説明

カレンダーシートおよびその製造方法

【課題】 耐衝撃性を改善し、フローマークの発生を防止してカレンダー成形性を高めたカレンダーシートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記(a)および(b)成分を含有してなる樹脂組成物から成形されたことを特徴とするカレンダーシート。(a)(i)テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、(ii)エチレングリコール60.5〜72.5モル%、ジエチレングリコール0モル%以上1.5モル%未満および1,4−シクロヘキサンジメタノール26〜38モル%からなるジオール成分(但し、前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成される)とから構成されたポリエステル系樹脂。(b)カレンダーロールへの前記ポリエステル系樹脂の粘着を防止するのに十分な量の添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダーシートおよびその製造方法に関するものであり、詳しくは、耐衝撃性が改善され、カレンダー成形性に優れたカレンダーシートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家具、ドア、ドア枠、腰板、巾木、窓枠などの表面材などに使用される化粧シートには、塩化ビニル系樹脂フィルムが多量に使用されていた。塩化ビニル系樹脂化粧シートは、ダブリング装置の加熱ドラム上で、透明な塩化ビニル系樹脂フィルムと印刷を施した着色塩化ビニル系樹脂フィルムを重ねて熱圧着し、さらにエンボスロールでフィルム表面にエンボスの型押しを行うことにより製造されていた。しかし、塩化ビニル系樹脂は、焼却条件が悪いと問題が生ずる等、最近の環境問題への社会の要求から塩化ビニル系樹脂に代わる化粧シートが求められていた。
そこで、塩化ビニル系樹脂フィルムに代えて、非晶質ポリエステル樹脂フィルムを用いることが検討されている。
【0003】
特許文献1(特許第3280374号公報)には、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸及びこれらの混合物から選択された二酸残基成分、並びに、炭素数2〜10のジオールから選択されたジオール残基成分を含む、溶融状態からの結晶化半時間が少なくとも5分のポリエステルおよび添加剤を含有するカレンダリング用ポリエステル樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物により得られたカレンダーシートは、耐衝撃性に劣り、フローマークが発生するという問題点がある。
【0004】
【特許文献1】特許第3280374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、耐衝撃性を改善し、フローマークの発生を防止してカレンダー成形性を高めたカレンダーシートおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のとおりである。
(1)
下記(a)および(b)成分を含有してなる樹脂組成物から成形されたことを特徴とするカレンダーシート。
(a) (i)テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、
(ii)エチレングリコール60.5〜72.5モル%、ジエチレングリコール0モル%以上1.5モル%未満および1,4−シクロヘキサンジメタノール26〜38モル%からなるジオール成分(但し、前記エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計は100モル%であり、かつ前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成される)と
から構成されたポリエステル系樹脂。
(b) カレンダーロールへの前記ポリエステル系樹脂の粘着を防止するのに十分な量の添加剤。
【0007】
(2)前記(a)ポリエステル系樹脂のGPC測定(RI検出器)による数平均分子量が16000〜24000であることを特徴とする前記(1)に記載のカレンダーシート。
【0008】
(3)前記(b)添加剤が、ワックス、スリップ剤またはこれらの混合物であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のカレンダーシート。
【0009】
(4)前記(b)添加剤が、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/またはその誘導体系ワックスであることを特徴とする前記(3)に記載のカレンダーシート。
【0010】
(5)前記(b)添加剤が、グリセロールモノステアレートであることを特徴とする前記(3)に記載のカレンダーシート。
【0011】
(6)
下記(a)および(b)成分を含有してなる樹脂組成物をカレンダリングする工程を有することを特徴とするカレンダーシートの製造方法。
(a) (i)テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、
(ii)エチレングリコール60.5〜72.5モル%、ジエチレングリコール0モル%以上1.5モル%未満および1,4−シクロヘキサンジメタノール26〜38モル%からなるジオール成分(但し、前記エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計は100モル%であり、かつ前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成される)と
から構成されたポリエステル系樹脂。
(b) カレンダーロールへの前記ポリエステル系樹脂の粘着を防止するのに十分な量の添加剤。
【0012】
(7)カレンダーロールの温度を130℃〜250℃に調節して前記カレンダリングを行うことを特徴とする前記(6)に記載のカレンダーシートの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
エチレンテレフタレート部分を含むポリエステル樹脂は、その製造過程で上記エチレングリコールの縮合反応によりジエチレングリコール部分が形成される。このジエチレングリコール部分はフィルム成形時に加水分解してエチレングリコールとして単離し、結果としてポリエステル樹脂が低分子量化する。分子量の低下により、従来技術ではカレンダーシートの耐衝撃性が悪化するという問題点があった。
本発明によれば、エチレンテレフタレート部分を含むポリエステル樹脂において、ジエチレングリコール部分の形成量を低減させるとともに、エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール量を特定し、なおかつ1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス−シス比を特定したため、耐衝撃性が改善されるとともに、理由は明らかではないが、フローマークも改善することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
(a)ポリエステル系樹脂
本発明で使用する(a)ポリエステル系樹脂は、(i)テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、(ii)エチレングリコール60.5〜72.5モル%、ジエチレングリコール0モル%以上1.5モル%未満および1,4−シクロヘキサンジメタノール26〜38モル%からなるジオール成分(但し、前記エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計は100モル%であり、かつ前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成される)とから構成される樹脂である。
【0015】
ジエチレングリコール部分の形成量を低減させるには、公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、炭酸塩化合物を添加した後に重縮合反応を行う方法(特表2002−513429号公報)や、反応系外でテレフタル酸を融点以上に加熱した後、ジオール成分を100〜120℃程度に加熱し、反応系内にテレフタル酸、ジオール成分をこの順で導入し反応させる方法(特開2001−200042号公報)などが挙げられる。
【0016】
ジエチレングリコールの含有量は、耐衝撃性・フローマークの観点から0モル%以上1.5モル%未満、好ましくは0〜1.3モル%、より好ましくは0〜1.0モル%、よりさらに好ましくは0〜0.5モル%、最も好ましくは0モル%である。
【0017】
なお、ジエチレングリコールが1.5モル%以上であると、耐衝撃性が悪化する;成形時にフローマークが発生するという問題が生じる。
また、エチレングリコールが前記の範囲外、および/または、1,4−シクロヘキサンジメタノールが前記の範囲外であると、ポリエステル樹脂の結晶化がおこり成形後の収縮率が極めて大きくなり、柔軟性も損なわれ、好ましくない。
エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールの量関係において、前記範囲では、結晶化度が最も低く(結晶化時間が極めて長く)なる。これにより、シートの収縮が抑制され、柔軟性が高まりPVCの代替用途フイルムとして有用となる。
【0018】
また本発明では、前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成されることが必要である。トランスが65モル%未満あるいは75%超であると、耐衝撃性が悪化する;フローマークが発生するという問題が生じる。
1,4−シクロヘキサンジメタノールの製造方法は公知であり、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステルを銅クロム触媒の存在下で水素化した後蒸留して得ることができる。トランスおよびシス量の調整方法も公知であり、例えば特許第2537401号公報に開示されている。なお、該公報にはトランス量が90%を超える1,4−シクロヘキサンジメタノールの製造例が記載されているが、このような1,4−シクロヘキサンジメタノールは本発明の目的上、使用することができない。
【0019】
(a)ポリエステル系樹脂は、溶融状態からの結晶化半時間が少なくとも5分、好ましくは少なくとも12分のポリエステルである。結晶化半時間は、パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)モデルDSC−2示差走査熱量計を使用して測定する。15.0mgのサンプルをアルミニウムパンの中に密封し、約320℃/分の速度で290℃で2分間加熱する。次いで、サンプルを、所定の等温結晶化温度まで約320℃/分(装置として不可能な場合は20℃/分)の速度で、ヘリウムの存在下に、直ちに冷却する。結晶化半時間は、等温結晶化温度に達してからDSC曲線上の結晶化ピークの点までの時間間隔として決定する。
【0020】
本発明で使用する(a)ポリエステル系樹脂は(以下の測定条件で行った)GPC測定(RI検出器)による数平均分子量が16000〜24000であることが好ましい。数平均分子量が上記範囲内にあることにより、得られるシートの耐衝撃性を一層改善することができる。
測定装置名:島津製作所製HPLC VP
使用カラム:ShodexK806L(8mmφ×300mm)×2本
溶媒:クロロホルム液クロ用特級
サンプル濃度:0.2%(w/v)
流量:1ml/分
検出器:RI
注入量:100μl
測定温度:35℃
【0021】
なお、前記のように本発明におけるジカルボン酸成分はテレフタル酸のみを使用する。例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートなどのその他のジカルボン酸類を1モル%以上含むような場合は、本発明の目的を達成することができない。
【0022】
(b)添加剤
また本発明では、カレンダーロールへの前記ポリエステル系樹脂の粘着を防止するのに十分な量の添加剤が使用される。
本発明で使用するのに適切な添加剤は、カレンダリング技術分野で公知であり、これにはワックス、スリップ剤またはこれらの混合物が含まれる。このような添加剤の例には、ステアラミドのような脂肪酸アミド;ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛のような有機酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸及びパルミチン酸のような脂肪酸及びエステル;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスのような炭化水素ワックス;化学的に変性したポリオレフィンワックス;カルナウバのようなエステルサックス;グリセロールモノ−及びジステアレート;タルク並びにアクリルコポリマー(例えば、ローム・アンド・ハース社(Rohm & Haas) から入手できるパラロイド(PARALOID)K175)を含む。中でも好ましくは、グリセロールモノステアレートである。
【0023】
上記とは別に、本発明の(b)添加剤としては、下記の炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/またはその誘導体系ワックスも好ましい。
このような(b)成分としては、例えば炭素数28〜32の直鎖脂肪酸またはその誘導体の単体や、混合物であることができる。該炭素数が28〜32の範囲であると、添加剤の分散不良に起因するブツの発生が見られず、ロール剥離性も良好となる。また、前記誘導体は、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸を鹸化したもの、エステル化したもの等が挙げられる。なお、エステル化物は、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸をグリコール類でエステル化したものが好ましい。このようなグリコール類を用いたエステル化物は、下記式(1)で表される構造を有する。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、Rは脂肪酸の直鎖部分を表し、Qは炭素数2または3のアルキレン基を表す。なお、式(1)のエステル化物は、Q基を介して2分子の脂肪酸が結合しているが、この形態も本発明における(b)成分に含まれるものとする。
【0026】
本発明でとくに好ましい(b)成分は、モンタン酸をエチレングリコールまたはブチレングリコールでエステル化したものであり、最適には、モンタン酸をブチレングリコールで部分エステル化し、残りを水酸化カルシウムで鹸化した混合物である。このような最適の(b)成分は、市販されているものを利用することもでき、例えばクラリアントジャパン製のモンタン酸部分ケン化エステル「リコワックス−OP」(融点75℃)が挙げられる。
【0027】
(b)成分の配合割合は、前記(a)ポリエステル系樹脂100質量部に対し、0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。(b)成分の配合割合が0.2質量部以上であることにより、(b)成分の凝集や、分散不良に起因するブツの発生を抑制することができる。またカレンダー成形時、ストレーナに設置されたメッシュの目詰まりやロール剥離性、フローマークも改善される。10質量部以下であることにより、シート表面への吹き出しによるベタツキが発生しにくい。
【0028】
本発明で使用する樹脂組成物を製造する方法としては前記各成分を個別に準備し、通常の混練装置、例えばヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混練し、単軸押出機、二軸押出機バンバリーミキサーなど通常の賦形に用いられる装置により賦形して組成物となす方法を採用することができる。また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、通常の添加剤として使用される抗酸化剤、熱安定剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、摺動性向上剤、着色剤などを添加することもできる。さらに、本発明の樹脂組成物には、耐薬品性を向上する目的で、晶質ポリエステル樹脂を混合してもよい。
【0029】
本発明の製造方法は、前記樹脂組成物をカレンダリングする工程を有する。カレンダー成形機の種類はとくに制限されない。例えば使用するカレンダー装置に特に制限はなく、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、Z型ロールなどを挙げることができる。また、カレンダー処理条件もとくに制限されない。例えばカレンダーロールの温度は、130〜250℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは150〜200℃である。
【0030】
本発明のカレンダーシートの厚さは、例えば30〜1000μm、好ましくは50〜500μmである。
【0031】
また、本発明のカレンダーシートは、他の熱可塑性樹脂シートとラミネートすることができる。他の熱可塑性樹脂としては、非晶質のポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられるが、非晶質のポリエステル樹脂に結晶性ポリエステル樹脂を添加することも可能である。これとは別に、カレンダーシートと、前述の本発明における(a)成分からなるシートとをラミネートしてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0033】
下記例では、次の各種材料のいずれかを使用した。
(1)ポリエステル系樹脂(a−1)
グリコール成分:エチレングリコール(EG)69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)31.0モル%およびジエチレングリコール(DEG)0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸(TPA)
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21000である。
なお、上記の各成分の構成割合は、13C−NMR(核磁気共鳴装置(NMR)日本電子製GX−400)を用い、試料約40mgを5mm径の試料管中で重水素化クロロホルムで溶解し測定試料として測定し確認したものである(以下も同様)。
【0034】
(2)ポリエステル系樹脂(a−2)
グリコール成分:エチレングリコール67.7モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール1.3モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は20500である。
【0035】
(3)ポリエステル系樹脂(a−3)
グリコール成分:エチレングリコール68.5モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0.5モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は20800である。
【0036】
(4)ポリエステル系樹脂(a−4)
グリコール成分:エチレングリコール68.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール1.0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21000である。
【0037】
(5)比較用ポリエステル系樹脂(a’−1)
グリコール成分:エチレングリコール67.2モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール1.8モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21100である。
【0038】
(6)比較用ポリエステル系樹脂(a’−2)
グリコール成分:エチレングリコール67.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール2.0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は20500である。
【0039】
(7)比較用ポリエステル系樹脂(a’−3)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス60モル%およびシス40モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21000である。
【0040】
(8)比較用ポリエステル系樹脂(a’−4)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス80モル%およびシス20モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21200である。
【0041】
(9)比較用ポリエステル系樹脂(a’−5)
グリコール成分:エチレングリコール66.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール3.0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21200である。
【0042】
(10)比較用ポリエステル系樹脂(a’−6)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸99.0モル%および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸1.0モル%
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21000である。
【0043】
(11)比較用ポリエステル系樹脂(a’−7)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸99.0モル%および1,3−シクロヘキサンジカルボン酸1.0モル%
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は20500である。
【0044】
(12)比較用ポリエステル系樹脂(a’−8)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸99.0モル%および1,2−シクロヘキサンジカルボン酸1.0モル%
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は20800である。
【0045】
(13)比較用ポリエステル系樹脂(a’−9)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸99.0モル%および1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート1.0モル%
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は20800である。
【0046】
(14)比較用ポリエステル系樹脂(a’−10)
グリコール成分:エチレングリコール69.0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール31.0モル%およびジエチレングリコール0モル%(1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス70モル%およびシス30モル%から構成される)
ジカルボン酸成分:テレフタル酸ジメチル99.0モル%および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸1.0モル%
から構成されるポリエステル。
該ポリエステルのGPC測定(RI検出器)による数平均分子量は21000である。
【0047】
(15)添加剤
製造会社:クラリアントジャパン
商品名:リコワックスOP(モンタン酸部分ケン化エステル。鹸化部分はカルシウム塩、融点75℃)
【0048】
(実施例1〜4および比較例1〜10)
表1に示す配合処方を有する各種組成物を、バンバリーミキサーを用いて溶融混練し、カレンダー成形し、厚さ300μm、幅1300mmのシートを得た。カレンダー成形機としては、逆L型を用いた。また、カレンダー条件は、カレンダーロール温度185℃とした。
【0049】
カレンダーシートの耐衝撃性をデュポン衝撃試験によって調べた。該試験は次のようにして行った。シートを23℃の温度に放置した後、突端直径1/2インチの撃芯とその直径と合致した凹みを持つ受け台との間に置き、所定の高さから重鎮を落下させ、シート面のクラック発生の有無を観察する。重鎮を落下させる高さおよび重鎮の重さを変えていきクラックが発生しない最大値を求め、下記の計算式より衝撃値を得る。
衝撃値(kg・cm)= 荷重(重鎮の重量(kg)×高さ(重量を落下した高さ(cm))
【0050】
また、成形性(フローマーク)試験を行った。具体的には、東洋精機(株)E−30Aハンディーサーフ表面粗さ測定器を用いて、JIS B0601に規定される断面曲線から算出される最大高さRmax(基準長さ:25mm)を測定することにより、
◎:10μm未満、○:10〜20μm、△:20μm超30μmまで、×:30μm超、として評価した。
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
表1の結果から、ジカルボン酸成分とジオール成分の種類および含有量の条件を満たした各実施例では、比較例に比べて、耐衝撃性、成形性(フローマーク)に大きな改善が見られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、耐衝撃性を改善し、フローマークの発生を防止してカレンダー成形性を高めたカレンダーシートおよびその製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)および(b)成分を含有してなる樹脂組成物から成形されたことを特徴とするカレンダーシート。
(a) (i)テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、
(ii)エチレングリコール60.5〜72.5モル%、ジエチレングリコール0モル%以上1.5モル%未満および1,4−シクロヘキサンジメタノール26〜38モル%からなるジオール成分(但し、前記エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計は100モル%であり、かつ前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成される)と
から構成されたポリエステル系樹脂。
(b) カレンダーロールへの前記ポリエステル系樹脂の粘着を防止するのに十分な量の添加剤。
【請求項2】
前記(a)ポリエステル系樹脂のGPC測定(RI検出器)による数平均分子量が16000〜24000であることを特徴とする請求項1に記載のカレンダーシート。
【請求項3】
前記(b)添加剤が、ワックス、スリップ剤またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のカレンダーシート。
【請求項4】
前記(b)添加剤が、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/またはその誘導体系ワックスであることを特徴とする請求項3に記載のカレンダーシート。
【請求項5】
前記(b)添加剤が、グリセロールモノステアレートであることを特徴とする請求項3に記載のカレンダーシート。
【請求項6】
下記(a)および(b)成分を含有してなる樹脂組成物をカレンダリングする工程を有することを特徴とするカレンダーシートの製造方法。
(a) (i)テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、
(ii)エチレングリコール60.5〜72.5モル%、ジエチレングリコール0モル%以上1.5モル%未満および1,4−シクロヘキサンジメタノール26〜38モル%からなるジオール成分(但し、前記エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計は100モル%であり、かつ前記1,4−シクロヘキサンジメタノールはトランス65〜75モル%およびシス25〜35モル%から構成される)と
から構成されたポリエステル系樹脂。
(b) カレンダーロールへの前記ポリエステル系樹脂の粘着を防止するのに十分な量の添加剤。
【請求項7】
カレンダーロールの温度を130℃〜250℃に調節して前記カレンダリングを行うことを特徴とする請求項6に記載のカレンダーシートの製造方法。