説明

カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、及び情報表示装置

【課題】印刷後にインクがアンダーコート層に吸収固定される過程でカラーフィルタ画素が形成され、かつ、カラーフィルタ画素の隣接間隔を狭めることを可能にする。
【解決手段】カラーフィルタは、矩形の画素単位領域内に少なくとも2種類の表面張力の異なった領域がパターン形成されたアンダーコート層111の表面に、インクジェット方式にて着色インク113を付与した着色パターンを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、及び情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背面にバックライトを設け、その発光を液晶パネルで制御して表示を行う透過型LCD(Liquid Crystal Display)に対し、周囲の照明や環境光等の反射光を制御して表示を行う反射型LCDが、低消費電力であること、また、直射日光下での視認性が良いことなどの理由から、主に携帯情報端末用に用いられるようになってきている。また、LCDとは異なる表示原理を利用したディスプレイが、近年報告されており、LCDにはない特徴を有する反射型ディスプレイとして期待されている。
【0003】
LCDの表示方式として、現在、TN(Twisted Nematic)方式及びSTN(Super Twisted Nematic)方式の2方式が主に用いられており、さらにIPS(In−Plane Switching)方式、MVA(MultidomainVertical Alignment)方式、及びOCB(Optical Compensated Birefringence)方式等も報告されている。これらのいずれの表示方式も、それ自体は光の透過状態を制御するものであり、表示色を変えることはできない。したがって、色表示をするためには、カラーフィルタを使用する必要がある。
【0004】
また、LCDに代わる他の表示方式として、帯電した微粒子を電場によって動かす電気泳動方式(例えば、特許文献1参照)、2色に塗り分けられた球体を電場で回転させるツイストボール方式(例えば、特許文献2参照)、樹脂中に分散した液晶の液滴内部の配向状態を電場で制御する高分子分散型液晶方式(PDLC Polymer Dispersion Liquid Crystal)(例えば、特許文献3参照)、その樹脂成分比が小さく液晶中に高分子が網目構造を取っている高分子ネットワーク型液晶方式(PNLCPolymer Network Liquid Crystal)(例えば、特許文献4参照)などがある。
【0005】
これらの表示方式は、いずれも散乱反射状態を電場で制御するものであり、それ自体は色を表示することが困難であるので、カラー表示するためにはカラーフィルタを使用するのが現実的である。前記カラーフィルタを用いてカラー表示化する方式としては、複数の画素に相当する電極を有する基板と、カラーフィルタを有する基板とを、設定された画素の位置とカラーフィルタの位置とを正確に位置合わせして貼り合わせるのが一般的である。しかし、表示する画素が細かくなり、また、画素が多くなればなるほど、要求される位置合わせ精度が高くなり大画面化・高精細化が困難となる。
【0006】
そこで、カラーフィルタを表示媒体上に直接形成することにより、カラーフィルタを高精度に形成し、かつ、2つの基板を貼り合わせる際の位置合わせを必要としない構成を有する散乱反射型カラー表示体が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この散乱反射型カラー表示体は次のような手順で形成される。
先ず、TFT(Thin Film Transistor)などの複数の能動素子に接続された複数の画素電極を有する第1の基板上に、電圧を印加する事により散乱反射状態が制御できる表示媒体を形成する。
【0007】
次いで、表示媒体上の画素電極に対応する位置に、所定のパターンの複数の着色層からなるカラーフィルタを、スクリーン印刷により印刷したり、インクジェットプリンタにより印字したりすることにより形成する。その着色層には、Red,Green,Blueの3色、又はCyan,Magenta,Yellowの3色が用いられる。
次いで、対向電極となる面状に設けられた透明電極を有する第2の基板を、第1の基板に貼り合わせることで散乱反射型カラー表示体を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−86116号公報
【特許文献2】特開平1−42683号公報
【特許文献3】特開2001−92383号公報
【特許文献4】特開2001−154219号公報
【特許文献5】特開2003−108035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、一般的にはTFTなどの駆動電極の画素は、正方形や長方形などの矩形である。このため、各種印刷法によって形成するカラーフィルタの画素には、このような駆動電極の画素と可能な限り同形状であることが求められる。これは、散乱反射型表示材が反射した光を可能な限り多くカラーフィルタに通過させ、表示される色域を広くする目的からである。
【0010】
しかし、各種印刷法によって形成されるカラーフィルタの画素は、インクの濡れ広がりなどによって矩形に形成しづらい問題がある。
さらに、インクジェット印刷によってカラーフィルタを印刷形成する場合には、この問題が顕著となる。これは、基材上にはインクの濡れ広がりによる滲みや混色を防ぐために、インクを保持するインクアンダーコート層を用いており、インクジェット印刷ではその動作原理上、飛翔するインク粒は表面張力によって球形となり、基材へのインク粒の着弾は円形となってしまうからである。
【0011】
これに対して、LCD用のカラーフィルタでは、矩形に形成されたBMを画素間の隔壁として用いることで、濡れ広がったインクがBMの壁で留まり、矩形の画素を形成することができる。しかし、散乱反射型表示材用のカラーフィルタにおいて画素間に隔壁を用いることは、反射率を低下させることにつながるため好ましくない。
さらにこれに対して、図10(a)又は(b)に示すように、一つの画素400の印刷に複数個の小さな液滴402を矩形に近くなるように配置して印刷を行う技術がある。
【0012】
しかし、高精細なディスプレイ用に画素幅を小さくするには、円形に濡れ広がってしまうインクの影響により隣り合った画素同士のインクが接触し混ざってしまうことを考慮して、カラーフィルタの画素間隔を広げて印刷する必要がある。この結果、背面の駆動電極の画素よりも狭い面積しかカラーフィルタの画素を印刷できないといった問題が生じてしまう。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来の問題に着目してなされたものであり、印刷後にインクがアンダーコート層に吸収固定される過程で所望の画素が形成され、かつ、画素の隣接間隔を狭めることが可能な、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、及び情報表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、矩形の画素単位領域内に少なくとも2種類の表面張力の異なった領域がパターン形成されたアンダーコート層の表面に、インクジェット方式にて着色インクを付与した着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタである。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記画素単位領域の角部の表面張力をγ1とし、前記画素単位領域の中央部の界面張力をγ2としたときに、γ1>γ2となることを特徴とするカラーフィルタである。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造方法であって、前記紫外線の露光量の差によって前記表面張力に差を与えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
また、請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載のカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造方法であって、前記アンダーコート層の表面形状の違いによって前記表面張力に差を与えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記アンダーコート層の表面に窪みをつけることで該表面の表面積を大きくすることにより該表面の表面張力を大きくしたことによって前記表面張力に差を与えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
また、請求項6に係る発明は、請求項1又は2に記載のカラーフィルタを、情報を表示する表示部に設けたことを特徴とする情報表示装置である。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、矩形の画素単位領域内に少なくとも2種類の表面張力の異なった領域がパターン形成されたアンダーコート層の表面に、インクジェット方式にて着色インクを付与した着色パターンを形成してカラーフィルタを製造することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
ここで、図11は、固体(例えば基板)401の表面に付着した液滴402における力のつり合いを示す図である。
【0018】
図11に示すように、固体401の表面に付着した液滴402はある接触角(θ)をもって静止する。このとき、固体の表面張力(固体と気体の界面張力)をγ、液体の表面張力(液体と気体の界面張力)をγとし、個液界面の界面張力をγとすると、Youngの下記の式(1)が成り立つ(T.Young,Trans.Faraday Soc.(London),96 A,65(1805)等参照)。
【0019】
γ=γ+γcosθ ・・・(1)
また、付着の仕事を考えると、付着仕事Wは、固体−液体の界面を固体−気体、液体−気体の2つの界面に分けるのに必要な仕事であり、下記のDupreの式(2)で定義され、これらの2つの式から下記のYoung−Dupreの式(3)が導かれる。
W=γ+γ−γ ・・・(2)
W=γ(1+cosθ) ・・・(3)
これは、付着仕事Wが大きいほど、接触角は小さくなり、固体表面は濡れ易く、又は、付着仕事Wが小さいほど、接触角は大きく、固体表面は濡れにくいことを示している。
【0020】
さらに、付着仕事Wは、固体と液体が付着する際の表面自由エネルギーの減少分であることから、これが固液界面の相互作用と関係した量と考えGirifalcoとGoodは、下記の式(4)を仮定した。ここで、Φは2相間に働く相互作用の種類により異なる値をとる補正係数である(L.A.Girifalco,R.J.Good,J.Phys.Chem.,61,900(1957)、及びR.J.Good,E.Elbing,Ind.Eng.Chem.,62(3),54(1970)等参照)。
【0021】
W=2Φ√(γ・γ) ・・・(4)
これより、固体の表面張力γ(表面エネルギー)が大きいほど、付着仕事Wは大きく、接触角θは小さくなり、固体表面は液体に濡れ易くなる。
一方、同じ材質の固体表面であっても、その表面に液滴よりも小さい凹凸形状があると、液滴の接触角θは、平らな表面での接触角θとは異なることが知られている(恩田智彦:「フラクタル表面の超撥水・超親水現象」、電子学会論文A,116,12(1996)1041、及び酒井秀樹・藤井富美子:「粗面における見かけの接触角の重量依存性」、表面化学、19,7(1998)453等参照)。
【0022】
凹凸面上の液滴の接触角θは、平面上の接触角θによって式(5)で表される。
cosθ=r・cosθ ・・・(5)
ここで、rは、表面積増倍因子であり、平滑面の表面積に対する凹凸面の表面積の増加割合を示す。この因子は1よりも大きくなることから、凹凸面上での液体の接触角θは、θ>90度のときはθより大きくなり、θ<90度のときはθより小さくなる。すなわち、固体表面の凹凸化によって撥液的な表面はより撥液的になり、親液的な表面はより親液的となることが知られている(恩田智彦:「フラクタル表面の超撥水・超親水現象」、電子学会論文A,116,12(1996)1041、及び酒井秀樹・藤井富美子:「粗面における見かけの接触角の重量依存性」、表面化学、19,7(1998)453等参照)。
本発明は、これらの特性を利用したものであり、請求項2及び請求項3に係る発明は、式(3)及び式(4)の特性を利用し、請求項4及び請求項5に係る発明は、式(5)の特性を利用したものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アンダーコート層表面の画素単位領域内に表面張力の異なった複数の領域を形成できる。
これにより、本発明では、アンダーコート層表面での着色インクの濡れ広がり方を制御できる。
また、本発明によれば、アンダーコート層表面の表面張力を、画素単位領域の中央部で小さく、画素単位領域の角部で大きくすることができる。
【0024】
これにより、本発明では、印刷した着色インクが画素単位領域内で中央部から角部に向かって濡れ広がり易くなり、矩形の画素(カラーフィルタ画素)を簡単に形成できる。
よって、本発明では、カラーフィルタ画素の隣接間隔を狭めることができ、背面電極の画素の面積に対するカラーフィルタ画素の面積、所謂カラーフィルタ画素占有率を大きくすることができる。
【0025】
この結果、本発明では、発色性能の優れたカラーフィルタを得ることができ、表示できる色域の広い散乱反射型表示装置の作製が可能となる。
また、本発明によれば、紫外線の露光量の差によって表面張力に差を与えるといったように、簡易に表面張力に差を与えることができる。
【0026】
また、本発明によれば、アンダーコート層の表面形状の違いによって表面張力に差を与えるといったように、簡易に表面張力に差を与えることができる。
また、本発明によれば、アンダーコート層の表面に窪みをつけることで該表面の表面積を大きくすることにより該表面の表面張力を大きくしたことによって表面張力に差を与えるといったように、簡易に表面張力に差を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明するための製造工程の一例を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明するための製造工程の図1に続く工程の一例を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明するための製造工程の図2に続く工程の一例を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明するための製造工程の図3に続く工程の一例を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明するための製造工程の図4に続く工程の一例を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明するための製造工程の図5に続く工程の一例を示す断面図である。
【図7】表面張力が異なる領域をパターン形成したアンダーコート層表面を示す図である。
【図8】本実施形態に係る情報表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図9】本実施形態の作用、効果を説明する図である。
【図10】インクジェット方式で矩形の画素を形成する説明をする図である。
【図11】固体表面上の液滴における力のつり合いを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(カラーフィルタの製造方法による製造工程)
本実施形態は、本発明を適用したカラーフィルタの製造方法である。
図1乃至図6は、カラーフィルタの製造方法にかかる製造工程の一例を示す図である。
【0029】
先ず、図1に示すように、厚さ25umの透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム101に透明導電膜(ITO膜)102を厚さ1000Åで形成し、透明導電膜102の一の面(図1では下側面)に、電子インクを塗布し、厚さ50umのマイクロカプセル表示層103を形成する。
【0030】
次に、マイクロカプセル表示層103の一の面(図1では下側面)に、厚さ20umの導電性接着剤層104を形成し、一辺が約80umの矩形の画素105が複数形成された背面電極基板106の矩形の画素105が複数形成された面(図1では上側面)に、導電性接着剤層104によって、電子インクを塗布したPETフィルム101を貼り合わせて、マイクロカプセル型散乱反射表示装置107を得る。例えば、画素105は、一辺が約80umの矩形の画素である。
【0031】
次に、マイクロカプセル型散乱反射表示装置107の画像表示面側である、PETフィルム101の上に、ポリウレタン樹脂をバーコート法にて塗布し、約80℃のオーブンで加熱乾燥させて、膜厚10um程度のアンダーコート層108を作製する。
次に、図2に示すように、クロム膜を形成したガラス板のクロム膜をエッチングによって部分的に除去することでクロム膜をパターン形成したフォトマスク基板109を、アンダーコート層108の上に、矩形の画素105の位置にクロムのパターン形成膜が一致するように位置合わせして置く。
【0032】
それから、発光中心波長172nmのキセノンエキシマUVランプを用いて発生させたエキシマUV光(UV:紫外線)を、フォトマスク基板109を介してアンダーコート層108に照射し、図3及び図7に示すように、表面張力が大きくなった領域(角部領域)110がパターン形成されたアンダーコート層111を得る。
このように、アンダーコート層111の表面には、画素単位領域内で表面張力の異なった複数の領域が形成される。具体的には、画素単位領域の角部の表面張力をγ1とし、画素単位領域の中央部の界面張力をγ2としたときに、画素単位領域内にγ1>γ2を満たす領域が形成される。
【0033】
さらに、そのような表面張力γ1、γ2の差については、具体的には、紫外線の露光量の差によって与えている。ここで、例えば、前述のようなガラス板にクロムなどの金属膜をパターン形成した遮光板を用い、紫外線をこの遮光板を介してアンダーコート層表面に当てることで、具体的には、矩形の画素単位領域の中央部に比較して角部では紫外線を多く照射することで、前述のように、画素単位領域内にγ1>γ2を満たす領域を形成する。また、このときの遮光板の位置合わせについては、背面電極基板106に設けられた位置合わせマークを基準にすることで、背面電極基板106の画素105の位置に高精度で遮光板を合わせることができる。
【0034】
また、表面張力の差については、アンダーコート層の表面形状の違いによって与えることもできる。より詳しくは、アンダーコート層表面に窪みをつけることでその表面の表面積を大きくすることにより表面張力を大きくしたことによって表面張力に差を与える。ここで、例えば、金属板又はガラス板の表面に凸状の型をエッチングなどの表面処理技術により形成した版を用いる。ここで、版には、凸状の型がカラーフィルタを印刷したときに矩形の画素の角部に相当する位置に形成してある。このような版をアンダーコート層表面に圧しつけることで表面に窪みを形成し、その窪みによってアンダーコート層表面の表面積を増大させることで表面張力を大きくする。ここで、アンダーコート層表面への窪み形成については、画素の角部に、画素中心から角部へ向かう放射状線上に形成するのが好ましい。
【0035】
以上のようにして行うアンダーコート層表面への窪み形成によって、窪みが形成されたアンダーコート層表面は、平坦なアンダーコート層表面に比較してインクへの濡れ性が増大されたものとなる。
次に、図4に示すように、インクジェット法にて、Red、Blue、Greenの着色インクをパターン形成されたアンダーコート層111に付与する。これにより、アンダーコート層111上の着色インク113は、アンダーコート層表面の表面張力の差異によって自発的に濡れ広がり(特に画素単位領域の角部で濡れ広がり)、矩形のカラーフィルタ画素が形成される。
【0036】
その後、図5に示すように、乾燥させて着色インク113をアンダーコート層111に定着させてカラーフィルタ(着色パターン)114を得る。ここで、前述のように、背面電極基板106の画素105に対して遮光板を高精度で位置合わせしていることで、背面電極基板106の画素105に相当する位置にカラーフィルタ114(矩形のカラーフィルタ画素)が高精度で形成される。
【0037】
次に、図6に示すように、形成したカラーフィルタ114の表面をアクリル樹脂で覆い表面保護層115を形成する。この表面保護層115は、より平坦性を必要とする場合や、より各種の環境条件から、カラーフィルタ114を保護するために設けられる。
なお、透明な表面保護層115には、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル系、シリコン系等の有機樹脂やSi、SiO、SiO、Al、Ta等の無機膜を適用することができる。
【0038】
また、スピンコート法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、印刷法等の塗布方法で、あるいは蒸着法で透明な表面保護層115を設けることができる。
次に、図8に示すように、透明な粘着材301を用いて、表面保護層115の上に保護フィルム302を貼り合わせる。この保護フィルム302には、表示面側から加わった衝撃を吸収して、カラーフィルタ114やマイクロカプセル表示層103が破損するのを防ぐと共に、水分や酸素の浸入を防ぐガスバリア性を持たせてある。
【0039】
さらに、周辺部分を封止材303によって封止して情報表示装置304を作製する。
このようにして得た散乱反射型の情報表示装置304では、カラーフィルタ114(カラーフィルタ画素)が、画素105と対向する位置に精度良く配置されていることを確認できた。
さらに、形成したカラーフィルタ114は、その画素(カラーフィルタ画素)の角部が矩形に近い形状となっており、その画素面積が、対向する画素105の面積に比して90%〜95%となっていることを確認できた。
【0040】
(作用等)
以上のように、本実施形態では、アンダーコート層表面の表面張力が画素単位領域の角部と中央部とで異なるようにパターニングされていることから、インクジェット方式にて着色材料を印刷形成する際に、飛翔中にインクの表面張力によって球状となっているインク粒であっても、着弾後にアンダーコート層表面の表面張力の差によって自発的にアンダーコート層表面の矩形の画素単位領域400の角部400aまでインクが濡れ広がるようになる(図9(a)乃至(c)の変化を参照)。
【0041】
これにより、本実施形態では、アンダーコート層表面の画素単位領域間に隔壁を設けなくとも、又は、隣接した画素単位領域同士での混色を防ぐために該画素単位領域に対して小さい面積でインクジェット印刷しても、背面電極基板106の画素105に近い面積のカラーフィルタ画素を形成できる。
すなわち、本実施形態では、カラーフィルタ画素の隣接間隔を狭めることができ、背面電極基板106の画素105の面積に対するカラーフィルタ画素の面積、所謂カラーフィルタ画素占有率を大きくすることができる(図9(c)参照)。
この結果、本実施形態では、情報表示装置304は良好な画質のカラー表示ができる。
【0042】
(実施形態の変形例)
本実施形態では、アンダーコート層表面の画素単位領域内に必要に応じて3種類以上の表面張力の異なった領域を形成することもできる。
また、本実施形態では、インクジェット方式の好ましい具体例として、インクを吐出する際のエネルギー発生素子として圧電素子を用いたピエゾジェットタイプあるいは電気熱変換体を用いたバブルジェットタイプが使用可能である。
【0043】
また、本実施形態において、パターン状アンダーコート層を形成する材料として、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、このような樹脂を基板上にスピンコート法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、印刷法等により塗布し、乾燥させて膜厚0.5〜20um程度、好ましくは0.5〜10um程度のアンダーコート層膜を形成する。
【0044】
また、本実施形態では、着色材料は、有機顔料、無機顔料、染料等のうち所望の分光特性を得られるものであれば、特に限定されるものではない。この場合、各材料を単体で用いることも、あるいは、これらの内いくつかの混合物を用いることもできる。
また、本実施形態では、着色インクは、前記着色材料を必要に応じて添加剤とともに溶媒に溶解あるいは分散させて用いることもできる。
【0045】
また、本実施形態では、カラーフィルタを形成する基板は、一般的にカラーフィルタの基板として使用されているものなら特に制限は無いが、例えば、ガラス板、透明樹脂板、透明樹脂フィルム、あるいは散乱反射型表示体を用いたディスプレイの表示面、特にマイクロカプセル型電気泳動表示装置の表示面が挙げられる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0047】
101…PETフィルム、102…透明導電膜、103…マイクロカプセル表示層、104…導電性接着剤、105…画素電極、106…背面電極基板、107…マイクロカプセル型散乱反射表示装置、108…受像層、109…フォトマスク、111…パターン形成された受像層、112…インクジェットヘッド、113…着色インク、114…カラーフィルタ、115…保護層、301…透明粘着材、302…保護フィルム、303…封止材、304…情報表示装置、400…画素、401…基板、402…液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の画素単位領域内に少なくとも2種類の表面張力の異なった領域がパターン形成されたアンダーコート層の表面に、インクジェット方式にて着色インクを付与した着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記画素単位領域の角部の表面張力をγ1とし、前記画素単位領域の中央部の界面張力をγ2としたときに、γ1>γ2となることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造方法であって、
前記紫外線の露光量の差によって前記表面張力に差を与えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造方法であって、
前記アンダーコート層の表面形状の違いによって前記表面張力に差を与えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記アンダーコート層の表面に窪みをつけることで該表面の表面積を大きくすることにより該表面の表面張力を大きくしたことによって前記表面張力に差を与えることを特徴とする請求項4に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のカラーフィルタを、情報を表示する表示部に設けたことを特徴とする情報表示装置。
【請求項7】
矩形の画素単位領域内に少なくとも2種類の表面張力の異なった領域がパターン形成されたアンダーコート層の表面に、インクジェット方式にて着色インクを付与した着色パターンを形成してカラーフィルタを製造することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−73098(P2013−73098A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213105(P2011−213105)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】