説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】インクジェット方式におけるカラーフィルタの製造方法において、平坦性に優れた信頼性の高いカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】光透過性基板上に撥インキ性を有するパターン状遮光膜を形成し、前記パターン状遮光膜の開口部にインクジェット方式を用いて着色インクを滴下する工程、乾燥が完了する前の着色インクに受像層付き剥離性フィルム基材を貼合・密着し、前記受像層を剥離性フィルム基材から剥離する転写工程、前記着色インクと前記受像層を硬化・乾燥する工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の表示装置に使用されるカラーフィルタの製造方法に係り、特に、インクジェット方式を用いて平坦に着色画素部が形成されるカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイは、テレビやパソコン、携帯電子機器等に広く用いられており、コスト削減の要望も根強い。液晶ディスプレイ部材は、アレイ基板、カラーフィルタ、バックライト、偏光版、プリント基板、インバータ回路等から構成されているが、これらの中でも高価であるカラーフィルタのコスト削減が重要である。
【0003】
従来から行われているカラーフィルタ基板上の着色画素部の製造方法として、フォトリソグラフィー技術を駆使した分散法、染色法が挙げられる。これらの方法を用いて、R、G、B等の着色画素の形成を行うと、フォトリソグラフィー工程を複数回繰り返すことになるために、タクトタイムの増加や歩留まりの低下が起こる。また、塗布設備および現像設備等の設備償却コストがかかり、コスト高になるという問題もある。
【0004】
そのような事情の下で、近年、インクジェット方式を用いた製造方法が注目を浴びている。この方式は、1度にR、G、B等の着色層を形成することができるため、フォトリソグラフィー技術を駆使する方法と比較して工程数が少ない。さらに、必要な部分にだけインキを用いれば良いために材料の利用効率が高い。これらのことから、低コスト化できるとの期待があった。
【0005】
しかしながら、インクジェット方式を用いて生産したカラーフィルタでは、次のような課題がある。それは、インクの混色および着色層の膜厚ムラに起因する色ムラの発生である。これは、ディスプレイにおいて、画像品質の低下、コントラストの低下や応答速度の不均一化を引き起こす。これらの原因としては、インクの塗布精度がカラーフィルタの解像度に追いつかないこと、インクジェット方式を用いて着色画素部を形成する際、自然乾燥制御の難しさにより画素内形状の平坦化が困難であることが挙げられる。
【0006】
これらの課題に対して、特許文献1、2では、パターン状遮光膜に撥インキ成分である含フッ素化合物または含ケイ素化合物を含有させることで隣接する画素への着色インクの混入を防止しようとしている。
【0007】
また、特許文献3,4では、パターン状遮光膜の開口部にR、G、B等のインキの滴下・硬化を2回行うと共に、着色画素部の膜厚やインキの硬化温度を変化させることで着色画素部の乾燥状態を制御するようにしている。しかし、このインキの滴下・硬化回数の増加は、インクジェット方式を用いる場合の利点とされる工程数の短縮に反する。
【0008】
また、特許文献5では、研磨加工を施してカラーフィルタの表面層を平坦化しているが、この方法では、表面層での傷の発生により画像品質の低下が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7―35915号公報
【特許文献2】特開平7―35917号公報
【特許文献3】特開2010―197560号公報
【特許文献4】特開2010―211132号公報
【特許文献5】特開2002―365423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点を解決しようとするものであり、インクジェット方式におけるカラーフィルタの製造方法において、平坦性に優れた信頼性の高いカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、光透過性基板上に撥インキ性を有するパターン状遮光膜を形成し、前記パターン状遮光膜の開口部にインクジェット方式を用いて着色インクを滴下する工程、乾燥が完了する前の着色インクに受像層付き剥離性フィルム基材を貼合・密着し、前記受像層を剥離性フィルム基材から剥離する転写工程、前記着色インクと前記受像層を硬化・乾燥する工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0012】
請求項2の発明は、前記受像層を、ダイコーターを用いて剥離性フィルム基材上に塗布形成することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0013】
請求項3の発明は、前記受像層を、インクジェット方式を用いて剥離性フィルム基材上に塗布形成することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0014】
請求項4の発明は、前記受像層の乾燥状態の厚さが0.1μm以上10μm以下となるように形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、前記パターン状遮光膜で区画された開口部に着色インクを滴下した後、乾燥が完了する前の着色インクに受像層付き剥離性フィルム基材を貼合・密着し、受像層を剥離性フィルム基材から剥離することで、平坦性の高いカラークフィルタを形成できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、ダイコーターを用いて受像層を剥離性フィルムに塗布形成することで受像層を均一に塗布することができ、高精度にカラーフィルタの平坦化が達成できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、インクジェット方式を用いて受像層を剥離性フィルムに塗布形成することでダイコーターを用いた際と同様に、高精度にカラーフィルタの平坦化を確保できる。
【0018】
請求項4の発明によれば、受像層の乾燥状態の厚さが0.1μm以上10μm
以下であることでより高精度にカラーフィルタの平坦化を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための一形態を以下に示す。このカラーフィルタの製造方法では、
(1)光透過性基板上に撥インキ性を有するパターン状遮光膜を形成する工程
(2)その開口部にインクジェット方式を用いて着色インクを滴下する工程
(3)乾燥が完了する前の着色インクに受像層付き剥離フィルム基材を貼合・密着し、受像層を剥離フィルム基材から剥離する工程
(4)着色インクと前記受像層を硬化・乾燥する工程を具備することを特徴とする。
【0021】
この受像層は、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル樹脂やアクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂からなり、着色インクを受像する役目を果たす。そのため、乾燥が完了する前の着色インクに貼合・密着することで、受像層内への着色インク成分の浸透に伴い、平坦な着色画素が形成される。
【0022】
本発明の製造方法では、カラーフィルタの基板としてガラスやプラスチック等の光透過性基板を用いることができる。
【0023】
剥離性フィルム基材としては、例えば、プラスチック等の可撓性基材を加工し、用いることが可能である。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース等のロール状もしくは枚葉のフィルム、シートを用いることができる。
【0024】
上記基材へ剥離性を付与するために、シリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤を塗っても良いし、あるいはシリコーンゴムの薄膜層を形成してもよい。また、同様の効果を得るために、フッ素樹脂、フッ素系ゴムを用いることもできる。また、フッ素系樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を付与してもよい。これらシリコーン系の塗膜は、通常フィルム基材との密着が低いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して、より基材との接着性の高い樹脂層を、アンカーコート層としてあらかじめフィルム基材上に設け、その上層に設けることもできる。
【0025】
具体的なシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体等、変成したものを用いることができる。シリコーンゴムとしては、2液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての3官能性以上のシラン、またはシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせや、その他ゴム硬度を調節するためのポリシロキサン等を適宜用いることができる。
【0026】
このようにして得られる剥離性フィルム基材に対する受像層の剥離性は、処理面へ受像層液を滴下した際の接触角が、10°以上90°以下となるのが好ましく、より好ましくは20°以上70°以下である。この接触角が小さいと後工程での受像層の剥離性が低下して欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいと受像層を形成する際にハジキが生じて、均一な受像層を形成することが困難になる。接触角が大きく、ハジキが生じる場合、ぬれ性を調節するためにUV照射等を行って用いることもできる。
【0027】
本発明に用いる撥インキ性を有するバターン状遮光膜のパターンはブラックマトリックスやホワイトマトリックス等適宜選択して用いることが可能である。
【0028】
本発明に用いる撥インキ性を有するパターン状遮光膜の材料としては、黒色遮光剤、樹脂組成物( 光重合性モノマー、光重合開始剤、撥インキ成分等を含む) 、分散剤、溶剤等を主成分とする黒色樹脂組成物を用いる。撥インキ成分を加えることで、パターン状遮光膜の開口部に着色インクを滴下する際、隣接する画素への混入を防止する。
【0029】
本発明に用いるパターン状遮光膜は、公知の方法で作製することができる。例えば、フォトリソグラフィー方式、反転印刷方式等の各種印刷方式等から適宜選択して用いることが可能である。
【0030】
また、本発明に用いるパターン状遮光膜は完全に硬化・乾燥処理が施されている状態でも良いし、受像層、着色パターンを硬化・乾燥処理する工程において同時に硬化・乾燥する材料からなるものであれば硬化・乾燥が完全でない状態でも良い。
【0031】
黒色樹脂組成物の黒色遮光剤としては、黒色顔料、黒色染料、無機材料等を用いることができる。これらは、その他の有機顔料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、酸化チタン、鉄黒等を混合して用いられる。
【0032】
黒色樹脂組成物の樹脂組成物としては、光重合性モノマー、光重合開始剤、撥インキ成分を持つフッ素系高分子化合物およびケイ素系高分子化合物等が挙げられる。光重合性モノマーの具体的な例としてはラウリルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系やヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート等のアクリレート系等を挙げることができるが、これらに限定されるものでない。
【0033】
光重合開始剤の具体的な例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等のベンゾフェノン系やアセトフェノン系、チオキサントン系を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
撥インキ成分を有する化合物の具体的な例としては、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等や、これらの共重合体等のフッ素樹脂、また、主鎖または側鎖に有機シリコーンを有するもので、シロキサン成分を含むシリコーン樹脂やシリコーンゴム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明における黒色樹脂組成物の分散剤としては、非イオン性界面活性剤では、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等、また、イオン性界面活性剤では、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩等、その他に、有機顔料誘導体、ポリエステル等があげられる。分散剤は1種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0036】
黒色樹脂組成物 の溶剤としては、塗布性、分散安定性等の点から、適宜選択して使用されるものであり、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジクライム、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0037】
本発明における受像層には公知の材料を用いることができるが、波長が380nmから700nmである可視光線の透過率が80%以上であること、受像したインクの変色や退色がないこと、諸耐性があること等の性能が要求され、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル樹脂やアクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂から1つ以上を適宜選択して用いる。
【0038】
また、インクの受像性を高めるために、透明性を損なわない範囲内で、この樹脂に微粒子(フィラー)を含有させることも有効である。フィラーとしては、無機微粒子では微粉末珪酸、有機微粒子ではアクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等から適宜選択して用いる。また、フィラーの滴下量は、受像層100重量部に対し0.01〜1部が好ましい。
【0039】
上記のような材料を用いて受像層を形成する際には公知の塗工方式を用いることができる。例えば、ディピング方式、ロールコート, グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷方式、スプレーコート、グラビアオフセット方式、インクジェット方式等が挙げられる。中でも、ダイコート、インクジェット方式は、均一なインキ液膜を形成することができるため好適な形成方法である。
【0040】
本発明における受像層を形成した剥離性フィルム基材は予め作製した上で用いてもよいし、本発明を実施する際に形成して用いてもよい。予め、作製して用いる場合、特にロール状に加工されたフィルム上に受像層を連続的に加工する場合には、形成した受像層面を保護することや異物混入の回避、ブロッキング回避のために表面に保護フィルムをラミネートした上で巻き取ることが好ましい。保護フィルムには公知の材料を用いることができるが、前述のようにブロッキングを回避するために適宜選択して用いる。
【0041】
上記のようにして形成された受像層の乾燥状態の膜厚は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上5μm以下である。0.1μm未満であると膜厚が薄く平坦化の効果が充分に得られなくなる上にインク中の溶剤を吸収する性能が著しく低下し、10μmを超えると膜厚が厚くなり、塗工膜厚精度が低下するだけでなく透明性も失われるため、好ましくない。
【0042】
上記光透過性基板上へ着色パターンを形成する際には、解像精度・精細度の観点からインクジェット方式が好適である。インクジェット方式としては、サーマル方式、バブル方式、静電アクチュエータ方式、ピエゾ方式等のインクジェットヘッドを用いた公知の方式を用いる。
【0043】
本発明における着色パターンを形成するための着色インクの材料は、着色顔料、樹脂、分散剤、溶剤等で構成するものである。着色剤として使用する顔料は耐侯性に優れるものを用いることが望ましい。インクジェット用着色組成物の顔料の具体例としては、Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、215、216、208、217、220、223、Pigment Blue15、15:6、16、22、29、60、64、Pigment Red20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、168、185、Pigment Orange36、Pigment Violet23等を挙げることができるが、これらに限定されるものでない。さらに、これらは要望の色相を得るために2種類以上を混合して用いても構わない。
【0044】
着色インクに使用する溶媒剤種としては、インクジェット印刷における適性の表面張力範囲35mN/m以下で、且つ、共沸点が130℃以上のものが好ましい。表面張力が35mN/mを超えるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼし、また、共沸点が130℃以下であるとノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果、ノズル詰まり等の不良発生を招くので好ましくない。
【0045】
具体的には、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、上記要件を満たす溶剤なら用いることができる。また、必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して用いても構わない。
【0046】
本発明における着色インク材料のバインダー樹脂としては、カラーフィルタ製造装置および製造工程の簡略化から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。特に、カラーフィルタに要求される耐溶剤性、耐アルカリ性、耐酸性、耐熱性等の物性を満足させるために、熱黄変性の少ない熱硬化性樹脂である、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。具体的なバインダー樹脂としては、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等から適宜選択して用いることができる。
【0047】
また、バインダー樹脂の質量平均分子量は、500〜10000の範囲内であることが好ましく、さらに500〜8000の範囲内であることがより好ましい。バインダー樹脂の質量平均分子量が10000を超えると、着色画素部の乾燥工程時にインクの流動性が不足し、パターン平坦性が劣ってしまう。また、バインダー樹脂の質量平均分子量が500未満では、カラーフィルタに要求される耐溶剤性、耐熱性等の物性を満足させることができない。
【0048】
樹脂への色素の分散を向上させるために分散剤を用いてもよく、その分散剤として、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を使用してもよく、また、イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩を等使用してもよく、その他に、有機顔料誘導体、ポリエステル等もあげられる。分散剤は1種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を混合して使用してもよい。溶剤としては溶解性の他に経時安定性、乾燥性等が要求され、適宜選択して用いる。
【0049】
また、顔料対バインダー樹脂の固形分比率が、質量比で1:4〜3:2であることが好ましい。顔料対バインダー樹脂の固形分比率が1:4未満では顔料濃度が低く、必要な濃度を得るための着色画素部の厚みが厚く成り、作業性が悪くなり、3:2を超えて顔料を多くすると、着色画素部の乾燥工程時にインクの流動性が不足し、パターン平坦性が劣ってしまう。
【0050】
着色インク材料の粘度としては、1〜20mPa・sの範囲にあることが好ましく、さらにいえば、5〜15mPa・sの範囲にあるとさらに好ましい。着色材料の粘度が20mPa・sを超えると、インクジェット吐出時にインクが所定の位置に着弾しない不良や、ノズル詰りといった不良を招く。一方、着色インク材料の粘度が1mPa・s未満である場合、インクを吐出する際に、インクが飛散するような状況を招く。
【0051】
このようにして形成された着色インクに対するパターン状遮光膜の上頂部の接触角は20°以上であることが好ましい。この接触角が小さいと、着色パターン形成の際にインクが十分に反発されず、パターン状遮光膜の上までインクが拡がり、混色してしまう。
【0052】
本発明における着色パターン形成工程においては、複数色からなるパターンを形成する場合、所望の着色パターンを形成するために、2色目以降を形成する際に1色目のパターンもしくは1色目のパターンを形成する際に同時に形成した位置合わせ用マークを光学顕微鏡、CCD(Charge Coupled Device)顕微鏡等を用いて画像認識し、基準として2色目以降のパターンを形成することが望ましい。
【実施例1】
【0053】
この実施例1での剥離性フィルム基材6としては、基材厚約100μmのシリコーン系離型ポリエステルフィルム:K1571(東洋紡績(株)製)を300mm角に切り出したものを用意した。
【0054】
黒色樹脂組成物としては、ポリイミド前駆体(東レ(株)製:「セミコフアインSP−510」)10重量部、カーボンブラック7.5重量部、NMP130重量部、及び、分散剤(銅フタロシアニン誘導体)5重量部をビーズミル分散機で冷却しながら3時間分散した組成物を用いた。
【0055】
受像層5としては、シリカ2重量部、アクリルポリマーを18重量部、トルエン80重量部として調製した溶液を用いた。
【0056】
次に、着色インク4の作製方法を以下に示す。メタクリル酸20重量部、メチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート55重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部を乳酸ブチル300gに溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75重量部を加え70℃にて5時間の反応によりアクリル共重合樹脂を得た。得られたアクリル共重合樹脂を樹脂濃度が10%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈しアクリル共重合樹脂の希釈液とした。この希釈液80.1gに対し顔料19.0g、分散剤0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤色、緑色、青色の各着色ワニスを得た。この各着色ワニスをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで顔料濃度が8〜15%、粘度が15mPa・sになるように調製しR、G、B着色インクを得た。
【0057】
そして、図1(d)に示すように、剥離性フィルム基材6にダイコーターを用いて受像層液を乾燥膜厚が3.0μmとなるように塗布した後、100℃で3分間加熱し、受像層5を得ている。
【0058】
まず、図1(a)(b)に示すように、光透過性基板1である無アルカリガラス(品番1737:コーニング社製、300mm×300mm×0.7mmt)上にフォトリソグラフィー法を用いることで黒色樹脂組成物からパターン状遮光膜2を形成した。
【0059】
このようにして形成されたパターン状遮光膜2の上頂部の着色インク(表面張力30mN/m)に対する接触角を測定したところ、30°であり、前記パターン状遮光膜2上頂部が着色インク4に対して、撥インキ性が有ることを確認した。
【0060】
図1(c)に示すように、ピエゾ方式でノズル解像度180dpiのヘッド(セイコーインスツルメンツ社製)を搭載したインクジェット装置3を用いて、ガラス基板1上のパターン状遮光膜2の開口部に前記に示す方法で調製したR、G、Bの着色インク4を滴下した。
【0061】
次に、図1(d)〜(g)に示すように、受像層5が積層された剥離性フィルム基材6を、着色パターンを形成したガラス基板1上に、ゴムローラー7で、加圧した後、剥離性フィルム基材6のみを剥離することで、着色パターンを形成したガラス基板上に受像層5を転写した。そして、硬化・乾燥することでカラーフィルタを得た。
【0062】
そして、このようにして得られたカラーフィルタは表面粗さが小さく、平坦性を有していた。また、着色インク4を2度滴下することで平坦性を有するカラーフィルタの製造方法と比較して、今回のカラーフィルタの製造方法は工程に要する時間が短くなった。
【実施例2】
【0063】
上記受像層形成工程において、アクリルポリマーを18重量部、トルエンを80重量部として調製した溶液を用い、インクジェット方式を用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように剥離性フィルム基材上に塗布し、100℃で3分間加熱し、受像層を得た。その他の工程においては上記実施例1と同様にして行い、カラーフィルタを得た。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、変形して具体化できる。また、明細書に示される事項の適宜の組み合わせによって種々の発明を想定できるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…光透過性基板
2…パターン状遮光膜
3…インクジェット装置
4…着色インク
5…受像層
6…剥離性フィルム基材
7…ゴムローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基板上に撥インキ性を有するパターン状遮光膜を形成し、前記パターン状遮光膜の開口部にインクジェット方式を用いて着色インクを滴下する工程、乾燥が完了する前の着色インクに受像層付き剥離性フィルム基材を貼合・密着し、前記受像層を剥離性フィルム基材から剥離する転写工程、前記着色インクと前記受像層を硬化・乾燥する工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記受像層を、ダイコーターを用いて剥離性フィルム基材上に塗布形成することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記受像層を、インクジェット方式を用いて剥離性フィルム基材上に塗布形成することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記受像層の乾燥状態の厚さが0.1μm以上10μm以下となるように形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−203374(P2012−203374A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71061(P2011−71061)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】