説明

カラーフィルタ基板の製造方法

【課題】簡単な方法で、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することが可能なカラーフィルタ基板の製造方法を提供する。
【解決手段】このカラーフィルタ基板12の製造方法は、透明基板21上に顔料が含有された着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)を配置する工程を備える。透明基板21上に着色材を配置する工程において、着色材の表面の風速は、0.5m/sよりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カラーフィルタ基板の製造方法に関し、特に、透明基板上に顔料が含有された着色材を配置する工程を備えたカラーフィルタ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルを構成するとともに、透明基板上に着色層が形成されたカラーフィルタ基板が知られている。
【0003】
カラーフィルタ基板の着色層の形成に用いる着色材としては、顔料(顔料粒子)を含有した着色材と、顔料を含有した着色材とがあるが、長期信頼性の観点から、現在一般的には、顔料を含有した着色材が用いられている。
【0004】
また、着色層の表面ラフネスは、染料を含有した着色材により形成された着色層よりも、顔料(顔料粒子)を含有した着色材により形成された着色層の方が大きい。これは、顔料(顔料粒子)は樹脂や溶媒に溶解しない(または、顔料の粒子径が染料に比べて大きい)ので、顔料粒子に影響されて、着色層の表面ラフネスが大きくなっていると考えられている。
【0005】
ここで、カラーフィルタ基板の着色層の表面ラフネスが大きい場合、カラーフィルタ基板を透過する際に光が散乱し、表示パネルの正面方向の輝度(明るさ)が低下する。また、カラーフィルタ基板を液晶表示パネルに用いる場合には、カラーフィルタ基板の着色層の表面ラフネスが大きいと、着色層の表面付近の液晶分子の配列が乱れる。このため、黒表示時に、光漏れが発生する。このように、カラーフィルタ基板の着色層の表面ラフネスが大きい場合、表示パネルのコントラストが低下するという不都合がある。
【0006】
そこで、着色層の表面ラフネスを改善するために、界面活性剤を添加した着色材を用いる方法(例えば、特許文献1参照)が、提案されている。また、着色層の表面を研磨することにより、着色層の表面ラフネスを低減する方法(例えば、特許文献2および3参照)が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−3945号公報
【特許文献2】特開2003−107446号公報
【特許文献3】特開2004−191799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、特別な材料(着色材)を用いる必要があるとう問題点がある。また、上記特許文献2および3の方法では、製造工程を新たに追加する必要があり、製造に時間がかかるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、簡単な方法で、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することが可能なカラーフィルタ基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明者が種々の検討を重ねた結果、透明基板上に顔料が含有された着色材を配置する際に、着色材の表面の風速を低減することによって、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することができることを見出した。
【0011】
すなわち、この発明の一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法は、表示パネルを構成するカラーフィルタ基板の製造方法であって、透明基板上に顔料が含有された着色材を配置する工程と、着色材を硬化させることにより着色層を形成する工程とを備え、透明基板上に着色材を配置する工程において、着色材の表面の風速は、0.5m/sよりも小さい。
【0012】
この一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法では、上記のように、透明基板上に着色材を配置する工程において、着色材の表面の風速を、0.5m/sよりも小さくする。これにより、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することができる。このため、カラーフィルタ基板を透過する際に光が散乱するのを抑制することができるので、表示パネルの正面方向の輝度(明るさ)が低下するのを抑制することができる。また、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することができるので、カラーフィルタ基板を液晶表示パネルに用いる場合には、着色層の表面付近の液晶分子の配列が乱れるのを抑制することができる。これにより、黒表示時に光漏れが発生するのを、抑制することができる。その結果、表示パネルのコントラストが低下するのを抑制することができる。
【0013】
また、一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法では、上記のように、透明基板上に着色材を配置する際の、着色材の表面の風速を0.5m/sよりも小さくするだけなので、特別な材料からなる着色材を用いたり、製造工程を新たに追加する必要がなく、簡単な方法で、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することができる。
【0014】
また、一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法では、上記のように、顔料が含有された着色材を用いる。顔料が含有された着色材により形成される着色層は、染料が含有された着色材により形成される着色層に比べて、表面ラフネスが大きくなりやすいので、顔料が含有された着色材を用いる場合に本発明の製造方法を適用するのは、特に有効である。
【0015】
上記一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法において、好ましくは、着色材の表面の風速は、0.11m/s以下である。このように構成すれば、着色層の表面ラフネスを十分に小さくすることができる。これにより、カラーフィルタ基板を透過する際に光が散乱するのを十分に抑制することができるので、表示パネルの正面方向の輝度(明るさ)が低下するのを十分に抑制することができる。また、着色層の表面ラフネスを十分に小さくすることができるので、カラーフィルタ基板を液晶表示パネルに用いる場合には、着色層の表面付近の液晶分子の配列が乱れるのを十分に抑制することができる。これにより、黒表示時に光漏れが発生するのを、十分に抑制することができる。その結果、表示パネルのコントラストが低下するのを、十分に抑制することができる。
【0016】
上記一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法において、好ましくは、着色材の表面の風速を、0m/sよりも大きくしてもよい。
【0017】
上記着色材の表面の風速が0m/sよりも大きいカラーフィルタ基板の製造方法において、好ましくは、着色材の表面の風速を、0.09m/s以上、0.11m/s以下にしてもよい。
【0018】
上記一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法において、好ましくは、着色層上に電極層を形成する工程をさらに備え、電極層の表面粗さRaは、2nm以下である。このように構成すれば、カラーフィルタ基板を透過する際に光が散乱するのを、十分に抑制することができるので、表示パネルの正面方向の輝度(明るさ)が低下するのを、十分に抑制することができる。また、カラーフィルタ基板を液晶表示パネルに用いる場合には、電極層の表面付近の液晶分子の配列が乱れるのを、十分に抑制することができるので、黒表示時に光漏れが発生するのを、十分に抑制することができる。その結果、表示パネルのコントラストが低下するのを、十分に抑制することができる。
【0019】
上記一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法において、好ましくは、透明基板上に着色材を配置する工程において、空気清浄化フィルタを含む送風機から着色材の表面に空気が送風される。このように構成すれば、着色材の表面にパーティクル(異物など)が付着するのを抑制することができるので、カラーフィルタ基板(表示パネル)の歩留まりが低下するのを抑制することができる。
【0020】
上記一の局面によるカラーフィルタ基板の製造方法において、好ましくは、着色材は、スリットコーターを用いて、透明基板上に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、簡単な方法で、着色層の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することが可能なカラーフィルタ基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態によるカラーフィルタ基板を備えた液晶表示装置の構造を示した断面図である。
【図2】図1の液晶表示パネルの構造を示した拡大断面図である。
【図3】図1のカラーフィルタ基板を透過する光の散乱状態を示した拡大断面図である。
【図4】図1の液晶表示パネルの黒表示時における光漏れの状態を示した拡大断面図である。
【図5】図1のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図6】図1のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図7】図1のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図8】図1のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図9】図1のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図10】図1のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図11】比較例のカラーフィルタ基板の製造方法を説明するための図である。
【図12】表面反射ムラの発生率を示した図である。
【図13】比較例のカラーフィルタ基板を透過する光の散乱状態を示した拡大断面図である。
【図14】比較例の液晶表示パネルの黒表示時における光漏れの状態を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするために、断面図であってもハッチングを施さない場合がある。
【0024】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態によるカラーフィルタ基板12を備えた液晶表示装置1の構造について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態によるカラーフィルタ基板12を備えた液晶表示装置1は、例えば液晶テレビジョン受像機(図示せず)などを構成するものである。また、液晶表示装置1は、図1に示すように、液晶表示パネル2と、液晶表示パネル2の下側(背面側)に配置され、液晶表示パネル2を照明するバックライト装置3とによって構成されている。なお、液晶表示パネル2は、本発明の「表示パネル」の一例である。
【0026】
バックライト装置3は、複数の光源3aと、複数の光源3aを収納するバックライトシャーシ3bとを含んでいる。そして、バックライト装置3は、照明光を液晶表示パネル2に向かって出射する。
【0027】
液晶表示パネル2は、AM基板(アクティブマトリックス基板)11と、AM基板11に対向配置されたカラーフィルタ基板12と、AM基板11およびカラーフィルタ基板12の間に配置された液晶層13と、AM基板11およびカラーフィルタ基板12の周縁部に配置されたシール材14とを含んでいる。
【0028】
AM基板11は、ガラスなどからなる透光性を有する基板と、図示しない透明電極層および配向膜とを含んでいる。
【0029】
液晶層13は、AM基板11の透明電極層(図示せず)とカラーフィルタ基板12の後述する透明電極層23との間の電圧が変更されることにより配向方向が変更される液晶分子13a(図4参照)を含んでいる。
【0030】
カラーフィルタ基板12は、図2に示すように、ガラスなどからなる透光性を有する透明基板21と、透明基板21上に形成されたBM(ブラックマトリックス)22と、BM22の開口部に配置された着色層30と、着色層30を覆う透明電極層23と、図示しない配向膜とを含んでいる。なお、透明電極層23は、本発明の「電極層」の一例である。
【0031】
透明基板21は、ガラス以外の、例えば樹脂などからなる基板により形成されていてもよい。
【0032】
BM22は、黒色の樹脂などにより形成されており、赤色表示領域、緑色表示領域および青色表示領域の各々の光が隣接する表示領域に入射するのを抑制する機能を有する。また、BM22は、例えば、約1μmの厚みを有する。
【0033】
着色層30は、赤色表示領域に配置された赤色着色層31と、緑色表示領域に配置された緑色着色層32と、青色表示領域に配置された青色着色層33とを含んでいる。なお、赤色着色層31、緑色着色層32および青色着色層33は、本発明の「着色層」の一例である。
【0034】
赤色着色層31は、赤色の顔料(顔料粒子)を含有した後述する赤色材31aにより形成されている。緑色着色層32は、緑色の顔料(顔料粒子)を含有した後述する緑色材32aにより形成されている。青色着色層33は、青色の顔料(顔料粒子)を含有した後述する青色材33aにより形成されている。なお、赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33aは、本発明の「着色材」の一例である。
【0035】
また、赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33aは、感光性のバインダー樹脂、溶媒および顔料などによって構成されている。なお、顔料(顔料粒子)は、バインダー樹脂および溶媒には溶解せず、粒子状態で分散されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、着色層30の表面粗さRa(JIS B0601に規定される算術平均粗さ)は、例えば、約1nm以上、約2nm以下である。また、着色層30は、例えば、約1.5μmの厚みを有する。
【0037】
透明電極層23は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)により形成されている。また、透明電極層23は、例えば、約100nmの厚みを有する。なお、透明電極層23の厚みは、上記に限定されず、例えば、約50nm〜約500nmの間の所定の厚みに設定することが可能である。
【0038】
また、透明電極層23の表面ラフネスは、着色層30の表面ラフネスをそのまま反映する(または、着色層30の表面ラフネスに比べて十分に小さい)ので、透明電極層23の表面粗さRaも、例えば、約1nm以上、約2nm以下である。
【0039】
このように、着色層30(透明電極層23)の表面粗さRaが約1nm以上、約2nm以下と十分に小さいので、図3に示すように、カラーフィルタ基板12(液晶表示パネル2)を透過(通過)する際に光が散乱するのを十分に抑制することが可能である。これにより、液晶表示パネル2の正面方向の輝度(明るさ)が低下するのを十分に抑制することが可能である。なお、図3は、AM基板11の透明電極層(図示せず)とカラーフィルタ基板12の透明電極層23との間に、例えば電圧を印加していない状態を示している。
【0040】
また、着色層30(透明電極層23)の表面粗さRaが約1nm以上、約2nm以下と十分に小さいので、図4に示すように、着色層30(透明電極層23)の表面付近の液晶分子13aの配列が乱れるのを十分に抑制することが可能である。これにより、黒表示時に光漏れが発生するのを、十分に抑制することが可能である。なお、図4は、AM基板11の透明電極層(図示せず)とカラーフィルタ基板12の透明電極層23との間に、例えば電圧を印加した状態を示している。
【0041】
次に、図5〜図10を参照して、カラーフィルタ基板12の製造方法について説明する。
【0042】
まず、図5に示すように、ガラスなどからなる透明基板21を準備する。そして、透明基板21上に、黒色の樹脂などを用いて、複数の開口部を有するBM22を形成する。このとき、BM22を、例えば約1μmの厚みに形成する。なお、BM22は、フォトリソグラフィ法や、印刷(転写印刷)法などの従来から知られている種々の方法を用いて、形成することが可能である。
【0043】
その後、図6に示すように、透明基板21上の全面に、赤色の顔料(顔料粒子)を含有した赤色材31aを、約1.5μmの厚みに塗布する。このとき、本実施形態では、図7に示すように、市販のスリットコーター50を用いて、赤色材31aを塗布する。なお、スリットコーター50は、線状の隙間が形成されたコーターヘッド(ノズル)から一定の速度で着色材などを吐出する装置である。
【0044】
ここで、本実施形態では、透明基板21の上方には、空気を清浄化する機能を有するHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ60aを含む送風機60が配置されている。送風機60は、スリットコーター50に一体的に設けられていてもよいし、スリットコーター50とは別体で設けられていてもよい。なお、HEPAフィルタ60aは、本発明の「空気清浄化フィルタ」の一例である。
【0045】
そして、本実施形態では、透明基板21上の風速(塗布後の赤色材31aの表面の風速)が0.5m/sよりも小さくなるように、送風機60から透明基板21の表面(赤色材31aの表面)に空気が送風されている。すなわち、塗布後の赤色材31aの表面の風速が0.5m/sよりも小さくなる状態で、透明基板21上に赤色材31aを塗布する。また、赤色材31aの表面の風速と送風機60から出る空気の風速とは略同じになるので、送風機60の送風速度(風速)は、0.5m/sよりも小さい値に設定されている。
【0046】
なお、透明基板21上の風速(赤色材31aの表面の風速)は、例えば、約0.11m/s以下であることが好ましい。また、装置内(透明基板21の周辺)のクリーン度が確保できる場合には、透明基板21上の風速(赤色材31aの表面の風速)をさらに下げることが望ましい。
【0047】
その後、赤色材31aを、減圧乾燥する。このとき、例えば、約100Pa〜約5Paの真空度で、約5sec〜約200secの時間、赤色材31aを減圧乾燥してもよい。
【0048】
そして、赤色材31aを、マスク(図示せず)を用いて露光し、現像する。その後、図8に示すように、赤色材31aをベーク処理することにより、赤色着色層31を形成する。
【0049】
そして、図9に示すように、緑色着色層32および青色着色層33を、赤色着色層31と同様にして、形成する。
【0050】
すなわち、塗布後の緑色材32aの表面の風速が0.5m/sよりも小さくなる状態で、透明基板21上の全面に、緑色材32aを、約1.5μmの厚みに塗布する。その後、緑色材32aを、減圧乾燥、露光、現像およびベーク処理することにより、緑色着色層32を形成する。
【0051】
また、塗布後の青色材33aの表面の風速が0.5m/sよりも小さくなる状態で、透明基板21上の全面に、青色材33aを、約1.5μmの厚みに塗布する。その後、青色材33aを、減圧乾燥、露光、現像およびベーク処理することにより、青色着色層33を形成する。
【0052】
最後に、従来から知られたスパッタ法を用いて、図10に示すように、着色層30(赤色着色層31、緑色着色層32、青色着色層33)およびBM22上に、透明電極層23を形成する。このとき、透明電極層23を、約100nmの厚みに形成する。なお、透明電極層23を、約50nm〜約500nmの間の所定の厚みに形成してもよい。
【0053】
このようにして、カラーフィルタ基板12が製造される。
【0054】
本実施形態では、上記のように、透明基板21上に着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)を配置する工程において、着色材の表面の風速を、0.5m/sよりも小さくすることによって、着色層30(赤色着色層31、緑色着色層32および青色着色層33)の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することができる。これにより、カラーフィルタ基板12を透過する際に光が散乱するのを抑制することができるので、液晶表示パネル2の正面方向の輝度(明るさ)が低下するのを抑制することができる。また、着色層30の表面ラフネスを小さくすることができるので、着色層30の表面付近の液晶分子13aの配列が乱れるのを抑制することができる。このため、黒表示時に光漏れが発生するのを、抑制することができる。その結果、液晶表示パネル2のコントラストが低下するのを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、透明基板21上に着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)を配置する際の、着色材の表面の風速を0.5m/sよりも小さくするだけなので、特別な材料からなる着色材を用いたり、製造工程を新たに追加する必要がなく、簡単な方法で、着色層30の表面ラフネスが大きくなるのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、顔料が含有された着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)を用いる。顔料が含有された着色材により形成される着色層30は、染料が含有された着色材により形成される着色層に比べて、表面ラフネスが大きくなりやすいので、顔料が含有された着色材を用いる場合に本発明の製造方法を適用するのは、特に有効である。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)の表面の風速を、例えば、約0.11m/s以下にすれば、着色層30の表面ラフネスを十分に小さくすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、HEPAフィルタ60aを含む送風機60から着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)の表面に空気を送風する。これにより、着色材の表面にパーティクル(異物など)が付着するのを抑制することができるので、カラーフィルタ基板12(液晶表示パネル2)の歩留まりが低下するのを抑制することができる。
【0059】
次に、図3、図4、図7および図11〜図14を参照して、着色層30を形成する際の、透明基板21上の風速(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33aの表面の風速)を0.5m/sよりも小さくすることによる効果を確認するために行った確認実験について説明する。
【0060】
この確認実験では、上記実施形態に対応した実施例と、透明基板21上の風速(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33aの表面の風速)を約0.5m/sにした比較例とについて行った。
【0061】
まず、実施例1の着色層30および比較例1の着色層130の表面粗さRaを確認した実験について説明する。
【0062】
実施例1では、図7に示すように、送風機60の送風速度(風速)を0.1m/sに設定して、透明基板21上に、赤色材31aを塗布した。このとき、透明基板21上の風速(赤色材31aの表面の風速)は、約0.09m/s以上、約0.11m/s以下であった。そして、赤色材31aを、減圧乾燥、露光、現像およびベーク処理することにより、赤色着色層31を形成した。その後、緑色着色層32および青色着色層33を、赤色着色層31と同様にして、緑色材32aおよび青色材33aを用いて形成した。そして、その他の製造方法(製造条件)は上記実施形態と同様にして、着色層30が形成されたカラーフィルタ基板12を作製した。
【0063】
比較例1では、図11に示すように、送風機60の送風速度(風速)を0.5m/sに設定して、透明基板21上に、赤色材31aを塗布した。そして、赤色材31aを、減圧乾燥、露光、現像およびベーク処理することにより、赤色着色層131(図13参照)を形成した。その後、緑色着色層132および青色着色層133(図13参照)を、赤色着色層131と同様にして、緑色材32aおよび青色材33aを用いて形成した。そして、その他の製造方法(製造条件)は実施例1と同じにして、着色層130(赤色着色層131、緑色着色層132および青色着色層133)が形成されたカラーフィルタ基板112(図13参照)を作製した。
【0064】
そして、実施例1の着色層30(透明電極層23)および比較例1の着色層130(透明電極層23)について、表面粗さRaを、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した。その結果を、表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1を参照して、実施例1の着色層30(透明電極層23)の表面粗さRaは、比較例1の着色層130(透明電極層23)の表面粗さRaに比べて、小さくなることが判明した。すなわち、透明基板21上の風速(赤色材31aの表面の風速)を小さくするにしたがって、着色層(透明電極層23)の表面粗さRaが小さくなることが判明した。具体的には、実施例1の赤色着色層31、緑色着色層32および青色着色層33の表面粗さRa(透明電極層23の表面粗さRa)は、いずれも約1nm以上約2nm以下になった。一方、比較例1の赤色着色層131、緑色着色層132および青色着色層133の表面粗さRa(透明電極層23の表面粗さRa)は、いずれも約3nm以上約6nm以下になった。
【0067】
これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0068】
すなわち、透明基板21上の風速(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33aの表面の風速)が大きい場合(比較例1の場合)、塗布直後の着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)の表面において、風速の大きいミクロな領域と風速の小さいミクロな領域とが混在分布しており、これらの領域間で着色材の溶媒の気化状態に差異が出て、表面ラフネス(表面粗さRa)が大きくなったと考えられる。その一方、透明基板21上の風速(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33aの表面の風速)が小さい場合(実施例1の場合)、塗布直後の着色材(赤色材31a、緑色材32aおよび青色材33a)の表面において、風速が均一化されるとともに、着色材の溶媒の気化状態が均一化され、表面ラフネス(表面粗さRa)が小さくなったと考えられる。
【0069】
又は、透明基板21上の風速が大きい場合(比較例1の場合)、着色材の表面付近の溶媒やバインダー樹脂が、風速の差異により、波打つとともに表面張力の大きい顔料(顔料分子)の周りに偏析して集まり、表面ラフネス(表面粗さRa)が大きくなったと考えられる。その一方、透明基板21上の風速が小さい場合(実施例1の場合)、風速が均一化されるので、着色材の表面付近の溶媒やバインダー樹脂は、波打ったり、表面張力の大きい顔料(顔料分子)の周りに偏析して集まることなく、表面ラフネス(表面粗さRa)が小さくなったと考えられる。
【0070】
又は、透明基板21上の風速が大きい場合(比較例1の場合)、着色材の表面が風により波打つとともに、波が共鳴し、うねりが発生することにより、表面ラフネス(表面粗さRa)が大きくなったと考えられる。その一方、透明基板21上の風速が小さい場合(実施例1の場合)、着色材の表面は風により波打つことがなく、表面ラフネス(表面粗さRa)が小さくなったと考えられる。
【0071】
次に、実施例1および比較例1の表面反射ムラを確認した実験について説明する。
【0072】
この確認実験では、実施例1のカラーフィルタ基板12を5ロット作製し、比較例1のカラーフィルタ基板112を4ロット作製した。
【0073】
そして、実施例1のカラーフィルタ基板12および比較例1のカラーフィルタ基板112について、表面反射ムラを観察し、表面反射ムラが確認できたカラーフィルタ基板12および112の発生率を求めた。その結果を、図12に示す。なお、表面反射ムラとは、カラーフィルタ基板の着色層に光を照射したときにかろうじて見える(視認困難に近い)ムラのことである。
【0074】
図12を参照して、実施例1では、カラーフィルタ基板12の着色層30に表面反射ムラが発生しなくなることが判明した。具体的には、実施例1の表面反射ムラの発生率は、5ロット全てにおいて、0%であった。その一方、比較例1では、カラーフィルタ基板112の着色層130に表面反射ムラが発生することが判明した。具体的には、比較例1の表面反射ムラの発生率は、約0.3%、約1.0%、約1.5%および約0.8%であった。
【0075】
これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0076】
すなわち、実施例1の着色層30の表面ラフネス(表面粗さRa)は小さいので、着色層30の表面反射が均一になり、表面反射ムラが発生しなかったと考えられる。その一方、比較例1の着色層130の表面ラフネス(表面粗さRa)は大きいので、着色層130の表面反射が不均一になり、表面反射ムラが発生したと考えられる。
【0077】
なお、表面反射ムラは、黒表示時における光漏れと関係しているものと考えられる。
【0078】
次に、実施例2および比較例2の正面方向の輝度(明るさ)を確認した実験について説明する。
【0079】
実施例2では、上記実施例1と同様の製造方法(製造条件)で製造したカラーフィルタ基板12を用いて、液晶表示パネル2を作製した。
【0080】
比較例2では、上記比較例1と同様の製造方法(製造条件)で製造したカラーフィルタ基板112を用いて、液晶表示パネル102(図13参照)を作製した。なお、比較例2のその他の製造方法は、実施例2と同様にした。
【0081】
そして、実施例2および比較例2について、バックライト装置3の照明光を照射した際の、液晶表示パネル2および102の正面方向の輝度(明るさ)を測定し、比較例2の輝度を100として規格化を行った。その結果を、表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2を参照して、実施例2の液晶表示パネル2は、比較例2の液晶表示パネル102に比べて、正面方向の輝度(明るさ)が高くなることが判明した。具体的には、実施例2の輝度(明るさ)は、101よりも大きくなり、比較例2の輝度(明るさ)に比べて約1%以上向上した。
【0084】
これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0085】
すなわち、実施例2の着色層30の表面ラフネス(表面粗さRa)は、比較例2の着色層130の表面ラフネス(表面粗さRa)に比べて小さい。このため、実施例2では、図3に示すように、カラーフィルタ基板12を透過(通過)する際に光が散乱するのを抑制することができ、液晶表示パネル2の正面方向の輝度(明るさ)が低下するのを抑制することができたと考えられる。その一方、比較例2では、図13に示すように、カラーフィルタ基板112を透過(通過)する際に光が散乱し、液晶表示パネル102の正面方向の輝度(明るさ)が低下したと考えられる。
【0086】
なお、実施例2では、着色層30(透明電極層23)の表面ラフネス(表面粗さRa)は十分に小さいので、図4に示すように、着色層30(透明電極層23)の表面付近の液晶分子13aの配列が乱れるのを抑制することができ、黒表示時に光漏れが発生するのを、抑制することができると考えられる。その一方、比較例2では、着色層130(透明電極層23)の表面ラフネス(表面粗さRa)は大きいので、図14に示すように、着色層130(透明電極層23)の表面付近の液晶分子13aの配列が乱れ、黒表示時に光漏れが発生しやすくなると考えられる。ただし、漏れた光の輝度(明るさ)は、輝度測定限界に近く、数値化するのが困難であるので、光漏れ(漏れた光の輝度)の測定は行わなかった。
【0087】
また、着色層の膜厚、加工形状(着色層の幅、着色層の側面のテーパ角度)、および、着色層の機械的強度について、実施例と比較例との間で比較したが、これらについては、実施例と比較例との間で差異は見られなかった。
【0088】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0089】
例えば、上記実施形態では、表示パネルを、液晶表示パネルに適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、液晶表示パネル以外の表示パネルに適用してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、赤、緑および青の色の着色材を用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、シアン、マゼンタおよびイエローの色の着色材を用いてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、着色層(透明電極層)の表面粗さRaを、約1nm以上、約2nm以下にした例について示したが、本発明はこれに限らず、着色層(透明電極層)の表面粗さRaは、約2nmよりも大きくてもよい。すなわち、上記実験結果では、着色層(透明電極層)の表面粗さRaが約3nm以上、約6nm以下であっても、表面反射ムラの発生率は、約0.3%〜約1.5%であったので、表面粗さRaが例えば約3nm以上、約5nm以下であっても、効果があり、表面反射ムラの発生率が0%になる可能性もある、と考えられる。このため、着色層(透明電極層)の表面粗さRaが、約6nmよりも小さければ、約2nmより大きくてもよい。
【0092】
また、上記実施例では、透明基板上の風速(着色材の表面の風速)を、約0.09m/s以上、約0.11m/s以下にした例について示したが、本発明はこれに限らず、透明基板上の風速(着色材の表面の風速)は、約0.11m/sよりも大きくてもよい。すなわち、表面粗さRaが約5nm以下になるのであれば、約0.11m/sよりも大きくてもよい。
【0093】
また、装置内(透明基板の周辺)のクリーン度が確保できる場合には、透明基板(着色材)の表面に空気を送風しなくてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、スリットコーターを用いて、透明基板上に着色材を塗布した例について示したが、本発明はこれに限らず、スリットコーターを用いず、例えばインクジェット法により、透明基板上に着色材を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0095】
2 液晶表示パネル(表示パネル)
12 カラーフィルタ基板
21 透明基板
23 透明電極層(電極層)
30 着色層
31 赤色着色層(着色層)
32 緑色着色層(着色層)
33 青色着色層(着色層)
31a 赤色材(着色材)
32a 緑色材(着色材)
33a 青色材(着色材)
50 スリットコーター
60 送風機
60a HEPAフィルタ(空気清浄化フィルタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを構成するカラーフィルタ基板の製造方法であって、
透明基板上に顔料が含有された着色材を配置する工程と、
前記着色材を硬化させることにより着色層を形成する工程とを備え、
前記透明基板上に前記着色材を配置する工程において、前記着色材の表面の風速は、0.5m/sよりも小さいことを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項2】
前記着色材の表面の風速は、0.11m/s以下であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項3】
前記着色材の表面の風速は、0m/sよりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項4】
前記着色材の表面の風速は、0.09m/s以上、0.11m/s以下であることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項5】
前記着色層上に電極層を形成する工程をさらに備え、
前記電極層の表面粗さRaは、2nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項6】
前記透明基板上に前記着色材を配置する工程において、空気清浄化フィルタを含む送風機から前記着色材の表面に空気が送風されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項7】
前記着色材は、スリットコーターを用いて、前記透明基板上に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカラーフィルタ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−128051(P2012−128051A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277725(P2010−277725)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】