説明

カラーフィルター、前記カラーフィルターを用いた電気泳動表示装置及びその製造方法

【課題】電気泳動表示装置は紙媒体と同様に暗室での視認は困難であり、さらに、多色表示のために表示画面上にカラーフィルターを設けるということは、表示画面の反射率の低下を招き、視認性を著しく低下させる課題がある。
【解決手段】電気泳動表示層の表示面側に設けられた画素電極に対応したカラーフィルターに蓄光物質を含有させることで、例えば、アンダーコート層(2)に蓄光物質を導入することで暗所においても視認性を一時的に確保できる多色表示電気泳動表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示パネルに関するものであり、マイクロカプセル中に電気泳動インキを封入し、これらのマイクロカプセルを一方が透明な一組の対向電極板上に間に配置する構成からなり、さらにカラーフィルターを形成することで多色表示を可能とした電気泳動式表示パネルとその製造方法に関する。さらに詳しくは、前記カラーフィルターが蓄光物質を保持することにより暗所においても視認可能な多色表示電気泳動表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報表示パネルとしてバックライトを使用した液晶が主流である。しかし、目の負担が大きく、長時間見続ける用途に適していない。
【0003】
目の負担が小さい反射型表示装置として、一対の対向する電極間と、その電極間に設けられた電気泳動式表示層を有する表示パネルが、電気泳動式表示装置として提案されている。(特許文献1参照)。
【0004】
この電気泳動式表示パネルは、印刷された紙面と同様に、反射光によって文字や画像を表示するので、目に対する負荷が少なく、画面を長時間見続ける作業に適している。
【0005】
この電気泳動式表示パネルは、荷電粒子を分散させた分散液に電界を印加することによって、荷電粒子を移動させ、画像表示を可能とする原理に基づくものである。電気泳動式表示パネルのうち、着色された荷電粒子をマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルを一対の対向する電極間に配置したマイクロカプセル型電気泳動式表示装置は、低駆動電圧、高柔軟性などの利点があり、実用化され、さらに開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭50−015115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、電気泳動式パネルは構造上白黒表示を主とする二色表示が主流であり、二色表示マイクロカプセル型電気泳動表示装置にあっては、例えば、画素電極を備える基材の、画素電極層上に、マイクロカプセル型電気泳動表示層、透明電極、透明基材を順に備える構成のものがある。近年、二色表示マイクロカプセル電気泳動表示装置から多色表示可能なカラー電気泳動表示装置が求められている。
【0008】
ここで、マイクロカプセル型電気泳動表示装置を多色表示するにあってはマイクロカプセル電気泳動表示層と透明電極の間、透明電極と透明基材の間、透明基材上のいずれかにカラーフィルター層を形成することにより多色表示することが可能となる。また、カラーフィルター層を有するガラスや透明樹脂フィルムを、前記透明基材上に貼り合わせることでも多色表示を可能とすることができる。
【0009】
一方で、反射型表示装置である電気泳動装置は外界の光を反射することで表示画面を視認させていることを鑑みると、紙媒体と同様に暗室での視認は困難である。さらに、多色表示のために表示画面上にカラーフィルター層を設けるということは、表示画面の反射率の低下を招き、視認性を著しく低下させる問題が発生する。
【0010】
この問題に対し、人工照明を表示装置の近傍に配置し、外界の光量を上げることで視認性を確保する試みもある。しかし、このような試みは電気泳動装置の表示を変化させるときのみに電力を使用するという電気泳動表示装置の低消費電力という大きな特徴を損なう結果となりうる。
【0011】
本発明にあっては、電気泳動装置の低消費電力という特徴を損なうことなく暗所で視認可能なものとするカラーフィルター、及び前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動表示装置およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1にかかる発明としては、透明基材上にアンダーコート層およびインキ層がこの順番で積層されたカラーフィルターであって、前記アンダーコート層、前記インキ層の少なくともいずれか一層に少なくとも一種類以上の蓄光物質を含むことを特徴とするカラーフィルターとした。
【0013】
また、請求項2にかかる発明としては、前記カラーフィルターが、電気泳動表示装置用であることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルターとした。
【0014】
また、請求項3にかかる発明としては、前記蓄光物質の大きさが、粒径30μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載のカラーフィルターとした。
【0015】
また、請求項4にかかる発明としては、蓄光物質を含有する層の前記蓄光物質の含有濃度が、前記蓄光物質が分散されている塗布液の全組成物の40重量%以下となることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカラーフィルターとした。
【0016】
また、請求項5にかかる発明としては、前記蓄光物質を含有する層の前記蓄光物質が、層全体に均一の濃度となるように分布して配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のカラーフィルターとした。
【0017】
また、請求項6にかかる発明としては、前記インキ層の一部に前記蓄光物資が含まれ、前記インキ層における前記蓄光物資が含まれる部位が、カラーフィルターの赤、青、緑および白からなる画素の白の箇所であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のカラーフィルターとした。
【0018】
また、請求項7にかかる発明としては、前記インキ層上に、さらに保護フィルムを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラーフィルターとした。
【0019】
また、請求項8にかかる発明としては、画素電極を備える基材と、該画素電極の上に、電気移動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層、透明電極層、透明基材、アンダーコート層およびインキ層を順に備え、且つ、
前記透明基材、前記アンダーコート層、前記インキ層からなるカラーフィルターが請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のカラーフィルターであることを特徴とする電気泳動表示装置とした。
【0020】
また、請求項9にかかる発明としては、画素電極を備える基材と、透明基材の一方の面に該透明基材側から順に透明電極層および電気泳動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動層を順に備える積層フィルムの、前記基材の画素電極と前記積層フィルムの電気泳動表示層を貼りあわせる工程と、
前記透明基材の他方の面にアンダーコート層およびインキ層をこの順に設ける工程とを備え、前記アンダーコート層、前記インキ層の少なくともいずれか一層に少なくとも一種類以上の蓄光物質を含むことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法とした。
【0021】
また、請求項10にかかる発明としては、前記蓄光物質を含有する層の前記蓄光物質が、層全体に均一の濃度となるように分布して配置されることを特徴とする請求項9に記載の電気泳動表示装置の製造方法とした。
【0022】
また、請求項11にかかる発明としては、前記インキ層の一部に前記蓄光物資が含まれ、前記インキ層における前記蓄光物資が含まれる部位が、カラーフィルターの赤、青、緑および白からなる画素の白の箇所であることを特徴とする請求項9乃至請求項10のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法とした。
【0023】
また、請求項12にかかる発明としては、前記蓄光物質を含有する層が、前記蓄光物質が分散されている塗布液を用いて形成されることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法とした。
【発明の効果】
【0024】
本発明より、電気泳動表示装置の低消費電力という特徴を損なうことなく暗所で視認可能なものとするカラーフィルター、前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動表示装置、及びその製造方法を提供した。また、この方式により通常の使用環境においても、明度が向上し視認性が向上した。さらに、塗布液を用いて形成される前記カラーフィルターのアンダーコート層およびインキ層に蓄光物質を含有させることで前記カラーフィルターに蓄光機能を容易に付与することができ、また、前記カラーフィルターの必須の構成要素である前記アンダーコート層およびインキ層に前記蓄光物質を含有させることで蓄光機能を有する層を別途、設ける必要がなく製造コストの観点からも有利な効果が発揮できた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1はカラーフィルターの層構成(a)、及び前記カラーフィルターを用いた従来の多色表示電気泳動表示装置の層構成(b)及びカラーフィルター配列(c)の一例の説明図である。
【図2】図2は本発明のカラーフィルターの層構成(a)、及び前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動表示装置の層構成(b)、及び暗所における実施例(c)の説明図である。
【図3】図3は本発明のカラーフィルターの層構成(a)、及び前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動表示装置の層構成(b)、カラーフィルター配列(c)、及び暗所における実施例(d)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るカラーフィルター、前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動表示装置、およびその製造方法について示す。図2および図3に本発明のカラーフィルターおよび前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動表示装置の一例の説明図を示した。
【0027】
最初に図1を用いてマイクロカプセル型電気泳動式表示パネルの表示原理の概略を述べるとともに、本発明の骨子を記す。
【0028】
背面基材(15)は、各々の画素電極(10)のスイッチング素子に接続されていて、前面電極基材(13)上の透明電極(4)との間に正負の電圧を印加することができる。画像表示するためには、通常、画素電極(10)はアクティブマトリクス型駆動方式の回路構成の電源に接続される。画素電極(10)の電圧を変動させると、カプセル型電気泳動層(16)に印加される電界が変動する。画素電極(10)が正極のときは、マイクロカプセル内の負に帯電している粒子は、背面の画素電極(10)側へ移動し、正に帯電している粒子は、前面の透明電極(4)側に移動する。同様に、画素電極(10)が負極になれば、正に帯電している粒子は画素電極側に移動し、負に帯電している粒子は透明電極(4)側へ移動する。ここで、例えば黒色粒子(7)が正に帯電し、白色粒子(6)が負に帯電するようにしておけば、表示色は前面の透明電極(4)側へ移動した粒子の色になるので、所望の文字や画像を白黒表示することができる。続き、透明基材(3)の透明電極(4)が設置された面の他方の面にアンダーコート層(2)及び着色したインキ層(1)をこの順に積層してなるカラーフィルターを電気泳動表示装置に付与することで多色表示とすることができる。
さらに本発明では、前記アンダーコート層又は前記インキ層の少なくともいずれか一方に蓄光物質を導入することで、外光を利用した反射型表示装置の欠点である暗所における視認性を確保することができる電気泳動装置を示す。
【0029】
まず、図2を用いてアンダーコート層に蓄光物質を含有させた本発明に係るカラーフィルター、前記カラーフィルターを用いた多色表示電気泳動式表示装置、およびその製造方法について説明する。
【0030】
図2aに示すように、本発明によるカラーフィルター(12)は、透明基材(3)、蓄光物質(18)を含有したアンダーコート層(18)、及びインキ層(1)から構成される。図2bに示すように、マイクロカプセル型電気泳動表示パネルは、蓄光物質(17)を含有したアンダーコート層(18)の一方の面にインキ層(1)、他方の面に透明基材(3)上に透明電極(4)を設けた前面電極板(13)と、塗布によって形成されたマイクロカプセル層(14)と、その上に接着剤層(9)を介して画素電極(10)を配した背面基材(11)からなる背面電極板(15)を貼り合わせた断面構造である。
【0031】
マイクロカプセル層(14)および接着剤層(9)を合わせてカプセル型電気泳動層(16)と呼ぶ。
【0032】
以下に本発明に使用する材料、部材について説明する。
【0033】
蓄光物質としては、市販されているアルミン酸塩化合物を主成分とするN夜光ルミノーバ(根本特殊化学株式会社製)やルミナス(株式会社ルミナス製)、またはCaSr,Zn等の硫化物にBi,Cu,Co,Eu,Tm等の金属元素やランタノイド類等の希土類元素を活性剤として添加して焼成した物質等を使用することができる。
【0034】
蓄光物質の大きさとしては、粒径30um以下であることが好ましい。蓄光物質は光透過性が低いため、粒径を30um以下にすることで、アンダーコート層の光透過率の低下を防止し、マイクロカプセル層に表示される表示画像の視認性が向上するためである。一方で、粒径は3um以上が好ましい。3um以下であると蓄光物質が凝集しやすくなり、発光の偏りが懸念される。そのために高分子のウレタンポリマーなどの分散剤を添加しなくてはならず、かえってアンダーコート層の光透過率を低下させてしまうからである。
【0035】
アンダーコート層(2)には樹脂をベースにしたウレタン樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂またインキの吸水性を高めるため合成シリカを使用してもよく、前記アンダーコート樹脂を分散している溶液に前記蓄光物質を混合し、アンダーコート層塗布液とする。
【0036】
アンダーコート層塗布液に含有される蓄光物質の濃度は、アンダーコート層塗布液の全固形分組成物の40重量%以下が好ましい。蓄光物質は光透過性が低いため、前記含有される蓄光物質の濃度を上記範囲内とすることによりインキ層の光透過率の低下を防止し、マイクロカプセル層に表示される表示画像の視認性が向上するためである。また、蓄光物質により発せられる十分な光量を得ることを考慮すると前記蓄光物質の濃度は、アンダーコート層塗布液の全組成物の5重量%以上であることが好ましい。
【0037】
蓄光物質はアンダーコート層塗布液中において均一の濃度となるように分布して含有されることが好ましい。本発明に係る多色表示電気泳動表示装置の表示面における均一の発色強度により視認性が向上するためである。
【0038】
アンダーコート層塗布液を用いるアンダーコート層(17,18)の形成は枚葉処理を行うのであれば、スクリーン印刷やオフセット印刷やスピンコート、ダイによる間欠塗工により行うことができる。また、ロールtoロールによる連続処理を行うのであれば、ダイコーティング、コンマコート、カーテンコート、グラビアコートなどの汎用の塗布技術による膜形成が可能である。
【0039】
カラーフィルターとなるインキは、顔料インキ、染料インキのどちらでもよいが、時間による色合いの変化の観点から経時変化の少ない顔料インキが好ましい。
【0040】
具体的に着色顔料の成分を挙げるのであれば、赤色着色層もしくは赤色画素を形成するための赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、279等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、橙色顔料を添加併用することができる。
【0041】
緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には赤色着色組成物と同様の黄色顔料を添加併用することができる。
【0042】
青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等の青色顔料、好ましくはC.I. Pigment Blue 15:6を用いることができる。また、青色着色組成物には、C.I.Pigment Violet1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料、好ましくはC.I.Pigment Violet 23を添加併用することができる。
【0043】
インキ層(1)の塗布方法は、色による塗り分けが必要であるため、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0044】
カプセル型電気泳動層の形成に用いられるマイクロカプセルは着色粒子、白色粒子、透明分散媒、およびマイクロカプセル殻からなる。
【0045】
一般にマイクロカプセル型電気泳動式表示パネルに使用されているマイクロカプセルは、篩い分け法や比重分離法などにより精製されていて、平均粒径が30〜100μmであり、さらに、カプセルの平均粒径に対し前後10μm以内の粒径を有するマイクロカプセルの割合は少なくとも50%を超える。本発明に使用するマイクロカプセルも同様である。
【0046】
マイクロカプセル分散液は、アルコールなどの水系溶剤が使用され、特に問題なければ水を使用する。
【0047】
透明分散媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、各種エステル類、アルコール系溶媒、またはその他の脂等を単独または適宜混合した溶媒を使用する。
【0048】
着色粒子には、無機炭素等の無機顔料のほか、ガラスあるいは樹脂等の微粉末、さらにはこれらの複合体などを使用する。
【0049】
白色粒子としては、公知の酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の白色無機顔料、酢酸ビニルエマルションなどの有機化合物、さらにはこれらの複合体などを使用する。
【0050】
なお、着色粒子および白色粒子は必要に応じて、粒子の表面を種々の界面活性剤、分散剤、有機および無機化合物、金属等を用いて処理することで所望の表面電荷を付与することができるのみならず、分散媒中での分散安定性を向上させることができる。
【0051】
マイクロカプセルを分散した分散液は、混合コアセルベーション法等の相分離法、界面重合法、in−situ法、溶解分散冷却法等、公知の方法を用いてマイクロカプセルに封入する。マイクロカプセルの殻(6)は、例えばゴムやゼラチンの膜である。
【0052】
マイクロカプセルインキのバインダー(8)にはポリ乳酸、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂などの誘電体樹脂を用いる。
【0053】
前面電極板(13)は透明基材(3)上に透明電極(4)が形成された構造である。透明基材(13)としてはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、あるいはガラス等を使用することができる。透明電極材として使用することができるものは、例えばITO等の酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系のような透明性を有する導電性酸化物等である。この透明電極の形成には蒸着法、スパッタ法、CVD法などの従来技術を用いることができる。
【0054】
透明基材の厚みは10um以上130um以下が好ましい。10um以下の厚みであると基材上へのアンダーコート層およびマイクロカプセル層の形成の際、層形成時の伸縮により基材の変形が大きいなどの加工性が低く、また変形による表示画像のムラが発生しやすくなるからである。100um以上であると、インキ層とマイクロカプセル層の距離が広がるため、視認角度による視差が発生し、色むらが顕著になるためである。
【0055】
マイクロカプセル層(14)は、前記のマイクロカプセルインキを透明電極(4)上に塗布して形成する。塗布は、スクリーン印刷方式、マイクログラビアコーター、キスコーター、コンマコーター、ダイコーター、バーコーダー、カーテンコーターなどの塗布装置を用いて行う。
【0056】
接着剤として使用することができるものは、アクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂系接着剤が好ましい。特に高誘電体樹脂を使用した接着剤であるものが好ましい。
【0057】
また、形成したカラーフィルターの表面は保護フィルムを形成した方が好ましい。カラーフィルターを最表面にしておくと、外部からの衝撃に弱く、傷つきやすいからである。
【0058】
保護フィルムとしては、透明基材で示した材料を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、あるいはガラス等を使用することができる。また、保護フィルムにあっては観察者側に表面の耐擦傷性を向上させるためのハードコート層や、表面の写りこみを防ぐための反射防止層、防湿性を考慮した金属成分を含有した薄膜層が設けられていてもよい。なお、受容層と保護フィルムは、公知の接着剤により貼りあわせられる。
【0059】
つぎに図3を用いてアンダーコート層の上に蓄光層を形成する本発明のカラーフィルター、前記カラーフィルターを用いた電気泳動式表示装置、およびその製造方法について説明する。
【0060】
図3aに示すように、本発明によるカラーフィルター(20)は、透明基材(3)、アンダーコート層(2)、及び蓄光物質を含有したインキ層(18)から構成される。図3bに示すように、マイクロカプセル型電気泳動表示パネルは、インキ層(1)および蓄光物質を含んだインキ(19)をアンダーコート層(2)の一方の面に積層し、前記アンダーコート層の他方の面に透明基材(3)上に透明電極(4)を設けた前面電極板(13)と、塗布によって形成されたマイクロカプセル層(14)と、その上に接着剤層(9)を介して画素電極(10)を配した背面基材(11)からなる背面電極板(15)を貼り合わせた断面構造である。
【0061】
以下に本発明に使用する材料、部材について説明する。
【0062】
蓄光物質を含んだインキは、蓄光物質を分散させたウレタンやエポキシ樹脂などの透明樹脂をバインダーとするインキである。
【0063】
蓄光物質は、市販されているアルミン酸塩化合物を主成分とするN夜光ルミノーバ(根本特殊化学株式会社製)やルミナス(株式会社ルミナス製)、またはCaSr,Zn等の硫化物にBi,Cu,Co,Eu,Tm等の金属元素やランタノイド類等の希土類元素を活性剤として添加して焼成した物質等を使用することができる。蓄光物質によっては、着色している物質もあり、カラーフィルターのインキに分散し使用してもよい。
【0064】
蓄光物質を含んだインキは、表示画面全面に塗布することもできるが、蓄光物質は光透過性が低いため、一部に塗布することが、画像を表示するマイクロカプセル層の視認性が向上するため好ましい。
【0065】
特に、反射型カラーフィルターは赤、青、緑、白を用いることが多く、前記白は、インキを塗布しないことで得られる透明な部分である。本願発明においては、白の箇所に蓄光物質を含むが、顔料または染料は含まないインキを塗布することが、画像を表示するマイクロカプセル層の視認性を向上させるためより好ましい形態である。但し、顔料または染料を含むことで色のバランスを調整してもよい。
【0066】
蓄光物質の大きさとしては、粒径30um以下であることが好ましい。蓄光物質は光透過性が低いため、粒径を30um以下にすることで、アンダーコート層の光透過率の低下を防止し、マイクロカプセル層に表示される表示画像の視認性が向上するためである。一方で、粒径は3um以上が好ましい。3um以下であると蓄光物質が凝集しやすくなり、発光の偏りが懸念される。そのために高分子のウレタンポリマーなどの分散剤を添加しなくてはならず、かえってアンダーコート層の光透過率を低下させてしまうからである。
【0067】
インキ層塗布液に含有される蓄光物質の濃度は、アンダーコート層塗布液の全組成物の40重量%以下が好ましい。蓄光物質は光透過性が低いため、前記含有される蓄光物質の濃度を上記範囲内とすることによりインキ層の光透過率の低下を防止し、マイクロカプセル層に表示される表示画像の視認性が向上するためである。また、蓄光物質により発せられる十分な光量を得ることを考慮すると前記蓄光物質の濃度は、アンダーコート層塗布液の全組成物の5重量%以上であることが好ましい。
【0068】
蓄光物質を含んだインキの塗布方法は、塗り位置の調整などが必要であるため、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0069】
その他の材料や層構成は図2の説明と同じである。
【0070】
蓄光物質については、アンダーコート層およびインキ層の両方に含有されていてもよく、暗所における視認性の観点から前記アンダーコート層またはインキ層のいずれか一方にのみ含有されるよりも好ましい。
【実施例】
【0071】
<実施例1>
ポリエチレン樹脂で表面を被覆した平均粒径3μmの酸化チタン粉末(白色粒子)と、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4μmのカーボンブラック粉末(黒色粒子)をテトラクロロエチレンに分散し、分散液を得た。この場合、白色粒子が負に帯電し、黒色粒子が正に帯電する。
【0072】
この分散液をO/Wエマルジョン化し、ゼラチン−アラビアゴムによるコンプレックス・コアセルベーション法によりマイクロカプセルを形成することで、前記分散液をマイクロカプセル中に封入した。
【0073】
このようにして得られたマイクロカプセルを篩い分けして、平均粒径が60μm、50〜70μmの粒径のマイクロカプセルの割合が50%以上になるように、粒径をそろえた。
【0074】
次に、固形分40質量%のマイクロカプセルの水分散液を調整した。その水分散液と、固形分25質量%のウレタン系バインダー(CP−7050、大日本インキ株式会社製)と、界面活性剤と、増粘剤と、純水を混合し、電気泳動層形成用塗液を作製した。
【0075】
粒径15umの蓄光顔料 301Y(株式会社ルミナス)100gを固形分15%のポリエステル樹脂系のアンダーコート液NS−141LX(高松油脂株式会社)1000gへ混合し、蓄光物質含有アンダーコート層塗布液を準備した。
【0076】
ITO層/PETフィルムのPET側に前記蓄光物質含有アンダーコート層塗布液をコンマコーターを用いて連続塗工を行い、平均膜厚10umのアンダーコート層を形成した。アンダーコート層を保護するフィルムとしてポリプロピレンフィルムベースのL−5005(日立化成株式会社)を貼り合せ、フィルム/アンダーコート層/PETフィルム/ITO層からなるフィルムを得た。
【0077】
続き、前記マイクロカプセルインキを75um厚のITO層/PETフィルムのITO層側へダイによる塗工を行い、マイクロカプセル面にウレタン系接着剤付のSiリリース層フィルムを貼り合せ、フィルム/アンダーコート層/PETフィルム/ITO層/マイクロカプセル型電気泳動表示層/Siリリース層からなるアンダーコート層付マイクロカプセル接着剤フィルムロールを得た。
【0078】
得られたアンダーコート層付マイクロカプセル接着剤フィルムロールは、CO2レーザーカット装置を用いて、画素電極を備える基材よりも小さいサイズに断裁をおこなった。
【0079】
断裁されたアンダーコート層/透明基材/ITO層/マイクロカプセル型電気泳動表示層/Siリリース層からなる積層フィルムの接着剤側のSiリリースフィルムを剥離し、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型駆動方式の回路構成の画素電極を備える基材にラミネートにより貼り合せ、蓄光物質含有アンダーコート層付電気泳動マイクロカプセル基材を得た。
【0080】
得られた蓄光物質含有アンダーコート層付電気泳動マイクロカプセル基材のアンダーコート層側のフィルムを剥がし、インクジェット印刷を用い、画素ごとに色分け印刷をおこないカラーフィルターを形成した。続き、保護フィルムとしてハードコートフィルム KBスティックSG90R(株式会社きもと)をラミネートした。
【0081】
得られた蓄光物質含有アンダーコート層付電気泳動マイクロカプセル基材を1時間ほど約1500Luxの部屋に設置した後、暗室に移動したところ、マイクロカプセル基材上に表示された表示画像を視認することができた。
【0082】
<実施例2>
ポリエチレン樹脂で表面を被覆した平均粒径3μmの酸化チタン粉末(白色粒子)と、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4μmのカーボンブラック粉末(黒色粒子)をテトラクロロエチレンに分散し、分散液を得た。この場合、白色粒子が負に帯電し、黒色粒子が正に帯電する。
【0083】
この分散液をO/Wエマルジョン化し、ゼラチン−アラビアゴムによるコンプレックス・コアセルベーション法によりマイクロカプセルを形成することで、前記分散液をマイクロカプセル中に封入した。
【0084】
このようにして得られたマイクロカプセルをふるい分けして、平均粒径が60μm、50〜70μmの粒径のマイクロカプセルの割合が50%以上になるように、粒径をそろえた。
【0085】
次に、固形分40質量%のマイクロカプセルの水分散液を調整した。その水分散液と、固形分25質量%のウレタン系バインダー(CP−7050、大日本インキ株式会社製)と、界面活性剤と、増粘剤と、純水を混合し、電気泳動層形成用塗液を作製した。
【0086】
この電気泳動層形成用塗液を、スロットダイコータを使用して、100umの厚みのITO層/PET基材よりなるフィルムのITO層上に塗布し、塗布後60℃で10分間乾燥しマイクロカプセル型電気泳動表示層/ITO層/PETフィルムからなる積層フィルムを得た。
【0087】
得られたマイクロカプセル型電気泳動表示層/ITO層/PETフィルムからなるロール状の積層フィルムは、CO2レーザーカット装置を用いて、画素電極を備える基材よりも小さいサイズに断裁をおこなった。
【0088】
得られた積層フィルムをポリエステル−ウレタン系接着剤を用いて、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型駆動方式の回路構成の画素電極を備える基材の画素電極面に0.50MPの圧力で貼り合せ、電気泳動表示パネルを作製した。
【0089】
得られた電気泳動表示パネルの画素電極と積層フィルムの積層端部をUV硬化型の封止剤KJC−7805(信越化学株式会社)で囲み封止する。
【0090】
続き、インクジェット用アンダーコート液ダイアロマーIJ−2101(大日精化工業株式会社)をダイヘッドによる間欠塗工により約10um膜厚のアンダーコート層を透明基材上に形成した。
【0091】
白色の蓄光顔料 501G(株式会社ルミナス)300gをポリエスターTR236(日本合成化学)1000gに分散させ印刷インキを準備した。
【0092】
上記アンダーコート層に対し、基材端部にある位置合わせ模様を基準にインクジェット装置を用いて、各画素に対応した色の赤、緑、青インクを印刷しカラーフィルターを形成した。さらに、従来インキを印刷しない白の箇所に、前記準備した蓄光顔料含有印刷インキをスクリーン印刷法により印刷を行った。
【0093】
続き、保護フィルムとしてハードコートフィルム KBスティックSG90R(株式会社きもと)をラミネートした。
【0094】
得られた電気泳動表示パネルを1時間ほど約1500Luxの部屋に設置した後、暗室に移動したところ、マイクロカプセル基材上に表示された表示画像を視認することができた。
【符号の説明】
【0095】
1 …インキ層
2 …アンダーコート層
3 …透明基材
4 …透明電極層
5 …白色粒子
6 …マイクロカプセル殻
7 …黒色粒子
8 …バインダー
9 …接着剤
10 …画素電極
11 …基材
12 …従来のカラーフィルター
13 …電気泳動層
14 …背面電極基材
15 …カプセル型電気泳動層
16 …蓄光物質
17 …蓄光物質含有アンダーコート層
18 …実施例1に係るカラーフィルター
19 …蓄光物質含有インキ層
20 …実施例2に係るカラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上にアンダーコート層およびインキ層がこの順番で積層されたカラーフィルターであって、前記アンダーコート層、前記インキ層の少なくともいずれか一層に少なくとも一種類以上の蓄光物質を含むことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項2】
前記カラーフィルターが、電気泳動表示装置用であることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルター。
【請求項3】
前記蓄光物質の大きさが、粒径30μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載のカラーフィルター。
【請求項4】
蓄光物質を含有する層の前記蓄光物質の含有濃度が、前記蓄光物質が分散されている塗布液の全組成物の40重量%以下の範囲内となることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカラーフィルター。
【請求項5】
前記蓄光物質が、前記アンダーコート層の全体に均一の濃度となるように分布して含有されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のカラーフィルター。
【請求項6】
前記インキ層の一部に前記蓄光物資が含まれ、前記インキ層における前記蓄光物資が含まれる部位が、カラーフィルターの赤、青、緑および白からなる画素の白の箇所であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のカラーフィルター。
【請求項7】
前記インキ層上に、さらに保護フィルムを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラーフィルター。
【請求項8】
画素電極を備える基材と、該画素電極の上に、電気移動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層、透明電極層、透明基材、アンダーコート層およびインキ層を順に備え、且つ、
前記透明基材、前記アンダーコート層、前記インキ層からなるカラーフィルターが請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のカラーフィルターであることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項9】
画素電極を備える基材と、透明基材の一方の面に該透明基材側から順に透明電極層および電気泳動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動層を順に備える積層フィルムの、前記基材の画素電極と前記積層フィルムの電気泳動表示層を貼りあわせる工程と、
前記透明基材の他方の面にアンダーコート層およびインキ層をこの順に設ける工程とを備え、前記アンダーコート層、前記インキ層の少なくともいずれか一層に少なくとも一種類以上の蓄光物質を含むことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記蓄光物質を含有する層の前記蓄光物質が、層全体に均一の濃度となるように分布して配置されることを特徴とする請求項9に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記インキ層の一部に前記蓄光物資が含まれ、前記インキ層における前記蓄光物資が含まれる部位が、カラーフィルターの赤、青、緑および白からなる画素の白の箇所であることを特徴とする請求項9乃至請求項10のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記蓄光物質を含有する層が、前記蓄光物質が分散されている塗布液を用いて形成されることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19937(P2013−19937A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150780(P2011−150780)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】