説明

カラーフィルターの製造方法

【課題】膜厚が均一な色要素を備えたカラーフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に区画部を形成する区画部形成工程と、前記区画部によって区画された区画領域内に機能液を塗布する機能液塗布工程と、塗布された前記機能液を仮乾燥する仮乾燥工程と、仮乾燥された前記機能液を固化して色要素部を形成する固化工程と、を含み、前記仮乾燥工程では、前記機能液の頂部が、前記区画部の頂部よりも低くなるように、前記機能液を仮乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
色要素部を備えたカラーフィルターの製造では、例えば、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、基板上に形成された区画部によって区画された区画領域内に色要素部の材料を含む機能液を塗布し、塗布された機能液を仮乾燥及び本乾燥して色要素部を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−2815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のカラーフィルターの製造方法では、仮乾燥時において、機能液の頂部が区画部の頂部よりも高く、さらに、機能液の形態が区画領域の中央部部分において盛り上がった凸形状となる。そして、この形態で本乾燥を行うため、区画部近傍の機能液の表面部分が、基板側に窪んで(落ち込んで)しまい、膜厚が不均一な色要素部が形成され、コントラストが低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるカラーフィルターの製造方法は、基板上に区画部を形成する区画部形成工程と、前記区画部によって区画された区画領域内に色要素部の材料を含む機能液を塗布する機能液塗布工程と、塗布された前記機能液を仮乾燥する仮乾燥工程と、仮乾燥された前記機能液を固化して前記色要素部を形成する固化工程と、を含み、前記仮乾燥工程では、前記機能液の頂部が、前記区画部の頂部よりも低くなるように、前記機能液を仮乾燥することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、区画部が形成された基板に機能液が塗布される。区画領域内に塗布された機能液が仮乾燥される。なお、機能液の頂部が、区画部の頂部よりも低くなるように仮乾燥される。そうすると、区画部の付近の機能液は、区画部に倣って収縮していき、断面視において、区画部の付近の機能液の形状、すなわち、機能液の端部の形状は、機能液の頂部と区画部に沿った側部とで角部が形成される。また、区画部の付近の機能液の厚みと中央部分の機能液の厚みとがほぼ同一となる。すなわち、仮乾燥された機能液の厚みがほぼ均一化される。この状態で、機能液を固化すると、機能液の厚みが均一の状態で収縮される。そうして、膜厚が均一な色要素部が形成される。これにより、カラーフィルターの表示画像の明度およびコントラストを向上させることができる。さらに、色ムラ、濃度ムラ等のスジ状のムラの発生を防止することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるカラーフィルターの製造方法の前記区画部形成工程では、前記基板上に第1区画部を形成する第1区画部形成工程と、前記第1区画部上に第2区画部を形成する第2区画部形成工程と、を有し、前記仮乾燥工程の後に、前記第2区画部を除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第2区画部の除去により、色要素部と区画部(第1区画部)との厚みのギャップが低減される。従って、カラーフィルターの平坦性を向上させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるカラーフィルターの製造方法の前記区画部形成工程では、前記基板面側から前記区画部の頂部に向けて前記区画領域が広くなるように、前記区画部を形成することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、インクジェット法を用いて区画領域内に機能液を塗布する場合に、区画領域が区画部の頂部に向けて広がっているため、確実に区画領域に液滴の着弾させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カラーフィルターの製造方法を示す工程図。
【図2】カラーフィルターの製造方法を示す工程図。
【図3】変形例にかかるカラーフィルターの製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0014】
本実施形態におけるカラーフィルターの製造方法は、基板上に区画部を形成する区画部形成工程と、区画部によって区画された区画領域内に機能液を塗布する機能液塗布工程と、塗布された機能液を仮乾燥する仮乾燥工程と、仮乾燥された機能液を固化して色要素部を形成する固化工程と、を含み、仮乾燥工程では、機能液の頂部が、区画部の頂部よりも低くなるように、機能液を仮乾燥するものである。さらに、区画部形成工程では、基板上に第1区画部を形成する第1区画部形成工程と、第1区画部上に第2区画部を形成する第2区画部形成工程と、を有し、仮乾燥工程の後に、第2区画部を除去する除去工程と、を含むものである。以下、詳細に説明する。
【0015】
図1は、カラーフィルターの製造方法を示す工程図である。
【0016】
第1区画部形成工程について説明する。まず、図1(a)に示すように、基板11を準備する。基板11は、光透過性を有する板状の部材で、後述する色要素部15や区画部(遮光部)18等を保持する機能を有している。基板11は、光透過性を有するものであればよいが、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルターを透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルターの製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。また、本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0017】
次に、図1(b)に示すように、基板11の一方の面のほぼ全体に第1区画部の材料となる第1区画部形成用組成物12aを塗布する。本工程で用いる第1区画部形成用組成物12aは、感光性材料を含むものである。なお、第1区画部形成用組成物12aについては、例えば、アクリル系化合物を主成分とするもの、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とするもの、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂、メラミン樹脂、ポリシラザン化合物、ポリシロキサン化合物等が挙げられる。第1区画部形成用組成物12aの塗布成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、雷着塗装等の塗装法等が挙げられる。また、第1区画部形成用組成物12aが感光性材料を溶解する溶媒を含むものである場合、本工程において、第1区画部形成用組成物12aを基板11上に付与した後、当該溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0018】
次に、図1(c)に示すように、露光処理を行う。具体的には、所定のパターンを有するフォトマスク20を介して、第1区画部形成用組成物12aの所定の箇所に光を照射し、第1区画部形成用組成物12aを構成する感光性材料を硬化させる。光が照射された箇所には難溶性部が形成される。本工程で照射する光は、いかなる波長領域のものであってもよく、例えば、可視光、赤外線、紫外線、X線等が挙げられる。本工程での光照射条件の例としては、光のピーク波長:248nm以上436nm以下、照射強度:60mJ/cm2以上1200mJ/cm2以下を挙げることができる。
【0019】
その後、現像処理を行い、基板11上に形成された第1区画部形成用組成物12aのうち、現像液に対する溶解性が相対的に小さい部位(難溶性部以外の易溶性部)を除去する。現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができる。また、現像液としては、例えば、アルカリ現像液等を用いることができる。また、現像処理時間は、例えば、10秒以上300秒以下とすることができる。
【0020】
その後、焼成処理を行う。これにより、難溶性部が固化され第1区画部12が形成される。焼成は、200℃以上の温度で、30分以上の加熱処理を行うものであるのが好ましい。これにより、難溶性部を確実に硬化させることができる。焼成条件は、例えば、温度:200℃以上250℃以下、時間30分以上90分以下とすることができる。以上の工程を経ることにより、図1(d)に示すように、基板11上に区画領域17を区画する第1区画部12が形成される。
【0021】
次に、第2区画部形成工程について説明する。図1(e)に示すように、基板11上及び第1区画部12上に第2区画部の材料となる第2区画部形成用組成物13aを塗布する。本工程で用いる第2区画部形成用組成物13aは、感光性材料を含むものである。なお、第2区画部形成用組成物13aについては、例えば、アクリル系化合物を主成分とするもの、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とするもの、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂、メラミン樹脂、ポリシラザン化合物、ポリシロキサン化合物等が挙げられる。撥液性を発現させるため、フッ素含有化合物を含有させてもよい。第2区画部形成用組成物13aの塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、雷着塗装等の塗装法等が挙げられる。また、第2区画部形成用組成物13aが感光性材料を溶解する溶媒を含むものである場合、本工程において、第2区画部形成用組成物13aを基板11の第1区画部12上に付与した後、当該溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0022】
次に、図1(f)に示すように、露光処理を行う。具体的には、所定のパターンを有するフォトマスク21を介して、第2区画部形成用組成物13aの所定の箇所に光を照射し、第2区画部形成用組成物13aを構成する感光性材料を硬化させる。光が照射された箇所には難溶性部が形成される。本工程で照射する光は、いかなる波長領域のものであってもよく、例えば、可視光、赤外線、紫外線、X線等が挙げられる。本工程での光照射条件の例としては、光のピーク波長:248nm以上436nm以下、照射強度:60mJ/cm2以上1200mJ/cm2以下を挙げることができる。
【0023】
その後、現像処理を行い、基板11の第1区画部12上に形成された第2区画部形成用組成物13aのうち、現像液に対する溶解性が相対的に小さい部位(難溶性部以外の易溶性部)を除去することにより、難溶性部により仕切られた空間としてのセルを複数個数形成する。現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができる。また、現像液としては、例えば、アルカリ現像液等を用いることができる。また、現像処理時間は、例えば、10秒以上300秒以下とすることができる。
【0024】
その後、焼成処理を行う。これにより、難溶性部が固化され第2区画部13が形成される。そして、第1区画部12と第2区画部13とで区画部18が構成される。焼成は、130℃以上の温度で、10分以上の加熱処理を行うものであるのが好ましい。これにより、難溶性部を仮硬化させることができる。焼成条件は、例えば、温度は130℃以上200℃以下、時間10分以上60分以下とすることができる。以上の工程を経ることにより、図1(g)に示すように、基板11と、基板11上に形成され、区画領域17を区画する第1区画部12と、第1区画部12上に形成された第2区画部13と、を備えた基材10が形成される。
【0025】
次に、機能液塗布工程について説明する。図2(h)に示すように、区画領域17内に色要素部の材料を含む機能液15aを塗布する。塗布方法は、例えば、インクジェット方式を用いることができる。このとき、区画部18(第1区画部12、第2区画部13)が設けられているため、隣接する区画領域17内に塗布された機能液15a同士が混ざり合うことを確実に防止できる。
【0026】
仮乾燥工程では、図2(i)に示すように、区画領域17内に塗布された機能液15aを仮乾燥し、仮色要素部15bを形成する。仮乾燥は、60℃以上の温度で、10分以上の加熱処理を行うものであるのが好ましい。仮乾燥条件は、例えば、温度:60℃以上120℃以下、時間10分以上30分以下とすることができる。なお、本工程では、機能液15aの頂部が、区画部18の頂部よりも低くなるように、機能液15aを仮乾燥させる。これにより、仮色要素部15bの頂部は、ほぼ平坦化され、仮色要素部15bの膜厚が均一化される。
【0027】
次に、第2区画部除去工程について説明する。図2(j)に示すように、現像処理を行い、第1区画部12上に形成された第2区画部13のみを除去する。現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができる。また、現像液としては、例えば、アルカリ現像液等を用いることができる。また、現像処理時間は、例えば、30秒以上600秒以下とすることができる。
【0028】
次に、固化工程について説明する。図2(k)に示すように、焼成を行い、仮色要素部15bを固化させる。焼成は、130℃以上の温度で、30分以上の加熱処理を行うものであるのが好ましい。固化条件は、例えば、焼成温度を180℃以上250℃以下、焼成時間30分以上90分以下とすることができる。
【0029】
以上の工程を経ることにより、カラーフィルター1が形成される。なお、これ以降、必要に応じ、第1区画部12上及び色要素部15上に平坦化膜や電極膜等を形成してもよい。
【0030】
従って、上記の形態によれば、以下に示す効果がある。
【0031】
仮乾燥工程において、機能液15aの頂部が、第2区画部13の頂部よりも低くなるように、機能液15aを仮乾燥して仮色要素部15bを形成した。これにより、区画部18の付近の機能液15aは、区画部18に倣って収縮していき、仮色要素部15bの断面視において、区画部18の付近の形状は、仮色要素部15bの頂部と区画部18に沿った側部とで角部が形成される。また、区画部18の付近の仮色要素部15bの厚みと中央部分の仮色要素部15bの厚みとがほぼ同一となる。すなわち、仮色要素部15bの厚みがほぼ均一化される。この状態で、仮色要素部15bを固化すると、仮色要素部15bの厚みが均一の状態で収縮される。そうして、膜厚が均一な色要素部15が形成される。これにより、カラーフィルター1の表示画像の明度およびコントラストを向上させることができる。さらに、色ムラ、濃度ムラ等のスジ状のムラの発生を防止することができる。
【0032】
なお、上記の形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0033】
上記実施形態では、側断面視において、図1(g)に示すように、第2区画部13の断面幅を第1区画部12の断面幅に合わせたが、この構成に限定されない。図3は、変形例にかかるカラーフィルターの製造方法を示す工程図である。図3に示すように、第2区画部形成工程において、基板11の面側から区画部18Aの頂部に向けて区画領域17が広くなるように、区画部18Aを形成してもよい。具体的には、例えば、第2区画部13Aの形状を、第2区画部13Aの頂部に向けて細くなるように形成してもよい。このようにすれば、機能液塗布工程において、容易に機能液15aを区画領域17内に塗布することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…カラーフィルター、10…基材、11…基板、12…第1区画部、13…第2区画部、13A…第2区画部、15…色要素部、15a…機能液、17…区画領域、18…区画部、18A…区画部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に区画部を形成する区画部形成工程と、
前記区画部によって区画された区画領域内に色要素部の材料を含む機能液を塗布する機能液塗布工程と、
塗布された前記機能液を仮乾燥する仮乾燥工程と、
仮乾燥された前記機能液を固化して前記色要素部を形成する固化工程と、を含み、
前記仮乾燥工程では、
前記機能液の頂部が、前記区画部の頂部よりも低くなるように、前記機能液を仮乾燥することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法において、
前記区画部形成工程では、
前記基板上に第1区画部を形成する第1区画部形成工程と、
前記第1区画部上に第2区画部を形成する第2区画部形成工程と、を有し、
前記仮乾燥工程の後に、
前記第2区画部を除去する除去工程と、を含むことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーフィルターの製造方法において、
前記区画部形成工程では、
前記基板面側から前記区画部の頂部に向けて前記区画領域が広くなるように、前記区画部を形成することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−98508(P2012−98508A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245982(P2010−245982)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】