説明

カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩を用いたヒアルロン酸の精製方法

本発明は、カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩を用いたヒアルロン酸の精製方法に関し、詳しくは、ヒアルロン酸を含む抽出物または培養液を、カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理することにより、脂質、核酸、およびタンパク質を効果的に除去することを特徴とするヒアルロン酸の精製方法に関するものである。本発明によれば、付加的な工程を減らせるとともに、有毒な有機物質の使用を避けることによって、より効果的にヒアルロン酸を精製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩を用いたヒアルロン酸の精製方法に関し、詳しくは、ヒアルロン酸を含む抽出物または培養液をカルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理することによって、前記抽出物または前記培養液から脂質、核酸、およびタンパク質を効果的に除去してヒアルロン酸を精製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、生体内に存在するグリコサミノグリカンの一種である酸性ムコ多糖類であり、1,000Da〜10kDaの分子量を持つD−グルコン酸とN−アセチルグルコースアミンの繰り返し分子構造を有し、非常に高い粘性と弾性を有する。
【0003】
ヒアルロン酸は、身体のあらゆる部位に存在し、身体の各部位で様々な特性を示す。保水能力に優れ、良好な粘性と弾性を有し、体の動きを円滑にする潤滑作用、生理活性物質の移動を管理し、細胞との特異な相互作用によって細胞の分化および成長を誘導する媒体、細胞外基質ではコラーゲン、エラスチン、硫酸コンドロイチン等の組織を支えるタンパク質と糖タンパク質などの支持体としての機能を有する生体高分子である。上記で示したような特性により、ヒアルロン酸は、加齢による退行性関節炎の治療および痛み緩和治療剤として用いられ、また、眼科手術補助材および眼球乾燥症薬物の主成分として用いられ、さらにまた、シワおよび陥没した皮膚組織の補完などの成形補足材料として用いられている。
【0004】
現在、医療分野で、特に眼科用として用いられるヒアルロン酸は、一般に、乾燥重量ベースで製品中90%以上が定量的に含まれており、その平均分子量は1.9×106g/モル〜3.9×106g/モルであり、平均重合度(n)は4,700〜9,600である。現在、関節炎注射剤の用途として、種々の分子量分布を有する製品が市販されている。医療用ヒアルロン酸は、注射剤用薬品に用いられるので、タンパク質や他の酸性ムコ多糖類(例えば、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等)の混入が許されない程度の精製度が求められるなど、安全性の規制が非常に厳しい。
【0005】
下記表1に、韓国食品医薬品局告示による医療用(眼科用)ヒアルロン酸の基準を示す。
【0006】
【表1】

【0007】
医療用ヒアルロン酸は、動物組織から抽出するか、微生物の発酵培養液から回収する方法によって得ることができ、動物組織から抽出したヒアルロン酸は、微生物培養液から回収したヒアルロン酸よりも優れた効果を有していることが知られている(Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 13, 183-192, (1999))。さらに、動物組織、特に雄鶏とさかから、ヒアルロン酸を分離および精製する方法が多数知られている。
【0008】
特許文献1(米国特許第4,141,973号)には、クロロホルムを用いて数回抽出を行うことにより、雄鶏とさかからヒアルロン酸を分離および精製する方法が開示されている。
【0009】
特許文献2(ヨーロッパ特許第01238572号)には、限外ろ過膜を用いて、雄鶏とさかから分子量の大きさによって低分子のヒアルロン酸を分離および精製する方法が開示されている。
【0010】
特許文献3(国際特許WO9200861号)には、雄鶏とさかからの抽出物をタンパク質分解酵素で処理し、処理結果物を第4級アンモニウム塩に転換し、有機溶媒を用いてアンモニウム塩を除去し、イオン交換樹脂(Dowex)を用いて分画を得た後、塩化セチルピリジウムで処理してヒアルロン酸分画を沈殿させ、水溶性有機溶媒をヒアルロン酸分画に添加してヒアルロン酸を沈殿させることにより、ヒアルロン酸を得る方法が開示されている。
【0011】
さらに、特許文献4(大韓民国公開特許第1987−0008904号)には、雄鶏とさかからの抽出物をタンパク質分解酵素で処理し、ブタノール等の有機溶媒を用いて脂質およびタンパク質を除去し、塩化セチルピリジウムにより殺菌と沈殿を同時に行って分画を得て、そこに水溶性有機溶媒を添加してヒアルロン酸を沈殿させることを含むヒアルロン酸の製造方法が開示されている。
【特許文献1】米国特許第4,141,973号
【特許文献2】ヨーロッパ特許第01238572号
【特許文献3】国際特許WO9200861号
【特許文献4】大韓民国公開特許第1987−0008904号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記に記載の従来の方法は、工程が複雑で大量生産規模にそれを適用する問題、収率が低いことの問題、有機溶媒を使用することによる水処理にかかるコストや精製コストが莫大となる問題、長時間の多工程のプロセスでヒアルロン酸の自己分解が発生し得る問題がある。また、これらの方法は、医療用の製品の生産には許されない毒性有機溶媒を使用しているという、もう一つの重要な問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためのものである。従って、本発明の目的は、有毒な有機物質の使用を排除し、従来のヒアルロン酸精製プロセスに対して精製工程数を減らすことによって、より効果的にヒアルロン酸を精製する方法を提供することにある。
【0014】
本発明は、(1)ヒアルロン酸含有天然物をタンパク質分解酵素で処理して得られるか、または微生物由来のヒアルロン酸を含有する培養液から得られるヒアルロン酸粗抽出物を、カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩と処理する工程、(2)前記工程(1)の処理結果物をろ過し、ろ液からヒアルロン酸を沈殿させることによってヒアルロン酸を精製する工程を有するヒアルロン酸の精製方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るヒアルロン酸精製方法は、ヒアルロン酸含有抽出液または培養液からヒアルロン酸を高純度かつ速かに精製することができ、タンパク質、核酸、脂質等を非常に効率的に除去することができる。さらに本発明は、従来の有機溶媒を用いた精製方法の問題を克服し、工程を単純化して大量生産に適した工程の設計を可能とし、また高収率を保証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の方法において、前記工程(1)で得られるヒアルロン酸粗抽出物は、ヒアルロン酸含有天然物をタンパク質分解酵素で処理して得られるか、またはヒアルロン酸を生産できる微生物から生産されたヒアルロン酸を含有する培養液から得られる。前記ヒアルロン酸含有天然物とは、本発明に従って精製ヒアルロン酸を提供できるものであれば特に限定されず、雄鶏とさかが主に用いられる。処理条件に関しては、タンパク質分解酵素での処理が可能な条件であれば特に制限されず、公知のタンパク質分解酵素処理方法を使用すればよい。ヒアルロン酸を生産できる微生物としては、公知のヒアルロン酸生産用微生物が使用可能であり、公知方法を用いて得られたヒアルロン酸含有微生物培養液であれば、本発明の精製方法に特に制限なく使用できる。
【0017】
以下、本発明の好ましい一具体例により、ヒアルロン酸含有天然物をタンパク質分解酵素で処理してヒアルロン酸粗抽出物を得る工程について、さらに詳しく説明する。
【0018】
本発明の好ましい一具体例によれば、ヒアルロン酸含有天然物をタンパク質分解酵素で処理してヒアルロン酸粗抽出物を得るためには、まず、ヒアルロン酸含有天然物として雄鶏とさかを細かく粉砕し、エタノールで洗浄する。次に、粉砕および洗浄された雄鶏とさかに適量の蒸留水を加え、タンパク質分解酵素の存在下で撹拌した後、30℃〜60℃の温度で3時間〜72時間放置する。放置の結果、層分離が起こるので、脂質が含まれる上層は捨て、下層の抽出液だけを採取してろ過する。ろ過により得られた抽出液は30℃〜60℃の温度に加熱し、その後タンパク質分解酵素を添加して3時間〜24時間、再び処理する。二次処理後、生成抽出液をろ過してヒアルロン酸抽出液を得る。このヒアルロン酸抽出液は、さらに処理することなく、工程(1)でヒアルロン酸粗抽出物として用いてもよい。しかし、塩化ナトリウムの濃度が0.3M〜1Mになるように定量した塩化ナトリウムを得られたヒアルロン酸抽出液に添加し、95%エタノール中でヒアルロン酸を沈殿させた後、この溶液をろ過して得られたヒアルロン酸沈殿物を凍結乾燥または真空乾燥することによって得られるヒアルロン酸粉末を、ヒアルロン酸粗抽出物として用いることが好ましい。このようにして得られるヒアルロン酸粉末は、蒸留水に溶解して適正濃度のヒアルロン酸水溶液に調製され、使用される。
【0019】
本発明のヒアルロン酸の精製方法によると、工程(1)では、ヒアルロン酸粗抽出物をカルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理することによって、粗抽出物から脂質、核酸、およびタンパク質が除去される。特に、工程(1)では、4℃〜90℃の温度範囲で、ヒアルロン酸粗抽出物をカルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理することが好ましい。
【0020】
前記工程(1)において、有用なカルシウム塩は、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO32・4H2O、Ca(CH3COO)2・H2O、CaCl2、およびCaSO4・2H2Oよりなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよく、有用なリン酸塩は、H3PO4、(NH42HPO4、H427、NaH2PO4、およびKH2PO4よりなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これらの有用な塩は前記で挙げられた化合物に限られない。前記カルシウム塩化合物の前記リン酸塩化合物に対するモル比を表すCa/Pモル比は、ヒアルロン酸の精製効率の点から、0.5〜3.0であることが好ましい。
【0021】
また、前記工程(1)において用いられるリン酸カルシウム塩は、下記の表2で示される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0022】
【表2】

【0023】
前記工程(1)では、ヒアルロン酸粗抽出物を水溶液の形態で処理し、また、リン酸塩およびカルシウム塩、またはリン酸カルシウム塩を、水溶液の形態でヒアルロン酸粗抽出物水溶液と混合することが好ましい。
【0024】
ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、上述の塩の水溶液と処理する場合、pHは5〜14、好ましくは8〜10の条件で行われる。処理の際、pHが5未満であれば不純物の沈殿が効果的に行われず、結果的に、ヒアルロン酸の精製が不十分になる。ヒアルロン酸粗抽出物水溶液は、混合と同時にまたは混合後に、pH5〜14の条件で処理される。「混合と同時に」とは、カルシウム塩水溶液およびリン酸塩水溶液、またはリン酸カルシウム塩水溶液のpHを5〜14に予め調整した後、pH調整されたこれらの水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液とを混合することによって、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液が、これらの水溶液と混合されると同時にpH5〜14の条件下に置かれることを意味する。「混合後に」とは、カルシウム塩水溶液およびリン酸塩水溶液、またはリン酸カルシウム塩水溶液と、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液とを混合した後、その混合水溶液のpHを5〜14に調整することによって、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液がこれらの水溶液と混合された後に、pH5〜14の条件下に置かれることを意味する。
【0025】
上記において、pHを5〜14の範囲に調整するのに、塩基性化合物を用いてもよい。塩基性化合物としては、NaOH、KOH、LiOH、NH4OH、Mg(OH)2、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、ビス−2−ヒドロキシエチル−アミノトリス−ヒドロキシメチル−メタン、および1,3−ビス−[トリス−ヒドロキシメチル]−メチル−アミノプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1つを使用することが好ましいが、塩基性化合物は前記例示した化合物に制限されるものではない。
【0026】
ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、上述の塩の水溶液と処理する場合、無機酸、有機酸、またはそれらの混合物を含む酸性水溶液を用いてもよい。酸性水溶液としては、HCl、HNO3、HF、H2SO4、HClO4、HClO、H2CO3、CH3COOH、C22(COOH)2、HOOCCH2CH2COOH、CHCOCOOH、およびCH3(CH214COOHよりなる群から選ばれる少なくとも1つの酸性化合物を用いて調製された酸性水溶液を使用することが好ましいが、有用な無機酸や有機酸は前記例示した物質に制限されるものではない。
【0027】
工程(1)において、リン酸塩、カルシウム塩、およびリン酸カルシウム塩の各水溶液の濃度、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と塩の水溶液との混合比および混合順序、pH調整のための塩基性化合物の濃度、無機酸、有機酸、またはそれらの混合物を含む酸性水溶液の濃度等は、それぞれのケースの具体的な処理プロセスに応じて、変化してもよい。従って、以下に、好ましい具体例を通じて、前記工程(1)の処理方法をさらに詳しく説明する。
【0028】
前記工程(1)の処理方法の好ましい具体例によれば、ヒアルロン酸粗抽出物を処理する方法は、カルシウム塩およびリン酸塩をそれぞれ使用する方法と、リン酸カルシウム塩を使用する方法の2種類に大きく分けられる。
【0029】
カルシウム塩およびリン酸塩をそれぞれ使用する方法では、まず、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO32・4H2O、Ca(CH3COO)2・H2O、CaCl2、CaSO4・2HO等を使用して、カルシウムイオンを含有しリン酸イオンを含有しない水溶液(第1水溶液)を調製し、H3PO4、(NH42HPO4、H427、NaH2PO4、KH2PO4等を使用して、リン酸イオンを含有しカルシウムイオンを含有しない水溶液(第2水溶液)をそれぞれ調製する。第1水溶液のカルシウムイオン濃度および第2水溶液のリン酸イオン濃度は、0.001M〜10Mが適当であり、0.01M〜2Mが好ましい。第1水溶液および第2水溶液は、カルシウム塩のリン酸塩に対するCa/Pモル比が、好ましくは0.5〜3.0、より好ましくは1.0〜2.0となるように使用される。
【0030】
上記のように調製された第1水溶液および第2水溶液を用いてヒアルロン酸粗抽出物を処理する方法は、以下に示す方法のように、その処理順序は様々あってよい。
【0031】
第1の方法では、0.05%〜1%の濃度のヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、前記第1水溶液に、第1水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる混合溶液が得られる量を添加し、約10分〜3時間、好ましくは30分〜1時間撹拌して十分に混合する。続いて、第1水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液との前記混合水溶液に、前記第2水溶液を、第1水溶液と第2水溶液のCa/Pモル比が0.5〜3.0になる混合比を有する混合溶液が得られる量で加える。このようにして調製された第1水溶液、第2水溶液、およびヒアルロン酸粗抽出物水溶液の混合水溶液に、NaOH、KOH、LiOH、NH4OH、Mg(OH)2、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、ビス−2−ヒドロキシエチル−アミノトリス−ヒドロキシメチル−メタン、および1,3−ビス−[トリス−ヒドロキシメチル]−メチル−アミノプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1つの塩基性化合物の水溶液を、pHが5〜14の範囲、好ましくは8〜10となる量で添加し、約30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0032】
第2の方法では、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、前記第2水溶液に、第2水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる混合溶液が得られる量を添加し、約10分〜3時間、好ましくは30分〜1時間撹拌して十分に混合する。続いて、第2水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液との前記混合水溶液に、前記第1水溶液を、濃度に応じて多少差があるが、第1水溶液と第2水溶液のCa/Pモル比が0.5〜3.0になる混合比を有する混合溶液が得られる量で加える。このようにして調製された第1水溶液、第2水溶液、およびヒアルロン酸粗抽出物水溶液の混合水溶液に、前記塩基性化合物の水溶液を、pHが5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲となる量で添加し、約30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0033】
第3の方法では、前記第1水溶液と前記第2水溶液のそれぞれに、前記塩基性化合物水溶液を添加し、pHがいずれも5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲となるように調整する。pHが調整された前記第1水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液とを、第1水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる量で混合し、続いて、そこに前記第2水溶液を、第1水溶液と第2水溶液のCa/Pモル比が0.5〜3.0となる量で加える。または、pHが調整された第2水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液とを、第2水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる量で混合し、続いて、そこに前記第1水溶液を、第1水溶液と第2水溶液のCa/Pモル比が0.5〜3.0となる量で加える。このようにして調製された第1水溶液、第2水溶液、およびヒアルロン酸粗抽出物水溶液の混合水溶液を、約30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0034】
別の代替方法としては、第1水溶液と第2水溶液に、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液をそれぞれ添加した後、前記塩基性化合物水溶液によりpHをともに5〜14、好ましくは8〜10となるように調整し、第1水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液の前記混合水溶液と、第2水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液の前記混合水溶液とを混合してもよい。
【0035】
第4の方法では、Ca/Pモル比が0.5〜3.0となるように前記第1水溶液と前記第2水溶液とを混合した水溶液に、前記塩基性化合物水溶液を添加しpHを5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲となるように調整し、10分〜24時間撹拌する。このようにして得られた第1水溶液と第2水溶液との混合水溶液に、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、第1水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる量で混合し、これを約30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0036】
カルシウム塩およびリン酸塩をそれぞれ使用する方法では、無機酸、有機酸、またはそれらの混合物の酸性水溶液として、下記のものが使用されてもよい。
【0037】
無機酸、有機酸、またはそれらの混合物の酸性水溶液を使用する方法のうち第1の方法では、酸性水溶液は、HCl、HNO3、HF、H2SO4、HClO4、HClO、H2CO3、CH3COOH、C22(COOH)2、HOOCCH2CH2COOH、CHCOCOOH、およびCH3(CH214COOHよりなる群から選ばれる少なくとも1つを用いて、濃度が0.001M〜10M、好ましくは0.01M〜2Mとなるように調製され、カルシウムイオンはそこに添加される。酸性水溶液中のカルシウムイオン濃度は、0.001M〜10Mが適切であり、0.01M〜2Mが好ましい。カルシウムイオンの添加は、上記のように調製された第1水溶液を添加するか、または第1水溶液を調製するためのカルシウム塩を直接酸性水溶液に溶解させることによって行われてもよい。
【0038】
このようにして調製されたカルシウムイオン含有酸性水溶液を、カルシウムイオン含有酸性水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる量で、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と混合し、約10分〜5時間、好ましくは30分〜1時間撹拌する。このようにして調製されたカルシウムイオン含有酸性水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液との混合水溶液に、前記第2水溶液を、Ca/Pモル比が0.5〜3.0となる量でさらに混合し、十分に撹拌する。または、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を第2水溶液と混合した後、これを前記カルシウムイオン含有酸性水溶液と混合することも可能である。
【0039】
上記のように調製されたカルシウムイオン含有酸性水溶液、第2水溶液、およびヒアルロン酸粗抽出物水溶液の混合水溶液のpHを、前記塩基性化合物水溶液によりpH5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲に調整し、30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0040】
または、カルシウムイオン含有酸性水溶液を第2水溶液と混合する前に、前記塩基性化合物水溶液を用いて、各溶液のpHを5〜14の範囲に予め調整してもよい。さらに別の代案として、カルシウムイオン含有酸性水溶液と第2水溶液とを混合し、塩基性化合物水溶液によりpHを5〜14の範囲に調整した後、そのpH調整された混合水溶液にヒアルロン酸粗抽出物水溶液を加えることも可能である。
【0041】
無機酸、有機酸、またはそれらの混合物の酸性水溶液を使用する方法のうち第2の方法では、リン酸イオンを、上記のように調製された酸性水溶液に添加する。酸性水溶液中のリン酸イオン濃度は、0.001M〜10Mが適切であり、0.01M〜2Mが好ましい。リン酸イオンの添加は、上記のように調製された第2水溶液を添加するか、または第2水溶液を調製するためのリン酸塩を直接酸性水溶液に溶解させることによって行われてもよい。
【0042】
このようにして調製されたリン酸イオン含有酸性水溶液を、リン酸イオン含有酸性水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.001〜100、好ましくは0.1〜2となる量で、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と混合し、約10分〜5時間、好ましくは30分〜1時間撹拌する。このようにして調製されたリン酸イオン含有酸性水溶液とヒアルロン酸粗抽出物水溶液との混合水溶液に、前記第1水溶液を、Ca/Pモル比が0.5〜3.0となる量でさらに混合し、十分に撹拌する。または、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を第1水溶液と混合した後、これを前記リン酸イオン含有酸性水溶液と混合することも可能である。
【0043】
上記のように調製されたリン酸イオン含有酸性水溶液、第1水溶液、およびヒアルロン酸粗抽出物水溶液の混合水溶液のpHを、前記塩基性化合物水溶液によりpH5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲に調整し、30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0044】
または、リン酸イオン含有酸性水溶液を第1水溶液と混合する前に、前記塩基性化合物水溶液を用いて、各溶液のpHを5〜14の範囲に予め調整してもよい。さらに別の代案として、リン酸イオン含有酸性水溶液と第1水溶液とを混合し、塩基性化合物水溶液によりpHを5〜14の範囲に調整した後、そのpH調整された混合水溶液にヒアルロン酸粗抽出物水溶液を加えることも可能である。
【0045】
次に、リン酸カルシウム塩を用いて処理する具体的な方法を下記に示す。
【0046】
リン酸カルシウム塩を用いる第1の方法では、表2に示されるリン酸カルシウム化合物の1つ以上を前記酸性水溶液に溶解する。酸性水溶液の濃度は0.01M〜10Mが適切であり、0.1M〜2Mが好ましい。
【0047】
このようにして調製されたカルシウムイオン−リン酸イオン含有酸性水溶液を、カルシウムイオン−リン酸イオン含有酸性水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.1〜20、好ましくは0.5〜2となるように、ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と混合し、得られた溶液を10分〜3時間、好ましくは30分〜1時間、十分に撹拌する。十分に撹拌した後、撹拌を続けながら前記塩基性化合物水溶液をpHが5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲になるように添加し、得られた溶液をさらに30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌して沈殿物を形成させる。
【0048】
リン酸カルシウム塩を用いる第2の方法では、カルシウムイオン−リン酸イオン含有酸性水溶液に前記塩基性化合物水溶液を、pHが5〜14の範囲、好ましくは8〜10の範囲となるように添加した後、得られた溶液を前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と、カルシウムイオン−リン酸イオン含有酸性水溶液/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液の体積混合比が0.1〜20、好ましくは0.5〜2となるように混合し、30分〜24時間、好ましくは1時間〜3時間撹拌する。
【0049】
本発明のヒアルロン酸の精製方法の前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた沈殿物を含有する水溶液をろ過し、ろ液からヒアルロン酸を沈殿させて、精製されたヒアルロン酸を得る。ろ過方法は特に限定されず、ろ過は澄明な溶液が得られるまで繰り返される。遠心分離機を用いて遠心分離を行った後、澄明な溶液が得られるまでろ過を繰り返すことも可能である。澄明な溶液中に潜在的に存在するイオンを除去するためには、限外ろ過(UF)または透析を行うことが好ましい。
【0050】
工程(1)で得られた沈殿物含有水溶液は塩基性水溶液であるため、続く工程(2)では、ヒアルロン酸を効果的に沈殿させるために、水溶液を酸性〜弱塩基性にすることが好ましい。従って、ろ過を繰り返して得られた澄明な溶液に、例えば前記の酸性水溶液を加えて、pHが酸性〜弱塩基性となるように調整する。
【0051】
ろ液からヒアルロン酸を沈殿させるために、水と比べてヒアルロン酸の溶解度が顕著に低い溶媒を用いてもよく、例えばエタノールが好適である。また、沈殿時に、共通イオン効果によってヒアルロン酸が効果的に沈殿するように、水溶性中性塩を添加してもよい。
【0052】
以下では、好ましい具体例を通じて前記工程(2)をさらに詳しく説明する。
【0053】
前記工程(2)の好ましい具体例としては、前記工程(1)で得られた沈殿物含有水溶液を遠心分離した後に、ろ過して、澄明な溶液を得る。前記澄明な溶液に前記酸性水溶液を加え、pHを2〜10の範囲、好ましくは4.0〜7.0の範囲に調整し、得られた溶液を限外ろ過(UF)または透析する。限外ろ過または透析により得られた溶液に、NaClを、0.3M〜1M、好ましくは0.5M〜1Mの濃度になるように定量して溶解する。得られた溶液に、95%エタノールを体積比で1〜2倍程度添加することにより、ヒアルロン酸を沈殿させる。沈殿したヒアルロン酸をろ過した後、ろ過されたヒアルロン酸を95%エタノールで洗浄し、さらに、無機酸、有機酸、またはそれらの混合物と混合してpHを1〜5の範囲に調整された70%〜90%エタノールと30分〜5時間、好ましくは30分〜1時間ゆっくり撹拌することによって洗浄する。撹拌が完了した後、沈殿物をろ過および収集した後、凍結乾燥または減圧乾燥を行うことによって、精製されたヒアルロン酸が得られる。
【0054】
本発明のヒアルロン酸の精製方法は、さらなる高純度のヒアルロン酸を得るために、前記工程(2)で得られたヒアルロン酸を、前記工程(1)のカルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理し、処理結果物をろ過し、ろ液からヒアルロン酸を沈殿させることを含む追加の精製工程を、前記工程(2)の後に1回以上さらに有していてもよい。即ち、工程(2)で得られたヒアルロン酸に対しさらに追加の精製工程を1回以上繰り返し、追加の精製工程で得られた沈殿物を凍結乾燥または減圧乾燥することにより、より高純度に精製されたヒアルロン酸を得ることができる。
【0055】
本発明のヒアルロン酸の精製方法は、雄鶏とさか以外の天然物および微生物由来のヒアルロン酸の精製にも適用可能であり、また、タンパク質、核酸、または脂質の精製にも適用可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。また、以下の実施例のように雄鶏とさかからヒアルロン酸を抽出する場合には、ヒアルロン酸の収率は、使われる雄鶏とさかの大きさに応じて大きく異なる。
【0057】
[実施例1]
前処理工程:ヒアルロン酸含有天然物である雄鶏とさかを、タンパク質分解酵素で処理して、ヒアルロン酸粗抽出物を得る工程
下記式により算出された平均面積が約5cm2の雄鶏とさか1kgを、50℃で解凍し、粉砕した。
平均面積=(横平均×縦平均)÷2
粉砕した雄鶏とさかを70%エタノールで洗浄した後、再粉砕した。再粉砕した雄鶏とさかを95%エタノールで数回洗浄した。洗浄後、50℃に保持した蒸留水3000mLに粉砕した雄鶏とさかを加え、タンパク質分解酵素を添加した後、24時間反応させた。処理後、分離した脂質含有上層を捨て、下層を採取してろ過した。ろ過した下層を37℃に加熱し、続いてタンパク質分解酵素を加え、二次処理として12時間反応させた。二次処理後、澄明な溶液が得られるまでろ過し、その結果、ヒアルロン酸抽出液が得られた。この抽出液に、NaClを、0.5M濃度になるように定量して加え、95%エタノール中でヒアルロン酸を沈殿させた。沈殿したヒアルロン酸をろ過して分離し、凍結乾燥または減圧乾燥を実施して、白色粉末のヒアルロン酸粗抽出物を得た。
【0058】
(1)ヒアルロン酸粗抽出物粉末をカルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理する工程
前記前処理工程で得られたヒアルロン酸粗抽出物粉末1gを、蒸留水1000mLに溶解して、0.1%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を調製した。Ca(NO32・4H2O水溶液を0.167Mの濃度となるように調製し、(NH42HPO4水溶液を0.1Mの濃度となるように調製し、0.1%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLに、0.167MのCa(NO32・4H2O水溶液500mLを添加して、混合した。十分に混合された水溶液に、0.1Mの(NH42HPO4水溶液を、Ca(NO32・4H2O水溶液の添加量と同量の500mL添加して、混合した。0.1%ヒアルロン酸粗抽出物、Ca(NO32・4H2O、(NH42HPO4の混合水溶液を撹拌しながら、NaOHを添加してpHが10になるように調整した。pH調整した後、混合水溶液を3時間撹拌した。
【0059】
(2)前記工程(1)の処理結果物をろ過し、ヒアルロン酸を沈殿させて、精製する工程
前記工程(1)で得られた混合水溶液を、澄明な溶液になるまで遠心分離した後、ろ過した。得られた澄明な溶液に、HClを加えてpHが5になるように調整し、限外ろ過または透析を行って再度澄明な溶液を得た。ここにNaClを0.5M濃度になるように溶解した後、95%エタノール中でヒアルロン酸を沈殿させた。沈殿したヒアルロン酸をろ過により分離し、pHが4に調整された70%エタノールに加え、30分間ゆっくり撹拌した後、処理結果物をろ過し、凍結乾燥または減圧乾燥して、一次精製したヒアルロン酸を得た。
【0060】
一次精製したヒアルロン酸を蒸留水に再溶解し、前記(1)および(2)の工程をもう1回繰り返し、二次精製したヒアルロン酸を得た。
【0061】
[実施例2]
工程(1)において、0.1%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLに、0.1Mの(NH42HPO4水溶液を250mL添加して十分に混合した後、そこに0.167MのCa(NO32・4H2O水溶液を、0.1Mの(NH42HPO4水溶液の添加量と同量加えたことを除いては、実施例1と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
【0062】
[実施例3]
下記の工程(1)を除いては、実施例1と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
工程(1)において、実施例1の前処理工程で得られたヒアルロン酸粗抽出物粉末を蒸留水に溶解して、0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLを調製した。0.85MのCa(OH)2水溶液と0.5MのH3PO4水溶液をそれぞれ調製した。調製したCa(OH)2およびH3PO4水溶液に、NH4OH水溶液をそれぞれ加え、pHが11となるように調整した。0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLに、pH調整されたCa(OH)2水溶液を300mL添加して混合した後、0.5MのH3PO4水溶液を、Ca(OH)2水溶液の添加量と同量の300mLをさらに加え、混合した。0.2%ヒアルロン酸粗抽出物、Ca(OH)2、およびH3PO4の混合水溶液を、1時間撹拌した。
【0063】
[実施例4]
工程(1)において、0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLに、pH調整された0.5MのH3PO4水溶液を500mL添加して混合した後、そこに0.875MのCa(OH)水溶液を、0.5MのH3PO4水溶液の添加量と同量添加したことを除いては、実施例3と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
【0064】
[実施例5]
下記の工程(1)を除いては、実施例1と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
工程(1)において、実施例1の前処理工程で得られたヒアルロン酸粗抽出物粉末を蒸留水に溶解して、0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLを調製した。0.3MのHCl水溶液に、CaCO3を17mMの濃度となるように溶解し、カルシウムイオン含有HCl水溶液を調製した。10mMのH3PO4水溶液と10mMの(NH42HPO4水溶液をそれぞれ調製した。0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLに、調製したカルシウムイオン含有HCl水溶液を1000mL添加して混合した後、得られた溶液に、10mMのH3PO4水溶液と10mMの(NH42HPO4水溶液をそれぞれ1000mL添加して、混合した。十分に混合した後、NH4OHを添加して、pHが10となるように調整した。pHを調整した後、得られた溶液を3時間撹拌した。
【0065】
[実施例6]
下記の工程(1)を除いては、実施例1と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
工程(1)において、実施例1の前処理工程で得られたヒアルロン酸粗抽出物粉末を蒸留水に溶解して、0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLを調製した。0.2MのHCl水溶液を調製し、そこにリン酸カルシウム化合物としてオクタカルシウムホスフェート2gを加え、溶解した。このようにして調製されたリン酸カルシウム−HCl水溶液1000mLに、0.2%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLを加えて、十分に混合するように撹拌しながら、そこにNaOHをさらに添加してpHが9になるように調整した。pHを調整した後、得られた溶液を3時間撹拌した。
【0066】
[実施例7]
下記の工程(1)を除いては、実施例1と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
工程(1)において、実施例1の前処理工程で得られたヒアルロン酸粗抽出物粉末を蒸留水に溶解して、0.3%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLを調製した。0.2MのHClおよび1MのCH3COOH水溶液をそれぞれ調製し、0.2M HCl:1M CH3COOHの体積混合比が1:4となる量でHCl水溶液とCH3COOH水溶液とを混合し、有機酸−無機酸混合酸性水溶液を調製した。得られた混合酸性水溶液に、リン酸カルシウム化合物としてジカルシウムホスフェート無水物(DCPA)4gを加えて溶解した。0.3%ヒアルロン酸粗抽出物水溶液1000mLに、調製したリン酸カルシウム含有酸性水溶液1000mLを加えて、十分に混合されるように撹拌しながら、そこにNH4OHを加えてpHが10になるように調整した。pHを調整した後、得られた溶液を1時間撹拌した。
【0067】
[実施例8]
ヒアルロン酸粗抽出物水溶液として微生物から得られたヒアルロン酸含有培養液を用いたことを除いては、実施例1の工程(1)および工程(2)と同様にしてヒアルロン酸を精製した。
【0068】
下記の表3および表4は、本発明の実施例1〜8によって精製されたヒアルロン酸の、韓国食品医薬品局(KFDA)告示ヒアルロン酸(眼科用)試験方法、およびその分析結果をそれぞれ示す。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るヒアルロン酸精製方法は、ヒアルロン酸含有抽出液または培養液からヒアルロン酸を高純度かつ速かに精製することができ、タンパク質、核酸、脂質等を非常に効率的に除去することができる。さらに本発明は、従来の有機溶媒を用いた精製方法の問題を克服し、工程を単純化して大量生産に適した工程の設計を可能とし、また高収率を保証する。本発明に係る精製方法によって精製されたヒアルロン酸は、90%以上の高純度を示し、医療用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヒアルロン酸含有天然物をタンパク質分解酵素で処理して得られるか、または微生物由来のヒアルロン酸を含有する培養液から得られるヒアルロン酸粗抽出物を、カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩と処理する工程、
(2)前記工程(1)の処理結果物をろ過し、ろ液からヒアルロン酸を沈殿させることによってヒアルロン酸を精製する工程
を有することを特徴とするヒアルロン酸の精製方法。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸粗抽出物が、ヒアルロン酸含有天然物として雄鶏とさかを30℃〜60℃の温度で3時間〜72時間タンパク質分解酵素で処理し、脂質層を分離、除去することによって得られるものである請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項3】
前記カルシウム塩が、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO32・4H2O、Ca(CH3COO)2・H2O、CaCl2、およびCaSO2・2H2Oよりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項4】
前記リン酸塩が、H3PO4、(NH42HPO4、H427、NaH2PO4、およびKH2PO4よりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項5】
前記カルシウム塩と前記リン酸塩が、Ca/Pモル比0.5〜3.0で使用される請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項6】
前記リン酸カルシウム塩が、テトラカルシウムホスフェート、ヒドロキシアパタイト、非化学量論的ヒドロキシアパタイト、非晶質カルシウムホスフェート、トリカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート、ジカルシウムホスフェート二水和物、ジカルシウムホスフェート無水和物、カルシウムピロリン酸、カルシウムピロリン酸二水和物、ヘプタカルシウムホスフェート、テトラカルシウム二水素ホスフェート、モノカルシウムホスフェート一水和物、およびカルシウムメタホスフェートよりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項7】
前記工程(1)の前記ヒアルロン酸粗抽出物を水溶液の形態で処理し、前記リン酸塩および前記カルシウム塩、または前記リン酸カルシウム塩を、水溶液の形態で前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と混合する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項8】
前記リン酸塩水溶液、前記カルシウム塩水溶液、および前記リン酸カルシウム塩水溶液のうちの少なくとも1つを、酸性水溶液として、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液と混合する請求項7に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項9】
前記酸性水溶液が、HCl、HNO3、HF、H2SO4、HClO4、HClO、H2CO3、CH3COOH、C22(COOH)2、HOOCCH2CH2COOH、CHCOCOOH、およびCH3(CH214COOHよりなる群から選ばれる少なくとも1つの酸を含む請求項8に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項10】
前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、混合と同時にまたは混合後に、pH5〜14の条件で処理する請求項7または8に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項11】
前記pH5〜14の条件が、塩基性化合物を用いることにより達成される請求項10に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項12】
前記塩基性化合物が、NaOH、KOH、LiOH、NHOH、Mg(OH)2、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、ビス−2−ヒドロキシエチル−アミノトリス−ヒドロキシメチル−メタン、および1,3−ビス−[トリス−ヒドロキシメチル]−メチル−アミノプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項11に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項13】
前記工程(1)において、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、カルシウム塩の供給源として、カルシウムイオンを含有しリン酸イオンを含有しない水溶液(第1水溶液)と処理し、リン酸塩供給源として、リン酸イオンを含有しカルシウムイオンを含有しない水溶液(第2水溶液)と処理する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項14】
前記第1水溶液のカルシウムイオン濃度と前記第2水溶液のリン酸イオン濃度がそれぞれ0.001M〜10Mであり、前記カルシウム塩の前記リン酸塩に対するCa/Pモル比が0.5〜3.0である請求項13に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項15】
前記第1水溶液と前記第2水溶液のうちの少なくとも1つが、HCl、HNO3、HF、H2SO4、HClO4、HClO、H2CO3、CH3COOH、C22(COOH)2、HOOCCH2CH2COOH、CHCOCOOH、およびCH3(CH214COOHから選ばれる少なくとも1つの酸を含有する酸性水溶液である請求項13に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項16】
前記第1水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液との混合水溶液に、前記第2水溶液を添加する第1混合方法、または、
前記第2水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液との混合水溶液に、前記第1水溶液を添加する第2混合方法、または、
前記第1水溶液と前記第2水溶液のそれぞれに、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を添加し、得られた各水溶液を混合する第3混合方法、または、
前記第1水溶液と前記第2水溶液との混合水溶液に、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を添加する第4混合方法により、
前記第1水溶液と前記第2水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液との混合水溶液を形成することにより、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を処理する請求項13または14に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項17】
前記第1水溶液;
前記第2水溶液;
前記第1水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液との前記混合水溶液;
前記第2水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液との前記混合水溶液;
前記第1水溶液と前記第2水溶液との前記混合水溶液;および
前記第1水溶液と前記第2水溶液と前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液との前記混合水溶液;
のうち少なくとも1つは、pH5〜14となるように調整されている請求項16に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項18】
前記pHを5〜14の範囲に調整するために、NaOH、KOH、LiOH、NH4OH、Mg(OH)2、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、ビス−2−ヒドロキシエチル−アミノトリス−ヒドロキシメチル−メタン、および1,3−ビス−[トリス−ヒドロキシメチル]−メチル−アミノプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1つの塩基性化合物を用いる請求項17に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項19】
前記第1混合方法または前記第3混合方法において、前記第1水溶液の前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液に対する体積混合比(第1水溶液体積/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液体積)、
前記第2混合方法または前記第3混合方法において、前記第2水溶液の前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液に対する体積混合比(第2水溶液体積/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液体積)、および
前記第4混合方法において、前記第1水溶液と前記第2水溶液の前記混合水溶液の前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液に対する体積混合比(第1水溶液と第2水溶液の混合水溶液体積/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液体積)
が0.001〜100である請求項16に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項20】
前記工程(1)において、テトラカルシウムホスフェート、ヒドロキシアパタイト、非化学量論的ヒドロキシアパタイト、非晶質カルシウムホスフェート、トリカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート、ジカルシウムホスフェート二水和物、ジカルシウムホスフェート無水和物、カルシウムピロリン酸、カルシウムピロリン酸二水和物、ヘプタカルシウムホスフェート、テトラカルシウム二水素ホスフェート、モノカルシウムホスフェート一水和物、およびカルシウムメタホスフェートよりなる群から選ばれる少なくとも1つのリン酸カルシウム塩の水溶液と混合することにより、前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液をリン酸カルシウム塩水溶液と処理する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項21】
前記リン酸カルシウム塩の水溶液が、HCl、HNO3、HF、H2SO4、HClO4、HClO、H2CO3、CH3COOH、C22(COOH)2、HOOCCH2CH2COOH、CHCOCOOH、およびCH3(CH214COOHから選ばれる少なくとも1つの酸を含む酸性水溶液である請求項20に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項22】
前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液を、前記リン酸カルシウム塩水溶液との混合と同時にまたは混合後に、pH5〜14の条件で処理する請求項20または21に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項23】
前記pH5〜14の条件が、NaOH、KOH、LiOH、NHOH、Mg(OH)2、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、ビス−2−ヒドロキシエチル−アミノトリス−ヒドロキシメチル−メタン、および1,3−ビス−[トリス−ヒドロキシメチル]−メチル−アミノプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1つの塩基性化合物を用いることにより達成される請求項22に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項24】
前記リン酸カルシウム塩水溶液の前記ヒアルロン酸粗抽出物水溶液に対する体積混合比(リン酸カルシウム塩水溶液体積/ヒアルロン酸粗抽出物水溶液体積)が0.1〜2.0である請求項20に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項25】
前記工程(2)において、前記工程(1)の処理結果物を、澄明な溶液が得られるまで遠心分離し、前記澄明な溶液をろ過する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項26】
遠心分離およびろ過により得られた前記澄明な溶液に、無機酸、有機酸、またはそれらの混合物を含む酸性水溶液を添加し、pHを2〜10の範囲に調整する請求項25に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項27】
前記工程(2)において、前記工程(1)の処理結果物をろ過した後、エタノールを用いてヒアルロン酸を沈殿させる請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項28】
前記ヒアルロン酸の沈殿が生じる溶液に、水溶性中性塩を添加する請求項27に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項29】
前記工程(2)において、前記工程(1)の処理結果物をろ過し、ヒアルロン酸を沈殿させた後、沈殿したヒアルロン酸をエタノールで洗浄し、さらにpHが1〜5の範囲に調整された70%〜90%エタノールで再洗浄する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項30】
前記工程(2)で得られたヒアルロン酸を、前記工程(1)のカルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理し、処理結果物をろ過し、ろ液からヒアルロン酸を沈殿させることを含む追加の精製工程を、前記工程(2)の後に1回以上有する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。
【請求項31】
前記工程(1)のヒアルロン酸粗抽出物を、4℃〜90℃の温度で、カルシウム塩およびリン酸塩、またはリン酸カルシウム塩で処理する請求項1に記載のヒアルロン酸の精製方法。

【公表番号】特表2008−502344(P2008−502344A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516390(P2007−516390)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001821
【国際公開番号】WO2005/123934
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506419308)ティー アンド ライフ システム コ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】