説明

カルボナーラ用レトルトソース

【課題】トルト処理されているにも拘らず、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度に含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持されたカルボナーラ用レトルトソースを提供する。
【解決手段】具材を除くソース部全体に対し、卵黄を生卵黄換算で1.0%以上、チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上含有したカルボナーラ用レトルトソースであって、キサンタンガムを含有し、ソース部の粘度が品温60℃において3.5Pa・s以下であるカルボナーラ用レトルトソース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレトルト処理されているにも拘らず、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度に含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持されたカルボナーラ用レトルトソースに関する。
【背景技術】
【0002】
カルボナーラは、他のパスタ料理と異なり、加熱凝固性を有する卵黄を含有したソースを用いることを特徴とする。そのために、家庭でカルボナーラを料理するときは、ソース中の卵黄が煮えて状態がボソボソとならないように、例えば、卵黄及びチーズ、必要に応じ生クリーム等の主な材料を温めることなく単に混合した比較的低粘度のソースを用い、茹でたパスタにソースを素早く和えて料理する方法等が採られている。
【0003】
一方、パスタソースに関し、長期保存が可能で、湯せんあるいは電子レンジで加熱するだけで簡単に喫食可能となるレトルトパウチや缶等の耐熱性容器に充填されたレトルトパスタソースが市販されいる。このレトルトパスタソースは、長期保存性を付与するために、通常、ソースの中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する又はこれと同等以上の効力を有する条件で加熱殺菌処理する、いわゆるレトルト処理が施されている。しかしながら、前記レトルト処理の加熱条件は、料理の煮込み処理等と比較し非常に過激に熱がかかることから、家庭で料理する上述のようなカルボナーラ用ソースを単にレトルトパスタソースとして応用した場合、ソース中の卵黄がレトルト処理中に凝固しソース全体がボソボソとした状態となり、滑らかな状態を維持したソースが得られないという不都合があった。
【0004】
そのため、従来より、このような課題を解決すべく種々な改良法が提案されている。例えば、特許第3139973号公報(特許文献1)には、糖アルコールを含有させる、あるいは更にリゾレシチン等の乳化剤を含有させることにより、滑らかで褐変が少ないカルボナーラ用レトルトソースを得ることが開示されている。また、特開平10−191936号公報(特許文献2)には、卵黄に澱粉及び水を加えて得た懸濁液を加熱して凝固せしめた後、微細化処理を施した卵黄含有食品原料を用いることにより、状態が滑らかなカルボナーラ用レトルトソースを得ることが開示されている。
【0005】
しかしながら、上述したいずれの方法により得られるカルボナーラ用レトルトソースも、ある程度は滑らかな状態が維持されているものの依然として満足できるほど充分に滑らかな状態が維持されているとは言い難く、また、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度、具体的には1.0%以上含有させた場合、ソース全体が高粘度を示すことから、茹でたパスタと和え難いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特許第3139973号公報
【特許文献2】特開平10−191936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的はレトルト処理されているにも拘らず、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度に含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持されたカルボナーラ用レトルトソースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく使用原料及び各工程等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、耐熱性容器に充填する前のカルボナーラ用ソースの製造において、カルボナーラ用ソースの原料である卵黄とチーズを単に混合するのではなく、まずチーズと特定の乳化剤を水系媒体中で均質化処理した後に、当該均質化物と卵黄を混合すること、及びカルボナーラ用ソースに特定のガム質であるキサンタンガムを含有させたところ、意外にも卵黄及びナチュラルチーズを高濃度に含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持されたカルボナーラ用レトルトソースが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)具材を除くソース部全体に対し、卵黄を生卵黄換算で1.0%以上、チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上含有したカルボナーラ用レトルトソースであって、キサンタンガムを含有し、ソース部の粘度が品温60℃において3.5Pa・s以下であることを特徴とするカルボナーラ用レトルトソース、
(2)リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する(1)記載のカルボナーラ用レトルトソース
(3)キサンタンガムを、具材を除くソース部全体に対し、0.01〜0.2%含有する(1)又は(2)記載のカルボナーラ用レトルトソース
(4)リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを、チーズ中のナチュラルチーズ100部に対し、0.5部以上含有する(1)乃至(3)記載のカルボナーラ用レトルトソース
)キサンタンガムを含有したカルボナーラ用レトルトソースであって、チーズと、リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとを水系媒体中で均質化処理した後、当該均質化物と卵黄を混合することを特徴とするカルボナーラ用レトルトソースの製造方法、
)チーズと、リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとの均質化処理を50℃以上で行なう()のカルボナーラ用レトルトソースの製造方法、
)チーズ中のナチュラルチーズ100部に対し、リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステル0.5部以上を水系媒体中で均質化処理する()又は()のカルボナーラ用レトルトソースの製造方法、
)具材を除くソース部全体に対し、キサンタンガムを0.01〜0.2%含有する()乃至()のいずれかに記載のカルボナーラ用レトルトソースの製造方法、
)具材を除くソース部全体に対し、卵黄を生卵黄換算で1.0%以上、チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上含有する()乃至()のいずれかに記載のカルボナーラ用レトルトソースの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカルボナーラ用レトルトソースの製造方法はレトルト処理されているにも拘らず、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度、具体的には、具材を除くソース部全体に対し、卵黄を生卵黄換算で1.0%以上、チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持された好ましいレトルトソースを得ることを可能とならしめる。したがって、茹でたパスタと非常に和え易く、また卵黄及びナチュラルチーズを高濃度含有させた場合は、カルボナーラ用ソースとして濃厚な食味を有し大変好ましいソースとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0012】
本発明は、従来のカルボナーラ用レトルトソースと同様、卵黄及びチーズ等、カルボナーラ用レトルトソースで一般的に使用されている原料を含有したカルボナーラ用ソースを耐熱性容器、例えば、缶、レトルトパウチ、好ましくはガスバリア層を有した耐熱性パウチ、さらに自立性を有したこれらのスタンディングパウチ等に充填密封し、ソースの中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する又はこれと同等以上の効力を有する条件で加熱殺菌処理、いわゆるレトルト処理したものである。そして、本発明は、耐熱性容器に充填する前のカルボナーラ用ソースの製造において、まずチーズと特定の乳化剤であるモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理した後に、当該均質化物と卵黄を混合すること、及び特定のガム質であるキサンタンガムを含有させたことに特徴を有する。
【0013】
ここで、「チーズ」とは、ナチュラルチーズや、ナチュラルチーズを原料として加工されたプロセスチーズあるいは他の添加材等を含有したチーズ加工品のことである。ナチュラルチーズは、乳等省令によれば、「乳を乳酸菌で発酵させ、または乳に酵素を加えてできた凝乳から乳清を除去し、固形状にしたもの、またはこれを熟成したもの」と定義され、チーズの硬さにより一般的に、軟質チーズ、半硬質チーズ、硬質チーズ及び超硬質チーズに分類される。これらの種々の硬さに分類されたチーズの内、カルボナーラソースで一般的に使用されているものは、硬質あるいは超硬質チーズである例えば、パルミジャーノ・レジャーノ、グラナパダーノ、ペコリーノ・ロマーノ、パルメザンチーズ、ゴーダチーズ、チェダーチーズ等が主に使用されており、本発明もこれらのナチュラルチーズ又はその加工品を用いると良い。
【0014】
また、「卵黄」としては、一般的に流通している卵黄であればいずれのものでも良く、例えば、鶏、うずら、あひる等の家禽卵より得られる生卵黄又はこれを殺菌したもの、冷蔵若しくは冷凍したもの、スプレードライ若しくはフリーズドライ等で乾燥したもの、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼC、ホスフォリパーゼD、プロテアーゼ等の酵素で処理したもの、脱糖処理したもの、超臨界二酸化炭素処理等で脱コレステロールしたもの、あるいは食塩若しくは糖類を加配したもの等が挙げられる。
【0015】
また、「モノアシル型親水性乳化剤」とは、1個のアシル基を有し、水又は温水に容易に分散する性質を有する食品に使用可能な乳化剤のことであり、具体的には、例えば、ジアシルグリセロリン脂質であるリン脂質をホスフォリパーゼA1あるいはホスフォリパーゼA2の酵素で1位あるいは2位のアシル基を加水分解し、水酸基に変換したモノアシルグリセロリン脂質であるリゾリン脂質や、HLB(親水性親油性バランス)が10.0以上のショ糖脂肪酸エステル若しくはポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。特に、これらの乳化剤の内、リゾリン脂質を使用すると、低粘度で滑らかな状態が維持された本発明のレトルトソースが得られ易く好ましい。なお、本発明では、リゾリン脂質そのものを使用しても良いが、トリグリセリド、コレステロール、リン脂質等の他の脂質成分も含有した一般的に卵黄リゾレシチン、大豆リゾレシチン、酵素処理卵黄レシチン、酵素処理大豆レシチン、酵素処理卵黄油等と称されるものも使用して良い。この場合、脂質混合物中のリゾリン脂質の部分が本発明のリゾリン脂質に相当する。
【0016】
そして、「水系媒体」とは、使用する原料の内、清水や牛乳等の水を主成分とした原料のことをいう。
【0017】
本発明は、卵黄とチーズを混合する前に、まずチーズとモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理する。ここで、均質化処理された状態とは、チーズの粒子が目視で観察されない程度に水系媒体中で均一に分散されている状態をいう。このような均質化処理された状態とするには、任意の方法を選択して行なえば良く、一般的には、強いせん断力を有する攪拌機や高圧ホモゲナイザー等の均質化処理機を使用するが、本発明は、均質化処理する際に50℃以上で行なうことが好ましい。均質化処理を50℃以上で行なうと、室温では均質化し難いナチュラルチーズを用いた場合であっても、加温によりチーズが融解し、強いせん断力を有する均質化処理機を用いなくても容易に均質化処理された状態となることから、生産性に優れ、また得られたレトルトソースにおいても、低粘度で滑らかな状態が維持されたレトルトソースが得られ易く好ましい。
【0018】
また、チーズに対するモノアシル型親水性乳化剤の添加の割合は、チーズ中のナチュラルチーズ100部に対しモノアシル型親水性乳化剤が好ましくは0.5部以上、より好ましくは1.0部以上である。モノアシル型親水性乳化剤を添加することで、添加しないときと比べ、レトルトソースの粘度は低下し滑らかさも改善するが、モノアシル型親水性乳化剤の割合が0.5部より少ないと、粘度が低下し難く滑らかな状態も維持し難くなる。なお、チーズに対する水系媒体の割合は、特に規定しておらず、チーズの粒子が目視で観察されない程度に水系媒体中で均一に分散され均質化処理された状態となる範囲であれば、任意の割合とすることができるが、工業的規模での生産効率を考慮しチーズ1.0部に対し水系媒体3.0部以上が好ましく、5.0部以上がより好ましい。また、「チーズ中のナチュラルチーズ」とは、チーズとしてナチュラルチーズを用いた場合は、ナチュラルチーズそのものであり、プロセスチーズやチーズ加工品を用いた場合は、これらのチーズの原料であるナチュラルチーズの部分を意味する。
【0019】
次に、上述した方法で得られた均質化物と卵黄を任意の混合装置を用いて均一に混合する。その際、使用する卵黄が生卵黄のような液状の場合は、上記均質化物が液状乃至ペースト状であることから、両者を均一に混合することは容易であるが、使用する卵黄が乾燥卵黄のような粉末状である場合は、一旦、乾燥卵黄を水戻して均一な液状物とした後に、上記均質化物と混合したほうが容易に均一に混合することが出来て好ましい。
【0020】
最後に、上述の方法で得られた均質化物と卵黄との混合物に具材を除く残りの原料を混合し、必要に応じ更に均質化処理及び/又は煮込み処理を施した後、具材であるベーコンやマッシュルーム等を混合してカルボナーラ用ソースを製し、これをレトルトパウチや缶等の耐熱性容器に充填し、常法によりレトルト処理してカルボナーラ用レトルトソースを製する。
【0021】
本発明のカルボナーラ用レトルトソースには、上述した卵黄、チーズ及びモノアシル型親水性乳化剤以外に、キサンタンガムを含有させることに特徴を有する。ガム質には、キサンタンガム、グアガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、カラギーナン等、種々有るが、本発明では、これらのガム質の内、特定のガム質であるキサンタンガムを含有させることで、他のガム質を含有させた場合に比べ、より低粘度で滑らかな状態が維持されたレトルトソースが得られる。キサンタンガムは、耐熱性容器に充填する前のカルボナーラ用ソースに完全に溶解されていればいつの時期に含有させても良く、その含有量は、キサンタガムの増粘効果並びに本発明のレトルトソースの低粘度化及び滑らかさを考慮し、具材を除くソース部全体に対し0.01〜0.2%が好ましく、0.02〜0.15%がより好ましい。
【0022】
なお、カルボナーラ用レトルトソースには、例えば、食塩、砂糖又はグルタミン酸ナトリウム等の調味料、牛乳、脱脂粉乳、乳清タンパク質等の乳類、キサンタガム以外のガム質、生澱粉、化工澱粉又は湿熱処理澱粉等の増粘剤、澱粉分解物又はその還元物、糖アルコール等の糖類、生クリーム、モノアシル型親水性乳化剤以外の乳化剤、乳化補助剤、エキス、食用油脂、香辛料、色素、発色剤等を含有しているが、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲でこれらの各種原料を、チーズとモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理する際に、あるいは当該均質化物と卵黄を混合する際に含有させても良い。
【0023】
以上、述べたとおり本発明の製造方法は、耐熱性容器に充填する前のカルボナーラ用ソースの製造において、カルボナーラ用ソースの原料である卵黄とチーズを単に混合するのではなく、まずチーズと特定の乳化剤であるモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理した後に、当該均質化物と卵黄を混合すること、及びキサンタガムを含有させることにより、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度に含有させたとしても比較的低粘度で、しかも滑らかな状態が維持されたカルボナーラ用レトルトソースが得られる。具体的な粘性の程度としては、後述の実施例で示しているとおり具材を除くソース部全体に対し、卵黄を生卵黄換算で1.0%以上、チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上と高濃度含有させたとしても、該ソース部の粘度が湯せん等で温め直した喫食時のソースの品温60℃において3.5Pa・s以下と比較的低粘度を示し、茹でたパスタと和え易いものである。なお、上記ソース部の品温60℃における粘度は、未開封のまま沸騰したお湯の中で3分間温め、ざるで具材を除いた後、品温が60℃に達した時点でB型粘度計[(株)東京計器製、BH型]を用いて、ローターNo.3、回転数10rpmの測定条件で測定し、3回転後の示度により算出した値である。
【0024】
このように本発明の製造方法で得られたカルボナーラ用レトルトソースがレトルト処理されているにも拘らず、如何なる理由により卵黄及びナチュラルチーズを高濃度含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持されるかは明らかでないが、チーズとモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理して得られたチーズとモノアシル型親水性乳化剤との均質化物及びキサンタンガムが、レトルト処理の際に、卵黄に何らか作用し、卵黄の加熱凝固によるソースの粘度増加を防止したのではないかと推察する。
【0025】
以下、本発明のカルボナーラ用レトルトソースの製造方法について、実施例及び比較例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
二重釜に清水27.86kgを入れ、加熱攪拌させながら牛乳30.0kgを加えて、80℃達温後加熱を停止し、ナチュラルチーズ(パルミジャーノ・レジャーノ)7.0kg、酵素処理卵黄油[キユーピー(株)製、卵黄レシチンLPL−20(モノアシル型親水性乳化剤であるリゾリン脂質約20%含有)]0.4kg及びキサンタンガム0.04kgを加え品温が50℃より低くならないように必要に応じ加温しながらホモミキサーで均質化した状態となるまで処理した。得られた均質化物を冷却後、生卵黄3.0kg、化工澱粉1.5kg及び生クリーム30.0kg加え均一に混合し、更に均質化処理した。そしてこの混合物を攪拌させながら加熱し、80℃達温後加熱を停止し、拍子木切りのベーコン20.0kg及びブラックペパー0.2kg加え仕上げ攪拌しカルボナーラソースを得た。得られたソースを140gずつ耐熱性のレトルトパウチに充填・密封した後、120℃で20分間レトルト処理し、しかる後、冷却してカルボナーラ用レトルトソースを得た。
【0027】
<本発明のソース部の配合割合>
生卵黄
3.0部
酵素処理卵黄油
0.4部(リゾリン脂質換算で0.08部)
(リゾリン脂質約20%含有)
ナチュラルチーズ 7.0部
(パルミジャーノ・レジャーノ)
化工澱粉
1.5部
キサンタンガム
0.04部
牛乳
30.0部
生クリーム
30.0部
ブラックペパー
0.2部
清水
27.86部
―――――――――――――――――――――
合計 100.0部
【0028】
<本発明の具材を含めたカルボナーラ用レトルトソースの配合割合>
上記ソース部 100.0部
ベーコン
20.0部
―――――――――――――――――――――
合計
120.0部

【0029】
得られたカルボナーラ用レトルトソースは、レトルト処理されているにも拘らず、具材(ベーコン)を除くソース部の品温60℃における粘度を測定したところ2.8Pa・sと低く、しかも非常に滑らかな状態であった。また、品温60℃における粘度が低いことから、茹でたパスタと非常に和え易く、生卵黄3.0%及びナチュラルチーズ7.0%と高濃度含有していることから、カルボナーラ用ソースとして濃厚な食味を有していた。なお、ナチュラルチーズとモノアシル型親水性乳化剤である酵素処理卵黄油中のリゾリン脂質の割合は、ナチュラルチーズ100部に対しリゾリン脂質が1.1部である。
【0030】
[実施例2]
実施例1において、酵素処理卵黄油0.4kgをモノオレイン酸デカグリセリル(ポリグリセリン脂肪酸エステルの一種、HLB12.0)0.1kgに換え、減少分の0.3kgを補うため清水28.16kgとした以外は、実施例1と同様な方法でカルボナーラ用レトルトソースを製造した。
【0031】
得られたカルボナーラ用レトルトソースは、実施例1のソースと同様、レトルト処理されているにも拘らず、具材(ベーコン)を除くソース部の品温60℃における粘度を測定したところ3.4Pa・sと低く、しかも滑らかな状態であった。また、品温60℃における粘度が低いことから、茹でたパスタと和え易く、生卵黄3.0%及びナチュラルチーズ7.0%と高濃度含有していることから、カルボナーラソースとして濃厚な食味を有していた。なお、ナチュラルチーズとモノアシル型親水性乳化剤であるモノオレイン酸デカグリセリルの割合は、ナチュラルチーズ100部に対しモノオレイン酸デカグリセリルが1.4部である。
【0032】
[比較例1]
実施例1の同様な配合割合で、以下のような方法でカルボナーラ用レトルトソースを製造した。つまり、二重釜に清水27.86kgを入れ、加熱攪拌させながら牛乳30.0kg、生卵黄3.0kg、生クリーム30.0kg、ナチュラルチーズ(パルミジャーノ・レジャーノ)7.0kg、酵素処理卵黄油[キユーピー(株)製、卵黄レシチンLPL−20(モノアシル型親水性乳化剤であるリゾリン脂質約20%含有)]0.4kg、化工澱粉1.5kg及びキサンタンガム0.04kgを加えて80℃達温後加熱を停止し、ホモミキサーで均質化処理した後、拍子木切りのベーコン20kg及びブラックペパー0.2kg加え仕上げ攪拌しカルボナーラソースを得た。得られたソースを140gずつ耐熱性のレトルトパウチに充填・密封した後、120℃で20分間レトルト処理し、しかる後、冷却してカルボナーラ用レトルトソースを得た。
【0033】
得られたカルボナーラ用レトルトソースは、生卵黄及びナチュラルチーズが高濃度含有していることから、カルボナーラ用ソースとして濃厚な食味を有していたが、具材(ベーコン)を除くソース部の品温60℃における粘度を測定したところ6.4Pa・sと高く、滑らかな状態のソースとは言い難いものであった。また、粘度が高いことから、茹でたパスタと和え難いものであった。
【0034】
[比較例2]
実施例1において、酵素処理卵黄油を卵黄油[キユーピー(株)製、卵黄レシチンPL−30(ジアシル型乳化剤であるリン脂質約30%含有)]に換えた以外は、実施例1と同様な方法でカルボナーラ用レトルトソースを製造した。
【0035】
得られたカルボナーラ用レトルトソースは、生卵黄及びナチュラルチーズが高濃度含有していることから、カルボナーラ用ソースとして濃厚な食味を有していたが、具材(ベーコン)を除くソース部の品温60℃における粘度を測定したところ7.1Pa・sと高く、滑らかな状態のソースとは言い難いものであった。また、粘度が高いことから、茹でたパスタとは和え難いものであった。なお、ナチュラルチーズとジアシル型乳化剤であるリン脂質の割合は、ナチュラルチーズ100部に対しリン脂質が1.7部である。
【0036】
[比較例3]
実施例1において、キサンタンガムをグアガムに換えた以外は、実施例1と同様な方法でカルボナーラ用レトルトソースを製造した。
【0037】
得られたカルボナーラ用レトルトソースは、生卵黄及びナチュラルチーズが高濃度含有していることから、カルボナーラ用ソースとして濃厚な食味を有していたが、具材(ベーコン)を除くソース部の品温60℃における粘度を測定したところ4.8Pa・sであり、滑らかな状態のソースともやや言い難いものであった。また、粘度がやや高いことから、茹でたパスタと和え易いとはやや言い難いものであった。
【0038】
以上、実施例1及び2、並びに比較例1乃至3より、卵黄を添加する前にチーズとモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理した均質化物を製することなく単に卵黄とチーズを混合した比較例1のレトルトソース、本発明と同様に、チーズと乳化剤を水系媒体中で均質化処理した後、均質化物と卵黄を混合したが、前記乳化剤が本発明と異なるモノアシル型親水性乳化剤以外の乳化剤を使用した比較例2のレトルトソース、並びに本発明と同様に、チーズとモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理した後、均質化物と卵黄を混合したが、本発明と異なるキサンタムガム以外のガム質を使用した比較例3のレトルトソースは、粘度が高く茹でたパスタと和え難いものであり、またソースの状態においても滑らかな状態とは言い難いものであった。一方、これら比較例のレトルトソースに比べ、チーズと特定の乳化剤であるモノアシル型親水性乳化剤を水系媒体中で均質化処理した後に、当該均質化物と卵黄を混合し、またキサンタンガムを含有させた実施例1及び2のレトルトソースは、レトルト処理されているにも拘らず、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度に含有させたとしても粘度が3.5Pa・s以下と比較的低粘度を示し茹でたパスタと和え易く、しかも滑らかな状態が維持されたソースであり、大変好ましいカルボナーラ用レトルトソースであることが理解される。特に、モノアシル型親水性乳化剤としてリゾリン脂質を使用した実施例1のレトルトソースは、低粘度を示し滑らかさも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を除くソース部全体に対し、卵黄を生卵黄換算で1.0%以上、チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上含有したカルボナーラ用レトルトソースであって、キサンタンガムを含有し、ソース部の粘度が品温60℃において3.5Pa・s以下であることを特徴とするカルボナーラ用レトルトソース。
【請求項2】
リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項1記載のカルボナーラ用レトルトソース。
【請求項3】
キサンタンガムを、具材を除くソース部全体に対し、0.01〜0.2%含有する請求項1又は2記載のカルボナーラ用レトルトソース。
【請求項4】
リゾリン脂質又はHLBが10.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを、チーズ中のナチュラルチーズ100部に対し、0.5部以上含有する請求項1乃至3記載のカルボナーラ用レトルトソース。

【公開番号】特開2009−159992(P2009−159992A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103653(P2009−103653)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【分割の表示】特願2004−7660(P2004−7660)の分割
【原出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】