説明

カルシウム含有無果汁炭酸飲料

【課題】カルシウム含有する炭酸飲料、特に果汁やアミノ酸及びその誘導体を配合しないカルシウム含有無果汁炭酸飲料において、カルシウム由来の金属味を低減することができる、新たなカルシウム含有無果汁炭酸飲料を提供する。
【解決手段】カルシウムを5以上100mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料であって、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムを含有し、果汁を配合せずに甘みを有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料、詳しくは、カルシウムに由来する金属味を低減してなるカルシウム含有無果汁炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、骨や歯などをつくっている栄養素で、体重の1〜2%を占めており、体内のカルシウムの99%が骨と歯に、残りの1%が血液などの体液や筋肉などの組織に存在する。
カルシウムの摂取は、骨粗鬆症の改善や予防に重要であるばかりか、厚生労働省の国民栄養調査の結果によれば、カルシウム摂取量が栄養所要量を下回っていることが指摘されていることからも分かるように、誰もが日常的にカルシウムの摂取を心掛ける必要がある。
【0003】
運動時や夏場の発汗が盛んな時期には、発汗などに伴うミネラルの体外への排出から、水分補給だけでなく、ミネラル補給が必要とされている。このようなミネラルを補給することができる止渇飲料として、カルシウムなどのミネラルが配合されたスポーツ飲料やミネラルウォーターが上市されている。また、強い爽快感も得ることができるように、これらに炭酸ガスを含有させた炭酸飲料も数多く上市されている。
【0004】
このようなカルシウム補給型の飲料においては、カルシウム由来の不快な味の改善が課題となっていた。具体的には、カルシウムが多いと苦味や塩味が強くなり、嗜好性に必ずしも良好な影響を与えないという課題が指摘されていた。
そこで従来から、カルシウム含有飲料に関して、カルシウムなどのミネラル由来の苦味や塩味を抑制するために、トレハロース(特許文献1)や、ナリンギン(特許文献2)、糖リン酸エステル(特許文献3)、高甘味度甘味料(特許文献4)などを使用する方法が提案されている。
【0005】
また、カルシウムは独特の金属味を有することが知られており、その解決手段として、果汁などの植物エキスの添加や、植物由来成分組成物を微生物発酵させた調味液、或いは、調味効果のあるアミノ酸やその誘導体、或いは糖質などにより、金属味を軽減することが試みられている。特に、テアニン(特許文献5)やトレハロース(特許文献6)が、カルシウム由来の金属味を改善できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−089547号公報
【特許文献2】特開2009−279013号公報
【特許文献3】特開2003−79337号公報
【特許文献4】特表2009−517023号公報
【特許文献5】特開2001−89364号公報
【特許文献6】特開2000−300213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炭酸飲料中では、カルシウムの金属味が不必要に増強されてしまうため、カルシウムに由来する金属味を低減する必要があった。また、果汁を添加しない無果汁系炭酸飲料や、アミノ酸やその誘導体を添加しないアミノ酸無添加炭酸飲料などでは、金属味をマスキングすることができないために、カルシウムに由来する金属味を低減する方法が特に必要とされていた。
【0008】
そこで本発明は、カルシウム含有する炭酸飲料、特に果汁やアミノ酸及びその誘導体を配合しないカルシウム含有無果汁炭酸飲料において、カルシウム由来の金属味を低減することができる、新たなカルシウム含有無果汁炭酸飲料を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料であって、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料を提案する。
【0010】
前述のように、カルシウムの金属味は炭酸飲料中では不必要に増強されてしまう。また、果汁を添加しない無果汁系炭酸飲料や、アミノ酸やその誘導体を添加しないアミノ酸無添加炭酸飲料などでは、金属味をマスキングすることもできない。ところが驚いたことに、本発明者らは、この種のカルシウム含有炭酸飲料において、同じミネラル成分であるカリウムをカルシウムと併用して一定の濃度範囲で配合することにより、カリウム由来の苦味を抑えつつ、カルシウム由来の金属味を低減することができ、炭酸飲料の嗜好性を高めることができることを見出したのである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<本炭酸飲料>
本発明の実施形態の一例としてのカルシウム含有無果汁炭酸飲料(「本炭酸飲料」と称する)は、カルシウムとカリウムとを必須成分として含有する炭酸飲料であり、甘味は有するが、果汁を含有しないことを特徴とする炭酸飲料である。
【0013】
(炭酸ガス)
炭酸ガスは、二酸化炭素のみからなるガスであっても、二酸化炭素と他のガス、例えば酸素、水素、窒素等との2種類以上の混合ガスであってもよい。
【0014】
本炭酸飲料中の炭酸ガスの量は、適宜調整可能であるが、飲料中に溶解している二酸化炭素量として、0.2〜0.9質量%であるのが好ましい。0.9質量%以上であれば炭酸気泡による刺激が強くなりすぎ、且つ容器詰め飲料では、開栓時に泡立ちとともに吹きこぼれやすくなり、0.2質量%以下であれば炭酸飲料独特の気泡からくる刺激感を感じにくくなり、炭酸飲料としての価値が乏しい。よって、かかる観点から、0.2〜0.9質量%、特に0.3〜0.8質量%、中でも特に0.4〜0.7質量%であるのがさらに好ましい。
【0015】
(カルシウム)
本炭酸飲料において、カルシウム供給源、すなわちカルシウム原料は、炭酸飲料に配合する上で溶解性が優れた塩として提供されるものがよく、特に炭酸飲料としての爽快感と刺激感が損なわれないものが好ましい。
かかる観点から、カルシウム供給源としては、無機塩、カルシウムを含有する天然水、或いは有機酸カルシウム塩などの製剤が使用可能である。
無機カルシウム塩としては、例えば塩化カルシウムやリン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウムや硫酸カルシウムなどが挙げられる。
カルシウムを含有する天然水としては、例えばミネラルウォーターなどに用いる地下水などを挙げることができる。天然水のカルシウム濃度を限定するものではなく、最終製品の炭酸飲料製造時において、カルシウムが所定の濃度になるよう、使用量を調整して用いればよい。
有機酸カルシウム塩としては、一般的に食品に用いることが認められているものでよく、特に限定するものではないが、例えばクエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、乳酸カルシウムなどを挙げることができる。
これらは、単独で配合してもよいし、2種類以上を組み合わせて配合してもよい。
【0016】
(カリウム)
本炭酸飲料において、カリウム供給源、すなわちカリウム原料としては、カリウム塩や、カリウムが予め溶存している液体などを挙げることができる。
カリウム塩としては、例えば塩化カリウムや、炭酸カリウム、アセスルファムカリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三水素カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムなどを挙げることができる。
カリウムが予め溶存している液体としては、ミネラルウォーターなどに用いられるような“カリウムを含有する地下水”などを挙げることができる。
これらに限定されるものではなく、単独もしくは複数を混合して用いてもよい。
【0017】
(カルシウムおよびカリウムの含有量及び比率)
本炭酸飲料では、カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度(:飲料1kg当たりの濃度)で含有するのが好ましい。カルシウム濃度が5mg/kg以上になると、カルシウム由来の金属味が気になるようになり、改善策が必要となる。他方、100mg/kg未満であれば、カルシウムに由来する苦味などが強くならないため、炭酸飲料として飲用した場合の嗜好的問題点が多様化することなく、金属味の低減によって飲料の嗜好性を高めることができる。
かかる観点から、カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度で含有するのが好ましく、更に好ましくは5mg/kg〜50mg/kg、特に5mg/kg〜40mg/kg、中でも特に5mg/kg〜30mg/kgの濃度で含有するのがさらに好ましい。
【0018】
本炭酸飲料では、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度(:飲料1kg当たりの濃度)で含有するのが好ましい。カリウム濃度が5mg/kgを超える濃度であれば、カルシウム由来の金属味を低減することができるようになり、他方、160mg/kg未満であれば、カリウムに由来する苦味などが強くならないため、飲料の嗜好性を維持することができる。
かかる観点から、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するのが好ましく、更に好ましくは10mg/kg〜80mg/kg、特に10mg/kg〜60mg/kg、中でも特に10〜40mg/kgの濃度で含有するのがさらに好ましい。
【0019】
中でも、カルシウムに由来する金属味の低減という観点から、カルシウム濃度が5mg/kg以上100mg/kg未満の範囲内にあるとき、カルシウムの含有量に対して0.2〜16の質量割合でカリウムを含有するのが好ましく、特に0.8〜8、中でも特に0.8〜4の質量割合でカリウムを含有するのがさらに好ましい。
【0020】
さらに、カルシウムに由来する金属味は炭酸によって増強されるため、炭酸ガス量に対するカルシウムの含有量の比率(カルシウム×1000/炭酸ガス)は、0.8〜8.9であるのが好ましく、特に0.8〜6.0、中でも特に0.8〜3.0であるのがより好ましい。
また、炭酸ガス量に対するカリウムの含有量の比率(カリウム×1000/炭酸ガス)は、1.6以上であれば、カルシウムに由来する金属味をより効果的に低減することができ、他方、14.3以下であれば、炭酸飲料における不快な苦味を抑えることができるから好ましい。かかる観点から、1.6〜14.3であるのが好ましく、特に1.6〜9.0、中でも特に1.6〜7.0であるのがより好ましい。
【0021】
(果汁・アミノ酸等の非含有成分)
果汁を添加した炭酸飲料は、夏場、特に運動後など、喉の渇きが著しい時に、果汁によってもたらされる味やボディー感によって、爽快感や刺激感が損なわれるという課題が指摘されていた。そこで本炭酸飲料では、果汁を配合しないことにした。
【0022】
本炭酸飲料において、無果汁とは、天然果汁を配合しないという意味である。よって、果汁風味の酸味料や香料などは果汁に該当しないため、本炭酸飲料に配合することができる。
【0023】
果汁同様に、アミノ酸を添加した炭酸飲料も、夏場、特に運動後など、喉の渇きが著しい時に、アミノ酸によってもたらされる味やボディー感によって、爽快感や刺激感が損なわれる場合があるため、本炭酸飲料においては、アミノ酸も配合しないのが好ましい。
【0024】
ここで、アミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、システイン、プロリン、アルギニン、オルニチン、シトルリン、ノルバリン、γ−アミノ酪酸、タウリンなどを挙げることができ、誘導体としては、例えばアミド化合物、例えばアスパラギン、グルタミン、テアニンなどを挙げることができる。その他、各種ペプチドやたんぱく質などもアミノ酸として挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0025】
また、果汁やアミノ酸と同様の理由で、野菜汁や、その他の植物エキス、植物成分組成物の微生物発酵物、動物由来物なども、本炭酸飲料においては配合しないことが好ましい。
【0026】
ここで、野菜汁としては、例えばトマト、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、エダマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等を搾汁して得られる汁及びその濃縮物、或いは乾燥物を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0027】
その他植物エキスとしては、例えばアカネ科、アヤメ科、オトギリソウ科、キク科、クワ科、シソ科、ショウガ科、スイカズラ科、セリ科、ツツジ科、ツバキ科、ドクダミ科、ナス科、バラ科、ムクロジ科、又はモクセイ科などを抽出して得られる抽出液、その濃縮物或いは乾燥物などを挙げることができる。また、きのこ類や海藻類などなどを抽出して得られる抽出液、その濃縮物或いは乾燥物などを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0028】
植物成分組成物の微生物発酵物としては、例えば穀物酢、果実酢、味噌、しょうゆ、その他麹菌などで発酵させえられた発酵調味液、果汁などの乳酸菌、酵母など酢酸菌以外の菌による発酵しより得られた発酵液などを挙げることができる。
【0029】
動物由来物としては、例えば乳製品、肉エキス、魚類抽出物、貝類抽出液、その他動物類由来エキスなどを挙げることができる。
【0030】
(その他の含有成分)
その他、水、精製水、生理食塩水のほか、現在公知の飲料に含まれる材料(成分)に含まれる材料(成分)、例えば糖類や甘味料などからなる甘味付与剤、酸味料、香料、ミネラル分、ビタミン類、色素成分、栄養成分、アミノ酸由来ではない酸化防止剤などを配合することは任意であるし、その量も任意である。
【0031】
甘味付与剤として、糖類、甘味料を使用することができ、糖類としては、例えばブドウ糖、果糖、ショ糖、還元麦芽糖などを挙げることができる。
甘味料としては、例えば砂糖、異性化糖、フラクトース、グルコース、キシリトール、ステビア抽出物、パラチノース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、サッカリン、サッカリンナトリウムなどを挙げることができる。シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料、高甘味度甘味料などを含んでいてもよい。また、ソルビトールなどの糖アルコールを用いることもできる。
【0032】
酸味料としては、例えばクエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸及びそれらの塩類から選ばれる1種を単独で使用することもできるし、また、2種類以上を併用することもできる。中でも、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸などが好ましい。
【0033】
香料としては、例えば柑橘その他果実から抽出した香料、果汁または果実ビューレ、植物の種実、根茎、木皮、葉等またはこれらの抽出物、乳または乳製品、合成香料などを挙げることができる。
ビタミン類としては、例えばビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD及びビタミンBなどを挙げることができる。
ミネラル分としては、例えばカルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等を挙げることができる。
色素成分としては、例えばクロレラ、葉緑素などを挙げることができる。
栄養成分としては、例えばL−アスコルビン酸やそのナトリウム塩などを挙げることができる。
機能性成分としては、例えばコラーゲン、鮫軟骨、牡蛎エキス、キトサン、プロポリス、オクタコサノール、トコフェロール、カロチン、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクスなどを挙げることができる。
その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、pH調整剤、品質安定剤等の成分を単独又は併用して配合することもできる。
【0034】
(甘味付与剤濃度)
本炭酸飲料は、果汁やアミノ酸及びその誘導体を含有しない炭酸飲料であるが、甘味を有する炭酸飲料である。したがって、糖類や甘味料などの甘味付与剤を配合しない、炭酸入りミネラルウォーターなどは本炭酸飲料に該当するものではない。
【0035】
甘味付与剤である糖類や甘味料を配合しない、炭酸入りミネラルウォーターなどと区別するため、本炭酸飲料の甘味は、甘味付与剤由来の甘みを感じるレベルでよく、甘味付与剤を0.005〜20質量%、特に0.005〜15質量%、中でも特に0.005〜10質量%となるように配合するがより好ましい。
【0036】
(pH)
本炭酸飲料のpH(25℃)は、2〜6が好ましく、特にpH4未満であるのが好ましい。
【0037】
(容器)
本飲料を充填する容器は、例えばプラスチック製ボトル(ポリエチレンテレフタレートを主成分とするPETボトルなど)、金属缶、紙パック、瓶等を挙げることができるが、炭酸飲料を含む気泡ガス含有飲料のガス圧を考慮すると、プラスチック製ボトル、金属缶、瓶などの非紙製容器であるのが特に好ましい。
【0038】
(製法)
本炭酸飲料の製造方法は、飲料中のカルシウムとカリウムとを本発明の規定範囲内に調整すること以外は、通常の炭酸飲料と同様に製造することができる。すなわち、カルシウム濃度(:飲料1kg当たりの濃度)を5mg/kg以上100mg/kg未満に調整し、且つカリウム濃度(:飲料1kg当たりの濃度)を5mg/kgを超える濃度から160未満mg/kgに調整すること以外は、通常の炭酸飲料と同様に製造することができる。
例えば、飲用適の水に、カルシウム原料、カリウム原料、その他必要に応じて甘味料、香料等を調製・調合し、必要に応じて加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填し、殺菌する工程により製造することができる。
なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。
【0039】
<カルシウム由来の金属味低減方法>
本発明はまた、カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度(:飲料1kg当たりの濃度)で含有するカルシウム含有する飲料において、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160未満の濃度(:飲料1kg当たりの濃度)で配合することを特徴とする、カルシウム由来の金属味低減方法を提案する。
かかる方法によれば、例えばカルシウム含有炭酸飲料の風味を改善することができる。
【0040】
この際、カルシウム濃度は5mg/kg以上100mg/kg未満であるのが好ましい。カルシウム濃度が5mg/kg以上になると、カルシウム由来の金属味が気になるようになり、改善策が必要となる。他方、100mg/kg未満の濃度であれば、カルシウムに由来する苦味などが強くならないため、炭酸飲料として飲用した場合の嗜好的問題点が多様化することなく、金属味の低減によって飲料の嗜好性を高めることができる。
【0041】
カリウムは、5mg/kgを超える濃度(:飲料1kg当たりの濃度)から160mg/kg未満の濃度となるように配合するのが好ましい。カリウム濃度が5mg/kgを超える濃度であれば、カルシウム由来の金属味を低減することができるようになり、他方、160mg/kg未満であれば、カリウムに由来する苦味などが強くならないため、飲料の嗜好性を維持することができる。
かかる観点から、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するように配合するのが好ましく、更に好ましくは10mg/kg〜80mg/kg、特に10mg/kg〜60mg/kg、中でも特に10mg/kg〜40mg/kgの濃度で含有するように配合するのがさらに好ましい。
中でも、カルシウムが5mg/kg以上100mg/kg未満の範囲内にあるときのカルシウムに由来する金属味の低減という観点から、カルシウムに対して0.2〜16の質量割合、特に0.8〜8、中でも特に0.8〜4の質量割合でカリウムを配合するのが好ましい。
【0042】
さらに、カルシウムに由来する金属味は炭酸によって増強されるため、炭酸ガス量に対するカルシウムの含有量の比率(カルシウム×1000/炭酸ガス)は、0.8〜8.9であるのが好ましく、特に0.8〜6、中でも特に0.8〜3であるのがより好ましい。
また、炭酸ガス量に対するカリウムの含有量の比率(カリウム×1000/炭酸ガス)は、1.6〜14.3であるのが好ましく、特に1.6〜9、中でも特に1.6〜7であるのがより好ましい。
【0043】
<金属味抑制剤>
本発明はまた、カリウムを有効成分とする金属味抑制剤(「本金属味抑制剤」と称する)を提案すると共に、この本金属味抑制剤を配合した飲料を提案する。
【0044】
ここで、本金属味抑制剤を配合した飲料、特に炭酸飲料においては、カルシウムは5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度(:飲料1kg当たりの濃度)であるのが好ましい。カルシウム濃度が5mg/kg以上になると、カルシウム由来の金属味が気になるようになり、改善策が必要となる。他方、100mg/kg未満であれば、カルシウムに由来する苦味などが強くならないため、炭酸飲料として飲用した場合の嗜好的問題点が多様化することなく、金属味の低減によって飲料の嗜好性を高めることができる。
かかる観点から、カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度で含有するのが好ましく、更に好ましくは5mg/kg〜50mg/kg、特に5mg/kg〜40mg/kg、中でも特に5mg/kg〜30mg/kgの濃度で含有するように配合するのが好ましい。
【0045】
カリウムは、5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度(:飲料1kg当たりの濃度)となるように含有するのが好ましい。カリウム濃度が5mg/kgを超える濃度であれば、カルシウム由来の金属味を低減することができるようになり、他方、160mg/kg未満であれば、カリウムに由来する苦味などが強くならないため、飲料の嗜好性を維持することができる。
かかる観点から、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するのが好ましく、更に好ましくは、10mg/kg〜80mg/kg、特に10mg/kg〜60mg/kg、中でも特に10mg/kg〜40mg/kgの濃度で含有するのがさらに好ましい。
【0046】
中でも、カルシウムに由来する金属味の低減という観点から、カルシウムが5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度範囲内において、カルシウムに対して0.2〜16の質量割合でカリウムを配合するようにするのが好ましい。
【0047】
さらに、カルシウムに由来する金属味は炭酸によって増強されるため、炭酸ガス量に対するカルシウムの含有量の比率(カルシウム×1000/炭酸ガス)は、0.8〜8.9であるのが好ましく、特に0.8〜6、中でも特に0.8〜3であるのがより好ましい。
また、炭酸ガス量に対するカリウムの含有量の比率(カリウム×1000/炭酸ガス)は、1.6〜14.3であるのが好ましく、特に1.6〜9、中でも特に1.6〜7であるのがより好ましい。
【0048】
<用語の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0049】
次に、試験例に基づいて本発明について更に説明するが、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0050】
<サンプルの作製>
果糖ぶどう糖液糖(Brix75〜76、日本食品化工(株)製)、アセスルファムK(キリン協和フーズ(株)製)、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)、天然水(山口県山口市)、塩化カルシウム(赤穂化成(株)製)および塩化カリウム(赤穂化成(株)製)を、表1−3に示すように秤量すると共に、ビタミンC0.0034質量%、および香料(サイダー、柑橘)0.05質量%秤量し、これらを常温(20℃)の純水に添加して溶解し、クエン酸0.08質量%を加えてpH2.6〜2.7に調整し、さらに純水を加えてメスアップし、95℃10秒の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。
このようにして得られた飲料に対して、カーボネータによって炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填し、容器詰炭酸飲料(サンプル)を得た。
なお、表1−3に示す炭酸ガス含有量(g/100g)は、炭酸ガスボリューム(l/l)=1.9768g/Lとして換算した。(社団法人全国清涼飲料工業会「最新ソフトドリンクス」参考資料p1050(平成15年9月30日)
【0051】
(Ca、Kの含有量の測定方法)
カルシウム(Ca)含有量は、ICP発光分析法により定量を行った。また、カリウム(K)の含有量は、原子吸光光度法により定量を行った。詳しくは、『第8版食品添加物公定書解読書』B一般分析法B62(株式会社廣川書店.平成19年12月10日発行)参照のこと。
【0052】
(炭酸ガス量の測定方法)
JAS法に基づく検査方法に準拠し、容器詰炭酸飲料(サンプル)を高温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、容器詰炭酸飲料(サンプル)を静かに取り出し、ガス内圧計を取り付けて針先で、キャップを穿孔し、一度活栓を開いてガス抜き(以下『スニフト』という。)し、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、ゲージの指針が一定の位置に達したときの値(MPa)を読み取り記録した。
スニフトした後ガス内圧計を取り外し、開栓して温度計で液温を測定し記録した。測定して得たガス内圧力と液温を炭酸ガス吸収係数表に当てはめ、必要なガス内圧力の温度補正を行い炭酸ガスボリュームを導いた。
炭酸ガス含有量(g/100g)は、炭酸ガスボリューム(l/l)=1.9768g/Lより換算した。(社団法人全国清涼飲料工業会「最新ソフトドリンクス」参考資料p1050(平成15年9月30日)
【0053】
(官能評価)
7名のパネラーがそれぞれサンプル50mlを試飲し、金属味、苦味について、次の基準で4段階評価し、最も多かった評価を表1―3に示した。
【0054】
=金属味・苦味の評価=
A:金属味又は苦味がほとんど気にならない。
B:金属味又は苦味がわずかにするが、十分に許容範囲である。
C:金属味又は苦味を強く感じるが、許容範囲である。
D:金属味又は苦味を極めて強く、許容範囲外である。
【0055】
=総合評価=
○:良好
△:やや難があるが、概ね良好
×:不可
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
(考察)
カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料において、カルシウムを一定の濃度範囲で配合することにより、カリウム由来の苦味を抑えつつ、カルシウム由来の金属味を低減することができることが分かった。
【0060】
この際、カリウムは、5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するのが好ましく、さらに好ましくは10mg/kg〜80mg/kg、特に10mg/kg〜60mg/kg、中でも特に10mg/kg〜40mg/kgの濃度で含有するのがさらに好ましいことが分かった。
中でも、カルシウムに由来する金属味の低減という観点から、カルシウムに対して0.2〜16の質量割合でカリウムを含有するのが好ましく、特に0.8〜8、中でも特に0.8〜4の質量割合でカリウムを含有するのが好ましいことが分かった。
【0061】
さらに、カルシウムに由来する金属味は炭酸によって増強されるため、炭酸ガス量に対するカルシウムの含有量の比率(カルシウム×1000/炭酸ガス)は、0.8〜8.9であるのが好ましく、特に0.8〜6、中でも特に0.8〜3であるのがより好ましいことが分かった。
また、炭酸ガス量に対するカリウムの含有量の比率(カリウム×1000/炭酸ガス)は、1.6〜14.3であるのが好ましく、特に1.6〜9、中でも特に1.6〜7であるのがより好ましいことが分かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料であって、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有無果汁炭酸飲料。
【請求項2】
カルシウムの含有量に対して0.2〜16の質量割合でカリウムを含有することを特徴とする請求項1記載のカルシウム含有無果汁炭酸飲料。
【請求項3】
カリウムの由来が、塩化カリウム、アセスルファムカリウム、ミネラルウォーターから選ばれる1種又は2種類以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカルシウム含有無果汁炭酸飲料。
【請求項4】
炭酸ガス量に対するカルシウムの含有量の比率(カルシウム×1000/炭酸ガス)が0.8〜8.9であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のカルシウム含有無果汁炭酸飲料。
【請求項5】
炭酸ガス量に対するカリウムの含有量の比率(カリウム×1000/炭酸ガス)が1.6〜14.3であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のカルシウム含有無果汁炭酸飲料。
【請求項6】
甘味付与剤を0.005〜20質量%で含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のカルシウム含有無果汁炭酸飲料。
【請求項7】
カルシウム濃度を5mg/kg以上100mg/kg未満に調整し、且つカリウム濃度を5mg/kgを超える濃度から160未満mg/kgに調整することを特徴とするカルシウム含有無果汁炭酸飲料の製造方法。
【請求項8】
カルシウムを5mg/kg以上100mg/kg未満の濃度で含有するカルシウム含有する飲料において、カリウムを5mg/kgを超える濃度から160未満の濃度で配合することを特徴とする、カルシウム由来の金属味低減方法。
【請求項9】
カリウムを有効成分とする金属味抑制剤。
【請求項10】
請求項9に記載の金属味抑制剤を配合した飲料。

【公開番号】特開2011−182684(P2011−182684A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49718(P2010−49718)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】