説明

カルシウム粉体及び骨強化剤

【課題】従来よりも優れた骨強化効果が得られる骨強化剤を提供すること。また、その原料となるカルシウム粉体を提供すること。
【解決手段】 本発明のカルシウム粉体は、粒径が20〜650nmであり、(長径/短径)が1.5以下である粒子からなるを特徴とする。骨強化剤は、カルシウム粉体とビタミンD3とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム粉体及び骨強化剤に係る。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】韓国特許0360303号公報
【0003】
現在骨粗鬆症が問題となっており、その緩和ないし治癒のためにカルシウムの摂取が有効であるとされている。
しかし、カルシウムの摂取を行ったとしても必ずしも骨粗鬆症が十分改善されるわけではない。病院での治療によっても骨密度の向上は1年に1%程度である。
そこで、より改善効率が高まる骨強化剤が望まれる。
【0004】
一方、粉末の微粉化技術として、特許文献1に記載されている機械的手法(ドライプロセス)により微粉化する技術が知られている。
この技術は、ドライプロセスによる微粉化技術であり、20〜900nmの粒子の製造が可能となる。ドライプロセスであるため不純物成分の混入が少なくてすむ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来よりも優れた骨強化効果が得られる骨強化剤を提供することを目的とする。
本発明は、従来よりも優れた骨強化効果が得られる骨強化剤の材料となるカルシウム粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、粒径が20〜650nmであり、(長径/短径)が1.5以下である粒子からなるカルシウム粉体である。
【0007】
請求項2に係る発明は、粒径が20〜300nmである請求項1記載のカルシウム粉体である。
【0008】
請求項3に係る発明は、原材料は蛎殻であることを特徴とする請求項1又は2記載のカルシウム粉体。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項記載のカルシウム粉体とビタミンD3とを含有することを特徴とする骨強化剤である。
【0010】
請求項5に係る発明は、マグネシウムを含有することを特徴とする請求項4記載の骨強化剤である。
【0011】
請求項6に係る発明は、グルコサミン塩酸塩と、コンドロイチン硫酸とをさらに含有することを特徴とする請求項5記載の骨強化剤である。
【0012】
(作用)
以下に本発明の作用を本発明をなすに際して得た知見とともに説明する。
本発明者は、骨強化作用を高めるには、まず、血液中へのカルシウムの吸収効率を高める必要があり、吸収効率はカルシウム粒子の粒径を微細化すれば高まるのではないかと考えた。
そこで、特許文献に記載された技術を用いて、粒径が20〜900nmのカルシウム粉体を作成し、そのカルシウム粉体を用いて骨強化作用を調べた。
【0013】
微細化されたカルシウム粒子を用いた場合にはわずかな骨強化作用の向上は認められたものの大幅な向上は認められなかった。当初の予想に反して、粒径を微細化しただけではカルシウムの吸収効率は高くならなかった。
そこで、カルシウムの吸収促進剤としてビタミンD3を微細化したカルシウム粉体に混合して実験を行った。その結果、カルシウムの吸収効率は高まったが骨密度については期待したほどの向上効果は認められなかった。
【0014】
さらに実験を重ねたところ、20〜900nmの粒径のうち大きな粒径のものを除き、20〜600nmの粒径とし、しかも、(長径)/(短径)=γを1.5以下とすることにより骨密度の向上が達成されることを知見した。なお、(長径/短径)は1.2以下がより好ましい。γを1.5以下とすることによりなぜ、骨密度が向上するのか、その原因は明確ではないが、経口から骨形成にいたるまでの間に、他の物質との反応、あるいはカルシウム自身による凝集が起こりにくくなるためではないかと推測される。
【0015】
また、粒径を20〜300nmの範囲とさらに小さな方に狭めると、より一層骨密度の向上を図ることができる。
骨強化剤は、カルシウム粉体とビタミンD3とを賦形剤により賦形して用いればよい。
賦形剤の組成において、カルシウム粉体は10〜70%、ビタミンD3は0.01〜0.1%、残部賦形剤とすればよい。ビタミンD3を多くしすぎるとカルシウムは活性化しすぎて逆に骨密度向上効果が失われることがある。
【0016】
本発明においては、酸化マグネシウムを含有させることが好ましい。マグネシウムは、心臓や血管の働きを維持し、神経を安定に保つ作用を有するが、骨や歯の形成にも寄与する。含有量は2〜20%が好ましい。
【0017】
本発明においては、グルコサミン塩酸塩を含有させることが好ましい。グルコサミンは、膝やひじなどの軟骨を構成する成分であり、軟骨細胞を形づくる栄養素である。甲殻類の殻から抽出した成分をさらに分解して効率よく吸収できるようにする作用を有する。塩酸塩は硫酸塩に比べて分子量が小さいので効率的な摂取が可能である。グルコサミン塩酸塩は、他の成分の吸収を助けるほか、それ自身が関節炎の治療・予防効果を有している。
グルコサミン塩酸塩の含有量としては、15から40%が好ましい。
【0018】
本発明では、コンドロイチン硫酸を含有させることが好ましい。コンドロイチン硫酸は骨形成成分である。膝や肘などの軟骨を構成する成分でありカルシウムと同時に摂取することにより関節の痛みに対する治癒効果が向上する。
コンドリチン硫酸の含有量としては、3〜25%が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
従来よりも優れた骨強化効果が得られる骨強化剤を提供することができる。
従来よりも優れた骨強化効果が得られる骨強化剤の材料となるカルシウム粉体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施例1]
8週齢のSD rats白ねずみを5匹用意し、卵巣を除去して骨粗鬆症を誘発させた。
この対象に基本食と水は自由に与え、また、補充食として次の条件で骨強化剤を与えた。
【0021】
(組成)
カルシウム 50.000%
(径20〜650nm γ≦1.5 )
ビタミンD3 0.048%
賦形剤(コーンスターチ) 46.962%
流動性付与剤(ステアリン酸カルシウム) 3.000%
(投与方法)
経口投与
骨強化剤投与量: 4(g/day)
投与回数: 1 回/日
投与期間:18週間
【0022】
18週間投与後、大腿骨(Femur)の骨密度(BMD)(g/cm2)の変化を調べた。
骨密度はDXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)装置(アロカ社)を用い大腿骨をSXA(Single Energy X-ray Absorptiometry)法にて測定した。
補充食投与前後で、5匹の平均として骨密度は0.93%増加していた。
【0023】
[比較例1]
本例では、カルシウムとして、ミクロンオーダーのものを使用した。
他の点は、実施例1と同様とした。
本例では、骨密度は0.12%増加していた。
【0024】
[比較例2]
本例では、カルシウムとして、径20〜650nm γ>1.5のものを使用した。
他の点は、実施例1と同様とした。
本例では、骨密度は0.6%増加していた。
【0025】
[実施例2]
本例では、カルシウムとして、径20〜300nm γ≦1.5のものを使用した。
他の点は実施例1と同様とした。
本例では、骨密度は1.21%増加していた。
【0026】
[実施例3]
本例では、骨強化剤として次の組成のものを用いた。
他の点は実施例2と同様とした。
(組成)
カルシウム 50.000%
(径20〜650nm、γ≦1.5)
酸化マガウネシウム 12.315%
ビタミンD3 0.048%
賦形剤(コーンスターチ) 34.647%
流動性付与剤(ステアリン酸カルシウム) 3.000%
本例では、骨密度は1.25%増加していた。
【0027】
[実施例4]
本例では、骨強化剤として次の組成のものを用いた。
他の点は実施例1と同様とした。
(組成)
カルシウム 21.000%
(径20〜650nm、γ≦1.5)
酸化マグネシウム 12.315%
グルコサミン塩酸塩 33.330%
コンドロイチン硫酸 5.000%
キャッツクロウエキス末 10.000%
ビタミンD3 0.042%
賦形剤(馬鈴薯澱粉) 18.838%
流動性付与剤(ステアリン酸カルシウム) 1.000%
本例では、骨密度は1.26%増加していた。
【0028】
[実施例5]
カルシウム 11.696%
(径20〜650nm、γ≦1.5)
酸化マグネシウム 3.704%
グルコサミン塩酸塩 20.000%
コンドロイチン硫酸 3.000%
寒天オリゴ糖 3.000%
ビタミンD3 0.023%
無水クエン酸 8.000%
果汁末 8.0000%
香料 1.5000
甘味料 0.4000%
大豆レスチン粉末 3.000%
トレハロース(吸収促進剤) 10.000%
賦形剤(麦芽糖) 18.677%
賦形剤(結晶セルロース) 7.000%
流動性付与剤(ステアリン酸カルシウム) 1.000%
本例では、骨密度は1.26%増加していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が20〜650nmであり、(長径/短径)が1.5以下である粒子からなるカルシウム粉体。
【請求項2】
粒径が20〜300nmである請求項1記載のカルシウム粉体。
【請求項3】
原材料は蛎殻であることを特徴とする請求項1又は2記載のカルシウム粉体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のカルシウム粉体とビタミンD3とを含有することを特徴とする骨強化剤。
【請求項5】
酸化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項4記載の骨強化剤。
【請求項6】
グルコサミン塩酸塩と、コンドロイチン硫酸とをさらに含有することを特徴とする請求項5記載の骨強化剤。

【公開番号】特開2007−332062(P2007−332062A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164199(P2006−164199)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(506204748)
【Fターム(参考)】