説明

カラーフィルタ、それを用いた液晶表示装置及びカラーフィルタの製造方法

【課題】本発明により、インクジェット方式を用いて着色層が形成され、隣接する画素への着色層の侵入を生ぜず、画素間の色性能のばらつきがない、輝度の高いカラーフィルタを提供することができる。
【解決手段】基材上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記開口部を形成する前記長辺部および/または短辺部の線幅が、5.0μm以上、11μm以下であることを特徴とするカラーフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどに使用され、インクジェット方式で製造されるカラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの製造方法として、従来種々の検討が重ねられており、代表的な方法として、フォトリソグラフィー方式が知られている。この方法においては、まず基板全体に感光性樹脂層の塗布膜を形成し、後に塗布膜の不要な部分を取り除き、残ったパターンを各画素とする。さらにこの工程を少なくとも3回繰り返すことにより、赤(R)、緑(G)、青(B)等の着色層を形成する。
【0003】
しかしながら、フォトリソグラフィー方式においては、R、G、Bの3色の着色層を形成するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、フォトリソグラフィー工程で露光や現像など多数の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。また、塗布膜の多くが不要となるため、カラーフィルタ製造時に大量の顔料等の材料が無駄になるという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、インクジェット方式により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層を形成する方法が提案されている(特許文献1を参照)。従来、インクジェット方式により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層を形成する工程において、ブラックマトリクスに撥液性を付与するためには、プラズマ処理が行われていた。プラズマ処理は、四フッ化炭素を混合したガスを導入し、プラズマを発生させるヘッド電極を、ブラックマトリクス上を走査することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−187111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヘッド電極内でプラズマ発生が不均一である上、プラズマの発生は外気の影響を強く受けるため、基板内での走査毎にプラズマの発生が変化する。そのため、基板上でのプラズマ発生が不均一となり、ブラックマトリクスの撥液処理は不均一となる。そのため、ブラックマトリクス上の撥液処理が不十分な箇所に着色層形成用塗工液が乗り上げ、各画素間の着色層の厚さが不均一になったり、着色層形成用塗工液が決壊し、隣接する画素へ侵入したりすることがあり、カラーフィルタの色性能にばらつきが生じるという問題点があった。
【0007】
特に、近年は、高輝度で高精細、高コントラストのカラーフィルタが求められ、ブラックマトリクスの幅を細線化することや、ブラックマトリクスを格子以外のパターンにすることなどが求められているが、このようなパターンにおいては、ブラックマトリクスの撥液処理の不均一さの影響を強く受け、各画素間の着色層の厚さが不均一になったり、着色層形成用塗工液が隣接する画素へ侵入したりしやすくなるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、ブラックマトリクスを、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成することで、ブラックマトリクスの線幅が細い場合でも、インクジェット方式により着色層を形成する際に、隣接する画素への着色層形成用塗工液の侵入を生ぜず、画素間の色性能のばらつきがなく、輝度の高いカラーフィルタを提供することである。隣接する画素へ塗工液が侵入しない理由は、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成されたブラックマトリクスの撥液性が均一であるためと推測される。
【0009】
前述した目的を達成するために、以下の発明を提供する。
(1)基材上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記開口部を形成する前記長辺部および/または短辺部の線幅が、5.0μm以上、11μm以下であることを特徴とするカラーフィルタ。
(2)基材上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記短辺部の一端が、前記長辺部に接していないことを特徴とするカラーフィルタ。
(3)基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記短辺部の両端が、前記長辺部に接していないことを特徴とするカラーフィルタ。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のカラーフィルタを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(5)基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を基板に塗工する工程と、露光、現像して、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記開口部を形成する前記長辺部および/または短辺部の線幅が5.0μm以上、11μm以下である前記ブラックマトリクスを形成する工程と、前記開口部に、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を形成する工程と、を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(6)基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を基板に塗工する工程と、露光、現像して、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記短辺部の一端が前記長辺部に接していない前記ブラックマトリクスを形成する工程と、前記開口部に、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を形成する工程と、を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(7)基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を基板に塗工する工程と、露光、現像して、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記短辺部の両端が前記長辺部に接していない前記ブラックマトリクスを形成する工程と、前記開口部に、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を形成する工程と、を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、インクジェット方式を用いて着色層が形成され、隣接する画素への着色層の侵入を生ぜず、画素間の色性能のばらつきがなく、輝度の高いカラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態に係るカラーフィルタ1を示す部分斜視図、(b)カラーフィルタ1の表示領域と周縁領域を説明する図。
【図2】(a)〜(d)本発明の第1の実施の形態に係るカラーフィルタ1の製造方法を示す断面図。
【図3】(e)〜(f)図2の続きの工程を示す断面図。
【図4】(a)〜(c)本発明の第2の実施の形態に係るカラーフィルタ1a〜1cを示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。本発明のカラーフィルタは、カラーフィルタと、共通電極と画素電極を設けた液晶駆動側基板(不図示)と、カラーフィルタと液晶駆動側基板との間に形成される液晶層(不図示)とを具備し、カラーフィルタと液晶駆動側基板に対し垂直あるいは水平な方向に電界を発生させ、液晶を駆動させる液晶表示装置(不図示)におけるカラーフィルタとして説明する。
【0013】
(カラーフィルタ1の構成)
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係るカラーフィルタ1について説明する。なお、各図面は、各構成要素を模式的に示したもので、実際の大きさや相対的な大きさの比率を正確に示したものではない。図1(a)は、カラーフィルタ1の部分斜視図であり、図1(b)はカラーフィルタ1の表示領域と周縁領域を説明する図である。図1(a)は、図1(b)の点線で示す範囲に対応する。
【0014】
カラーフィルタ1は、透明基板3上にブラックマトリクス5、赤色着色層7R、青色着色層7B、緑色着色層7G、などが設けられる。
【0015】
また、カラーフィルタ1は、表示領域2aと周縁領域2bに分けることができ、各色の着色層7R,7B,7Gは、表示領域2a内にある。表示領域2aは、液晶表示装置で画像を表示するために用いられる領域であり、周縁領域2bは、液晶表示装置の額縁部分に対応する領域である。
【0016】
(基板)
透明基板3は特に限定されるものではなく、カラーフィルタに一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。前記フレキシブル材としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、シンジオタクティック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。特に、無アルカリガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れており、好ましい。
【0017】
また、上記基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。このような表面処理としては例えば表面を、ブラックマトリクスよりも親インク性、すなわち、着色層形成用塗工液に対する接触角が低いものとするために、酸素ガスを導入ガスとしたプラズマ照射を行う処理を挙げることができる。
【0018】
(ブラックマトリクス)
ブラックマトリクス5は、遮光材料と撥液剤11と感光性樹脂を含むブラックマトリクス形成用塗工液を、フォトリソグラフィー法で露光・現像して得られる。具体的には、基板上に、ブラックマトリクス形成用塗工液を均一に塗工することによりブラックマトリクス形成用層を形成する。その後、必要に応じて減圧乾燥処理やプリベーク処理を施す。次いで、所定の適切なパターンを有するフォトマスクを用いて、ブラックマトリクス形成用層をパターン状に露光するパターン露光を行い、さらに現像する方法を挙げることができる。その後、必要に応じてUV照射処理を施し、ポストベークを行う。
【0019】
ブラックマトリクス5は、遮光材料と撥液剤を含む感光性樹脂で形成され、0.5μm〜3μm程度の厚さを有し、中でも1.5μm以上であることが好ましい。また、ブラックマトリクス5は、基板3上に、複数の開口部を有するように配置される。各開口部は、2つの長辺部6と2つの短辺部8により囲まれ、開口部の位置は図1(b)中の各画素R、B、Gの位置に対応する。開口部は略長方形であり、開口部の長方形において長い辺を構成するブラックマトリクス5が長辺部6であり、開口部の長方形において短い辺を構成するブラックマトリクス5が短辺部8である。また、カラーフィルタ1におけるブラックマトリクス5の幅は、表示領域2a内における幅A(短辺部8の幅)は5〜80μmであり、幅B(長辺部6の幅)が5μm以上20μm以下であり、幅Aと幅Bは6μm以上11μm以下であることが好ましい。また、ブラックマトリクス5は、側面よりも上面に撥液剤11を多く有することが好ましい。
【0020】
上記の感光性樹脂としては、ネガ型感光性樹脂およびポジ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。本実施形態では、ネガ型感光性樹脂を用いるものとして説明する。
【0021】
ネガ型感光性樹脂は特に限定されることはなく、一般的に使用されるネガ型感光性樹脂を用いることができる。例えば、架橋型樹脂をベースとした化学増幅型感光性樹脂、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。また、アクリル系ネガ型感光性樹脂として、紫外線照射によりラジカル成分を発生する光重合開始剤と、分子内にアクリル基を有し、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する成分と、その後の現像により未露光部が溶解可能となる官能基(例えば、アルカリ溶液による現像の場合は酸性基をもつ成分)とを含有するものを用いることができる。上記のアクリル基を有する成分のうち、比較的低分子量の多官能アクリル分子としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、テトラメチルペンタトリアクリレート(TMPTA)等が挙げられる。また、高分子量の多官能アクリル分子としては、スチレン‐アクリル酸‐ベンジルメタクリレート共重合体の一部のカルボン酸基部分にエポキシ基を介してアクリル基を導入したポリマーや、メタクリル酸メチル‐スチレン‐アクリル酸共重合体等が挙げられる。
なお、ポジ型感光性樹脂も特に限定されるものではなく、一般的に使用されるものを用いることができる。具体的には、ノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。
【0022】
ブラックマトリクス5に用いる感光性樹脂に含有させる遮光材料も特に限定されるものではなく、種々の公知のものを適切に選択し用いることができる。遮光材料としては、例えば、酸化チタンや四酸化鉄などの金属酸化物粉末、金属硫化物粉末、金属粉末、カーボンブラックの他に、赤、青や緑などの顔料の混合物を用いることができる。
【0023】
ブラックマトリクス5の形成用塗工液に添加する撥液剤11としては、ブラックマトリクスに対し撥液性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような撥液剤としては、例えば、フッ素含有高分子化合物およびフッ素含有物質の微粒子等を挙げることができる。
【0024】
ここで、上記フッ素含有高分子化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロピレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂等を挙げることができる。
また、上記フッ素含有物質の微粒子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテル系共重合体、3フッ化エチレン−フッ化ビニリデン共重合体等からなる微粒子を挙げることができる。
【0025】
なお、用いられる撥液剤は1種類のみであってもよく、または、2種類以上で
あってもよい。
【0026】
ブラックマトリクス5の形成用塗工液に添加する撥液剤11の量としては、使用する撥液剤の種類等に応じて、ブラックマトリクスに所望の撥液性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記塗工液に含まれる撥液剤11の割合が、0.005質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.01質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましい。
【0027】
ブラックマトリクス5の上面が有する撥液性としては、室温において水との接触角が約90°以上であることが好ましく、特に室温において表面張力20〜40mN/mの液体との接触角が、約45°以上であることが好ましい。さらに、室温において表面張力30mN/mの液体との接触角が、約45°以上であることが好ましい。なお、室温とは18℃〜25℃の範囲を意味し、特に23℃を意味する。また、所定の表面張力の液体として、JIS K6768に規定する濡れ性試験において示された標準液を使用することができる。
【0028】
(着色層)
着色層7R、7B、7Gは、ブラックマトリクス5が備える開口部に、インクジェット方式により、着色層形成用塗工液を塗布し、塗工液を乾燥させることで得られる。
【0029】
本工程に用いられる着色層形成用塗工液としては、インクジェット方式により、着色層を形成する際に、一般的に用いられるものと同様とすることができる。このような着色層形成用塗工液としては、通常、少なくとも赤(R)、緑(G)、青(B)を含む、3色以上の着色層形成用塗工液が用いられる。
【0030】
(カラーフィルタのその他の構造物)
さらに、カラーフィルタ1は、ブラックマトリクス5及び着色層7を覆うオーバーコート層や、着色層上のITOなどの透明電極層や、対向基板とのセルギャップを均一にするためのスペーサーや、液晶の配向を制御するための構造物などを有する。
【0031】
なお、各着色層の色の配置は、限定されるものではなく、図示した赤・青・緑の順だけでなく、赤・緑・青、青・赤・緑、青・緑・赤、緑・青・赤、緑・赤・青などの順にしてもよい。
【0032】
なお、カラーフィルタ1は、赤色、青色、緑色の三色の着色層以外に、黄色やシアンなどの他色の着色層を設けてもよい。
【0033】
(カラーフィルタの製造方法)
続いて、図2〜図3を用いて、図1に示したカラーフィルタ1を形成するカラーフィルタ製造方法について説明する。図2〜図3は、カラーフィルタ1の製造工程を示す部分断面図である。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、透明な基板3の上に、ブラックマトリクス形成用塗工液9を塗布する。感光性樹脂の塗布方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ダイコート法等がある。また、OD(光学密度)が1〜6となるように塗工することが好ましく、さらにODが4〜5であるとより好ましい。
【0035】
その後、図2(b)に示すように、減圧による溶剤乾燥工程を行い、ホットプレートを用いてプリベークを行い、撥液剤を塗膜表面に偏析させる。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、フォトマスク13を介して、ブラックマトリクス形成用層10に、露光する。
【0037】
次に、図2(d)に示すように、露光後のブラックマトリクス形成用層10を現像し、露光されていないブラックマトリクス形成用層10を除去し、所定のパターンを有するブラックマトリクス5を形成する。
【0038】
なお、現像工程後、ブラックマトリクス5を強固にするため、ポスト露光工程を設けてもよい。
【0039】
その後、150℃〜240℃の任意の温度でポストベーク工程を行い、液体成分の除去や、基板3とブラックマトリクス5との密着性を向上させる。
【0040】
次に、図3(e)に示すように、赤色着色層形成用塗工液21R、青色着色層形成用塗工液21B、緑色着色層形成用塗工液21Gを、ブラックマトリクス5の開口部に、インクジェット方式により塗布する。この際、ブラックマトリクス5の上面の撥液性が均一であるため、塗工液21が撥液性の低い箇所を通って、隣接する画素に侵入することはない。
【0041】
その後、図3(f)に示すように、各着色層塗工液21を乾燥し、赤色着色層7R、青色着色層7B、緑色着色層7Gを形成する。乾燥温度と時間の目安は、200℃〜250℃で30分〜50分である。この際、ブラックマトリクス5の上面は撥液性が強いが、ブラックマトリクス5の側面は撥液性が弱いため、各着色層7の形状は、従来のプラズマ処理による撥液性に比べ平坦になる傾向がある。なお、図3(f)は、図1(a)のC−C断面図に対応する。
【0042】
(インクジェット方式)
本発明に用いられる塗布方法としては、インクジェット方式により着色層形成用塗工液7をブラックマトリクス5の開口部に塗布する方法であり、通常、着色層形成用塗工液7を塗布することができるノズルを複数備えるインクジェットヘッドが用いられる。
【0043】
本工程に用いられるインクジェットヘッドとしては、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの面積や開口部等に応じて、所望のノズル数を有するものであれば特に限定されず、一般的にインクジェット方式に用いられるインクジェットヘッドを用いることができる。
【0044】
なお、本工程に用いられるインクジェットヘッドのノズル数は、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの面積や、前述の開口部のピッチ等に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
また、上記ノズルの配置態様としては、隣り合うノズルの間隔が常に一定となるような配置態様であれば特に限定されるものではなく、例えば、すべてのノズルが一直線上に配置された態様であってもよく、または、千鳥状に配置された態様であってもよい。
【0046】
また、上記ノズルの径としては、上記開口部の間隔やノズルから吐出される着色層形成用塗工液の吐出量等に応じて、上記ノズルから吐出される着色層形成用塗工液の液滴の径を、上記開口部の間隔よりも小さくできる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記カラーフィルタの種類等に応じて適宜調整すればよい。
【0047】
本工程に用いられるインクジェットヘッドが着色層形成用塗工液を吐出する吐出方式としては、所定量の着色層形成用塗工液を吐出できる方式であれば特に限定されるものではない。このような吐出方式としては、例えば、帯電した着色層形成用塗工液を連続的に吐出し磁場によって吐出量を制御する方式、圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式、着色層形成用塗工液を加熱しその発泡現象を利用して間欠的に吐出する方式等を挙げることができる。なかでも本工程においては、上記吐出方式として圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式を用いることが好ましい。このような吐出方式は微量な吐出量を比較的精度よく制御することができるからである。

【0048】
(本発明の効果)
本発明によれば、線幅11μm以下の細いブラックマトリクスを使用しながら、インクジェット方式で着色層を形成する際に、着色層形成用塗工液の決壊を起こさないで塗布することができる。
【0049】
また、本発明によれば、ブラックマトリクスの上面に撥液性が均一に付与されているため、着色層形成用塗工液の乗り上げが少なく、画素間の着色層の厚みのばらつきが小さい。
【0050】
また、本発明によれば画素内の着色層の厚さを平坦にすることができる。定かではないが、これはブラックマトリクスの上面の撥液性が側面の撥液性よりも高いためだと考えられる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態にかかる、カラーフィルタ1a〜1cを示す図である。以下の実施形態で第1の実施形態と同一の様態を果たす要素には同一の番号を付し、重複した説明は避ける。
【0052】
カラーフィルタ1a〜1cは、カラーフィルタ1とは、ブラックマトリクス5のパターンが異なる。
【0053】
カラーフィルタ1aと1bは、カラーフィルタ1のブラックマトリクス5のような線幅の制限はないが、表示領域内のブラックマトリクスが2つの長辺部25と2つの短辺部23により囲まれた開口部を有し、前記開口部の短辺部23の一端が長辺部25に接しておらず、短辺部23の他端が長辺部25に接しているパターンである。つまり、短辺部23が略壁状の長辺部25より突出した構造を有している。短辺部23は、カラーフィルタに対向する液晶駆動側基板の電極のある箇所に対応する。
【0054】
カラーフィルタ1cは、カラーフィルタ1のブラックマトリクス5のような線幅の制限はないが、表示領域内のブラックマトリクスが2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記開口部の短辺部27の両端が長辺部25に接していない。つまり、短辺部27は、略壁状の長辺部25から独立した柱状の構造を有している。短辺部27は、カラーフィルタに対向する液晶駆動側基板の電極のある箇所に対応する。
【0055】
カラーフィルタ1a〜1cの製造方法は、カラーフィルタ1の製造方法において、フォトマスク13の遮光膜17のパターンを、ブラックマトリクス5a〜5cに対応するパターンにすればよい。
【0056】
カラーフィルタ1a〜1cは、ブラックマトリクス5a〜5cが格子状ではなく、ブラックマトリクスの占有面積が小さいため、同じ線幅の格子状のブラックマトリクスに比べて高輝度、高コントラストである。
【0057】
第2の実施形態によれば、第1の実施の形態において得られる効果に加え、ブラックマトリクス5a〜5cの上面は、均一に撥液性を有するため、短辺部23や短辺部27に乗り上げる着色層形成用塗工液21の量が少ないため、画素間の着色層の厚さが均一になり、画素間の色性能のばらつきが減少するという効果が得られる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例]
1.ブラックマトリクス形成工程
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横100mm、縦100mmのCorning(コーニング)社製EAGLE2000を用意し、アルカリ性水溶液を用い洗浄した後、UVオゾン処理を施した。このガラス基板上にブラックマトリクス形成用材料として、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用材料をOD4.5となるようスピンコーターで塗布した。この基板を減圧乾燥し、ホットプレートにて、80℃で3分間のプリベークを施した。
【0059】
所定のフォトマスクを用いUV露光装置にてマスク露光を実施し、続いてアルカリ現像を実施した後に純水にてリンスし、更にオーブンにて160℃で30分間のベイクを施した。この結果、ガラス基板上に線幅10μmであって、170μm×510μmの開口部を複数有する格子状のブラックマトリクスを得た。
【0060】
また、ブラックマトリクスの撥液性を評価すると、表面張力30mN/mの液体との接触角は、上面で50°であった。
【0061】
2.着色層形成工程
ブラックマトリクスを形成したガラス基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用塗工液を塗布した。塗工液はカラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用いた。この際、いくつかの開口部でインクの量を変え、乾燥後の着色層の膜厚が、乾燥後のブラックマトリクスの膜厚よりも一定程度高い開口部を用意した。この着色層とブラックマトリクスの膜厚差は、−2.0μmから2.0μmまで、0.2μmずつ変更し、同一基板内に厚さの異なる着色層を有する開口部を得た。
【0062】
このときのインクジェット装置は富士フィルム社製DimatixマテリアルプリンターDMP−2831を用い、塗布はブラックマトリクスの1つの開口部(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、かつインク吐出液滴が開口部内に着弾するように行った。
次いで、基板を、オーブンを用い100℃にて20分間プリベークした。
【0063】
3.カラーフィルタの形成
次いで、オーブンにて230℃で40分間加熱し、カラーフィルタを形成した。
【0064】
[比較例]
実施例とは、ブラックマトリクスを形成する工程が異なる。
1´.ブラックマトリクス形成工程
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横370mm、縦470mmのCorning(コーニング)社製EAGLE2000を用意し、アルカリ性水溶液を用い洗浄した後、UVオゾン処理を施した。このガラス基板上にブラックマトリクス形成用材料として、カーボンブラックを含有したブラックマトリクス形成用材料をOD4.2となるようスピンコーターで塗布した。この基板をホットプレートにて、80℃で3分間のプリベークを施した。
【0065】
所定のフォトマスクを用いUV露光装置にてマスク露光を実施し、続いてアルカリ現像を実施した後に純水にてリンスし、更にオーブンにて230℃で30分間のベイクを施した。この結果、ガラス基板上に線幅10μmであって、170μm×510μmの開口部を複数有する格子状のブラックマトリクスを得た。
【0066】
次いで、ブラックマトリクス基板に対して、フッ素ガスを導入した大気圧プラズマ照射を行うことにより、ブラックマトリクス表面を撥液性にした。このようにして、撥液性を有するブラックマトリクスを形成した。また、得られたブラックマトリクスの、30mN/mの液体との接触角は、ブラックマトリクス表面で50°、ガラス表面上で10°以下であった。
【0067】
ブラックマトリクス形成工程後、着色層形成工程と、カラーフィルタの形成を実施例と同様の方法で行った。
【0068】
[評価]
得られたカラーフィルタの表面を光学顕微鏡で観察し、着色層形成用塗工液が決壊し、ブラックマトリクスを超えて他の画素にまで侵入しているかを確認した。
【0069】
[結果]
その結果、撥液剤を含むブラックマトリクス形成用塗工液を使用した実施例においては、ブラックマトリクスの厚さに対し、加熱後の着色層の厚さが1.4μm高い条件にて、初めて決壊が発生した。一方、プラズマ処理を行った比較例においては、ブラックマトリクスの基準厚さに対し、乾燥後の着色層の厚さが0.6μm高い条件にて、初めて決壊が発生した。このことより、実施例は比較例に比べて、より厚い着色層を用いても決壊が発生せず、決壊マージンが広いと考えられる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
1………カラーフィルタ
3………基板
5………ブラックマトリクス
6………長辺部
7………着色層
8………短辺部
9………ブラックマトリクス層形成用塗工液
10………ブラックマトリクス形成用層
11………撥液剤
13………フォトマスク
15………フォトマスク用基板
17………遮光膜
19………露光光
21………着色層形成用塗工液
23………短辺部
25………長辺部
27………短辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、
前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、
前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、
前記開口部を形成する前記長辺部および/または短辺部の線幅が、5.0μm以上、11μm以下であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
基材上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、
前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、
前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、
前記短辺部の一端が、前記長辺部に接していないことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項3】
基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタであって、
前記ブラックマトリクスが、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液により形成され、
前記ブラックマトリクスが、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、
前記短辺部の両端が、前記長辺部に接していないことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を基板に塗工する工程と、
露光、現像して、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記開口部を形成する前記長辺部および/または短辺部の線幅が5.0μm以上、11μm以下である前記ブラックマトリクスを形成する工程と、
前記開口部に、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を基板に塗工する工程と、
露光、現像して、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記短辺部の一端が前記長辺部に接していない前記ブラックマトリクスを形成する工程と、
前記開口部に、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
基板上にブラックマトリクスと、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を基板に塗工する工程と、
露光、現像して、2つの長辺部と2つの短辺部により囲まれた開口部を有し、前記短辺部の両端が前記長辺部に接していない前記ブラックマトリクスを形成する工程と、
前記開口部に、少なくとも1色がインクジェット方式により形成された3色以上の着色層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−73509(P2012−73509A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219540(P2010−219540)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】