説明

カラーフィルタ

【課題】青色着色層上に形成される液晶層の膜厚が他の着色層上に形成される液晶層の膜厚よりも薄くなるようなマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた場合に、斜め方向から観察された場合の黒表示の色つきを防止することが可能なカラーフィルタを提供する。
【解決手段】透明基板1、および、透明基板上に形成された赤色着色層2R、緑色着色層2Gおよび青色着色層2Bを有し、青色着色層の膜厚が他の色の着色層の膜厚よりも大きく形成されており、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(1)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタ10であって、各色の上記着色層の厚み方向のRthが下記関係式(2)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタ。|B(液)Rth|≧|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(1)、|BRth|≧|GRth|≦|RRth|…関係式(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチギャップ構造を有する液晶表示装置に用いられた場合に、視野角特性に優れた画像表示を行うことを可能とするカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置の構造は、カラーフィルタと、TFTアレイ基板のような透明基板上に導電膜を形成した対向基板と、カラーフィルタおよび対向基板の間に液晶材料が封入されてなる液晶層とからなっているものである。
【0003】
図8は、一般的な液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図8に示すように、液晶表示装置100は、透明基板1、透明基板1上に形成された複数色の着色層2(図8では、赤色着色層2R、緑色着色層2Gおよび青色着色層2B)、および、各色の着色層2間に形成された遮光部3を有するカラーフィルタ10と、対向基板20と、カラーフィルタ10および対向基板20の間に設けられた液晶層30とを有するものである。
ここで、液晶層30に用いられる液晶材料には、光の波長により透過光量が異なるといった特性があるものがある。そのため、図8に示すように、各色の着色層2に対して液晶層30の厚み(図8では、赤色着色層2R上に形成される液晶層30の膜厚dR、緑色着色層2G上に形成される液晶層30の膜厚dG、および青色着色層2B上に形成される液晶層30の膜厚dB)が一定である液晶表示装置100においては、青色着色層2Bの輝度が低くなってしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、上述した液晶材料の特性による問題を解決するために、各色の着色層上に形成される液晶層の膜厚をそれぞれ異なるものとしたマルチギャップ構造の液晶表示装置が提案されている(特許文献1)。図9は、マルチギャップ構造を有する液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図9に示すように、例えば、カラーフィルタ10の青色着色層2Bの膜厚を大きなものとした液晶表示装置100においては、青色着色層2B上に形成される液晶層30の膜厚dBを小さなものとすることができることから、液晶層30を透過する青色光の透過光量を増加させることができ、これにより青色着色層2Bの輝度を向上させることが可能となる。
なお、図9において説明していない符号については、図8と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0005】
しかしながら、上記マルチギャップ構造を有する液晶表示装置においては、青色着色層の輝度を向上させることは可能となるものの、斜め方向から観察した場合においては、色みを帯びた黒表示が観察され、良好な画像表示を行うことが困難であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−134587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、青色着色層上に形成される液晶層の膜厚が他の着色層上に形成される液晶層の膜厚よりも薄くなるようなマルチギャップ構造の液晶表示装置(以下、単にマルチギャップ構造の液晶表示装置と称する場合がある。)に用いた場合に、斜め方向から観察された場合の黒表示の色つきを防止することが可能なカラーフィルタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、上述したマルチギャップ構造を有する液晶表示装置においては、各色の着色層の厚み方向のレターデーション(以下、Rthと称する場合がある。)の関係が、|BRth|≧|GRth|≦|RRth|(|RRth|は上記赤色着色層のRthの絶対値、|GRth|は上記緑色着色層のRthの絶対値、|BRth|は上記青色着色層のRthの絶対値)となるように、各色の着色層のRthが調整されたカラーフィルタを用いることにより、斜め方向から観察された場合の黒表示の色つきを防止することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、透明基板、および、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層を有し、上記青色着色層の膜厚が他の色の着色層の膜厚よりも大きく形成されており、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(1)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、各色の上記着色層のRthが下記関係式(2)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
|B(液)Rth|≧|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(1)
|BRth|≧|GRth|≦|RRth|…関係式(2)
(式中、|R(液)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|G(液)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|B(液)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|RRth|は上記赤色着色層のRthの絶対値、|GRth|は上記緑色着色層のRthの絶対値、|BRth|は上記青色着色層のRthの絶対値である。)
【0010】
ここで、|B(液)Rth|≧|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|の関係を満たす波長分散性を有する液晶を用いたマルチギャップ構造の液晶表示装置においては、青色着色層上の液晶層の厚みが薄くなることから、カラーフィルタを装着していない状態の液晶表示装置(以下、カラーフィルタ未装着液晶表示装置と称する場合がある。)のRthは、|B(未)Rth|≦|G(未)Rth|≧|R(未)Rth|(|R(未)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域におけるカラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthの絶対値、|G(未)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域におけるカラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthの絶対値、|B(未)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域におけるカラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthの絶対値)の関係を示すものと考えられる。
本発明によれば、各色の上記着色層のRthが上記関係式(2)を満たすものであることから、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置と組み合わせて液晶表示装置とした場合に、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthの絶対値と、上記カラーフィルタのRthの絶対値とを足し合わせることにより、上記各色の着色層に対応する波長領域における、液晶表示装置のRthを所定の値で一致させることが可能となる。その結果、斜め方向から観察された場合の黒表示の色つきを抑制することが可能となる。
【0011】
本発明は、透明基板、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層、および、上記透明基板上に形成された柱状スペーサを有し、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(3)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、各色の上記着色層の膜厚およびRthが下記関係式(4)から下記関係式(8)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
|B(液)Rth|>|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(3)
FT>GFT…関係式(4)
FT±0.1μm≦RFT±0.1μm…関係式(5)
|RRth|−|GRth|≧0…関係式(6)
|BRth|−|GRth|≧0…関係式(7)
{T−(BFT−GFT)}/T<|BRth|/|GRth|…関係式(8)
(式中、|R(液)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|G(液)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|B(液)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、RFTは上記赤色着色層の膜厚、GFTは上記緑色着色層の膜厚、BFTは上記青色着色層の膜厚、Tは上記透明基板の上記着色層側表面から上記柱状スペーサの頂部までの距離と上記GFTとの差、|RRth|は上記赤色着色層のRthの絶対値、|GRth|は上記緑色着色層のRthの絶対値、|BRth|は上記青色着色層のRthの絶対値である。)
【0012】
本発明によれば、上記関係式(4)から上記関係式(8)を満たすように上記各色の着色層の膜厚およびRthが調整されていることにより、上記カラーフィルタを、上記関係式(3)に示される波長分散性を有する液晶を有するマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた際に、斜め方向での黒表示の色つきをより好適に防止することが可能となる。
【0013】
本発明は、透明基板、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層、上記透明基板上に形成された柱状スペーサ、および、上記透明基板上に形成されたオーバーコート層を有し、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(9)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、各色の上記着色層の膜厚およびRthが下記関係式(10)から下記関係式(14)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
|B(液)Rth|>|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(9)
B’FT>G’FT…関係式(10)
G’FT±0.1μm≦R’FT±0.1μm…関係式(11)
R’Rth−G’Rth≧0…関係式(12)
B’Rth−G’Rth≧0…関係式(13)
{U−(B’FT−G’FT)}/U<|B’Rth|/|G’ Rth|…関係式(14)
(式中、|R(液)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|G(液)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|B(液)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、R’FTは上記赤色着色層および上記オーバーコート層の積層部分の膜厚、G’FTは上記緑色着色層および上記オーバーコート層の積層部分の膜厚、B’FTは上記青色着色層および上記オーバーコート層の積層部分の膜厚、Uは上記透明基板の上記着色層側の表面から上記柱状スペーサおよび上記オーバーコート層の積層部分の頂部までの距離と上記G’RTとの差、|R’Rth|は上記赤色着色層および上記オーバーコート層の積層部分のRthの絶対値、|G’Rth|は上記緑色着色層および上記オーバーコート層の積層部分のRthの絶対値、|B’Rth|は上記青色着色層および上記オーバーコート層の積層部分のRthの絶対値である。)
【0014】
本発明によれば、上記関係式(10)から上記関係式(14)を満たすことにより、上記カラーフィルタを、上記関係式(9)に示される波長分散性を有する液晶を有するマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた際に、斜め方向での黒表示の色つきをより好適に防止することが可能となる。
【0015】
本発明においては、上記各色の着色層のRthの絶対値の和が30nm以下となることが好ましい。これにより、本発明のカラーフィルタを上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた際に、斜め方向のコントラストを高いものとすることができ、良好な画像表示を行うことが可能となるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記各色の着色層のRthを調整することにより、上記マルチギャップ構造を有する液晶表示装置においても、斜め方向から観察された際の黒表示の色つきを防止することができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のカラーフィルタのRthの分布の一例を示すグラフである。
【図3】カラーフィルタを装着していない状態の液晶表示装置のRthの分布の一例を示すグラフである。
【図4】カラーフィルタを装着していない状態の液晶表示装置のRthの分布の他の一例を示すグラフである。
【図5】液晶表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明のカラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のカラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図8】液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図9】液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のカラーフィルタについて説明する。
本発明のカラーフィルタは、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いられるものであり、上記液晶表示装置を斜め方向から観察した場合に黒表示の色つきが観察されることを防止するため、各色の着色層のRthが調整されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のカラーフィルタは、構成の違いにより3つの態様に分けて考えることが可能である。以下、各態様について説明する。
1.第1態様のカラーフィルタ
本発明のカラーフィルタの第1態様について説明する。
本態様のカラーフィルタは、透明基板、および上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層を有し、上記青色着色層の膜厚が他の色の着色層の膜厚よりも大きく形成されており、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(1)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、各色の上記着色層のRthが下記関係式(2)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするものである。
|B(液)Rth|≧|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(1)
|BRth|≧|GRth|≦|RRth|…関係式(2)
(式中、|R(液)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|G(液)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|B(液)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|RRth|は上記赤色着色層のRthの絶対値、|GRth|は上記緑色着色層のRthの絶対値、|BRth|は上記青色着色層のRthの絶対値である。)
【0020】
ここで、上記関係式(1)において、上記液晶のRth、B(液)Rth、G(液)Rth、およびR(液)Rthは全て正の値、または全て負の値のいずれかであるものとする。
また、上記関係式(2)において上記各色の着色層のRth、BRth、GRth、およびRRthは全て正の値、または全て負の値のいずれかであるものとする。
また、上記液晶のRthと上記各色の着色層のRthとは同符号であるものとする。
【0021】
ここで、本態様のカラーフィルタおよび本態様における各色の着色層のRthの関係について図を用いて説明する。
図1は、本態様のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本態様のカラーフィルタ10は、透明基板1、および、透明基板1上に形成された赤色着色層2R、緑色着色層2Gおよび青色着色層2Bを有し、青色着色層2Bの膜厚が、赤色着色層2Rおよび緑色着色層2Gの膜厚よりも大きく形成されているものである。また、本態様においては、通常、各色の着色層2R、2G、2B間に遮光部3を有するものである。
【0022】
図2は、本態様のカラーフィルタのRthの分布の一例を示すグラフである。図2においては、本態様のカラーフィルタにおける各色の着色層のRthの絶対値を表している。図2に示すように、本態様においては、上記各色の着色層のRthが上記関係式(2)の関係を満たすように調整されているものである。図2においては、|BRth|が5nm、|GRth|が3nm、|RRth|が5nmである場合について示している。
【0023】
従来、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置においては、上記液晶表示装置が斜め方向から観察された場合に、黒表示の色つきが生じてしまうことから、良好な画像表示を行うことが困難であるといった問題があった。
そこで、本発明者らは、上記問題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、上記関係式(2)を満たすように、上記各色の着色層のRthが調整されたカラーフィルタを上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた場合には、上記斜め方向の黒表示の色つきを防止することが可能となることを見出した。
【0024】
この理由については明らかではないが、次のように考えられる。
一般的に、液晶表示装置に用いられる液晶としては、上記関係式(1)に示される波長分散性を有するものが多い。また、上記液晶は、上記液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ未装着液晶表示装置を構成する液晶層に用いられるものであることから、上記液晶の波長分散性は、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthに大きく影響するものである。
【0025】
また、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置における液晶層のRthは、用いられる液晶の波長分散性と液晶層の厚みに依存するものであり、上記液晶層の厚みが薄くなるほど上記液晶層のRthの絶対値は小さくなるものである。
【0026】
ここで、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthについて、図を用いて説明する。図3は、フラット構造の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ未装着液晶表示装置について示しているものである。図3に示すように、フラット構造の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ未装着液晶表示装置においては、各色の着色層上に形成される液晶層の厚みが全て同等の厚みとなることから、液晶層のRthについては、液晶の波長分散性と同様の挙動を示すものとなり、カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthも、|B(未)Rth|≧|G(未)Rth|≧|R(未)Rth|を示すものとなる場合が多い。なお、図3においては、|B(未)Rth|=13nm、|G(未)Rth|=12nm、|R(未)Rth|=10nmとなる場合について示している。
【0027】
一方、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ未装着液晶表示装置においては、青色着色層上の液晶層の膜厚が薄くなることから、青色着色層上の液晶層のRthの絶対値は小さなものとなる。また、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置において、青色着色層の輝度を所望の値まで高くするために青色着色層上の液晶層の膜厚を薄膜化した場合、青色着色層上の液晶層のRthの絶対値は、緑色着色層上の液晶層のRthの絶対値よりも小さくなる場合が多い。
よって、上記関係式(1)に示される波長分散性を有する液晶を用いた上記マルチギャップ構造の液晶表示装置においては、上記液晶層のRthが液晶の波長分散性と同様の挙動を示さず、青色着色層上の液晶層のRThの絶対値が、緑色着色層上のRthの絶対値より小さくなり、その結果、カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthも、図4に示すように、|B(未)Rth|≦|G(未)Rth|≧|R(未)Rth|の関係を示すものとなる場合が多い。なお、図4においては、B(未)Rth=10nm、|G(未)Rth|=12nm、|R(未)Rth|=10nmとなる場合について示している。
【0028】
ところで、上記液晶表示装置が斜め方向から観察された場合に、黒表示の色つきが観察される理由としては、上記各色の着色層に対応する波長領域の液晶表示装置のRthの値にバラつきを有するからである。したがって、上記斜め方向の黒表示の色つきを防止するには、上記各色の着色層に対応する波長領域の液晶表示装置のRthを所定の値に一致させることが必要である。
【0029】
しかしながら、従来のマルチギャップ構造を有する液晶表示装置においては、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthについては特に考慮されることなく、また、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタについても、特にカラーフィルタのRthを考慮することなく用いられていたことから、組み立てられたマルチギャップ構造の液晶表示装置においては、上記各色の着色層に対応する波長領域の液晶表示装置のRthの値にバラつきを生じ、その結果、斜め方向での黒表示の色つきが発生するものと考えられる。
【0030】
本態様によれば、各色の着色層のRthが上記関係式(2)を満たすものであることから、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置とを組み合わせて液晶表示装置とした場合に、図5に示すように、上記カラーフィルタのRthの絶対値と上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthの絶対値とをそれぞれ足し合わせることにより、上記各色の着色層に対応する波長領域の液晶表示装置のRthを所定の値で一致させることが可能となる。その結果、斜め方向から観察された場合の黒表示の色つきを抑制することが可能となる。
なお、図5は、マルチギャップ構造を有する液晶表示装置のRthの分布の一例を示すグラフであり、|B(未)Rth|=10nm、|G(未)Rth|=12nm、|R(未)Rth|=10nmを示すカラーフィルタ未装着液晶表示装置に対して、|BRth|=5nm、|GRth|=3nm、|RRth|=5nmを示す本態様のカラーフィルタを用いることにより、各色の着色層の波長領域に対応する上記液晶表示装置のRthをそれぞれ15nmに一致させた例について示している。
【0031】
以下、本態様のカラーフィルタに用いられる各部材について説明する。
【0032】
(1)着色層
本態様に用いられる着色層は、上記透明基板上に形成され、赤色着色層と、緑色着色層と、青色着色層とを有するものであり、上記青色着色層の膜厚が他の色の着色層の膜厚よりも大きく形成されているものである。また、各色の着色層のRthが下記関係式(2)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするものである。
|BRth|≧|GRth|≦|RRth|…関係式(2)
(式中、|RRth|は上記赤色着色層のRthの絶対値、|GRth|は上記緑色着色層のRthの絶対値、|BRth|は上記青色着色層のRthの絶対値である。)
また、本態様においては、各色の着色層のRthは、全て同符号とする。
【0033】
まず、本態様に用いられる着色層のRthの調整方法について説明する。
【0034】
(a)着色層のRthの調整方法
本態様における着色層のRthは、各色の着色層のRthが全て同符号であり、下記関係式(2)で示される関係を満たすように調整されているものであれば特に限定されるものではない。
|BRth|≧|GRth|≦|RRth|…関係式(2)
(式中、RRthは上記赤色着色層のRth、GRthは上記緑色着色層のRth、BRthは上記青色着色層のRthである。)
【0035】
より具体的には、上記|BRth|および|GRth|の差が、0nm〜10nmの範囲内、なかでも、0nm〜8nmの範囲内、特に、0nm〜5nmの範囲内となるように調整されていることが好ましい。
また、上記|RRth|および|GRth|の差が、0nm〜10nmの範囲内、なかでも、0nm〜8nmの範囲内、特に、0nm〜5nmの範囲内となるように調整されていることが好ましい。
上記|BRth|および|GRth|の差、および上記|RRth|および|GRth|の差が上記範囲を超える場合は、上記カラーフィルタを上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いたとしても、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置の斜め方向の黒表示の色つきを防止することが困難であるからである。
【0036】
本態様に用いられる着色層としては、上記関係式(2)に示される関係を満たすように、各色の着色層のRthを調整されているものであれば、特に限定されるものではないが、各色の着色層のRthの絶対値の和が、30nm以下、なかでも0nm〜25nmの範囲内、特に0nm〜20nmの範囲内であることが好ましい。上記各色の着色層のRthの絶対値の和が上記範囲を超える場合は、上記カラーフィルタを上記マルチギャップ構造を有する液晶表示装置に用いた際に、斜め方向のコントラストが低いものとなるため、良好な画像表示を行うことが困難となるからである。
【0037】
また、本態様においては、本態様のカラーフィルタをマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた場合に、各色の着色層に対応する波長領域における液晶表示装置のRthの絶対値の最大値と最小値との差が、0nm〜15nmの範囲内、なかでも0nm〜10nmの範囲内、特に0nm〜5nmの範囲内となるように、上記各色の着色層のRthを調整することが好ましい。上記範囲に範囲を超える場合は、上記カラーフィルタをマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いたとしても、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置の斜め方向の黒表示の色つきを防止することが困難となる可能性があるからである。
なお、上記各色の着色層に対応する波長領域における液晶表示装置のRthの絶対値は、上記各色の着色層のRthの絶対値と、各色の着色層に対応する波長領域におけるカラーフィルタ未装着液晶表示装置Rthの絶対値との和で表すことができる。
【0038】
本態様において、各色の着色層のRthを調整する方法としては、各色の着色層のRthの符号が全て同符号となり、かつ、各色の着色層のRthが上記関係式(2)を満たすように調整することができる方法であれば特に限定されるものではない。
ここで、着色層のRthには、膜の内部応力が寄与していると考えられる。着色層は、例えば、透明基板上に着色層形成用組成物からなる膜を形成し、パターン露光し、現像し、焼成することにより形成されるものであり、このような着色層を形成する過程において、温度変化によって膜が膨張したり収縮したりする。このような着色層を形成する過程での温度変化による膜の膨張・収縮の度合いによって、膜の内部応力が変化する。そして、膜の内部応力が変化することで、膜の異方性が変化し、着色層のRthも変化すると推量される。特に、着色層が形成される過程においてモノマーやバインダーポリマーが配向する際に顔料が配向または凝集し、この顔料の配向状態または凝集状態が、膜の異方性、すなわち着色層のRthに寄与しているのではないかと考えられる。
このような膜の内部応力を変化させる手段、具体的には顔料の配向状態または凝集状態を変化させる手段としては、着色層に含まれる顔料分散剤のガラス転移温度Tgを調整する方法、着色層のPV比を調整する方法、着色層形成時に着色層用形成用組成物からなる膜を焼成するときの膜の収縮率を調整する方法、着色層形成時に着色層形成用組成物からなる膜を焼成するときの焼成温度を調整する方法などを挙げることができる。
【0039】
まず、着色層のRthと着色層に含まれる顔料分散剤のTgとの関係について説明する。着色層のRthは、顔料分散剤のTgによって変化するものであり、具体的には、顔料分散剤のTgが大きくなるほど、着色層のRthの絶対値が大きくなる傾向にある。よって、着色層のRthは、着色層に含まれる顔料分散剤のTgを調整することによって制御することが可能である。
着色層に含まれる顔料分散剤のTgによって着色層のRthが変化する理由については明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、上述したように、膜の異方性には、顔料の凝集状態(分散状態)が大きく寄与しているのではないかと考えられる。よって、顔料分散剤のTgが大きくなるほど、着色層形成用組成物の粘度が高くなるので、顔料が凝集しやすくなり、膜の異方性が大きくなり、最終的に得られる着色層のRthの絶対値が大きくなると推量される。
【0040】
上記着色層に含まれる顔料分散剤のTgを調整することにより着色層のRthを調整する方法としては、具体的には、着色層のRthが所定の値となるように、上記着色層を形成する際に用いられる着色層用組成物に含有される顔料分散剤のTgを調整することによって行われる。
【0041】
次に、着色層のRthと着色層のPV比との関係について説明する。着色層のRthは着色層のPV比を調整することにより変化するものである。したがって、着色層のRthは着色層のPV比を調整することにより調整することができるものである。ここで、「着色層のPV比」とは、着色層中の顔料の含有量と、着色層中のバインダー樹脂の含有量との比率を示すものであるが、これを直接特定することができない場合は、「着色層形成用組成物中の顔料の含有量/着色層形成用組成物中のバインダー樹脂の含有量」で示すことができる。また、「バインダー樹脂」とは、バインダーポリマー、および重合可能なモノマーから構成されるものである。
上述したように、着色層のPV比を調整することにより、着色層のRthの絶対値を変化させることができる理由については明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、着色層形成用組成物中に含有されるバインダー樹脂が増えることにより、製膜された膜の熱収縮の度合いが増加する。その結果、膜中に存在する異方性を有する物質の配向が進みRthが変化すると考えられる。顔料の種類やバインダー樹脂の種類により、上記異方性を有する物質の配向によるRthがすべて同じ方向に大きくなるならばRthの絶対値は大きくなり、配向によるRthがそれぞれ異なるならば、Rthの絶対値は小さくなると推量される。
【0042】
着色層のPV比を調整することにより、着色層のRthを調整する方法としては、具体的には、着色層形成用組成物に用いられる顔料の種類およびバインダー樹脂の種類の組み合わせを選択し、着色層のPV比の増減に対する着色層のRthの絶対値の変化を予め調べた後、着色層のRthを所定の値が所定の値となるように、上記着色層形成用組成物のPV比を調整することによって行われる。
【0043】
次に、着色層のRthと着色層形成時に着色層用形成用組成物からなる膜を焼成するときの膜の収縮率との関係について説明する。着色層のRthは膜を焼成するときの膜の収縮率によって変化するものであり、具体的には、膜を焼成するときの膜の収縮率が大きくなるほど、着色層のRthの絶対値が大きくなるものである。したがって、着色層のRthは、膜を焼成するときの膜の収縮率を調整することによって制御することが可能となる。
膜を焼成するときの膜の収縮率によって着色層のRthが変化する理由については明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、膜を焼成するときの膜の収縮率が大きなものほど、着色層を形成する過程での温度変化による膜の膨張・収縮の度合いが大きくなるので、膜の内部応力が大きくなると思料される。その結果、モノマー、バインダーポリマー、顔料などが配向しやすくなったり凝集しやすくなったりするため、膜の異方性が大きくなり、最終的に得られる着色層のRthの絶対値が大きくなると推量される。特に、上述したように、着色層が形成される過程においてモノマーやバインダーポリマーが配向する際に顔料が配向または凝集し、この顔料の配向状態または凝集状態が膜の異方性に寄与しているのではないかと考えられる。
【0044】
着色層形成時に膜を焼成するときの膜の収縮率を調整することにより、上記着色層のRthを調整する方法としては、具体的には、上記着色層のRthを所定の値とするために、着色層形成用組成物の組成を調整して熱収縮率を調整することによって行われる。
【0045】
さらに、着色層のRthと着色層形成時の焼成温度との関係について説明する。着色層のRthは焼成温度によって変化するものであり、具体的には、焼成温度が高くなるほど、着色層のRthの絶対値が大きくなるものである。したがって、着色層のRthは、着色層を形成する際の焼成温度を調整することによって制御すること可能である。
着色層を形成する際の焼成温度によって着色層のRthが変化する理由については明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、上述したように、膜の異方性には、顔料の凝集状態が大きく寄与しているのではないかと考えられる。よって、焼成温度が大きくなるほど、顔料が凝集しやすくなり、膜の異方性が大きくなり、最終的に得られる着色層のRthの絶対値が大きくなると推量される。
【0046】
上記着色層形成時の焼成温度により着色層のRthを調整する方法としては、具体的には、上記着色層のRthを所定の値とするために、着色層形成用組成物の組成を調整して焼成温度を調整することによって行われる。
【0047】
なお、本態様においては上述したいずれの着色層のRthの調整方法を用いてもよい。
【0048】
(b)着色層
本態様に用いられる着色層は、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有するものであれば特に限定されるものではなく、上述した色以外の着色層を有していてもよい。
【0049】
また、本態様においては、上記青色着色層の膜厚が他の色の着色層よりも厚く形成されているのであれば特に限定されるものではない。また青色着色層の膜厚については、本態様のカラーフィルタが液晶表示装置に用いられた場合に、良好な画像表示を行うことができる程度の膜厚であれば特に限定されるものではなく、用いられる液晶表示装置の青色着色層上に形成される液晶層の厚みにより適宜選択されるものである。
【0050】
また、本態様においては、赤色着色層および緑色着色層については、同等の膜厚で形成されていてもよいし、赤色着色層および緑色着色層のいずれか一方の着色層の膜厚が他方の膜厚よりも大きくなるように形成されていてもよい。本態様においては、上記赤色着色層の膜厚が、上記緑色着色層の膜厚と同等、もしくは上記緑色着色層の膜厚よりも大きくなるように形成されていることがより好ましい。これにより、本態様のカラーフィルタが上記マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いられた場合、斜め方向での黒表示の色つきをより効果的に防止することが可能となる。
【0051】
上記赤色着色層および緑色着色層の膜厚についても、本態様のカラーフィルタが液晶表示装置に用いられた場合に、良好な画像表示を行うことができる程度の膜厚であれば、特に限定されるものではなく、用いられる液晶表示装置の赤色着色層または緑色着色層上に形成される液晶層の厚みにより適宜選択されるものである。
【0052】
また、本態様に用いられる着色層は、通常、顔料、モノマー、バインダーポリマーを有する着色層用組成物を含有するものである。また、このほかにも、顔料分散剤、反応開始剤、界面活性剤等の種々の添加剤を用いてもよい。なお、上記着色層用組成物の組成は、上述した着色層のRthの調整方法に合わせて適宜決定されるものである。
【0053】
(2)透明基板
本態様に用いられる透明基板は、着色層、および必要に応じて遮光部を形成可能であり、可視光に対して透明な基板であれば特に限定されるものではない。
本態様においては、透明基板がRthを有さないものであることがより好ましい。このような透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様のものとすることができる。
【0054】
具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。
【0055】
(3)その他の部材
本態様のカラーフィルタは、上記の着色層および透明基板の他に、必要に応じて他の部材を有していてもよい。例えば、遮光部、柱状スペーサ、およびオーバーコート層等が挙げられる。以下それぞれについて説明する。
上記遮光部については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、上記柱状スペーサについては、後述する「2.第2態様のカラーフィルタ」の項で、上記オーバーコート層については、後述する「3.第3態様のカラーフィルタ」の項でそれぞれ説明するものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0056】
(4)その他
本態様のカラーフィルタは、液晶層の液晶の波長分散性が上記関係式(1)で示される関係を示すマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いられるものである。
このようなマルチギャップ構造の液晶表示装置は、上記カラーフィルタの他に、通常、対向基板と、液晶層とを有するものである。また、上述したカラーフィルタ未装着液晶表示装置は、少なくとも上記対向基板および液晶層を有するものである。以下、上記対向基板および液晶層について、それぞれ説明する。
【0057】
上記対向基板は、後述する液晶層中の液晶を駆動させるものである。
上記対向基板としては、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0058】
ここで、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置の駆動方式としては、良好な画像表示を行うことができる駆動方式であれば特に限定されるものではなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、および、MVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
【0059】
上記液晶層は、上記関係式(1)に示される波長分散性を有する液晶からなるものである。このような液晶のRthとしては、正の値を有するものであってもよいし、負の値を有するものであってもよい。このような液晶としては、一般的な液晶表示装置に用いられる液晶と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0060】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタおよび対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタおよび対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0061】
本態様のカラーフィルタが用いられる液晶表示装置としては、上記対向基板および液晶層以外にも、必要な構成を適宜追加して用いることが可能である。
【0062】
2.第2態様のカラーフィルタ
本発明のカラーフィルタの第2態様について説明する。
本態様のカラーフィルタは、透明基板、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層、および、上記透明基板上に形成された柱状スペーサを有し、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(3)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、各色の上記着色層の膜厚およびRthが下記関係式(4)から下記関係式(8)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするものである。
|B(液)Rth|>|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(3)
FT>GFT…関係式(4)
FT±0.1μm≦RFT±0.1μm…関係式(5)
|RRth|−|GRth|≧0…関係式(6)
|BRth|−|GRth|≧0…関係式(7)
{T−(BFT−GFT)}/T<|BRth|/|GRth|…関係式(8)
(式中、|R(液)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|G(液)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|B(液)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、RFTは上記赤色着色層の膜厚、GFTは上記緑色着色層の膜厚、BFTは上記青色着色層の膜厚、Tは上記透明基板の上記着色層側表面から上記柱状スペーサの頂部までの距離と上記GFTとの差、|RRth|は上記赤色着色層のRthの絶対値、|GRth|は上記緑色着色層のRthの絶対値、|BRth|は上記青色着色層のRthの絶対値である。)
【0063】
ここで、上記関係式(3)において、上記液晶のRth、B(液)Rth、G(液)Rth、およびR(液)Rthは全て正の値、または全て負の値のいずれかであるものとする。
また、上記関係式(4)から関係式(8)において、上記各色の着色層のRth、BRth、GRth、およびRRthは全て正の値、または全て負の値のいずれかであるものとする。
また、上記液晶のRthと上記各色の着色層のRthとは同符号であるものとする。
【0064】
ここで、本態様のカラーフィルタについて図を用いて説明する。図6は、本態様のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図6に示すように、本態様のカラーフィルタ10は、透明基板1、透明基板1上に形成された赤色着色層2R、緑色着色層2Gおよび青色着色層2B、各着色層2R、2B、2G間に形成された遮光部3、および、遮光部3上に形成された柱状スペーサ4を有し、青色着色層2Bの膜厚が緑色着色層2Gの膜厚よりも大きく形成されているものであり、緑色着色層2Gの膜厚と赤色着色層2Rとが同等の膜厚で形成されているものである。
【0065】
本発明者らは、上述した「1.第1態様のカラーフィルタ」の項で説明したように、上記関係式(1)に示される波長分散性を有する液晶が用いられたマルチギャップ構造の液晶表示装置においては、カラーフィルタのRthを上記関係式(2)に示されるような関係となるように調整することで、上記マルチギャップ構造の液晶表示装置が斜め方向から観察された場合の黒表示の色つきを防止することが可能となることを見出した。
本発明者らは、さらに、鋭意研究を重ねることにより、上記関係式(3)に示される波長分散性を有する液晶が用いられたマルチギャップ構造の液晶表示装置においては、上記関係式(4)から上記関係式(8)までの関係を満たすようなカラーフィルタを用いることにより、上記斜め方向の黒表示の色つきをより好適に防止することが可能となることを見出し、本態様のカラーフィルタを完成させるに至ったのである。
以下、各関係式について説明する。
【0066】
上記関係式(4)は、青色着色層の膜厚BFTと緑色着色層の膜厚GFTとの関係を示すものである。上記関係式(4)に示すように、本態様のカラーフィルタは、上記青色着色層上の液晶層が、他の色の液晶層の着色層よりも薄いマルチギャップ構造を有する液晶表示装置に用いられるものであることから、青色着色層の膜厚BFTは、緑色着色層の膜厚GFTよりも大きくなる。
【0067】
一方、上記関係式(5)は、青色着色層以外の着色層の膜厚の関係について示すものである。本態様においては、緑色着色層の膜厚GFTと赤色着色層RFTの膜厚とは、同等の膜厚、もしくは、緑色着色層の膜厚GFTの膜厚の方が赤色着色層の膜厚RFTよりも小さくなるものである。なお、本態様においては、緑色着色層の膜厚GFTおよび赤色着色層の膜厚RFTが同等の膜厚を有する場合は、±0.1μmの値を誤差として含むものである。
【0068】
なお、本態様においては、青色着色層の膜厚BFTと赤色着色層の膜厚RFTとの関係としては、本態様のカラーフィルタを用いて液晶表示装置とした際に、良好な画像表示を行うことが可能であれば特に限定されるものではないが、通常は、青色着色層の膜厚BFTの方が、赤色着色層の膜厚RFTよりも大きくなるように形成される。
【0069】
上記関係式(6)および関係式(7)は、各色の着色層のRthの関係を示すものである。
上記関係式(3)に示される波長分散性を示す液晶を用いたマルチギャップ構造の液晶表示装置においては、通常、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置の各色の着色層のRth関係は、|B(未)Rth|<|G(未)Rth|≧|R(未)Rth|を示す。なお、この理由については、「1.第1態様のカラーフィルタ」の項で説明した理由と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
一般的に、液晶表示装置においては、各色の着色層に対応する波長領域での液晶表示装置のRthがそれぞれ所定の値で一致している場合は、斜め方向での黒表示の色付きは発生しないものである。本態様のカラーフィルタにおいては、関係式(6)および関係式(7)を満たすように各色の着色層のRthを調整することにより、カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthと、各色の着色層のRthとの和を一致させることが可能となることから、上記斜め方向での黒表示の色つきを防止することが可能となる。
【0070】
上記関係式(8)は、マルチギャップ構造の液晶表示装置における、青色着色層上の液晶層の膜厚と、青色着色層のRthの関係とを示したものである。
上記関係式(8)において、Tは、透明基板の着色層側表面から柱状スペーサの頂部までの距離と緑色着色層の膜厚との差を示す値であり、図6に示すように、柱状スペーサ4が遮光部3上に形成されている場合は、柱状スペーサ4の高さおよび遮光部3の膜厚の和から緑色着色層2Gの膜厚を引いた値である。上記関係式(8)において、Tは緑色着色層上に形成された液晶層の膜厚として考えることができる。
上記関係式(8)の右辺は、青色着色層上に形成される液晶層の膜厚(T−(GFT−BFT))および緑色着色層上に形成される液晶層の膜厚(T)の比率(以下、液晶層の膜厚の比率と称して説明する場合がある。)を指すものであり、上記関係式(8)の左辺は、青色着色層のRthの絶対値と緑色着色層のRthの絶対値との比率(以下、着色層のRthの絶対値の比率と称して説明する場合がある。)を指すものである。
【0071】
ここで、液晶層に用いられる液晶が波長分散性を有しない場合は、上記液晶層のRthは、液晶層の膜厚にのみ依存するものとなる。上記液晶層の膜厚の比率と上記液晶層の各色の着色層に対応する波長領域でのRthの絶対値の比率は同等となり、上記液晶層を有するカラーフィルタ未装着液晶表示装置の各色の着色層に対応する波長領域でのRthの絶対値の比率も同等となるものと考えることができる。よって、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthを一致させるために用いられるカラーフィルタの着色層のRthの絶対値の比率も、上記液晶層の膜厚の比率と同等となるものと考えることができる。
【0072】
一方、本態様のカラーフィルタが用いられる液晶表示装置は、上記関係式(3)に示される波長分散性を有する液晶が用いられることから、上記液晶層のRthは上記液晶の波長分散性と液晶層の膜厚に依存するものであり、液晶層の膜厚の比率よりも、青色着色層のRthの絶対値と緑色着色層のRthの絶対値との比率は大きな値となる。よって、上記カラーフィルタ未装着液晶表示装置のRthを一致させるために用いられるカラーフィルタの着色層のRthの絶対値の比率も、上記液晶層の膜厚の比率より大きな値となるものと考えることができる。
【0073】
本態様によれば、上記関係式(4)から上記関係式(8)を満たすように上記各色の着色層の膜厚およびRthを調整することにより、上記カラーフィルタを、上記関係式(3)に示される波長分散性を有する液晶を有するマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた際に、斜め方向での黒表示の色つきをより好適に防止することが可能となる。
【0074】
また、本態様においては、上記柱状スペーサを必須の構成とすることにより、実際に液晶表示装置に用いられた際の各色の着色層上の液晶層の膜厚を考慮して、各色の着色層のRthを調整することが可能となる。よって、マルチギャップ構造の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタを製造する際に、上記関係式(4)から関係式(8)を用いることにより、実際に液晶表示装置に用いられた際に、斜め方向の黒表示の色つきを生じさせないようなカラーフィルタを予め設計することが可能となる。
【0075】
本態様のカラーフィルタに用いられる着色層および着色層のRthの調整方法、透明基板、必要に応じて形成される遮光部等については、「1.第1態様のカラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。以下、本態様に用いられる柱状スペーサについて説明する。
【0076】
(1)柱状スペーサ
本態様に用いられる柱状スペーサは、上記透明基板上に形成されるものである。上記柱状スペーサの形成位置としては、本態様のカラーフィルタを液晶表示装置に用いた際に、良好な画像表示を妨げることのない位置であれば特に限定されるものではない。本態様のカラーフィルタが、遮光部を有する場合は、上記遮光部上に形成することが好ましい。
【0077】
上記柱状スペーサとしては、上記透明基板上に所定の高さで形成されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な液晶表示装置に用いられる樹脂材料からなるものであってもよいし、上記各色の着色層を積層させて形成されたものであってもよい。
【0078】
また、上記柱状スペーサの高さ、形状等については、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0079】
(2)その他の部材
本態様のカラーフィルタは、上記着色層、透明基板、柱状スペーサを有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な部材を適宜追加して形成することができる。このような部材については、例えば遮光部、オーバーコート層を挙げることができる。なお、上記オーバーコート層については、後述する「3.第3態様のカラーフィルタ」の項で説明するものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
(3)その他
本態様のカラーフィルタは、上記関係式(3)に示される波長分散性を示す液晶を用いた液晶表示装置に用いられるものである。このような液晶表示装置としては、通常、カラーフィルタの他に、対向基板、および液晶層を有するものである。上記対向基板については、「1.第1態様のカラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
また、上記液晶層に用いられる液晶としては、上記関係式(3)に示される波長分散性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記液晶のRthが正の値であってもよいし、負の値であってもよい。このような液晶については、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
上記の点以外については、本態様のカラーフィルタが用いられる液晶表示装置については、「1.第1態様のカラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0083】
3.第3態様のカラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタの第3態様について説明する。
本態様のカラーフィルタは、透明基板、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層、上記透明基板上に形成された柱状スペーサ、および、上記透明基板上に形成されたオーバーコート層を有し、液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(9)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、各色の上記着色層の膜厚およびRthが下記関係式(10)から下記関係式(14)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするものである。
|B(液)Rth|>|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(9)
B’FT>G’FT…関係式(10)
G’FT±0.1μm≦R’FT±0.1μm…関係式(11)
R’Rth−G’Rth≧0…関係式(12)
B’Rth−G’Rth≧0…関係式(13)
{U−(B’FT−G’FT)}/U<B’Rth/|G’ Rth|…関係式(14)
(式中、|R(液)Rth|は上記赤色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|G(液)Rth|は上記緑色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、|B(液)Rth|は上記青色着色層に対応する波長領域における上記液晶のRthの絶対値、R’FTは上記赤色着色層および上記オーバーコート層の積層部分の膜厚、G’FTは上記緑色着色層および上記オーバーコート層の積層部分の膜厚、B’FTは上記青色着色層および上記オーバーコート層の積層部分の膜厚、Uは上記透明基板の上記着色層側表面から上記柱状スペーサおよび上記オーバーコート層の積層部分の頂部までの距離と上記G’RTとの差、|R’Rth|は上記赤色着色層および上記オーバーコート層の積層部分のRthの絶対値、|G’Rth|は上記緑色着色層および上記オーバーコート層の積層部分のRthの絶対値、|B’Rth|は上記青色着色層および上記オーバーコート層の積層部分のRthの絶対値である。)
【0084】
ここで、上記関係式(9)において、上記液晶のRth、B(液)Rth、G(液)Rth、およびR(液)Rthは全て正の値、または全て負の値のいずれかであるものとする。
また、上記関係式(10)から関係式(14)において、上記各色の着色層のRth、BRth、GRth、およびRRthは全て正の値、または全て負の値のいずれかであるものとする。
また、上記液晶のRthと上記各色の着色層のRthとは同符号であるものとする。
【0085】
本態様のカラーフィルタについて、図を用いて説明する。図7に示すように、本態様のカラーフィルタ10は、透明基板1、上記透明基板1上に形成された赤色着色層2R、緑色着色層2Gおよび青色着色層2B、各着色層2R、2B、2G間に形成された遮光部3、遮光部3上に形成された柱状スペーサ4、および、各色の着色層2R、2G、2Bおよび柱状スペーサ4を覆うように形成されたオーバーコート層5を有し、青色着色層2Bの膜厚が緑色着色層2Gの膜厚よりも大きく形成されているものであり、緑色着色層2Gの膜厚と赤色着色層2Rとが同等の膜厚で形成されているものである。なお、図示はしないが、本態様において、柱状スペーサは各色の着色層を覆うように形成されたオーバーコート層上に形成されていてもよい。
【0086】
以下、各関係式について説明する。
【0087】
ここで、本態様のカラーフィルタと、上述した「2.第2態様のカラーフィルタ」との違いは、上記オーバーコート層の有無である。本態様においては、上記オーバーコート層は、通常、各色の着色層上に同等の厚みで形成されるものである。したがって、上記オーバーコート層の厚み、およびオーバーコート層のRthは、各色の着色層の厚み、および各色の着色層のRthに同等に影響するものであると考えられる。
よって、上記関係式(10)から関係式(13)までに示される、各色の着色層およびオーバーコート層の積層体の膜厚の関係と、各色の着色層およびオーバーコート層の積層体のRthの関係とは、上述した「2.第2態様のカラーフィルタ」の項で説明した上記関係式(4)から関係式(7)と同様に考えることが可能となる。
【0088】
また、関係式(14)において、Uは、図7に示すように、透明基板1の着色層2R、2G、2B側表面から柱状スペーサ4上に形成されたオーバーコート層5表面までの距離と緑色着色層2Gの膜厚との差を示すものである。
関係式(14)において、Uは緑色着色層およびオーバーコート層の積層体上に形成された液晶層の膜厚として考えることができる。
上述したように、本態様においては、上記オーバーコート層の膜厚およびオーバーコート層のRthは、各色の着色層の膜厚や上記各色の着色層のRthに対して同等の影響を与えるものであることから、関係式(14)についても、上記の点以外は「2.第2態様のカラーフィルタ」の関係式(8)と同様に考えることが可能であることから、ここでの説明は省略する。
【0089】
本態様によれば、上記オーバーコート層が形成されている場合であっても、上記関係式(10)から上記関係式(14)を満たすことにより、上記カラーフィルタを、上記関係式(9)に示される波長分散性を有する液晶を有するマルチギャップ構造の液晶表示装置に用いた際に、斜め方向での黒表示の色つきをより好適に防止することが可能となる。
【0090】
本態様に用いられる着色層、透明基板、柱状スペーサ、および必要に応じて形成される遮光部等については、上述した「2.第2態様のカラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
以下、本態様に用いられるオーバーコート層について説明する。
【0091】
(1)オーバーコート層
本態様に用いられるオーバーコート層は、透明基板上に形成されるものである。また、各色の着色層の表面をそれぞれ平坦化するために設けられるものである。
【0092】
上記オーバーコート層に用いられる材料としては、可視光に対して透明なものであれば特に限定されるものではないが、中でも、Rthを有さない材料であることが好ましい。このような材料としては、一般的なオーバーコート層に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0093】
上記オーバーコート層の形成方法としては、各色の着色層上に同等の膜厚でオーバーコート層を形成することができる方法であれば特に限定されない。例えば、上記着色層が形成されたカラーフィルタ全面にオーバーコート層形成用塗工液を塗布し、階調マスク等を用いて露光し、現像する方法を用いることができる。
【0094】
(2)その他
本態様のカラーフィルタが用いられる液晶表示装置については、上述した「2.第2態様のカラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0096】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0097】
[実施例1]
(共重合樹脂溶液の調製)
重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63質量部、アクリル酸(AA)を12質量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7質量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、更に100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、更にメタクリル酸グリシジル(GMA)を7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部、及びハイドロキノンを0.2質量部添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
【0098】
(硬化性樹脂組成物の調製)
次に下記材料を室温で攪拌、混合して硬化性樹脂組成物を得た。
<硬化性樹脂組成物の組成>
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%) 16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399)24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70) 4質量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン
4質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル 52質量部
【0099】
(遮光部の作製)
まず、下記分量の成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調整した。
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料 23質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株) Disperbyk111) 2質量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル) 75質量部
【0100】
次に、下記分量の成分を十分混合して、遮光部用組成物を得た。
<遮光部用組成物の組成>
・上記黒色顔料分散液 61質量部
・上記硬化性樹脂組成物 20質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル 30質量部
【0101】
透明基板として厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株) AN材)上に上記遮光部用組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、遮光部形成用層を形成した。当該遮光部形成用層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05wt%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより加熱処理を施して厚み1μmの遮光部を形成した。
【0102】
(着色層の作製)
上記のようにして遮光部を形成した透明基板上に、下記組成の赤色着色層形成用塗工液をスピンコーティング法により塗布し、その後、70℃のオーブン中で3分間乾燥して赤色着色層形成用層を得た。次いで、赤色着色層形成用層から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて赤色着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、赤色着色層形成用層の未硬化部分のみを除去した。その後、上記透明基板を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより、加熱処理を施して厚み2μmの赤色着色層を形成した。
次に、下記組成の緑色着色層形成用塗工液を用いて、赤色着色層と同様の工程で、厚み2μmの緑色着色層を形成した。
さらに、下記組成の青色着色層形成用塗工液を用いて、赤色着色層と同様の工程で、厚み2.2μmの青色着色層を形成した。
【0103】
<赤色着色層形成用塗工液の組成>
・C.I.ピグメントレッド177(Chromofine Red 6605、大日精化工業社製)
6.4質量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤 3質量部
・上記硬化性樹脂組成物 5質量部
・酢酸−3−メトキシブチル 85.6質量部
【0104】
<緑色着色層形成用塗工液の組成>
・C.I.ピグメントグリーン36(Heliogen Green D9360、BASF社製) 10質量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤 3質量部
・上記硬化性樹脂組成物 5質量部
・酢酸−3−メトキシブチル 82質量部
【0105】
<青色着色層形成用塗工液の組成>
・C.I.ピグメントブルー15:6(Fastogen Blue EP-7、DIC社製) 15質量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤 3質量部
・上記硬化性樹脂組成物 5質量部
・酢酸−3−メトキシブチル 77質量部
【0106】
(オーバーコート層の作製)
次に、上記赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を形成したガラス基板上に、上記硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布してオーバーコート層形成用層を形成し、オーバーコート層形成用層から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いてオーバーコート層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後ガラス基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して厚み2.0μmのオーバーコート層を形成した。
【0107】
(柱状スペーサの作製)
上記のようにして着色層及びオーバーコート層を形成したガラス基板上に、上記の硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し柱状スペーサ形成用層を形成した。柱状スペーサ形成用層から100μmの距離にフォトマスクを配置して、プロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて柱状スペーサの形成領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後ガラス基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して、上端部面積が100μmで高さが3.8μmの柱状スペーサを得た。
これにより、カラーフィルタを得た。
尚、その際の各着色層単体のRthは、赤色着色層が14nm、緑色着色層のRthが4nm、青色着色層のRth値が4nmとなった。
【0108】
(評価用液晶セルの作製)
次に、上記カラーフィルタの着色層側表面にポリイミドからなる配向膜を形成した。
また、ポリイミド膜が形成されたガラス基板を準備し、上記ガラス基板の配向膜上に液晶を必要量滴下し、上記カラーフィルタの配向膜と、上記ガラス基板の配向膜が対向するように配置して、UV硬化性樹脂をシール材として用いて、常温で0.3kgf/cmの圧力をかけながら400mJ/cmの照射量で露光することにより接合して、セル組みし、評価用の液晶セルを得た。なお、用いた液晶は、上述した関係式(1)を示すものである。
【0109】
[実施例2]
下記の点以外は、実施例1と同様にして評価用液晶セルを作製した。
緑色着色層形成用塗工液の顔料濃度を5.7重量部、青色着色層形成用塗工液の顔料濃度を5.0重量部とし、緑色着色層のRthを7nm、青色着色層のRth値を12nmとしたこと以外は上記実施例1と同等としてカラーフィルタを作製した。尚、各色の着色層の膜厚は実施例1と同等である。
【0110】
[実施例3]
下記の点以外は、実施例1と同様にして評価用液晶セルを作製した。
赤色着色層形成用塗工液の顔料濃度を15重量部、青色着色層形成用塗工液の顔料濃度を5.0重量部とし、赤色着色層のRthを6nm、青色着色層のRth値を12nmとしたこと以外は上記実施例1と同等としてカラーフィルタを作製した。尚、各色の着色層の膜厚は実施例1と同等である。
【0111】
[実施例4]
下記の点以外は、実施例1と同様にして評価用液晶セルを作製した。
赤色着色層形成用塗工液の顔料濃度を15重量部とし、赤色着色層のRthを6nmとしたこと以外は上記実施例1と同等としてカラーフィルタを作製した。尚、各色の着色層の膜厚は実施例1と同等である。
【0112】
[比較例1]
下記の点以外は、実施例1と同様にして評価用液晶セルを作製した。
緑色着色層形成用塗工液の顔料濃度を5.0重量部とし、緑色着色層のRthを8nmとしたこと以外は上記実施例1と同等としてカラーフィルタを作製した。尚、各色の着色層の膜厚は実施例1と同等である。
【0113】
[比較例2]
下記の点以外は、実施例1と同様にして評価用液晶セルを作製した。
赤色着色層形成用塗工液の顔料濃度を15重量部、緑色着色層形成用塗工液の顔料濃度を5.0重量部、青色着色層形成用塗工液の顔料濃度を15重量部とし、赤色着色層のRthを6nm、緑色着色層のRthを8nm、青色着色層のRth値を4nmとしたこと以外は上記実施例1と同等としてカラーフィルタを作製した。尚、各色の着色層の膜厚は実施例1と同等である。
【0114】
[評価]
(カラーフィルタのRth)
実施例1〜4、および比較例1〜2のカラーフィルタのRthを測定した。なお、Rthの測定は、位相差測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて行った。結果を表1に示す。
【0115】
(コントラスト評価)
光源として東芝メロウ5D FL10EX-D-Hを使用し、2枚の偏光板の間に作製した液晶パネルを2枚の偏光板に水平に設置し、偏光板を互いにクロスニコルになるように配置した場合の輝度と、パラレルに配置した場合の輝度を輝度計(ミノルタ輝度計LS-100)を使用して測定した。得られた輝度から下記の式に従ってコントラストを得た。
C/R=パラニコル輝度/クロスニコル輝度
【0116】
結果を表1に示す。尚、斜めC/R及び斜め色つきを評価するにあたり、光源と基板との角度を45°の角度に保ち、斜めパラニコル輝度と斜めクロスニコル輝度を求めて、上記の式によって斜めC/Rを求めた。正面C/Rの値と比較し、コントラストの低下が少ないものを○、著しく悪化したものを×とした。
また、斜め色つきについても同様な方法によって求められ、正面輝度測定の際に得られた色度から、色相のズレの少ないものは○、著しく悪化したものは×として評価を実施した。
【0117】
【表1】

【符号の説明】
【0118】
1 … 透明基板
2 … 着色層
2R … 赤色着色層
2G … 緑色着色層
2B … 青色着色層
3 … 遮光部
4 … 柱状スペーサ
5 … オーバーコート層
10 … カラーフィルタ
20 … 対向基板
30 … 液晶層
100 … 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、および、前記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層を有し、前記青色着色層の膜厚が他の色の着色層の膜厚よりも大きく形成されており、
液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(1)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、
各色の前記着色層の厚み方向のレターデーションが下記関係式(2)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタ。
|B(液)Rth|≧|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(1)
|BRth|≧|GRth|≦|RRth|…関係式(2)
(式中、|R(液)Rth|は前記赤色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|G(液)Rth|は前記緑色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|B(液)Rth|は前記青色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|RRth|は前記赤色着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値、|GRth|は前記緑色着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値、|BRth|は前記青色着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値である。)
【請求項2】
透明基板、前記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層、および、前記透明基板上に形成された柱状スペーサを有し、
液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(3)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、
各色の前記着色層の膜厚および厚み方向のレターデーションが下記関係式(4)から下記関係式(8)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタ。
|B(液)Rth|>|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(3)
FT>GFT…関係式(4)
FT±0.1μm≦RFT±0.1μm…関係式(5)
|RRth|−|GRth|≧0…関係式(6)
|BRth|−|GRth|≧0…関係式(7)
{T−(BFT−GFT)}/T<|BRth|/|GRth|…関係式(8)
(式中、|R(液)Rth|は前記赤色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|G(液)Rth|は前記緑色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|B(液)Rth|は前記青色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、RFTは前記赤色着色層の膜厚、GFTは前記緑色着色層の膜厚、BFTは前記青色着色層の膜厚、Tは前記透明基板の前記着色層側表面から前記柱状スペーサの頂部までの距離と前記GFTとの差、|RRth|は前記赤色着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値、|GRth|は前記緑色着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値、|BRth|は前記青色着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値である。)
【請求項3】
透明基板、前記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層および青色着色層、前記透明基板上に形成された柱状スペーサ、および、前記透明基板上に形成されたオーバーコート層を有し、
液晶層の液晶の波長分散性が下記関係式(9)で示される関係を示す液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、
各色の前記着色層の膜厚および厚み方向のレターデーションが下記関係式(10)から下記関係式(14)で示される関係を満たすように調整されていることを特徴とするカラーフィルタ。
|B(液)Rth|>|G(液)Rth|≧|R(液)Rth|…関係式(9)
B’FT>G’FT…関係式(10)
G’FT±0.1μm≦R’FT±0.1μm…関係式(11)
R’Rth−G’Rth≧0…関係式(12)
B’Rth−G’Rth≧0…関係式(13)
{U−(B’FT−G’FT)}/U<|B’Rth|/|G’ Rth|…関係式(14)
(式中、|R(液)Rth|は前記赤色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|G(液)Rth|は前記緑色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、|B(液)Rth|は前記青色着色層に対応する波長領域における前記液晶の厚み方向のレターデーションの絶対値、R’FTは前記赤色着色層および前記オーバーコート層の積層部分の膜厚、G’FTは前記緑色着色層および前記オーバーコート層の積層部分の膜厚、B’FTは前記青色着色層および前記オーバーコート層の積層部分の膜厚、Uは前記透明基板の前記着色層側表面から前記柱状スペーサおよび前記オーバーコート層の積層部分の頂部までの距離と前記G’RTとの差、|R’Rth|は前記赤色着色層および前記オーバーコート層の積層部分の厚み方向のレターデーションの絶対値、|G’Rth|は前記緑色着色層および前記オーバーコート層の積層部分の厚み方向のレターデーションの絶対値、|B’Rth|は前記青色着色層および前記オーバーコート層の積層部分の厚み方向のレターデーションの絶対値である。)
【請求項4】
前記各色の着色層の厚み方向のレターデーションの絶対値の和が30nm以下となることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−78662(P2012−78662A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225127(P2010−225127)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】