説明

カラーフィルタとその製造方法、カラーフィルタ基板ならびに液晶表示装置

【課題】開口率低下が少なく、且つ、密着性が強くシール強度の高いブラックマトリックスを有するカラーフィルタとその製造方法、カラーフィルタ基板ならびに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透明基板と、前記透明基板上に設けられたブラックマトリックスと、前記ブラックマトリックスの開口部に設けられた着色画素とを有するカラーフィルタにおいて、前記ブラックマトリックスが、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、前記外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部と、前記ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話用などのモバイルディスプレイ、およびデジタル放送に対応した高解像度液晶テレビ等に用いられる、カラーフィルタとその製造方法、カラーフィルタ基板ならびに液晶表示装置に関する。特に、開口率低下が少なく、且つ、密着性が強くシール強度の高いブラックマトリックスを有するカラーフィルタとその製造方法、カラーフィルタ基板ならびに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、一般に、カラーフィルタ基板とアレイ基板との間に液晶を封入して構成される。カラーフィルタ基板は、透明基板を構造的支持体として備え、その画面観察者側には偏光膜が積層されている。また、その反対側(背面側)は多数の画素領域に区分され、画素領域と画素領域の境界に位置する画素間部位には遮光膜(いわゆるブラックマトリックス、BMと称する)が設けられ、画素領域のそれぞれには透明着色層が配置されている。透明着色層は、画素ごとに透過光を着色するもので、一般に、光の三原色に相当する赤色(R),緑色(G),青色(B)の三色の透明着色層を画素ごとに配列している。
【0003】
さらに、透明着色画素による段差を埋めるオーバーコート層が設けられ、透明電極と、配向膜が設けられた構成としている。なお、横電界方式などの液晶表示装置向けのカラーフィルタ基板では、透明電極を省いた構成がある。
【0004】
他方、カラーフィルタ基板に対向して配置されるアレイ基板は、透明基板を構造的支持体として備え、その液晶側に電極と配向膜が設けられ、その反対側に偏光膜が設けられている。そして、前記透明電極とアレイ基板側の電極との間に画素ごとに電圧を印加して光の透過・不透過を制御して、バックライトからの透過光を表示光として画面表示する。
【0005】
ブラクマトリックスは、カラーフィルタの着色画素の位置を定位置に、大きさを均一なものとして、これら各色に着色された透過光の混色を防止する。また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つ、コントラストを向上させた画像にする機能を有している。さらに、対向するアレイ基板上に設けられている液晶を駆動するTFT素子(薄膜トランジスター)の光による誤動作を防ぐために、TFT素子への光を遮蔽する機能も兼ねている。
【0006】
このブラックマトリックスは、基板上に例えばクロム(Cr)、酸化クロム(CrOX)などの金属、もしくは金属化合物を用いて薄膜を成膜し、成膜した薄膜上に、ポジ型のフォトレジストを用いてエッチングレジストパターンを形成し、次に、成膜された金属薄膜の露出部分のエッチング及びエッチングレジストパターンの剥膜を行いブラックマトリックスとして形成される。クロム(Cr)などの金属を用いて形成されたブラックマトリックスはクロム・ブラックマトリックス(以下、CrBMと称する)として広く用いられている。
【0007】
また、ブラックマトリックスには樹脂を用いて形成されたブラックマトリックスもある。これは、ブラックマトリックス形成用材料として、例えば、遮光性フォトレジスト(感光性着色樹脂組成物)を用いてフォトリソグラフィ法によって形成されたもので、樹脂ブラックマトリックス(以下、樹脂BMと称する)として近年広く使用されている。この樹脂BMは、例えば、テレビなどのように、高輝度なバックライトを用いた際に、CrBMを用いたときに起きる液晶表示装置での内部反射を抑制するために低反射の樹脂BMが要望される場合や、あるいは、例えば、IPS(In Plane Swiching)方式に用いたときに起こる液晶表示装置での電界の乱れを抑制するために、高絶縁性の樹脂BMが要望される場合などに採用される。
【0008】
上記したCrBM基板は「ガラス+CrO+Cr」等の構成で、ガラス面側は低反射であるが、膜面側(着色画素側)はCrの為、反射率が高い。航空機向け等のパネルにおいては、この反射がTFTの動作異常の原因となる。低反射にするためには、樹脂BMにすれば良いが、樹脂BMはCrBMと比べ密着性が弱く信頼性に劣る問題がある。またCrBM基板においても、「ガラス+CrO+Cr+CrO」等の両面低反射Cr基板が存在するが、特殊な構成であり材料費が高い問題がある。
【0009】
一方、近年、モバイル機器はさらに情報端末やテレビ視聴端末として用途を広げており、これらの表示装置として、より高解像度、高輝度、低消費電力であることが求められている。特に解像度に関して言えば、例えば2.4型表示画面の携帯電話で従来の解像度がQVGA(Quarter Video Graphics Array:320×240画素)であったものが、VGA(640×480画素)の解像度となった場合、透明着色画素の1画素の幅が約75μmから約25μmにまで狭くなることになる。透明着色画素、1画素の幅に占める遮光膜(ブラックマトリクス)の線幅の割合が多くなると、開口率が低下し表示画面が暗くなることから、遮光膜の線幅を出来る限り細くする必要があるが、フォトリソ工程上の限界があり、遮光膜の線幅としては5〜15μm程度で使用されることが一般的である。
【0010】
しかしながら、上記したように、CrBMを形成する場合、樹脂BMを形成する場合、いずれの場合もブラックマトリックスの形成にはフォトリソグラフィ法が用いられている。通常、略基板大のフォトマスクとフォトレジストとは、例えば、50μm〜100μm程度の間隔を保って、プロキシミティーアライナーによる近接露光方式で一括露光し、次いで現像して形成する方法である。そのため、設計通りの解像性の良好なコーナー部を有する画素を形成するため、忠実にコーナー部を再現した遮光パターンを備えるフォトマスクを介して紫外線を照射して露光しても、そのフォトマスクの遮光パターンの端部から回折光が発生し、感光性着色組成物の塗布膜がこの回折光に感光し、コーナー部の解像性が悪く、形状が丸くなってしまうという問題が生じる。これは、ネガ型フォトレジスト及びネガ型フォトレジスト用フォトマスクを用いて遮光膜を形成する場合も、ポジ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジスト用フォトマスクを用いて遮光膜を形成する場合も同様に、画素の四隅が丸みを帯びたものとなる。
【0011】
そのため、例えば、図1(a)に示した設計でパターンニングした時に、遮光膜のコーナー部の形状は、露光機での解像限界のため微細なコーナー部の再現ができず、図1(b)に示した丸みを帯びた形状となる。特に、樹脂BMの場合は、感光性着色樹脂組成物の塗布適性や高感度化の最適化のためにこの傾向が顕著であり、CrBMの場合でも樹脂BMほど顕著ではないがフォトリソグラフィ法を用いるため同じような傾向となる。図1(b)に示したようにパターンが丸まることにより、開口率が低下する。特に、開口部線幅が30μm以下の高精細品になると、この丸まりの影響により、開口率低下の影響が大きくなる。開口率の低いカラーフィルタを用いた場合、開口率の低い表示装置とならざるを得ず、バックライトの光源の光の強度を強くするなどの対応が必要となり、低消費電力化が困難となる問題がある。
【0012】
上記した従来の技術の問題点を解決するため、例えば、特許文献1には、矩形の光透過部の四隅に略三角形状の光透過部を延長する、あるいは、矩形の遮光部の四隅に略三角形状の遮光部を延長して設けたフォトマスクを使用して、四隅が直角な遮光膜を有するカラ
ーフィルタの製造方法が開示されている。しかしながら、この方法では、BM幅を狭くすることができず、また、開口部線幅も小さくすることができない。
【0013】
また、特許文献2には、直行したストライプ状のパターンを有した2つの露光マスクを用いて、露光処理を2度に分けて行うことで、樹脂BMを安定的に形成する技術が開示されている。しかしながら、この方法においてはストライプ状の露光部の交点部の現像残膜率とそれ以外のストライプ部の現像残膜率の違いにより、交点部分の角段差が高くなりすぎる問題が発生する。BM形成後に画素領域のそれぞれには透明着色層を適用するが、遮光膜の角の部分での所謂白抜けを避けるために、透明着色層を遮光層に乗り上げる形で形成することで、交点部分の角段差が増幅されることによりカラーフィルタの平坦性が損なわれる問題が発生し、場合によってはオーバーコート層等の塗布等の平坦化処理が必要になる問題がある。また、CrBMを用いた場合に比較して表示画面外周部のパネル張り合わせ時の密着性が不足する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−66589号公報
【特許文献2】特開2009−223266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記したかかる問題点に鑑みなされたもので、開口率低下が少なく、且つ、密着性が強くシール強度の高いブラックマトリックスを有するカラーフィルタとその製造方法と、カラーフィルタ基板ならびに液晶表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1に係る発明は、透明基板と、前記透明基板上に設けられたブラックマトリックスと、前記ブラックマトリックスの開口部に設けられた着色画素とを有するカラーフィルタにおいて、
前記ブラックマトリックスが、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、前記外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部と、前記ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部とを具備することを特徴とするカラーフィルタである。
【0017】
次に、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載するカラーフィルタを製造する方法であって、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含み、かつ、この工程順で製造することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
(1)透明基板上に、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、前記外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部とを形成する工程。
(2)前記金属遮光部が形成された透明基板の上に、更に、前記ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部を形成する工程。
(3)前記ストライプ状金属遮光部と前記ストライプ状樹脂遮光部とで開口が形成された前記透明基板上に着色画素を形成する工程。
【0018】
次に、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に記載するカラーフィルタと、該カラーフィルタの表面に設けられた透明電極層と、該透明電極層の表面に設けられた配向膜とを具備することを特徴とするカラーフィルタ基板である。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載するカラーフィルタと、該カラ
ーフィルタの表面に設けられた配向膜とを具備することを特徴とするカラーフィルタ基板である。
【0020】
次に、本発明の請求項5に係る発明は、請求項3または4に記載するカラーフィルタ基板を具備することを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のカラーフィルタは、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、この外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部と、前記ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部とで形成された開口に着色画素を有する構成であるため、フォトリソ方式でのパターンニングであっても、開口部パターン四隅の丸まりが防がれ、開口率が低下しない。且つ、カラーフィルタの平坦性がよく、外周部の額縁状遮光部がCr等の金属であるため樹脂BM単独に較べて密着性が強くシール強度の低下を防ぐことができる。
【0022】
本発明によれば、高精細に対応可能な開口率低下が少なく、外周部の額縁状遮光部がCr等の金属であるため樹脂BM単独に較べて密着性が強くパネルとしてのシール強度の低下を防ぐことができる。また、カラーフィルタの平坦性が良好であることから、カラーフィルタ表面に設けられる透明電極層のクラック、液晶表示装置製造のラビング工程における配向膜剥がれといった不具合を防止することができ、液晶の配向不良に起因する光漏れのない、明るい、表示特性良好な液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ブラックマトリックスの設計パターンとパターンニング後の形状を説明する模式図。
【図2】本発明のカラーフィルタが適用される、液晶表示装置の一例を断面で説明する模式図。
【図3】本発明のカラーフィルタに係る、ブラックマトリックスの一例を示す模式図。
【図4】本発明のカラーフィルタ基板の一実施形態を断面で示す模式図。
【図5】本発明のカラーフィルタ基板の一実施形態の別の一例を断面で示す模式図。
【図6】本発明の液晶表示装置の一実施形態の構成を断面で表した模式図。
【図7】本発明の液晶表示装置の一実施形態の別の一例の構成を断面で表した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のカラーフィルタの実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、以下の説明においては、同一機能を有する部分は同一の符号で説明を行う。
【0025】
図2は、本発明のカラーフィルタを適用する液晶表示装置の一実施形態での構成を断面で説明する模式図である。このカラー液晶表示装置は、カラーフィルタ基板1とアレイ基板2との間に液晶3を封入して構成される。
【0026】
本発明のカラーフィルタ10に係るカラーフィルタ基板1は、透明基板11を構造的支持体として備え、その画面観察者側には偏光膜12が積層されている。また、その反対側(背面側)は多数の画素領域に区分され、画素領域と画素領域の境界に位置する画素間部位には遮光膜(いわゆるブラックマトリックス、BMと称する)13が設けられ、画素領
域のそれぞれには透明着色層14が配置されている。透明着色層14は、画素ごとに透過光を着色するもので、一般に、光の三原色に相当する赤色(R),緑色(G),青色(B)の三色の透明着色層14R、14G、14Bを、画素ごとに配列している。さらに、必要に応じて、透明着色画素14による段差を埋めるオーバーコート層15が設けられ、透明電極16と、図示しない配向膜とが設けられた構成となっている。なお、横電界方式などの液晶表示装置向けのカラーフィルタ基板では、透明電極を省いた構成でもかまわない。
【0027】
カラーフィルタ基板1に対向して配置されるアレイ基板2は、透明基板21を構造的支持体として備え、その液晶側に図示しない電極と図示しない配向膜が設けられ、その反対側に偏光膜22が設けられている。そして、透明電極16とアレイ基板側の電極との間に画素ごとに電圧を印加して光の透過・不透過を制御して、その透過光を表示光として画面表示する。
【0028】
本発明のカラーフィルタは、ブラックマトリックスが、図3に示すように、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部13MGと、その外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部13MSと、ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部13RSとを具備することを特徴としている。
【0029】
そして、本発明のカラーフィルタは、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含み、かつ、この工程順で製造されることを特徴としている。
(1)透明基板上に、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、この外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部とを形成する工程。
(2)金属遮光部が形成された透明基板の上に、更に、上記したストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部を形成する工程。
(3)直交したストライプ状金属遮光部とストライプ状樹脂遮光部とで開口が形成された透明基板上に着色画素を形成する工程。
【0030】
まず、ガラス等の透明基板上に金属クロム膜等からなる金属薄膜を、スパッタリング法等にて形成する。次に、金属薄膜上に公知のフォトリソグラフィ法にて、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部とこの外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部を有する所定のパターンのマスクを用いて、レジストパターンを形成する。次に、形成されたレジストパターンをエッチングマスクにして、金属薄膜をエッチングする。次に、レジストパターンを剥離液で除去して、透明基板上に、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部とこの外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部とが形成される。
【0031】
次に、上記した金属遮光部が形成された基板の上に、黒色顔料を分散した感光性樹脂組成物を塗布・乾燥して遮光性感光性樹脂層を形成する。次に、前記ストライプ状の金属遮光部と直交する所定のストライプパターンを有するマスクを用いて、前記遮光性感光性樹脂層を超高圧水銀光灯ランプ等を用いて露光する。次に、炭酸ナトリウム水溶液等の現像液で現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、加熱処理して樹脂BMパターンを硬化させる。これで表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、その外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部と、ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部とで囲まれた開口を有するブラックマトリックスが透明基板上に形成される。
【0032】
上記で得られた透明基板上に、例えば赤色、緑色、あるいは青色の顔料を分散した感光性樹脂組成物を用い、前記した樹脂BMの場合と同様にフォトリソグラフィー法により着色画素を形成することで本発明のカラーフィルタが形成される。
【0033】
本発明のカラーフィルタに用いる透明基板は、可視光に対してある程度の透過率を有す
るものが好ましく、より好ましくは80%以上の透過率を有するものが好ましい。例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどの各種ガラス基板や、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等の各種プラスチック基板が挙げられる。また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0034】
本発明のカラーフィルタに係る金属遮光部は、基板上に例えばクロム(Cr)、酸化クロム(CrOX)などの金属、もしくは金属化合物を用いて、スパッタリング法等にて薄膜を成膜する。金属薄膜の膜厚は通常100nm〜200nm程度の膜厚で形成され、光学濃度(OD値)は3.5以上好ましくは3.8以上とするが、近年のバックライトの高輝度化にともない4.0以上が必要となっている。次に、成膜した薄膜上にポジ型のフォトレジストを塗布または貼り合わせて、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部とこの外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部を有する所定のパターンのマスクを用いて露光し、現像して、エッチングレジストパターンを形成する。次に、金属薄膜の露出部分のエッチングを行う。上記で形成したガラス基板を、硝酸セリウムと過塩素酸の混合液等からなるエッチング液で満たされたエッチング槽をに所定時間(60〜120秒)浸漬して次工程に送り出す。その後エッチングレジストパターンの剥膜を行うことで、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部とこの外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部を有する透明基板が得られる。
【0035】
次に、本発明のカラーフィルタに係る樹脂遮光部(樹脂BM)は、黒色顔料を分散した感光性樹脂組成物を用い、フォトリソグラフィー法により形成することができる。黒色顔料としてはカーボンブラック、黒鉛、アニリンブラックおよびシアニンブラックなどの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄などの無機顔料が挙げられるが、遮光性に優れたカーボンブラックが特に好ましい。樹脂BMの形成に用いる黒色感光性樹脂組成物中の固形分中の顔料濃度としては、35〜50質量%の範囲が好ましく、より好ましくは40〜45質量%の範囲である。この樹脂BM形成用レジストの塗液は、ディップ法、ロールコーター法、スピンコート法、ダイコーティング法、各種の印刷法などにより、前記した予め金属遮光部が形成された透明基板上に塗布し、その後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥及び硬化(プリベーク)を行なう。樹脂BMの膜厚は、1.2μmから3.0μmの間であることが好ましく、より好ましくは1.3μmから1.6μmの範囲である。樹脂BMの膜厚がこの範囲であれば、上記した黒色感光性樹脂組成物を用い、OD値が4.0〜5.0と金属クロムに匹敵する十分な遮光性を有するブラックマトリックスを形成することができる。
【0036】
こうして得られた黒色感光性樹脂組成物の塗布膜を、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアークなどの活性光の光源を用い、ストライプ状の金属遮光部と直交する所定のストライプパターンを有するマスクをを介してパターン露光し、次に、炭酸ナトリウム水溶液等の現像液で現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、加熱処理して樹脂BMパターンを硬化させる。以上のようにして、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部とこの外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部と、このストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部とで形成されたブラックマトリックスを有する透明基板が得られる。
【0037】
従来のカラーフィルタ製造工程は、高生産性でありかつ大型対応が可能であるフォトリソ法が多く用いられており、しかも露光装置はi線を主波長とする装置がほとんどである。これらの装置では、解像度は限界に達しており、さらなる高解像度には対応できなかった。半径3μmR以下のコーナー部を正確に形成するためには、より波長が短い露光光源を用いる方がよいが、露光ランプの特性上、波長を短くすると露光照度も低下するといった欠点がある。また、感光性着色組成物のもつ感光波長も光源の波長に合わせて最適化する必要があった。すなわち、半径3μmR以下のコーナー部を正確に形成することは不可能であった。
【0038】
本発明によれば、従来のフォトリソ法の高生産性などの利点を損なわず、従来の材料を用いることが可能で、コーナー部に丸まりがなく、半径1μmR以下のコーナー部を正確に形成することが可能で、開口率が高いブラックマトリックスを有した高精細なカラーフィルタを精度良く形成することができる。
【0039】
本発明のカラーフィルタにおける着色画素は、例えば赤色、緑色、あるいは青色の顔料を分散した感光性樹脂組成物を用い、上記した樹脂BMの場合と同様にフォトリソグラフィー法により形成することができる。感光性着色組成物は、その必須成分として、光重合性モノマー、樹脂バインダー、重合開始剤、着色剤(着色顔料)及び溶剤を含有するものである。また、分散剤、光増感剤、連鎖移動剤などの添加剤を含有するものであっても良い。各着色顔料としては、従来のカラーフィルタ製造に使用されている公知のものをいずれも用いることが出来る。また、カラーフィルタの分光調整のために、複数の顔料を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
着色画素の平坦部の膜厚としては、1.5〜2.5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1.6〜2.0μmの範囲である。着色画素の膜厚がこの範囲であれば、前記した樹脂BMの膜厚が1.2μmから3.0μmの間で、より好ましくは1.3μmから1.6μmの範囲であるとき、金属遮光部の厚さが100〜200nmと殆ど影響が無いため、樹脂BMの膜厚と着色画素の平坦部の膜厚との間に十分な平坦性を得ることができる。膜厚が薄い場合は樹脂BMの薄膜化が必要となり遮光性が不足する。一方、膜厚が厚い場合は着色感光性樹脂組成物のコート性が悪化してしまう。樹脂BMと着色画素との重なり幅としては、1.0〜5.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0μmの範囲である。重なり幅がこの範囲であれば、十分な平坦性を得ることが可能になる。なお、金属遮光部と着色画素との重なり幅は上記した樹脂BMと着色画素との重なりと同様でかまわないが、重なり幅がより大きくてもかまわない。
【0041】
図4に示すように、本発明のカラーフィルタ基板1は、透明基板11、透明基板11上に設けられたブラックマトリックス13、ブラックマトリックス13の開口部に設けられた着色層14(R)、14(G)、14(B)とを有するカラーフィルタ10と、このカラーフィルタ10の表面に設けられたITO等をスパッタリング法等で製膜した透明電極層16と、この透明電極層16表面に設けられた配向膜17とを有する。
【0042】
図5は、本発明のカラーフィルタ基板の一実施形態の別の一例を断面で表す模式図である。図5に示すように、このカラーフィルタ基板1は、カラーフィルタ10と配向膜17との間に透明電極層を設けないこと以外は、図4に示すカラーフィルタ基板と同様の構成を有する。
【0043】
次に、本発明の液晶表示装置は、上記いずれかのカラーフィルタ基板の、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部に、例えばスペーサー粒子(直径3.5μm)を混入したアクリルエポキシ系接着剤をシール塗布装置にて塗布し、カラーフィルタ基板中央部の表示領域に液晶を滴下したのち、カラーフィルタ基板に対向して設けられた対向基板と貼り合せ、シール剤を硬化させて液晶セルを作製し、さらに、この液晶セルとバックライトユニットを組合せ、液晶表示装置とする。
【0044】
図6は、本発明の液晶表示装置の一実施形態として、図4に示すカラーフィルタ基板と同様の構成を有するカラーフィルタ基板を用いたTN(Twisted Nematic
)方式の液晶表示装置の構成を断面で表す模式図である。ここでは、外周シール部は表示していない。
【0045】
図6に示す液晶表示装置5は、カラーフィルタ基板1と、カラーフィルタ基板1に対向して設けられ、透明電極16に対向して、基板に垂直な向きに電界をかける電極を備えた対向基板(アレイ基板)2と、カラーフィルタ基板1および対向基板2間に充填された液晶3とを具備する。カラーフィルタ基板1および対向基板2の液晶セルと反対側の主面には、例えばポリビニルアルコールにヨウ素錯体を延伸したTAC(トリアセチルセルロース)フィルム等からなる偏光板12,22が設けられている。また、この対向基板2は、透明基板21と、透明基板21上に設けられた画素電極26と、画素電極26を覆って設けられた配向膜27とを有する。液晶3は、対向基板2の配向膜27と、カラーフィルタ基板1の配向膜17の間に充填される。
【0046】
図7は、本発明の液晶表示装置の一実施形態の別の一例として、図5に示すカラーフィルタ基板と同様の構成を有するカラーフィルタ基板を用いた横電界方式(IPS:In−Plane Switching)の液晶表示装置の構成を断面で表す模式図である。ここでは、外周シール部は表示していない。
【0047】
図7に示す液晶表示装置5は、カラーフィルタ基板1と、カラーフィルタ基板1に対向して設けられ、基板に平行な向きに電界をかける電極を備えた対向基板2、カラーフィルタ基板1と対向基板2の間に充填された液晶3とを具備する。カラーフィルタ基板1および対向基板2の液晶セルと反対側の主面には、例えばポリビニルアルコールにヨウ素錯体を延伸したTAC(トリアセチルセルロース)フィルム等からなる偏光板12,22が設けられている。また、この対向基板2は、透明基板21と、透明基板21上に設けられた共通電極28と、共通電極28を覆って設けられた絶縁層27と、絶縁層27上に設けられた画素電極26とを有する。液晶3は、画素電極26が設けられた絶縁層27とカラーフィルタ基板1の配向膜17との間に配置される。
【0048】
上記した、図6及び図に例示した液晶表示装置は、いずれも開口率の低下が小さいため輝度が高い装置となりバックライトの省電力化が可能となる。。また、カラーフィルタの平坦性が良好であるため、ラビング工程における配向膜剥がれがなく、液晶の配向不良に起因する光漏れが発生することもないため良好な表示特性を示す。さらに、液晶セルの貼り合わせ部が額縁状の外周金属遮光部であるため、アクリルエポキシ系接着剤等のシール剤での貼り合わせが強く安定しており、強度低下の恐れが少ない。
【符号の説明】
【0049】
1・・・カラーフィルタ基板 11・・・透明基板 12・・・偏光膜
13・・・遮光膜(BM) 13MG・・・額縁状の外周金属遮光部
13MS・・・ストライプ状の金属遮光部 13RS・・・ストライプ状の樹脂遮光部14・・・透明着色画素 14R・・・赤色画素 14G・・・緑色画素
14B・・・青色画素 15・・・オーバーコート層 16・・・透明電極
17・・・配向膜
2・・・対向基板(アレイ基板) 21・・・透明基板 22・・・偏光膜
26・・・画素電極 27・・・絶縁層 28・・・共通電極 3・・・液晶 4・・・バックライト 5・・・液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に設けられたブラックマトリックスと、前記ブラックマトリックスの開口部に設けられた着色画素とを有するカラーフィルタにおいて、
前記ブラックマトリックスが、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、前記外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部と、前記ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部とを具備することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載するカラーフィルタを製造する方法であって、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含み、かつ、この工程順で製造することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(1)透明基板上に、表示領域を画定する額縁状の外周金属遮光部と、前記外周金属遮光部に連設したストライプ状の金属遮光部とを形成する工程。
(2)前記金属遮光部が形成された透明基板の上に、更に、前記ストライプ状の金属遮光部に直交したストライプ状の樹脂遮光部を形成する工程。
(3)前記ストライプ状金属遮光部と前記ストライプ状樹脂遮光部とで開口が形成された前記透明基板上に着色画素を形成する工程。
【請求項3】
請求項1に記載するカラーフィルタと、該カラーフィルタの表面に設けられた透明電極層と、該透明電極層の表面に設けられた配向膜とを具備することを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項4】
請求項1に記載するカラーフィルタと、該カラーフィルタの表面に設けられた配向膜とを具備することを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項5】
請求項3または4に記載するカラーフィルタ基板を具備することを特徴とする液晶表示装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−42645(P2012−42645A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182890(P2010−182890)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】