説明

カルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂、水素化されたケトン樹脂、並びに芳香族ケトンを基礎とするカルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、ポリイソシアネートとからのスズ不含の高融点反応生成物

本発明は、ヒドロキシ基含有の水素化されたケトン−、カルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂並びに芳香族ケトンを基礎とするカルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、ポリイソシアネートとのスズ不含の反応生成物、その製造方法、その特に被覆剤、接着剤、印刷インキ及びインキ、光沢剤、透明塗料、顔料ペースト、パテ塗り剤、化粧品及び/又は封止剤及び遮断剤中に主成分、基礎成分又は添加成分として用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシ基を含有するカルボニル水素化されたケトン−及びケトン−アルデヒド樹脂並びに芳香族ケトンを基礎とする水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、ポリイソシアネートとのスズ不含の反応生成物、その製造方法及び特に被覆剤及び接着剤に用いるその使用に関する。
【0002】
ケトン−アルデヒド樹脂は、被覆剤中で例えば皮膜形成性添加成分として使用され、特定の特性、例えば表面乾燥速度、光沢、硬度又は引掻強度が改善される。通常、ケトン−アルデヒド樹脂はヒドロキシル基を有するので、例えばポリイソシアネート又はアミン樹脂と架橋することができる。物理的にか又は酸化により乾燥する塗料−又は接着系においては、それと比べてポリマー合成がこの樹脂の架橋によっては行われない。かかる被覆物は、しばしば未架橋成分のため、かつ比較的低分子の成分のため、例えばベンジン、化学薬品又は溶剤に対する抵抗性はわずかである。
【0003】
このケトン−アルデヒド樹脂の分子量を増大させると、上述の欠点を改善することができる。この分子量の増大により、融点−もしくは軟化範囲が顕著に増加し、このことは、確かに被覆剤又は接着剤の表面乾燥速度及び上述の抵抗性に関しては有効であるが、しかしながら、高価値の生成物の製造、例えば樹脂の色数に悪影響を与えることがある。更に、この樹脂の良好な溶解特性及びレオロジー特性が悪影響を受ける。
【0004】
更に、カルボニル基は、例えば照射により、例えばノリッシュI又はII型による古典的な分解反応の影響を受ける(Laue, Plagens, Namen und Schlagwort-Reaktionen der organischen Chemie, Teubner Studienbuecher, Stuttgart, 1995)。従って、変性されていないケトン−アルデヒド樹脂又はケトン樹脂は、質的に高価値の用途、例えば、特に風化及び熱に対して高安定性が必要である屋外範囲では使用することができない。同様に、ノボラック型フェノール樹脂又は天然樹脂は、風化特性が不十分である。
【0005】
ケトン−アルデヒド樹脂の水素化によりカルボニル基を第2級アルコールに変換することは、以前から実施されていた(DE−870022、DE3241735、JP11012338)。一般的でかつ公知の製品は、Degussa AG社のKunstharz SKである。芳香族基を含有するケトンを基礎とするカルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂の使用も、同様に可能である。かかる樹脂はDE3334631に記載されている。かかる生成物のOH価は、200mg KOH/gを上回り、極めて大きい。
【0006】
イソシアネート基とヒドロキシ基との反応は、慣用的に、触媒の使用のもとで促進される。多くの利点、例えばこの反応の動力学又は触媒系の安定性に基づいて、より長期の熱負荷においても、スズ有機化合物、例えばジブチルスズジラウレートは定着する。しかしながら、工業は環境的及び毒性的見地からこれらの触媒を置き換えることを促されている。
【0007】
WO03/091307(EP1361236)は、少なくとも1種のジイソシアネートとイソシアネート反応基を有する成分の群とからの反応生成物であり、その際、この群は、
a)1種以上のポリエーテルポリオールの群1
b)硬質のケトン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル−スチレン−コポリマー、ポリアクリレート、コルフォニウム誘導体及びテルペン−フェノール樹脂の群から選択された、1種以上のポリヒドロキシ化樹脂の群2
c)場合により、分子量≦800g/molを有する1種以上のポリオールの群3、及び
d)少なくとも1種のアミン及び反応停止剤からなり、
その際、ジイソシアネート成分とこのイソシアネート反応基を有する成分との当量比を、このジイソシアネートの実質的に全てのイソシアネート基が、上述のイソシアネート反応官能基を有する反応生成物として存在するように選択されるポリウレタン樹脂の製造及び使用を記載している。
【0008】
本発明を基礎とする反応生成物は、ポリエーテル、アミン並びに連鎖停止剤を含有しない。この反応操作も別である。従って、そこで得られた生成物は、本発明の生成物とは比較することができない。周知のジブチルスズジラウレートが触媒として使用されるので、更に環境的及び毒性的危険性がもたらされる。
【0009】
EP1229090は、WO03/091307と同様のポリマーを記載しており、従ってそこでは同じ議論がなされている。更に、この刊行物は、カルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又はカルボニル水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂を使用しない。
【0010】
EP107097は、プレポリマーイソシアネート、熱可塑性ポリマー及び低分子合成樹脂を含有する混合物からなる溶融接着剤であって、この混合物が以下の成分:
a)プレポリマーイソシアネート20〜90質量%
b)熱可塑性ポリウレタン0〜75質量%
c)ケトン樹脂及び/又はケトン−アルデヒド縮合樹脂及び/又はアセトフェノン縮合樹脂の水素化生成物の群からの低分子合成樹脂0〜50質量%
を含有することを特徴とする溶融接着剤を記載している。
【0011】
本発明は、EP107097において使用される生成物とは異なり、熱可塑性ポリウレタンを使用しない。更に、水素化された樹脂、特にカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又はカルボニル水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び/又は環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂を使用する。EP107097に記載されているようなアセトフェノンの水素化されたアルドール−ホモ縮合体が必要ではないのは明らかである。
【0012】
DE3416378は、水素化されていないケトン−アルデヒド樹脂、特にシクロヘキサノン−ホルムアルデヒド樹脂の主成分としての使用下での分離層−被覆混合物を記載している。
【0013】
水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、ジ−及び/又はポリイソシアネートとを基礎とする、放射線硬化性塗料用の高融点樹脂が、DE102004020740に記載されている。この場合、使用範囲を制限し、かつ放射性硬化性ではない適用における使用を禁じる放射線反応性溶剤を使用するという事実の他に、更にスズ含有触媒を使用する。
【0014】
本発明の課題は、表面乾燥速度、硬度、光沢及び耐溶剤性並びに耐化学薬品性及び被覆剤系及び接着剤の付着性を改善する、スズ不含のけん化安定性の反応生成物を見出すことであった。この生成物は、良好な耐熱性及び耐風化性を有することが望ましい。更に、この製造は経済的重要性から、最適化された時間範囲で実施可能であることが望ましい。
【0015】
驚くべきことに、前記課題は、被覆剤か又は接着剤中に、水素化されたケトン樹脂、カルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又は芳香族ケトン(アリールアルキルケトン)を基礎とする環水素化及びカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、140℃より高い融点範囲を有するジ−又はポリイソシアネートとの反応生成物からなり、かつスズ不含である反応生成物を使用することにより解決された。この場合、明らかにアセトフェノンのホモ−アルドール縮合生成物(ケトン樹脂)は省かれる。慣用的にスズ有機化合物で触媒される反応は、驚くべきことに、他のスズ不含の化合物の存在により触媒することができ、かつ特にビスマスオルガニルを使用した場合に同じ反応速度で同じ高品質の生成物をもたらした。
【0016】
本発明にかかるスズ不含の反応生成物は、更に風化安定性及び耐化学薬品性を示し、かつ耐黄変性が大きい。この反応生成物は、被覆剤か又は接着剤中において、高度な光沢、良好な表面乾燥速度及び種々の下地、例えば金属、プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はポリカーボネートへの付着性をもたらし、かつ同時に硬度も大きい。
【0017】
本発明の対象は、
A)少なくとも1種のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又は水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、
B)少なくとも1種の芳香族、脂肪族及び/又は脂環式のジ−又はポリイソシアネートとの反応により得られた140℃より高い融点範囲を有する生成物を主として含有する、スズ不含の高融点反応生成物である。
【0018】
アセトフェノンのホモ−アルドール縮合生成物(ケトン樹脂)は明らかに省かれる。
【0019】
本発明の対象はまた、ポリマーC)と成分A)との混合物を、成分B)と等重合度反応させた反応生成物である。
【0020】
本発明の対象はまた、
A)少なくとも1種のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又は水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、
B)少なくとも1種の芳香族、脂肪族及び/又は脂環式の、ジ−又はポリイソシアネートとの反応により得られた140℃より高い融点範囲を有する生成物を主として含有する反応生成物を、被覆剤、接着剤、印刷インキ及びインキ、光沢剤、透明塗料、顔料ペースト、パテ塗り剤、化粧品及び/又は封止剤及び遮断剤中の主成分、基礎成分又は添加成分として、特に表面乾燥速度、付着特性、光沢、耐溶剤性及び耐化学薬品性並びに硬度の改善に用いる使用である。
【0021】
水素化されたケトン樹脂及びカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂(成分A)の製造のためのケトンとしては、全種のケトン、特にアセトン、アセトフェノン、環置換されたアセトフェノン誘導体、例えば、ヒドロキシ−、メチル−、エチル−、t−ブチル−、シクロヘキシル−アセトフェノン、4−t−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、ヘプタノン−2、ペンタノン−3、メチルイソブチルケトン、プロピオフェノン、メチルナフチルケトン、シクロペンタノン、シクロドデカノン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルシクロペンタノンからなる混合物、シクロペンタノン及びシクロオクタノン、シクロヘキサノン及び合計で1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基を有するアルキル置換された全てのシクロヘキサノンの単独又は混合した形が好適である。アルキル置換されたシクロヘキサノンの例として、4−t−アミルシクロヘキサノン、2−s−ブチルシクロヘキサノン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン及び3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを挙げることができる。
【0022】
一般に、ケトン樹脂及びケトン−アルデヒド樹脂合成について文献中に適しているとして挙げられた全種のケトン、一般に全種のC−H酸性ケトンを使用することができる。
【0023】
好ましくは、ケトンの4−t−ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン及びヘプタノンを単独又は混合した形で基礎とする水素化されたケトン樹脂であるが、アセトフェノンを基礎とする水素化されたケトン樹脂はそれほど好ましくはない。
【0024】
好ましくは、ケトンのアセトフェノン、4−t−ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン及びヘプタノンを単独で又は混合した形として基礎とする、カルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂である。
【0025】
カルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂(成分A)のアルデヒド成分としては、原則として非分枝鎖状又は分枝鎖状アルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及び/又はイソ−ブチルアルデヒド、バレリアンアルデヒド並びにドデカナールが好適である。一般に、ケトン−アルデヒド樹脂合成について文献中に好適であるとして挙げられた全種のアルデヒドを使用することができる。しかしながら、ホルムアルデヒドを単独又は混合した形で使用するのが有利である。
【0026】
必要とされるホルムアルデヒドは、通常、約20〜40質量%の水溶液又はアルコール(メタノール又はブタノール)性溶液として使用される。ホルムアルデヒドの他の使用形態、例えばパラ−ホルムアルデヒド又はトリオキサンの使用が同様に可能である。芳香族アルデヒド、例えばベンズアルデヒドは、ホルムアルデヒドと混合して同様に含有することができる。
【0027】
成分A)のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂については、出発化合物として、特に好ましくは、アセトフェノン、4−t−ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン並びにヘプタノンの単独又は混合した形、及びホルムアルデヒドからの樹脂を使用する。
【0028】
副次的な程度で、水素化されていないケトン−アルデヒド樹脂を使用することもできるが、これはわずかな光堅牢性を有する。
【0029】
ケトンからの樹脂もしくはケトンとアルデヒドとからなる樹脂は、触媒の存在下で300barまでの圧力で水素で水素化する。この場合、このケトン樹脂もしくはケトン−アルデヒド樹脂のカルボニル基は第2級ヒドロキシ基に変換される。反応条件に応じて、メチレン基が生ずるように前記ヒドロキシ基の一部を脱離させることができる。更なる原子団、例えば場合により存在する二重結合は、このように同様に水素化することができる。判りやすく示すために、次の反応式を用いる:
【化1】

【0030】
カルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂(成分A))の製造のためのケトンとしては、C−H酸性プロトンの他に芳香族原子団を有する全種のケトン、特にアラルキルケトン、例えばメチルナフチルケトン、アセトフェノン及び/又はその誘導体、例えば環置換されたアセトフェノン誘導体、例えばヒドロキシ−、メチル−、エチル−、t−ブチル−、シクロヘキシル−アセトフェノンが好適である。
【0031】
水素化条件の選択により、環式脂肪族環が生ずるようにヒドロキシル基も水素化することができる。環水素化された樹脂は、50〜450mg KOH/g、好ましくは100〜350mg KOH/g、特に好ましくは150〜300mg KOH/gのOH価を有する。芳香族基の割合は、50質量%未満、好ましくは30質量%未満、特に好ましくは10質量%未満である。この方法はDE3334631に記載されている。
【0032】
成分Bとしては、芳香族、脂肪族及び/又は脂環式ジ−及び/又はポリイソシアネートが好適である。
【0033】
ジイソシアネートの例は、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)メタン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又は1,5−ジイソシアナト−2−メチルペンタン(MPDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、例えば1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン又は1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン(TMDI)、ノナントリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)、デカンジ−及び−トリイソシアネート、ウンデカンジ−及び−トリイソシアネート、ドデカンジ−及び−トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチルシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソシアナトメチルメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−H6−XDI)又は、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4−H6−XDI)の単独又は混合した形である。
【0034】
成分B)としての他の有利なクラスのポリイソシアネートは、単一のジイソシアネートの二量体化、三量体化、アロファネート化、ビウレット化及び/又はウレタン化によって製造される、1分子当たり2個より多いイソシアネート基を有する化合物、例えば単一のジイソシアネート、例えばIPDI、TMDI、HDI及び/又はH12MDIと多価アルコール(例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット)もしくは多価ポリアミンとの反応により得られた生成物又は単一のジイソシアネート、例えばIPDI、HDI及びH12MDIの三量体化により得られるトリイソシアヌレートである。
【0035】
成分A)の一部を更なるヒドロキシ官能性ポリマーC)、例えば水素化されていない、かつ/又は環水素化されたフェノール−アルデヒド樹脂、ヒドロキシ官能性の水素化されていないケトン−アルデヒド樹脂、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はポリアクリレートで置き換えることも可能である。この場合、ポリマーC)と成分A)との混合物を、成分B)と直接、等重合度反応させてよい。これにより、成分A)の「純粋な」樹脂とは異なり、例えば柔軟性、硬度のような特性を更に良好に調節することができる。他のヒドロキシ官能性ポリマーは、一般に200〜10000g/mol、有利に300〜5000g/molの分子量Mnを有する。
【0036】
A)及びB)及び場合によりC)からの樹脂を製造する反応を促進するために、スズ不含触媒を使用する。原則的に、OH−NCO−反応を促進させる全種のスズ不含化合物が好適である。
【0037】
金属のビスマス、ジルコニウム、鉄又はアルミニウムを基礎とする触媒、特にカルボキシレート、キレート及び錯体が特に良好に好適である。
【0038】
純粋な有機触媒、例えば第3級アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCA)又は1,5−ジアザビシクロ[2.3.0]ノン−5−エン(DBN)が同様に該当する。
【0039】
驚くべきことに、ビスマスを含有する触媒がこの反応を、更なる特性、例えばレオロジー挙動を変化させることなく殊に促進させることが示された。この触媒は、反応完了後に、この反応生成物中に残留し、かつ場合により好適に安定化させることができる。モノ−又はジカルボン酸による安定化が特に有効であることが判明した。しかし、金属の安定化について文献中に好適であると挙げられた全種の化合物を使用することも可能である。
【0040】
A)と、B)と、場合によりC)との反応により製造されたスズ不含生成物の融点範囲は、140℃より高く、好ましくは145℃より高く、特に好ましくは150℃より高い。
【0041】
A)及びB)及び場合によりC)の量は、Mnに関して1molの樹脂(成分A))もしくは1molのA)とC)との混合物、及び0.2〜15mol、好ましくは0.25〜10mol、特に好ましくは0.3〜4molの成分B)を使用するように選択する。
【0042】
本発明による基本的な樹脂の製造は、成分A)の溶融物か又は好適な有機溶剤の溶解形で実施する。
【0043】
このために、好ましい実施形態Iにおいては、成分A)の溶液か又は溶融物に成分B)を好適な触媒の存在下で添加する。
【0044】
成分B)の反応性に応じて、この反応の温度を選択する。この温度は、30〜150℃、好ましくは50〜140℃で選択する。しかしまたそれほど好ましくないが、この反応は室温でも実施する。
【0045】
nに関して1モルの成分A)と、0.2〜15mol、好ましくは0.25〜10mol、特に好ましくは0.3〜4molのイソシアネート成分B)と反応させることが有利であることが判明した。
【0046】
場合により得られた溶剤は、所望の場合に、反応の完了後に分離することができ、その際、一般に本発明による生成物の粉末が得られる。
【0047】
好ましい実施形態IIにおいては、成分A)及びヒドロキシ官能性ポリマーC)、例えば水素化されていない環水素化されたフェノール−アルデヒド樹脂、ヒドロキシ官能性の水素化されていないケトン−アルデヒド樹脂、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はポリアクリレートの溶液か又は溶融物に成分B)を好適な触媒の存在下で添加する。
【0048】
成分B)の反応性に応じて、この反応の温度を選択する。この温度は、30〜150℃、好ましくは50〜140℃で選択する。しかしまたそれほど有利ではないが、この反応は室温でも実施する。
【0049】
nに関して合計1モルの成分A)及びC)と、0.2〜15mol、好ましくは0.25〜10mol、特に好ましくは0.3〜4molのイソシアネート成分B)と反応させることが有利であることが判明した。
【0050】
場合により得られた溶剤は、所望の場合に、反応の完了後に分離することができ、その際、一般に本発明にかかる生成物の粉末が得られる。
【0051】
以下の実施例は、本発明を更に詳細に説明するが、その適用範囲を制限するものではない:
反応生成物の製造のための実施例1:
この合成を、アセトフェノンとホルムアルデヒドとからのカルボニル水素化された樹脂(OH価=240mg KOH/g(無水酢酸法)、Mn〜1000g/mol(標準としてのポリスチレンに対してGPC)、融点範囲114〜120℃)400gと、H12MDI(Vestanat EP H12MDI Degussa AG)99.3gとを、0.15%Coscat83(樹脂に対して、Caschem Catalysts)の存在下で、エチルアセテートで50%に希釈して、撹拌器、還流冷却器及び温度センサを有する3口フラスコ中で、窒素雰囲気において、0.1未満のNCO価が達せられるまで55℃で反応させることにより実施する。
【0052】
動粘度2.6Pa・sの明るい澄明な溶液が得られる。この溶液のガードナー色数は、0.4である。60℃で14日間貯蔵した後に、ガードナー指数は0.5であり、このことは、この測定の正確性の範囲内では変化しなかったと評価されるべきであり、かつこの樹脂溶液の耐黄変性が大きいことに相応する。この溶剤の除去後に、融点範囲163〜166℃の無色の粉末が得られる。
【0053】
【表1】

【0054】
樹脂溶液A及びIを、ドクターナイフでガラス板上、並びに種々のプラスチック板及び金属上に塗布した。この湿潤層厚は100μmである。これらの被覆された試験板を、揮発性構成成分の蒸発後に、14日にわたって標準環境(23℃、50%、相対的な空気湿分)で貯蔵した。次いで、この皮膜の光沢及び付着性を測定した。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
省略形
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー
PC:ポリカーボネート
PE:ポリエチレン
PVC:塩化ポリビニル
SD:層厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又は水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、
B)少なくとも1種の芳香族、脂肪族及び/又は脂環式のジ−又はポリイソシアネートとの反応により得られた140℃より高い融点範囲を有する生成物を主として含有する、スズ不含の高融点反応生成物。
【請求項2】
A)少なくとも1種のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又は水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、
B)少なくとも1種の芳香族、脂肪族及び/又は脂環式のジ−又はポリイソシアネートと、
C)少なくとも1種の更なるヒドロキシ官能化ポリマーとの反応により得られた140℃より高い融点範囲を有する生成物を主として含有する、スズ不含の高融点反応生成物。
【請求項3】
C−H酸性ケトンが成分A)中に使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反応生成物。
【請求項4】
成分A)のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂において、アセトン、アセトフェノン、環置換されたアセトフェノン誘導体、例えば、ヒドロキシ−、メチル−、エチル−、t−ブチル−、シクロヘキシル−アセトフェノン、4−t−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、ヘプタノン−2、ペンタノン−3、メチルイソブチルケトン、プロピオフェノン、メチルナフチルケトン、シクロペンタノン、シクロドデカノン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルシクロペンタノンからなる混合物、シクロペンタノン及びシクロオクタノン、シクロヘキサノン及び合計で1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基を有する全てのアルキル置換シクロヘキサノンが単独又は混合した形で使用されることを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の反応組成物。
【請求項5】
成分A)のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂において、出発化合物として、合計で1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基を有するアルキル置換されたシクロヘキサノンが単独又は混合した形で使用されることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項記載の反応生成物。
【請求項6】
4−t−アミルシクロヘキサノン、2−s−ブチルシクロヘキサノン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン及び/又は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが使用されることを特徴とする、請求項5に記載の反応生成物。
【請求項7】
成分A)におけるカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂のアルデヒド成分として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及び/又はイソ−ブチルアルデヒド、バレリアンアルデヒド、ドデカナールが単独又は混合した形で使用されることを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項8】
ホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンが使用されることを特徴とする、請求項7に記載の反応生成物。
【請求項9】
成分A)として、アセトフェノン、4−t−ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、ヘプタノンの単独又は混合した形、及びホルムアルデヒドからの樹脂のカルボニル水素化生成物が使用されることを特徴とする、請求項1から8までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項10】
成分Aの水素化されたケトン樹脂が、アセトン、4−t−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、ヘプタノン−2、ペンタノン−3、メチルイソブチルケトン、プロピオフェノン、シクロペンタノン、シクロドデカノン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルシクロペンタノンからなる混合物、シクロペンタノン及びシクロオクタノン、シクロヘキサノン及び合計で1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基を有する全てのアルキル置換されたシクロヘキサノンから選択されたケトンを単独又は混合した形で含有することを特徴とする、請求項1から9までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項11】
シクロヘキサノン、4−t−アミルシクロヘキサノン、2−s−ブチルシクロヘキサノン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン及び/又は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが使用されることを特徴とする、請求項10に記載の反応生成物。
【請求項12】
成分A)のカルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂中に、アリール−アルキル−ケトンが使用されることを特徴とする、請求項1から11までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項13】
成分A)のカルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂中に、アセトフェノン、環置換されたアセトフェノン誘導体、例えばヒドロキシ−、メチル−、エチル−、t−ブチル−、シクロヘキシル−アセトフェノン、メチルナフチルケトンから選択されたケトンが含まれることを特徴とする、請求項1から12までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項14】
成分A)のカルボニル−及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂のアルデヒド成分において、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及び/又はイソ−ブチルアルデヒド、バレリアンアルデヒド、ドデカナールが単独又は混合した形で使用されることを特徴とする、請求項1から13までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項15】
成分B)として、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)メタン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又は1,5−ジイソシアナト−2−メチルペンタン(MPDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、例えば1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン又は1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン(TMDI)、ノナントリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)、デカンジ−及び−トリイソシアネート、ウンデカンジ−及び−トリイソシアネート、ドデカンジ−及び−トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチルシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソシアナトメチルメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−H6−XDI)又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4−H6−XDI)から選択されたジイソシアネートが単独又は混合した形で使用されることを特徴とする、請求項1から14までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項16】
成分B)として、単一のジイソシアネートの二量体化、三量体化、アロファネート化、ビウレット化及び/又はウレタン化により製造されたポリイソシアネートが使用されることを特徴とする、請求項1から15までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項17】
成分B)として、IPDI、TMDI、H12MDI及び/又はHDIを基礎とするイソシアネートが使用されることを特徴とする、請求項1から16までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項18】
nに関して1molの成分A)、及び0.2〜15mol、好ましくは0.25〜10mol、特に好ましくは0.3〜4molの成分B)が使用されることを特徴とする、請求項1から17までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項19】
A)とB)との反応により得られた生成物の融点範囲が、140℃より高く、好ましくは145℃より高く、特に好ましくは150℃より高いことを特徴とする、請求項1から18までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項20】
ヒドロキシ官能化ポリマーC)として、ポリエステル、ポリアクリレート、水素化されていないケトン−アルデヒド樹脂、及び/又は水素化されていない及び/又は環水素化されたフェノール−アルデヒド樹脂が使用されることを特徴とする、請求項1から19までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項21】
ポリマーC)と成分A)との混合物を、成分B)と等重合度反応させることを特徴とする、請求項1から20までの何れか1項に記載の反応生成物。
【請求項22】
A)少なくとも1種のカルボニル水素化されたケトン−アルデヒド樹脂及び/又は水素化されたケトン樹脂、及び/又は芳香族ケトンを基礎とするカルボニル水素化及び環水素化されたケトン−アルデヒド樹脂と、
B)少なくとも1種の芳香族、脂肪族及び/又は脂環式のジ−又はポリイソシアネートと、場合により、
C)少なくとも1種の更なるヒドロキシ官能化ポリマーとの反応により得られた140℃より高い融点範囲を有する生成物を主として含有する反応生成物を製造する方法において、A)とB)と場合によりC)とを20〜150℃の温度でスズ不含の触媒存在下で反応させることにより製造する方法。
【請求項23】
請求項2から21までの何れか1項に記載の化合物を使用することを特徴とする、請求項22に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項24】
触媒として、ジルコニウム、鉄、ビスマス及び/又はアルミニウムを含有する化合物を使用することを特徴とする、請求項23に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項25】
触媒として、ビスマスを含有する化合物を使用することを特徴とする、請求項24に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項26】
触媒を安定化させることを特徴とする、請求項22から25までの何れか1項に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項27】
触媒を、モノ−及び/又はジカルボン酸で安定化させることを特徴とする、請求項26に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項28】
触媒として、有機化合物を使用することを特徴とする、請求項22に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項29】
触媒として、第3級アミンを使用することを特徴とする、請求項28に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項30】
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCA)及び/又は1,5−ジアザビシクロ[2.3.0]ノン−5−エン(DBN)を使用することを特徴とする、請求項29に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項31】
成分A)の溶液又は溶融物に成分B)を、スズ不含の触媒の存在下で添加することを特徴とする、請求項22から30までの何れか1項に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項32】
成分A)及びヒドロキシ官能化ポリマーC)の溶液又は溶融物に成分B)を、スズ不含の触媒の存在下で添加することを特徴とする、請求項22から31までの何れか1項に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項33】
30〜150℃、好ましくは50〜140℃の温度で反応させることを特徴とする、請求項22から32までの何れか1項に記載の反応生成物の製造方法。
【請求項34】
請求項1から21までの何れか1項に記載の反応生成物を、被覆剤、接着剤、印刷インキ及びインキ、光沢剤、透明塗料、顔料ペースト、パテ塗り剤、化粧品及び/又は封止剤及び遮断剤中の主成分、基礎成分又は添加成分として用いる使用。
【請求項35】
請求項1から21までの何れか1項に記載の反応生成物を、被覆剤、接着剤、印刷インキ及びインキ、光沢剤、透明塗料、顔料ペースト、パテ塗り剤、化粧品及び/又は封止剤及び遮断剤中の主成分、基礎成分又は添加成分として、その付着特性及び硬度の改善に用いる使用。

【公表番号】特表2008−509268(P2008−509268A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525272(P2007−525272)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052872
【国際公開番号】WO2006/018341
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】