説明

カルバメートの製造法

【課題】 公知のカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)の製造法は種々の問題を抱えている。即ち、原料に関する問題(刺激性又は毒性等の原料の物性、塩基の使用)や反応条件に関する問題(高温又は高圧下での反応)などを有している。また、アミンの反応性に関する問題、副生物に関する問題、そして目的物の分離に関する問題を有している。触媒や反応速度に関する問題を有し、腐食に関する問題も有している。本発明はこのような問題のないカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)の製造法を提供することを課題とする。即ち、本発明は、ジアリールカーボネートとN位に少なくとも1つの水素原子をもつアミノ基を二つ以上有するアミン類(特に芳香族ポリアミン又は立体的にかさ高いポリアミン)とからカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法において、該カルバメートを、温和な条件下に、副反応を抑えながら、高い反応速度及び高い生産性で製造することを課題とする。また、本発明は、生成したカルバメートを容易に分離して、目的のカルバメートを効率よく得ることも課題とする。
【解決手段】 本発明の課題は、ジアリールカーボネートと、N位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類とを、脂肪族カルボン酸、炭素環式芳香族カルボン酸、又は複素環カルボン酸の存在下、10〜150℃で反応させることを特徴とするカルバメートの製造法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリールカーボネートとN位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類とからカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法に関する。カルバメートは、農薬等の原料、ジイソシアナートの原料、ポリウレタンの製造原料として極めて有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
カルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法としては、(1)イソシアナート(特にポリイソシアナート)とアルコールを反応させる方法、(2)クロロギ酸エステルとアミン(特にポリアミン)を塩基存在下に反応させる方法、(3)ホスゲンとアルコール及びアミン(特にポリアミン)を反応させる方法、(4)尿素とアルコールを反応させる方法が一般的に知られている。しかしながら、これらの方法は、(1)の方法では、イソシアナート(ポリイソシアナート)が刺激性でその取扱が煩雑であることや、更にその原料が有毒なホスゲンであること、(2)の方法では、反応に等モル以上の塩基を使用することや、更にクロロギ酸エステルの刺激性が強く、その原料が有毒なホスゲンであること、(3)の方法では、ホスゲンの毒性が極めて高いこと及び反応に塩基を使用すること、(4)の方法では、高温又は高圧で反応を行う必要があることなど、それぞれ問題を有している。
【0003】
一方、ジアリールカーボネートとN位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類からカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法としては、(5)ジアリールカーボネートと芳香族ポリアミンを2−ヒドロキシピリジン等の複素環式単環第3級アミンの存在下で反応させる方法(例えば、特許文献1、非特許文献1〜2参照)、(6)ジアリールカーボネートと一級又は二級ポリアミンをルイス酸触媒の存在下で反応させる方法(例えば、特許文献2参照)、(7)ジアリールカーボネートとアルキルポリアミンを反応させる方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの方法にもそれぞれ問題がある。即ち、これらの方法では、アミノ基を二つ以上有するポリアミンを用いるために二つ以上のステップを経て反応が進行する。このため、モノアミン類からのカルバメートの製造に比べ、反応時間が長くなり、その間に副生物(尿素誘導体等)が生成しやすくなるという問題がある。また、反応性を高めるために反応温度を上げると、尿素誘導体や、カルバメートの分解によるアロファネート、ビウレット及び三量体などが生成して、目的物の収率が低下するという問題もある。更に、芳香族ポリアミンや立体的にかさ高いポリアミンでは反応性が著しく低下するという問題がある。このように目的物の収率が低く副生物も生成するため、反応生成物からの目的物の分離が非常に困難であるという問題が必然的に生じてくる。その他に、(5)の方法では、高価な触媒が反応基質に対して等モル以上必要で、反応速度も遅く、(6)の方法では、ルイス酸触媒によって反応容器の腐食が起こるという問題がある。
【特許文献1】特開昭52−136147号公報
【非特許文献1】J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,17,835(1979)
【非特許文献2】Int.Prog.Urethans,2,61(1980)〕
【特許文献2】特開昭47−11562号公報
【特許文献3】特開平1−230550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、公知のカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)の製造法は種々の問題を抱えている。即ち、(1)〜(4)の方法は、原料に関する問題(刺激性又は毒性等の原料の物性、塩基の使用)や反応条件に関する問題(高温又は高圧下での反応)などを有している。また、(5)〜(7)の方法は、アミンの反応性に関する問題、副生物に関する問題、そして目的物の分離に関する問題を有している。(5)の方法は、触媒や反応速度に関する問題を有し、(6)の方法は、腐食に関する問題も有している。本発明はこのような問題のないカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)の製造法を提供することを課題とする。即ち、本発明は、ジアリールカーボネートとN位に少なくとも1つの水素原子をもつアミノ基を二つ以上有するアミン類(特に芳香族ポリアミン又は立体的にかさ高いポリアミン)とからカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法において、該カルバメートを、温和な条件下に、副反応を抑えながら、高い反応速度及び高い生産性で製造することを課題とする。また、本発明は、生成したカルバメートを容易に分離して、目的のカルバメートを効率よく得ることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ジアリールカーボネートと、N位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類とを、脂肪族カルボン酸、炭素環式芳香族カルボン酸、又は複素環カルボン酸の存在下、10〜150℃で反応させることを特徴とするカルバメートの製造法
【発明の効果】
【0007】
本発明により、公知のカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)の製造法が有している、原料に関する問題(刺激性又は毒性等の原料の物性、塩基の使用)、反応条件に関する問題(高温又は高圧下での反応)や、更にアミンの反応性に関する問題、副生物に関する問題、触媒に関する問題、腐食に関する問題などを解決してカルバメートを製造することができる。即ち、本発明により、ジアリールカーボネートとN位に少なくとも1つの水素原子をもつアミノ基を二つ以上有するアミン類(特に芳香族ポリアミン又は立体的にかさ高いポリアミン)からカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法において、該カルバメートを、温和な条件下に、副反応を抑えながら、高い反応速度及び高い生産性で製造することができる。また、本発明により、生成したカルバメートを容易に分離精製して、目的のカルバメートを効率よく得ることもできるる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ジアリールカーボネートとしては、置換基を有していてもよい、同一のアリール基又は異なるアリール基を有するジアリールカーボネートが使用される。この置換基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数6〜14のアリール基(フェニル基、トリル基等)、炭素数1〜12のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、炭素数6〜14のアリールオキシ基(フェノキシ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ニトロ基などが挙げられる。
【0009】
前記の置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、、ナフチル基、アントリル基や、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基や、ビフェニリル基や、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ブトキシフェニル基や、フェノキシフェニル基や、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基や、ニトロフェニル基、ジニトロフェニル基などが挙げられる。なお、これらのアリール基はo−、m−、p−の各異性体を含み、アリール基に結合している置換基はn−、i−、t−等の各異性体を含む。
【0010】
前記のジアリールカーボネートとしては、例えば、以下のような化合物が挙げられる無置換のアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート、ジ−1−ナフチルカーボネート、ジ−2−ナフチルカーボネート、ジ−9−アントリルカーボネートなどが挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ビス(2−トリル)カーボネート、ビス(3−トリル)カーボネート、ビス(4−トリル)カーボネート、ビス〔4−(tert−ブチル)フェニル〕カーボネートなどが挙げられる。
【0011】
炭素数6〜14のアリール基で置換されたアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ビス(4−ビフェニリルフェニル)カーボネートなどが挙げられ、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されたアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ビス(2−メトキシフェニル)カーボネート、ビス(3−メトキシフェニル)カーボネート、ビス(4−メトキシフェニル)カーボネート、ビス(3−ブトキシフェニル)カーボネート、ビス(4−ブトキシフェニル)カーボネート、ビス(3,5−ジメトキシフェニル)カーボネートなどが挙げられ、炭素数6〜14のアリールオキシ基で置換されたアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ビス(4−フェノキシフェニル)カーボネートなどが挙げられる。
【0012】
ハロゲン原子で置換されたアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(3−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,6−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(4−ブロモフェニル)カーボネートなどが挙げられる。
【0013】
また、ニトロ基で置換されたアリール基を有するジアリールカーボネートとしては、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(3−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジニトロフェニル)カーボネート等が挙げられる。
【0014】
ジアリールカーボネートの中では、同一のアリール基を有するカーボネートが好適で、その中でも、ジフェニルカーボネート、ビス(2−トリル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネートが好適である。
【0015】
N位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類としては、一般式(I)、(II)、(III) で示される化合物のいずれかが好適に使用される。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1 、R3 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数7〜14のアラルキル基を表し、Ar1 、Ar2 は炭素数6〜12のアリーレン基を表し、R2 は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜4のアルケニレン基、炭素数7〜13のアラルキレン基、又は炭素数6〜12のアリーレン基を表し、X、Zは炭素数1〜4のアルキレン基、−NH−基、−O−基、−S−基、−SS−基、−SO2 −基、−CO−基から選ばれる二価の基を表す。また、x、y、zは0又は1を表す。)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R4 、R6 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜14のアラルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を表し、R5 は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数8〜16のアラルキレン基、又は炭素数6〜16のアリーレン基を表す。但し、R5 がアリーレン基のとき、2つのアミノ基は同一の芳香環上に存在し、R4 、R6 はアルキル基又はアラルキル基を表す。)
【0020】
【化3】

【0021】
一般式(I)において、R1 、R3 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等)、又は炭素数7〜14のアラルキル基(ベンジル基等)を表し、Ar1 、Ar2 は炭素数6〜12のアリーレン基(フェニレン基、ナフチレン基等)を表し、R2 は炭素数1〜12のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜4のアルケニレン基(ビニレン基等)、炭素数7〜13のアラルキレン基(キシリレン基、フェネチレン基等)、又は炭素数6〜12のアリーレン基(フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等)を表す。また、X、Zは炭素数1〜4のアルキレン基、−NH−基、−O−基、−S−基、−SS−基、−SO2 −基、−CO−基から選ばれる二価の基を表し、x、y、zは0又は1を表す。
【0022】
R1 、R3 、Ar1 、Ar2 は各種異性体を含み、更に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を置換基として適宜有していてもよい。また、Ar1、Ar2 は、単結合、又は炭素数1〜2のアルキレン基、−NH−基、−O−基、−S−基、−SO2 −基、−CO−基、−CONH−基から選ばれる二価の基で架橋されていてもよい。
【0023】
一般式(II)において、R4 、R6 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数7〜14のアラルキル基(ベンジル基等)、又は炭素数6〜14のアリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基等)を表し、R5 は炭素数1〜12のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数8〜16のアラルキレン基(キシリレン基、フェネチレン基等)、又は炭素数6〜16のアリーレン基(フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等)を表す。但し、R5 がアリーレン基のとき、2つのアミノ基は同一の芳香環上に存在し、R4 、R6 はアルキル基又はアラルキル基を表す。
【0024】
R4 、R5 、R6 は各種異性体を含み、更に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を置換基として適宜有していてもよい。
【0025】
また、一般式(III) で示されるアミン類(ピペラジン類)は、ピペラジン環の炭素原子上に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を置換基として適宜有していてもよい。
【0026】
一般式(I)で示されるアミン類としては、例えば、ベンジジン、3−メチルベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、3,3'−ジエチルベンジジン、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、3,3'−ジクロロベンジジン、2,2',5,5'−テトラクロロベンジジン、4,4'−ジアミノオクタフルオロベンジジン、2−ニトロベンジジン、ナフチジン、3,3'−ジメチルナフチジン等のAr1とAr2 が単結合を介して結合しているもの(x,y,z=0)や、
【0027】
3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−2,2'−ジメチルジフェニルメタン、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'−ジアミノジフェニル−1,1−シクロヘキサン、4,4'−ビスメチルアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジフェニル−1,1−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−ジアミノトリフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメトキシトリフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジクロロジフェニルメタン、4,4'−エチレンジアニリン、2,2'−エチレンジアニリン、4,4'−ジアミノ−2,2'−ジメチルジベンジル、2,2'−ジアミノ−4,4'−ジフルオロジベンジル等のAr1 とAr2 がアルキレン基又はアラルキレン基を介して結合しているものや、
【0028】
4,4'−ジアミノスチルベン等のAr1 とAr2 がアルケニレン基を介して結合しているものや、4,4'−ジアミノ−4−ターフェニル等のAr1 とAr2 がアリーレン基を介して接結合しているものや、
【0029】
4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノ−2,2'−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、3,3'−(エチレンジオキシ)ジアニリン、4,4'−(トリメチレンジオキシ)ジアニリン、3,3'−(テトラメチレンジオキシ)ジアニリン、3,3'−(ペンタメチレンジオキシ)ジアニリン等のX及び/又はZが−O−基であるもの(y=0)や、
【0030】
4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2'−ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルジスルフィド、2,2'−ジアミノ−4,4'−ジクロロジフェニルジスルフィド、2,2'−ジチオビス(1−ナフチルアミン)、3,3'−ビス(アミノフェニル)スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、o−トリジンスルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン等のAr1 とAr2 が−S−基、−SS−基、又は−SO2 −基を介して結合しているや、
【0031】
3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン等のAr1 とAr2 が−CO−基を介して結合しているものや、4,4'−ジアミノベンズアニリド等のAr1 とAr2 が−CO−NH−基を介して結合しているものや、
【0032】
o−トリジンスルホン、2,7−ジアミノフルオレン、3,7−ジアミノ−2−メトキシフルオレン、3,8−ジアミノ−6(5H)−フェナントリジン等のAr1 とAr2 が単結合を介して結合し、同時に前記のように架橋しているものが挙げられる。また、アニリン類とホルムアルデヒドを酸水溶液存在下で反応させて得られるポリメチレンポリフェニレンポリアミン等のポリアミン類も挙げられる。
【0033】
一般式(II)で示されるアミン類としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、4,6−ジアミノ−2,5−ジエチルトルエン、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジアミン、5−トリフルオロメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノ−4−ニトロトルエン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、2−エトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−エトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、2−メトキシ−5−ベンジル−1,4−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、5−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、5−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、クロロ−1,4−フェニレンジアミン、テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、3−(メチルアミノ)アニリン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−1,4−フェニレンジアミン、N,N'−ジヘキシル−1,4−フェニレンジアミン、N,N'−ジベンジル−1,4−フェニレンジアミン、シアノ−1,4−フェニレンジアミン等のR5 がアリーレン基であるものや、
【0034】
m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、α,α’−ビス(4−ヨードアニリノ)−p−キシレン、α,α’−ビス(4−エチルアニリノ)−p−キシレン、2,3,5,6−テトラクロロ−p−キシリレンジアミン、2,4,5,6−テトラクロロ−m−キシリレンジアミン等のR5 がアラルキレン基であるものや、
【0035】
N,N'−ビス(フェニルメチル)−1,6−ヘキサンジアミン、N,N'−ジフェニル−1,6−ヘキサンジアミン等のR5 がアルキレン基であるものが挙げられる。
【0036】
一般式(III) で示されるアミン類としては、例えば、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5,6−テトラメチルピペラジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン等のピペラジン類が挙げられる。
【0037】
本発明では、触媒としてプロトン酸を存在させて、ジアリールカーボネートと前記アミン類との反応が行われる。プロトン酸としては、硝酸、硫酸、リン酸、硫酸水素カリウムなどの無機酸や、カルボン酸、有機スルホン酸、有機リン酸等の有機酸が使用されるが、中でも有機酸が好適に使用される。
【0038】
有機酸としては、有機スルホン酸、有機リン酸、カルボン酸が使用される。有機酸の中では、カルボン酸、特に脂肪族カルボン酸、炭素環芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸が好ましい。有機スルホン酸としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の炭素数1〜12の有機スルホン酸が挙げられ、有機リン酸としては、ジフェニルホスフィン酸、リン酸ジフェニルエステル等の炭素数1〜16の有機リン酸が挙げられる。
【0039】
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバリン酸、トリエチル酢酸、2,2−ジメチルブタン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、デカリンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸等の炭素数1〜16の脂肪族カルボン酸、安息香酸、フルオロ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トルイル酸、アニス酸、サリチル酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の炭素数7〜18の炭素環芳香族カルボン酸、フランカルボン酸、チオンフェンカルボン酸、ピリジンカルボン酸、ピロールカルボン酸等の炭素数5〜16の複素環カルボン酸などが挙げられる。これらの有機酸は各種構造異性体を含み、置換基を有していてもよい。
【0040】
カルボン酸の中では、炭素数4〜16の脂肪族カルボン酸、炭素数7〜18の炭素環芳香族カルボン酸、炭素数5〜16の複素環カルボン酸が特に好ましい。また、炭素数4〜16の脂肪族カルボン酸の中では、カルボキシル基のα位の炭素が二級又は三級であるもの、例えば、イソ酪酸、ピバリン酸、トリエチル酢酸、2,2−ジメチルブタン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、デカリンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸等が更に好ましい。
【0041】
ジアリールカーボネートと前記アミン類との反応は、例えば、反応器に、ジアリールカーボネート、前記アミン類及びプロトン酸を仕込み、更に必要に応じて反応溶媒を添加して、非常に温和な条件で行われる。反応温度は原料化合物や反応溶媒により異なるが、0〜200℃、特に10℃〜150℃であることが好ましい。反応圧力は常圧、加圧、減圧のいずれの条件でもよく、特に制限されない。なお、反応は攪拌しながら行うことが好ましいが、特に制限されるものではない。反応溶媒は、特に反応液全体が固化するような場合などに操作性を好くするために使用することが好ましい。
【0042】
前記アミン類の仕込み量は、ジアリールカーボネート1モルに対して0.5モル以下、特に0.01〜0.5モル、更には0.05〜0.5モルであることが好ましい。プロトン酸の仕込み量は、前記アミン類1モルに対して0.001〜5モル、特に0.001〜2モル、更には0.02〜2モルであることが好ましいが、前記アミン類1モルに対して0.02〜1.5モルであることが最も好ましい。なお、プロトン酸は単独で使用しても複数で使用してもよく、前記アミン類との塩の形態で使用しても差し支えない。また、反応溶媒は、前記アミン類1重量部に対して0〜50重両部、特に0〜20重量部、更には0〜10重量部使用されることが好ましい。
【0043】
反応溶媒は、原料のジアリールカーボネートや前記アミン類、生成物のカルバメート、及びプロトン酸に対して不活性であるか又は反応性の低いものであれば、特に制限されるものではなく、単独で使用しても複数で使用してもよい。
【0044】
反応溶媒としては、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、リグロイン、ミネラルオイル、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、デカリン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、メチルナフタレン、クロロナフタレン等)、フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、カテコール、ナフトール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル等)、脂肪族ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)や、N−メチルピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどが使用される。
【0045】
反応後、例えば、必要に応じて溶媒を加えた反応液をアルカリで洗浄してプロトン酸や副生フェノール類を除去した後、その反応液を濃縮して残存する副生フェノール類や反応溶媒等を除去することによって、生成したカルバメートが分離される。得られたカルバメートは、再結晶、蒸留、昇華又はカラムクロマトグラフィー等により更に精製される。
【0046】
生成物のカルバメートが反応溶媒に溶けにくく、かつジアリールカーボネート、アミン類、プロトン酸、副生フェノール類が反応溶媒に溶けやすい場合は、反応後に反応液を濾過又は遠心分離するのみで、高純度のカルバメートを得ることができる。この場合、濾過又は遠心分離後の母液は、必要に応じて副生フェノール類や反応溶媒を除いて、必要量のジアリールカーボネート、アミン類、プロトン酸を加えれば、反応に再使用することができる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、収率(モル%)はアミン類に対して求めた。
【0048】
実施例1
5ml容ガラス製反応器に、ジフェニルカーボネート(6mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(2mmol)、ピバリン酸(0.4mmol)及びフェノール(1ml)を加えた後、常圧下、90℃で6時間反応させた。反応後、高速液体クロマトグラフィーにより反応液を分析した結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率86.3%で生成し、N−〔4−4'−ジアミノベンジル)フェニル〕カルバミン酸フェニルが収率11.7%で生成していた。
【0049】
比較例1
ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率4.7%で生成し、N−〔4−4'−ジアミノベンジル)フェニル〕カルバミン酸フェニルが収率27.9%で生成していた。
【0050】
実施例2
4,4'−ジアミノジフェニルメタンをo−トリジン(2mmol)に代え、反応時間を8時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。但し、フェノールは加えることなく反応を行った。その結果、〔3,3'−ジメチル(1,1’−ビフェニル)−4,4'−ジイル〕ビスカルバミン酸ジフェニルが収率78.7%で生成し、N−〔4−(4'−アミノ−3'−メチルフェニル)−2−メチルフェニル〕カルバミン酸フェニルが収率20.8%で生成していた。
【0051】
比較例2
ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例2と同様に反応と分析を行った。その結果、〔3,3'−ジメチル(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジイル〕ビスカルバミン酸ジフェニルが収率0.4%で生成し、N−4−〔(4'−アミノ−3'−メチル)フェニル〕−2−トルイルカルバミン酸フェニルが収率0.7%で生成していた。
【0052】
実施例3
4,4'−ジアミノジフェニルメタンを2,4−ジアミノトルエン(2mmol)に代え、フェノールをトルエン(1ml)に代え、反応時間を16時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果、(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率71.3%で生成し、N−(3−アミノ−4−メチルフェニル)カルバミン酸フェニルが収率21.3%で生成していた。
【0053】
比較例3ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例3と同様に反応と分析を行った。その結果、(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率0.4%で生成し、N−(3−アミノ−4−メチルフェニル)カルバミン酸フェニルが収率20.7%で生成していた。
【0054】
実施例4
5ml容ガラス製反応器を20ml容ガラス製反応器に代え、4,4'−ジアミノジフェニルメタンをm−キシリレンジアミン(2mmol)に代え、フェノールを塩化メチレン(10ml)に代え、反応温度を25℃に、反応時間を1.5時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果、〔1,3−フェニレン(ビスメチレン)〕ビスカルバミン酸ジフェニルが収率90.8%で生成していた。
【0055】
比較例4
ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例3と同様に反応と分析を行った。その結果、〔1,3−フェニレン(ビスメチレン)〕ビスカルバミン酸ジフェニルが収率65.4%で生成していた。
【0056】
実施例5
4,4'−ジアミノジフェニルメタンをp−フェニレンジアミン(2mmol)に代え、フェノールをクロロベンゼン(1ml)に代え、反応時間を7時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果、1,4−フェニレンビスカルバミン酸ジフェニルが収率89.7%で生成し、N−(4−アミノフェニル)カルバミン酸フェニルが収率7.4%で生成していた。
【0057】
比較例5
ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例5と同様に反応と分析を行った。その結果、1,4−フェニレンビスカルバミン酸ジフェニルが収率4.4%で生成し、N−(4−アミノフェニル)カルバミン酸フェニルが収率60.0%で生成していた。
【0058】
実施例6
4,4'−ジアミノジフェニルメタンを4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(2mmol)に代え、フェノールをトルエン(1ml)に代え、反応時間を9時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果、(オキシジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率97.3%で生成し、N−〔4−(4'−アミノフェノキシ)フェニル〕カルバミン酸フェニルが収率2.1%で生成していた。
【0059】
比較例6
ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例6と同様に反応と分析を行った。その結果、(オキシジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率0.1%で生成し、N−〔4−(4'−アミノフェノキシ)フェニル〕カルバミン酸フェニルが収率1.9%で生成していた。
【0060】
実施例7
5ml容ガラス製反応器を20ml容ガラス製反応器に代え、4,4'−ジアミノジフェニルメタンをピペラジン無水物(2mmol)に代え、フェノールを塩化メチレン(10ml)に代え、反応温度を25℃に、反応時間を3時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果、N,N'−ピペラジンビスフェニルカルボキシレートが収率96.4%で生成していた。
【0061】
比較例7
ピバリン酸を加えなかったほかは、実施例7と同様に反応と分析を行った。その結果、N,N'−ピペラジンビスフェニルカルボキシレートが収率84.3%で生成していた。実施例1〜7、比較例1〜7の結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例8
20ml容ガラス製反応器に、ジフェニルカーボネート(24mmol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(4mmol)、ピバリン酸(0.8mmol)及びクロロベンゼン(2ml)を加えた後、常圧下、90℃で6時間攪拌した。反応後、反応液を室温まで冷却して析出した固体を濾過分離し、更に残渣にクロロベンゼン(3ml)を加えて析出した固体を濾過分離した。得られた固体を減圧乾燥して、高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、純度99%以上の(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率91.2%で得られていた。
【0064】
実施例9
4,4'−ジアミノジフェニルメタンをo−トリジン(4mmol)に代え、クロロベンゼンをトルエン(2ml)に代え、反応時間を24時間に変えたほかは実施例8と同様に反応を行った。反応後、反応液を室温まで冷却して析出した固体を濾過分離し、更に残渣にトルエン(3ml)を加えて析出した固体を濾過分離した。得られた固体を減圧乾燥して、高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、純度99%以上の〔3,3'−ジメチル(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジイル〕ビスカルバミン酸ジフェニルが収率91.1%で得られていた。
【0065】
実施例10
4,4'−ジアミノジフェニルメタンを1,5−ナフタレンジアミン(4mmol)に代え、クロロベンゼン使用量を4mlに、反応温度を130℃に、反応時間を13時間にそれぞれ変えたほかは実施例8と同様に反応と生成物の分離を行った。その結果、1,5−ナフタレンビスカルバミン酸ジフェニルが収率71.5%で得られていた。
【0066】
実施例11
50ml容ガラス製反応器に、ジフェニルカーボネート(24mmol)、m−キシリレンジアミン(4mmol)、ピバリン酸(0.8mmol)及び塩化メチレン(10ml)を加えた後、常圧下、25℃で7時間攪拌した。反応後、析出した固体を濾過分離し、次いでその固体を塩化メチレンで洗浄してアセトニトリルから再結晶した。得られた固体を減圧乾燥して、高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、純度98%以上の〔1,3−フェニレン(ビスメチレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが収率73.1%で得られていた。実施例8〜11の結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例12〜16
フェノールを表3記載の溶媒(1ml)に代え、反応時間を表3記載のように変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。その結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例17
5ml容ガラス製反応器に、ジフェニルカーボネート(12mmol)、m−フェニレンジアミン(2mmol)、及び酢酸(0.4mmol)を加えた後、常圧下、90℃で6時間反応させた。反応後、高速液体クロマトグラフィーにより反応液を分析した結果、1,3−フェニレンビスカルバミン酸ジフェニルが収率88.8%で生成し、N−(3−アミノフェニル)カルバミン酸フェニルが収率10.6%で生成していた。
【0071】
実施例18〜21
酢酸を表3記載のプロトン酸(0.4mmol)に代えたほかは、実施例17と同様に反応と分析を行った。その結果を表4に示す。
【0072】
比較例8
酢酸を加えなかったほかは、実施例17と同様に反応と分析を行った。その結果、1,3−フェニレンビスカルバミン酸ジフェニルが収率2.1%で生成し、N−(3−アミノフェニル)カルバミン酸フェニルが収率5.9%で生成していた。実施例17〜21、比較例8の結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
実施例22
50ml容ガラス製反応器に、ジフェニルカーボネート(60mmol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(10mmol)、安息香酸(2mmol)及びクロロベンゼン(12.75ml)を加えた後、常圧下、80℃で16時間攪拌した。反応後、高速液体クロマトグラフィーにより反応液を分析した結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが9.7mmol、N−〔4−(4'−ジアミノベンジル)フェニル〕カルバミン酸フェニルが0.2mmol生成していた。次いで、反応液を室温まで冷却して析出した固体を濾過分離し、更に残渣にクロロベンゼン(3ml)を加えて析出した固体を濾過分離した。得られた固体を減圧乾燥して、高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、純度99%以上の(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが9.3mmol得られた。
【0075】
実施例23
実施例22で固体を濾過分離した後の濾液を5重量%NaOH水溶液(100ml)で洗浄し、安息香酸とフェノールを分離した。次いで、この液に、ジフェニルカーボネート(18.6mmol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(9.3mmol)及び安息香酸(2mmol)を加え、クロロベンゼンが実施例22と同量(12.75ml)になるまで濃縮した後、実施例22と同様に反応と分析を行った。その結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが9.5mmol、N−〔4−(4'−アミノベンジル)フェニル〕カルバミン酸フェニルが0.3mmol生成していた。引き続き、実施例22と同様の操作を行った結果、純度99%以上の(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが9.0mmol得られた。
【0076】
実施例24
実施例23で固体を濾過分離した後の濾液を5重量%NaOH水溶液(100ml)で洗浄し、安息香酸とフェノールを分離した。次いで、この液に、ジフェニルカーボネート(17.9mmol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(9.0mmol)及び安息香酸(2mmol)を加え、クロロベンゼンが実施例22と同量(12.75ml)になるまで濃縮した後、実施例22と同様に反応と分析を行った。その結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが9.5mmol、N−〔4−(4'−アミノベンジル)フェニル〕カルバミン酸フェニルが0.2mmol生成していた。引き続き、実施例22と同様の操作を行った結果、純度99%以上の(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが8.8mmol得られた。
【0077】
実施例25
500ml容ガラス製反応器に、ジフェニルカーボネート(0.9mol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(0.15mol)、ピバリン酸(30mmol)及びトルエン(150ml)を加えた後、常圧下、80℃で16時間攪拌した。反応後、高速液体クロマトグラフィーにより反応液を分析した結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが0.143mol、N−〔4−4'−ジアミノベンジル〕フェニルカルバミン酸フェニルが0.003mol生成していた。次いで、反応液を室温まで冷却して析出した固体を濾過分離し、更に残渣にトルエン(50ml)を加えて析出した固体を濾過分離した。得られた固体を減圧乾燥して、高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、純度99%以上の(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが0.141mol得られた。
【0078】
実施例26
実施例25で固体を濾過分離した後の濾液を減圧濃縮して、トルエン、フェノール及びピバリン酸を除去した。次いで、この液に、ジフェニルカーボネート(0.302mol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(0.141mol)、ピバリン酸(30mmol)及びトルエン(150ml)を加えた後、実施例25と同様に反応と分析を行った。その結果、(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが0.140mol、N−〔4−(4'−ジアミノベンジル)フェニル〕カルバミン酸フェニルが0.003mol生成していた。引き続き、実施例25と同様の操作を行った結果、純度99%以上の(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスカルバミン酸ジフェニルが0.138mol得られた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ジアリールカーボネートとN位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類とからカルバメート(特にビスカルバメート等のポリカルバメート)を製造する方法に関する。カルバメートは、農薬等の原料、ジイソシアナートの原料、ポリウレタンの製造原料として極めて有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアリールカーボネートと、N位に少なくとも1個の水素原子をもつアミノ基を2個以上有するアミン類とを、脂肪族カルボン酸、炭素環式芳香族カルボン酸、又は複素環カルボン酸の存在下、10〜150℃で反応させることを特徴とするカルバメートの製造法。
【請求項2】
請求項1記載のカルバメートが、ビスカルバメート、又はビスカルバメート及びモノカルバメートの混合物である請求項1記載のカルバメートの製造法。
【請求項3】
ビスカルバメート、又はビスカルバメート及びモノカルバメートの混合物が、アミン類に対して90.8モル%以上、99.7モル%以下生成する請求項1又は2記載のカルバメートの製造法。
【請求項4】
アミン類が一般式(I)、(II)、(III) で示される化合物のいずれかである請求項1記載のカルバメートの製造法。
【化1】

(式中、R1、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数7〜14のアラルキル基を表し、Ar1、Ar2は炭素数6〜12のアリーレン基を表し、R2は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜4のアルケニレン基、炭素数7〜13のアラルキレン基、又は炭素数6〜12のアリーレン基を表し、X、Zは炭素数1〜4のアルキレン基、−NH−基、−O−基、−S−基、−SS−基、−SO2−基、−CO−基から選ばれる二価の基を表す。また、x、y、zは0又は1を表す。)
【化2】

(式中、R4、R6は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜14のアラルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を表し、R5は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数8〜16のアラルキレン基、又は炭素数6〜16のアリーレン基を表す。但し、R5がアリーレン基のとき、2つのアミノ基は同一の芳香環上に存在し、R4、R6はアルキル基又はアラルキル基を表す。)
【化3】


【公開番号】特開2007−224046(P2007−224046A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136655(P2007−136655)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【分割の表示】特願平9−129607の分割
【原出願日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】