の後側において、横方向に3つ配置されるとともに、ヨーク421、コイル422、磁石423、および、支持部材424を備えている電磁アクチュエータである。ヨーク421は、上板201に固定されるとともに、横方向に開口している略直方体形状をなしている。コイル422は、ヨーク421の内部で支持部材424に支持されている。磁石423は、一対のヨーク421の互いに当接している側面部の内側に配置され、コイル422に対向している。支持部材424は、垂直方向に開口している略直方体形状をなし、一対のヨーク421の互いに当接している側面部を囲むようにして配置されている。
【0082】
この場合、制御部200では、中央のアクチュエータ420の追加に対応して、中央のアクチュエータ420に必要な抵抗力を算出するための回路が、左右のアクチュエータ420と同様に設けられている。中央のアクチュエータ420は、特にピッチ方向への抵抗力を得るために設けており、大きな抵抗力が必要でない場合には設けなくてもよい。
【0083】
このようなピッチ・ロール用アクチュエータ420の駆動では、角速度検出部280により検出された上板201のピッチ・ロール方向の角速度に基づき、コイル422に電流を流す。すると、コイル422と磁石423との間に、図13の垂直方向の電磁力が生じることにより、カメラ装置100のピッチ・ロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置100の振動が制御される。
【0084】
ヨー用アクチュエータ430は、図12(B),12(C),13に示すように、ピッチ・ロール用アクチュエータ420の後側に配置されるとともに、ヨーク431、コイル432、磁石433、および、支持部材434を備えている電磁アクチュエータである。ヨーク431は、下板202に固定されるとともに、垂直方向に開口している略直方体形状をなしている。コイル432は、ヨーク431の内部で支持部材434に支持されている。磁石433は、ヨーク431の側面部の内側に配置され、コイル432に対向している。支持部材434の後端部はT字状をなし、そのT字状の中央部がヨーク431の内部において垂直下方に延在し、その下端部にコイル432が固定されている。支持部材434の前端部は、ピッチ・ロール用アクチュエータ420の支持部材424の側面部に固定されている。
【0085】
このようなヨー用アクチュエータ430の駆動では、角速度検出部280により検出された上板201のヨー方向の角速度に基づき、コイル422に電流を流す。すると、コイル422と磁石423との間に、図13の紙面方向の電磁力が生じることにより、カメラ装置100のヨー方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置100の振動が制御される。
【0086】
ピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430では、上記のようにピッチ・ロール用アクチュエータ420の支持部材424およびヨー用アクチュエータ430の支持部材434が一体化されている。この場合、ピッチ・ロール方向では、コイル422を支持する支持部材424が、磁石423が固定されたヨーク421に対して、ピッチ・ロール方向で移動可能となっている。ヨー方向では、コイル432を支持する支持部材434が、磁石433が固定されたヨーク431に対して、ヨー方向で移動可能となっている。
【0087】
第2後側ばね部440は、ピッチ・ロール用アクチュエータ420のヨーク421の前端部の横方向に一対配置されている。第2後側ばね部440は、ばね441(弾性部材)およびばね台座442を備えている。ばね441は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面に固定されたばね台座(図示略)および下板202の上面に固定されたばね台座442に支持されている。
【0088】
第3後側ばね部450は、ヨー用アクチュエータ430の支持部材424の後端部下側の横方向に一対配置されている。第3後側ばね部450は、ばね451(弾性部材)およびばね台座452を備えている。ばね451は、コイル状をなし、その両端部は、支持部材424の下面に固定されたばね台座452および下板202の下面に固定されたばね台座(図示略)に支持されている。
【0089】
第4後側ばね部460は、ヨー用アクチュエータ430の支持部材424の後端部上側の横方向に一対配置されている。第3後側ばね部460は、ばね461(弾性部材)およびばね台座462を備えている。ばね461は、コイル状をなし、その両端部は、上板201の下面に固定されたばね台座(図示略)および支持部材424の上面に形成された突起462に支持されている。
【0090】
このような後側ばね部270,第2〜4後側ばね部440,450,460では、上板201が傾いた場合、横方向一対のばね271,441,451,461が、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重を上板201を通じて受ける。また、ばね271,441,451,461は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を上板201を通じて受けることができる。なお、第2後側ばね部440および第3後側ばね部450を設けているので、後側ばね部270は、必要に応じて設けなくてもよい。第4後側ばね部460のばねの延在方向は、ヨー方向に変更してもよい。
【0091】
以上のように第2実施形態の制振装置200では、上板201をカメラ装置100の略重心直下で支持しているユニバーサル用連結部410を備えているので、その連結部410がカメラ装置100の自重を支えることができる。ここで、カメラ装置100が傾いた場合、カメラ装置100の重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、第2実施形態の制振装置400では、上板201からの荷重を受ける前側ばね部250,後側ばね部270,第2〜4後側ばね部440,450,460を備えているので、それらばね部270,440,450,460がカメラ装置100の偏心分の荷重を受けることができる。また、ばね部270,440,450,460は、カメラ装置100の重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置100の振動により生じた荷重を受けることができる。そして、上板201に生じた振動を制御するピッチ・ロール用アクチュエータ420およびヨー用アクチュエータ430を備えているので、それらアクチュエータ420,430が、カメラ装置100の回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置100の振動を制御することができる。
【0092】
(3)変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば上記実施形態では、本発明の振動制御手段として、電磁アクチュエータを用いたが、たとえばその他種類のアクチュエータやMRダンパなどの可変ダンパ機構を用いてもよい。また、制御部300では、角速度に基づいた抵抗力の算出法においてスカイフック理論を用いたが、これに限定されるものではなく、角速度依存の制御理論であればよい。さらに、角速度検出手段としてジャイロセンサを用いたが、これに限定されるものではなく、角速度検出センサであればよい。
【0093】
また、たとえば上記実施形態では、位置調整手段として、支持手段の前後方向位置を調整する前後調整部を用いたが、これに加えて、支持手段の横方向位置を調整する横方向調整部を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、ピッチ方向およびロール方向の2方向あるいはピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の3方向を制御する構成としたが、これに限定されるものではなく、ピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向のうちの一方向を制御する構成としてもよい。
【0094】
加えて、上記のような位置調整手段による支持手段の前後位置調整を自動で行うようにしてもよい。なお、以下の態様では、その前後位置調整の自動化を第1実施形態の制振装置200に適用しているが、第2実施形態の制振装置400に適用できるのは言うまでもない。
【0095】
たとえば図14に示すように、上板201にその傾斜角度を検出する傾斜角度センサ501(傾斜角度検出手段)を設けるとともに、調整ハンドル216,226の代わりに、送りネジ214,224を回転させるモータ511,521を設ける。この態様では、上板201が傾斜した場合、モータ511,521は、傾斜角度センサ501により検出された傾斜角度に基づき、送りネジ214,224を回転させることにより、ピッチ用連結部230およびロール用連結部240の前後位置を調整する。この場合、傾斜角度センサ501により検出された上板201の傾斜角度がゼロとなるように前後位置調整を行うことにより、支持手段であるピッチ用連結部230およびロール用連結部420がカメラ装置の略重心直下に位置するように自動調整することができる。
【0096】
上記態様は、カメラ装置100を三脚などの水平な基台に配置する場合に好適である。たとえば、カメラ装置100のレンズ鏡筒部102のレンズを重量の異なるものに交換した場合、カメラ装置100の重心が移動する。しかしながら、上記態様では、そのようなカメラ装置100の重心位置の移動に自動で対応することができる。
【0097】
また、たとえば、下板202にもその傾斜角度を検出する傾斜角度センサ501(傾斜角度検出手段)を設けることにより、上板201のみが傾斜した場合だけでなく、上板201および下板202が傾斜した場合にも自動で対応することができる。具体的には、上板201側の傾斜角度センサ501により検出された上板201の傾斜角度と、下板202側の傾斜角度センサ501により検出された下板202の傾斜角度との差を演算し、その演算された値がゼロとなるように前後位置調整を行うことにより、支持手段であるピッチ用連結部230およびロール用連結部420がカメラ装置の略重心直下に位置するように自動調整することができる。
【0098】
上記態様は、カメラ装置100が撮影者の肩部で支持される場合に好適である。たとえば、撮影者がカメラ装置100のレンズを下方の被写体に向けた場合、ピッチ用連結部230およびロール用連結部420の位置がカメラ装置の略重心直下から移動する。このため、後側ばね部270のばね271が、重心位置の偏心分の荷重を受ける結果、伸びてしまい、後側ばね部270のばね271の振動中心がアクチュエータ290の可動範囲から上側へ外れる。その結果、アクチュエータ290が、上板201側へ移動することができない。しかしながら、上記態様では、カメラ装置100の重心位置の移動に自動で対応することができるから、上記のような不具合を回避することができる。
【0099】
以上のような態様では、ピッチ用連結部230およびロール用連結部420がカメラ装置100の略重心直下となるように自動調整されるので、前側ばね部250および後側ばね部270の伸縮を常に初期負荷状態に維持することができるとともに、アクチュエータ290の可動範囲の中央に維持することができる。したがって、装置200の制振機能を常に最大限発揮することができる。
【0100】
さらに、アクチュエータ290の非動作状態時に対応するために、図15に示すように上板201の下板202に対する位置を固定するロック機構600を備えることができる。なお、図15では、上板201、下板202、および、ロック機構600以外の構成部材の図示は省略している。
【0101】
ロック機構600は、固定カギ部610、回転カギ部620、および、固定ネジ630を備えている。ロック機構600は、上板201および下板202の後端部の両端部に配置されている。固定カギ部610の上端部は、2つのネジ611により上板610に固定され、固定カギ部610の下端部には、固定ネジ630が係合する凹部610Aが形成されている。回転カギ部620の下端部は、ネジ621回りに回転可能にネジ621に設けられ、回転カギ部620の上端部には、固定カギ部610の凹部610Aに係合する固定ネジ630が固定されている。このようなロック機構600では、アクチュエータ290の非動作状態時に、回転カギ部620の上端部をネジ621回りに回転させることにより、回転カギ部620上端部の固定ネジ630を固定カギ部610の下端部の凹部610Aに係合させる。これにより、上板201の下板202に対する位置が固定される。
【0102】
上記態様では、アクチュエータ290が非動作状態にある場合、ロック機構600により上板201の下板202に対する位置を固定しているので、カメラ装置100の位置の安定化を図ることができる。このようなロック機構は種々の変形が可能であり、たとえば上板201および下板202の一方の板に薄板を固定し、他方の板に把持具を固定してもよい。この態様では、把持具が薄板を把持することにより上板201の下板202に対する位置を固定する。この態様では、把持具の操作を自動で行うことができ、この場合、把持具を遠隔操作するためのスイッチを光学調整部206に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカメラ制振装置が適用されるカメラシステムの構成を表す概略正面図である。
【図2】図1のカメラ制振装置の全体構成を表す斜視図である。
【図3】図1のカメラ制振装置の構成を表し、(A)は装置の左側面図、(B)は上面図、(C)は(B)の右側面図である。
【図4】図1のカメラ制振装置の前側空間の構成を表し、(A)は前側空間の前面図、(B)は図3(B)の4B−4B線断面図である。
【図5】図1のカメラ制振装置の後側空間の構成を表し、(A)は後側空間の後面図、(B)は図3(B)の5B−5B線断面図である。
【図6】図1のカメラ制振装置の構成を表す下面図である。
【図7】図7は、制振装置の制御方法を説明するためのブロック図である
【図8】本発明の第1実施形態に係る制振装置の静止状態を表し、(A)は、図3(C)の前側空間の構成を表す拡大図、(B)は図4(B)の構成を表す拡大図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る制振装置の動作状態を表し、(A)は、図8(A)の静止状態からピッチ方向で動作が行われた状態を表す拡大図、(B)は、図8(B)の静止状態からロール方向で動作が行われた状態を表す拡大図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るカメラ制振装置の構成を表す右側面図である。
【図11】図10のカメラ制振装置の構成を表し、(A)は図10の11A−11A線断面図、(B)はユニバーサル用連結部の構成部材の一部を表す斜視図である。
【図12】図10のカメラ制振装置の構成を表し、(A)は図10の12A−12A線断面図、(B)は図10の12A−12A線断面図、(C)はピッチ・ロール用アクチュエータおよびヨー用アクチュエータの構成を表す斜視図であるである。
【図13】本発明の第2実施形態に係るカメラ制振装置のピッチ・ロール用アクチュエータおよびヨー用アクチュエータの概略構成を説明するための側断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る制振装置の変形例の右側面を表す拡大図である。
【図15】本発明の第1,2実施形態に係る制振装置の他の変形例を表し、(A)は後側空間の右側面図、(B)は(A)の15B−15B線断面図である。
【符号の説明】
【0104】
100…カメラ装置、103…電源部(電源手段)、104…電源分岐ボックス(電源分岐手段)、200,400…カメラ制振装置、201…上板(第1基板)、202…下板(第2基板)、203…カメラ取付ネジ、204…カメラ取付フック、206…光学調整部、210…上側前後調整部(位置調整手段)、220…下側前後調整部(位置調整手段)、230…ピッチ用連結部(支持手段)、240…ロール用連結部(支持手段)、250…前側ばね部、251…ばね(弾性部材)、270…後側ばね部、271…ばね(弾性部材)、280…角速度検出部(角速度検出手段)、290…アクチュエータ(振動制御手段)410…ユニバーサル用連結部(支持手段)、420…ピッチ・ロール用アクチュエータ(振動制御手段)、430…ヨー用アクチュエータ(振動制御手段)、440…第2後側ばね部、441…ばね(弾性部材)、450…第3後側ばね部、451…ばね(弾性部材)、460……第4後側ばね部、461…ばね(弾性部材)、501…傾斜角度センサ(傾斜角度検出手段)、511,521…モータ(位置調整用駆動手段)、600…ロック機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影者の肩部で支持されながら被写体を撮影するカメラ装置の振動を制御する制振装置において、
前記カメラ装置を載置して支持する第1基板と、
前記第1基板に対向して配置されるとともに、前記肩部に載せられて支持される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板を前記カメラ装置の略重心直下で支持する支持手段と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板からの荷重を受ける弾性部材と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板に生じた振動を制御する振動制御手段とを備え、
前記弾性部材は、前記第1基板の振動により生じた荷重を受けるとともに、前記カメラ装置の重心位置が前記支持手段の支持位置から移動したときに生じる荷重を受けることを特徴とするカメラ制振装置。
【請求項2】
前記第1基板の角速度を検出する角速度検出手段を備え、
前記振動制御手段は、前記角速度検出手段により検出された前記第1基板の角速度に基づき、前記第1基板に生じた振動に対する抵抗力を発生することにより、前記振動の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のカメラ制振装置。
【請求項3】
前記振動制御手段は、前記カメラ装置のピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の少なくとも一方向を制御し、前記支持手段は、前記制御方向に対応して設けられる軸受部であることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラ制振装置。
【請求項4】
前記第1基板および前記第2基板に摺動可能に設けられ、前記第1基板および前記第2基板の面内方向に対する支持手段の位置を調整する位置調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項5】
前記第1基板の水平面あるいは前記第2基板に対する傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、
前記傾斜角度検出手段により検出された傾斜角度に基づき、前記位置調整手段を駆動する位置調整用駆動手段とを備え、
前記支持手段の前記第1基板に対する支持位置は、位置調整用駆動手段による前記位置調整手段の駆動によって、前記カメラ装置の略重心直下となるように自動調整されることを特徴とする請求項4に記載のカメラ制振装置。
【請求項6】
前記カメラ装置とそのカメラ装置の電源手段との間に電源分岐手段が着脱可能に設けられ、
前記振動制御手段へは、前記カメラ装置の電源手段から前記電源分岐手段を通じて電力が供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項7】
前記カメラ装置のレンズ鏡筒部に設けられる光学系を調整する光学系調整部を前記第2基板に備え、
前記光学系調整部は、前記カメラ装置のレンズ鏡筒部から隔離されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項8】
カメラ装置に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項9】
前記振動制御手段は、アクチュエータあるいは可変ダンパ機構であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項10】
前記振動制御手段の非動作状態時に、前記第1基板の前記第2基板に対する位置を固定するロック機構を備えていることを特徴とする請求項1〜9に記載のカメラ制振装置。
【請求項1】
撮影者の肩部で支持されながら被写体を撮影するカメラ装置の振動を制御する制振装置において、
前記カメラ装置を載置して支持する第1基板と、
前記第1基板に対向して配置されるとともに、前記肩部に載せられて支持される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板を前記カメラ装置の略重心直下で支持する支持手段と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板からの荷重を受ける弾性部材と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板に生じた振動を制御する振動制御手段とを備え、
前記弾性部材は、前記第1基板の振動により生じた荷重を受けるとともに、前記カメラ装置の重心位置が前記支持手段の支持位置から移動したときに生じる荷重を受けることを特徴とするカメラ制振装置。
【請求項2】
前記第1基板の角速度を検出する角速度検出手段を備え、
前記振動制御手段は、前記角速度検出手段により検出された前記第1基板の角速度に基づき、前記第1基板に生じた振動に対する抵抗力を発生することにより、前記振動の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のカメラ制振装置。
【請求項3】
前記振動制御手段は、前記カメラ装置のピッチ方向、ロール方向、および、ヨー方向の少なくとも一方向を制御し、前記支持手段は、前記制御方向に対応して設けられる軸受部であることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラ制振装置。
【請求項4】
前記第1基板および前記第2基板に摺動可能に設けられ、前記第1基板および前記第2基板の面内方向に対する支持手段の位置を調整する位置調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項5】
前記第1基板の水平面あるいは前記第2基板に対する傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、
前記傾斜角度検出手段により検出された傾斜角度に基づき、前記位置調整手段を駆動する位置調整用駆動手段とを備え、
前記支持手段の前記第1基板に対する支持位置は、位置調整用駆動手段による前記位置調整手段の駆動によって、前記カメラ装置の略重心直下となるように自動調整されることを特徴とする請求項4に記載のカメラ制振装置。
【請求項6】
前記カメラ装置とそのカメラ装置の電源手段との間に電源分岐手段が着脱可能に設けられ、
前記振動制御手段へは、前記カメラ装置の電源手段から前記電源分岐手段を通じて電力が供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項7】
前記カメラ装置のレンズ鏡筒部に設けられる光学系を調整する光学系調整部を前記第2基板に備え、
前記光学系調整部は、前記カメラ装置のレンズ鏡筒部から隔離されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項8】
カメラ装置に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項9】
前記振動制御手段は、アクチュエータあるいは可変ダンパ機構であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカメラ制振装置。
【請求項10】
前記振動制御手段の非動作状態時に、前記第1基板の前記第2基板に対する位置を固定するロック機構を備えていることを特徴とする請求項1〜9に記載のカメラ制振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−169187(P2009−169187A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8529(P2008−8529)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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