説明

カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ、および該カラーフィルタを備える表示装置

【課題】 平坦性に優れた色画素層を形成することができて、色画素層の層厚の違いによる色むらが発生するのを防止することができるカラーフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】 ブラックマトリクス5BMの開口部に色画素層を形成する色画素層形成工程は、第1充填工程、第1乾燥固化工程、第2充填工程および第2乾燥固化工程を含む。第1充填工程では、色画素層52B,51G,51Rの厚みがブラックマトリクス5BMの厚みに対して40〜70%となるような着色インクの全充填量のうちの、30〜70体積%の量である第1充填量の着色インクを開口部に充填し、第1乾燥固化工程では、開口部に充填された第1充填量の着色インクを乾燥固化させる。さらに第2充填工程では、第2充填量の着色インクを開口部に充填し、第2乾燥固化工程では、開口部に充填された第2充填量の着色インクを乾燥固化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などに用いるカラーフィルタの製造方法に関し、特には着色インクを用いて色画素層を形成するカラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ、および該カラーフィルタを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、液晶表示装置に組み込まれて表示画像をカラー化するために用いられたり、固体撮像素子に組み込まれてカラー画像を得るために用いられたりする光学素子である。このようなカラーフィルタは、透明基板上の同一平面上に互いに隣接して形成された複数の色画素層からなる着色パターンを有するものが知られている。ここで、着色パターンは、たとえば、赤色の色画素層、緑色の色画素層および青色の色画素層の3原色の色画素層から構成されており、隣接する色画素層間には遮光層となるブラックマトリクスが形成されている。各色の色画素層は各色に着色された透明な層であり、ブラックマトリックスは黒色で可視光を実質的に透過しない遮光性を有する隔壁である。
【0003】
カラーフィルタの各色画素層を形成する方法としては、フォトリソグラフィ法、印刷法およびインクジェットプリント法が知られている。
【0004】
フォトリソグラフィ法は、たとえば液晶表示装置およびプラズマ表示装置などの平面ディスプレイの製造時、または電子回路の製造時など、数μm〜100μmの精密なパターンを形成することが要求される場合に採用される。フォトリソグラフィ法では、着色感光性樹脂組成物を基板表面に塗布したのち、フォトマスクを介して露光して不要部分を現像除去する工程を繰り返し行う必要があり、パターニング精度は良好であるが、製造工程が複雑であるとともに生産性に問題がある。さらに、フォトリソグラフィ法では、カラーフィルタの大型化に伴って、大型の露光設備が必要となり、設備コストが大きくなるという問題がある。また、カラーフィルタの仕様変更毎に、露光時に使用するフォトマスクを変更する必要があり、人工石英からなる高価なフォトマスクの費用負担が増大する。また、基板表面に塗布された着色感光性樹脂組成物の不要部分を現像除去することで色画素層を形成するので、高価な着色感光性樹脂組成物の費用負担も増大する。
【0005】
印刷法としては、オフセット印刷法およびインクジェット印刷法が挙げられるが、オフセット印刷法は、カラーフィルタの大型化に伴って、大型の印刷装置および高精度の印刷版が必要となり、技術的なハードルが高い。
【0006】
そこで、製造工程の簡略化および製造コスト削減などの目的で、フォトリソグラフィ法およびオフセット印刷法の代わりに、インクジェットプリント法による色画素層の形成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。インクジェットプリント法では、遮光性を有するブラックマトリクスを隔壁として、該ブラックマトリクスの開口部にインクジェットプリント用インクを印写することにより色画素層を形成する。このようなインクジェットプリント法では、ブラックマトリクスの開口部のみにインクジェットプリント用インクを印写して色画素層を形成するので、フォトマスクを必要とせず、フォトリソグラフィ法に比べてカラーフィルタの製造コストを削減することができる。
【0007】
しかしながら、インクジェットプリント法では、ブラックマトリクスの開口部に対してインクジェットプリント用インクを印写するにあたり、インクジェットプリント用インクの固形分濃度に制約があるため、所望の層厚および着色濃度を得るには、ブラックマトリクスの開口部の容積(開口面積×隔壁高さ)に対して、数倍以上の体積のインクジェットプリント用インクを印写する必要がある。これにより、印写されたインクジェットプリント用インクが、開口部から溢れ、隔壁となるブラックマトリクスを超えて隣接する開口部に他色のインクジェットプリント用インクが侵入して「混色」が発生する。
【0008】
この「混色」の問題に対しては、たとえば、4フッ化メタンなどのフッ素化合物の雰囲気中でプラズマ処理することで、隔壁表面のみをフッ素化し、インクジェットプリント用インクに対する撥液性を増大させる方法(たとえば、特許文献2)が、また、有機ケイ素化合物または有機フッ素化合物が添加されて、インクジェットプリント用インクに対する撥液性が付与された隔壁を形成する方法(たとえば、特許文献3,4)が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−271020号公報
【特許文献2】特許第3328297号公報
【特許文献3】特開平7−35915号公報
【特許文献4】特開2006−163233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2〜4に開示される方法では、インクジェットプリント用インクに対する撥液性が付与されたブラックマトリクスを形成することができ、隣接する色画素層間における異色インクの混入により発生する混色を防止することができる。
【0011】
しかしながら、従来技術のインクジェットプリント法では、ブラックマトリクス表面と、インクジェットプリント用インクと、基板表面とにおける表面エネルギーの違いにより、ブラックマトリクスの開口部内における色画素層の表面形状が凸状および凹状になりやすく、平坦化された色画素層を形成することが困難である。このように、平坦性が悪い色画素層が形成された場合には、色画素層の層厚の違いによる色むらが発生したカラーフィルタとなり、表示品質が劣化するという問題が発生する。
【0012】
したがって本発明の目的は、平坦性に優れた色画素層を形成することができて、色画素層の層厚の違いによる色むらが発生するのを防止することができるカラーフィルタの製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、平坦性に優れた色画素層が形成されて、色画素層の層厚の違いによる色むらの発生が防止されたカラーフィルタ、および該カラーフィルタを備える表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板上に隔壁を形成する隔壁形成工程と、
溶剤中に着色剤が分散された着色インクを用いて、前記隔壁で囲まれた開口部に色画素層を形成する色画素層形成工程とを含み、
前記色画素層形成工程は、
前記開口部に充填すべき着色インクの量であって、前記色画素層の厚みが前記隔壁の高さに対して40%以上70%以下となるような着色インクの量である全充填量のうちの、30体積%以上70体積%以下の量である第1充填量の着色インクを、前記開口部に充填する第1充填工程と、
前記開口部に充填された前記第1充填量の着色インクを乾燥固化させる第1乾燥固化工程と、
前記全充填量から前記第1充填量を差し引いた残余の量である第2充填量の着色インクを、前記開口部に充填する第2充填工程と、
前記開口部に充填された前記第2充填量の着色インクを乾燥固化させる第2乾燥固化工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0014】
また本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記第1乾燥固化工程および前記第2乾燥固化工程では、熱、光および電子線から選ばれる少なくとも1つのエネルギーを利用して、含まれる全ての溶剤の沸点以上の温度下で着色インクを乾燥固化させることを特徴とする。
【0015】
また本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記第1充填量が、前記全充填量のうちの、30体積%以上50体積%以下の量であることを特徴とする。
【0016】
また本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記隔壁の高さが、2.0μm以上2.5μm以下であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、基板と、
前記基板上に形成された隔壁と、
前記隔壁で囲まれた開口部に設けられる色画素層とを含み、
前記色画素層は、その厚みが前記隔壁の高さに対して40%以上70%以下であり、かつ高低差が0.5μm未満であることを特徴とするカラーフィルタである。
また本発明は、前記カラーフィルタを備えることを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カラーフィルタの製造方法は、基板上に隔壁を形成する隔壁形成工程と、溶剤中に着色剤が分散された着色インクを用いて、隔壁で囲まれた開口部に色画素層を形成する色画素層形成工程とを含む。色画素層形成工程は、第1充填工程と、第1乾燥固化工程と、第2充填工程と、第2乾燥固化工程とを含む。
【0019】
第1充填工程では、色画素層の厚みが隔壁の高さに対して40%以上70%以下となるような着色インクの量である全充填量のうちの、30体積%以上70体積%以下の量である第1充填量の着色インクを隔壁で囲まれた開口部に充填し、第1乾燥固化工程では、開口部に充填された第1充填量の着色インクを乾燥固化させる。さらに、第2充填工程では、全充填量から第1充填量を差し引いた残余の量である第2充填量の着色インクを開口部に充填し、第2乾燥固化工程では、開口部に充填された第2充填量の着色インクを乾燥固化させる。
【0020】
色画素層を形成する色画素層形成工程が、上記のような第1充填工程、第1乾燥固化工程、第2充填工程および第2乾燥固化工程を含むことによって、平坦性に優れた色画素層を形成することができて、色画素層の層厚の違いによる色むらが発生するのを防止することができる。
【0021】
また本発明によれば、第1乾燥固化工程および第2乾燥固化工程では、熱、光および電子線から選ばれる少なくとも1つのエネルギーを利用して、含まれる全ての溶剤の沸点以上の温度下で着色インクを乾燥固化させる。これによって、開口部に充填された着色インクの溶剤などの揮発成分を充分に除去することができ、そのため、充分に乾燥固化された色画素層を形成することができる。
【0022】
また本発明によれば、第1充填工程において開口部に充填する着色インクの第1充填量は、全充填量のうちの、30体積%以上50体積%以下の量である。これによって、色画素層の平坦性を向上することができる。
【0023】
また本発明によれば、基板上に形成する隔壁の高さが、2.0μm以上2.5μm以下である。これによって、隣接する色画素層間における異色インクの混入により発生する混色を防止することができる。
【0024】
また本発明によれば、カラーフィルタは、基板と、基板上に形成された隔壁と、隔壁で囲まれた開口部に設けられる色画素層とを含む。そして、色画素層は、その厚みが隔壁の高さに対して40%以上70%以下であり、かつ高低差が0.5μm未満である。カラーフィルタは、高低差が0.5μm未満で平坦性に優れた色画素層を有しているので、色画素層の層厚の違いによる色むらの発生を防止することができる。
【0025】
また本発明によれば、表示装置は、色画素層の層厚の違いによる色むらの発生が防止された上記のカラーフィルタを備えるので、表示むらのない均一な画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の一形態に係るカラーフィルタの製造方法を示す工程図である。
【図2】ブラックマトリクス基板作製工程の手順を示す図である。
【図3A】色画素層形成工程の手順を示す図である。
【図3B】色画素層形成工程の手順を示す図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係るカラーフィルタ6の構成を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の他の形態に係るカラーフィルタ60の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、基板と、基板上に形成された隔壁と、隔壁で囲まれた開口部に設けられた色画素層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、基板上に隔壁を形成する隔壁形成工程と、溶剤中に着色剤が分散された着色インクを用いて、隔壁で囲まれた開口部に色画素層を形成する色画素層形成工程とを含むカラーフィルタの製造方法である。そして、色画素層形成工程は、色画素層の厚みが隔壁の高さに対して40%以上70%以下となるような着色インクの量である全充填量のうちの、30体積%以上70体積%以下の量である第1充填量の着色インクを開口部に充填する第1充填工程と、開口部に充填された第1充填量の着色インクを乾燥固化させる第1乾燥固化工程と、全充填量から第1充填量を差し引いた残余の量である第2充填量の着色インクを開口部に充填する第2充填工程と、開口部に充填された第2充填量の着色インクを乾燥固化させる第2乾燥固化工程とを含む。
【0028】
なお以下では、隔壁として遮光性を有するブラックマトリックスを用いる方法を例に本発明を説明するが、たとえば金属薄膜パターンをブラックマトリックスとして採用する場合には、別途樹脂製の隔壁パターンを形成することができる。
【0029】
図1は、本発明の実施の一形態に係るカラーフィルタの製造方法を示す工程図である。本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、基板上に感光性黒色樹脂組成物を用いてブラックマトリクスを形成する、隔壁形成工程であるブラックマトリクス基板作製工程と、ブラックマトリクスの開口部に色画素層を形成する色画素層形成工程とを有する。
【0030】
(ブラックマトリクス基板作製工程)
ステップs1のブラックマトリクス基板作製工程では、たとえば以下のような手順でブラックマトリクス基板を作製する。図2は、ブラックマトリクス基板作製工程の手順を示す図である。ブラックマトリクス基板7の作製は、ブラックマトリクスを形成する基材となる基板2を準備して開始される。基板2は、透明性を有するものであり、たとえば、ガラス基板、シリコン基板などのほか、樹脂基板が挙げられる。
【0031】
次に、基板2の厚み方向一表面に、感光性黒色樹脂組成物を塗布する。感光性黒色樹脂組成物は、特に限定されるものではなく、ネガ型であってもポジ型であってもよいが、遮光剤が添加されたネガ型の組成物を好適に用いることができる。遮光剤としては、カーボン、アニリンブラック、ペリレン化合物、チタンブラック、マグネタイトなどが挙げられる。
【0032】
基板2上に感光性黒色樹脂組成物を塗布する塗布装置としては、たとえば、スピンコート装置、スピンレスコート装置(スリットコート装置)、ロールコート装置、ドライフィルムレジスト積層装置などのレジスト成膜装置が利用できる。スピンコート装置を用いた場合には、感光性黒色樹脂組成物を基板2上にスピン塗布し、乾燥させることで、図2(a)に示すように、基板2上に所定の膜厚を有する感光性黒色樹脂組成物層1を形成する。スピンレスコート装置を用いた場合には、スリット状に精密加工されたノズルから感光性黒色樹脂組成物を基板2上に噴射し、乾燥させ、必要に応じて熱処理することで、基板2上に感光性黒色樹脂組成物層1を形成する。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、感光性黒色樹脂組成物層1にフォトマスク3を介して光線4を照射する。ここで、図2(b)では、感光性黒色樹脂組成物層1は、ネガ型の感光性黒色樹脂組成物を用いて形成されたものとして説明する。
【0034】
フォトマスク3は、たとえば、ガラス板31などの表面に遮光層32が設けられたものである。遮光層32によって光線4は遮蔽される。ガラス板31のうちの遮光層32が設けられていない部分は透光部33であって、光線4は透光部33を透過して感光性黒色樹脂組成物層1に照射され、感光性黒色樹脂組成物層1は、透光部33のパターンが転写されて露光される。光線4としては通常、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの紫外線が用いられる。
【0035】
なお、フォトマスク3を用いた露光に限らず、感光性黒色樹脂組成物層1に直接露光パターンを描画する直描機を用いてもよく、また感光性黒色樹脂組成物層1をレーザー加工機で加工するようにしてもよい。
【0036】
感光性黒色樹脂組成物層1に対する露光が終了すると、現像する。現像するには、露光後の感光性黒色樹脂組成物層1を現像液に接触させればよい。現像液としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶性アルカリ化合物の水溶液(アルカリ性水溶液)を用いることができる。
【0037】
現像することによって、感光性黒色樹脂組成物層1のうちの光線4が照射されなかった光線未照射領域は現像液に溶解して除去される。その一方で、光線4が照射された感光性黒色樹脂組成物層1の光線照射領域は基板2上に残り、図2(c)に示すように、基板2の表面上にブラックマトリクス(隔壁パターン)5BMが形成されたブラックマトリクス基板7が作製できる。現像処理によって感光性黒色樹脂組成物層1が溶解除去された部分が、ブラックマトリクス5BMの開口部7aとなる。
【0038】
現像処理して作製したブラックマトリクス基板7は、現像液としてアルカリ性水溶液を用いた場合には、現像処理後に水洗し、加熱処理される。加熱処理は、ブラックマトリクス5BMがインクジェットプリント用インクに対して溶解や膨潤といった変形をおこさない充分な安定性を発現するように行なう。
【0039】
なお、図2(a)に示した、感光性黒色樹脂組成物層1が形成された基板2上に、フォトレジストパターンを公知の方法で形成した後、感光性黒色樹脂組成物層1をエッチング処理することで、ブラックマトリクス基板7を作製することもできる。
【0040】
本実施形態では、ブラックマトリクス基板7は、ブラックマトリクス5BMの隔壁高さ(ブラックマトリクス5BMの膜厚)Aが、1.0μm以上5.0μm以下であり、好ましくは2.0μm以上2.5μm以下である。ブラックマトリクス5BMの隔壁高さAが1.0μm未満では、色再現に必要な色濃度を達成するのに充分な量の着色インクをブラックマトリクス5BMの開口部7aに充填することができず、好ましくない。隔壁高さAが5.0μmを超えると、高精度の隔壁パターンが形成されたブラックマトリクス基板7を作製するのが困難となるばかりでなく、該ブラックマトリクス基板7を用いてカラーフィルタを製造した場合、色画素層と隔壁との段差が大きくなるため液晶セルの設計が困難となり、好ましくない。
【0041】
また、本実施形態では、ブラックマトリクス基板7のブラックマトリクス5BMにおける隔壁の幅寸法Bは、10μm以上30μm以下に設定されている。また、隔壁に囲まれた領域であるブラックマトリクス5BMの開口部7a、すなわち、色画素層が形成される光透過領域は、たとえば矩形状であり、その開口部7aの短辺の長さCは60μm以上250μm以下、好ましくは60μm以上200μm以下に設定されている。
【0042】
また、ブラックマトリクス基板7のブラックマトリクス5BMが、撥インク性(色画素層形成時に用いる着色インクに対する撥液性)を有するようにしてもよい。撥インク性を有するブラックマトリクス5BMが形成されたブラックマトリクス基板7は、長鎖アルキル基またはフルオロアルキル基を有する化合物が添加された感光性黒色樹脂組成物を用いることにより作製することができる。また、ブラックマトリクス基板7を、フッ素化合物の雰囲気中でプラズマ処理することにより、ブラックマトリクス5BMに撥インク性を付与することができる。
【0043】
(色画素層形成工程)
ステップs2の色画素層形成工程では、ブラックマトリクス基板7におけるブラックマトリクス5BMの開口部7aに、インクジェットプリント方式により着色インクを印写して色画素層を形成する。色画素層は、赤色の色画素層、緑色の色画素層および青色の色画素層の3原色の色画素層から構成されている。
【0044】
図3Aおよび図3Bは、色画素層形成工程の手順を示す図である。色画素層形成工程は、第1充填工程と、第1乾燥固化工程と、第2充填工程と、第2乾燥固化工程とを含む。
【0045】
色画素層形成に使用する着色インクは、溶剤中に着色剤が分散されたものである。具体的には、着色インクは、溶剤、着色剤、重合性化合物、重合開始剤、さらに必要に応じてバインダー樹脂などの樹脂成分、その他の添加剤を混合して調整される。この混合物をロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミルおよびビーズミルなどの分散機を用いて分散させ、その後濾過を行うことによって着色インクを得ることができる。
【0046】
以下、着色インクを構成する各成分について説明する。溶剤としては、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテートなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などを例示することができる。溶剤は、比較的高い沸点、たとえば180℃以上の沸点を有することが好ましい。
【0047】
着色剤は、染料であってもよいし顔料であってもよいが、高い色濃度と透過率、耐熱性および耐光性を有することが必要であり、顔料が好ましく用いられる。着色剤が顔料の場合、無機顔料であってもよいし、有機顔料であってもよい。具体的には、着色剤として、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。
【0048】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー214などが挙げられる。
【0049】
オレンジ色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ42、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ65、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73などが挙げられる。
【0050】
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド265などが挙げられる。
【0051】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0052】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38などが挙げられる。
【0053】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37などが挙げられる。茶色顔料としては、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25などが挙げられる。黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7などが挙げられる。
【0054】
これら顔料の中でも、好ましい顔料としては、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0055】
これらの有機顔料および無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機顔料および無機顔料のうち、有機顔料は必要に応じて、ロジン処理、酸性基または塩基性基が導入された顔料誘導体などを用いた表面処理、高分子化合物などによる顔料表面へのグラフト処理、硫酸微粒化法などによる微粒化処理、あるいは不純物を除去するための有機溶剤や水などによる洗浄処理が施されていてもよい。
【0056】
着色剤の使用量は、着色インクを構成する重合性化合物(反応性希釈剤を使用する場合はそれを含む)およびバインダー樹脂の合計量100重量部に対して、5重量部以上40重量部以下、好ましくは10重量部以上30重量部以下である。
【0057】
次に、重合性化合物について説明する。重合性化合物とは、光重合開始剤または熱の作用で発生する活性ラジカルや酸などによって重合し得る化合物であって、たとえば重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられる。重合性化合物は、重合性の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーであってもよいし、これらのモノマーの重合物で未だ重合性が維持されているオリゴマーであってもよい。重合性化合物は、単官能の化合物であってもよいし、2官能以上の多官能化合物であってもよい。また、重合性化合物には、比較的低粘度の反応性モノマーを反応性希釈剤として配合することも可能である。
【0058】
単官能重合性化合物としては、たとえば、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。2官能重合性化合物としては、たとえば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3官能以上の重合性化合物としては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも好ましい重合性化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0059】
これらの重合性化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、2官能以上の重合性化合物が好ましく用いられ、2種以上の重合性化合物を用いる場合には、少なくとも1種は2官能以上の重合性化合物とすることが好ましい。重合性化合物の使用量は、着色インクを構成する重合性化合物(反応性希釈剤を使用する場合はそれを含む)およびバインダー樹脂の合計量100重量部あたり、通常は0.1重量部以上95重量部以下、好ましくは1重量部以上70重量部以下である。
【0060】
以上のような重合性化合物に加えて、反応性希釈剤を配合することもできる。反応性希釈剤とは、先にも述べたとおり、重合性炭素−炭素不飽和結合を有する比較的低粘度の化合物であって、一般には、二重結合からなる反応基を分子末端に1個以上持っている。
【0061】
先の重合性化合物の例と一部重複するが、反応性希釈剤となりうる化合物の例を、以下に掲げる。単官能の反応性希釈剤として、たとえば、カプロラクトンアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸などが挙げられる。
【0062】
2官能の反応性希釈剤として、たとえば、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレートなどが挙げられる。
【0063】
3官能の反応性希釈剤として、たとえば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレートなどが挙げられる。
【0064】
さらに、4官能の反応性希釈剤として、たとえば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが、5官能の反応性希釈剤として、たとえば、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートなどが、6官能の反応性希釈剤として、たとえば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどがそれぞれ挙げられる。
【0065】
また、3官能以上の反応性希釈剤として、ポリエステルアクリレートを使用することもできる。ポリエステルアクリレート系の反応性希釈剤(オリゴマー)として、たとえば、アロニックス M−1700、M−8030、M8060(いずれも商品名、東亞合成製)などを例示することができる。先に説明した重合性化合物が2官能以上であることが望ましいのと同様に、反応性希釈剤も2官能以上であることが望ましい。また、エチレンオキサイド付加物や、プロピレンオキサイド付加物の場合は、その重合モル数は任意に選択することが可能である。
【0066】
次に重合開始剤について説明する。重合開始剤は、着色したカラーインクを硬化させるために、添加される。重合開始剤の例として、光または熱によって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤が挙げられ、たとえば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、およびトリアジン系化合物などがこれに該当する。
【0067】
アセトフェノン系化合物としては、たとえば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0068】
ベンゾイン系化合物としては、たとえば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0069】
ベンゾフェノン系化合物としては、たとえば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0070】
チオキサントン系化合物としては、たとえば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0071】
トリアジン系化合物としては、たとえば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、および2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0072】
その他、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオフェニル)]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)や、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などのオキシムエステルなどを、活性ラジカル発生剤として用いることもできる。好適な活性ラジカル発生剤として、アセトフェノン系光重合開始剤であるイルガキュア907、オキシムエステル系光重合開始剤であるイルガキュアOXE 01(いずれも商品名、Ciba Specialty Chemicals社製)などが挙げられる。
【0073】
加熱により硬化させるときは、熱重合開始剤を用いることもできる。熱重合開始剤としては、アゾ系化合物、およびパーオキサイド系化合物などが挙げられる。アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルヴァレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチル−2,4−ジメチルヴァレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−2(プロペニル)−2−メチル−プロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ重合開始剤(和光純薬工業から販売されているVPSシリーズ)、およびポリエチレングリコールユニット含有高分子重合開始剤(和光純薬工業から販売されているVPEシリーズ)などが挙げられる。
【0074】
パーオキサイド化合物としては、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカルボネート、およびパーオキシエステルが挙げられる。パーオキシエステルとしては、t−ブチル−パーオキシ−ラクテート(日本油脂製のパーブチルL)、t−ブチル−パーオキシ−3,5,5−トリメチル−ヘキサノエート(日本油脂製のパーブチル355)、t−ヘキシル−パーオキシ−イソプロピル−モノカルボネート(日本油脂製のパーヘキシルI)などが挙げられる。
【0075】
これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、着色インクを構成する重合性化合物(反応性希釈剤を使用する場合はそれを含む)およびバインダー樹脂の合計量100重量部に対して、通常1重量部以上30重量部以下、好ましくは3重量部以上20重量部以下である。
【0076】
また、着色インクは、バインダー樹脂を含有するのが好ましい。上記した重合性化合物、あるいはそれに加えて反応性希釈剤の硬化により充分な硬化物を与える場合には、バインダー樹脂は必ずしも必要でないが、多くの場合、バインダー樹脂を配合することによって、より強固で、カラーフィルタとして好適な硬化物を与える。バインダー樹脂は、予め重合されたものであり、その例として、自ら重合性を有しない非重合性バインダー樹脂、または非重合性バインダー樹脂に重合性を有する置換基を導入した重合性バインダー樹脂が挙げられる。非重合性バインダー樹脂として、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリル樹脂、エポキシ(メタ)アクリル樹脂などを挙げることができる。ただし、カラーフィルタ用途として好適な硬化物を与えるバインダー樹脂であれば、上記例示に限定されるものではない。
【0077】
バインダー樹脂の使用量は、着色インクを構成する重合性化合物(反応性希釈剤を使用する場合はそれを含む)およびバインダー樹脂の合計量100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
【0078】
その他の添加剤としては、たとえば、充填剤、バインダー樹脂以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、および硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、たとえば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。密着促進剤としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0079】
<第1充填工程>
ステップs2−(a)の第1充填工程では、ブラックマトリクス基板7に形成されたブラックマトリクス5BMの開口部7aに充填すべき着色インクの量であって、色画素層の厚みがブラックマトリクス5BMの隔壁高さに対して40%以上70%以下となるような着色インクの量である全充填量のうちの、30体積%以上70体積%以下、好ましくは30体積%以上50体積%以下の量である第1充填量の着色インクを、ブラックマトリクス5BMの開口部7aに充填する。
【0080】
具体的には、図3A(a)に示すように、形成する色画素層の各色に対応して、インクジェットプリント用ヘッド10R,10G,10Bを用いて、第1充填量の各色の着色インク11R,11G,11Bをブラックマトリクス5BMの所定の開口部7aに印写する。インクジェットプリント用ヘッドとしては、特に限定されないが、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電方式などの公知のヘッドが用いられ、特にピエゾ方式が好ましい。
【0081】
<第1乾燥固化工程>
ステップs2−(b)の第1乾燥固化工程では、ブラックマトリクス5BMの所定の開口部7aに印写された第1充填量の各色の着色インク11R,11G,11Bを乾燥固化させる。これによって、図3A(b)に示すように、各色インクが印写されたブラックマトリクス5BMの開口部7aに対応して、赤色の第1色画素層5R、緑色の第1色画素層5Gおよび青色の第1色画素層5Bが形成される。
【0082】
着色インク11R,11G,11Bを乾燥固化させる方法としては、特に限定されるものではなく、熱、光および電子線から選ばれる少なくとも1つのエネルギーを利用すればよい。また、第1乾燥固化工程では、着色インク11R,11G,11Bに含まれる全ての溶剤の沸点以上の温度下で乾燥固化させるのが好ましい。これによって、ブラックマトリクス5BMの開口部7aに充填された着色インク11R,11G,11Bに含有される揮発成分を充分に除去することができ、そのため、充分に乾燥固化された第1色画素層5R,5G,5Bを形成することができる。したがって、後述の第2充填工程において、第1色画素層5R,5G,5B上に着色インクを印写したときに、印写の衝撃による着弾痕が発生するのを防止することができる。
【0083】
また、ブラックマトリクス5BMの開口部7aに形成された第1色画素層5R,5G,5Bは、第1充填量の各色の着色インクを乾燥固化して形成されたものである。着色インクの第1充填量を全量に対して30%以上とすることによって、充填不足による白抜けなどの画素欠陥が発生するのを防止することができる。また、着色インクの第1充填量を全量に対して70%以下、好ましくは50%以下とすることによって、第1乾燥固化工程における着色インクの体積減量が大きくなり過ぎるのを防止することができ、平坦性に優れた第1色画素層5R,5G,5Bを形成することができる。
【0084】
<第2充填工程>
ステップs2−(c)の第2充填工程では、着色インクの全充填量から第1充填量を差し引いた残余の量である第2充填量の着色インクを、第1色画素層5R,5G,5Bが形成されたブラックマトリクス5BMの開口部7aに充填する。具体的には、図3B(c)に示すように、インクジェットプリント用ヘッド10R,10G,10Bを用いて、第2充填量の各色の着色インク11R,11G,11Bを、第1色画素層5R,5G,5Bが形成されたブラックマトリクス5BMの所定の開口部7aに印写する。
【0085】
<第2乾燥固化工程>
ステップs2−(d)の第2乾燥固化工程では、ブラックマトリクス5BMの所定の開口部7aに印写された第2充填量の各色の着色インク11R,11G,11Bを乾燥固化させる。これによって、図3B(d)に示すように、各色インクが印写されたブラックマトリクス5BMの開口部7aに対応して、赤色の色画素層51R、緑色の色画素層51Gおよび青色の色画素層51Bが形成される。なお、第2乾燥固化工程では、第1乾燥固化工程と同様に、着色インク11R,11G,11Bに含まれる全ての溶剤の沸点以上の温度下で乾燥固化させるのが好ましい。これによって、ブラックマトリクス5BMの開口部7aに充填された着色インク11R,11G,11Bに含有される揮発成分を充分に除去することができ、そのため、充分に乾燥固化された色画素層51R,51G,51Bを形成することができる。
【0086】
以上のように、色画素層51R,51G,51Bを形成する色画素層形成工程が、上記のような第1充填工程、第1乾燥固化工程、第2充填工程および第2乾燥固化工程を含むことによって、平坦性に優れた色画素層51R,51G,51Bを形成することができ、これによって色画素層51R,51G,51Bの層厚の違いによる色むらが発生するのを防止することができる。
【0087】
第2乾燥固化工程の後、必要に応じて透明保護膜、透明電極などを形成し、さらに必要に応じてスペーサ構造を形成したのちカラーフィルタとして完成する。
【0088】
なお、本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、エレクトロルミネッサンス表示装置を製造する場合にも適用できる。エレクトロルミネッサンス表示装置は、基板上に、複数の色素子層と、隣接する色素子層間に位置する隔壁とを有する。この色素子層を形成するときに、インクを任意の比率で複数回に分けて、隔壁に囲まれた開口部に充填するようにすればよい。
【0089】
図4は、本発明の実施の一形態に係るカラーフィルタ6の構成を概略的に示す図である。本実施形態のカラーフィルタ6は、前述したカラーフィルタの製造方法によって製造することができる。
【0090】
カラーフィルタ6は、3原色の色画素層51R,51G,51Bから構成される着色パターン51と、隣接する色画素層間に位置する隔壁となるブラックマトリクス5BMとが、基板2上に形成されたものである。なお、カラーフィルタ6は、正方形状に形成されたブラックマトリクス5BMの開口部に対応して各色の色画素層51R,51G,51Bが形成されたものである。
【0091】
本実施形態のカラーフィルタ6において、色画素層51R,51G,51Bは、図4(b)に示すように、その厚みDが、ブラックマトリクス5BMの隔壁高さAに対して40%以上70%以下であり、かつ高低差が0.5μm未満である。
【0092】
色画素層51R,51G,51Bの厚みDが、ブラックマトリクス5BMの隔壁高さAに対して40%以上であることによって、白抜けなどの画素欠陥が発生するのを防止することができる。また、色画素層51R,51G,51Bの厚みDが、ブラックマトリクス5BMの隔壁高さAに対して70%以下であることによって、高低差が0.5μm未満の平坦性に優れた色画素層51R,51G,51Bとなる。
【0093】
図5は、本発明の実施の他の形態に係るカラーフィルタ60の構成を概略的に示す図である。本実施形態のカラーフィルタ60は、前述したカラーフィルタの製造方法によって製造することができる。
【0094】
カラーフィルタ60は、上記カラーフィルタ6と類似した構成である。カラーフィルタ60は、3原色の色画素層51R,51G,51Bから構成される着色パターン51と、隣接する色画素層間に位置する隔壁となるブラックマトリクス5BMとが、基板2上に形成されたものである。カラーフィルタ60では、長方形状に形成されたブラックマトリクス5BMの開口部に対応して各色の色画素層51R,51G,51Bが形成されたものである。
【0095】
本実施形態のカラーフィルタ60において、色画素層51R,51G,51Bは、図5(b)に示すように、その厚みDが、ブラックマトリクス5BMの隔壁高さAに対して40%以上70%以下であり、かつ高低差が0.5μm未満である。これによって、カラーフィルタ60は、白抜けなどの画素欠陥が発生するのを防止することができるとともに、色画素層51R,51G,51Bの層厚の違いによる色むらの発生を防止することができる。
【0096】
また本発明のさらに他の実施の形態として、カラーフィルタ6,60を備える表示装置を提供することも可能である。表示装置は、色画素層の層厚の違いによる色むらの発生が防止された本発明に係るカラーフィルタ6,60を備えるので、表示むらのない均一な画像を表示することができる。表示装置としては、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッサンス表示装置、蛍光表示装置、電解放射型表示装置を挙げることができる。
【0097】
(実施例)
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
<ブラックマトリクス基板作製工程>
ブラックマトリクス基板は、ネガ型樹脂ブラックマトリクス材料(商品名:XK−L304SF、住友化学株式会社製)を用いて、ガラスから成る透明基板上に、ポストベイク後の最終的な膜厚(隔壁高さ)が2.3μmとなるようにスピンコート塗工する。次いで、フォトマスクを介して露光量200mJ/cmでパターニング露光した後、90℃で110秒間のプリベークを行う。その後、0.5%水酸化カリウム(KOH)水溶液からなる現像液を用いて温度24℃で現像し、パターンを形成する。さらに、室温から230℃まで1時間で昇温し、同温度で20分間維持するポストベイクを行うことで、ブラックマトリクスが形成される。ブラックマトリクスの開口部の寸法は、測長器(商品名:UMIC、ソキア社製)で測定することができ、短辺が108μm、長辺が407μmの矩形とした。
【0099】
色画素層形成に使用する着色インクは、以下に示す各成分(a1)〜(a4)を混合し、3本ロールとビーズミルを用いて分散させることにより調製した。
(a1)顔料 5〜30部
(a2)分散剤 1〜20部
(a3)アクリル樹脂 0〜20部
(a4)溶剤 0〜70部
【0100】
なお、溶剤は、DPMA、BDG、EDGAC、PGMEおよびNBAの混合物である。DPMAはジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点209℃)を示し、BDGはジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)を示し、EDGACはジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)を示し、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)を示し、NBAはn−ブチルアセテート(沸点126℃)を示す。
【0101】
<第1充填工程>
色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.3μm)に対して43.5%となるような着色インクの全充填量のうちの、30体積%の量である第1充填量の着色インクを、インクジェットプリント方式でブラックマトリクスの開口部に印写した。なお、着色インクの前記全充填量は、厚み1.0μmの色画素層を形成可能な量である。
【0102】
<第1乾燥固化工程>
235℃の温度下で20分間ポストベイク処理して溶剤を完全に除去し、ブラックマトリクスの開口部に充填された第1充填量の着色インクを乾燥固化させ、第1色画素層を形成した。
【0103】
<第2充填工程>
全充填量から第1充填量を差し引いた残余の第2充填量(全量に対して70%の量)の着色インクを、インクジェットプリント方式で、第1色画素層が形成されたブラックマトリクスの開口部に印写した。
【0104】
<第2乾燥固化工程>
235℃の温度下で20分間ポストベイク処理して溶剤を完全に除去し、ブラックマトリクスの開口部に充填された第2充填量の着色インクを乾燥固化させ、色画素層を形成した。
以上の各工程を経て、実施例1のカラーフィルタを得た。
【0105】
(実施例2)
第1充填工程において、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.3μm)に対して52.2%となるような着色インクの全充填量のうちの、30体積%の量である第1充填量の着色インクを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のカラーフィルタを得た。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.2μmの色画素層を形成可能な量である。
【0106】
(実施例3)
第1充填工程において、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.3μm)に対して60.9%となるような着色インクの全充填量のうちの、30体積%の量である第1充填量の着色インクを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のカラーフィルタを得た。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.4μmの色画素層を形成可能な量である。
【0107】
(実施例4)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して45体積%とし、第2充填量を全充填量に対して55体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のカラーフィルタを得た。
【0108】
(実施例5)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して45体積%とし、第2充填量を全充填量に対して55体積%としたこと以外は実施例2と同様にして、実施例5のカラーフィルタを得た。
【0109】
(実施例6)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して45体積%とし、第2充填量を全充填量に対して55体積%としたこと以外は実施例3と同様にして、実施例6のカラーフィルタを得た。
【0110】
(実施例7)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して50体積%とし、第2充填量を全充填量に対して50体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のカラーフィルタを得た。
【0111】
(実施例8)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して50体積%とし、第2充填量を全充填量に対して50体積%としたこと以外は実施例2と同様にして、実施例8のカラーフィルタを得た。
【0112】
(実施例9)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して50体積%とし、第2充填量を全充填量に対して50体積%としたこと以外は実施例3と同様にして、実施例9のカラーフィルタを得た。
【0113】
(実施例10)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して70体積%とし、第2充填量を全充填量に対して30体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のカラーフィルタを得た。
【0114】
(実施例11)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して70体積%とし、第2充填量を全充填量に対して30体積%としたこと以外は実施例2と同様にして、実施例11のカラーフィルタを得た。
【0115】
(実施例12)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して70体積%とし、第2充填量を全充填量に対して30体積%としたこと以外は実施例3と同様にして、実施例12のカラーフィルタを得た。
【0116】
(実施例13)
ブラックマトリクス基板作製工程において、ブラックマトリクスの隔壁高さを2.0μmとした。そして、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.0μm)に対して50%となるような着色インクの全充填量に対して、第1充填量が50体積%、第2充填量が50体積%とした。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.0μmの色画素層を形成可能な量である。これらのこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のカラーフィルタを得た。
【0117】
(実施例14)
着色インクの全充填量を、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.0μm)に対して60%となる量としたこと以外は実施例13と同様にして、実施例14のカラーフィルタを得た。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.2μmの色画素層を形成可能な量である。
【0118】
(実施例15)
着色インクの全充填量を、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.0μm)に対して70%となる量としたこと以外は実施例13と同様にして、実施例15のカラーフィルタを得た。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.4μmの色画素層を形成可能な量である。
【0119】
(実施例16)
ブラックマトリクス基板作製工程において、ブラックマトリクスの隔壁高さを2.5μmとした。そして、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.5μm)に対して40%となるような着色インクの全充填量に対して、第1充填量が50体積%、第2充填量が50体積%とした。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.0μmの色画素層を形成可能な量である。これらのこと以外は実施例1と同様にして、実施例16のカラーフィルタを得た。
【0120】
(実施例17)
着色インクの全充填量を、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.5μm)に対して48%となる量としたこと以外は実施例16と同様にして、実施例17のカラーフィルタを得た。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.2μmの色画素層を形成可能な量である。
【0121】
(実施例18)
着色インクの全充填量を、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.5μm)に対して56%となる量としたこと以外は実施例16と同様にして、実施例18のカラーフィルタを得た。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.4μmの色画素層を形成可能な量である。
【0122】
(比較例1)
第1乾燥固化工程において、ポストベイク処理時の温度を70℃としたこと以外は実施例7と同様にして、比較例1のカラーフィルタを得た。なお、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層は、充分に乾燥固化されていなかった。
【0123】
(比較例2)
第1乾燥固化工程において、ポストベイク処理時の温度を70℃としたこと以外は実施例8と同様にして、比較例2のカラーフィルタを得た。なお、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層は、充分に乾燥固化されていなかった。
【0124】
(比較例3)
第1乾燥固化工程において、ポストベイク処理時の温度を70℃としたこと以外は実施例9と同様にして、比較例3のカラーフィルタを得た。なお、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層は、充分に乾燥固化されていなかった。
【0125】
(比較例4)
第1乾燥固化工程において、ポストベイク処理時の温度を160℃としたこと以外は実施例7と同様にして、比較例4のカラーフィルタを得た。なお、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層は、充分に乾燥固化されていなかった。
【0126】
(比較例5)
第1乾燥固化工程において、ポストベイク処理時の温度を160℃としたこと以外は実施例8と同様にして、比較例5のカラーフィルタを得た。なお、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層は、充分に乾燥固化されていなかった。
【0127】
(比較例6)
第1乾燥固化工程において、ポストベイク処理時の温度を160℃としたこと以外は実施例9と同様にして、比較例6のカラーフィルタを得た。なお、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層は、充分に乾燥固化されていなかった。
【0128】
(比較例7)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して20体積%とし、第2充填量を全充填量に対して80体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例7のカラーフィルタを得た。
【0129】
(比較例8)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して20体積%とし、第2充填量を全充填量に対して80体積%としたこと以外は実施例2と同様にして、比較例8のカラーフィルタを得た。
【0130】
(比較例9)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して20体積%とし、第2充填量を全充填量に対して80体積%としたこと以外は実施例3と同様にして、比較例9のカラーフィルタを得た。
【0131】
(比較例10)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して80体積%とし、第2充填量を全充填量に対して20体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例10のカラーフィルタを得た。
【0132】
(比較例11)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して80体積%とし、第2充填量を全充填量に対して20体積%としたこと以外は実施例2と同様にして、比較例11のカラーフィルタを得た。
【0133】
(比較例12)
着色インクの第1充填量を全充填量に対して80体積%とし、第2充填量を全充填量に対して20体積%としたこと以外は実施例3と同様にして、比較例12のカラーフィルタを得た。
【0134】
(比較例13)
第1充填工程において用いた着色インクの量を全充填量とし、第2充填工程および第2乾燥固化工程を省略したこと以外は実施例1と同様にして、比較例13のカラーフィルタを得た。
【0135】
(比較例14)
第1充填工程において用いた着色インクの量を全充填量とし、第2充填工程および第2乾燥固化工程を省略したこと以外は実施例2と同様にして、比較例14のカラーフィルタを得た。
【0136】
(比較例15)
第1充填工程において用いた着色インクの量を全充填量とし、第2充填工程および第2乾燥固化工程を省略したこと以外は実施例3と同様にして、比較例15のカラーフィルタを得た。
【0137】
(比較例16)
着色インクの全充填量を、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(2.3μm)に対して30.4%となる量とした。そして、着色インクの第1充填量を全充填量に対して50体積%とし、第2充填量を全充填量に対して50体積%とした。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み0.7μmの色画素層を形成可能な量である。これらのこと以外は実施例1と同様にして、比較例16のカラーフィルタを得た。
【0138】
(比較例17)
ブラックマトリクス基板作製工程において、ブラックマトリクスの隔壁高さを1.6μmとした。そして、色画素層の厚みがブラックマトリクスの隔壁高さ(1.6μm)に対して75%となるような着色インクの全充填量に対して、第1充填量が50体積%、第2充填量が50体積%とした。なお、この場合の着色インクの全充填量は、厚み1.2μmの色画素層を形成可能な量である。これらのこと以外は実施例1と同様にして、比較例17のカラーフィルタを得た。
【0139】
実施例1〜18および比較例1〜17のカラーフィルタについて、白抜け、着弾痕、平坦性を評価した。
【0140】
<白抜け>
カラーフィルタの色画素層について目視観察および顕微鏡観察を行い、ブラックマトリクスの開口部に対する着色インクのインク充填状況、隣接する色画素層間の混色の有無を評価した。インク充填状況として、カラーフィルタの全面に対して白抜けの発生がない場合を良好「○」とし、白抜けの発生がある場合を不良「×」とした。
【0141】
<着弾痕>
カラーフィルタの色画素層について目視観察および顕微鏡観察を行い、着色インクの印写時の衝撃による着弾痕の有無を評価した。カラーフィルタの全面に対して着弾痕の発生がない場合を良好「○」とし、着弾痕の発生がある場合を不良「×」とした。
【0142】
<平坦性>
平坦性は、白色干渉型三次元顕微鏡(商品名:New View5000、Zygo社製)を用いて色画素層の表面状態を計測し、カラーフィルタ上面からみたときの色画素層の高低差(μm)として評価した。色画素層における高低差が0.5μm未満であれば平坦性は良好であり、高低差が0.5μm以上であれば平坦性は不良である。
【0143】
実施例1〜18および比較例1〜17のカラーフィルタについて、白抜け、着弾痕、平坦性の評価結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1から明らかなように、実施例1〜18のカラーフィルタは、白抜けおよび着弾痕の発生がなく、かつ優れた平坦性を有する色画素層が形成されている。
【0146】
これに対して、比較例1〜6のカラーフィルタは、第1乾燥固化工程後に得られた第1色画素層が充分に乾燥固化されていなかったので、カラーフィルタの全面に着弾痕が発生し、平坦性についても測定不能なほど悪いものであった。
【0147】
比較例7〜9,16のカラーフィルタは、第1充填工程における着色インクの第1充填量が不十分であるので、カラーフィルタの全面に白抜けが発生し、平坦性についても測定不能なほど悪いものであった。
【0148】
比較例10〜15,17のカラーフィルタは、第1充填工程における着色インクの第1充填量が多過ぎるので、色画素層が大きな凸形状となり、良好な平坦性が得られなかった。
【符号の説明】
【0149】
1 感光性黒色樹脂組成物層
2 基板
3 フォトマスク
4 光線
5 第1着色パターン
5B,5G,5R 第1色画素層
5BM ブラックマトリクス
6,60 カラーフィルタ
7 ブラックマトリクス基板
51B,51G,51R 色画素層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に隔壁を形成する隔壁形成工程と、
溶剤中に着色剤が分散された着色インクを用いて、前記隔壁で囲まれた開口部に色画素層を形成する色画素層形成工程とを含み、
前記色画素層形成工程は、
前記開口部に充填すべき着色インクの量であって、前記色画素層の厚みが前記隔壁の高さに対して40%以上70%以下となるような着色インクの量である全充填量のうちの、30体積%以上70体積%以下の量である第1充填量の着色インクを、前記開口部に充填する第1充填工程と、
前記開口部に充填された前記第1充填量の着色インクを乾燥固化させる第1乾燥固化工程と、
前記全充填量から前記第1充填量を差し引いた残余の量である第2充填量の着色インクを、前記開口部に充填する第2充填工程と、
前記開口部に充填された前記第2充填量の着色インクを乾燥固化させる第2乾燥固化工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記第1乾燥固化工程および前記第2乾燥固化工程では、熱、光および電子線から選ばれる少なくとも1つのエネルギーを利用して、含まれる全ての溶剤の沸点以上の温度下で着色インクを乾燥固化させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記第1充填量が、前記全充填量のうちの、30体積%以上50体積%以下の量であることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記隔壁の高さが、2.0μm以上2.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に形成された隔壁と、
前記隔壁で囲まれた開口部に設けられる色画素層とを含み、
前記色画素層は、その厚みが前記隔壁の高さに対して40%以上70%以下であり、かつ高低差が0.5μm未満であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−180530(P2011−180530A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47050(P2010−47050)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】