説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】基材への高精細パターン形成の生産効率を向上することを可能にする。
【解決手段】離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203を剥離した後、画像パターンを凹部とした凸版をインキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜に押し当ててから剥離することで画像パターンに対応する予備乾燥インキ膜以外の予備乾燥インキ膜を凸版の凸部に転移させ、さらに、画像パターンに対応する予備乾燥インキ膜が残ったインキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を基材たる被印刷基材207表面へ転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば可撓性基材上に高精細パターンを形成するカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは、省エネルギー、省スペース、可搬性等の点から、据え置き型、壁掛け型、携帯型等の様々な形態で広く利用されている。特に携帯型においては、携帯時に落下させても破損しないような耐衝撃性の確保や、軽量化、薄型化等の種々の要望からプラスチック化への要求が強い。また、壁掛け型においても円柱状の柱へ設置したいという要望から可撓性のプラスチック基材を利用したディスプレイの開発が強く望まれている。
【0003】
しかしながら、従来のフラットパネルディスプレイは、何れもガラス基板を利用して製造された物であり、プラスチック基板を使用して製造することは難しかった。その理由は、従来のフラットパネルディスプレイの部材の作製には高温での加熱工程とフォトリソグラフ工程が含まれているためである。
【0004】
例えば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造に当たっては、感光性樹脂のパターニングの際に、現像、洗浄、ベーキング等の工程があり、プラスチック基板等の耐熱性が劣る部材の熱による損傷や伸縮が生じてしまう可能性がある。また、液晶ディスプレイの駆動電極である薄膜トランジスタの製造工程にあっては、シリコン半導体や絶縁膜の形成には300℃以上の高温処理工程が含まれるが、このときの処理温度はプラスチック基板の耐熱性を上回っている。また、フォトリソグラフ工程は、製膜、露光、現像、剥離を材料毎に行うので、製造設備も大掛かりとなり、製造コストを上昇させる原因ともなっていた。
【0005】
以上のことから、プラスチック基材上への精密なパターニングが可能な印刷方法の確立が強く求められていた。
【0006】
プラスチック基材上への印刷法については、インキジェット法を利用することが検討されている。インキジェット法は、所定の部分にのみ所定の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、版も使用しないことから、もっとも簡便なパターニング方法として期待されている。
【0007】
しかしながら、現状のインキジェット法のインキ液滴の直径は数十μm程度であり、また着弾精度も数μm程度にとどまり、これ以下に制御することは困難である。また、インキジェット法を用いて精密なパターニングをするためには、あらかじめ基板上にフォトリソ工程により隔壁を形成しなければならない。以上の理由から、カラーフィルタのブラックマトリクスや印刷方式の薄膜トランジスタ配線等の10μm程度のパターンを形成する方法としては、インキジェット法を採用することが困難である。
【0008】
一方、インキジェット法以外の方法としては、スクリーン印刷法が挙げられる。スクリーン印刷法は、電子部品における配線や抵抗体、誘電体の印刷などで実用化されている。しかしながら、孔版印刷であることからインキはペースト状の高粘度のものに限られ、また、現状の孔版の精細度では、10μm前後のパターンを形成する方法としては、採用することができない。
【0009】
そこで、インキジェット法およびスクリーン印刷法以外の方法として、フィルムへ乾燥インキ膜をあらかじめ設けた、いわゆるドライフィルムを使用して熱圧によりインキ膜のパターンを除去した後、残ったインキ膜のパターンを目的の基材に転写する転写方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、フィルムからインキ膜の一部を転写する際に熱圧を加えるために、フィルム基材の膨張・収縮や版の膨張、インキ膜の溶融・軟化を伴うことから、数十μm程度の微小なパターンの再現が困難である。また、熱圧を均一に加えるための装置も複雑になり、大きな面積での転写も困難となってしまう。
【0011】
また、シリンダーに巻き付けたブランケット上にインキを塗工し、予備乾燥してインキ膜を形成し、その後、非画像部パターン対応の凸部が形成された凸版をインキ膜に押圧することにより、インキ膜から非画像部用パターンに該当する部分を除去し、しかる後に、ブランケット上に残っている画像パターンを被印刷基材上に転写し、被印刷基材上に所望の画像パターンを形成する印刷方法が試みられている(特許文献2参照)。この印刷法ではインキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成することから、被印刷基材へのインキ転写性が良好である。また、薄膜での微細パターン形成が可能である。
【0012】
しかしこの印刷方法は、シリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなるブランケット上でインキの予備乾燥を行う時に、ブランケット表面のインキ濡れ性や転写性が不安定になるという問題点を有していた。これはブランケットがシリンダーに固定されたまま乾燥を行うために均一な予備乾燥が困難であり、塗工されたインキ中の溶剤がブランケット内に吸収されてブランケットが膨潤し、部分的に転写性や精度のバラツキが発生してしまうからである。
【0013】
また、転写後のクリーニングやブランケットの乾燥による膨潤量の調整を転写毎に行う必要があるため、連続加工には不向きである。また、ブランケットがシリンダーに固定されているので、あるパターンが予め形成されている基材上にさらに別のパターンを転写する場合には、ブランケット上のパターンと基材上のマーク等との位置合わせが困難であった。
【0014】
上述の印刷法における上記のような課題を解決すべく、巻取りロールからインキ剥離性のフィルム基材を供給し,そのインキ剥離性のフィルム基材をブランケットとして使用する印刷方法が提案されている。この印刷方法によれば、新規インキ剥離性のフィルム基材を順次送り出し使用することが出来るため転写の連続安定性を確保することができる。また、インキ剥離性のフィルム基材が光学的に透明であることで、インキ剥離性のフィルム基材表面に残った画像パターンやアライメントマーク越しに、被印刷基材上の画像パターンやアライメントマークを確認することができることから、転写位置を正確に合わせこむことが容易となり再現性の高い高精細パターンを形成することができる(特許文献3参照)。
【0015】
しかしながら、この方法は、画像パターン形成においてインキ塗工・乾燥・転写・剥離工程を同一の装置で連続して行うため、サイクルタイムの長い転写・剥離工程が律速段階となり単位時間当たりの生産量が低いという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−90117号公報
【特許文献2】特開2001−56405号公報
【特許文献3】特開2008−155449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、基材への高精細パターン形成の生産効率を向上することの可能なカラーフィルタの製造方法の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、基材上に画像パターンが形成されてなるカラーフィルタの製造方法に適用され、そして、インキ剥離性のフィルム基材上に予備乾燥インキ膜を形成してインキ塗工フィルムを形成し、さらにこの予備乾燥インキ膜の上面に離型保護フィルムを貼合して離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムを形成する工程と、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムから離型保護フィルムを剥離した後、画像パターンを凹部とした凸版をインキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜に押し当ててから剥離することで画像パターンに対応する予備乾燥インキ膜以外の予備乾燥インキ膜を前記凸版の凸部に転移させる工程と、画像パターンに対応する予備乾燥インキ膜が残ったインキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を基材たる被印刷基材表面へ転写する工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
ここで、予備乾燥インキ膜面を転移させる工程において、予備乾燥インキ膜は常温において凸版の凸部により外力を加えた部分のみが転移して除去され得る半乾燥状態であることが好ましい。また、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムは、離型保護フィルムの離型層表面と予備乾燥インキ膜面とが貼合されてなるものであってもよい。さらに、インキ剥離性のフィルム基材の剥離強度が離型保護フィルムの剥離強度よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムから離型保護フィルムを剥離した後、画像パターンを凹部とした凸版をインキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜面に押し当ててから剥離することで画像パターンに対応する予備乾燥インキ膜以外の予備乾燥インキ膜を前記凸版の凸部に転移させ、さらに、画像パターンに対応する予備乾燥インキ膜が残ったインキ塗工フィルムを被印刷基材表面へ転写することで、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工でき、インキ塗工・乾燥・転写・剥離を連続して1つの装置で行う製造方法と比較して、高精細パターンを効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態であるカラーフィルタの製造方法に用いられる転写・剥離装置を示す概略図
【図2】一実施形態のカラーフィルタの製造方法に用いられる離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法の実施の形態について説明する。
本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、予め準備された離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムから離型保護フィルムを剥離した後、画像パターンを凹部とした凸版を前記インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜面に押し当ててから剥離することで非画像部を前記凸版の凸部に転移させる工程、しかる後、画像パターンが残った該インキ塗工フィルムを被印刷基材表面へ転写する工程を有する。
【0023】
以下、本実施形態のカラーフィルタの製造方法について、その概略の構成を示す図1及び図2を使用して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のカラーフィルタの製造方法に用いられる転写・剥離装置は、大略的には、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203を剥離する剥離部202、インキ塗工フィルム104の予備乾燥インキ膜のうち、転写をさせない部分をパターン状に転移・除去するための除去部204、予備乾燥インキ膜の転写をさせようとする部分を被印刷基材207に見当を合わせて転写させるためのアライメント部205と予備乾燥インキ膜と被印刷基材207の貼合部206、及び被印刷基材207上に転写された予備乾燥インキ膜を乾燥させるための乾燥部209によって構成されている。
【0024】
離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201は、図2に示すように、インキ剥離性のフィルム基材101、予備乾燥インキ膜102、離型保護フィルム103から成り立っており、インキ剥離性のフィルム基材101上に予備乾燥インキ膜102が形成されているインキ塗工フィルム104に離型保護フィルム103が貼合されている。
【0025】
本実施形態に用いるインキ剥離性のフィルム基材101及び離型保護フィルム103としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、トリアセチルセルロース(TAC)等からなる可撓性のフィルムやシートを用いることができる。さらに、インキ剥離性のフィルム基材101には、光透過性(波長が380nm〜700nmである可視光線の透過率が80%以上)のフィルム基材を用いることにより、パターンの重ね合わせ時にアライメントが容易にできる。
【0026】
本実施形態に用いるインキ剥離性のフィルム基材101及び離型保護フィルム103には、シリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤が塗布されていてもよいし、あるいはシリコーンゴムの薄膜層が形成されていてもよい。また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴム等も利用され得るし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。これらシリコーン系の塗膜は一般的にはフィルム基材との密着が弱いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して接着性の高い樹脂等からなる層を、アンカー層としてあらかじめフィルム基材101上に設けるようにすればよい。
【0027】
いずれの構成であっても、このインキ剥離性のフィルム基材101及び離型保護フィルム103は、適度のインキ受容性を有すると同時に、一度受容した予備乾燥インキ膜の完全なインキ剥離性を有することが必要である。
【0028】
上記のシリコーンとしては、具体的には、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体等を用いることができる。
【0029】
また、シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせになるもの等が用いられる。その他にはゴム硬度を調節するためのポリシロキサン等も適宜用いられる。
【0030】
また、本実施形態に用いるインキ剥離性のフィルム基材101及び離型保護フィルム103として、上記基材にゾル−ゲル法により無機酸化膜、あるいはこれらの複合酸化物膜を設けた基材面にシランカップリング剤を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の一種を表面に設けたものを用いることもできる。
【0031】
シランカップリング剤としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類等を用いることができる。このシランカップリング剤の一部位は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等の有機化合物との反応性基を持つものから選ぶことができ、あるいはアルキル基やその一部にフッ素原子が置換されたものやシロキサンが結合して、表面自由エネルギーの小さな表面を形成できる置換基が結合したものを用いることもできる。前者の反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤で基材表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるような他のモノマー成分を塗工して、結合させることができる。反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を用いることができ、モノマーとしては、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることができる。また、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等を用いることができる。但し、アルキル基に限定されるものではない。
【0032】
上記シランカップリング剤を上記基材に固定化する方法としては、シランカップリング剤を使用した公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤を水、酢酸水溶液、水−アルコール混合液、あるいはアルコール溶液に希釈させた溶液を調製し、続いて、調製した溶液を公知の塗工方法であるグラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等を用いて基材表面に塗工し、次いで乾燥させることでシランカップリング剤を固定化できる。また、反応性基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、次いで他のモノマー成分を同様に塗工して結合させることができる。
【0033】
また、上記無機酸化物膜を設けるには、一般式M(OR)nで表される金属アルコキシド(MはTi、Al、Zrなどの金属、RはCH3、C25等のアルキル基)やシリコンアルコキシドを水、アルコールの共存下で加水分解反応および縮重合反応させて得られたゲル溶液を表面にコーティング後、加熱することで無機酸化物膜を設ける、いわゆるゾル−ゲル法を用いることができる。
【0034】
さらに、上記ゾル−ゲル法で用いる金属アルコキシド溶液中にあらかじめ上記シランカップリング剤を添加しておくこともできる。この場合、表面性改質に特に効果が得られる。
【0035】
このようにして得られるインキ剥離性のフィルム基材101に対するインキ剥離性は、処理面へインキ液を滴下した際の接触角が、10°以上90°以下となることが好ましく、20°以上70°以下であることがより好ましい。接触角が小さいと後工程で所定のインキ剥離性が確保できず、転写させようとする予備乾燥インキ膜102の転写パターンの欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいとインキ液膜を形成する際にハジキが生じて、均一なインキ液膜を形成することが困難になる。
【0036】
上記したインキ剥離性のフィルム基材101の剥離強度は離型保護フィルム103の剥離強度に比べて大きく、両者の剥離強度の差もまた、大きいことが好ましい。両者の剥離強度の差が小さいと、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203を剥離する際、予備乾燥インキ膜102の形状変化や剥離する離型保護フィルム203へのインキ転移が起こりやすくなる。
【0037】
このように、インキ剥離性のフィルム基材101の剥離強度が離型保護フィルム103の剥離強度よりも大きくすることで、後述する離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203を剥離する工程において、予備乾燥インキ膜102の形状変化や離型保護フィルム203へのインキ転移が発生せず、再現性の高い高精細の画像パターンを形成することができる。
【0038】
インキ液の材料としては、画像パターン形成材料に溶媒を溶解または分散させたものを用いることができる。例えば、カラーフィルタにおいて赤色、緑色、青色からなるカラーパターン(着色層)やブラックマトリックス等を本発明の印刷方法により設ける場合は、顔料成分と樹脂成分を溶媒中に溶解、分散させてなるインキを用いることができる。
【0039】
顔料としては、例えば、赤、緑、青の各色で使用できるものとして次のようなものが挙げられる。顔料の種類は、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。まず、赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215等が、緑色顔料として7、36等が、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64等が挙げられる。また、墨顔料として、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。さらに、これら赤、緑及び青顔料の色調整及びインキの流動性を改善するために、次に挙げる顔料を必要量添加することができる。
【0040】
すなわち、黄顔料として、17、83、109、110、128等が、紫顔料として、19、23等が、白顔料として、18、21、27、28などが、橙顔料として、38、43等が挙げられる。これらの顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。
【0041】
また、ブラックマトリックスの形成に用いられる黒色顔料としては、カーボンブラックやチタンブラックが単独または混合して用いられる。
【0042】
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。溶剤には、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤等が使用される。そして、エステル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、アルコール系溶剤としては、1−ブタノール、3メトキシ−3メチル−1ブタノール、1−ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、炭化水素系溶剤としては、ソルベッソ100、ソルベッソ150(製品名エクソン化学社製)等が挙げられる。
【0043】
上記したインキ剥離性のフィルム基材101上へインキ液膜を形成する際には膜厚精度の観点からダイコーターやインキジェット方式が好適である。インキジェット方式のヘッドの方式は、サーマル方式、バブル方式、静電アクチュエータ方式、ピエゾ方式等の従来公知の方式が採用できる。
【0044】
インキ剥離性のフィルム基材101上の所定領域へ前記方法によりインキ液膜を形成した後に、インキ液膜を予備乾燥するが、この予備乾燥には自然乾燥、冷風・温風乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥などの種々の乾燥方法を用いることができる。また、紫外線、電子線などの放射線を用いて乾燥するようにしてもよい。
【0045】
この予備乾燥では、インキ液膜の粘度またはチキソトロピー性、脆性を上げることを目的とする。予備乾燥による乾燥が不十分な場合は、後工程で凸版の凸部を押し当てその一部を剥離させる際に、予備乾燥インキ膜102が不必要な個所で断裂してしまう。逆に乾燥が行き過ぎた場合は、予備乾燥インキ膜102表面のタック性が無くなり、凸版の凸部に予備乾燥インキ膜102が転写されない。そのため、使用するインキの組成によって乾燥状態を乾燥時間や雰囲気温度により調節するが、予備乾燥させたインキ膜102において0.5%から4.0%程度の溶剤の残留が認められる状態が好ましい。
【0046】
いわゆるドライフィルムといわれるppmオーダーの溶剤残留量では乾燥が行き過ぎであり、インキが転写されない不具合や、版の押し付けによりインキ膜が部分的に剥離してゴミの原因になったりする不具合があるため、予備乾燥インキ膜102の条件として適さない。
【0047】
離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203を剥離する剥離部202では、搬送されてきた離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203をローラーに沿わせながら剥離する。剥離速度は50mm/s〜200mm/sの範囲内とし、インキ塗工フィルム201の予備乾燥インキ膜102が離型保護フィルム203に転移しない剥離速度を適宜選択する。その結果、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工しても、再現性の高い高精細のパターンを形成することができる。
【0048】
インキ塗工フィルム104の予備乾燥インキ膜102のうち、転写をさせない部分をパターン状に転移・除去するための除去部204では、例えば、可動ステージに樹脂製やガラス製等の凸版が吸着により装着されており、インキ塗工フィルム104の予備乾燥インキ膜102に凸版を近づけた後、可動ステージの移動とともにローラーにより加重をかけて、凸版の凸部と接した予備乾燥インキ膜102の部分を凸版側に転移させ、インキ塗工フィルム104から除去させる。この際、予備乾燥インキ膜102は半乾燥状態であるため、凸版の凸部と接した予備乾燥インキ膜部102だけをインキ塗工フィルム104から除去することができる。これにより、凸版への転移除去を効率よく行うことができ、再現性の高い高精細の画像パターンを形成することができる。
【0049】
インキ剥離性のフィルム基材101上の予備乾燥インキ膜102の所望部分を被印刷基材207に転写するために用いられる凸版としては、ガラスの他、鉄、アルミニウム、ステンレススチール、銅等の金属を用いることができる。これらの表面に感光性樹脂を用いてマスクパターンを形成した後、既存のドライエッチング処理やウエットエッチング処理、もしくはサンドブラスト処理を用いて、2μmから30μm程度の版深の凸部並びに凹部を設けたものを用いることができる。
【0050】
また、凸版にはナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン−ジエン共重合体等からなるものを用いることもできる。またエチレン−プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴムなどのゴム製の凸版を用いることもできる。このような樹脂製の凸版は、すでに一般的な凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とするか、あるいは彫刻によっても版とすることができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製できるので好ましく用いられる。
【0051】
アライメント部205は、可動性ステージと複数の顕微鏡カメラ等から構成されており、可動性ステージ上に吸着させた被印刷基材207に、画像パターンが残ったインキ塗工フィルム104の予備乾燥インキ膜102面を100〜250μm程度に近づけた後、予備乾燥インキ膜102の一部やアライメント用のマークパターン等のパターンと、被印刷基材207上のすでに印刷されているパターンを透過画像で認識し、それぞれの基材上のパターンの認識画像を基に可動性ステージを動作させ転写位置の補正を行う。
【0052】
また、インキ塗工フィルム104と被印刷基材207の間に顕微鏡カメラを挿入し、それぞれの基材上のパターンの認識画像を基に位置の補正を行う方法も選択できる。
【0053】
上記顕微鏡カメラとしては、光学顕微鏡、CCD(Charge Coupled Device)顕微鏡等が適用できるが、オートフォーカス、電気的に制御可能な手動焦点制御機構のいずれか、もしくはその両方の機能を必要とし、観察の為に外部に設置したモニターや位置補正のための画像処理装置へのインターフェースを持つものが推奨される。
【0054】
貼合部206には、アライメント部205に設置された可動性ステージ上に金属ローラーまたはゴムローラー等の貼りあわせ用のローラーが設けられている。
【0055】
予備乾燥インキ膜102と被印刷基材207との貼合部206では、可動性ステージに固定された被印刷基材207と、画像パターンが残ったインキ塗工フィルム104をこの部分でローラーを押し当て、可動性ステージの移動と共にローラーを回転させながら印圧をかけて重ね合わせ、つぎにインキ剥離性のフィルム基材208を被印刷基材207から剥離すことにより、フィルム基材208上に残っていた予備乾燥インキ膜102を被印刷基材上へ転写させる。
【0056】
被印刷基材207としては、例えば、ガラス、PET、PEN、PES、COP、PI、PA、PC、PMMA、PVC、TAC等からなるフィルムやシートを用いることもできる。これらの中から印刷に適用するインキ液膜の条件に合わせて適宜選定すればよいが、耐熱性のものとしてはPEN、PES、PC、COP、PI等からなる可撓性のフィルムやシートが好適である。また、無機フィラーを樹脂に添加して耐熱性を向上させた材料からなる基材でもよい。フィルムおよびシートは、延伸されたものでもよく、未延伸のものでもよく、また、必要に応じてガスバリア層や平滑化層等が印刷面または他の面に積層されていてもよい。
【0057】
乾燥部209は、被印刷基材207上に転写された予備乾燥インキ膜102を乾燥させるために設置されるもので、ホットプレート、オーブン、温風、減圧乾燥、紫外線照射等を利用した乾燥装置により所定の乾燥を行う部分である。ここでは、被印刷基材207の巻き取り時のブロッキングを防止するために必要な乾燥が行われればよく、具体的には40℃で3分から5分間程度の熱乾燥を行う。
【0058】
以上説明した本実施形態のカラーフィルタの製造方法においては、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201から離型保護フィルム203を剥離した後、画像パターンを凹部とした凸版をインキ塗工フィルム104の予備乾燥インキ102膜面に押し当ててから剥離することで非画像部を凸版の凸部に転移させ、しかる後、画像パターンが残ったインキ塗工フィルム104を被印刷基材207表面へ転写しているので、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程とを分離して印刷することができる。これにより、被印刷基材207への高精細な画像パターン形成の生産効率を向上させることが可能となる。
【0059】
さらに、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム201は、インキ剥離性のフィルム基材101上に予備乾燥インキ膜102が形成されており、さらに、離型保護フィルム103の離型層表面と予備乾燥インキ膜102面とが貼合されていることにより、予備乾燥インキ膜102の半乾燥状態から乾燥状態への変化や塵埃の付着を防ぎ、安定に保管することができる。
【0060】
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法は、カラーフィルタの製造だけでなく、多岐の分野に応用することができる。例えば、有機EL素子の有機発光層を形成する場合には、ポリフェニレンビニレン(PPV)といった高分子発光材料をトルエンやキシレンといった芳香族系有機溶媒に溶解、分散させることにより得られるインキが用いられる。また、回路基材の配線を形成する場合には、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム等の金属微粒子分散液を水やアルコール、グリコール系溶媒に溶解、分散させることにより得られるインキが用いられる。また、これらのインキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、レベリング剤等の種々の添加剤が添加されていてもよい。なお、本発明に用いられるインキはこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例について説明する。
カラーフィルタ用赤色着色インキを次の要領で調製した。
まず、メタクリル酸を20重量部、メチルメタクリレートを10重量部、ブチルメタクリレートを55重量部、ヒドロキシエチルメタクリレートを15重量部を乳酸ブチル300gに溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75重量部を加えて70℃にて5時間反応させ、アクリル共重合体樹脂を得た。次に、得られたアクリル共重合体樹脂を樹脂濃度が10重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、アクリル共重合体樹脂の希釈液を得た。
【0062】
この希釈液80.1gに対し、顔料19.0g、分散剤としてのポリオキシエチレンアルキルエーテル0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤色の着色ワニスを得た。なお、赤色顔料として、ピグメントレッド177を使用した。
【0063】
得られた着色ワニスに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、その顔料濃度が11〜15重量%、粘度が15mPa・s( 2 5 ℃ )になるように調製して添加した後、混合物を均一になるように攪拌混合し、さらに、5μmのフィルタで濾過して赤色着色インキを得た。
【0064】
続いて、インキ剥離性フィルム基材として、基材厚が約120μmのシリコーン系離型ポリエステルフィルム:K1504(東洋紡績社製)を300mm幅、500mのロール状で用意した。
【0065】
また、離型保護フィルムとしては、基材厚が約38μmのシリコーン系離型フィルム:E7006(東洋紡績社製)を300mm幅、500mのロール状で用意した。
【0066】
そして、上記部材を用い、次のようにして離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムの作製を行った。
まず、ピエゾインキジェットヘッドを用いて、インキ剥離性フィルム基材上に52mm×52mmの赤色着色インキからなるインキ液膜を塗工した。また、アライメントマーク位置にマークよりも1割ほど大きな四角のパターンも同時に塗工した。インキ液膜の膜厚は、その後の予備乾燥でインキ膜厚が0.8μmになるようにピエゾインキジェットヘッドの吐出量を設定しておいた。
【0067】
つぎに、乾燥部に設置された40℃のホットプレート上で予備乾燥を30秒間行ってインキ塗工フィルムを得た。
そして、インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜面と離型保護フィルムの離型層表面を正対させ、ゴムローラーにて貼合し、巻き取り、離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムを得た。
【0068】
続いて、図1に示すような装置を用い、印刷加工を行った。
パターンの除去版(凸版)としては、200mm幅(パターン有効幅は150mm)の樹脂製フレキソ用版(東洋紡績社製)を用意した。このフレキソ版には、有効幅内に50mm×50mmのパターンが4つ面付けされており、それぞれのパターンは凸部20μm幅、凹部80μm幅の連続したストライプパターンであり、さらに4つの角に位置する200μm□の領域内へアライメントマークを設けたものである。
【0069】
さらに、被印刷基材としてフィルム厚120μmの光透過性PET基材を300mm幅、20mのロール状で用意した。
【0070】
上記部材を用い、まず、得られた離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムから離型保護フィルムをローラーに沿わせながら剥離速度50mm/sにて剥離し、インキ塗工フィルムを得た。この剥離過程では、インキ塗工フィルムから離型保護フィルムへのインキ転移が発生せず、インキ塗工フィルム中の予備乾燥インキ膜もまた半乾燥状態を維持していた。
【0071】
続いて、予めパターン除去部に設置しておいたフレキソ版に離型保護フィルムを剥離したインキ塗工フィルムをゴムローラーで押し当てて非画像部(転写させないパターン状の部分)を除去した後、アライメント部のステージへインキ塗工フィルム中に残されている予備乾燥インキ膜のパターンが来るように搬送した。そして、2つのアライメント用カメラで対角上のアライメントマークを確認した後、さらにゴムローラーでインキ塗工フィルムと被印刷基材を重ね合わせた後、ステージから動かしながらインキ剥離性のフィルム基材を被印刷基材から剥離することによって、被印刷基材へ画像パターンの転写を行った。
【0072】
最後に、画像パターンが転写された被印刷基材を乾燥部へ搬送し、ホットプレートにより120秒間の乾燥を行い、パターン印刷物を得た。このパターン印刷物は高精細パターンを有していた。
【0073】
上記実施例から、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工しても、高精細パターンを形成することができることが分った。そして、このカラーフィルタの製造方法では、律速段階である転写・剥離工程を行っている間にも離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムの作製ができるため、複数の転写・剥離装置を用いると、インキ塗工・乾燥・転写・剥離を連続して1つの装置で行う製造方法と比較して生産効率を上げることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、例えば、可撓性を有するプラスチック基材上に画像パターンを形成してなるフレキシブルフラットディスプレイ等に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
101、208 インキ剥離性のフィルム基材
102 予備乾燥インキ膜
103 離型保護フィルム
104 インキ塗工フィルム
201 離型保護フィルム付きインキ塗工フィルム
202 剥離部
203 離型保護フィルム
204 除去部
205 アライメント部
206 貼合部
207 被印刷基材
209 乾燥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に画像パターンが形成されてなるカラーフィルタの製造方法において、
離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムから前記離型保護フィルムを剥離した後、前記画像パターンを凹部とした凸版を前記インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜に押し当ててから剥離することで前記画像パターンに対応する前記予備乾燥インキ膜以外の予備乾燥インキ膜を前記凸版の凸部に転移させる工程と、
前記画像パターンに対応する前記予備乾燥インキ膜が残った前記インキ塗工フィルムの前記予備乾燥インキ膜を前記基材たる被印刷基材表面へ転写する工程と
を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記予備乾燥インキ膜面を転移させる工程において、前記予備乾燥インキ膜は常温において前記凸版の凸部により外力を加えた部分のみが転移して除去され得る半乾燥状態であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記離型保護フィルム付きインキ塗工フィルムは、前記離型保護フィルムの離型層表面と前記予備乾燥インキ膜面とが貼合されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記インキ剥離性のフィルム基材の剥離強度が前記離型保護フィルムの剥離強度よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−37248(P2013−37248A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174397(P2011−174397)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】