説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】インクジェット方式でありながら、着色層に片寄りが生じることがないカラーフィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】カラーフィルタ用基板を形成するカラーフィルタ用基板形成工程、着色層形成用塗工液塗布工程、減圧乾燥工程、プリベイク工程、およびポストベイク工程、を有するカラーフィルタの製造方法において、前記プリベイク工程では、プリベイクする温度をT(℃)とし、プリベイクする時間をt(min)とした場合、(条件1)t<−T+120と、(条件2)60<T<120を満たすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶ディスプレイは、低消費電力、省スペース等の利点から、パーソナルコンピュータのモニター、携帯電話のディスプレイ等の用途で使用される他、従来のブラウン管テレビに替わって液晶テレビにも使用されている。このようなカラー液晶ディスプレイが普及するにあたりコストダウンは重要であり、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタのコストダウンの要請が高い。
【0003】
カラーフィルタにあっては、通常赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、GおよびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0004】
当該カラーフィルタの従来の製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0006】
さらに他の方法としては、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、いずれの方法も、R、G、およびBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。なお、近年は、R、GおよびBの3色に加え、黄色(Y)や他の中間色を加えた3色以上のカラーフィルタも登場しており、これら多色のカラーフィルタを製造する場合には、上記の問題はさらに顕著化する。
【0008】
これらの問題を解決したカラーフィルタの製造方法として、インクジェット方式で着色インクを吹き付けして着色層(画素部)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1や2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−266405号公報
【特許文献2】特開2008−076693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、インクジェット方式によってカラーフィルタを製造する場合、R、GおよびBなどの各色の着色インクを吹き付けた後、これらの着色インクを同時に硬化するため、各着色インクに含有されている樹脂の種類が異なっていると、着色インク毎に硬化温度が異なってしまい、最終的に形成される着色層に片寄りが生じてしまうことがあった。
【0011】
したがって、現在において着色層の片寄りを防止するためには、インクジェット方式で用いられている着色インクにあっては、R、GおよびBなどの各色にわたって共通の樹脂を用いることが最も効果的であると考えられている。共通の樹脂であれば、すべての着色インクの硬化温度が同じとなるためである。しかしながら、各着色インクに含有される樹脂を共通とすることは、それだけ樹脂の選択の自由度が少なくなり、ノズルからの吐出性能や色再現性能の向上を図ることが難しくってしまう。
【0012】
前記特許文献2にあっては、上記の問題に着目はしているものの当該問題を解決しきれてはいない。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、インクジェット方式でありながら、着色層に片寄りが生じることがないカラーフィルタの製造方法を提供すること、さらには、GおよびBなどの各色にわたって共通の樹脂を用いることなく、各色毎に吐出性能や色再現性能の向上の観点から自由に樹脂を選択してもなお、着色層に片寄りが生じることがないカラーフィルタの製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、着色層を形成するための着色層形成用領域を有するカラーフィルタ用基板を形成するカラーフィルタ用基板形成工程と、前記カラーフィルタ用基板の前記着色層形成用領域上に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布する着色層形成用塗工液塗布工程と、前記塗布された着色層形成用塗工液を減圧乾燥させる減圧乾燥工程と、前記減圧乾燥後の着色層形成用塗工液をプリベイクするプリベイク工程と、前記プリベイク後の着色層形成用塗工液をポストベイクするポストベイク工程と、を有するカラーフィルタの製造方法であって、前記プリベイク工程においては、プリベイクする温度をT(℃)とし、プリベイクする時間をt(min)とした場合、以下の(条件1) t<−T+120と、(条件2) 60<T<120を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
発明者は、各着色層の片寄りの原因が主にプリベイク工程で発生していることを見出し、さらに、当該プリベイク工程での温度と時間の関係が片寄りの発生に大きく関係していることに想到し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、インクジェット法を用いたカラーフィルタの製造方法におけるプリベイク工程において、プリベイク(いわゆる仮焼結)の温度と時間との関係を所定の関係に限定することにより、当該プリベイク工程で各色の着色層形成用塗工液を完全に硬化させず、ほどよく溶剤が残留している状態とすることができ、この状態でポストベイク工程を行うことにより、最終的に硬化した着色層に片寄りが発生することを防止することができる。
【0017】
また、本発明の方法にあっては、上記のように、プリベイクの温度と時間との関係を所定の関係に限定することにより着色層に片寄りが発生することを防止できるので、R、GおよびB、さらにはYや他の中間色など、種々の着色層を形成するための、各色の着色層形成用塗工液に含有される樹脂の種類を同一とする必要はなく、各々の都合に応じて自由に選択することができる。その結果、吐出性能や色再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の工程順を示すフロー図である。
【図2】本発明のカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明のプリベイク工程S4における温度Tと時間tとの関係を示す図である。
【図4】カラーフィルタの着色層の片寄りの評価を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の工程順を示すフロー図である。
【0021】
図2は、本発明のカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の方法は、
(1)着色層を形成するための着色層形成用領域を有するカラーフィルタ用基板を形成するカラーフィルタ用基板形成工程(S1)と、
(2)前記カラーフィルタ用基板の前記着色層形成用領域上に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布する着色層形成用塗工液塗布工程(S2)と、
(3)前記塗布された着色層形成用塗工液を減圧乾燥させる減圧乾燥工程(S3)と、
(4)前記減圧乾燥後の着色層形成用塗工液をプリベイクするプリベイク工程(S4)と、
(5)前記プリベイク後の着色層形成用塗工液をポストベイクするポストベイク工程(S5)と、
を有している。
【0023】
以下に各工程について説明する。
【0024】
(1)カラーフィルタ用基板形成工程(S1)
本発明のカラーフィルタ用基板形成工程(S1)は、着色層を形成するための着色層形成用領域を有するカラーフィルタ用基板を形成する工程であり、例えば図2(a)に示すように、着色層形成用領域aをパターン状に有するカラーフィルタ用基板1を形成する工程である。
【0025】
本工程において形成されるカラーフィルタ用基板1としては、目的とする形状に着色層を形成可能な着色層形成用領域aを有するものであれば、その着色層形成用領域aの性状や形状等は特に限定されるものではない。例えば、本工程により形成されるカラーフィルタ用基板1は、着色層形成用領域aの周囲に、着色層形成用塗工液を留めるための土手がパターン状に形成されたものであってもよく、また上記着色層形成用領域aが親液性領域とされ、かつ上記着色層形成用領域a以外の領域が撥液性領域とされているもの等であってもよい。
【0026】
本工程は特に、上記着色層形成用領域aが親液性領域であり、それ以外の領域が撥液性領域であるカラーフィルタ用基板を形成する工程であることが好ましい。このようなカラーフィルタ用基板とすることにより、この後に行われる着色層形成用塗工液塗布工程S2において着色層形成用塗工液が塗布された際、撥液性領域には着色層形成用塗工液が付着せず、親液性である着色層形成用領域のみに高精細に着色層形成用塗工液が付着するものとすることができる。したがって、後述する着色層形成用塗工液塗布工程S2により、高精細なパターン状に着色層形成用塗工液を塗布することが可能となり、高品質な色表示が可能なカラーフィルタを製造することができるからである。なお、本発明でいう撥液性領域とは、隣接する領域より、液体との接触角が1°以上高い領域をいうこととする。本発明においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、さらには表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上となる程度であることが好ましい。一方、上記親液性領域の表面張力40mN/mの液体との接触角は9°以下とされることが好ましい。これにより、上記親液性領域のみに、高精細に着色層形成用塗工液を塗布することが可能となるからである。なお、上記液体との接触角は、上記表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得られるものである。
【0027】
本工程において、上記着色層形成用領域が親液性領域であり、それ以外の領域が撥液性領域であるカラーフィルタ用基板を形成する方法としては、例えばエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を基板表面に形成し、この濡れ性変化層の濡れ性を着色層形成用領域のパターン状に変化させる方法等とすることができる。このような濡れ性変化層を利用して、親液性のパターンを形成する方法としては、例えば特開2002−40230公報や、特開2003−105029公報等に記載された方法を用いることができる。
【0028】
また、例えば上記着色層形成用領域のみに、親液性を有する材料を用いて層を形成する方法や、上記着色層形成用領域以外の領域のみに、撥液性を有する材料を用いて層を形成する方法等であってもよく、またこれらを組み合わせた方法であってもよい。またさらに、着色層形成用領域以外の領域に、有機材料からなる層を形成し、この層に対してフッ素化合物を導入ガスとしてプラズマ照射することにより、着色層形成用領域以外の領域を、撥液性とする方法等であってもよい。なおプラズマ照射を行うことにより、上記着色層形成用領域以外の領域を撥液性とする場合、上記着色層形成用領域の表面は、無機材料が露出、または無機材料によって覆われていることが好ましい。これにより、基板全面にプラズマ照射をした場合であっても、上記着色層形成用領域にはフッ素が導入されず、着色層形成用領域以外の領域のみにフッ素が導入されるものとすることができるからである。上記プラズマの照射方法は、例えば特開2000−187111号公報に記載されている方法と同様とすることができる。
【0029】
(2)着色層形成用塗工液塗布工程(S2)
次に、本発明における着色層形成用塗工液塗布工程S2について説明する。本工程は、上記カラーフィルタ用基板の上記着色層形成用領域上に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布する工程であり、例えば図2(b)および(c)に示されるように、着色層形成用塗工液2を上記カラーフィルタ用基板1の着色層形成用領域a上にパターン状に塗布する工程である。
【0030】
本工程において着色層形成用塗工液を塗布するために用いられるインクジェット装置としては、一般的にカラーフィルタを製造する際に用いられるものと同様とすることができる。上記インクジェット装置として、1つのみインクジェットノズルを有するものが用いられてもよいが、本発明においては特に、複数のインクジェットノズルを有するものが用いられることが好ましい。これにより、効率よくカラーフィルタを製造することが可能となるからである。なお、本発明の方法によれば、複数のインクジェットノズルを有し、各ノズルから異なる色の着色層形成用塗工液を塗布しても「着色層の片寄り」が生じない。
【0031】
また、本工程に用いられる着色層形成用塗工液としては、製造されるカラーフィルタの種類等により適宜選択され、一般的にカラーフィルタの製造に用いられるものと同様とすることができる。なお、本発明の方法によれば、各色の着色層形成用塗工液にそれぞれ含有されている樹脂(以下、「バインダ」とも言う)の種類を無理に統一する必要はなく、各色ごとの吐出性能や色再現性を考慮して自由に選択可能である。
【0032】
本工程において、着色層形成用塗工液が塗布される領域としては、着色層形成用領域の性状や形状等に合わせて適宜選択される。例えば、上記着色層形成用領域が、土手によって区画されている場合等には、着色層形成用塗工液は、着色層形成用領域のみに塗布されることとなる。
【0033】
以下、本工程に用いられる着色層形成用塗工液の一例を示す。
【0034】
着色層形成用塗工液は、顔料、顔料分散剤、樹脂、および溶剤を主たる成分としている。各成分については以下の通りである。
【0035】
<顔料>
赤色有機顔料としては、C.I.Pigment Red 254、7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、255、264、272、279等を挙げることができる。
【0036】
また、黄色有機顔料としては、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等を挙げることができる。
【0037】
橙色有機顔料としては、C.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等を挙げることができる。
【0038】
緑色有機顔料としては、C.I. Pigment Green 7、10、36、37、58等を挙げることができる。
【0039】
青色有機顔料としては、C.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等を挙げることができる。
【0040】
さらに、紫色有機顔料としては、C.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等を挙げることができる。
【0041】
以上の有機顔料は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、各色に共通して、上記有機顔料の他、必要に応じて無機顔料あるいは体質顔料を添加してもよい。これらの具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、アンバー等を挙げることができる。なお、これらについても、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
着色層形成用塗工液に含まれる顔料は、同じく着色層形成用塗工液中に含まれる樹脂、顔料及び顔料分散剤の合計量に対して、通常は1〜60質量%、好ましくは15〜40質量%の割合で配合される。顔料が少なすぎると、着色層形成用塗工液を所定の膜厚(0.5〜3.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがある。また、顔料が多すぎると、着色層形成用塗工液を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。
【0044】
<顔料分散剤>
顔料分散剤は、上記顔料を良好に分散させるために顔料分散液中に更に配合されることが好ましい。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(いわゆる高分子分散剤)が好ましい。また、溶剤に少量溶解するような顔料誘導体を顔料分散剤として用いてもよい。
【0045】
顔料分散剤は、使用される顔料を良好に分散させるために適宜選択して用いられる。顔料分散剤としては、具体例としては、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上を好適に用いることができる。
【0046】
なお、顔料分散剤については、特開2007−298971号公報や特開2010−134278号公報に開示されているものを適宜選択して用いてもよい。
【0047】
<樹脂>
着色層形成用塗工液は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するために、樹脂としての熱硬化性成分を含有する。当該樹脂は、着色層形成用塗工液中に含まれ、画素を所定の位置に付着させ、固定するために含有させる液状混合物であり、後の硬化プロセスにおいて反応性を有する硬化性化合物の他、それ自体反応性を有さない化合物も含むものである。熱硬化性成分としては、好ましくは、熱硬化性樹脂成分を用いることができる。
【0048】
インクジェット方式に用いる着色層形成用塗工液(以下、「インクジェット用着色層形成用塗工液」とも言う)の場合、所定のパターンを形成するためには、所定のパターン形成領域にのみ着色層形成用塗工液を選択的に付着させて固化すれば形成することができ、露光及び現像を行うことによりパターンを形成する必要がない。従って、樹脂としては、必ずしも露光現像が可能な硬化性樹脂を用いなくても良く、非硬化性の熱可塑性樹脂組成物を用いても良いが、硬化性樹脂を含むものを用いることが硬化皮膜に充分な硬度を付与するため好ましい。
【0049】
硬化性樹脂としては、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含むものを用いる。これは、インクジェット用着色層形成用塗工液においては、P/V比を高くした場合であっても、耐溶剤性、密着性、ITO耐性等の画素の膜物性をより良好にすることができるからである。なお、ここでITO耐性とは、ITO回路形成時又は配向膜形成時の不具合に対する耐性であり、具体的にはITO回路形成後の230〜250℃での耐熱性が挙げられる。また、熱硬化性樹脂を用いることには、光照射装置を始めとする特別な附帯設備が不要となり、生産性が高いというメリットもある。
【0050】
熱硬化性樹脂としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらにそれ自体は重合反応性のない重合体を更に含有させても良い。
【0051】
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、インクジェットの吐出安定性、及びインクジェット着色層形成用塗工液により形成された画素の耐溶剤性、密着性、ITO耐性等の膜物性の点から、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が好適に用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0052】
また、樹脂については、特開2007−298971号公報や特開2010−134278号公報に開示されているものを適宜選択して用いてもよい。
【0053】
<溶剤>
本発明におけるインクジェット用着色層形成用塗工液に用いられる溶剤は、第一溶剤として沸点が180℃〜260℃で、好ましくは210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg以下、好ましくは0.1mmHg以下の溶剤成分を溶剤の全量に対して60〜95重量%含有し、更に第二溶剤として沸点が130℃以上180℃未満の溶剤成分を溶剤の全量に対して5〜40重量%含有することが好ましい。
【0054】
沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の溶剤成分は適度な乾燥性及び蒸発性を有している。そのため、このような溶剤成分を第一溶剤として高い配合割合で含有するインクジェット用着色層形成用塗工液は、間歇吐出及び連続吐出のいずれを行う場合でも急速には乾燥しないので、インクジェットヘッドのノズル先端において急激な粘度の上昇や目詰まりを起こし難く、オリフィス表面の濡れ広がりも生じ難く、吐出方向や吐出量の安定性に優れている。従って、このような着色層形成用塗工液を用いてインクジェット方式により基板表面に所定のパターンに合わせて吐出することにより、画素部や遮光部等の着色硬化層を正確且つ均一に形成することができる。
【0055】
更に、上記特定の第一溶剤に加えて、第二溶剤として沸点が130℃以上180℃未満の溶剤成分を適量組み合わせることにより、乾燥速度を最適化することができる。インクジェットヘッドのノズル先端においては急速に乾燥しないが、着色層乾燥時には乾燥速度が適度に速いことから溶質が流動することを抑制できる。従って、基板上に吐出された後は、基板表面になじんで十分にレベリングさせてから、適宜乾燥手段によって比較的短時間に且つ完全に乾燥させることができる。従って、このようなインクジェット用着色層形成用塗工液を用いると、端部に厚膜部分が生じ難く、且つ表面ムラが低減された膜厚の均一性の高いパターンが得られると共に、効率よく乾燥させることができる。
【0056】
第一溶剤として用いられる溶剤成分は、上記した沸点と蒸気圧を有する溶剤であれば1種であっても又は2種類以上の混合溶剤であっても良い。上記した沸点と蒸気圧を有する第一溶剤は、溶剤全量に対して60〜95重量%の割合で使用することが好ましい。第一溶剤の割合が溶剤全量の60重量%以上の場合には、インクジェット方式に適した乾燥性、蒸発性を得ることができ、インクジェットの間歇吐出安定性が向上する。第一溶剤の割合は、溶剤全量の70〜95重量%、更に溶剤全量の75〜95重量%、より更に溶剤全量の80〜92重量%とするのが好ましい。本発明に用いられるインクジェット用着色層形成用塗工液には、更に、必要に応じて第一溶剤及び第二以外の溶剤成分を少量ならば含有しても良い。着色層形成用塗工液は着色剤として顔料を用いるので、顔料分散体を調製するために、顔料を分散させやすい分散溶剤を用いる必要がある場合があるからである。
【0057】
第一溶剤の23℃での表面張力は、28mN/m以上であることが、パターニング時に撥インク部への着色層形成用塗工液の流出を低減できる点から好ましい。なお、第一溶剤が2種類以上の混合溶剤である場合には、混合溶剤全体として上記表面張力を有することが好ましい。ここで、本発明における23℃での表面張力は、表面張力計(ウィルヘルミー法)(例えば、協和界面科学社製、自動表面張力計CBVP−Zなど)により測定することができる。
【0058】
第一溶剤として使用できる溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。これらの溶剤は、沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の要求を満たしているだけでなく、顔料の分散性、分散安定性も比較的良好であり、3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような従来から顔料分散体の調製に用いられている溶剤と混合し或いは混合せずそのまま分散溶剤として用い、顔料分散体を調製することができる。
【0059】
また、上記第一溶剤に第二溶剤として沸点が130℃以上180℃未満の溶剤成分を溶剤全量の5〜40重量%程度組み合わせることにより、インクジェットヘッドのノズル先端においては急速に乾燥しないが、着色層乾燥時に溶質が流動することを抑制し、乾燥速度を適切に調整することが可能になり、着色層の表面形状をより均一に形成することが可能になる。第二溶剤として用いられる溶剤成分は、上記沸点を有する溶剤であれば単独で又は2種類以上混合して用いても良い。
【0060】
中でも、第二溶剤に用いられる各溶剤成分の沸点は、更に、140℃〜180℃であることが、特に140℃〜175℃であることが、端部に厚膜部分が生じ難く、且つ表面ムラが低減された良好な塗膜が得られ易い点から好ましい。
【0061】
また、前記第二溶剤の23℃での粘度は、0.5〜6mPa・sであることが好ましい。このような場合には、第二溶剤が含まれることにより、上記第一溶剤が奏する効果を阻害することなく着色層形成用塗工液の粘度を適切に低下することが可能で、着色層形成用塗工液自体の濡れ広がり性が向上する結果、着弾した塗工液の滴が着色層形成領域全体の隅々にまで濡れ広がり易くなる。その結果、多様化している基板に対しても、着弾した塗工液がブラックマトリックスのきわ部分にまで濡れ広がることが可能になり、画素の色抜けや輝度低下を防止でき、より表示不良が低減されたカラーフィルタを製造することができる。領域の隅に塗工液を付着させるために領域の端の方に塗工液を着弾させる方法もあるが、この方法だとブラックマトリックスの間隙から塗工液が流出する恐れがある。それに対し、このように塗工液自体によってブラックマトリックスのきわ部分にまで濡れ広がらせることは、塗工液の流出の恐れがなく、2種類以上用いられる塗工液同士の混色を防止する点からもより望ましい方法である。前記第二溶剤の23℃での粘度は、更に0.5〜3mPa・sであることが好ましい。第二溶剤が2種類以上混合して用いられる場合には、単独では上記範囲外であっても混合溶剤の粘度が上記範囲であれば、好適に用いられる。ここで、本発明における23℃での粘度は、回転振動型粘度計(例えば、山一電機社製、回転振動型粘度計ビスコメイトVM−1Gなど)により測定することができる。
【0062】
前記第二溶剤の23℃での表面張力は、35mN/m以下であれば好適に用いることができる。中でも、前記第二溶剤の23℃での表面張力が28mN/m以下である場合には、上記第一溶剤が奏する効果を阻害することなく表面張力を適切に低下することが可能で、塗工液自体の濡れ広がり性が向上するため、着弾した塗工液の滴が着色層形成領域全体の隅々にまで濡れ広がり易くなる。ここで、本発明における23℃での表面張力は、表面張力計(ウィルヘルミ法)(例えば、協和界面科学社製、自動表面張力計CBVP−Zなど)により測定することができる。
【0063】
また、前記第二溶剤としては、上記沸点を有する溶剤であれば良いが、第一溶剤との相溶性に優れる溶剤を適宜選択して用いることが好ましい。
【0064】
具体的には、グリコールエーテル類やグリセリンエーテル類などの多価アルコールエーテル類を含むエーテル類、およびグリコールエステル類やグリセリンエステル類などの多価アルコールエステル類、脂肪族エステル類、アルコキシカルボン酸エステル類、ケトカルボン酸エステル類を含むエステル類よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。上記のようなエステル類、およびエーテル類を用いる場合には、バインダ成分等に反応性が高い樹脂を用いた場合であっても、着色層形成用塗工液の経時安定性を良好に維持し、インクジェットヘッドからの吐出安定性が向上するという利点がある。また、グリコールエーテル類、グリコールエステル類を用いる場合には、ガラス基材に対する濡れ性が向上し、着色層形成領域全体の隅々にまで濡れ広がり易くなり、画素の色抜け防止に効果的である。
【0065】
本発明に係るカラーフィルタ用インクジェット用着色層形成用塗工液においては、前記第二溶剤の含有量は、中でも、溶剤全量に対して5〜30重量%、より更に5〜25重量%、特に8〜20重量%であることが、上記第一溶剤の効果を阻害することなく、インクジェットヘッドから吐出した時の安定性に優れ、更に効率よく乾燥させることができ、端部に厚膜部分が生じ難く、且つ表面ムラが低減された良好な画素等を形成し易い点から好ましい。
【0066】
以上のような溶剤を、当該溶剤を含む着色層形成用塗工液の全量に対して、通常は40〜95重量%の割合で用いて吐出させる着色層形成用塗工液を調製する。溶剤が少なすぎると、着色層形成用塗工液の粘度が高く、インクジェットヘッドからの吐出が困難になる。また、溶剤が多すぎると、所定の着色層形成部位に対する塗工液盛り量、いわゆる塗工液堆積量が十分でないうちに、当該着色層形成部位に堆積させた塗工液の膜が決壊し、周囲の非露光部へはみ出し、さらには、隣の着色層形成部位にまで濡れ広がってしまう。言い換えれば、塗工液を付着させるべき着色層形成部位からはみ出さないで堆積させることのできるインク盛り量が不十分となり、乾燥後の膜厚が薄すぎて、それに伴い十分な透過濃度を得ることができなくなる。
【0067】
なお、溶剤については、特開2007−298971号公報や特開2010−134278号公報に開示されているものを適宜選択して用いてもよい。
【0068】
(3)減圧乾燥工程
次に、本発明における減圧乾燥工程S3について説明する。本工程は、前記着色層形成用塗工液塗布工程S2において塗布された塗工液を減圧状態にて乾燥せしめる工程である。本工程を行うことにより、塗工液中に含まれている溶剤を揮発させ、この後に行われるプリベイク工程において混色決壊が生じることを防ぐことができる。
【0069】
本工程において、どの程度の溶剤を揮発させるか、つまり塗工液中に含まれている溶剤の全部を揮発させるか、その一部が残存するように揮発させるか、については特に限定することはない。しかしながら、形成される着色層の最終形状をより良好にするためには、本工程において、塗工液中に含まれている溶剤すべてを揮発させることは好ましくなく、例えば、本工程終了後におけるブラックマトリクスの高さを基準とした場合(カラーフィルタ用基板上に各色着色層に加えブラックマトリクスを形成する場合に限る)、赤色着色層にあってはその高さの最大値が2〜15μm、緑色着色層にあってはその高さの最大値が2〜15μm、青色着色層にあってはその高さの最大値が2〜20μmとなるような状態で、本工程を終了することにより、各色着色層(各色塗工液)中に、適度に溶剤を残存せしめ、各色着色層の最終形状を良好なものとすることができる。
【0070】
本工程を行う際の諸条件についても、本発明は特に限定することなく、上記の如く所定量の溶剤を残存させつつ揮発させることができる条件であればよい。具体的には、例えば温度は30〜60℃が好ましく、さらには40〜50℃が特に好ましい。
【0071】
本工程を行う際に用いられる減圧乾燥装置については、特に限定することはなく、従来公知の装置を適宜選択して用いることができる。
【0072】
(4)プリベイク工程
次に、本発明におけるプリベイク工程S4について説明する。本工程は、前記減圧乾燥工程S3が行われた塗工液をプリベイクする、つまり仮焼結する工程である。本工程により塗工液をプリベイクしてある程度固化させることによって、後述するポストベイク工程において着色層形成用塗工液どうしが混色してしまうことや、各着色層形成用領域に塗布された着色層形成用塗工液の状態が変化してしまうこと等を防ぐことができる。
【0073】
そして、本発明は、プリベイクする温度をT(℃)とし、プリベイクする時間をt(min)とした場合、これらを以下の(条件1)と(条件2)の関係を満たすように、プリベイク工程S4を行うことに特徴を有している。
(条件1) t<−T+120
(条件2) 60<T<120
【0074】
図3は、本発明のプリベイク工程S4における温度Tと時間tとの関係を示す図である。
【0075】
本発明者らは、各着色層の片寄りの原因が主にプリベイク工程S4で発生していることを見出し、さらに、本工程S4での温度Tと時間tの関係が片寄りの発生に大きく関係していることに想到し、本発明を完成させた。そして、図3の斜線の領域内に含まれる温度Tと時間tの関係においてプリベイク(仮焼結)すれば、塗工液中の溶剤が完全に気化せず、すなわちほどよく残存しており、したがって、塗工液が完全に固化していない状態とすることができ、この状態でこの後のポストベイク工程S5を行うことにより最終的に硬化した着色層に片寄りが発生することを防止することができる。
【0076】
なおここで、上記(条件1)(条件2)はいずれも膨大な実験から求めた条件であり、各数値についての論理的な説明は困難であるが、温度T(℃)の範囲(条件2)にあっては、これが60℃よりも低いと、塗工液中の溶剤の揮発が不十分であり、塗工液中に溶剤が多く残存した状態でポストベイク工程S5が行われることとなってしまい、この場合にはポストベイク工程S5において混色決壊が発生してしまう虞がある。一方で、温度T(℃)が120よりも高いと、塗工液中の溶剤のすべてが本工程において揮発してしまい、そうすると、本工程中に混色決壊が発生してしまう虞があるからである。
【0077】
なお、上記プリベイク工程S4における(条件1)と(条件2)は、着色層形成用塗工液に含まれている溶剤の種別に関係なく、すべての溶剤において適用可能な条件であるが、特に、溶剤が前述した溶剤の場合には顕著な効果を示す。
【0078】
本工程を行う際に用いられる焼結装置については、上記の条件を満たすことができれば特に限定することはなく、従来公知の装置を適宜選択して用いることができる。
【0079】
(5)ポストベイク工程S5
次に、本発明におけるポストベイク工程S5について説明する。本工程は、上述した特別な条件でプリベイクされた着色層形成用塗工液を完全に焼結(いわゆる固化)させるための工程であり、これが可能な工程であればよく、ポストベイクの条件等は特に限定されるものではない。つまり、本発明においては、本工程の前段階であるプリベイク工程S4において特別な条件で仮焼結を行っているため、本工程においては、従来公知の一般的な条件でポストベイクすればよく、一般的な条件でおこなえば着色層の片寄りが生じることがない。
【0080】
したがって、本工程を行う際に用いられる焼結装置についても特に限定されることはなく、従来公知の装置を適宜選択して用いることができる。
【0081】
(6)その他の工程
本発明のカラーフィルタの製造方法にあっては、上記(1)カラーフィルタ用基板形成工程S1から(5)ポストベイク工程S5を含んでいればよく、これらのみから構成されている必要はなく、適宜他の工程と組み合わせることができる。
【0082】
例えば、カラーフィルタ用基板形成工程S1と、着色層形成用塗工液塗布工程S2との間に、カラーフィルタ用基板を洗浄する洗浄工程を設けたり、さらりカラーフィルタ用基板の表面をプラズマ処理するプラズマ処理工程を設けてもよい。さらには、ポストベイク処理S5の後には、例えばITOなどの電極形成工程などが設けられてもよい。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0085】
(着色層形成用塗工液の準備)
R、G、およびB、3色の着色層形成用塗工液を準備した。各塗工液の成分組成は以下の通りである。
【0086】
<R着色層形成用塗工液(1)>
・顔料:R254/R242/R177/Y150 6.30質量%
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 3.78質量%
・主溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 73.20質量%
・副溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量%
・樹脂:
バインダ性エポキシ化合物/エピコート154(ジャパンエポキシレジン)/ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル/トリメット酸 6.72質量%
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.09質量%
【0087】
<R着色層形成用塗工液(2)>
・顔料:R254/R242/R177/Y150 8.12質量%
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 4.87質量%
・主溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 74.3質量%
・副溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量%
・樹脂:
バインダ性エポキシ化合物/エピコート154(ジャパンエポキシレジン)/ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル/トリメット酸 2.72質量%
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.09質量%
【0088】
<G着色層形成用塗工液(1)>
・顔料:G58/Y150 7.62質量%
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 4.57質量%
・主溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 70.0質量%
・副溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量%
・樹脂:
アロニックスM7100(東亞合成化学工業)/PETA−K/エポリードGT401(ダイセル化学工業) 7.80質量%
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.09質量%
【0089】
<G着色層形成用塗工液(2)>
・顔料:G58/Y150 5.97質量%
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 3.58質量%
・主溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 70.0質量%
・副溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量%
・樹脂:
アロニックスM7100(東亞合成化学工業)/PETA−K/エポリードGT401(ダイセル化学工業) 10.44質量%
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.09質量%
【0090】
<B着色層形成用塗工液(1)>
・ 顔料:B15:6/V23 3.50質量%
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 2.10質量%
・主溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 69.00質量%
・副溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量%
・樹脂:
バインダ性エポキシ化合物/エピコート154(ジャパンエポキシレジン)/ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル/トリメット酸 15.40質量%
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.06質量%
【0091】
<B着色層形成用塗工液(2)>
・ 顔料:B15:6/V23 3.70質量%
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 2.22質量%
・主溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 69.00質量%
・副溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量%
・樹脂:
バインダ性エポキシ化合物/エピコート154(ジャパンエポキシレジン)/ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル/トリメット酸 15.08質量%
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.06質量%
【0092】
(カラーフィルタの製造)
図1で説明した各工程に従い、上記の各塗工液を用いて、R、G、およびB、3色の着色層が形成されたカラーフィルタを製造した。
【0093】
なお、プリベイク工程S4における温度と時間以外の諸条件はすべて共通とした。各工程における諸条件は以下の通りである。
<減圧乾燥工程>
・時間:400秒
・温度:40℃
<ポストベイク工程>
・時間:40分
・温度:240℃
【0094】
(実施例と比較例)
プリベイク工程の温度と時間をそれぞれ変化させて、本発明の実施例の製造方法と比較例の製造方法とし、各製造方法により得られたカラーフィルタの着色層の評価を行った。
【0095】
図4は、カラーフィルタの着色層の片寄りの評価を説明するための概略断面図である。
【0096】
図4(a)および(b)に示すように、カラーフィルタの着色層は、これを構成する成分組成や基板との相性などに応じて、一山形状となる場合(図4(a))と、二山形状となる場合(図4(b))とがある。
【0097】
ここで、図4(a)に示すような一山形状となる場合にあっては、当該山の両端部分であって基板表面からの高さが最も低い部分をそれぞれB1、B2とし、当該B1とB2の差の絶対値の大小によって、片寄りの有無を評価した。
【0098】
具体的には、|B1−B2|が0.25μmより小さい場合には片寄りがないと判断し、これ以上だと片寄りがあると判断した。
【0099】
一方で、図4(b)に示すような二山形状となる場合にあっては、二つの山のそれぞれの高さ(基板表面からの高さ)をそれぞれH1、H2とし、当該H1とH2の差の絶対値の大小によって、片寄りの有無を評価した。
【0100】
具体的には、|H1−H2|が0.25μmより小さい場合には片寄りがないと判断し、これ以上だと片寄りがあると判断した。
【0101】
図4(a)におけるB1、B2、および図4(b)におけるH1、H2の具体的な測定方法としては、隣接する着色層の色が異なる方向の断面ついて、光干渉方式の三次元非接触表面形状計測装置(米国マイクロマップ製 製品名Micromap557N)を使用して、ガラス基板からの高さを測定した。
【0102】
(評価結果)
以下の表1、2に、実施例1〜4、比較例1〜5の評価結果を示す。
【0103】
なお、表1は、R着色層形成用塗工液(1)、G着色層形成用塗工液(1)、およびB着色層形成用塗工液(1)を用いた場合の結果であり、表2は、R着色層形成用塗工液(2)、G着色層形成用塗工液(2)、およびB着色層形成用塗工液(2)を用いた場合の結果である。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
上記の結果より、本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、着色層の片寄りを防止することができることが分かる。特に、本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、各色毎に塗工液中に含有される樹脂の種類を変えても片寄りが生じないことが分かる。
【符号の説明】
【0107】
1…カラーフィルタ用基板
2…着色層形成用塗工液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色層を形成するための着色層形成用領域を有するカラーフィルタ用基板を形成するカラーフィルタ用基板形成工程と、
前記カラーフィルタ用基板の前記着色層形成用領域上に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布する着色層形成用塗工液塗布工程と、
前記塗布された着色層形成用塗工液を減圧乾燥させる減圧乾燥工程と、
前記減圧乾燥後の着色層形成用塗工液をプリベイクするプリベイク工程と、
前記プリベイク後の着色層形成用塗工液をポストベイクするポストベイク工程と、
を有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記プリベイク工程においては、プリベイクする温度をT(℃)とし、プリベイクする時間をt(min)とした場合、以下の(条件1)と(条件2)を満たすことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(条件1) t<−T+120
(条件2) 60<T<120

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−118134(P2012−118134A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265571(P2010−265571)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】