説明

カレンダ装置

【課題】カレンダロールの汚れを効果的に除去して、製品の品質を安定化させることができるカレンダ装置を提供する。
【解決手段】複数のカレンダロールC1〜C7を平行かつ順次相接するように配置し、隣り合うカレンダロールC1〜C7の間のニップN1〜N6にウェブWを通すことにより、ウェブWの表面をカレンダ処理するカレンダ装置1において、各ニップN1〜N6の上流にカレンダロールC1〜C7を掃除する粘着ロールA1R〜A7R、A1L〜A7Lを設置する。これにより、ウェブWをニップする前にカレンダロールC1〜C7の汚れが除去できるため、ウェブWの表面が傷つくのを防止でき、製品の品質を安定化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカレンダ装置に係り、特にカレンダローラの掃除手段を備えたカレンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にフィルム状の磁気記録媒体の製造工程では、磁気記録媒体の表面平滑性の向上を図るため、カレンダ装置によってカレンダ処理が行われる。カレンダ装置は、2つのカレンダローラの間(ニップ)に磁気記録媒体を通して、磁気記録媒体を挟持し加圧することにより、磁気記録媒体の表面を平滑化する。このカレンダ装置を構成するカレンダローラは、その表面が高い平滑性を有するように形成されており、これにより、カレンダ処理後の磁気記録媒体に高い平滑性が付与されることとなる。
【0003】
しかし、カレンダローラの表面に汚れが付着したままカレンダ処理が行なわれると、その汚れによって磁気記録媒体の表面が傷付けられ、平滑性が損なわれることとなる。このため、カレンダローラの表面に付着する汚れを除去する必要が生じる。
【0004】
そして、このようなカレンダローラの表面に付着する汚れを除去する方法として、従来は、図6に示すように、カレンダローラC1〜C7の磁気記録媒体Wが接触していない円周面に所定の表面粗さを有する粘着ローラA1〜A7等を接触させて、カレンダローラの表面に付着する汚れを除去していた(たとえば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平3−76024号公報
【特許文献2】特開平8−180403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、たとえば最初のニップでカレンダローラC2の表面に汚れが付着した場合、そのまま除去されずに次のニップで磁気記録媒体の挟持、加圧が行われてしまうため、その汚れによって磁気記録媒体Wの表面が傷付けられてしまうという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カレンダローラの汚れを効果的に除去して、製品の品質を安定化させることができるカレンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、複数のカレンダローラを平行かつ順次相接するように配置し、隣り合うカレンダローラの間のニップに帯状可撓性の支持体を通すことにより、該支持体の表面をカレンダ処理するカレンダ装置において、各ニップの上流位置にカレンダローラを掃除する掃除手段を備えたことを特徴とするカレンダ装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、各ニップの上流位置にカレンダローラを掃除する掃除手段が備えられる。これにより、支持体をニップで挟持、加圧する前にカレンダローラの汚れが除去されるため、支持体の表面が傷つくのを防止でき、製品の品質を安定化させることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記各ニップの上流位置と下流位置に前記各カレンダローラを掃除する掃除手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のカレンダ装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、各ニップの上流位置と下流位置にカレンダローラを掃除する掃除手段が備えられる。これにより、さらに効果的にカレンダローラの表面を掃除できる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記掃除手段は、前記カレンダローラの周面に接触して掃除する粘着ローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカレンダ装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、掃除手段が粘着ローラで構成され、この粘着ローラをカレンダローラの周面に接触させて、カレンダローラの表面を掃除する。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記粘着ローラを掃除する粘着ローラ掃除手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載のカレンダ装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、粘着ローラを掃除する粘着ローラ掃除手段が設けられている。これにより、粘着ローラを常に清浄な状態に保つことができ、さらに効果的にカレンダローラの汚れを除去することができるようになる。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記粘着ローラ掃除手段は、前記粘着ローラの周面に接触して掃除する第2の粘着ローラであることを特徴とする請求項4に記載のカレンダ装置を提供する。
【0016】
本発明によれば、粘着ローラ掃除手段が第2の粘着ローラで構成され、この第2の粘着ローラを粘着ローラの周面に接触させて、粘着ローラの汚れを取り除く。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カレンダローラの汚れを効果的に除去して、製品の品質を安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係るカレンダ装置を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
なお、ここでは磁気記録媒体の製造工程で使用されるカレンダ装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0020】
図1は、磁気記録媒体の製造工程の説明図である。帯状可撓性の支持体(ウェブ)は、原反ロールから送り出され(ステップS1)、まず、塗布部において、一方の面に磁性層、他方の面にバックコート層が塗布される(ステップS2)。この後、乾燥部で乾燥されて(ステップS3)、巻芯に巻き取られる(ステップS4)。巻芯に巻き取られたウェブは、次に、カレンダ部に送り出され(ステップS5)、そのカレンダ部でカレンダ処理されたのち(ステップS6)、巻芯に巻き取られてロール状に形成される(ステップS7)。この後、ロール状のウェブは、熱処理部において、所定温度に設定された環境雰囲気で所定時間放置されて熱処理されたのち(ステップS8)、裁断部に送り出され(ステップS9)、裁断部で長手方向に沿ってスリットされることにより、所定のテープ幅を有する磁気テープとされて(ステップS10)、巻芯に巻き取られる(ステップS11)。
【0021】
図2は、本発明が適用されたカレンダ装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態のカレンダ装置1は、複数(ここでは7本)のカレンダローラC1〜C7を平行かつ順次相接するように配置して構成され、隣り合うカレンダローラC1〜C7の間にウェブWを挟持し、加圧するためのニップN1〜N6が形成されている。
【0022】
ウェブWは、ガイドローラG、G、…にガイドされながら各カレンダローラC1〜C7の間のS字を描くようにして図中矢印方向に走行する。そして、各カレンダローラC1〜C7の間のニップN1〜N6を通過する過程でニップN1〜N6に挟持、加圧されて、カレンダ処理が施され、表面が平滑化される。
【0023】
各カレンダローラC1〜C7の両サイドには、それぞれ粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lが設けられている。各粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lは、それぞれカレンダローラC1〜C7の周面に接触しており、カレンダローラC1〜Cと共に回転して、カレンダローラC1〜C7の周面に付着した汚れをカレンダローラC1〜C7から転着させて取り除く。
【0024】
ここで、この粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lのうち第1のカレンダローラC1の右サイドに設置された粘着ローラA1Rと第2のカレンダローラC2の右サイドに設置された粘着ローラA2Rは、それぞれ第1のカレンダローラC1と第2のカレンダローラC2とによって形成される第1のニップN1の上流側に位置し、第1のニップN1の直前位置で第1のカレンダローラC1と第2のカレンダローラC2とから汚れを除去する。
【0025】
また、第2のカレンダローラC2の左サイドに設置された粘着ローラA2Lと第3のカレンダローラC3の左サイドに設置された粘着ローラA3Lは、それぞれ第2のカレンダローラC2と第3のカレンダローラC3とによって形成される第2のニップN2の上流側に位置して、第2のニップN2の直前位置で第2のカレンダローラC2と第3のカレンダローラC3とから汚れを除去する。
【0026】
以下同様に、第3のカレンダローラC3の右サイドに設置された粘着ローラA3Rと第4のカレンダローラC4の右サイドに設置された粘着ローラA4Rは、第3のニップN3の直前位置で第3のカレンダローラC3と第4のカレンダローラC4とから汚れを除去し、第4のカレンダローラC4の左サイドに設置された粘着ローラA4Lと第5のカレンダローラC5の左サイドに設置された粘着ローラA5Lは、第4のニップN4の直前位置で第4のカレンダローラC4と第5のカレンダローラC5とから汚れを除去する。また、第5のカレンダローラC5の右サイドに設置された粘着ローラA5Rと第6のカレンダローラC6の右サイドに設置された粘着ローラA6Rは、第5のニップN5の直前位置で第5のカレンダローラC5と第6のカレンダローラC6とから汚れを除去し、第6のカレンダローラC6の左サイドに設置された粘着ローラA6Lと第7のカレンダローラC7の左サイドに設置された粘着ローラA7Lは、第6のニップN6の直前位置で第6のカレンダローラC6と第7のカレンダローラC7とから汚れを除去する。
【0027】
なお、第1のカレンダローラC1の左サイドに設置された粘着ローラA1Lと第7のカレンダローラC7の右サイドに設置された粘着ローラA7Rは、それぞれ第1のニップN1と第6のニップN6の下流側に位置し、第1のニップN1と第6のニップNの直後の位置で第1のカレンダローラC1と第7のカレンダローラC7とから汚れを除去する。
【0028】
なお、粘着ローラA2Rに関しては、第1のニップの直前位置で第2のカレンダローラC2の汚れを除去すると同時に第2のニップの直後の位置で第2のカレンダローラC2の汚れを除去することとなり、また、粘着ローラA2Lに関しては、第1のニップの直後の位置で第2のカレンダローラC2の汚れを除去すると同時に第2のニップの直前位置で第2のカレンダローラC2の汚れを除去することとなる。粘着ローラA3R、A3L、A4R、A4L、A5R、A5L、A6R、A6Lに関しても同様である。
【0029】
以上のように構成された本実施の形態のカレンダ装置1によれば、各ニップN1〜N6の上流位置に粘着ローラA1R〜A7R、A1R〜A7Rが設置されているため、各ニップN1〜N7において、カレンダローラC1〜C7の表面を常に汚れのない状態に保つことができる。すなわち、たとえば第1のニップN1で第2のカレンダローラC2に汚れが付着した場合であっても、第2のニップN2の直前で粘着ローラA2Lによって汚れが取り除かれるため、第2のニップN2では、汚れのない状態でウェブWを挟持、加圧することができる。これにより、カレンダローラC1〜C7に付着した汚れによってウェブWの表面が傷つけられるのを防止でき、ウェブの品質を安定化させることができる。
【0030】
図3は、本実施の形態のカレンダ装置1でカレンダ処理された磁気記録媒体と従来のカレンダ装置でカレンダ処理された磁気記録媒体とを[ロール処理回数]に対する[エラー率/エラー規格]で比較したグラフである。
【0031】
同図に示すように、従来のカレンダ装置でカレンダ処理された磁気記録媒体は、処理回数が50を越えたあたりから、急激にR[エラー率/エラー規格]が上昇するのに対して、本実施の形態のカレンダ装置1でカレンダ処理された磁気記録媒体は、処理回数が増えてもR[エラー率/エラー規格]をほぼ一定に保つことができる。
【0032】
このように、本実施の形態のカレンダ装置1によれば、各ニップN1〜N6の直前でカレンダローラC1〜C7が掃除されるため、常に高い平滑性を保って各カレンダローラC1〜C7がウェブWをニップできる。これにより、高精度に平滑化されたウェブWを安定して提供することができる。また、これにより、ウェブ巻き取り時における、表面の凹凸の写りを低減できる。
【0033】
また、カレンダローラは、粘着ローラで取り切れない汚れを除去するために、定期的に装置を止めて掃除する必要があるが、本実施の形態のカレンダ装置によれば、掃除頻度を減らすことができ、この結果、装置の稼働率を向上させることができる。また、カレンダローラ自体の寿命も延ばすことができる。
【0034】
なお、粘着ローラに関しては、硬度10〜90°(JIS−K6253)、より好ましくは硬度10〜30°(JIS−K6253)のものを用いるのが好ましい。また、粘着ローラの粘着力は5000mm(JIS−Z0237)以下で使用することが好ましく、低ければ低いほど好ましい。また、一般に粘着力と硬度は相関があるため、使用開始時の硬度より30°以上上がった場合には新たなものに交換することが好ましい。
【0035】
また、粘着ローラの材質については、特に限定されないが、ブチルゴム、ウレンタゴム、シリコーンゴム等を主材料とした粘着ローラを用いることが好ましい。
【0036】
なお、本実施の形態では、カレンダローラの掃除手段として粘着ローラを用いているが、他の構成の掃除手段を用いてもよい。たとえば、溶剤を染み込ませた不織布をカレンダローラの周面に接触させてカレンダローラの表面を掃除するようにしてもよいし、また、超音波洗浄によってカレンダローラの表面を洗浄するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施の形態のように、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lを用いてカレンダローラC1〜C7の表面を掃除する場合には、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lを掃除する手段を設置するようにしてもよい。たとえば、図4に示すように、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lを掃除する第2の粘着ローラB1R〜B7R、B1L〜B7Lを設置する。この第2の粘着ローラB1R〜B7R、B1L〜B7Lは、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lよりも硬度が同等以下のものが用いられ、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lの周面に接触して設置される。そして、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lと共に回転し、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lの表面に付着した汚れを転着させて取り除く。
【0038】
また、本実施の形態では、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lが、常にカレンダローラC1〜C7の周面に接触する構成としたが、図5に示すように、各粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7LをカレンダローラC1〜C7に対して進退移動可能に構成し、必要に応じてカレンダローラC1〜C7に接触させるようにしてもよい。たとえば、加熱ローラの場合には、常時接触させるとゴムが溶ける若しくは劣化するので、オフライン時にはカレンダローラC1〜C7から離すようにする。粘着ローラ以外の掃除手段を用いた場合も同様である。
【0039】
また、粘着ローラA1R〜A7R、A1L〜A7Lの回転駆動してもよいし、しなくてもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、第1のニップN1と第6のニップN6の下流側に粘着ローラA1L、A7Rを設置しているが、粘着ローラA1L、A7Rは必ずしも設置する必要はない。なお、このように各ニップの下流側にも粘着ローラを設置することにより、さらに効果的にカレンダローラの汚れを取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】磁気記録媒体の製造工程の説明図
【図2】本発明が適用されたカレンダ装置の概略構成図
【図3】本実施の形態のカレンダ装置でカレンダ処理された磁気記録媒体と従来のカレンダ装置でカレンダ処理された磁気記録媒体とを[ロール処理回数]に対する[エラー率/エラー規格]で比較したグラフ
【図4】本発明に係るカレンダ装置の他の実施の形態の概略構成図
【図5】本発明に係るカレンダ装置の他の実施の形態の概略構成図
【図6】従来のカレンダ装置の概略構成図
【符号の説明】
【0042】
1…カレンダ装置、W…ウェブ、C1〜C7…カレンダローラ、N1〜N6…ニップ、A1R〜A7R、A1L〜A7L…粘着ローラ、B1R〜B7R、B1L〜B7L…第2の粘着ローラ、G…ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカレンダローラを平行かつ順次相接するように配置し、隣り合うカレンダローラの間のニップに帯状可撓性の支持体を通すことにより、該支持体の表面をカレンダ処理するカレンダ装置において、
各ニップの上流位置にカレンダローラを掃除する掃除手段を備えたことを特徴とするカレンダ装置。
【請求項2】
前記各ニップの上流位置と下流位置に前記各カレンダローラを掃除する掃除手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のカレンダ装置。
【請求項3】
前記掃除手段は、前記カレンダローラの周面に接触して掃除する粘着ローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカレンダ装置。
【請求項4】
前記粘着ローラを掃除する粘着ローラ掃除手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載のカレンダ装置。
【請求項5】
前記粘着ローラ掃除手段は、前記粘着ローラの周面に接触して掃除する第2の粘着ローラであることを特徴とする請求項4に記載のカレンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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