説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】平坦性の高い着色層を効率良く形成することが可能なカラーフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板1、および透明基板上に形成され開口部を備える遮光部2を有するブラックマトリクス基板10aの開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層3aを形成するインクジェット工程と、乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層3bが形成されたカラーフィルタ用基板10bを形成する減圧乾燥処理工程と、カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタ10を得るベーク処理工程とを有し、減圧乾燥処理工程では、乾燥後着色層の端部の膜厚が遮光部の膜厚よりも小さくならないように、乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置とした際に表示品質の良好なカラーフィルタを容易に製造することができるカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。また、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。さらに近年普及している液晶ディスプレイは大画面化の傾向があり、特に家庭用の液晶テレビに関してはその傾向が強くなってきている。
このような状況において、液晶ディスプレイを構成する部材については、より低コストで高品質なものを製造することが望まれている。特に液晶ディスプレイをカラー表示化させる機能を有するカラーフィルタは、従来高コストであったことからこのような要望が高まっている。
【0003】
ここで、一般的な液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタは、通常、基板と、上記基板上に形成され、複数の開口部を備える遮光部と、上記開口部内に形成された赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各色の着色層とを有するものである。
そして、このようなカラーフィルタのR、G、Bの各色に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がバックライトのシャッタとして作動し、R、G、Bのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
上記カラーフィルタを製造する方法として、従来からの方法としては染色法、顔料分散法等を用いた製造方法が挙げられるが、これらの方法に比べ、高生産性、かつ低コストでカラーフィルタを製造することが可能な方法として、近年では、インクジェット法を用いたカラーフィルタの製造方法が注目されている(特許文献1)。
このようなインクジェット法を用いたカラーフィルタの製造方法としては、まず、基板上の遮光部の開口部に、溶媒を含む着色層形成用塗工液をインクジェット装置を用いて塗布することにより、乾燥前の着色層が形成される。その後、上記乾燥前の着色層に含まれる溶媒を乾燥除去した後、加熱することにより着色層が形成される。
また、近年では、上記乾燥除去の工程においては、上記着色層を減圧環境下で乾燥させる減圧乾燥装置が用いられている(特許文献2〜6)。
【0005】
しかしながら、上記インクジェット法で形成されたカラーフィルタにおいては、着色層形成用塗工液と遮光部表面との親和性や遮光部の高さ、インクジェット装置から吐出される着色層形成用塗工液の量等の関係から、遮光部に囲まれた開口部における着色層の形状が、上記着色層の端部の膜厚が小さくなり、かつ上記着色層の中心部の膜厚が大きくなるような形状となる場合がある。そして、上記着色層の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差が大きい場合は、液晶表示装置とした場合に、表示品質に悪影響を及ぼすおそれがあるといった問題があった。
【0006】
このような問題を解決する方法として、減圧環境下で乾燥する減圧乾燥装置を用いた場合では、上記着色層を完全に乾燥させるのではなく、乾燥の中途段階で乾燥を中止し、減圧乾燥処理後の着色層(以下、乾燥後着色層と称して説明する場合がある。)にある程度流動性を持たせた状態で加熱することにより上記膜厚差を減少させ、平坦化させる方法が検討されている。
しかしながら、上記乾燥後着色層に含有される溶媒の含有量については、減圧乾燥処理の程度により異なり、上記乾燥後着色層中の溶媒の含有量が多すぎる場合、もしくは少なすぎる場合には、以下のような問題が生じる可能性があった。
【0007】
上記乾燥後着色層中の溶媒の含有量が多い場合は、加熱工程であるプリベーク処理において、上記乾燥後着色層中に含有される溶媒が突沸することにより、それぞれ遮光部により区画された開口部を越えて着色層同士が混色してしまうおそれがあった。また、この問題を解決するには、従来のプリベーク処理における温度よりも低温で長時間かけて処理を行うことも考えられるが、この場合は、カラーフィルタの製造効率を大幅に低下させてしまうといった問題があった。
また、上記乾燥後着色層中の溶媒の含有量が少ない場合には、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが困難となる可能性があるといった問題があった。
そこで、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能であり、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことが可能な減圧乾燥処理の条件が求められている。
【0008】
また、上述した方法で膜厚の異なる複数色の着色層を同時に形成した場合には、以下のような問題が生じる可能性がある。
すなわち、カラーフィルタは、通常、上述したように、赤色、緑色、および青色の3色の着色層で形成されるものであるが、用いられる液晶表示装置の種類によっては、各色のセルギャップを最適化する必要があり、特に青色着色層の膜厚を高くすることが求められる場合がある。このような場合には、上述したような平坦化を行った場合は、青色着色層形成用塗工液の盛り量を多くする必要があるため、他色の着色層と同様の条件で、減圧乾燥処理およびプリベーク処理を行った場合は、青色乾燥後着色層中に含有される溶媒は、他色の乾燥後着色層中に含有される溶媒よりも多くなることから、プリベーク処理時に青色乾燥後着色層中に含有される溶媒が突沸して、他色の着色層と混色してしまうといった問題が生じる可能性がある。また、一般に青色着色層を形成するための青色着色層形成用塗工液には、顔料濃度が低く流動性の高いものが用いられる場合があり、このような場合も同様に上述した平坦化の処理を行った場合には、他色の着色層と混色してしまうといった問題が生じる可能性がある。
【0009】
上述した問題があったことから、従来、高さの異なる複数色の着色層をインクジェット法を用いて同時に形成することは困難であり、膜厚の異なる着色層については別々に形成する必要があったことから、上述したインクジェット法を用いた着色層の形成工程を少なくとも2回以上行わなければならず、製造効率を高いものとすることが困難であった。
【0010】
そこで、高さの異なる複数色の着色層をインクジェット法を用いて同時に形成する場合においては、形成される複数色の着色層にそれぞれ所望の平坦性を付与することが可能であり、かつ各色の着色層が混色しないような減圧乾燥処理の条件が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−187111号公報
【特許文献2】特開2000−111252号公報
【特許文献3】特開平10−2665号公報
【特許文献4】特開平9−320949号公報
【特許文献5】特開平7−8704号公報
【特許文献6】特開平6−97061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、インクジェット法を用いた場合であっても、平坦性の高い着色層を効率良く形成することが可能なカラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することができ、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことができる、最小限の含有量とすることが可能な減圧乾燥処理の条件を見出した。
また、本発明者らは、上述した減圧乾燥処理の条件を用いることにより、膜厚の異なる複数色の着色層をインクジェット法を用いて同時に形成した場合であっても、それぞれの着色層に所望の平坦性を付与し、かつ、各色の着色層に混色を生じないカラーフィルタとすることができることを見出し、その結果、インクジェット法を用いた着色層の形成工程を1回行うだけで、膜厚の異なる複数の着色層を形成することができることから、カラーフィルタの製造効率を大幅に向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0014】
すなわち、本発明は、透明基板、および上記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、上記減圧乾燥処理工程において、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することにより、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタの着色層の平坦性を高いものとすることができる。また、プリベーク処理を短時間で行うことができることから、カラーフィルタの製造効率を高いものとすることが可能となる。
【0016】
本発明は、透明基板、および上記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率が、上記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10−3〜2.3×10−1の範囲内となるように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、上記減圧乾燥処理工程において、上記乾燥後着色層の最大膜厚および上記開口部の幅の比率が上記範囲内となるように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することにより、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタの着色層の平坦性を高いものとすることができる。また、プリベーク処理を短時間で行うことができることから、カラーフィルタの製造効率を高いものとすることが可能となる。
【0018】
本発明は、透明基板、および上記透明基板上に形成され、開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板と、上記ブラックマトリクス基板上の上記開口部に形成された複数色の着色層とを有し、上記複数色の着色層のうち、少なくとも1色の着色層の膜厚が、他の色の着色層の膜厚よりも小さくなるように形成されているカラーフィルタの製造方法であって、上記ブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、上記複数色の着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、最も膜厚の小さい上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、複数色の着色層のうち、最も膜厚の小さい乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能であり、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことができる、最小限の含有量とすることが可能となる。よって、他の膜厚を有する着色層については、上記プリベーク処理の条件で乾燥後着色層中の溶媒が突沸しない程度の膜厚を有する乾燥後着色層となるように、着色層形成用塗工液を厚膜に塗布して形成することが可能となるため、膜厚の異なる複数色の着色層をインクジェット法で同時に形成した場合であっても、それぞれの着色層に所望の平坦性を付与することが可能となり、かつ、各色の着色層の混色が生じないものとすることができる。
【0020】
本発明は、透明基板、および上記透明基板上に形成され、開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板と、上記ブラックマトリクス基板上の上記開口部に形成された複数色の着色層とを有し、上記複数色の着色層のうち、少なくとも1色の着色層の膜厚が、他の色の着色層の膜厚よりも小さくなるように形成されているカラーフィルタの製造方法であって、上記ブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、上記複数色の着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、最も膜厚の小さい上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率が、上記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10−3〜2.3×10−1の範囲内となるように、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0021】
本発明によれば、上述した減圧乾燥処理工程を有することにより、複数色の着色層のうち、最も膜厚の小さい乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能であり、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことができる、最小限の含有量とすることが可能となる。よって、他の膜厚を有する着色層については、上記プリベーク処理の条件で乾燥後着色層中の溶媒が突沸しない程度の膜厚を有する乾燥後着色層となるように、着色層形成用塗工液を厚膜に塗布して形成することが可能となるため、膜厚の異なる複数色の着色層をインクジェット法で同時に形成した場合であっても、それぞれの着色層に所望の平坦性を付与することが可能となり、かつ、各色の着色層の混色が生じないものとすることができる。
【0022】
本発明においては、上記複数色の着色層が、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有し、上記赤色着色層および上記緑色着色層が同等の膜厚を有し、かつ、上記青色着色層の膜厚よりも小さいことが好ましい。上記構成とすることにより、液晶表示装置に用いた際、青色画素領域の輝度を高いものとすることが可能なカラーフィルタとすることができる。
【0023】
本発明においては、上記ベーク処理工程では、上記プリベーク処理が、70℃〜110℃の範囲内で行われることが好ましい。上記プリベーク処理を上述した範囲の温度で行うことにより、着色層の平坦性をより高いものとすることが可能となるからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能であり、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことが可能となることから、製造効率の高いカラーフィルタの製造方法を提供することができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のカラーフィルタの製造方法において形成されるカラーフィルタ基板の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタの一例を示す概略平面図である。
【図4】本発明のカラーフィルタの製造方法におけるプリベーク処理の一例を示す工程図であるである。
【図5】カラーフィルタの製造方法におけるプリベーク処理の一例を示す工程図であるである。
【図6】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
【0027】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、減圧乾燥処理工程において、乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することができ、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことができる、最小限の含有量とすることが可能な減圧乾燥処理の条件を用いて、乾燥前着色層を減圧処理することを特徴とする製造方法である。
【0028】
本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタにおいて、着色層が所望の平坦性を有するとは、上記カラーフィルタを液晶表示装置に用いた際に、良好な画像表示を行うことが可能となる程度の平坦性を有することを示し、具体的には、着色層の最大膜厚と着色層の最小膜厚との膜厚差が、0.6μm以下であることを示すものとする。
なお、着色層の最大膜厚とは、遮光部の開口部に形成された着色層の膜厚において最大となる膜厚を指し、着色層の最小膜厚とは、遮光部の開口部に形成された着色層の膜厚において最小となる膜厚を指す。
なお、本発明における最大膜厚および最小膜厚は、光干渉方式の三次元非接触表面形状測定装置(例えば、米国マイクロマップ製 製品名Micromap 557N)により測定した値を用いるものとする。
【0029】
また、本発明において、プリベーク処理を短時間で行うことができるとは、一般的なカラーフィルタを製造する際に行われるプリベーク処理における処理温度、および処理時間でプリベーク処理を行った際に、乾燥後着色層中の溶媒が突沸しないことを示す。
ここで、乾燥後着色層中の溶媒が突沸しないとは、カラーフィルタの着色層形成用塗工液に用いられる溶媒の沸点が150℃〜300℃の範囲内であるとき、プリベーク処理の処理温度として70℃〜110℃の範囲内の温度でプリベーク処理を行った場合、乾燥後着色層中の溶媒が突沸して隣接する着色層同士が混色しないことを指す。なお、プリベーク処理温度について詳しくは後述するので、ここでの記載は省略する。
【0030】
上記減圧乾燥処理の条件としては、具体的には、減圧乾燥後の着色層の端部の膜厚が遮光部の膜厚よりも小さくならないような乾燥状態とすること、もしくは、減圧乾燥後の着色層の最大膜厚と着色層を形成する開口部の幅との比率が所定の範囲内となるような乾燥状態とすることの2つの減圧乾燥処理の条件を挙げることができる。
【0031】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法については、上述した減圧乾燥処理の条件の違いから、2つの態様に分けて説明する。
【0032】
1.第1態様のカラーフィルタの製造方法
本発明のカラーフィルタの製造方法の第1態様について説明する。
本態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板、および上記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とする製造方法である。
【0033】
本態様のカラーフィルタの製造方法について図を用いて説明する。図1は、本態様のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。ここで、図1においては、膜厚が同等の赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を同時に形成する例について示している。図1に示すように、本態様のカラーフィルタの製造方法においては、まず、透明基板1および透明基板1上に形成され、開口部を備える遮光部2を有するブラックマトリクス基板10aの上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層3a(図1(a)中では、赤色乾燥前着色層3Ra、緑色乾燥前着色層3Ga、青色乾燥前着色層3Ba)を形成するインクジェット工程(図1(a))が行われる。次に、乾燥前着色層3aを減圧乾燥処理して、乾燥後着色層3b(図1(b)中では、赤色乾燥後着色層3Rb、緑色乾燥後着色層3Gb、青色乾燥後着色層3Bb)が形成されたカラーフィルタ用基板10bを形成する減圧乾燥処理工程(図1(b))が行われる。次に、カラーフィルタ用基板10bに対して、プリベーク処理を行った後(図1(c))、ポストベーク処理を行い、着色層3(図1(d)中では、赤色着色層3R、緑色着色層3G、青色着色層3B)が形成されたカラーフィルタ10を得るベーク処理工程(図1(d))が行われる。本態様においては、以上の工程を経てカラーフィルタ10が製造される。
【0034】
また、本態様は、減圧乾燥処理工程において、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とする製造方法である。
ここで、「上記乾燥後着色層の端部の膜厚」とは、遮光部で区画された開口部に形成される乾燥後着色層において、遮光部に接触している部分の膜厚を示すものとする。
また、「遮光部の膜厚」とは、ベーク処理工程前の遮光部の膜厚を指すものである。
また、「上記乾燥後着色層の端部の膜厚が、上記遮光部の膜厚よりも小さくならない」とは、上記乾燥後着色層の端部の膜厚と、上記遮光部の膜厚との膜厚差が0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下、特に0μmであることを指すものとする。
なお、上記乾燥後着色層の端部の膜厚および遮光部の膜厚は、光干渉方式の三次元非接触表面形状測定装置(例えば、米国マイクロマップ製 製品名Micromap 557N)により測定した値を用いることとする。
【0035】
上記乾燥後着色層の端部の膜厚は、減圧乾燥処理の程度、すなわち上記乾燥後着色層の溶媒の含有量により決定されるものである。ここで、一定の開口部の幅により規定される一定の面積の開口部に形成される乾燥後着色層中の溶媒の含有量は、乾燥後着色層の最大膜厚とある程度相関するものであり、乾燥後着色層中の溶媒の含有量が多い程、その最大膜厚は大きくなり、上記溶媒の含有量が少ないほど、その最大膜厚は小さくなるものである。よって、本態様における「上記乾燥後着色層の端部の膜厚が、上記遮光部の膜厚よりも小さくならない」ことについては、上記乾燥後着色層の最大膜厚および上記開口部の幅の比率を用いても表すことが可能である。
このような乾燥後着色層の最大膜厚および上記開口部の幅の比率としては、上記開口部の幅を1としたとき、7.8×10−3〜2.3×10−1の範囲内、好ましくは、1.3×10−2〜1.8×10−1の範囲内、特に、1.8×10−2〜1.6×10−1の範囲内であるものとする。
【0036】
なお、上記乾燥後着色層の最大膜厚および上記開口部の幅の比率は、上記乾燥後着色層の最大膜厚をt、上記開口部の幅をuとした場合、t/uで示される値である。
また、乾燥後着色層の最大膜厚t、および開口部の幅uについては、光干渉方式の三次元非接触表面形状測定装置(例えば、米国マイクロマップ製 製品名Micromap 557N)により測定した値を用いるものとする。
上記比率の算出方法の具体例としては、ベーク処理工程前のシュリンク前の遮光部膜厚を2.7μm、図3に示される開口部の幅u1を100μm〜480μmの範囲内、開口部の幅u2を130μm〜600μmの範囲内とし、減圧乾燥後の乾燥後着色層の最大膜厚を遮光部の膜厚を基準として+2μm〜+20μm、中でも+5μm〜+15μm、特に+8μm〜+13μmとした場合、上記数値範囲を算出することができる。なお、図3については後述する。
【0037】
ここで、本態様における「乾燥後着色層の最大膜厚」とは、減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の最大膜厚を指し、図2において、tで示される距離を指すものとする。
また、「開口部の幅」とは、遮光部で区画された開口部の幅をいい、図2においては、uで示される距離を指すものとする。また、本態様における「開口部の幅」とは、カラーフィルタにおいて遮光部の開口部の形状が、図3に示されるように矩形状である場合は、短辺u1、または長辺u2を指すものとし、さらに上記遮光部の開口部が切り欠き部を有する場合は、切り欠き部を有さない領域での距離を指すものとする。
また、本発明において、乾燥後着色層の最大膜厚tおよび開口部の幅uの比率t/uについては、t/u1およびt/u2の両方が上述した数値範囲を満たすものとする。
なお、図2は、本態様における減圧乾燥処理工程において形成されるカラーフィルタ用基板の一例を示す概略断面図であり、図3は、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの一例を示す概略平面図である。また、図2および図3において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0038】
ここで本態様は、上記乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能となる、最小限の含有量とすることができる減圧乾燥処理条件として、乾燥後着色層の端部の膜厚が遮光部の膜厚よりも小さくならないようにすることを見出した点に特徴を有するものである。
上記乾燥後着色層の端部の膜厚が遮光部の膜厚よりも小さくならないようにすることにより、形成される着色層に所望の平坦性を付与することができる理由については明らかではないが、次のように考えることができる。
【0039】
図4および図5は、カラーフィルタの製造方法におけるプリベーク処理の一例を示す工程図である。また、図4(a)および図5(a)は、プリベーク処理前のカラーフィルタ用基板を示しており、図4(b)および図5(b)は、プリベーク処理後のカラーフィルタ用基板を示している。なお、図4および図5において説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
ここで、図4(a)に示すように、乾燥後着色層3bの端部の膜厚t1が遮光部2の膜厚よりも小さくならないように形成されている場合は、乾燥後着色層3bに接する遮光部2の上面に、微小膜厚を有する微小な乾燥後着色層(以下、遮光部上面微小着色層とする。)が形成されるものと考えられる。また、この場合、プリベーク処理時において、溶剤が揮発することにより乾燥後着色層3bの膜厚が減少していく過程においても、乾燥後着色層3bに接する遮光部2の上面には、上記遮光部上面微小着色層が存在するため、乾燥後着色層3bの端部は遮光部2上に位置することになり、プリベーク処理後に最終的に得られる乾燥後着色層3bは、図4(b)に示すように、乾燥後着色層3bの端部の膜厚t1と遮光部2の膜厚との膜厚差がほぼ無い形状となるものと考えられる。
【0040】
一方、図5(a)に示すように、乾燥後着色層3bの端部の膜厚t1が遮光部2よりも小さく形成されている場合は、乾燥後着色層3bと接している遮光部2上面に、上述した遮光部上面微小着色層が形成されないものと考えられる。この場合、プリベーク処理時において、溶剤が揮発することにより乾燥後着色層3bの膜厚が減少していく過程においては、乾燥後着色層3bに接する遮光部2の上面には、上記遮光部上面微小着色層が存在しないことから、乾燥後着色層3bの端部についてもその膜厚は減少してしまい、プリベーク処理後に最終的に得られる乾燥後着色層3bは、図5(b)に示すように、乾燥後着色層3bの端部の膜厚t1が小さく、乾燥後着色層3bの端部の膜厚t1と遮光部2の膜厚との膜厚差が大きい形状となるものと考えられる。
【0041】
ここで、遮光部2に区画された開口部に吐出される着色層形成用塗工液には、一定量の固形分が含まれており、減圧乾燥処理後にある程度溶剤が除去された場合であっても、乾燥後着色層に含有される上記固形分の量は変化しないものである。したがって、乾燥後着色層の体積が同じである場合は、図4(b)に示すように、乾燥後着色層3bの端部の膜厚および遮光部の膜厚の膜厚差が小さいほど、すなわち乾燥後着色層3bの端部の膜厚t1が大きいほど、遮光部により区画された乾燥後着色層の膜厚は均一なものとなることから、平坦性の高いものとなり、図5(b)に示すように、乾燥後着色層3bの端部の膜厚および遮光部2の膜厚の膜厚差が大きいほど、すなわち乾燥後着色層3bの端部t1の膜厚が小さいほど、乾燥後着色層3bの中心部の膜厚は大きくなり、乾燥後着色層の中心部および端部に膜厚差を生じ、平坦性の低いものとなることが推測される。
【0042】
よって、本態様によれば、上記減圧乾燥処理工程において、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することにより、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの着色層の平坦性を高いものとすることができる。また、プリベーク処理を短時間で行うことができることから、カラーフィルタの製造効率を高いものとすることが可能となる。
以下、本態様のカラーフィルタの製造方法における各工程についてそれぞれ説明する。
【0043】
(1)インクジェット工程
本工程は、透明基板、および上記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層を形成する工程である。
以下、本工程に用いられるブラックマトリクス基板、着色層形成用塗工液、および本工程により形成される乾燥前着色層についてそれぞれ説明する。
【0044】
(a)ブラックマトリクス基板
上記ブラックマトリクス基板は、透明基板、および上記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するものである。
【0045】
(i)透明基板
上記透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様のものを用いることができる。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明な無機基板、および、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明な樹脂基板の表面にSiO等の無機膜が形成されたもの等を挙げることができる。なかでも本工程においては無機基板を用いることが好ましい。上記ブラックマトリクス基板においては、遮光部が撥液性を有することが好ましく、上記遮光部を撥液化する方法としては、フッ素プラズマ処理を用いて樹脂製遮光部を撥液化する方法が好適に用いられるからである。
【0046】
さらに、本工程においては上記無機基板のなかでもガラス基板を用いることが好ましく、上記ガラス基板のなかでも無アルカリタイプのガラス基板を用いることが好ましい。上記無アルカリタイプのガラス基板は寸度安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、かつ、ガラス中にアルカリ成分を含まないことから、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに好適に用いることができるからである。
【0047】
(ii)遮光部
上記遮光部は、上述した透明基板上に形成されるものであり、開口部を備えるものである。
【0048】
本工程に用いられる上記遮光部としては、通常、開口部が等間隔で規則的に形成されたものが用いられる。ここで、上記開口部の具体的な形状等や配置態様は特に限定されるものではなく、本態様により製造されるカラーフィルタの用途等に応じて任意に決定することができる。本態様においては、上記開口部の形状が矩形状であることがより好ましい。また、上記開口部の形状が矩形状である場合は、図3に示すように、切り欠き部を有していてもよい。
【0049】
上記開口部の幅としては、製造されるカラーフィルタの用途等により適宜選択されるものであるが、上記開口部が矩形状であって、図3に示すように、短辺u1を開口部の幅とした場合は、100μm〜480μmの範囲内、なかでも120μm〜350μmの範囲内、特に145μm〜250μmの範囲内とすることが好ましい。
一方、上記開口部が矩形状であって、図3に示すように、長辺u2を開口部の幅とした場合は、130μm〜600μmの範囲内、なかでも150μm〜520μmの範囲内、特に170μm〜450μmの範囲内であることが好ましい。上記開口部の幅が上記範囲に満たない場合、もしくは上記範囲を超える場合は、本態様のカラーフィルタの製造方法を用いた場合であっても、良好な画像表示を行うことができるカラーフィルタを製造することが困難となる可能性があるからである。
【0050】
上記遮光部の膜厚としては、上記開口部を区画し、所望する膜厚の着色層をインクジェット法を用いて形成することができる程度の膜厚であれば特に限定されるものではないが、後述するベーク処理工程により、遮光部膜厚がシュリンクを起こさない遮光部である場合、1.0μm〜3.5μmの範囲内、なかでも1.5μm〜3.0μmの範囲内、特に2.0μm〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。上記遮光部の膜厚が上記範囲に満たない場合は、インクジェット法を用いて着色層を形成することが困難となる可能性があるからであり、上記遮光部の膜厚が上記範囲を超える場合は、カラーフィルタを薄膜に形成することが困難となる可能性があるからである。
なお、後述するベーク処理工程により、遮光部膜厚がシュリンクを起こす遮光部である場合は、ベーク処理工程前の遮光部の膜厚が上記数値範囲となることが好ましい。
【0051】
このような上記遮光部としては、所望の遮光性を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、遮光性材料および樹脂から構成されるものが用いられる。
【0052】
上記遮光性材料としては、一般的なカラーフィルタの樹脂製遮光部に用いられる材料を用いることができる。このような遮光性材料としては、例えば、カーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子等を挙げることができる。
【0053】
また、上記樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等を用いることができる。
【0054】
上記遮光部を形成する方法としては、上記開口部が所望の態様で配置された遮光部を形成できる方法であれば特に限定されるものではない。遮光性粒子を含有させた樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、および、上記樹脂組成物を用いた熱転写法等を挙げることができる。このような遮光部を形成する具体的な方法としては、一般的にカラーフィルタに用いられる遮光部を形成する方法と同様の方法を用いることができるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0055】
(iii)撥液化手段
上記遮光部は、撥液化されていることが好ましい。これにより、インクジェット法により、着色層形成用塗工液をブラックマトリクス基板上に塗布して乾燥前着色層を形成した際に、隣接する乾燥前着色層同士で混色が発生することを防止することが可能となるからである。
【0056】
本工程における撥液化の手段としては、上記ブラックマトリクス基板の遮光部に対して撥液化を行うことができる手段であれば特に限定されるものではない。例えば、遮光部上にのみ撥液性を有する撥液層が形成されるようにパターン状にフォトリソ法等により撥液層を形成する方法やメタルマスク等を用いプラズマ処理を行い遮光部上のみを撥液化する方法等であってもよい。
【0057】
本態様においては、容易にかつ高精度に遮光部を撥液化できることから、フッ素を導入ガスとして用いたプラズマ処理であるフッ素プラズマ処理により遮光部の撥液化を行うフッ素プラズマ工程を行うことが好ましい。このフッ素プラズマ処理は有機物に選択的にフッ素を付着させることができるからである。このようなフッ素プラズマ処理において、上記導入ガスに用いられるフッ素化合物としては、例えばCF、SF、CHF、C、C、C等を挙げることができる。
【0058】
また、上記導入ガスとしては、上記フッ素ガスと他のガスとが混合されたものであってもよい。上記他のガスとしては、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができるが、なかでも窒素を用いることが好ましい。さらに上記他のガスとして窒素を用いる場合、窒素の混合比率は50%以上であることが好ましい。
【0059】
また、上記プラズマ照射を実施する方法としては、上記遮光部の撥液性を向上できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、または、大気圧下でプラズマ照射してもよい。なかでも、本工程においては特に大気圧下でプラズマ照射を行うことが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面おいて有利になるからである。なお、上記プラズマ照射を行った後の、上記遮光部等におけるフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置(XPS : 例えば、V.G.Scientific社製 ESCALAB 220i-XL)による分析において、遮光部の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。なお、上記「撥液性」とは、後述する着色層形成用塗工液との接触角が大きいことを意味するものである。
【0060】
具体的には、上記遮光部の表面の上記着色層形成用塗工液との接触角が、上記基板表面の接触角よりも大きいものとすることができるものであれば良い。なかでも本工程においては、上記遮光部表面の、40mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、特に表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、さらには表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上となる程度であることが好ましい。
【0061】
(b)着色層形成用塗工液
次に本工程に用いられる着色層形成用塗工液について説明する。
本工程に用いられる着色層形成用塗工液としては、インクジェット装置により吐出可能なものであれば特に限定されるものではない。通常は、赤色着色層形成用塗工液、緑色着色層形成用塗工液、および青色着色層形成用塗工液等が用いられるが、上記の色以外の着色層形成用塗工液を用いることも可能である。
【0062】
上記着色層形成用塗工液としては、通常、溶媒、着色剤、および硬化成分等を含有するものが用いられる。
【0063】
上記溶媒としては、単一溶媒であっても良く、2種以上の溶媒を混合した混合溶媒であっても良い。
【0064】
上記溶媒としては、インクに含有されている着色剤と硬化成分を所望の濃度で溶解できるものであれば特に限定されるものではない。
【0065】
ここで、本態様において、上記溶媒の沸点については、後述する減圧乾燥処理工程において、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することが出来る程度の沸点であれば特に限定されるものではないが、通常は、後述するプリベーク処理を短時間で行うことができる溶媒が選択されるものである。このような溶媒の沸点としては、具体的には、150℃〜300℃の範囲内、なかでも180℃〜280℃の範囲内、特に200℃〜250℃の範囲内であることが好ましい。上記溶媒の沸点が上記範囲に満たない場合は、後述するプリベーク処理の処理時間が多くかかるからであり、上記溶媒の沸点が上記範囲を超えるような溶媒は通常用いられないからである。
【0066】
上記溶媒の沸点を考慮すると、このような溶媒としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、マロン酸ジメチル等を用いることが好ましい。
【0067】
上記着色剤としては、所望の波長の光を吸収することができるものであれば特に限定されるものではない。このような着色剤は染料系材料であってもよく、または、顔料系材料であってもよい。このような着色剤の具体例としては、一般的にカラーフィルタに用いられる着色剤と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0068】
上記硬化成分は、着色層を形成する際に上記着色剤を硬化させるものであり、通常、架橋可能なモノマー等が用いられる。このような硬化成分としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、アミド基等の置換基を有するアクリル樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、または、それらの変性物;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等のビニル系ポリマー等を挙げることができる。
また、本工程においてはこのような硬化成分を2種類以上用いてもよい。
【0069】
また、本工程に用いられる着色層形成用塗工液としては、上述した溶媒、着色剤、および硬化成分以外にも、必要な成分を適宜選択して追加することが可能である。このような成分としては、反応開始剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0070】
上記着色層形成用塗工液の固形分濃度としては、一般的なインクジェット法を用いた着色層の形成の際に用いられる着色層形成用塗工液の固形分濃度と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、固形分濃度とは、着色層形成用塗工液中の溶媒を除いたその他の成分の濃度を表すものである。
【0071】
上記着色層形成用塗工液の粘度としては、インクジェット法を用いて上記ブラックマトリクス基板上の開口部に所定の厚みを有する乾燥前着色層を形成することが可能な粘度であれば特に限定されるものではなく、インクジェット法を用いた一般的なカラーフィルタの製造方法において用いられる着色層形成用塗工液の粘度と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0072】
上記着色層形成用塗工液の表面張力としては、インクジェット法を用いて、上記ブラックマトリクス基板上に所定の膜厚を有する乾燥前着色層を形成することが可能な表面張力であれば、特に限定されるものではなく、インクジェット法を用いた一般的なカラーフィルタの製造方法において用いられる着色層形成用塗工液の表面張力と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0073】
(c)乾燥前着色層
本工程により形成される乾燥前着色層の平均膜厚としては、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの用途により、適宜選択して決定されるものである。
上記乾燥前着色層の平均膜厚としては、後述する減圧乾燥処理工程後の乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないようにすることができる程度の膜厚であれば特に限定されるものではないが、4.7μm以上、なかでも7.6μm以上、特に8.9μm以上であることが好ましい。上記乾燥前着色層の平均膜厚が上記範囲に満たない場合は、後述する減圧乾燥処理工程後の乾燥後着色層の端部の最大膜厚が、上記遮光部の膜厚よりも小さくなる可能性があるからである。また、上記乾燥前着色層の平均膜厚の上限については、乾燥前着色層が形成される開口部の大きさや、用いられる着色層形成用塗工液等により適宜選択されるものであるが、上記開口部に形成された乾燥前着色層が決壊しない程度の膜厚とされる。
なお、「乾燥前着色層の平均膜厚」とは、上記開口部に塗布される着色層形成用塗工液の塗工量を開口部の面積で割った値を指す。
【0074】
上記乾燥前着色層の形成方法としては、インクジェット法を用いた形成方法であれば特に限定されるものではない。
本工程に用いられるインクジェット法としては、上記開口部に対し着色層形成用塗工液を正確に吐出できる方法であれば良く、通常、上記着色層形成用塗工液を塗布することができるノズルを複数備えるインクジェットヘッドが用いられる。
本工程に用いられるインクジェットヘッドが着色層形成用塗工液を吐出する吐出方式としては、所定量の着色層形成用塗工液を吐出できる方式であれば特に限定されるものではない。このような吐出方式としては、例えば、帯電した着色層形成用塗工液を連続的に吐出し磁場によって吐出量を制御する方式、圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式、着色層形成用塗工液を加熱しその発泡現象を利用して間欠的に吐出する方式等を挙げることができる。なかでも本工程においては、上記吐出方式として圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式を用いることが好ましい。このような吐出方式は微量な吐出量を比較的精度よく制御することができるからである。
【0075】
(2)減圧乾燥処理工程
本工程は、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する工程であり、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理する工程である。
【0076】
なお、本態様において、「カラーフィルタ用基板」とは、減圧乾燥処理が行われた乾燥後着色層が形成されたブラックマトリクス基板を指すものであるが、本工程においては、減圧乾燥処理前および減圧乾燥処理中のブラックマトリクス基板についても、カラーフィルタ用基板と称して説明する場合がある。
【0077】
以下、減圧乾燥処理の条件、および減圧乾燥処理に用いられる減圧乾燥処理装置についてそれぞれ説明する。
【0078】
(a)減圧乾燥処理の条件
本工程においては、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することが可能であれば特に限定されるものではない。より具体的には、上記乾燥後着色層の端部の膜厚と上記遮光部の膜厚との膜厚差が0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下、特に0μmとなるように、乾燥前着色層を減圧乾燥処理するものである。上記膜厚差が上記範囲を超える場合は、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが困難となるからである。
【0079】
また、本工程においては、上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率が上述した範囲内となるように、乾燥前着色層を減圧乾燥処理するものである。なお、上述したように、本発明における乾燥後着色層の最大膜厚および開口部の幅の比率は、図3に示す開口部の幅u1およびu2を用いて算出された値の両方ともを満たす数値である。
【0080】
本工程により形成される乾燥後着色層の最大膜厚としては、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならない程度の膜厚であれば特に限定されるものではなく、具体的には、遮光部の開口部の幅が上述した数値範囲である場合において4.7μm〜22.7μmの範囲内、なかでも4.7μm〜17.7μmの範囲内とすることが好ましい。上記乾燥後着色層の最大膜厚が上記範囲に満たない場合は、上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくなる可能性があることから、形成される着色層に所望する平坦性を付与することが困難となる可能性があるからである。
また、本工程においては、上記乾燥後着色層の最大膜厚の上限については、上記乾燥後着色層中の溶媒が後述するプリベーク処理において突沸しない程度の厚膜であれば特に限定されるものではないが、本態様のカラーフィルタの製造方法においては、上記プリベーク処理の処理時間については短時間であることが好ましいことから、上記乾燥後着色層の最大膜厚については上記範囲を超えないものであることが好ましい。
【0081】
本工程における減圧乾燥処理の処理温度としては、減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することができる温度であれば特に限定されるものではないが、低温であると減圧乾燥処理に時間がかかるため、製造効率が低下するおそれがあり、高温であると溶媒除去が一気に生じるため、好ましくない。したがって、本工程における好ましい処理温度としては、30℃〜60℃の範囲内が好ましく、なかでも35℃〜55℃の範囲内、特に40℃〜50℃の範囲内であることがより好ましい。
【0082】
上記減圧乾燥処理の処理時間としては、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの大きさ等により適宜決定されるものである。
【0083】
本工程に用いられる減圧乾燥処理の条件の決定方法としては、本工程により形成される乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、乾燥前着色層を減圧乾燥処理することができるような条件に決定することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、予め設計用のブラックマトリクス基板に乾燥前着色層を形成し、これを減圧乾燥処理することで、乾燥後着色層の端部の膜厚および遮光部の膜厚の膜厚差が上述した関係を満たすような種々の条件を設定し、これを本工程に用いる方法等を好適に用いることが可能である。
【0084】
(b)減圧乾燥処理装置
次に、本工程に用いられる減圧乾燥処理装置について説明する。
本工程に用いられる減圧乾燥処理装置としては、カラーフィルタの製造に一般的に用いられるものを使用することができる。
具体的には、上記カラーフィルタを加熱する加熱手段と、上記加熱手段を収納するチャンバーと、上記チャンバー内を所望の圧力まで減圧する減圧手段とを有するものを挙げることができる。
【0085】
(i)加熱手段
上記加熱手段としては、上記カラーフィルタ用基板を所望の温度に加熱することができるものであれば良い。
このような加熱手段としては、ホットプレート、電熱線、ランプ、赤外線放射装置等を挙げることができる。本態様においては、なかでも、ホットプレートであることが好ましい。ホットプレート全体が加熱されるものであることから、他の加熱手段にあるような温度が低い特定箇所が存在せず、揮発した溶媒がその部分で急激に冷やされて結露が生じ、当該結露がカラーフィルタ用基板に滴下して、上記開口部に形成された着色層に決壊を生じ混色を引き起こす等の不具合がないからである。さらに、カラーフィルタ用基板を平面視上均一に加熱することが容易であり、上記乾燥前着色層を乾燥することにより形成される着色層を平坦性に優れたものとすることができるからである。
【0086】
減圧乾燥処理装置に用いられる加熱手段の加熱能力としては、上記カラーフィルタ用基板を所望の温度に加熱することができるものであれば良い。具体的には、上記カラーフィルタ用基板を、30℃〜60℃の範囲内、なかでも35℃〜55℃の範囲内、特に40℃〜50℃の範囲内に加熱することができるものであることが好ましい。上記範囲内であることにより、上記溶媒を効率よく除去することができるからである。なお、上記温度は、カラーフィルタ用基板自体の温度を示すものではなく、加熱手段による処理温度を示すものである。
【0087】
また、上記加熱手段の上記カラーフィルタ用基板に対する配置としては、上記カラーフィルタ用基板を下方から加熱するように、上記加熱手段が上記カラーフィルタ用基板の下方に配置されるものであっても良く、上記カラーフィルタ用基板を上方から加熱するように、上記加熱手段が上記カラーフィルタ用基板の上方に配置されるものであっても良い。本態様においては、なかでも、上記カラーフィルタ用基板を上下の両面から加熱するように、上記カラーフィルタ用基板の下方と上方とに配置されるものであることが好ましい。上述したように、着色層に決壊を生じて混色を引き起こす等の不具合がなく、さらに上記カラーフィルタ用基板を平面視上均一に加熱することができることにより、着色層を平坦性に優れたものとすることができるからである。
【0088】
(ii)チャンバー
上記チャンバーとしては、その内部に、上記加熱手段を収容することができ、乾燥時に密閉性が高いものとすることができるものであれば良い。
上記チャンバーの形状およびサイズとしては、乾燥するカラーフィルタ用基板のサイズ等に応じて適宜設定するものである。
【0089】
(iii)減圧手段
減圧乾燥処理装置における減圧手段は、上記チャンバー内を減圧するものである。このような減圧手段としては、真空ポンプ等の一般的な減圧装置を用いることができる。
【0090】
減圧乾燥処理装置に用いられる減圧手段の減圧能力としては、上記チャンバー内を、上記カラーフィルタ用基板を所望の速度で乾燥することができる圧力とすることができるものであれば良い。具体的には、上記チャンバー内の減圧下定常圧力を、4Pa未満の範囲とすることができるものであることが好ましく、なかでも1Pa未満の範囲とすることができるものであることが好ましい。上記範囲であることにより、上記溶媒を容易に除去することができるからである。
【0091】
なお、減圧下定常圧力は、上記減圧乾燥装置のチャンバー内を空にした状態、すなわち、カラーフィルタ用基板や、結露した溶媒が全くない状態で、減圧乾燥した際に到達する平衡圧力をいうものである。また、平衡圧力とは、一定状態となった圧力であり、より具体的には、90秒間の圧力が、90秒間の平均圧力を基準として、上記平均圧力の上下10%以内に含まれる状態における上記平均圧力をいうものである。
【0092】
(3)ベーク処理工程
本工程は、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタを得る工程である。以下、本工程におけるプリベーク工程およびポストベーク工程についてそれぞれ説明する。
【0093】
(a)プリベーク処理
本工程におけるプリベーク処理とは、乾燥後着色層内に残存する溶媒を除去すると同時に、上述したように、着色層の平坦化を行う処理である。
ここで、乾燥後着色層中の溶媒が突沸しないとは、カラーフィルタの着色層形成用塗工液に用いられる溶媒の沸点が150℃〜300℃の範囲内である場合に、プリベーク処理の処理温度として70℃〜110℃の範囲内の温度でプリベーク処理を行った場合、乾燥後着色層中の溶媒が突沸して隣接する着色層同士が混色しないことを指す。上記プリベーク処理の温度としては、より好ましくは80℃〜100℃の範囲内である。上記温度範囲より処理温度が低い場合は、着色層中の溶媒除去不足によりポストベーク処理工程での突沸混色が発生しやすく、また上記処理温度より高い場合は、着色層中の急激な溶媒揮発によりプリベーク処理工程での突沸による混色が発生しやすく、着色層の形状も悪化する傾向にあるからである。
また、上記プリベーク処理における処理時間としては、カラーフィルタ基板の大きさ等により適宜選択されるものであるが、5分〜60分の範囲内が好ましい。
【0094】
本態様においては、上述したプリベーク処理の温度および処理時間の範囲内においては、より低温で長時間かけてプリベーク処理を施すことが好ましい。低温で長時間かけてプリベーク処理を施すことにより、形成される着色層をより平坦性の高いものとすることが可能となるからである。
この理由については、明らかではないが、次のように考えることができる。
プリベーク処理においては、開口部に形成された乾燥後着色層において、膜厚の大きい乾燥後着色層の中心部から膜厚の小さい乾燥後着色層の端部へと乾燥後着色層を流動させることにより着色層の平坦化が行われるものと考えられる。そのため、プリベーク処理における処理温度を低くし、処理時間を長くするほど、乾燥後着色層が流動する時間を長くすることができることから、形成される着色層の平坦性を向上させることが可能となることが考えられる。
【0095】
このようなプリベーク処理は、通常、クリーンオーブン等が用いられる。
【0096】
(b)ポストベーク処理
本工程におけるポストベーク処理は、上記プリベーク処理により溶媒が完全に除去された着色層を硬化させるために行うものであり、この処理においてもある程度の平坦化がなされる。
本工程におけるポストベーク処理は、通常のポストベーク処理と同様で、具体的には、160℃〜250℃の範囲内、特に200℃〜240℃の範囲内が好ましい。また、処理時間としては、10分〜120分の範囲内、特に20分〜80分の範囲内が好ましい。
このようなポストベーク処理も、通常、クリーンオーブン等が用いられる。
【0097】
本工程により形成される着色層の平均膜厚としては、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの用途により適宜選択されるものであるが、1.5μm〜3.0μmの範囲内、なかでも1.8μm〜2.7μmの範囲内であることが好ましい。上記着色層の膜厚が上記範囲に満たない場合は、本態様のカラーフィルタの製造方法を用いた場合であっても、平坦性の高い着色層を形成することが困難であるからであり、上記着色層の膜厚が上記範囲を超える場合は、カラーフィルタを薄膜に形成することが困難となるからである。
なお、着色層の平均膜厚は、光干渉方式の三次元非接触表面形状測定装置(例えば、米国マイクロマップ製 製品名Micromap 557N)により測定した値を用いるものとする。
【0098】
(4)その他の工程
本態様においては、必要に応じてその他の工程を行ってもよい。具体的には、上記撥液化処理工程の前に、水洗工程が施されてもよい。また、上記ベーク工程の後に、透明電極を形成するためのITO膜形成工程が行われてもよい。さらに、着色層上に形成される保護層や柱状スペーサを形成する工程等が行われてもよい。
【0099】
(5)カラーフィルタの製造方法
本態様のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタとしては、少なくとも1色の着色層が上述した各工程を経て形成されたものであれば特に限定されるものではなく、カラーフィルタが有する着色層の全てが、上述した各工程で形成されたものであってもよい。
また、本態様のカラーフィルタの製造方法は、例えば赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有するカラーフィルタにおいて、赤色着色層および緑色着色層の膜厚が青色着色層も小さく形成されている、セミマルチギャップ構造を有するカラーフィルタや、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層の膜厚が全て異なるマルチギャップ構造を有するカラーフィルタを製造する際にも用いることが可能である。
【0100】
ここで、膜厚の異なる複数色の着色層を有するカラーフィルタを製造する際に、本態様のカラーフィルタの製造方法を用いた場合は、1回の形成工程により、膜厚の異なる複数色の着色層を同時に形成することが可能となることから、カラーフィルタの製造効率を大幅に向上させることができるため有効である。
以下、本態様のカラーフィルタの製造方法を、膜厚の異なる複数色の着色層を有するカラーフィルタを製造する場合に適用した態様(以下、Aの態様とする)について説明する。
【0101】
(Aの態様)
本態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板、および上記透明基板上に形成され、開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板と、上記ブラックマトリクス基板上の上記開口部に形成された複数色の着色層とを有し、上記複数色の着色層のうち、少なくとも1色の着色層の膜厚が、他の色の着色層の膜厚よりも小さくなるように形成されているカラーフィルタの製造方法であって、上記ブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、上記複数色の着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、最も膜厚の小さい上記乾燥後着色層の端部の膜厚が上記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とする製造方法である。
【0102】
本態様のカラーフィルタの製造方法について図を用いて説明する。図6は、本態様のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。また、図6においては、赤色着色層および緑色着色層が青色着色層よりも小さくなるように形成される、セミマルチギャップ構造を有するカラーフィルタを製造する例について示している。
本態様のカラーフィルタの製造方法においては、まず、透明基板1および遮光部2からなるブラックマトリクス基板10aの上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層3a(図6(a)においては、赤色乾燥前着色層3Ra、緑色乾燥前着色層3Ga、および青色乾燥前着色層3Ba)を形成するインクジェット工程(図6(a))が行われる。次に、複数色の乾燥前着色層3aを減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層3b(図6(b)においては、赤色乾燥後着色層3Rb、緑色乾燥後着色層3Gb、および青色乾燥後着色層3Bb)が形成されたカラーフィルタ用基板10bを形成する減圧乾燥処理工程(図6(b))が行われる。次に、カラーフィルタ用基板10bに対して、プリベーク処理を行った後(図6(c))、ポストベーク処理を行い、複数色の着色層3(図6(d)においては、赤色乾燥後着色層3R、緑色乾燥後着色層3G、および青色乾燥後着色層3B)が形成されたカラーフィルタ10を得るベーク処理工程(図6(c)〜(d))が行われる。また、減圧乾燥処理工程では、図6(b)に示されるように、赤色乾燥後着色層3Rbおよび緑色乾燥後着色層3Gbの膜厚が、遮光部2の膜厚よりも小さくならないように、赤色乾燥前着色層3Raおよび緑色乾燥前着色層3Gaが減圧乾燥処理される。
【0103】
本発明によれば、複数色の着色層のうち、最も膜厚の小さい乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能であり、かつ、プリベーク処理を短時間で行うことができる、最小限の含有量とすることが可能となる。よって、他の膜厚を有する着色層については、上記プリベーク処理の条件で乾燥後着色層中の溶媒が突沸しない程度の膜厚を有する乾燥後着色層となるように、着色層形成用塗工液を厚膜に塗布して形成することが可能となるため、膜厚の異なる複数色の着色層を同時に形成した場合であっても、それぞれの着色層に所望の平坦性を付与することが可能となり、かつ、各色の着色層の混色が生じないものとすることができる。よって、膜厚の異なる複数の着色層ごとに形成工程を分けて形成する必要がなく、1回の形成工程で形成することが可能となることから、製造効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0104】
ここで、本態様においては、最も膜厚の小さい着色層については、上述したカラーフィルタの製造方法を適用して形成することができる。また、本態様においては、上記最も膜厚の小さい着色層を形成する際に行われる減圧乾燥処理工程およびベーク処理工程と同様の環境において、他の膜厚の着色層についても、所望の平坦性を有し、かつ、各色の着色層に混色が生じないようにする必要がある。以下、上記他の膜厚の着色層を形成する方法について説明する。
なお、以下に説明しない形成条件については、上述した最も膜厚の小さい着色層の形成方法と同様とすることができるので、その記載については省略する。
【0105】
上記インクジェット工程において形成される乾燥前着色層の平均膜厚としては、減圧乾燥処理工程後の乾燥後着色層の最大膜厚が、プリベーク処理において上記乾燥後着色層中の溶媒が突沸しないような膜厚とすることが可能であれば特に限定されるものではなく、7.7μm以上、特に10.0μm以上であることが好ましい。上記乾燥前着色層の膜厚が上記範囲に満たない場合は、形成される着色層と、上述した最も膜厚の小さい着色層とに所望の膜厚差を形成することが困難となる可能性があるからであり、上記乾燥前着色層の膜厚が上記範囲を超える場合は着色層を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0106】
本態様における減圧乾燥処理工程において形成される乾燥後着色層の最大膜厚としては、プリベーク処理において乾燥後着色層中の溶媒が突沸し、着色層同士の混色が生じないような膜厚とすることが可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、7.7μm〜22.7μmの範囲内であることが好ましい。乾燥後着色層の膜厚が上記範囲に満たない場合は、形成される着色層と、上述した最も膜厚の小さい着色層とに所望の膜厚差を形成することが困難となる可能性があるからであり、上記乾燥後着色層の膜厚が上記範囲を超える場合は、乾燥後着色層中の溶媒の含有量が多いことから、プリベーク処理の際に着色層同士の混色が生じる可能性があるからである。
【0107】
Aの態様の製造方法により製造されるカラーフィルタとしては、膜厚の異なる複数色の着色層を有するものであれば、特に限定されるものではないが、赤色着色層および緑色着色層の膜厚が青色着色層の膜厚よりも小さくなるように形成された、セミマルチギャップ構造を有するカラーフィルタであることが好ましい。上記構成のカラーフィルタは、液晶表示装置に用いた場合に、青色画素領域の輝度を高いものとすることができることから、良好な画像表示を行うことができるからである。
【0108】
2.第2態様のカラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法の第2態様について説明する。
本態様のカラーフィルタの製造方法は、上記減圧乾燥処理工程では、上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率が、上記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10−3〜2.3×10−1の範囲内となるように、上記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とする製造方法である。
【0109】
ここで、上述した「1.第1態様のカラーフィルタの製造方法」の項で説明したように、乾燥後着色層の端部の膜厚については、上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率と相関するものである。そこで、本態様は、上記乾燥後着色層中の溶媒の含有量を、形成される着色層に所望の平坦性を付与することが可能となる、最小限の含有量とすることができる減圧乾燥処理条件を、上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率を用いて表したものである。
【0110】
なお、本態様のカラーフィルタの製造方法における各工程については、上述した第1態様のカラーフィルタの製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
本態様のカラーフィルタの製造方法も、上述した第1態様のカラーフィルタの製造方法と同様に、膜厚の異なる複数色の着色層を有するカラーフィルタを製造する際に好適に用いることが可能である。
以下、本態様のカラーフィルタの製造方法を、膜厚の異なる複数色の着色層を有するカラーフィルタを製造する場合に適用した態様(以下、Bの態様とする)について説明する。
【0112】
(Bの態様)
本態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基板、および上記透明基板上に形成され、開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板と、上記ブラックマトリクス基板上の上記開口部に形成された複数色の着色層を有し、上記複数色の着色層のうち、少なくとも1色の着色層の膜厚が、他の色の着色層の膜厚よりも小さくなるように形成されているカラーフィルタの製造方法であって、上記ブラックマトリクス基板の上記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、上記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、上記複数色の着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、上記減圧乾燥処理工程では、最も膜厚の小さい上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率が、上記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10−3〜2.3×10−1の範囲内となるように、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とする製造方法である。
【0113】
ここで、本態様においても、最も膜厚の小さい着色層については、上述したカラーフィルタの製造方法を用いて形成することができる。また、他の膜厚の着色層の形成方法については、上述したAの態様のカラーフィルタの製造方法の項で説明した、最も小さい膜厚の着色層以外の着色層を形成する方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
なお、本態様においては、赤色着色層および緑色着色層の膜厚が青色着色層の膜厚よりも小さく形成されているセミマルチギャップ構造のカラーフィルタを製造することが好ましい。また、その際は、最も膜厚の小さい上記乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率が、上記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10−3〜1.8×10−1の範囲内となるように、上記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することがより好ましい。
なお、上記数値範囲については例えば次のように算出することができる。
ベーク処理工程前のシュリンク前の遮光部膜厚を2.7μm、図3に示される開口部の幅u1を100μm〜480μmの範囲内、開口部の幅u2を130μm〜600μmの範囲内とし、減圧乾燥後の乾燥後着色層の最大膜厚を遮光部の膜厚を基準として+2μm〜+15μmとした場合、上記数値範囲を算出することができる。
【0115】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0116】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0117】
I.減圧乾燥処理の条件について
1.ブラックマトリクス基板(BM基板)の作製
(遮光部の形成)
ガラス基板(横長さ2850mm×縦長さ3050mm×厚み0.7mmコーニングジャパン社製)(透明基板)上に遮光性黒色顔料を含む感光性樹脂組成物を用い、フォトリソグラフィー法により遮光部を形成して、40インチサイズの画面を18面形成した。1面あたり、1画素が横方向ピッチ115μm、縦方向ピッチ465μmで開口部寸法が100μm×450μm、遮光部線幅が15μmとなるように形成し、横方向に115μmピッチで5525画素、縦方向に465μmピッチで1070画素並ぶように配置した画素パターン(チップ)を形成した。また、上記遮光部の厚みは、ベーク処理工程前のシュリンクを起こしていない状態で2.7μm、カラーフィルタとした際に最終的に得られる遮光部の厚みは、20画素の平均で2.4μmであった。また、上記開口部の幅は図3のu1が100μm、u2が450μmであった。
【0118】
(水洗工程)
上記遮光部が形成された透明基板を搬送しながら高圧スプレーにより純水を吹き付ける洗浄装置を使用し、水噴き付け後にはエアーナイフを使用し、上記透明基板上の水を吹き流した。
【0119】
(撥水化処理工程)
次いで、上記透明基板の遮光部側表面に対して、フッ素ガスを導入した大気圧プラズマ処理を行うことにより、遮光部層表面を撥液性にガラス表面部分を親液性とした。大気圧プラズマ処理は以下の条件で行った。このようにして、BM基板を作製した。また、得られたカラーフィルタ形成用基板の、40mN/mの液体との接触角は、遮光層表面の20箇所の測定値の平均で60°、ガラス表面上で10°であった。なお、この接触角は、接触角測定器(協和界面科学(株)製CA-Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から得たものである。
【0120】
<プラズマ照射条件>
・導入ガス:CF…17.1L/min、N…97.3L/min
・周波数:29Hz
・電源出力:420V−5a
【0121】
2.インクジェット工程および減圧乾燥処理工程
(着色層形成用塗工液の調製)
赤色、緑色、および青色の着色層形成用塗工液を下記の処方で調製した。
【0122】
<赤色着色層形成用塗工液>
・顔料:R254/R242/Y150 7.04質量部
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 4.22質量部
・主溶媒:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 73.20質量部
・副溶媒:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量部
・バインダ:GMAアクリル系樹脂 5.54質量部
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.09質量部
P/V比は0.73、固形分濃度は16.8%、粘度は9.8CPSであった。なお、粘度は、落球式粘度計を用い、室温(23℃)で測定した値である。
【0123】
<緑色着色層形成用塗工液>
・顔料:G36/Y150/R254 8.11質量部
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 4.87質量部
・主溶媒:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 65.30質量部
・副溶媒:3−エトキシプロピオン酸エチル 15.00質量部
・バインダ:GMAアクリル系樹脂 6.72質量部
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.09質量部
P/V比は0.70、固形分濃度は21.0%、粘度は9.8CPSであった。なお、粘度は、落球式粘度計を用い、室温(23℃)で測定した値である。
【0124】
<青色着色層形成用塗工液>
・顔料:B156/V23 2.85質量部
・分散剤:アジスパーPb821(味の素ファインケミカル) 1.71質量部
・主溶媒:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 69.00質量部
・副溶媒:3−エトキシプロピオン酸エチル 10.00質量部
・バインダ:GMAアクリル系樹脂 16.45質量部
・レべリング剤:LHP−90(楠本化成) 0.06質量部
P/V比は0.20、固形分濃度は21.0%、粘度は10.0CPSであった。なお、粘度は、落球式粘度計を用い、室温(23℃)で測定した値である。
【0125】
(インクジェット工程および減圧乾燥処理工程)
以下、実施例1〜13および比較例1〜6に示すように、上記BM基板上にインクジェット装置を用いて各色の着色層形成用塗工液を吐出して乾燥前着色層を形成し、ホットプレートを用いた加熱減圧乾燥装置を用いて、それぞれの減圧乾燥処理の条件で減圧乾燥処理を行った。なお、以下に示す各色の着色層形成用塗工液の塗布量は、いずれもポストベーク処理後の着色層の膜厚として、赤色着色層および緑色着色層の膜厚が2.1μm、青色着色層の膜厚が2.4μmとなる塗布量である。
また、減圧乾燥処理の温度はいずれも40℃であった。
【0126】
[実施例1]
赤色着色層形成用塗工液を用いて、赤色乾燥前着色層を形成し、減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+2μmの高さ(最大膜厚4.7μm)となるまで、赤色乾燥前着色層を減圧乾燥処理した。これによりカラーフィルタ基板を得た。
【0127】
[実施例2]
減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+6μm(最大膜厚8.7μm)の高さとなるまで、赤色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例1と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0128】
[実施例3]
減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+8μm(最大膜厚10.7μm)の高さとなるまで、赤色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例1と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0129】
[実施例4]
減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+15μm(最大膜厚17.7μm)の高さとなるまで、赤色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例1と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0130】
[実施例5]
緑色着色層形成用塗工液を用いて、緑色乾燥前着色層を形成し、減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+2μm(最大膜厚4.7μm)の高さとなるまで、緑色乾燥前着色層を減圧乾燥処理した。これによりカラーフィルタ基板を得た。
【0131】
[実施例6]
減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+6μm(最大膜厚8.7μm)の高さとなるまで、緑色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例5と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0132】
[実施例7]
減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+8μm(最大膜厚10.7μm)の高さとなるまで、緑色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例5と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0133】
[実施例8]
減圧乾燥処理後の乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+15μm(最大膜厚17.7μm)の高さとなるまで、緑色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例5と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0134】
[実施例9]
青色着色層形成用塗工液を用いて、青色乾燥前着色層を形成し、減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+5μm(最大膜厚7.7μm)の高さとなるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理した。これによりカラーフィルタ基板を得た。
【0135】
[実施例10]
青色着色層形成用塗工液を用いて、青色乾燥前着色層を形成し、減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+7μm(最大膜厚9.7μm)の高さとなるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理した。これによりカラーフィルタ基板を得た。
【0136】
[実施例11]
減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+12μm(最大膜厚14.7μm)の高さとなるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例9と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0137】
[実施例12]
減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+15μm(最大膜厚17.7μm)の高さとなるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例9と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0138】
[実施例13]
減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+20μm(最大膜厚22.7μm)の高さとなるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例9と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0139】
なお、実施例1〜13においては、いずれも乾燥前着色層の端部の膜厚は遮光部の膜厚より小さくなっていなかった。
【0140】
[比較例1]
減圧乾燥処理後の赤色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに−0.2μmの高さ(最大膜厚2.5μm)となるまで、赤色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例1と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0141】
[比較例2]
減圧乾燥処理後の緑色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに−0.2μmの高さ(最大膜厚2.5μm)となるまで、緑色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例5と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0142】
[比較例3]
減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+0.5μmの高さ(最大膜厚3.2μm)となるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例9と同様にカラーフィルタ基板を得た。なお、青色乾燥後着色層の端部の膜厚は、遮光部の膜厚よりも小さいものとなった。
【0143】
[比較例4]
減圧乾燥処理後の赤色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+21μm(最大膜厚23.7μm)の高さとなるまで、赤色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例1と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0144】
[比較例5]
減圧乾燥処理後の緑色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+21μm(最大膜厚23.7μm)の高さとなるまで、緑色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例5と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0145】
[比較例6]
減圧乾燥処理後の青色乾燥後着色層の高さが、遮光部を基準としたときに+24μm(最大膜厚26.7μm)の高さとなるまで、青色乾燥前着色層を減圧乾燥処理したこと以外は、実施例9と同様にカラーフィルタ基板を得た。
【0146】
3.ベーク処理工程
実施例1〜13および比較例1〜6で得られたカラーフィルタ用基板に、クリーンオーブンにて、100℃で20分間プリベーク処理を行い、次いで、クリーンオーブンにて、230℃で40分間ポストベーク処理を行い、カラーフィルタを得た。
【0147】
4.評価
実施例1〜13および比較例1〜6で得られたカラーフィルタについて、着色層の決壊混色の有無、および着色層の最大膜厚および最小膜厚の差についてそれぞれ調べた。結果を表1に示す。なお、決壊混色とは、各色の着色層が遮光部を越えて混色することを指す。また、上記着色層の最大膜厚および最小膜厚の差については、光干渉方式の三次元非接触表面形状計測装置(米国マイクロマップ製 製品名Micromap557N)にて測定した。
結果を表1に示す。なお、表1中、t(μm)は乾燥後着色層の最大膜厚、t/uは、乾燥後着色層の最大膜厚と上記開口部の幅との比率(開口部の幅を1とした場合)を示すものである。
【0148】
【表1】

【0149】
実施例1〜13のカラーフィルタにおいては、決壊混色が発生せず、各色の着色層の膜厚差についても、比較例1〜3に対して小さなものとすることができた。
また、比較例4〜6においては、それぞれベーク処理時に着色層が決壊してしまい、隣接する着色層との間で混色が発生した。
【0150】
II.プリベーク処理およびポストベーク処理の温度について
上述したBM基板上に、インクジェット装置を用いて、上述した各色の着色層形成用塗工液を吐出し、赤色乾燥前着色層、緑色乾燥前着色層、および青色乾燥前着色層を形成した。なお、このときの塗布量は、最終的なポストベーク処理後の着色層の膜厚として、赤色着色層および緑色着色層が2.1μm、青色着色層が2.4μmとなる量とした。ついで、ホットプレートを用いた加熱減圧乾燥装置を用いて、減圧乾燥後の乾燥後着色層の膜厚として、赤色乾燥後着色層、および緑色乾燥後の膜厚が遮光部を基準とした場合に+6μm(最大膜厚8.7μm)、青色乾燥後着色層の膜厚が、遮光部を基準とした場合に+12μm(最大膜厚14.7μm)となるように、各色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、カラーフィルタ用基板を得た。なお、減圧乾燥処理の温度は40℃とした。
【0151】
上記のようにして実施例14〜16および参考例1〜2のカラーフィルタ用基板を形成し、表2に示すように、クリーンオーブンにてプリベーク処理の温度条件を変えて20分間処理を行った後、クリーンオーブンにて230℃で40分間ポストベーク処理を行い、カラーフィルタを得た。
【0152】
実施例14〜16および参考例1〜2のカラーフィルタについて、それぞれ混色欠陥の有無および最大膜厚および最小膜厚の差について調べた。なお、評価方法については、上述した実施例1等のカラーフィルタと同様である。
結果を表2に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
実施例14〜16のカラーフィルタにおいては、決壊混色が発生せず、また、各色の着色層の最大膜厚および最小膜厚の差も小さいものとすることができ、着色層の平坦性の高いカラーフィルタを得ることができた。
一方、参考例1のカラーフィルタにおいては、ポストベーク処理時に青色着色層に決壊が生じた。また、参考例2のカラーフィルタにおいては、プリベーク処理時に青色着色層に決壊が生じた。
【0155】
1 … 透明基板
2 … 遮光部
3a … 乾燥前着色層
3b … 乾燥後着色層
10a … ブラックマトリクス基板
10b … カラーフィルタ基板
10 … カラーフィルタ
t … 乾燥後着色層の最大膜厚
u … 開口部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、および前記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板の前記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、
前記乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、
前記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、
前記減圧乾燥処理工程では、前記乾燥後着色層の端部の膜厚が前記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、前記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
透明基板、および前記透明基板上に形成され開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板の前記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、
前記乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、
前記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、
前記減圧乾燥処理工程では、前記乾燥後着色層の最大膜厚と前記開口部の幅との比率が、前記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10−3〜2.3×10−1の範囲内となるように、前記乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
透明基板、および前記透明基板上に形成され、開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板と、前記ブラックマトリクス基板上の前記開口部に形成された複数色の着色層とを有し、前記複数色の着色層のうち、少なくとも1色の着色層の膜厚が、他の色の着色層の膜厚よりも小さくなるように形成されているカラーフィルタの製造方法であって、
前記ブラックマトリクス基板の前記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、
前記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、
前記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、前記複数色の着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、
前記減圧乾燥処理工程では、最も膜厚の小さい前記乾燥後着色層の端部の膜厚が前記遮光部の膜厚よりも小さくならないように、前記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
透明基板、および前記透明基板上に形成され、開口部を備える遮光部を有するブラックマトリクス基板と、前記ブラックマトリクス基板上の前記開口部に形成された複数色の着色層とを有し、前記複数色の着色層のうち、少なくとも1色の着色層の膜厚が、他の色の着色層の膜厚よりも小さくなるように形成されているカラーフィルタの製造方法であって、
前記ブラックマトリクス基板の前記開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することにより、複数色の乾燥前着色層を形成するインクジェット工程と、
前記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理して、複数色の乾燥後着色層が形成されたカラーフィルタ用基板を形成する減圧乾燥処理工程と、
前記カラーフィルタ用基板に対して、プリベーク処理を行った後、ポストベーク処理を行い、前記複数色の着色層が形成されたカラーフィルタを得るベーク処理工程とを有し、
前記減圧乾燥処理工程では、最も膜厚の小さい前記乾燥後着色層の最大膜厚と前記開口部の幅との比率が、前記開口部の幅を1とした場合に、7.8×10-3〜2.3×10−1の範囲内となるように、前記複数色の乾燥前着色層を減圧乾燥処理することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記複数色の着色層が、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有し、前記赤色着色層および前記緑色着色層が同等の膜厚を有し、かつ、前記青色着色層の膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記ベーク処理工程では、前記プリベーク処理が、70℃〜110℃の範囲内で行われることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−98627(P2012−98627A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247851(P2010−247851)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】