説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】画素内でより形状の平坦な着色層を有するカラーフィルタの製造方法を提供する。つまり、着色層形成用塗工液が着弾する際には、ブラックマトリクスは高い撥液性を有するが、着色層形成用塗工液を乾燥する際には、ブラックマトリクスの撥液性が低下するようなカラーフィルタの製造方法を採用する。
【解決手段】基板上に撥液性を有するブラックマトリクスを形成し、前記ブラックマトリクスの開口部に形成された着色層の少なくとも1色をインクジェット方式により形成するカラーフィルタの製造方法であって、前記インクジェット方式により前記着色層を形成する工程が、着色層形成用塗工液を塗布する工程と、紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行う工程と、前記紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行った後に乾燥を行う工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどに使用され、インクジェット方式で製造されるカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの製造方法として、従来種々の検討が重ねられており、代表的な方法として、フォトリソグラフィー方式が知られている。この方法においては、まず基板全体に感光性樹脂層の塗布膜を形成し、後に塗布膜の不要な部分を取り除き、残ったパターンを各画素とする。さらにこの工程を少なくとも3回繰り返すことにより、赤(R)、緑(G)、青(B)等の着色層を形成する。
【0003】
しかしながら、フォトリソグラフィー方式においては、R、G、Bの3色の着色層を形成するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、フォトリソグラフィー工程で露光や現像など多数の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。また、塗布膜の多くが不要となるため、カラーフィルタ製造時に大量の顔料等の材料が無駄になるという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、インクジェット方式により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層を形成する方法が提案されている(特許文献1を参照)。
このインクジェット方式を、図4を用いて説明する。図4(a)に示すように、基板1の上に、開口部を有するブラックマトリクス3が形成される。ブラックマトリクス3は、着色層形成用塗工液7をはじく撥液箇所5が形成されている。
次に、図4(b)に示すように、ブラックマトリクス3の開口部内に、着色層形成用塗工液7が塗布される。この際、着色層形成用塗工液7が、所望する着色層領域外への広がりを防止するために、ブラックマトリクス3は、撥液性を有することが求められている。
次に、図4(c)に示すように、着色層形成用塗工液7を乾燥し、着色層15を形成する。
【0005】
インクジェット方式を用いることで、着色層形成に必要な工程の削減と、製造コストの削減、歩留まりの向上という有利な効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−187111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ブラックマトリクス3は、塗工液7の着弾時に、塗工液7が隣接画素に侵入しないよう、強い撥液性を有するが、塗工液7の乾燥時には、この高い撥液性のため、着色層15の形状が平坦にならず、画素内で色調が不均一となるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、画素内でより形状の平坦な着色層を有するカラーフィルタの製造方法を提供することである。つまり、撥液性を有するブラックマトリクスの開口部に着色層形成用塗工液が着弾した後に、ブラックマトリクスの撥液性を低下させ、着色層形成用塗工液を乾燥させるようなカラーフィルタの製造方法を採用する。
【0009】
前述した目的を達成するために、本出願では、基板上に撥液性を有するブラックマトリクスを形成し、前記ブラックマトリクスの開口部に形成された着色層の少なくとも1色をインクジェット方式により形成するカラーフィルタの製造方法であって、前記インクジェット方式により前記着色層を形成する工程が、着色層形成用塗工液を塗布する工程と、紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行う工程と、前記紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行った後に乾燥を行う工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、画素内でより形状の平坦な着色層を有するカラーフィルタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係るカラーフィルタの製造方法を示す断面図。
【図2】(b)図1の続きの工程を示す断面図。
【図3】(a)図1(b)のA部分拡大断面図、(b)図2(c)のB部分拡大断面図。
【図4】従来のインクジェット方式によりカラーフィルタの製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るカラーフィルタの製造方法を示す断面図であり、図2は、図1の続きの工程を示す断面図である。
【0013】
(カラーフィルタの着色層の製造方法)
まず、図1(a)に示すように、基板1の上にブラックマトリクス3を形成する。ブラックマトリクス3は、表面に撥液箇所5を有する。撥液箇所5を有するブラックマトリクス3の形成方法は、撥液剤を含まないブラックマトリクス3を形成し、その後、フッ素化合物存在下のプラズマを照射する方法と、ブラックマトリクス形成用の塗工液に予め撥液剤を添加しておく方法がある。詳細は後述する。
【0014】
その後、図1(b)に示すように、着色層形成用塗工液7を塗布する。この塗布は、塗工液7の液滴をノズルより滴下し、ブラックマトリクス3が形成する開口部に着弾させることにより行われる。この着弾時が、最も塗工液7が流動する瞬間であるため、着弾時に隣接する画素に塗工液7が流出しないよう、ブラックマトリクス3の撥液箇所5は、高い撥液性を有することが求められる。
【0015】
その後、図2(c)に示すように、着色層形成用塗工液7の塗布後に、基板1のブラックマトリクス3を有する面に紫外線9を照射および/または酸素プラズマ処理する。紫外線9が照射された箇所は、フッ素原子がブラックマトリクス3から脱離し、撥液箇所5より撥液性が低い低撥液箇所11に変化する。その結果、着色層形成用塗工液7は、紫外線照射前よりもブラックマトリクス3にぬれやすくなる。また、酸素プラズマ処理された箇所は、フッ素原子がブラックマトリクス3から脱離し、撥液箇所5より撥液性が低い低撥液箇所11に変化する。その結果、着色層形成用塗工液7は、酸素プラズマ処理前よりもブラックマトリクス3にぬれやすくなる。
【0016】
紫外線照射による変化を、図3を用いて詳細に説明する。図3(a)は紫外線照射前の図1(b)のA部分の拡大断面図であり、図3(b)は紫外線照射後の図2(c)のB部分の拡大断面図である。図3(a)において、着色層形成用塗工液7は、ブラックマトリクス3の撥液箇所5によってはじかれている。一方、図3(b)においては、紫外線9の照射によりブラックマトリクス3の上面の撥液箇所5の撥液性が低下し、低撥液箇所11となっているため、着色層形成用塗工液7は、図3(a)よりも広がっている。
また、酸素プラズマ処理による変化を、図3を用いて詳細に説明する。図3(a)は酸素プラズマ処理前の図1(b)のA部分の拡大断面図であり、図3(b)は酸素プラズマ処理後の図2(c)のB部分の拡大断面図である。図3(a)において、着色層形成用塗工液7は、ブラックマトリクス3の撥液箇所5によってはじかれている。一方、図3(b)においては、酸素プラズマ処理によりブラックマトリクス3の上面の撥液箇所5の撥液性が低下し、低撥液箇所11となっているため、着色層形成用塗工液7は、図3(a)よりも広がっている。
【0017】
その後、図2(d)に示すように、着色層形成用塗工液7を乾燥させ、着色層13を形成する。塗工液7はブラックマトリクス3にある程度ぬれながら乾燥するため、着色層13の画素内での着色膜厚の高低差Cは、図4(c)に示す従来例の着色層15の画素内での高低差Dよりも小さくなり、より形状の平坦な着色層13を得ることができる。
【0018】
(各部材の説明)
以下、カラーフィルタの製造方法に使用する部材や材料の説明を行う。
【0019】
(基板1)
基板1は特に限定されるものではなく、カラーフィルタに一般的に用いられる透明な基板を使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。前記フレキシブル材としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、シンジオタクティック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。特に、無アルカリガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れており、好ましい。
【0020】
また、上記基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。このような表面処理としては例えば表面を、ブラックマトリクスよりも親インク性、すなわち、着色層形成用塗工液に対する接触角が低いものとするために、酸素ガスを導入ガスとしたプラズマ照射を挙げることができる。
【0021】
(ブラックマトリクス3)
ブラックマトリクス3は、少なくとも遮光材料と感光性樹脂を含むブラックマトリクス形成用塗工液を、フォトリソグラフィー法で露光・現像して得られる。具体的には、基板上に、ブラックマトリクス形成用塗工液を塗布し、プリベークすることによりブラックマトリクス形成用層を形成し、次いで、ブラックマトリクス形成用層をパターン状に露光するパターン露光を行い、さらに現像する方法を挙げることができる。その後UV照射処理を施してもよい。
【0022】
ブラックマトリクス3は、遮光材料を含む感光性樹脂で形成され、0.5μm〜3μm程度の厚さを有し、基板1上に、複数の開口部を有するように配置される。各開口部は、各画素R、G、Bの位置に対応する。
【0023】
ブラックマトリクス3は、感光性樹脂を塗布した後、所定の適切なパターンを有するフォトマスクを用いて露光し、現像してパターニングすることにより形成される。
【0024】
上記の感光性樹脂としては、ネガ型感光性樹脂およびポジ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
【0025】
ネガ型感光性樹脂は特に限定されることはなく、一般的に使用されるネガ型感光性樹脂を用いることができる。例えば、架橋型樹脂をベースとした化学増幅型感光性樹脂、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。また、アクリル系ネガ型感光性樹脂として、紫外線照射によりラジカル成分を発生する光重合開始剤と、分子内にアクリル基を有し、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する成分と、その後の現像により未露光部が溶解可能となる官能基(例えば、アルカリ溶液による現像の場合は酸性基をもつ成分)とを含有するものを用いることができる。上記のアクリル基を有する成分のうち、比較的低分子量の多官能アクリル分子としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、テトラメチルペンタトリアクリレート(TMPTA)等が挙げられる。また、高分子量の多官能アクリル分子としては、スチレン‐アクリル酸‐ベンジルメタクリレート共重合体の一部のカルボン酸基部分にエポキシ基を介してアクリル基を導入したポリマーや、メタクリル酸メチル‐スチレン‐アクリル酸共重合体等が挙げられる。
なお、ポジ型感光性樹脂も特に限定されるものではなく、一般的に使用されるものを用いることができる。具体的には、ノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。
【0026】
また、感光性樹脂の塗布方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ダイコート法等がある。
【0027】
ブラックマトリクス3に用いる感光性樹脂に含有させる遮光材料も特に限定されるものではなく、種々の公知のものを適切に選択し用いることができる。遮光材料としては、例えば、酸化チタンや四酸化鉄などの金属酸化物粉末、金属硫化物粉末、金属粉末、カーボンブラックの他に、赤、青や緑などの顔料の混合物を用いることができる。
【0028】
(撥液箇所5)
ブラックマトリクス3の表面は、少なくとも上面は撥液性を有する撥液箇所5を有する。上面とは、カラーフィルタを平面方向から観察した際に、見える面であり、ブラックマトリクスの断面の頂上部分に相当する。図では、上面と側面の両方に撥液箇所5が形成されているが、側面部は撥液性を有していなくても良い。
【0029】
ここで、上記「撥液性」とは、着色層形成用塗工液との接触角が大きいことを意味するものである。
【0030】
ブラックマトリクス3の撥液箇所5が有する撥液性としては、室温において水との接触角が、85°以上となる程度であることが好ましい。特に、室温において表面張力20〜40mN/mの液体との接触角が約45°以上であることが好ましく、さらに約55°以上であることが好ましい。さらに、室温において表面張力30mN/mの液体との接触角が45°以上であることが好ましく、さらに約55°以上であることが好ましい。なお、室温とは18℃〜25℃の範囲を意味し、特に23℃を意味する。また、所定の表面張力の液体として、JIS K6768に規定する濡れ性試験において示された標準液を使用することができる。
【0031】
(撥液箇所5の形成方法)
撥液箇所5の形成方法、つまりブラックマトリクス3の表面を撥液性にする方法には、あらかじめブラックマトリクス3の形成用塗工液に撥液剤を添加する方法と、ブラックマトリクス3の形成後に撥液処理により撥液性を付与する方法である。
【0032】
ブラックマトリクス3の形成用塗工液に添加する撥液剤としては、表面に所定の撥液性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような撥液剤としては、例えば、フッ素含有高分子化合物およびフッ素含有物質の微粒子等を挙げることができる。
【0033】
ここで、上記フッ素含有高分子化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロピレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂等を挙げることができる。
また、上記フッ素含有物質の微粒子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテル系共重合体、3フッ化エチレン−フッ化ビニリデン共重合体等からなる微粒子を挙げることができる。
【0034】
なお、用いられる撥液剤は1種類のみであってもよく、または、2種類以上で
あってもよい。
【0035】
ブラックマトリクス3の形成用塗工液に上記撥液剤を添加する場合、添加する上記撥液剤の量としては、使用する撥液剤の種類等に応じて、表面に所望の撥液性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記塗工液に0.005質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.01質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましい。
【0036】
撥液性を付与する撥液処理方法としては、フッ素ガスを導入ガスとしたプラズマ処理を行う方法が挙げられる。このような方法によれば、無機物である基板1の表面でなく、樹脂を含有するブラックマトリクス3に選択的にフッ素を導入することができるからである。
【0037】
上記導入ガスに用いられるフッ素化合物としては、例えば、CF、SF、CHF、C、C、C等を挙げることができる。
【0038】
また、上記導入ガスとしては、上記フッ素ガスと他のガスとが混合されたものであってもよい。上記他のガスとしては、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができるが、なかでも窒素を用いることが好ましい。さらに上記他のガスとして窒素を用いる場合、窒素の混合比率は50%以上であることが好ましい。
【0039】
また、上記プラズマ照射を実施する方法としては、ブラックマトリクスの撥液性を向上できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、または、大気圧下でプラズマ照射してもよい。なかでも、本工程においては特に大気圧下でプラズマ照射が行うことが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面おいて有利になるからである。
【0040】
(着色層形成用塗工液7の塗布)
着色層形成用塗工液7の塗布工程は、ブラックマトリクス3が備える開口部に、インクジェット方式により、着色層形成用塗工液を塗布する工程である。
【0041】
本工程に用いられる塗布方法としては、インクジェット方式により着色層形成用塗工液7を前述の開口部に塗布する方法であり、通常、着色層形成用塗工液7を塗布することができるノズルを複数備えるインクジェットヘッドが用いられる。
【0042】
本工程に用いられるインクジェットヘッドとしては、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの面積や開口部等に応じて、所望のノズル数を有するものであれば特に限定されず、一般的にインクジェット方式に用いられるインクジェットヘッドを用いることができる。
【0043】
なお、本工程に用いられるインクジェットヘッドのノズル数は、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの面積や、前述の開口部のピッチ等に応じて適宜決定すればよい。
【0044】
また、上記ノズルの配置態様としては、隣り合うノズルの間隔が常に一定となるような配置態様であれば特に限定されるものではなく、例えば、すべてのノズルが一直線上に配置された態様であってもよく、または、千鳥状に配置された態様であってもよい。
【0045】
また、上記ノズルの径としては、上記開口部の間隔やノズルから吐出される着色層形成用塗工液の吐出量等に応じて、上記ノズルから吐出される着色層形成用塗工液の液滴の径を、上記開口部の間隔よりも小さくできる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記カラーフィルタの種類等に応じて適宜調整すればよい。
【0046】
本工程に用いられるインクジェットヘッドが着色層形成用塗工液を吐出する吐出方式としては、所定量の着色層形成用塗工液を吐出できる方式であれば特に限定されるものではない。このような吐出方式としては、例えば、帯電した着色層形成用塗工液を連続的に吐出し磁場によって吐出量を制御する方式、圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式、着色層形成用塗工液を加熱しその発泡現象を利用して間欠的に吐出する方式等を挙げることができる。なかでも本工程においては、上記吐出方式として圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式を用いることが好ましい。このような吐出方式は微量な吐出量を比較的精度よく制御することができるからである。
【0047】
本工程に用いられる着色層形成用塗工液としては、インクジェット方式により、着色層を形成する際に、一般的に用いられるものと同様とすることができる。このような着色層形成用塗工液としては、通常、少なくとも赤(R)、緑(G)、青(B)を含む、3色以上の着色層形成用塗工液が用いられる。
【0048】
(紫外線9)
紫外線9は、一般的に基板の洗浄などに使用される紫外線であり、特に限定されるものではない。例えば、波長200〜400nmの紫外線を用いることができる。また、高圧水銀灯を用いて主に365nmの紫外線を発生させることができる。365nmでの露光量が1J以下であることが好ましく、さらに5mJ以上500mJ以下であることが好ましい。
【0049】
(低撥液箇所11)
撥液箇所5に紫外線を照射したり、酸素プラズマ処理を施したりすると、撥液性が低下し、低撥液箇所11となる。低撥液箇所11の撥液性は、室温において表面張力20〜40mN/mの液体との接触角が、60°以下となる程度であることが好ましく、室温において表面張力20〜40mN/mの液体との接触角が、55°以下となる程度であることが好ましい。さらに、室温において表面張力30mN/mの液体との接触角が、60°以下であることが好ましく、さらに55°以下であることが好ましい。
【0050】
(乾燥工程)
着色層形成用塗工液7の乾燥は、200℃〜250℃で30分〜50分の条件で行われる。
【0051】
(カラーフィルタの製造方法)
図1〜2においては、ある一色の着色層を形成する工程を説明したが、実際のカラーフィルタは、赤、青、緑などの3色以上の着色層を有するため、図1(b)の必要な色数の着色層形成用塗工液を塗布した後、図2(c)の紫外線照射工程や、図2(d)の乾燥工程を行う。なお、着色層の形成以外に、着色層及びブラックマトリクス上にオーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程や、着色層上にITOなどの透明電極を形成する透明電極形成工程や、対向基板とのセルギャップを均一にするためのスペーサーを所定の位置に形成するスペーサー形成工程や、液晶の配向を制御するための構造物を形成する配向制御構造物形成工程などを必要に応じて行うことで、実際のカラーフィルタは完成する。
【0052】
本発明によれば、着色層形成用塗工液の着弾時には、隣接画素への塗工液の侵入を防ぐのに十分な撥液性を有し、塗工液の乾燥時には撥液性が低下したブラックマトリクスを使用してカラーフィルタを製造することができる。
【0053】
その結果、本発明によれば、インクジェット方式により、画素内の膜厚の高低差の小さい着色層を有するカラーフィルタを製造することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例]
実施例1
1.ブラックマトリクス形成工程
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横100mm、縦100mmのCorning(コーニング)社製EAGLE2000を用意し、アルカリ性水溶液を用い洗浄した後、UVオゾン処理を施した。このガラス基板上にブラックマトリクス形成用材料として、撥液剤を含有するブラックマトリクス形成用材料を膜厚2.0μmとなるようスピンコーターで塗布した。この基板を減圧乾燥し、ホットプレートにて、80℃で3分間のプリベークを施した。
【0055】
所定のフォトマスクを用いUV露光装置にてマスク露光を実施し、続いてアルカリ現像を実施した後に純水にてリンスし、更にオーブンにて160℃で30分間のベイクを施した。
【0056】
また、ブラックマトリクスの撥液性を評価すると、水との接触角は90°、30mNの液体との接触角が55°であった。
【0057】
2.着色層形成工程
ブラックマトリクスを形成したガラス基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用塗工液を塗布した。塗工液はカラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用いた。
【0058】
このときのインクジェット装置は富士フィルム社製DimatixマテリアルプリンターDMP−2831を用い、塗布はブラックマトリクスの1つの開口部(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、かつインク吐出液滴が開口部内に着弾するように行った。
次いで、基板に露光量40mJで波長365nmの紫外線照射を行い、基板を減圧乾燥処理した。また、ブラックマトリクスの撥液性を評価すると、30mNの液体との接触角が45°であった。
次いで、基板を、オーブンを用い100℃にて20分間プリベークした。
【0059】
3.カラーフィルタの形成
次いで、オーブンにて230℃で40分間加熱し、カラーフィルタを形成した。
【0060】
実施例2
1´.ブラックマトリクス形成工程
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横370mm、縦470mmのCorning(コーニング)社製EAGLE2000を用意し、アルカリ性水溶液を用い洗浄した後、UVオゾン処理を施した。このガラス基板上にブラックマトリクス形成用材料として、カーボンブラックを含有したブラックマトリクス形成用材料を膜厚2.5μmとなるようスピンコーターで塗布した。この基板をホットプレートにて、80℃で3分間のプリベークを施した。
【0061】
所定のフォトマスクを用いUV露光装置にてマスク露光を実施し、続いてアルカリ現像を実施した後に純水にてリンスし、更にオーブンにて230℃で30分間のベイクを施した。
【0062】
次いで、ブラックマトリクス基板に対して、フッ素ガスを導入した大気圧プラズマ照射を行うことにより、ブラックマトリクス表面を撥液性にした。このようにして、撥液性を有するブラックマトリクスを形成した。また、得られたブラックマトリクスの、30mN/mの液体との接触角は、ブラックマトリクス表面で60°であった。
【0063】
2.着色層形成工程
ブラックマトリクスを形成したガラス基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用塗工液を塗布した。塗工液はカラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用いた。
【0064】
このときのインクジェット装置は富士フィルム社製DimatixマテリアルプリンターDMP−2831を用い、塗布はブラックマトリクスの1つの開口部(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、かつインク吐出液滴が開口部内に着弾するように行った。
次いで、基板に酸素プラズマ処理を行った。このときの、接触角は表面張力30mN/mの液体との接触角が50°であった。その後、基板を減圧乾燥処理した。
次いで、基板を、オーブンを用い100℃にて20分間プリベークした。
【0065】
3.カラーフィルタの形成
次いで、オーブンにて230℃で40分間加熱し、カラーフィルタを形成した。
【0066】
[比較例]
実施例とは、着色層を形成する工程が異なる。
1´.ブラックマトリクス形成工程
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横370mm、縦470mmの旭硝子社製AN100を用意し、アルカリ性水溶液を用い洗浄した後、UVオゾン処理を施した。このガラス基板上にブラックマトリクス形成用材料として、カーボンブラックを含有したブラックマトリクス形成用材料を膜厚2.0μmとなるようスピンコーターで塗布した。この基板をホットプレートにて、80℃で3分間のプリベークを施した。
【0067】
所定のフォトマスクを用いUV露光装置にてマスク露光を実施し、続いてアルカリ現像を実施した後に純水にてリンスし、更にオーブンにて230℃で30分間のベイクを施した。
【0068】
次いで、ブラックマトリクス基板に対して、フッ素ガスを導入した大気圧プラズマ照射を行うことにより、ブラックマトリクス表面を撥液性にした。このようにして、撥液性を有するブラックマトリクスを形成した。また、得られたブラックマトリクスの、30mN/mの液体との接触角は、ブラックマトリクス表面で60°、ガラス表面上で10°以下であった。
【0069】
2.着色層形成工程
ブラックマトリクスを形成したガラス基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用塗工液を塗布した。塗工液はカラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用いた。
【0070】
このときのインクジェット装置は富士フィルム社製DimatixマテリアルプリンターDMP−2831を用い、塗布はブラックマトリクスの1つの開口部(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、かつインク吐出液滴が開口部内に着弾するように行った。その後、基板を減圧乾燥処理した。次いで、基板を、オーブンを用い100℃にて20分間プリベークした。
【0071】
3.カラーフィルタの形成
次いで、オーブンにて230℃で40分間加熱し、カラーフィルタを形成した。
【0072】
[評価]
得られたカラーフィルタの各画素の膜厚の高低差を評価した。高低差は、高さプロファイルを、Micromap(株式会社 菱化システム社製)により測定し、同一画素内の端部と中央部の高低差を算出した。
また、ここでいう液体との接触角は、接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)した。
【0073】
[結果]
その結果、紫外線照射および酸素プラズマ処理を行った実施例においては各画素の同一画素内の端部と中央部の高低差がそれぞれ0.3μm、0.4μmであった。
一方、インクジェット法による着色層形成用塗工液の塗布後に紫外線照射および酸素プラズマ処理を行わなかった比較例においては各画素の膜厚の高低差が0.8μmであった。このことにより、実施例は比較例に比べて、各画素の膜厚の高低差が低く、形状が平坦化していることが確認できた。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0075】
1………基板
3………ブラックマトリクス
5………撥液箇所
7………着色層形成用塗工液
9………紫外線
11………低撥液箇所
13………着色層
15………着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に撥液性を有するブラックマトリクスを形成し、前記ブラックマトリクスの開口部に形成された着色層の少なくとも1色をインクジェット方式により形成するカラーフィルタの製造方法であって、
前記インクジェット方式により前記着色層を形成する工程が、
着色層形成用塗工液を塗布する工程と、
紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行う工程と、
前記紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行った後に乾燥を行う工程と、
を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記基板上に形成された撥液性を有するブラックマトリクスが、
基板上に、ブラックマトリクス形成用塗工液を塗布する工程と、
前記ブラックマトリクス形成用塗工液に、露光と現像を行い、開口部を有するブラックマトリクスを形成する工程と、
前記ブラックマトリクスに、撥液処理を施す工程と、
により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記基板上に形成された撥液性を有するブラックマトリクスが、
基板上に、撥液性を有する添加剤を含有するブラックマトリクス形成用塗工液を塗布する工程と、
前記ブラックマトリクス形成用塗工液に、露光と現像を行い、開口部を有するブラックマトリクスを形成する工程と、
により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行う前は、前記ブラックマトリクスの上部の表面の撥液性が、水との接触角が85°以上、または、表面張力20〜40mN/mの液体との接触角が45°以上であり、
紫外線照射および/または酸素プラズマ処理を行った後は、ブラックマトリクスの上部の表面の撥液性が、表面張力20〜40mN/mの液体との接触角が、60°以下となるであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−73507(P2012−73507A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219495(P2010−219495)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】