説明

カラー鋼板及びその製造方法

【目的】 ポリ塩化ビニルを使用せず、かつ光沢に優れ、商品価値の高いカラー鋼板及びその製造方法を提供する。
【構成】 鋼板2の一面に塗膜層5を形成すると共に、該塗膜層5上にエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層6を形成し、更にその上に合成樹脂クリヤー層7を形成してなるカラー鋼板、及び、予めエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層6と合成樹脂クリヤー層7とを一体に積層し、これを鋼板の塗膜層5上に積層することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子レンジ、冷蔵庫等の家庭用電化製品、ボックス等の家具、天井材、壁材等の建材などとして利用されるカラー鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子レンジ、冷蔵庫等の家庭用電化製品、ボックス等の家具、天井材、壁材等の建材などに使用されるカラー鋼板としては、一般に図2に示すものが知られている。この図2におけるカラー鋼板aは、鋼板bの一面側にカラー着色を施したポリ塩化ビニルフィルムcを接着剤dを介して接着し、必要に応じてポリ塩化ビニルフィルムc上に印刷を行って印刷層eを形成し、これらポリ塩化ビニルフィルムcと印刷層eとで構成されたカラー層fの上にクリヤー層としてポリエステルフィルムgを積層し、このポリエステルフィルムg上にハードコート層hを形成したものである。このように鋼板にカラー層を形成するに際し、鋼板上に直接印刷層を形成しないで着色ポリ塩化ビニルフィルムを使用するのは、ポリエステルフィルムが印刷層と接着性が悪く、そのため直接印刷層上に積層することが困難なためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記カラー鋼板は、ポリ塩化ビニルを使用しているため、鋼板を再利用する際、加熱により有害ガスが発生する。そのため、環境面からポリ塩化ビニルの使用はできるかぎり避けなければならない。また、外観的にも光沢が不足しており、商品価値の面でも問題があった。
【0004】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリ塩化ビニルを使用せず、かつ光沢に優れ、商品価値の高いカラー鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、鋼板の一面に塗膜層を形成すると共に、該塗膜層上にエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層を形成し、更にその上にポリエステル樹脂クリヤー層を形成してなるカラー鋼板を提供する。
【0006】また、本発明は、予めエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層と合成樹脂クリヤー層とを積層し、これを鋼板の塗膜層上に積層することを特徴とする上記カラー鋼板の製造方法を提供する。
【0007】
【作用】本発明のカラー鋼板は、エチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層が接着性能に優れるため、この混合樹脂クリヤー層と接着困難な合成樹脂クリヤー層とを接着性良く積層できると共に、混合樹脂クリヤー層が塗膜層に良好に接着する。また、合成樹脂クリヤー層に混合樹脂クリヤー層が加わって良好なクリヤー層となり、光沢に優れ、商品価値が高い。更に、カラー層として鋼板に塗膜層を形成し、着色したポリ塩化ビニルフィルムを使用しないので、ポリ塩化ビニルによる環境問題が生じない。
【0008】また、本発明のカラー鋼板の製造方法によれば、上記混合樹脂クリヤー層が接着性能に優れるので、予め混合樹脂クリヤー層と合成樹脂クリヤー層とを工場などで一体に積層することができ、これまで困難であった合成樹脂クリヤー層の積層が容易、かつ確実に行える。
【0009】
【実施例】以下、図1を参照しながら本発明について更に詳しく説明する。図1は本発明のカラー鋼板の一実施例を示すもので、このカラー鋼板1は、鋼板2の一面に塗装によりベタ塗膜層3を形成し、更にこのベタ塗膜層3上に部分的に印刷して部分塗膜層4を形成し、これらのベタ塗膜層3と部分塗膜層4とで構成されたカラー層としての塗膜層5上にエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂との混合樹脂クリヤー層6を形成すると共に、この混合樹脂クリヤー層6上に合成樹脂クリヤー層7を形成し、更に、この合成樹脂クリヤー層7上にハードコート層8を形成したものである。
【0010】この場合、鋼板2は一般のカラー鋼板に使用されているものを使用でき、例えば亜鉛めっき鉄板に化成皮膜を形成したものが好適であり、必要によりプライマー処理などを行っても良い。
【0011】また、ベタ塗膜層3の形成は、一般的な塗装方法で良く、例えばスプレー法、粉末塗装、ロールコート法などを採用することができ、塗料の種類も一般的で良く、例えばエポキシ系、ウレタン系、アルキド系、アクリル系などのいずれでも良い。なお、塩素を含んだ塗料は避けるべきである。この塗膜層3の厚さは、一般に5〜30μmの範囲が好適である。
【0012】ベタ塗膜層3の上に形成される部分塗膜層4は、通常の凸版印刷、平板印刷、グラビヤ印刷などにより印刷することができる。
【0013】また、混合樹脂クリヤー層6は、エチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂(以下、EMMA樹脂という)とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂(以下、三元共重合樹脂と省略する)とを主成分とする混合樹脂からなる。この場合、EMMA樹脂は、市販されている一般的なものを使用でき、三元共重合樹脂としては、例えば商品名ボンダイン(住友化学工業製)を挙げることができる。これらの混合割合は、重量比でEMMA樹脂:三元共重合樹脂=9:1〜1:5の範囲、好ましくは7:3〜1:1の範囲が好適であり、これにより接着性に優れると共に、透明性に優れる樹脂とすることができる。この混合樹脂クリヤー層6を塗膜層5上に形成する場合、一般的な熱プレスなどの方法で形成することができ、その厚さは20〜80μmの範囲が一般的である。
【0014】合成樹脂クリヤー層7は、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、フッ素系フィルム、ポリイミドフィルムなど従来使用されているもののいずれも使用可能であり、その厚さは10〜100μmの範囲が一般的である。
【0015】この合成樹脂クリヤー層7を混合樹脂クリヤー層6上に形成する場合、塗膜層5上に混合樹脂クリヤー層5を形成し、次いで熱プレスなどで合成樹脂クリヤー層7を積層しても良いが、予め合成樹脂クリヤー層7となる合成樹脂フィルムに混合樹脂クリヤー層5となる混合樹脂を押出ラミネート加工して、混合樹脂クリヤー層5と合成樹脂クリヤー層7とを一体に積層したラミネートフィルムを形成しておくことが良い。この場合は、このラミネートフィルムを塗膜層5上に熱プレスやヒートラミネート法などにより、ヒートロールの間を通して加工したり、あるいは鋼板2を予熱しておき、これにラミネートフィルムを乗せ、次いで冷却ロールの間を通してプレスする方法を採用することができる。
【0016】更に、合成樹脂クリヤー層7上に形成するハードコート層8も一般的に使用されているものがそのまま使用可能であり、例えばシリコン系、アクリル系などを例示することができ、その厚さは1〜5μmの範囲が一般的である。
【0017】本発明のカラー鋼板の製造に当っては、上述した製造方法により製造することができるが、カラー層5に混合樹脂クリヤー層6を形成する前、混合樹脂クリヤー層6に合成樹脂クリヤー層7を形成する前、あるいは合成樹脂クリヤー層7にハードコート層8を形成する前に、接着性を高めるため、これらの面をコロナ処理などの表面処理を施すことが好ましい。
【0018】なお、本発明のカラー鋼板は、その裏面に一般的なポリエステル樹脂系塗料などによる裏面コートを形成することができ、そのほか部分塗膜層4は必要により形成しなくても良く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得る。
【0019】
【発明の効果】本発明のカラー鋼板は、ポリ塩化ビニル系のカラー層を使用していないので、鋼板の再生時に環境の問題が生じ難く、しかも混合樹脂クリヤー層と合成樹脂クリヤー層の2層でクリヤー層を構成するので、光沢があり、商品価値が高い。
【0020】また、本発明のカラー鋼板の製造方法によれば、従来積層が困難であった合成樹脂クリヤー層を確実に積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラー鋼板の一実施例を示す部分断面図である。
【図2】従来のカラー鋼板を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 カラー鋼板
2 鋼板
3 ベタ塗膜層
4 部分塗膜層
5 塗膜層
6 混合樹脂クリヤー層
7 合成樹脂クリヤー層
8 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼板の一面に塗膜層を形成すると共に、該塗膜層上にエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層を形成し、更にその上に合成樹脂クリヤー層を形成してなるカラー鋼板。
【請求項2】 予めエチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸の三元共重合樹脂とを主成分とする混合樹脂クリヤー層と合成樹脂クリヤー層とを一体に積層し、これを鋼板の塗膜層上に積層することを特徴とする請求項1記載のカラー鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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