説明

カロテノイドレベルを改変したトランスジェニックパイナップル植物体及びその作製方法

本発明は形質転換細胞におけるカロテノイド蓄積を調節し、所定態様では前記細胞の着色を調節するカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターによるパイナップル細胞及び植物体の形質転換方法を提供する。本発明は形質転換細胞からのパイナップル植物体の再生も可能にする。更に、本発明はカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを導入したパイナップル細胞及び植物体も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権申告)
37C.F.R.§1.71(e)に従い、出願人は本開示の一部が著作権保護の対象となる内容を含んでいることを申告する。著作権者は特許文献又は特許開示が特許商標局の特許ファイル又は記録通りに複製されることに異議ないが、それ以外については如何なる著作権も留保する。
(関連出願とのクロスリファレンス)
【0002】
本願は米国予備出願第60/431,323号(出願日2002年12月6日)の優先権を主張し、その開示内容全体を参考資料として全目的で本明細書に組込む。
【背景技術】
【0003】
多くの果物や野菜には健康によい種々の植物化学物質が含まれている。疫学、臨床及び実験室研究によると、種々のカロテノイドは冠状動脈性心臓病(Barton−Duell(1995)Endocrinologist,5:347−356)、所定の癌(Giovannucci(1999)J.Natl.Cancer Inst.,91:317−331)、及び加齢黄斑変性(Seddonら(1994)J.Am.J.Med.Assoc.,272:1413−1420)等の慢性疾患の発症を低減する。従って、植物におけるカロテノイド生合成を遺伝子操作により調節すると、作物の栄養品質が変化すると考えられる。
【0004】
パイナップル植物体(Bromeliaceae科のAnanas comosus)は熱帯単子葉植物であり、葉は堅く、周囲にとげがあり、内側に湾曲しており、短い茎に小さな結実しない密集した長円状頭花をつける。多くの種のパイナップル植物体の果実はヒト消費用に使用されている。これらの種としてはSmooth Cayenne、Red Spanish、Perolera、Pernambuco、及びPrimaveraが挙げられる。植物体は自家不和合性であり、果実を生産する間の期間が長い。従って、従来の育種で果実品質及び他の農業形質を改善することは困難であった。
【0005】
上記から明らかなように、カロテノイドレベルを改変したトランスジェニックパイナップル植物体が望ましい。特に、果実組織におけるカロテノイドレベルの高いパイナップル植物体が得られるならば、この重要な作物の栄養品質が向上するであろう。更に、特に製品差別化のためには着色を改変した遺伝子組換えパイナップル植物体が望ましい。本発明のこれらの特徴及び他の種々の特徴は以下の開示を精読することにより理解されよう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要約)
本発明はパイナップル植物体におけるカロテン生産に関する。より具体的には、本発明はパイナップル細胞又は植物体におけるカロテノイド生合成を調節する発現レギュレーターによりパイナップル細胞又は植物体を遺伝子組換えする方法を提供する。特に、本発明はパイナップル植物体着色、特に果実組織着色の改変方法に加えて、パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積の調節方法を提供する。更に、本発明はパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を調節するカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを導入したパイナップル細胞を提供する。これらのパイナップル細胞から再生されたパイナップル植物体も提供する。
【0007】
1側面において、本発明は少なくとも1種のパイナップル細胞(例えば胚形成細胞、器官形成細胞、胚形成カルス細胞、器官形成カルス細胞等)におけるカロテノイド蓄積の調節方法に関する。本方法は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをパイナップル細胞に導入する段階を含む。カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積に比較してパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を増減させることにより、パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を調節する。所定態様では、パイナップル細胞は少なくとも1種の分裂組織細胞(例えば非頂端分裂組織細胞等)を培養することにより発生させた器官形成細胞である。これらの態様の所定のものでは、培養は分裂組織細胞を培養して少なくとも1本のシュートを発生させる段階と、シュートからの少なくとも1個の外植片を培養して器官形成細胞を発生させる段階を含む。
【0008】
少なくとも1種のパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積の調節方法はパイナップル細胞(例えば胚形成細胞、器官形成細胞等)から少なくとも1種の植物体を再生する段階を更に含む。例えば所定態様では、パイナップル細胞はパイナップル細胞集団を含み、方法は(i)カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを含むパイナップル細胞集団の1以上のメンバーを選択する段階と;(ii)前記メンバーから1種以上のパイナップル植物体を再生する段階と;(iii)カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル植物体におけるカロテノイド蓄積に対するカロテノイド蓄積の改変についてパイナップル植物体をスクリーニングする段階を更に含む。所定態様では、カロテノイド蓄積の改変はパイナップル植物体の果実組織に実質的に特異的である。方法はパイナップル植物体を微細繁殖させる段階を更に含む。
【0009】
別の側面では、本発明はパイナップル植物体着色の改変方法に関する。本方法は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを少なくとも1種のパイナップル植物体に導入する段階を含み、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはパイナップル植物体における少なくとも1種のカロテノイド(例えばリコペン、β−カロテン等)の蓄積を調節し、パイナップル植物体の着色を改変する。即ち、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル植物体における着色カロテノイド蓄積に比較してパイナップル植物体における着色カロテノイド蓄積を増減させる。一般に、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを少なくとも1種のパイナップル細胞に導入し、この細胞からパイナップル植物体を再生する。所定態様では、着色の改変はパイナップル植物体の果実組織に実質的に特異的である。場合により、これらの方法はパイナップル植物体を微細繁殖させる段階を更に含む。
【0010】
更に別の側面では、本発明は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを導入したパイナップル細胞(例えば胚形成細胞、器官形成細胞、胚形成カルス細胞、器官形成カルス細胞等)を提供する。カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積に比較してパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を増減させる。本発明は更にパイナップル細胞から再生されたパイナップル植物体を提供する。
【0011】
本発明のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは場合により有機(例えばDNA,RNA等)又は無機分子を含む。例えば所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントはパイナップル細胞又は植物体のゲノムに安定的に組込まれる。一般に、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントは構成的又は誘導的プロモーターに機能的に連結されている。所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントはカロテノイド生合成ポリペプチドの果実特異的発現を促進するプロモーターに機能的に連結されている。例えば、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは場合により例えばイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、ζ−カロテンデサチュラーゼ、リコペンβ−シクラーゼ、リコペンε−シクラーゼ、β−カロテンヒドロキシラーゼ、ε−ヒドロキシラーゼ等から選択される少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド(例えば植物カロテノイド生合成ポリペプチド、細菌カロテノイド生合成ポリペプチド、人工進化カロテノイド生合成ポリペプチド等)をコードする少なくとも1個の核酸セグメントを一般に含む。更に、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは場合によりパイナップル細胞もしくは植物体に対して異種であるか又はパイナップル細胞もしくは植物体の少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチドに相同である少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む。
【0012】
カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは本発明のトランスジェニックパイナップル細胞及び植物体において種々の方法でカロテノイド蓄積を行う種々の態様を含む。例えば、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは場合により少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のセンス又はアンチセンス核酸セグメントを含む。センス及びアンチセンス核酸セグメントを使用すると、例えば抑制される酵素の基質であるカロテノイドの蓄積を行うためのカロテノイド生合成経路から選択されたカロテノイド生合成酵素の発現を抑制することができる。所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは形質転換細胞で発現されると、ターゲットカロテノイド生合成遺伝子の発現を亢進する少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド転写因子をコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む。他の態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドプロモーター及び/又は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドエンハンサーをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントは所望により遺伝子の発現を増減するように少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも1種のプロモーター及び/又は少なくとも1種のエンハンサーと相同組換えする。
【0013】
本発明のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはほぼ任意送達技術を利用してパイナップル細胞又は植物体に導入される。例えば所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはアグロバクテリウムによる送達を使用してパイナップル細胞又は組織に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む。他の態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは例えば花粉による送達、前記パイナップル細胞の少なくとも1個のプロトプラストへの直接核酸導入、遺伝子銃、マイクロインジェクション、花房のマクロインジェクション、ひげによる受精、レーザーパーフォレーション、超音波等から選択される少なくとも1種の核酸送達技術を使用してパイナップル細胞又は植物体に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む。所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはパイナップル植物体に注入される。
【0014】
図1A〜Cはカロテノイド生合成経路の諸側面を模式的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定態様に限定されないとと理解すべきである。また、本明細書で使用する用語は特定態様のみの説明を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。特に指定しない限り、単位、乗数、及び記号は国際単位系(SI)により提案されている形態で記載する。数値範囲は範囲の両端値を含むものとする。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「細胞」と言う場合には(例えば組織等の形態の)2個以上の細胞を含み、他の用語についても同様である。更に、特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に一般に理解されていると同一の意味をもつ。以下に定義する用語とその文法的変形は明細書全体を参照することにより一層明確になる。
【0016】
「核酸」なる用語はヌクレオチド鎖に対応させることができるモノマー単位の任意物理的連鎖を意味し、例えばヌクレオチドポリマー(例えば典型的DNA又はRNAポリマー)、PNA、修飾オリゴヌクレオチド(例えば生体RNA又はDNAには一般的でないヌクレオチドを溶解状態で含むオリゴヌクレオチド、例えば2’−O−メチル化オリゴヌクレオチド)、及び/又は同等物が挙げられる。核酸は例えば1本鎖でも2本鎖でもよい。特に指定しない限り、本発明の特定核酸配列は指定配列以外に相補的配列も意味する。核酸なる用語は例えばオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、遺伝子、cDNA、RNAi、及び遺伝子によりコードされるmRNAと同義に使用する。
【0017】
「核酸配列」なる用語は核酸セグメントにおけるヌクレオチドの順序と呼称を意味する。
【0018】
「ポリヌクレオチド」とは文脈に応じてヌクレオチド(A、C、T、U、G等又は天然もしくは人工ヌクレオチドアナログ)のポリマー又はヌクレオチドポリマーを表す文字列である。所与核酸又は相補的核酸は任意特定ポリヌクレオチド配列から決定することができる。
【0019】
2種の核酸は同一配列をもつとき、又は一方の核酸が他方と相補的であるとき、又は一方の核酸が他方のサブ配列であるとき、又は一方の配列が他方から天然もしくは人工操作により誘導されるときに相互に「対応」する。
【0020】
「遺伝子」なる用語は生物学的機能に関連する任意核酸セグメントの意味で広義に使用される。従って、遺伝子はコーディング配列と、場合によりその発現に必要な調節配列を含む。遺伝子は更に場合により例えば他の蛋白質の認識配列を形成する非発現DNA又はRNAセグメントを含む。遺伝子は各種起源から得ることができ、例えば該当起源からのクローニングや公知又は予想配列情報からの合成が挙げられ、所望パラメーターをもつように設計された配列でもよい。
【0021】
「核酸セグメント」なる用語は少なくとも25ヌクレオチド長、通常は少なくとも100ヌクレオチド長、一般に少なくとも200ヌクレオチド長、典型的には少なくとも300ヌクレオチド長、より典型的には少なくとも400ヌクレオチド長、最も典型的には少なくとも500ヌクレオチド長のポリヌクレオチド又は転写可能なその類似体を意味する。例えば、核酸セグメントとしては全長遺伝子(例えばフィトエンシンターゼ等のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする遺伝子)、又は前記遺伝子のサブ配列が挙げられる。
【0022】
「T−DNA」なる用語は核酸セグメントを植物細胞に導入するためにアグロバクテリウムから移動させ、植物細胞に導入することができる核酸セグメントを意味する。
【0023】
「連結」なる用語は相互に隣接しており、2個のアミノ酸コーディング領域を結合することが必要な場合には隣接して同一読み枠内にある核酸セグメントを一般に意味する。「連結」なる用語は相互に同時分離される核酸も意味する。更に、「機能的に連結」なる用語は2個以上の核酸セグメント間の機能的連結を意味する。例えば、プロモーター配列が核酸セグメントの転写を開始及び媒介するときに、プロモーターとポリペプチドをコードする核酸セグメントは機能的に連結されている。
【0024】
「カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーター」なる用語はこれを導入する細胞においてカロテノイド生合成に直接又は間接的に作用する有機又は無機分子を意味する。例えば、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはこれを導入して発現させる細胞においてカロテノイド蓄積を増加させるカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸セグメントとすることができる。
【0025】
「発現」なる用語は本発明の核酸セグメントから誘導されるセンス(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写と蓄積を意味する。発現とはポリペプチド(例えばカロテノイド生合成ポリペプチド)へのmRNAの翻訳を意味する場合もある。例えば本発明の所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチドは根、種子、果実等の予め選択された植物貯蔵器官で発現され、この植物貯蔵器官における1種以上のカロテノイド(例えば天然カロテノイド)の蓄積を増加させる。従って、「果実特異的発現」なる用語は例えば形質転換パイナップル植物体の「果実組織に実質的に特異的な」カロテノイド蓄積の改変を生じるように、例えば導入されるカロテノイド生合成ポリペプチドの発現が本発明のパイナップル植物体の果実組織に実質的に限定されることを意味する。
【0026】
「プロモーター」なる用語は遺伝子の発現調節エレメントを提供し、RNAポリメラーゼが特異的に結合してこの遺伝子のRNA合成(転写)を開始するDNA配列又はDNA配列群上の認識部位を意味する。「構成的プロモーター」なる用語は関連遺伝子の継続的転写を可能にする無制御下のプロモーターを意味する。「誘導的プロモーター」なる用語は細胞外分子(例えば遺伝子によりコードされる酵素の基質)等の別の物質又はインデューサーの存在下に関連遺伝子の転写を可能にする制御下のプロモーターを意味する。
【0027】
「選択マーカー」なる用語はその発現によりマーカー遺伝子を含む細胞を識別できるようにする遺伝子を意味し、例えばコードされるポリペプチド以外にマーカー遺伝子を含む核酸セグメント(例えばT−DNA)が挙げられる。例えば、選択マーカー遺伝子産物は細胞集団を有効量の除草剤に接触させると、形質転換されている細胞のみが生存し続けるように、形質転換細胞に除草剤耐性を付与することができる。
【0028】
「センス核酸セグメント」なる用語は一般にコーディング核酸セグメントを意味する。これに対して、「アンチセンス核酸セグメント」なる用語は一般にセンス核酸セグメントの相補的配列を意味する。
【0029】
「転写因子」なる用語は転写プロセス(即ちDNAセグメントのRNAコピーの作製)を調節する任意因子を意味する。通常は酵素又は他の蛋白質、補酵素、ビタミン、又は別の有機分子である。
【0030】
「エンハンサー」なる用語は遺伝子から所定距離に配置した場合でも遺伝子の発現に正の影響を与えるDNA配列を意味する。
【0031】
2種の核酸の各々に由来する配列が子孫核酸で結合しているときに2種の核酸は「組換え」られている。
【0032】
核酸セグメントはパイナップル植物体又は細胞のゲノムに非一過的に導入されるときにゲノムに「安定的に組込まれる」。例えば、パイナップル染色体に永久的に組込まれる異種核酸セグメントは対応するパイナップル細胞又は植物体のゲノムに安定的に組込まれる。
【0033】
「形質転換」なる用語は核酸セグメントを植物体又は植物細胞に導入することを意味し、導入の結果として核酸セグメントが遺伝的に安定して伝達されるか又は核酸セグメントが植物体もしくは植物細胞のゲノムに単に一過的に存在するかを問わない。形質転換核酸セグメントを含むパイナップル細胞又は植物体を「トランスジェニック」、「組換え」、又は「形質転換」パイナップル細胞又は植物体と言う。
【0034】
核酸セグメント等のポリヌクレオチド配列は別の種に由来する場合には生物又は第2のポリヌクレオチド配列に対して「異種」であり、同一種に由来する場合には元の形態又は天然形態から改変されている。例えば、異種コーディング配列に機能的に連結されたプロモーターとは、そのプロモーターが由来する種とは異なる種に由来するコーディング配列を意味し、同一種に由来する場合には、天然対立遺伝子変異体とは異なるコーディング配列を意味する。
【0035】
核酸は共通祖先配列から天然又は人工的に誘導される場合に「相同」である。相同性は2種以上の核酸間の配列類似性から推測されることが多い。これは突然変異と自然淘汰の結果として長期間にわたって共通祖先配列から2種以上の子孫配列が誘導されるにつれて自然に発生する。人工相同配列は種々の方法で作製することができる。例えば、核酸配列をde novo合成し、選択した親核酸配列と異なる配列の核酸を得ることができる。例えばクローニング中や化学的突然変異誘発中に行われるように核酸配列を相互に人工的に組換え、相同子孫核酸を作製することにより人工相同性を作り出すこともできる。コードされる遺伝子産物に生じるアミノ酸配列変異を最小限にしながら類似性の高い核酸部分の頻度と長さを増加するように、他の点では異なる核酸間のコーディング配列の一部又は全部を合成により調整するように遺伝コードの冗長を使用して人工相同性を作り出すこともできる。このような人工相同性は同一配列部分の頻度を少なくとも3塩基対長増加することが好ましい。同一配列部分の頻度を少なくとも4塩基対長増加することがより好ましい。一般に2種の核酸は配列類似性を示す場合に共通祖先をもつと予想される。しかし、相同性を立証するために必要な厳密な配列類似性レベルは当分野では多様である。一般に、本開示の目的では、2種の配列間即ち2種の配列の任意箇所で直接組換えが生じるために十分な配列一致があるときに2種の核酸配列は相同であるとみなす。
【0036】
「コードする」なる用語は1種以上のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を意味する。この用語は開始又は停止コドンを必要としない。アミノ酸配列はポリヌクレオチド配列により提供される任意読み枠でコードすることができる。
【0037】
「ベクター」なる用語は細胞で複製することができるか及び/又は他の核酸セグメントの複製を生じるようにこれらのセグメントを機能的に連結することができる染色体外エレメントを意味する。このようなエレメントは任意起源に由来する1本鎖又は2本鎖DNA又はRNAの線状又は環状の自律複製配列、ゲノム組込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列とすることができ、(例えば1種以上のプロモーターとカロテノイド生合成酵素をコードする1種以上の遺伝子を含む)核酸セグメントを適当な3’非翻訳配列と共に細胞に導入することが可能な構築物に多数のヌクレオチド配列を結合又は組換えしている。ベクターの1例はプラスミドである。ベクター又はベクターシステム(例えばバイナリーベクターシステム、トライナリーベクターシステム等)は例えばカロテノイド生合成酵素をコードする遺伝子に加え、パイナップル細胞又は植物体の形質転換を助長するエレメント、形質転換パイナップル細胞における導入遺伝子の発現を亢進するエレメント(例えばプロモーター)、形質転換パイナップル細胞の選択を助長するエレメント(例えば選択マーカー、レポーター遺伝子等)等のエレメントを含むことができる。「発現ベクター」なる用語はベクター内で遺伝子に機能的に連結されているときに遺伝子(例えばカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする遺伝子)の発現を調節することが可能な染色体外エレメントを意味する。
【0038】
「ポリペプチド」なる用語は2個以上のアミノ酸残基を含むポリマー(例えばペプチド又は蛋白質)を意味する。ポリマーは更にラベル、クエンチャー、保護基等の非アミノ酸エレメントを含むことができ、場合によりグリコシル化等の修飾を含むことができる。ポリペプチドのアミノ酸残基は天然でも非天然でもよく、置換されていなくても、修飾されていなくても、置換されていても、修飾されていてもよい。
【0039】
「カロテノイド生合成ポリペプチド」なる用語はカロテノイド生合成経路における少なくとも1段階を触媒する生体触媒又は酵素を意味する。カロテノイド生合成ポリペプチドとしては、例えばゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、ζ−カロテンデサチュラーゼ、リコペンβ−シクラーゼ、リコペンε−シクラーゼ、β−カロテンヒドロキシラーゼ、ε−ヒドロキシラーゼ等が挙げられる。
【0040】
「ポリペプチド配列」なる用語はポリペプチドにおけるアミノ酸の順序と呼称を意味する。
【0041】
「人工進化カロテノイド生合成ポリペプチド」なる用語は1種以上のダイバーシティ誘導技術を使用して作製された蛋白質−触媒又は酵素(例えばフィトエンシンターゼ等)を意味する。例えば、本発明の実施で使用される人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドは場合により(例えば帰納的組換え等により)1種以上のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする2種以上の核酸を組換えるか、又は(例えば部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、帰納的集合突然変異誘発等を使用して)カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする1種以上の核酸を突然変異させることにより作製される。親カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸は転写及び翻訳メカニズムを介して親カロテノイド生合成ポリペプチド(例えば非人工進化ないし天然フィトエンシンターゼ)に対応するアミノ酸配列を生産するポリヌクレオチド又は遺伝子を含む。「人工進化カロテノイド生合成ポリペプチド」なる用語は更に2種以上の親に由来する識別可能な成分配列(例えば機能的ドメイン等)を含むキメラ酵素も意味する。本発明の実施で使用される人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドは一般に例えば天然カロテノイド生合成ポリペプチドよりも高い効率で産物を生産するように進化させる。
【0042】
「内在」なる用語は生物又は系内で天然に生産又は合成される物質を意味する。例えばパイナップル植物体又は細胞では、内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子は植物体又は細胞内で天然に生産(例えば発現)される。
【0043】
2種以上の核酸又はポリペプチド配列に関して「一致」又は「一致度」百分率なる用語は2種以上の配列又はサブ配列が同一であるかあるいは最大限に対応するように対比及び整列させ、配列比較アルゴリズムを使用するか又は目視により測定した場合に同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドが特定百分率であることを意味する。
【0044】
「配列類似性の高い」領域とは(例えば手動又は例えばデフォルトパラメーターに設定した汎用プログラムBLASTを使用することにより)最大対応するように整列させた場合に第2の選択領域と90%以上一致する領域を意味する。「配列類似性の低い」領域は(例えば手動又はデフォルトパラメーターに設定したBLASTを使用することにより)最大限に対応するように整列させた場合に第2の選択領域との一致度が30%以下、より好ましくは40%以下である。
【0045】
2種以上の核酸又はポリペプチド配列に関して「実質的に一致」なる用語は2種以上の配列又はサブ配列を最大限に対応するように対比及び整列させ、例えば配列比較アルゴリズムを使用するか又は目視により測定した場合にヌクレオチド又はアミノ酸残基一致度が少なくとも60%、好ましくは80%、最も好ましくは90〜95%であることを意味する。少なくとも約50残基長の配列の領域にわたって実質的一致度が存在することが好ましく、少なくとも約100残基長の配列の領域にわたることがより好ましく、少なくとも約150残基にわたって配列が実質的に一致していることが最も好ましい。所定態様では、配列はコーディング領域の全長にわたって一致している。
【0046】
「サブ配列」又は「フラグメント」とは核酸又はアミノ酸の完全配列の任意部分である。
【0047】
「ゲノム」なる用語は生物の染色体核酸を意味する。本明細書で使用する場合、ゲノムはプラスチドゲノム(例えばクロロプラストゲノム等)も含む。
【0048】
「アグロバクテリウム」なる用語はT−DNAを移動させ、パイナップル細胞等の植物細胞に選択的に導入することが可能な細菌アグロバクテリウムの種、亜種、又は株を意味する。例えば、アグロバクテリウムは場合によりAgrobacterium rhizogenesであるが、より一般にはAgrobacterium tumefaciensである。
【0049】
「胚形成細胞」なる用語は胚形成組織又は胚形成カルスに由来する細胞を意味する。
【0050】
「胚形成カルス」なる用語は明確な構造をもたない未分化の組織又は細胞であるが、胚を発生して植物体に成長することが可能な分化の進んだ組織(例えば胚形成組織)を形成する可能性のある組織又は細胞を意味する。
【0051】
「胚形成組織」なる用語は未成熟体細胞胚を含む組織化構造をもつ組織を意味する。未成熟体細胞胚は成熟培地で培養することにより成熟させることができる。成熟体細胞胚は発芽培地に移すと植物体に成長することができる。成熟体細胞胚は最終的に体細胞に由来する構造であり、形態的及び発生的に接合体胚と似ており、適当な増殖培地に移すと、根と茎の両者の極をもつ小植物に成長することができる。「体細胞」なる用語は配偶子以外の多細胞生物の細胞である。
【0052】
「器官形成細胞」なる用語は器官形成組織に由来する細胞を意味する。
【0053】
「器官形成カルス」なる用語は例えば組織培養で単一器官形成細胞から誘導され得る比較的未分化の細胞の不定形塊をもつ組織を意味する。
【0054】
「器官形成組織」なる用語は器官形成するように誘導できる組織、即ちその後、完全植物体を生成するように発根させることができるシュート等の植物器官を形成することができる組織を意味する。
【0055】
「分裂組織」なる用語は類似細胞又は分化して組織と器官を発生する細胞に分裂することが可能な細胞を含む形成植物組織を意味する。
【0056】
「分裂組織細胞」なる用語は植物分裂組織に由来する細胞を意味する。
【0057】
「非頂端分裂組織細胞」なる用語は頂端分裂組織に由来せず、側部ないし側芽分裂組織及び非頂端分裂組織外植片の培養により分裂組織となった細胞に由来し得る分裂組織細胞を意味する。
【0058】
「パイナップル植物体」なる用語はBromeliaceae科の植物体、例えばAnanas comosusを意味する。「パイナップル細胞」なる用語はパイナップル植物体に由来する細胞を意味する。
【0059】
パイナップル植物体の「再生」なる用語は発根したシュートを含むパイナップル植物体の形成を意味する。
【0060】
「有効量」なる用語は胚形成又は器官形成カルス又は組織の発生等の所望結果を達成するために十分な量を意味する。
【0061】
「カロテノイド」なる用語は炭化水素のカロテン類とその酸素化誘導体(即ちキサントフィル)を意味する。
【0062】
「カロテノイド生合成経路」又は「カロテン生産」なる用語は1種以上のカロテノイドを生産する触媒活性の組み合わせを意味し、一般には酵素によるものを意味する。
【0063】
「選択」なる用語は1種以上の植物体又は細胞が1種以上の該当性質(例えば選択マーカー、カロテノイドレベルの増減、着色改変等)をもつと識別するプロセスを意味する。例えば、選択プロセスは特定遺伝子型をもつものの成長を助長する条件下に生物をおく段階を含むことができる。更に、集団の1以上のメンバーの1種以上の性質を試験するように集団をスクリーニングすることができる。集団の1以上のメンバーが該当性質をもつと識別される場合には、これを選択する。選択は集団からメンバーを単離する段階を含むことができるが、これは必ずしも必要ではない。更に、選択とスクリーニングは同時に実施することができ、そうすることが多い。
【0064】
「スクリーニング」なる用語は集団を異なる群に分離するプロセスを意味する。スクリーニングプロセスは一般に1種以上の植物体又は細胞の1種以上の性質を試験する段階を含む。例えば、典型的なスクリーニングプロセスとしては1以上の集団の1以上のメンバーの1種以上の性質を試験する方法が挙げられる。
【0065】
「集団」なる用語は少なくとも2個の別個の細胞又は植物体の集合を意味する。
(II.概説)
【0066】
本発明は一般にはパイナップル細胞及び植物体の遺伝子組換え方法に関する。本発明のトランスジェニックパイナップルは特に既存種に比較して栄養品質が改善される。より具体的には、本発明は外来カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをパイナップル細胞又は植物体に選択的に導入することにより得られる遺伝子組換えパイナップル細胞及び植物体を提供する。カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を調節し、所定態様では、これらの細胞の着色も調節する。カロテノイドレベルの改変に加え、果実の甘み、酸味、肉質、及び成熟特性等の消費者に重視される他の形質も本明細書に記載する方法により改変することができる。場合により、細菌病耐性の改善、ウイルス病耐性の改善、及び/又は昆虫及び線虫耐性の改善等の他の農業形質も本発明の細胞及び植物体に付与される。
【0067】
所定態様では、本発明の方法は適切なパイナップル外植片材料の使用を含み、外植片材料をアグロバクテリウム細胞と接触させることにより遺伝子組換えする。アグロバクテリウム細胞は例えばカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸セグメントのパイナップル細胞導入を媒介する。カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを細胞又は植物体に導入する他の技術も場合により使用される。本発明は更にアグロバクテリウム細胞と同時培養するための胚形成又は器官形成細胞の形成を誘導する段階に適した培養培地も提供する。例えば所定態様では、形質転換胚形成細胞を選択し、これらの細胞から胚を形成する。胚を発芽させてシュートを形成し、発根させて完全な植物体とすることができる。
【0068】
パイナップル植物体を形質転換及び再生する各種器官形成アプローチも場合により使用する。例えば、本発明は分裂組織パイナップル細胞(例えば非頂端分裂組織細胞等)を培養して器官形成パイナップル細胞を発生させる段階を含む形質転換パイナップル細胞の作製方法を提供する。これらの方法は更にカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを器官形成パイナップル細胞に導入して形質転換器官形成パイナップル細胞を発生させる段階を含む。更に、本発明は分裂組織パイナップル細胞を培養してシュートを発生させる段階を含む形質転換パイナップル細胞の作製方法も提供する。これらの方法は更にシュートから外植片を培養して器官形成パイナップル細胞を発生させる段階を含む。所定態様では、これらの外植片は非頂端分裂組織パイナップル細胞を含む。更に、これらの方法はカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを器官形成パイナップル細胞に導入して形質転換器官形成パイナップル細胞を発生させる段階も含む。これらの器官形成方法は一般に更に形質転換器官形成パイナップル細胞からパイナップル植物体を再生する段階を含む。本発明のこれらの側面及び他の側面を以下に記載する。
(III.カロテノイド)
【0069】
本発明の数種の態様では、パイナップル細胞におけるカロテノイド発現を調節することによりパイナップル細胞における着色、及び/又はカロテノイド蓄積を調節する。カロテノイドは炭化水素の類(カロテン)とその酸素化誘導体(キサントフィル)である。これらの40炭素(C40)テルペノイドは各々8個の結合イソプレン(C5)単位を含み、2個の中心メチル基が1,6位の関係となり、残りの非末端メチル基が1,5位の関係となるようにイソプレノイド単位の配置が分子の中心で逆転している。α−カロテン、β−カロテン、アポカロテナール(β−アポ−8’−カロテナール)、リコペン(ψ,ψ−カロテン)、及びカンタキサンチン(4,4’−ジケト−β−カロテン)等のカロテノイドは食品着色剤として広く使用されており、多くのカロテノイドはプロビタミンA活性を湿す。本開示全体を通して慣用名と略称を使用し、一般に慣用名を先に記載した後に括弧内にIUPAC勧告半組織名を記載する。
【0070】
植物中のカロテノイドはプラスチドにおけるイソペンテニル二リン酸合成に関与するメバロン酸非依存経路を介して形成されるイソプレノイドである(Fraserら(2002)“Evaluation of transgenic tomato plants expressing an additional phytoene synthase in a fruit−specific manner,”Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:1092−1097)。ゲラニルゲラニル二リン酸は遍在イソプレノイド経路に由来し、トコフェロールとフィロキノンに加えてカロテノイドの前駆物質である。特に、ゲラニルゲラニル二リン酸はイソペンテニル二リン酸と場合によりジメチルアリル二リン酸、ゲラニル二リン酸、又はファルネシル二リン酸を含む種々の反応で生産することができる。図1A〜Cはカロテノイド生合成経路の諸側面を模式的に示す。図面から明らかなように、20炭素原子前駆物質ゲラニルゲラニル二リン酸(I)からフィトエン(7,8,11,12,7’,8’,11’,12’−オクタヒドロ−ψ,ψ−カロテン)(II)への二量化は酵素フィトエンシンターゼ(A)により触媒されるカロテノイド生合成の最初の前駆段階である。フィトエン(II)はそれ自体は無色であるが、着色カロテノイドの前駆物質である。次の2酵素(フィトエンデサチュラーゼ(B)とζ−カロテンデサチュラーゼ(C))は夫々中間体フィトフルエン(7,7’,8,8’,11,12−ヘキサヒドロ−ψ,ψ−カロテン)(III)を介してフィトエン(II)を脱飽和し、中間体ニューロスポレン(7,8−ジヒドロ−ζ,ζ−カロテン)(V)を介してζ−カロテン(7,8,7’,8’−テトラヒドロ−ζ,ζ−カロテン)(IV)を脱飽和する。
【0071】
ζ−カロテンデサチュラーゼ(C)の産物はリコペン(ψ,ψ−カロテン)(VI)であり、その後、β−カロテン(β,β−カロテン)(IX)又はα−カロテン(XII)に環化することができる。リコペンは熟したトマト等の各種果実に特徴的な赤色を付与する。図1Bに示すように、リコペン(VII)からβ−カロテン(IX)への環化はリコペンβ−シクラーゼ(D)により触媒される反応で中間体γ−カロテン(VIII)を介して行われる。β−カロテンはビタミンA生産の前駆物質としてマーガリンやバター等の製品の着色剤として多く使用されており、最近では所定種の癌に予防効果があることが報告されている。β−カロテンヒドロキシラーゼ(E)により触媒されるβ−カロテンの水酸化はゼアサンチン(β,β−カロテン−3,3’−ジオール)(X)を生じる。ゼアキサンチンは家禽産業で着色剤として多く使用される黄色色素である。図1Cはリコペンε−シクラーゼ(F)とリコペンβ−シクラーゼ(D)を触媒として中間体δ−カロテン(ε,ψ−カロテン)(XI)を介してα−カロテン(XII)を生じるリコペン(VII)の環化を模式的に示す。α−カロテン(XII)はβ−カロテンヒドロキシラーゼ(E)とε−ヒドロキシラーゼ(G)を触媒として水酸化され、ルテイン(3,3’−ジヒドロキシ−α−カロテン)(XIII)を生じる。別のシクラーゼを生合成経路に組込むことにより環化パターンを変え、他の下流修飾酵素によりカロテノイド構造を更に誘導体化することもできる。
【0072】
一般に、カロテノイドの生合成経路は各種生物で研究されており、生合成経路は細菌から高等植物に至る生物で解明されている。例えば葉では、カロテノイドは通常はクロロプラストのグラナに存在し、光保護機能を提供する。β−カロテンとルテインが主なカロテノイドであり、ビオラキサンチンとネオキサンチンが少量存在する。カロテノイドは通常はクロロフィルの消失と共に花弁の成長中のクロモプラストに蓄積する。花弁に加え、クロロプラストから成長するにつれて果実クロモプラストにもカロテノイドが出現する。カロテノイドはニンジンの根やジャガイモ塊茎のクロモプラストにも存在する。β−カロテンは商業用ニンジン及びサツマイモの両者に存在する主色素であり、通常はごく少量のキサントフィルも存在する。例えばBritton,“Biosynthesis of carotenoids,”p.133−182,in T.W.Goodwin(Ed.),Plant Pigments,Academic Press,Inc.(1988)参照。
【0073】
トランスジェニック植物における植物フィトエンシンターゼ(Psy1)遺伝子の過剰発現又は発現阻害により果実のカロテノイドレベルを改変できることも研究により示されている。例えば、Birdら(1991)Biotechnology 9:635−639;Bramleyら(1992)Plant J.2:343−349;及びFrayら(1993)Plant Mol.Biol.22:589−602参照。カロテノイド生合成遺伝子はErwinia uredovora(Misawaら(1990)J.Bacteriol.172:6704−6712);Erwinia herbicola(国際出願第WO91/13078号,Armstrongら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 87:9975−9979);R.capsulatus(Armstrongら(1989)Mol.Gen.Genet 216:254−268,Romerら(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.196:1414−1421);及びThermus thermophilus(Hoshinoら(1993)Appl.Environ.Microbiol.59:3150−3153)等の種々の生物からもクローニングされている。
【0074】
カロテノイドとカロテン生産は更に例えばBrittonら(Eds.)Carotenoids:Spectroscopy,Vol.1,Springer−Verlag(1995),Brittonら(Eds.)Carotenoids:Synthesis,Birkhauser Verlag(1996),Brittonら(Eds.)Carotenoids,Vol.1a:Isolation and Analysis.Springer−Verlag(1995),Pfanderら(Eds.)Key to Carotenoids,2nd ed.,Springer−Verlag(1987),Passwaterら(Eds.)Beta−Carotene and Other Carotenoids:The Antioxidant Family That Protects against Cancer and Heart Disease and Strengthens the Immune System,Keats Publishing,Inc.(1999),Bauerfeind(Ed.)Carotenoid as Colorants and Vitamin a Precursors:Technological and Nutritional Applications,Academic Press,Inc.(1981),Abelsonら(Eds.)Carotenoids:Chemistry,Separation,Quantitation,and Antioxidation,Vol.213,Academic Press,Inc.(1992)、及びAbelsonら(Eds.)Carotenoids:Metabolism,Genetics,and Biosynthesis,Vol.214,Academic Press,Inc.(1993)にも記載されている。カロテノイドに関するその他の詳細は例えばBendich(1989)“Carotenoids and the immune response,”J.Nutr.,119:112−115,Britton(1995)“Structure and properties of carotenoids in relation to function,”FASEB J.,9:1551−1558,Di Mascioら(1989)“Lycopene as the most efficient biological carotenoid singlet oxygen quencher,”Arch.Biochem.Biophys.,274:532−538,Di Mascioら(1991)“Antioxidant defense systems:the role of carotenoids,tocopherols,and thiols,”Am.J.Clin.Nutr.,53:194S−200S,Mangelsら(1993)“Carotenoid content of fruits and vegetables:an evaluation of analytic data,”J.Am.Diet.Assoc.,93:284−296,Nishino(1998)“Cancer prevention by carotenoids,”Mutat.Res.,402:159−163,Ongら(1992)“Natural sources of carotenoids from plants and oils,”Meth.Enzymol.,213:142−167,Pfander(1992)“Carotenoids:an overview,”Meth.Enzymol.,213:3−13,及びSnodderly(1995)“Evidence for protection against age−related macular degeneration by carotenoids and antioxidant vitamins,”Am.J.Clin.Nutr.,62(suppl):1448S−1461Sに記載されている。
(IV.カロテノイド生合成ポリペプチドをコードするターゲット配列)
【0075】
本発明のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは場合により種々の無機又は有機分子を含む。所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸セグメントである。本明細書に記載する方法に従ってパイナップル細胞又は植物体を形質転換するためには場合によりほぼ任意のこのような核酸セグメントが利用される。従って、利用可能な全公知核酸を記載するには及ばない。場合によりパイナップル細胞又は植物体に導入されるカロテン生産関連核酸セグメントは一般に例えばイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、ζ−カロテンデサチュラーゼ、リコペンβ−シクラーゼ、リコペンε−シクラーゼ、β−カロテンヒドロキシラーゼ、ε−ヒドロキシラーゼ等をコードする。本明細書に記載する方法の実施に場合により利用されるカロテノイド生合成遺伝子の例と関連配列に関する文献情報を以下に記載する。
【0076】
カロテノイド合成が可能な生物であり、このような生合成の試みに使用される遺伝子起源はErwinia herbicolaである。Erwinia herbicolaは通性嫌気性生物である腸内細菌科のグラム陰性細菌である。Erwihia属は一般に3群に分けられる。3群のうち、herbicola群は一般にカロテノイドであることが判明した黄色色素を形成する種(例えばErwinia herbicola)を含む。これらの細菌は植物表面に腐生細菌として存在し、多くの植物病原体に起因する傷害で二次生物として存在する。これらは土壌、水中にも存在し、更にヒト等の動物体内の日和見病原体として存在する場合もある。
【0077】
国際出願公開第WO91/13078号(公開日1991年9月5日)は数種の単細胞及び多細胞生物で数種のカロテノイド分子を作製するためにErwinia herbicolaに由来する遺伝子を使用することを記載している。より詳細には、国際出願公開第WO91/13078号は構成的カリフラワーモザイクウイルスCaMV35Sプロモーターを含むベクターとAgrobacterium tumefaciensによるDNA導入を使用した高等植物におけるフィトエン生産の増加を記載している。タバコリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ−オキシゲナーゼ(RUBISCO又はRBCS)のトランジット(シグナル)ペプチドにそのN末端を連結したフィトエンシンターゼをコードする遺伝子の導入も、カロテノイドが一般に合成される場である植物クロロプラストに酵素を導入する方法として報告されている。国際出願公開第WO91/13078号は更に上記トランジットペプチド遺伝子と、β−カロテンの高クロロプラストレベルを得るために植物でリコペンをβ−カロテンに変換するリコペンシクラーゼの遺伝子を含む遺伝子を導入するためにAgrobacterium tumefaciensを使用することを記載している。更に、ヨーロッパ特許出願第0 393 690 A1号(公開日1990年10月24日)はカロテノイド分子を作製するために別のErwinia種であるErwinia uredovora 20D3(ATCC 19321)に由来するDNAを使用することを報告している。更に、本発明はパイナップル植物体の果実組織等の高等植物貯蔵器官にカロテノイド分子を蓄積するための酵素フィトエンシンターゼをコードするErwinia herbicola EHO−10(ATCC39368、別称Escherichia vulneris)に由来するDNAを場合により使用する。
【0078】
本明細書に記載する方法で場合により使用されるカロテノイド関連配列に関するその他の情報を以下に記載する。
【0079】
イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ
パイナップル細胞又は植物体を形質転換するために場合により使用されるイソペンテニル二リン酸イソメラーゼをコードする配列は、例えばR.Capsulatus(Hahnら(1996)J.Bacteriol.178:619−624とその引用文献)(アクセション番号U48963及びX82627)、Clarkia xantiana(アクセション番号U48962)、Arabidopsis thaliana(アクセション番号U48961)、Schizosaccharnomyces pombe(アクセション番号U21154)、Homo sapiens(アクセション番号X17025)、及びKluyveromyces lactis(アクセション番号X14230)から単離されている。
【0080】
ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ
本明細書に記載する形質転換で場合により使用されるゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼをコードする配列としては、例えばE.Uredovora(Misawaら(1990)J.Bacteriol.172:6704−6712及び国際出願第WO91/13078号)に由来するものや、ホワイトルピン(Aitkenら(1995)Plant Phys.108:837−838)、ピーマン(Badilloら(1995)Plant Mol.Biol.27:425−428)及びアラビドプシス(Scolnik and Bartely(1994)Plant Physiol 104:1469−1470;Zhuら(1997)Plant Cell Physiol.38:357−361)等の植物に由来するものが挙げられる。
【0081】
フィトエンシンターゼ
本発明で場合により利用されるフィトエンシンターゼをコードする配列としては、例えばCitrus unshiuフィトエンシンターゼmRNAに対応するアクセション番号AF220218(Kimら“Isolation of a cDNA encoding phytoene synthase from Citrus,”未公開)、Citrus unshiuフィトエンシンターゼmRNAに対応するアクセション番号AB037975(Ikomaら(2001)“Expression of a phytoene synthase gene and characteristic carotenoid accumulation during citrus fruit development,”Physiol.Plantarum.111:232−238)、Citrus x paradisiフィトエンシンターゼmRNAに対応するアクセション番号AF152892(Costaら“Developmental expression of carotenoid genes in Citrus,”未公開)、C.annuumフィトエンシンターゼpsy1 mRNAに対応するアクセション番号X68017(Romerら(1993)“Expression of the genes encoding the early carotenoid biosynthetic enzymes in Capsicum annuum,”Biochem.Biophys.Res.Commun.196(3):1414−1421)、Lycopersicon esculentumフィトエンシンターゼ(PSY2)mRNAに対応するアクセション番号L23424(Bartleyら(1993)“cDNA cloning,expression during development,and genome mapping of PSY2,a second tomato gene encoding phytoene synthase,”J.Biol.Chem.268(34):25718−25721)、C.meloフィトエンシンターゼPSY1 mRNAに対応するアクセション番号Z37543(Karvouniら(1995)“Isolation and characterisation of a melon cDNA clone encoding phytoene synthase,” Plant Mol.Biol.27(6):1153−1162)、及びトマトフィトエンシンターゼmRNAに対応するアクセション番号M84744(Bartleyら(1992)“A tomato gene expressed during fruit ripening encodes an enzyme of the carotenoid biosynthesis pathway,”J.Biol.Chem.267(8):5036−5039)に対応するものが挙げられる。
【0082】
フィトエンシンターゼ配列起源の他の例としては、例えばE.Uredovora、Rhodobacter capsulatus、及び他の植物が挙げられる(Misawaら(1990)J Bacteriol.172:6704−6712,アクセション番号D90087,国際出願第WO91/13078号,Armstrongら(1989)Mol.Gen.Genet.216:254−268,Armstrong“Genetic Analysis and regulation of carotenoid biosynthesis,”in Blankenshipら(Eds.),Anoxygenic photosynthetic bacteria:advances in photosynthesis,Kluwer Academic Publishers,Armstrongら(1990)Proc.Natl.Acad Sci USA 87:9975−9979,Armstrongら(1993)Methods Enzymol.214:297−311,Bartleyら(1993)J.Biol.Chem.268:27518−27521,Bartleyら(1992)J.Biol.Chem.267:5036−5039,Bramleyら(1992)Plant J.2:291−343,Rayら(1992)Plant Mol.Biol.19:401−404,Rayら(1987)Nucleic Acids Res.15:10587,Romerら(1994)Biochem.Biophys.Res.Commun.196:1414−1421,Karvouniら(1995)Plant Molecular Biology 27:1153−1162,アクセション番号U32636,Z37543,L37405,X95596,D58420,U32636,Z37543,X78814,X82458,S71770,L27652,L23424,X68017,L25812,M87280,M38424,X69172,X63873,X60441,及びArmstrong(1994)J.Bacteriol.1 76:4795−4802とその引用文献)。
【0083】
フィトエンデサチュラーゼ
本発明の方法に従ってパイナップル細胞又は植物体を形質転換するために場合により使用されるフィトエンデサチュラーゼをコードする配列の例としては、例えばC.annuumフィトエンデサチュラーゼpds1 mRNAに対応するアクセション番号X68058(Hugueneyら(1992)“Characterization and molecular cloning of a flavoprotein catalyzing the synthesis of phytofluene and zeta−carotene in Capsicum chromoplasts,”Eur.J.Biochem.209(1):399−407)、L.esculentumフィトエンデサチュラーゼmRNAに対応するアクセション番号X59948(Peckerら(1992)“A single polypeptide catalyzing the conversion of phytoene to zeta−carotene is transcriptionally regulated during tomato fruit ripening,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89(11):4962−4966)、Zea maysフィトエンデサチュラーゼmRNAに対応するアクセション番号L39266(Hableら(1995)“Maize phytoene desaturase maps near the viviparous5 locus,”Plant Physiol.108(3):1329−1330)、Lycopersicon esculentumフィトエンデサチュラーゼmRNAに対応するアクセション番号M88683(Giulianoら(1993)“Regulation of carotenoid biosynthesis during tomato development,”Plant Cell 5(4):379−387)、及びダイズフィトエンデサチュラーゼmRNAに対応するアクセション番号M64704(Bartleyら(1991)“Molecular cloning and expression in photosynthetic bacteria of a soybean cDNA coding for phytoene desaturase,an enzyme of the carotenoid biosynthesis pathway,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88(15):6532−6536)に対応するものが挙げられる。
【0084】
フィトエンデサチュラーゼ配列起源の他の例としては例えばE.uredovora(Misawaら(1990)J.Bacteriol.172:6704−6712、及び国際出願第WO91/13078号)(アクセション番号L37405,X95596,D58420,X82458,S71770,及びM87280)等の細菌に由来するものや、トウモロコシ(Liら(1996)Plant Mol.Biol.30:269−279)、トマト(Aracriら(1994)Plant Physiol.106:789)、及びCapisum annuum(ピーマン)(Hugueneyら(1992)J.Biochem.209:399−407)(アクセション番号U37285,X59948,X78271,及びX68058)等の植物に由来するものが挙げられる。
【0085】
ζ−カロテンデサチュラーゼ
本発明で場合により使用されるζ−カロテンデサチュラーゼをコードする配列としては、例えばCitrus sinensis ζ−カロテンデサチュラーゼ(zds遺伝子)mRNAに対応するアクセション番号AJ319762(Marcosら“Characterization of Pinalate,a novel Citrus sinensis variety with a fruit−specific alteration that results in yellow pigmentation and decreased ABA content,” 未公開)、Citrus unshiu ζ−カロテンデサチュラーゼCit−ZCD mRNAに対応するアクセション番号AB072343(Kasaiら“Citrus unshiu zeta−carotene desaturase,”未公開)、Lycopersicon esculentum ζ−カロテンデサチュラーゼmRNAに対応するアクセション番号AF195507(Bartleyら(1999)“Zeta−carotene desaturase(Accession No.AF195507)from tomato,”Plant Physiol.121(4):1383)、C.annuum ζ−カロテン/ニューロスポレンデヒドロゲナーゼmRNAに対応するアクセション番号X89897(Breitenbachら(1999)“Catalytic properties of an expressed and purified higher plant type zeta−carotene desaturase from Capsicum annuum,”Eur.J.Biochem.265(1):376−383)、及びZea mays ζ−カロテンデサチュラーゼ前駆物質mRNAに対応するアクセション番号AF047490(Luoら(1999)“A Maize cDNA Encoding Zeta carotene desaturase(Accession No.AF047490),”Plant Physiol.120(4):1206)に対応するものが挙げられる。
【0086】
リコペンβ−シクラーゼ
本発明の方法に従ってパイナップル細胞又は植物体を形質転換するために場合により使用されるリコペンβ−シクラーゼをコードする配列の例としては、例えばCitrus sinensisリコペンβ−シクラーゼ遺伝子に対応するアクセション番号AY094582(Xuら“Molecular cloning of lycopene beta−cyclase gene from Red flesh navel orange by using Tail−PCR,”未公開)、Citrus sinensisリコペンβ−シクラーゼ遺伝子に対応するアクセション番号AF240787(Xuら“Molecular cloning of lycopene beta−cyclase gene from orange(Citrus sinensis),”未公開)、Lycopersicon esculentumクロモプラスト特異的リコペンβ−シクラーゼmRNAに対応するアクセション番号AF254793(Ronenら(2000)“An alternative pathway to beta−carotene formation in plant chromoplasts discovered by map−based cloning of beta and old−gold color mutations in tomato,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97(20):11102−11107)、L.esculentumリコペンβ−シクラーゼmRNAに対応するアクセション番号X86452(Cunninghamら(1996)“Functional analysis of the beta and epsilon lycopene cyclase enzymes of Arabidopsis reveals a mechanism for control of cyclic carotenoid formation,”Plant Cell 8(9):1613−1626)に対応するものが挙げられる。
【0087】
リコペンε−シクラーゼ
本発明で場合により使用されるリコペンε−シクラーゼをコードする配列としては、例えばCitrus x paradisiリコペンε−シクラーゼmRNAに対応するアクセション番号AF486650(Costaら(2002)direct submission to Horticultural Sciences,University of Florida,Gainesville,FL,USA)、Spinacia oleraceaリコペンε−シクラーゼ(lec)mRNAに対応するアクセション番号AF463497(DeSouzaら“Production of Lutein in Microorganisms,”未公開)、Lactuca sativaリコペンε−シクラーゼmRNAに対応するアクセション番号AF321538(Cunninghamら(2001)“One ring or two? Determination of ring number in carotenoids by lycopene varepsilon−cyclases,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(5):2905−2910)、及びLycopersicon esculentumリコペンε−シクラーゼmRNAに対応するアクセション番号Y14387(Ronenら“Regulation of expression of the gene for lycopene epsilon cyclase during fruit ripening of tomato,”未公開)に対応するものが挙げられる。
【0088】
β−カロテンヒドロキシラーゼ
本発明の方法に従ってパイナップル細胞又は植物体を形質転換するために場合により使用されるβ−カロテンヒドロキシラーゼをコードする配列の例としては、例えばOryza sativa染色体10 BAC OSJNBa0053C23ゲノム配列に対応するアクセション番号AC092389(Buellら“Oryza sativa chromosome 10 BACOSJNBa0053C23 genomic sequence,”未公開)、Vitis vinifieraβ−カロテンヒドロキシラーゼ(bchl)遺伝子に対応するアクセション番号AF499108(Youngら“Isolation,characterization and heterologous expression of a beta−carotene hydroxylase from grapevine(Vitis vinifera),”未公開)、Citrus unshiu β−カロテンヒドロキシラーゼ(CHX2)mRNAに対応するアクセション番号AF315289(Kimら(2001)“Isolation and characterization of cDNAs encoding beta−carotene hydroxylase in Citrus,”Plant Sci.161(5):1005−1010)、及びCitrus unshiu β−カロテンヒドロキシラーゼ(CHX1)mRNAに対応するアクセション番号AF296158(Kimら(2001)“Isolation and characterization of cDNAs encoding beta−carotene hydroxylase in Citrus,”Plant Sci.161(5):1005−1010)に対応するものが挙げられる。
【0089】
ε−ヒドロキシラーゼ
本発明で場合により使用されるε−ヒドロキシラーゼをコードする配列としては、例えばArabidopsis thaliana染色体1,下部アーム完全配列に対応するアクセション番号AE005173(Theologisら(2000)“Sequence and analysis of chromosome 1 of the plant Arabidopsis thaliana,”Nature 408(6814):816−820)とArabidopsis thaliana染色体1,上部アーム完全配列に対応するアクセション番号AE005172(Theologisら(2000)“Sequence and analysis of chromosome 1 of the plant Arabidopsis thaliana,”Nature 408(6814):816−820)に対応するものが挙げられる。
【0090】
更に、カロテン生産微生物からのカロテノイド生合成酵素クラスターの核酸配列はGenBank(登録商標)のアクセション番号M87280(Erwinia herbicola Eho10)、D90087(Erwinia uredovora)、U62808(Flavobacterium)、D58420(Agrobacterium aurantiacum)及びM90698(Erwinia herbicola Eho13)等から得ることができる。
(V.人工進化カロテノイド生合成ポリペプチド)
【0091】
本発明の所定態様では、人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドを使用してトランスジェニックパイナップル細胞及び植物体におけるカロテノイド蓄積を調節する。例えば、触媒効率の増加、基質特異性の増加、及び/又は同等物等の所望形質又は性質を獲得するように上記に例示したターゲットカロテノイド生合成配列の任意のものを人工的に進化させることができる。人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドを作製するために使用可能な種々の人工ダイバーシティ誘導法が利用可能であり、文献に記載されている。これらの方法を別々又は組み合わせて使用し、核酸の変異体と、核酸変異体によりコードされるカロテノイド生合成蛋白質の変異体を作製することができる。これらの方法は個別でも総合しても個々のカロテノイド生合成核酸及び蛋白質、あるいはカロテノイド経路全体又は前記経路の選択部分を構築又は迅速に進化させる強力で広く適用可能な方法を提供する。これらの方法の産物は本発明の形質転換方法で使用することができる。
【0092】
特に、本明細書に記載するか又は当分野で公知の他のダイバーシティ誘導方法の任意のものを利用することにより、一般にカロテノイド生合成酵素をコードする核酸を選択もしくはスクリーニングするのに使用されるか又は触媒効率の増加等の望ましい性質を付与する1種以上の核酸を作製することができる。これは、当分野で公知の任意アッセイにより例えば自動又は自動化可能なフォーマットで検出できる任意活性を識別することにより実施することができる。実施者の判断に応じて種々の関連(又は非関連)性質を順次又は平行して評価することができる。
【0093】
本発明の形質転換方法で場合により使用される人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドは多種多様の技術を使用して誘導することができる。例えば、2種以上の親配列から誘導される識別可能な成分(例えば蛋白質ドメイン)を含むキメラ酵素を使用することができる。例えば、各種フィトエンシンターゼのドメインを識別し、キメラ子孫フィトエンシンターゼに付加するものを選択することができる。キメラ酵素設計に有用な各種配列比較アルゴリズム及び他のツールについて以下に詳述する。
【0094】
人工進化酵素は更にカセット突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発(例えばBotstein & Shortle(1985)“Strategies and applications of in vitro mutagenesis”Science 229:1193−1201;Carter(1986)“Site−directed mutagenesis” Biochem.J.237:1−7;及びKunkel(1987)“The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis”in Nucleic Acids & Molecular Biology(Eckstein,F.and Lilley,D.M.J.eds.,Springer Verlag,Berlin)参照)、化学的突然変異誘発、エラープローンPCR、部位飽和突然変異誘発、帰納的集合突然変異誘発等の種々の突然変異誘発法を使用して開発することができる。例えば、エラープローンPCRを使用して核酸変異体を作製することができる。例えばエラープローンPCRを使用し、PCR産物の全長に沿って高い点突然変異率が得られるようにDNAポリペプチドのコピー忠実度を低くした条件下でPCRを実施する。このような技術の例は例えばLeungら(1989)Technique 1:11−15及びCaldwellら(1992)PCR Methods Applic.2:28−33に詳細に記載されている。更に突然変異誘発技術の1例として、2本鎖DNA分子の小領域を例えば天然配列と異なる合成オリゴヌクレオチドカセットで置換する方法で場合によりカセット突然変異誘発を使用する。合成オリゴヌクレオチドは例えば完全及び/又は部分ランダム天然配列を含むことができる。カセット突然変異誘発に関するその他の詳細は例えばWellsら(1985)“Cassette mutagenesis:an efficient method for generation of multiple mutations at defined sites”Gene 34:315−323に記載されている。突然変異誘発により分子ダイバーシティを誘導する方法の別例は帰納的集合突然変異誘発法であり、蛋白質突然変異誘発用アルゴリズムを使用してアミノ酸配列の異なるメンバーからなる表現型の関連する突然変異体の種々の集団を作製する。この方法はフィードバックメカニズムを使用して組み合わせカセット突然変異誘発の連続ラウンドをモニターする。このアプローチの例はArkinら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815に記載されている。上記突然変異誘発技術はカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸にダイバーシティを誘導するために場合により使用される所定方法の例証に過ぎない。突然変異誘発によりダイバーシティを誘導する他の多くのアプローチも周知であり、これらのアプローチも本発明の方法に適切である。
【0095】
上記に記載したもの等のカロテノイド生合成ポリペプチドをコートする核酸は場合により帰納的配列組換えプロトコール等の各種組換え反応の基質としても使用される。これらの技術の多くは例えばChangら(1999)“Evolution of a cytokine using DNA family shuffling”Nature Biotechnology 17:793−797,Crameriら(1998)“DNA shuffling of a family of genes from diverse species accelerates directed evolution”Nature 391:288−291,Crameriら(1997)“Molecular evolution of an arsenate detoxification pathway by DNA shuffling,”Nature Biotechnology 15:436−438,Crameriら(1996)“Improved green fluorescent protein by molecular evolution using DNA shuffling”Nature Biotechnology 14:315−319,Stemmer(1995)“Searching Sequence Space”Bio/Technology 13:549−553、及びStemmer(1994)“Rapid evolution of a protein in vitro by DNA shuffling”Nature 370:389−391等の種々の刊行物に記載されている。
【0096】
上記ダイバーシティ誘導方法(例えばキメラ酵素設計及び合成、帰納的配列組換え等)の多くは出発配列間の相同性レベルを測定する段階を含む。例えば、配列比較と相同性測定のプロセスでは、ある配列(例えば組換えしようとする遺伝子配列のフラグメント又はサブ配列)を参照配列として使用し、他の試験核酸配列をこれと比較することができる。この比較は配列比較アルゴリズムを使用するか又は目視により実施することができる。アルゴリズムを使用する馬合には、試験配列と参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを特定する。こうすると、アルゴリズムは特定プログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験核酸配列の配列一致度百分率を計算する。
【0097】
本発明の目的では、例えばSmith & Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューター計算(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP,BESTFIT,FASTA,及びTFASTA)、又は目視により適切な配列比較を実行することができる。一般に、Current Protocols in Molecular Biology.F.M.Ausubelら,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2001年補遺)参照。配列一致度及び配列類似度百分率を測定するのに適切な検索アルゴリズムの別の例は例えばAltschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410に記載されているBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationから世界ウェブncbi.nlm.nih.gov.を通して公共入手可能である。
【0098】
突然変異誘発、ライブラリー構築及び他のダイバーシティ誘導法に用いるキットは市販されている。例えば、キットは例えばStratagene(例えばQuickChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット、及びChameleon(登録商標)2本鎖部位特異的突然変異誘発キット)、Bio/Can Scientific、Bio−Rad(例えば上記Kunkel法を使用)、Boehringer Mannheim Corp.、Clonetech Laboratories、DNA Technologies、Epicentre Technologies(例えば5プライム3プライムキット)、Genpak Inc.、Lemargo Inc.、Life Technologies(Gibco BRL)、New England Biolabs、Pharmacia Biotech、Promega Corp.、Quantum Biotechnologies、Amersham International plc、及びAnglian Biotechnology Ltd.から市販されている。
(VI.核酸作製)
【0099】
上記のもの等のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸セグメントは所定のDNA合成技術、DNA増幅、ヌクレアーゼ消化等を含む種々の方法又はその組み合わせを使用して作製することができる。核酸データベースから入手可能な検索可能な配列情報を核酸セグメント及びベクター選択及び/又は設計プロセス中に利用することができる。アクセス可能な公共データベース/検索サービスの例はGenbank(登録商標)、Entrez(登録商標)、EMBL、DDBJ、GSDB、NDB及びNCBIである。これらのデータベースは一般にインターネット又は各種ゲノム情報作製及び/又は保存専門企業から契約により入手可能である。これらのデータベースや他の有用なデータベースは容易に入手可能であり、当業者に公知である。
【0100】
本発明の方法のいずれかで使用するポリヌクレオチドの配列はマキサム−ギルバート法、サンガージデオキシ法、及びハイブリダイゼーションによるシーケンシング法等の当業者に周知の技術を使用しても容易に実施することができる。これらの方法の一般記載については、例えばStryer,Biochemistry,4th Ed.,W.H.Freeman and Company(1995)及びLewin,Genes VI,Oxford University Press(1997)参照。Maxam and Gilbert(1977)“A New Method for Sequencing DNA,”Proc.Natl.Acad.Sci.74:560−564,Sangerら(1977)“DNA Sequencing with Chain−Terminating Inhibitors,”Proc.Natl.Acad.Sci.74:5463−5467,Hunkapillerら(1991)“Large−Scale and Automated DNA Sequence Determination,” Science 254:59−67,及びPeaseら(1994)“Light−Generated Oligonucleotide Arrays for Rapid DNA Sequence Analysis,”Proc.Natl.Acad.Sci.91:5022−5026も参照。
【0101】
上記カロテノイド生合成酵素をコードする核酸セグメントは例えばMatteucciら(1981)J.Am.Chem.Soc.,103:3185のホスホトリエステル法を使用して化学的技術により作製することができる。当然のことながら、コーディング配列を化学的に合成することにより、単に天然アミノ酸残基配列をコードする塩基を適当な塩基で置換するだけで任意所望修飾を行うことができる。しかし、一般には従来記載されている配列を含む核酸セグメントが好ましい。更に、カロテノイド生合成酵素をコードする核酸セグメントは場合によりこれらの遺伝子を含む既存組換えDNA分子(プラスミドベクター)からも得られる。これらのプラスミドの所定のものはAmerican Type Culture Collection(ATCC),12301 Parklawn Drive,Rockville,MD,20852から入手可能である。
【0102】
本発明の核酸セグメント及び構築物又はベクターは分子クローニング法等の当分野で公知の多数の技術により作製することができる。発現ベクター等の組換え核酸の構築に適した多種多様のクローニング及びin vitro増幅法が当業者に周知である。本発明で使用するのに適したベクターについて以下に詳述する。突然変異誘発等の本発明で有用な分子生物学技術を記載した一般教科書としては、Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Vol.152,Academic Press,Inc.(1999)(“Berger”);Sambrookら,Molecular Cloning−−A Laboratory Manual,2nd Ed.,Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory(2000)(“Sambrook”);及びCurrent Protocols in Molecular Biology.Ausubelら(Eds.),Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2000年補遺)(“Ausubel”)が挙げられる。in vitro増幅法により当業者が実施するために十分な技術の例としてはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ−レプリカーゼ増幅及び他のRNAポリメラーゼ法(例えばNASBA)が挙げられ、これらはBerger、Sambrook、及びAusubelに加え、Mullisら(1987)米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innisら,eds.),Academic Press Inc.(1990)(“Innis”);Arnheim & Levinson(1990)Chemical and Engineering News 36−47;Kwohら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173;Guatelliら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874;Lomellら(1989)J.Clin.Chem.35:1826;Landegrenら,(1988)Science 241:1077−1080;Van Brunt(1990)Biotechnology 8:291−294;Wu and Wallace,(1989)Gene 4:560;Barringerら(1990)Gene 89:117,及びSooknanan and Malek(1995)Biotechnology 13:563−564に記載されている。in vitro増幅核酸のその他のクローニング法は米国特許第5,426,039号(Wallaceら)に記載されている。PCRによる大型核酸の増幅法はChengら(1994)Nature 369:684−685とその引用文献に要約されており、40kbまでのPCRアンプリコンが作製されている。制限消化、PCR増幅及び逆転写酵素とポリメラーゼを使用するシーケンシングに適した2本鎖DNAにほぼ任意RNAを変換できることも当業者に自明である。いずれも前出のAusubel、Sambrook及びBerger参照。
【0103】
本発明のベクター構築物に加える核酸配列の単離は当分野で公知の多数の技術により実施することができる。例えば、公知配列に基づくオリゴヌクレオチドを使用してcDNA又はゲノムDNAライブラリーで所望遺伝子を同定することができる。プローブを使用してゲノムDNA又はcDNA配列とハイブリダイズさせ、同一種又は別種で相同遺伝子を単離することができる。あるいは、酵素に対する抗体を使用し、対応するコーディング配列のmRNA発現ライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0104】
あるいは、増幅技術を使用して該当核酸(例えばカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする遺伝子)を核酸サンプルから増幅することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用してゲノムDNA、cDNA、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから所望遺伝子の配列を直接増幅することができる。PCR及び他のin vitro増幅法は、例えば発現させる蛋白質をコードする核酸配列をクローニングするため、サンプル中の所望mRNAの存在の検出用プローブとして核酸を使用するため、核酸配列決定のため、又は他の目的のためにも有用であると思われる。PCRの概論についてはInnis,前出参照。
【0105】
ポリヌクレオチドは技術文献に記載されているような周知技術により合成することもできる。例えばCarruthersら(1982)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.47:411−418,及びAdamsら(1983)J.Am.Chem.Soc.105:661参照。その後、相補鎖を合成し、適当な条件下で鎖を相互にアニールするか、又はDNAポリメラーゼと適当なプライマー配列を併用して相補鎖を付加することにより2本鎖DNAセグメントを得ることができる。
【0106】
プローブとして(例えばin vitro増幅法で遺伝子プローブとして)使用されるオリゴヌクレオチドは一般に、例えばNeedham−VanDevanterら(1984)Nucleic Acids Res.12:6159−6168に記載されているような自動合成器を使用してBeaucage and Caruthers(1981)Tetrahedron Letts.22(20):1859−1862に記載されている固相ホスホロアミダイトトリエステル法により化学的に合成される。本発明の核酸構築物又はベクターで使用されるオリゴヌクレオチドは注文製造し、当業者に公知の各種商業ソースから注文することもできる。
(VII.ベクター)
【0107】
本発明の形質転換パイナップル細胞及び植物体を作製するにはほぼ任意ベクター又はベクターシステムを使用することができる。所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする核酸セグメントをプラスミド又はプラスミドシステム(例えばバイナリーシステム、トライナリーシステム、シャトルベクターシステム等)の形態のベクターに機能的に連結する。場合により本発明で使用するのに適した所定プラスミドシステムの例は例えば米国特許第5,977,439号(Hamilton,発行日1999年11月2日)、5,929,306号(Toriskyら,発行日1999年7月27日)、5,149,645号(Hoekemaら,発行日1992年9月22日)、6,165,780号(Kawasaki,発行日2000年12月26日)、6,147,278号(Rogersら,発行日2000年11月14日)、4,762,785号(Comai,発行日1988年8月9日)、及び5,068,193号(Comai,発行日1991年11月26日)に記載されている。
【0108】
本明細書に記載する例えば発現カセットの形態の核酸セグメントは一般に5’−3’転写方向に転写及び翻訳開始領域、該当DNA配列(例えばカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする遺伝子)、並びにパイナップル植物体で機能的な転写及び翻訳終結領域を含む。終結領域は転写開始領域に内在するものでもよいし、目的DNA配列に内在するものでもよいし、別の起源に由来するもでもよい。オクトピンシンターゼ及びノパリンシンターゼ終結領域等の適切な終結領域はA.tumefaciensのTi−プラスミから入手可能である。Guerineauら,(1991),Mol.Gen.Genet.,262:141−144;Proudfoot,(1991),Cell,64:671−674;Sanfaconら,(1991),Genes Dev.,5:141−149;Mogenら,(1990),Plant Cell,2:1261−1272;Munroeら,(1990),Gene,91:151−158;Ballasら,(1989),Nucleic Acids Res.,17:7891−7903;及びJoshiら,(1987),Nucleic Acid Res.,15:9627−9639)も参照。
【0109】
所定態様では、本発明のカロテノイド生合成遺伝子は発現のためにクロロプラスト等のプラスチドにターゲティングされる。そこで、カロテノイド生合成遺伝子がプラスチドに直接装入されない場合には、発現カセットは該当遺伝子をプラスチドに誘導するためのトランジットペフチドをコードする遺伝子を更に含む。このようなトランジットペフチドは当分野で公知である。例えばVon Heijneら(1991)Plant Mol.Biol.Rep.9:104−126;Clarkら(1989)J.Biol Chem.264:17544−17550;della−Cioppaら(1987)Plant Physiol.84:965−968;Romerら(1993)Biochem.Biophys.Res Commun.196:1414−1421;及びShahら(1986)Science 233:478−481参照。本発明で有用な植物カロテノイド遺伝子は天然又は異種トランジットペフチドを利用することができる。
【0110】
本発明の構築物は更に該当ヌクレオチド配列に機能的に連結された植物翻訳コンセンサス配列(Joshi,C.P.,(1987),Nucleic Acids Research,15:6643−6653)、イントロン(Luehrsen and Walbot,(1991),Mol.Gen.Genet.,225:81−93)等の他の必要な任意レギュレーターを加えてもよい。
【0111】
所定態様では、5’リーダー配列を発現カセット構築物に加える。このようなリーダー配列は翻訳を促進するように作用することができる。翻訳リーダーは当分野で公知であり、例えばEMCVリーダー(Encephalomyocarditis 5’非コーディング領域)(Elroy−Steinら(1989)PNAS USA 86:6126−6130)等のピコルナウイルスリーダー;例えばTEVリーダー(タバコエッチウイルス)(Allisonら,(1986))、MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス)(Virology,154:9−20)等のポティウイルスリーダー;ヒト免疫グロブリン重鎖結合蛋白質(BiP)(Macejak,D.G.,and Sarnow,P.,(1991),Nature,353:90−94);アルファルファモザイクウイルスのコート蛋白質mRNAの非翻訳リーダー(AMV RNA 4)(Jobling,S.A.,and Gehrke,L.,(1987),Nature,325:622−625);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)(Gallie,D.R.ら,(1989),Molecular Biology of RNA,pages 237−256);及びトウモロコシ退緑斑紋ウイルスリーダー(MCMV)(Lommel,S.A.ら,(1991),Virology 81:382−385)が挙げられる。Della−Cioppaら,(1987),Plant Physiology.84:965−968も参照。
【0112】
該当DNA配列を発現させる場所によっては、パイナップル植物体優先コドン、あるいはクロロプラスト優先コドンをもつ配列を合成することが望ましい場合がある。パイナップル植物体優先コドンは特定該当植物種において最大量で発現される蛋白質中の最高頻度のコドンから決定することができる。ヨーロッパ特許出願第0359472号及び0385962号;国際出願第WO91/16432号;Perlakら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3324−3328;並びにMurrayら(1989)Nucleic Acids Res.17:477−498参照。こうして、ヌクレオチド配列をパイナップル植物体での発現に最適化することができる。当然のことながら、遺伝子配列の全部又は任意部分を最適化又は合成することができる。即ち、合成又は部分最適化配列も使用できる。クロロプラスト優先遺伝子の構築については、例えば米国特許第5,545,817を参照されたい。
【0113】
発現カセットを作製する際には、適正な向きで適宜適正な読み枠にDNA配列を配置するように各種DNAフラグメントを操作することができる。この目的では、アダプター又はリンカーを使用してDNAフラグメントを結合してもよいし、他の操作を使用して適切な制限部位の提供、必要以上のDNAの除去、制限部位の除去等を行ってもよい。このために、挿入、欠失又は置換(例えばトランジション又はトランスバージョン)を行う場合には、in vitro突然変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、切除、ライゲーション等を利用することができる。
【0114】
本発明のベクターは更に一般にプロモーター等の発現調節エレメントを含む。プロモーター配列がRNAポリメラーゼ結合とポリペプチドコーディング遺伝子の発現を誘導できるようにカロテノイド生合成ポリペプチドコーディング遺伝子を発現ベクターに機能的に連結する。ポリペプチドコーディング遺伝子の発現に有用なプロモーターとしては例えばPoszkowskiら(1989)EMBO J.3:2719及びOdellら(1985)Nature 313:810(1985)に記載されているような誘導的プロモーター、ウイルスプロモーター、合成プロモーター、構成的プロモーターと、例えばChuaら(1989)Science 244:174−181に記載されているような時間的に制御されるプロモーター、空間的に制御されるプロモーター及び時間と空間的に制御されるプロモーターが挙げられる。
【0115】
どの発現ベクターを選択するか、例えばどの予め選択された器官特異的プロモーターにポリペプチドコーディング遺伝子を機能的に連結するかは、所望される機能的性質(例えば蛋白質発現の位置と時機)によって異なる。本発明の実施に有用なベクターはパイナップル植物体のゲノムに組込まれ、複製を誘導することが可能であり、更に、機能的に連結される核酸セグメントに含まれるカロテノイド生合成ポリペプチドコーディング遺伝子の発現を誘導することも可能である。当分野で周知の通り、発現ベクター全体が宿主植物ゲノムに組込まれるのではなく、一部のみが組込まれる。それでも、ベクターは発現し易くするために組込まれると言う。
【0116】
本発明の所定態様では、構築物は結合核酸配列に加えてプロモーター、エンハンサーエレメント、及びシグナリング配列等のエレメントを含む。プロモーターの例としてはCaMVプロモーター、リブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ−オキシゲナーゼ小サブユニット遺伝子に由来するプロモーター、ユビキチンプロモーター、及びrolDプロモーターが挙げられる。エンハンサーエレメントの例は例えば米国特許第6,271,444号(発行日2001年8月7日,名義人McBrideら)に記載されている。シグナリング配列の例としては限定されないが、クロロプラストトランジットペフチド等の組織特異的トランジットペフチドをコードする核酸配列が挙げられる(例えばZhangら(2002)Trends Plant Sci 7(1):14−21参照)。
【0117】
所定態様では、コードされる配列の発現をパイナップル植物体の全組織で誘導する高度又は低度構成的植物プロモーターを使用することができる。このようなプロモーターは殆どの環境条件及び発生又は細胞分化状態で活性である。構成的プロモーターの例としては、Agrobacterium tumefaciensのT−DNAに由来する1’−又は2’−プロモーターや、当業者に公知の各種植物遺伝子に由来する他の転写開始領域が挙げられる。遺伝子の過剰発現が望ましくない状況では、発現レベルを低くするように低度構成的プロモーターを使用することができる。高レベルの発現が求められる場合には、強度プロモーター(例えばt−RNAもしくは他のpol IIIプロモーター、又はカリフラワーモザイクウイルスプロモーター等の強度pol IIプロモーター)を使用することができる。
【0118】
あるいは、植物プロモーターを環境制御下においてもよい。このようなプロモーターを本発明では「誘導的」プロモーターと言う。誘導的プロモーターにより転写を行うことができる環境条件の例としては病原体攻撃、嫌気性条件、又は光の存在が挙げられる。
【0119】
所定態様では、本発明の構築物に組込まれるプロモーターは「組織特異的」であり、従って、果実組織等の所定組織のみで所望遺伝子が発現されるような発生制御下におかれる。パイナップル植物体に内在する1種以上の核酸配列を構築物に組込む態様では、トランスフェクトした植物で遺伝子の発現を誘導するためにこれらの遺伝子に由来する内在プロモーター(又はその変異体)を使用することができる。本明細書に記載する人工進化核酸等の異種構造遺伝子の発現を誘導するためにも組織特異的プロモーターを使用することができる。
【0120】
上記プロモーターに加え、植物で機能する細菌由来プロモーターとしてはオクトピンシンターゼプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター及び天然Tiプラスミドに由来する他のプロモーターか挙げられる(Herrara−Estrellaら(1983)Nature 303:209−213参照)。ウイルスプロモーターとしてはカリフラワーモザイクウイルスの35S及び19S RNAプロモーターが挙げられる(Odellら(1985)Nature 313:810−812)。他の植物プロモーターとしてはリブロース−1,3−ビスリン酸カルボキシラーゼ小サブユニットプロモーターとファセオリンプロモーターが挙げられる。E8遺伝子や他の遺伝子に由来するプロモーター配列を使用してもよい。E8プロモーターの単離と配列はDeikman and Fischer(1988)EMBO J.7:3315−3327に詳細に記載されている。
【0121】
本発明の構築物を作製する際には、プロモーターと結合核酸セグメント以外の配列も使用することができる。正常ポリペプチド発現が所望される場合には、コーディング領域の3’末端のポリアデニル化領域を付加することができる。ポリアデニル化領域は天然遺伝子、種々の他の植物遺伝子、又はT−DNAに由来するものを利用できる。
【0122】
パイナップル植物体における遺伝子発現に有用な典型的ベクターは当分野で周知であり、Rogersら(1987)Meth.in Enzymol.,153:253−277(1987)に記載されているAgrobacterium tumefaciensの腫瘍誘導(Ti)プラスミドに由来するベクターが挙げられる。これらのベクターは植物組込みベクターであり、形質転換されると、ベクターはベクターDNAの一部をパイナップル植物体のゲノムに組込む。Tiプラスミドによる組込みベクターでは、宿主植物染色体に組込まれる領域はTiプラスミドの右端と左端の間の領域である。
【0123】
本発明で有用なA.tumefaciensベクターの例はSchardlら(1987)Gene 61:1−11 and Bergerら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86:8402−8406のプラスミドpKYLX6及びpKYLX7てある。プラスミドpKYLX6は中間構築物用に設計された大腸菌ベクターであり、プラスミドpKYLX7はクローニングされた遺伝子の組込み用に設計されたA.tumefaciensベクターである。改変ベクターpKYLX61及びpKYLX71は元のHindIII−SstIフラグメント多重クローニング部位領域の代わりにHindIII、XhoI、BamHI、PstI及びSstI部位を含む。本発明で有用な別のベクターはClontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,Calif.から市販されているプラスミドpBI101.2である。プラスミドpKYLX7、pKYLX71及びpB7101.2はvir遺伝子をもつ別のベクターとA.tumefaciensで併用されるバイナリーベクターである。本発明では例えばトライナリーベクターシステム等の別のベクターシステムも場合により使用される。別の植物形質転換システムは形質転換されると腫瘍ではなく毛根を誘導するAgrobacterium rhizogenesを利用する。例えば、国際公開第WO88/02405号(公開日1988年4月7日)は植物を形質転換するためにA.rhizogenes株A4及びそのRiプラスミドとA.tumefacierasベクターpARC8又はpARC16を併用することを記載している。アグロバクテリウムによる形質転換については以下に詳述する。
【0124】
レトロウイルス発現ベクターの使用も考えられる。本明細書で使用する「レトロウイルス発現ベクター」なる用語はレトロウイルスゲノムの長い末端反復配列(LTR)領域に由来するプロモーター配列を含むDNA分子を意味する。本発明のカロテノイド産物には食品製造及び着色に関連するものがあるので、レトロウイルス発現ベクターは真核細胞で複製できないことが好ましい。レトロウイルスベクターの構築と使用は例えばVermaの国際公開第WO87/00551号とCockingら(1987)Science 236:1259−62に記載されている。
【0125】
所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする遺伝子を発現させるために使用されるベクターは形質転換パイナップル細胞に選択表現型を付与する植物選択マーカーを含む。挿入するDNAセグメント上の選択植物マーカー遺伝子は通常は選択培地で形質転換胚形成又は器官形成組織又はカルスの生存と発生を可能にする機能をコードする。通常、選択マーカー遺伝子は抗生物質耐性をコードし、適切な遺伝子としては抗生物質スペクチノマイシン耐性をコードする遺伝子(例えばaadA遺伝子)、ストレプトマイシン耐性をコードするストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ(SPT)遺伝子、カナマイシン又はゲネチシン耐性をコードするネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子、ハイグロマイシン耐性をコードするハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)遺伝子、アセト乳酸シンターゼ(ALS)の作用を阻害するように作用する除草剤、特にスルホニル尿素型除草剤に対する耐性をコードする遺伝子(例えばこのような耐性を誘導する突然変異、特にS4及び/又はHra突然変異を含むアセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子)、グルタミンシンターゼの作用を阻害するように作用する除草剤(例えばホスフィノトリシン又はバスタ)に対する耐性をコードする遺伝子(例えばbar遺伝子)、あるいは当分野で公知の他の同様の遺伝子が挙げられる。bar遺伝子は除草剤バスタに対する耐性をコードし、nptII遺伝子は抗生物質カナマイシン及びゲネチシンに対する耐性をコードし、ALS遺伝子は除草剤クロロスルフロンに対する耐性をコードする。スルホニル尿素型除草剤に対する耐性に基づく選択が好ましい。グリーン蛍光蛋白質(GFP)又はβ−グルクロニダーゼ(GUS)に基づく選択マーカーも場合により使用され、例えばMantisら(2000)“Comparing the utility of−glucuronidase and green fluorescent protein for detection of weak promoter activity in Arabidopsis thaliana,” Plant Molecular Biology Reporter 18:319−330に詳細に記載されている。
【0126】
所望耐性遺伝子を組込んだ形質転換植物細胞の選択方法は当分野で周知である。例えば、マーカーがスルホニル尿素耐性である場合には、一般に適当な濃度のスルホニル尿素型除草剤(例えば1〜1000μg/l、好ましくは約5〜100μg/lの範囲のクロロスルフロン)を選択培地に加える。NPTII遺伝子を含むゲネチシン耐性パイナップル細胞又は組織の選択には、一般に10〜50mg/lのゲネチシンを培地に加える。aadA遺伝子を含むスペクチノマイシン耐性細胞又は組織は一般にスペクチノマイシン200〜1000mg/lを加えた培地で選択される。
【0127】
多くのカロテノイドは着色しているので、これらのカロテノイド産物は可視化し、その特徴的スペクトル及び他の分析方法により測定することができる。従って、カロテノイド生合成酵素をコードする遺伝子は形質転換細胞の目視選択を可能にするマーカー遺伝子として使用することができる。特に、このような形質転換細胞は一般にカロテノイドレベル増加の結果として黄色〜オレンジ色〜赤色を示す。所定態様では、他の分析技術を使用して形質転換パイナップル細胞を選択することもでき、例えば質量分析、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)、NMRスペクトロスコピー、及び慣用ハイブリダイゼーション技術が挙げられる。
【0128】
相補的付着末端又は平滑末端を介してDNAをベクターに機能的に連結するために各種の方法が開発されている。例えば、挿入する核酸セグメントとベクターに相補的ホモポリマー領域を付加することができる。その後、ベクターと核酸セグメントを相補的ホモポリマーテール間の水素結合により結合し、組換えDNA分子を形成する。
【0129】
あるいは、1個以上の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーを使用して核酸セグメントを組込み発現ベクターと結合することもできる。平滑末端核酸分子のライゲーションを触媒することが可能な酵素(例えばバクテリオファージT4 DNAリガーゼ)の存在下に大過剰量の合成リンカー分子と共に平滑末端核酸セグメントをインキュベートすることにより、合成リンカーを平滑末端核酸セグメントと結合する。従って、反応産物はその末端に合成リンカー配列をもつ核酸セグメントである。これらの核酸セグメントを次に適切な制限エンドヌクレアーゼで切断し、合成リンカーの末端と適合性の末端を生成する酵素で切断しておいた組込み発現ベクターにライゲーションする。各種制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーがNew England BioLabs(Beverly,MA)をはじめとする多数の業者から市販されている。
【0130】
導入されるDNAセグメントはパイナップル植物体におけるカロテノイドレベルの改変に加え、新規パイナップル植物形質を提供するため、既存パイナップル植物形質を強化するため、又はパイナップル植物体により示される表現型の発現を他の方法で改変するために選択された1種以上の遺伝子を更に含むことができる。このような付加形質としては除草剤耐性、殺虫剤耐性、耐病性、環境耐性(例えば熱、低温、干ばつ、塩分)、形態、成長特徴、栄養含量、味、収穫高、園芸特徴、消費者(品質)形質等が挙げられる。導入することができる遺伝子の例としてはパイナップルの特定疾病又は害虫に対する耐性を付与するか又は感受性を低下させるための遺伝子が挙げられる。このような遺伝子の例としてはフザリウム病、コナカイガラムシ疫病、マーブリング病及び線虫に対する感受性を低下させるものが挙げられる。
(VIII.カロテノイド生合成調節ストラテジー)
【0131】
導入する機能的遺伝子はパイナップル果実着色の改変等の所望表現型を付与するポリペプチドをコードする構造遺伝子とすることができる。あるいは、,機能的遺伝子はパイナップル植物体内における内在遺伝子の転写及び/又は発現を抑制、亢進、又は他の方法で改変するように転写及び/又は翻訳制御に役割を果たす調節遺伝子でもよい。例えば所定態様では、導入されるカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは形質転換細胞で発現されると、ターゲットカロテノイド生合成遺伝子の発現を亢進するカロテノイド生合成ポリペプチド転写因子をコードする核酸セグメントである。他の態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターはカロテノイド生合成ポリペプチドプロモーター及び/又はカロテノイド生合成ポリペプチドエンハンサーをコードする核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントは内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子のプロモーター及び/又はエンハンサーと相同組換えし、所望に応じて遺伝子の発現を増減させる。
【0132】
例えば、内在植物遺伝子の発現を抑制する多数の技術(例えばセンスもしくはアンチセンス抑制又はリボザイム)で各種DNA構築物を使用することができる。遺伝子発現のアンチセンスRNA阻害は報告されている。例えばSheehyら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85:8805−8809、及びHiattら,米国特許第4,801,340号参照。内在遺伝子の発現を調節するためのセンス抑制の使用の例については、Napoliら(1990)The Plant Cell 2:279−289,及び米国特許第5,034,323号参照。
【0133】
触媒RNA分子又はリボザイムも遺伝子発現を阻害するために使用することができ、遺伝子が阻害されるよりも上流のカロテノイド生合成経路に位置する選択されたカロテノイドの蓄積を行うために場合により使用される。ほぼ任意ターゲットRNAと特異的に対合し、特定位置でホスホジエステルバックボーンを切断することによりターゲットRNAを機能的に不活性化するリボザイムを設計することができる。この切断を行う際にリボザイム自体は変化しないので、リサイクルして他の分子を切断できるため、真の酵素であると言える。アンチセンスRNA内にリボザイム配列を付加すると、RNA切断活性が付与され、従って構築物の活性が増加する。
【0134】
多数の類のリボザイムが同定されている。リボザイムの1類は植物で自己切断及び複製することができる多数の小環状RNAに由来する。RNAは単独(ウイロイドRNA)又はヘルパーウイルス(サテライトRNA)と共に複製する。例えばアボカドサンブロッチウイロイドに由来するRNAや、タバコ輪斑病ウイルス、アルファルファ一過性条斑病ウイルス、ベルベットタバコ斑紋病ウイルス、solanum nodiflorum斑紋病ウイルス、及びサブタレニアンクローバー斑紋病ウイルスに由来するサテライトRNAが挙げられる。ターゲットRNA特異的リボザイムの設計と使用はHaseloffら(1988)Nature 334:585−591に記載されている。
【0135】
アンチセンス抑制についても、導入される配列は一次転写産物に対して全長である必要はなく、完全にプロセシングされたmRNAでもよい。一般に、高い相同性を使用するほど短い配列の使用を補うことができる。更に、導入される配列は同一イントロン又はエキソンパターンをもつ必要はなく、非コーディングセグメントの相同性も同様に有効であり得る。一般に、約30又は40ヌクレオチド〜約2000ヌクレオチドの配列を使用すべきであるが、少なくとも約100ヌクレオチドが好ましく、少なくとも約200ヌクレオチドの配列がより好ましく、少なくとも約500ヌクレオチドの配列が特に好ましい。
【0136】
更に、RNA干渉(RNAi)(転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)とも言う)を場合により利用してパイナップル細胞及び植物体におけるカロテノイド蓄積を調節する。RNAiはメッセンジャーRNAを破壊することによりターゲット遺伝子の効果を選択的に無効にする。ターゲットmRNAを破壊することにより、蛋白質合成を妨害し、それによりターゲット遺伝子を有効に「サイレンシング」する。所定態様では、このプロセスは一方の鎖がターゲットmRNAと実質的に同一である2本鎖RNA(dsRNA)により開始される。従って、本発明の所定態様では、カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターは2本鎖dsRNAの生産を開始するためにパイナップル細胞に導入された後にRNAiプロセスの一環として小さい干渉RNA(siRNA)に分解される核酸セグメントを含む。この結果、ターゲットmRNAが破壊され、カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする内在遺伝子等のターゲット遺伝子の発現が有効にサイレンシングされる。RNAiに関するその他の詳細は例えば米国特許第6,573,099号(発明の名称「ターゲット遺伝子の発現を遅延又は抑制するための遺伝子構築物(GENETIC CONSTRUCTS FOR DELAYING OR REPRESSING THE EXPRESSION OF A TARGET GENE)」、発行日2003年6月3日、名義人Graham)や、例えばArenzら(2003)“RNA interference:from an ancient mechanism to a state of the art therapeutic application ?” Naturwissenschaften.90(8):345−59,Wangら(2003)“RNA interference:antiviral weapon and beyond,”World J Gastroenterol.9(8):1657−61,及びLaveryら(2003)“Antisense and RNAi:powerful tools in drug target discovery and validation”Curr Opin Drug Discov Devel.6(4):561−9に記載されている。ターゲット遺伝子サイレンシングを実施するために利用することができる注文核酸セグメントもAmbion,Inc.(Austin,TX,USA)、Benitec Australia Limited(St Lucia,AU)等の各種製造業者から市販されている。
【0137】
導入する機能的遺伝子はその天然形態から改変されることが多い。例えば、上記センス及びアンチセンス構築物は天然遺伝子の転写産物の全部又は一部を転写可能なセグメントの5’末端でプロモーター配列に機能的に連結し、転写可能なセグメントの3’末端で(ポリアデニル化配列を含む)別の遺伝子の3’配列と機能的に連結していることが多い。当業者に自明の通り、プロモーター配列は既に記載されている多数の植物活性配列の1つとすることができる。あるいは、転写活性なセグメントと連結するように他の植物活性プロモーター配列を特に誘導することもできる。プロモーターはパイナップルに内在性のものでもよいし、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Odellら(1985)Nature 313:810−812)、ユビキチン1プロモーター(Christiensenら(1992)Plant Mol.Biol.18:675−689)、又はSmasプロモーター(Niら(1995)Plant J.7:661−676)等の外来起源に由来するものでもよい。付加する3’末端配列はノパリンシンターゼ又はオクトピンシンターゼ遺伝子に由来するものが好ましく、あるいは別の植物遺伝子に由来するものでもよく、あまり好ましくはないが、他の任意真核遺伝子に由来するものでもよい。
【0138】
上述のように、例えばカロテノイド生合成酵素をコードする核酸セグメント(例えば第1の該当遺伝子)で形質転換されたパイナップル細胞及び植物体ではカロテノイド生産を亢進することができる。場合により、これらの導入されたカロテノイド生合成遺伝子の発現によりこの生合成活性が亢進すると、特定カロテノイドの生産と蓄積に経路を転換することができる。転換は一般に少なくとも1種の第2の該当遺伝子の使用を含む。例えば、第2の遺伝子は特定カロテノイドの生産を誘導するための遺伝子をコードすることもできるし、あるいは、特定カロテノイドの蓄積用経路を停止するための遺伝子をコードすることもできる。特定カロテノイドの生産を誘導するためには、所望カロテノイドの経路におけるカロテノイド生合成遺伝子の発現を使用する。これらの方法ではターゲットパイナップル植物体の内在又は外来遺伝子を場合により使用し、例えばErwinia種やRhodobacter種をはじめとする細菌等の植物以外の起源のカロテノイド生合成遺伝子が挙げられる。これらの目的に使用することができるカロテノイド生合成遺伝子の例については上記に詳述した通りである。特定カロテノイド化合物を蓄積するために経路を停止するには、第2の遺伝子はターゲット植物の(例えば内在又は外来)遺伝子転写を阻害し、阻害された遺伝子によりコードされる酵素は所望カロテノイド化合物を改変することができる。阻害は阻害する遺伝子の転写により実施することができ、遺伝子の向きはセンス(同時抑制)又はアンチセンスのいずれでもよい。パイナップル植物体におけるカロテノイド蓄積を改変させるための他のセンス及びアンチセンスストラテジーについては上述した通りである。
【0139】
更に、ゼアキサンチン、ゼアキサンチンジグルコシド、カンタキサンチン、及びアスタキサンチン等のβ−カロテンから誘導されるカロテノイドをより高レベルで蓄積するようにパイナップル植物体のカロテノイド組成を改変するためには、α−カロテン及びα−カロテンから誘導される他のカロテノイド(例えばルテイン)の蓄積を防止するようにリコペンε−シクラーゼを阻害することができる。リコペンε−シクラーゼの阻害に加え、第2の遺伝子の発現亢進を利用して特定β−カロテン誘導カロテノイドの蓄積を増加することもできる。例えば、β−カロテンヒドロキシラーゼの発現亢進はゼアキサンチン生産に有用であり、β−カロテンヒドロキシラーゼとケト誘導酵素の発現亢進はアスタキサンチン生産に有用である。あるいは、リコペンを蓄積するためには、リコペンβ−シクラーゼ又はリコペンε−シクラーゼとリコペンβ−シクラーゼの阻害を実施してリコペンからα−及びβ−カロテンへの変換を低下させることができる。
【0140】
パイナップル細胞及び植物体におけるカロテノイド生合成を所望通りに転換するために場合により種々の遺伝子が使用される。これらの例としては限定されないが、ゼアキサンチン生産にはβ−カロテンヒドロキシラーゼ又はcrtZ(Hundleら(1993)FEBS Lett.315:329−334,アクセション番号M87280);カンタキサンチン生産にはcrtW(Misawaら(1995)J.Bacteriol.177:6575−6584,WO95/18220,WO96/06172)又はβ−C−4−オキシゲナーゼ(crtO;Harkerら(1997)FEBS Lett.404:129−134)等のケト導入酵素をコードする遺伝子;アスタキサンチン生産にはcrtZ及びcrtW又はcrtO;ルテイン生産にはε−シクラーゼとε−ヒドロキシラーゼ;ルテイン及びゼアキサンチン生産にはε−ヒドロキシラーゼとcrtZ;β−カロテン生産亢進にはアンチセンスリコペンε−シクラーゼ(アクセション番号U50738);リコペン生産にはアンチセンスリコペンε−シクラーゼとリコペンβ−シクラーゼ(Hugueneyら(1995)Plant J.8:417−424,Cumiingham Jrら(1996)Plant Cell 8:1613−1626,Scolnikら(1995)Plant Physiol.108:1343,アクセション番号X86452,L40176,X81787,U50739及びX74599);フィトエン生産にはアンチセンス植物フィトエンデサチュラーゼ等が挙げられる。
【0141】
こうして、該当特定カロテノイド化合物の生産を亢進するように経路を改変することができる。このような化合物としては限定されないが、α−クリプトキチンチン、β−クリプトキチンチン、ζ−カロテン、フィトフルエン、ニューロスポレン等が挙げられる。本発明の方法を使用すると、カロテノイド経路における任意該当化合物をパイナップル植物体の果実等の選択貯蔵器官において高レベルで生産することができる。
【0142】
場合により、例えば前駆物質化合物から制御対象の特定カロテノイドへの変換を防止するアンチセンスDNA配列でパイナップル細胞を形質転換することにより特定カロテノイドレベルを低下させるように経路を操作することもできる。
【0143】
本発明では例えば第1の該当遺伝子、又は第1及び第2の該当遺伝子を含むパイナップル植物体を作製するための任意ストラテジーを場合により利用する。例えば、第2の該当遺伝子を使用して第1の該当遺伝子の導入と同時にパイナップル植物体を形質転換することができる(同時形質転換)。場合により、既に第1の該当遺伝子で形質転換されているパイナップル植物体に第2の該当遺伝子を導入してもよいし、あるいは、第1の該当遺伝子を発現する形質転換パイナップル植物体と第2の該当遺伝子を発現する形質転換パイナップル植物体を交配して両者遺伝子をもつ子孫を作製することもできる。
(IX.パイナップル外植片材料)
【0144】
本明細書に記載する方法によると、ほぼ任意パイナップル種を形質転換することができる。所定態様では、パイナップル外植片材料はSmooth Cayenne系、Spanish系(例えばRed Spanish)、Perolera系、Pernambuco系、及びPrimavera系等のヒト消費に一般に使用されている品種から得られる。缶詰パイナップル、他のパイナップル加工品、及び生パイナップルの生産用に最も重要な品種はSmooth Cayenneである。これらの品種の多くでは各種地理的地域で現地生産に適応するように多数のクローンが樹立されている。Smooth Cayenneクローンのうちでは、Champakaクローンが缶詰及び生パイナップルの生産に広く使用されている。
【0145】
初代外植片は植物の任意分裂組織領域とすることができ、例えば花形成前の植物の主及び補助分裂組織(頂端)や、果実のクラウンの主及び補助分裂組織が挙げられる。これらの領域を植物から切り取り、本明細書に記載するような当業者に周知の標準方法により滅菌し、人工培地で滅菌培養物を作製する。このような培養物は一連の増殖段階により長期間(例えば数週間、数カ月間又は数年間)維持することができる。in vitroシュート培養物の作製と維持に適した培地は例えばDeWaldら(1988)Plant Cell Reports,7:535−537;Wakasaら(1978)Japan J Breed 28:113−121;Mathews and Rangan(1981)Scientia Hort 14:227−234;Srinivasaら(1981)Scientia Hort 15:23S−238;Fitchet(1990)Acta Hort 275:267−274;Bordoloi and Sarma(1993)J Assam Science Society 35:41−45;及びFiroozabady and Moy(2003)“Regeneration of pineapple plants via somatic embryogenesis and organogenesis,”In Vitro(印刷中)に記載されている。
【0146】
本発明の所定態様では、DNA送達のターゲットであるパイナップル細胞はin vitro増殖させたパイナップルシュートの葉の基部(即ち葉脚)又は茎の切片からまず採取し、DNA送達段階前に培養増殖させる。本明細書で使用する「葉脚」なる用語はパイナップルのシュートの茎につながる葉の部分を意味する。
【0147】
胚形成カルスもしくは組織、又は器官形成カルスもしくは組織を誘導するためには、例えばオーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、及びアブシジン酸等の合成植物ホルモンの選択された組み合わせを添加した特定人工培地に葉又は葉脚等の滅菌外植片を移す。例えば、合成オーキシンは一般に例えばピクロラム(4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸)、ジカンバ(3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸)、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)、インドール−3−酢酸(IAA)、インドール酪酸(IBA)、NAA(2−ナフタレン酢酸)、NOA(ナフトキシ酢酸)等から選択される。使用可能なサイトカイニンの例としては限定されないが、BA(ベンジルアデニン)、BAP(ベンジルアミノプリン)、TDZ(チジアズロン)、ゼアチン、カイネチン等が挙げられる。胚形成及び器官形成細胞培養は当分野で周知である。例えば、体細胞胚形成細胞培養及び本発明の方法で使用するのに適した他の側面に関するその他の詳細は例えば米国特許第5,952,543号(発明の名称「遺伝子組換えパイナップル植物体及びその作製方法(GENETICALLY TRANSFORMED PINEAPPLE PLANTS AND METHODS FOR THEIR PRODUCTION)」,発行日1999年9月14日、名義人Firoozabadyら)とその引用文献及びFiroozabadyら(2002)Molecular Breeding(投稿中)に記載されている。器官形成細胞培養に関するその他の詳細は例えば国際出願公開第WO01/33943号(発明の名称「植物形質転換方法(A METHOD OF PLANT TRANSFORMATION)」,Grahamら,公開日2001年5月17日)、米国特許第5,908,771号(発明の名称「サルビア種の再生方法(METHOD FOR REGENERATION OF SALVIA SPECIES)」,発行日1999年6月1日,名義人Liuら)、米国特許第6,242,257号(発明の名称「多数の生育可能な綿の木をIN VITRO作製するための組織培養方法(TISSUE CULTURE PROCESS FOR PRODUCING A LARGE NUMBER OF VIABLE COTTON PLANTS IN VITRO)」,発行日2001年6月5日,名義人Tuliら)、Croy(Ed.)Plant Molecular Biology Labfax,Bios Scientific Publishers Ltd.(1993),Jones(Ed.)Plant Transfer and Expression Protocols,Humana Press(1995)とその引用文献に記載されている。
【0148】
当業者に自明の通り、多種多様の胚形成及び器官形成細胞を本明細書に記載する核酸セグメントの送達と形質転換イベントの選択用ターゲット細胞として使用することができる。例えば、本発明の核酸セグメントは胚形成又は器官形成に伴って葉、葉脚、及び茎切片の細胞に送達することができる。更に、場合により、胚形成カルスもしくは組織又は器官形成カルスもしくは組織の発生直後に核酸セグメントを細胞に送達する。あるいは、胚形成又は器官形成材料を維持し、選択期間in vitro増殖させた後に核酸セグメントを胚形成又は器官形成細胞に送達することもできる。
(X.核酸セグメントDNA送達)
【0149】
本発明のトランスジェニックパイナップル細胞は各種発生段階(例えば各種胚形成及び器官形成段階)で形質転換される。更に、本発明の核酸セグメントは多数の当分野で公知の方法でパイナップル細胞に導入することができる。一般に、植物細胞の適切な形質転換方法としては、マイクロインジェクション(Crosswayら(1986)BioTechniques 4:320−334)、エレクトロポレーション(Riggsら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602−5606)、アグロバクテリウムによる形質転換(Hincheeら(1988)Biotechnology 6:915−921)、弾道的粒子加速ないし遺伝子銃(Sanfordら,米国特許第4,945,050号;及びMcCabeら(1988)Biotechnology 6:923−926)、花粉による送達(Zhouら(1983)Methods Enzymol.101:433,De Wetら(1985)in The Experimental Manipulation of Ovule Tissues,Chapmanら(Eds.),Longman,p.197;Hess(1987)Intern.Rev.Cytol.107:367;及びLuoら(1989)Plant Mol.Biol.Rep.7:69)、パイナップル細胞のプロトプラストへの直接核酸導入(Cabocheら(1984)Comptes Rendus Acad.Sci.299,series 3:663)、マイクロインジェクション(Crosswayら(1986)Mol.Gen.Genet.202:179及びReichら(1986)Bio/technol.4:1001)、花房のマクロインジェクション(De la Penaら(1987)Nature 325:274)、ひげによる受精(Dunahay(1993)Biotechniques 15:452−460及びFrameら(1994)The Plant Journal 6:941−948)、レーザーパーフォレーション(Weber(1988)Naturwissenschaften 75:35)、及び超音波(Zhangら(1991)Bio/technol.9:994)が挙げられる。
【0150】
更に、アグロバクテリウムによる導入は核酸セグメントを植物組織全体に導入することができ、無傷の植物体をプロトプラストから再生する必要がないため、遺伝子を植物細胞に導入するために広く適用可能である。植物細胞にDNAを導入するためにアグロバクテリウムによる発現ベクターを使用することは当分野で周知である。例えばFraleyら(1985)Biotechnology.3:629及びRogersら(1987)Methods in Enzymology,153:253−277に記載されている方法を参照されたい。更に、T−DNAの組込みは転位をほとんど生じない比較的正確な方法である。導入するDNAの領域は境界配列により規定され、干渉DNA又は核酸セグメントは通常はSpielmannら(1986)Mol.Gen.Genet.,205:34及びJorgensenら(1987)Mol.Gen.Genet.207:471により記載されているように植物ゲノムに導入される。
【0151】
上記のような現代のアグロバクテリウム形質転換ベクターは大腸菌とアグロバクテリウムで複製することができるので、Kleeら,Plant DNA Infectious Agents,Hohn and Schell,(Eds.),Springer−Verlag(1985)pp.179−203に記載されているように簡便に操作することができる。
【0152】
更に、アグロバクテリウムによる遺伝子導入用ベクターの最近の技術的進歩により、ベクターにおける遺伝子及び制限部位の配置が改善され、各種ポリペプチドコーディング遺伝子を発現することが可能なベクターを容易に構築できるようになった。例えば、Rogersら(1987)Methods in Enzymology,153:253に記載されているベクターは挿入したポリペプチドコーディング遺伝子を直接発現させるようにプロモーターとポリアデニル化部位に挟まれた便利なマルチリンカー領域をもち、本発明の目的に適している。適切なベクターについては上記に詳述した通りである。
【0153】
本発明の所定態様では、外来DNAを挿入したアグロバクテリウム株を使用して異種核酸セグメントをT−DNAエレメントに導入する。組抱えT−DNAエレメントはアグロバクテリウム細胞から植物細胞へのDNA送達に必要なビルレンス機能をもつTi−プラスミドの一部でもよいし、T−DNAエレメントを配置するプラスミドとは別個のプラスミドにビルレンス機能をもたせてもよい(バイナリーベクターと言う)。大腸菌とアグロバクテリウムの両者で複製することができるこれらの各種バイナリーベクターは上記引用文献に記載されている。同時培養法の1例では、同時培養前にアグロバクテリウムを2〜7×10細胞/mlの濃度まで増殖させ、1〜6×10細胞/ml、好ましくは2〜5×10細胞/mlまで希釈する。一般に1〜5日間、好ましくは2〜3日間アグロバクテリウムをパイナップル組織と同時培養する。
【0154】
適切なアグロバクテリウム株としてはAgrobacterium tumefaciensとAgrobacterium rhizogenesが挙げられる。野生型株も使用することができるが、Tiプラスミドの腫瘍誘導配列を除去した両種の「武装解除」誘導体が好ましい。適切なAgrobacterium tumefaciens株としては、例えばHoodら((1986)J.Bacteriol.,168:1291−1301)により記載されているようなEHA101、Hoekemaら((1983)Nature,303:179−80)により記載されているようなLBA4404、及びKoncz and Schell((1986)Mol.Gen.Genet.,204:383−96)により記載されているようなC58(pMP90)が挙げられる。好ましいAgrobacterium rhizogenes株はBirotら(Biochem,25:323−35)により記載されているような15834である。
【0155】
T−DNAを植物細胞に導入するのに適した同時培養培地でパイナップル胚形成又は器官形成組織又はカルスとDNAセグメントを挿入したアグロバクテリウム細胞を同時培養する。核酸セグメントを挿入したアグロバクテリウム株を作製した後に、通常は培養してからカルス又は組織と共にインキュベーションする。アグロバクテリウムは当業者に周知の方法により固体又は液体培地で培養することができる。例えば米国特許第5,262,316号参照。
【0156】
あるいは、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、及びこれらの処理の組み合わせに基づく方法を使用して植物プロトプラストの形質転換を行うこともできる。例えばPotrykusら(1985)Mol.Gen.Genet.,199:183;Lorzら(1985)Mol.Gen.Genet.,199:178;Frommら(1986)Nature,319:791;Uchimiyaら(1986)Mol.Gen.Genet.,204:204;Callisら(1987)Genes and Development,1:1183;Marcotteら(1988)Nature,335:454;Wangら(1992)Bio/Technology.10:691−696;及びFennellら(1992)Plant Cell Reports,11:567−570参照。
【0157】
プロトプラストから首尾よく再生することができない植物種を形質転換するには、核酸セグメントを無傷の細胞又は組織に導入するための他の方法を利用することができる。例えば、「粒子銃」ないし高速微粒子衝撃技術を利用することができる。このような技術を使用する場合には、Kleinら(1987)Nature,327:70;Kleinら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:8502;McCabeら(1988)Biotechnology,6:923;及びVasilら(1992)Bio/Technology,9:667−674に記載されているように核酸セグメントを小金属粒子の表面に付け、細胞壁を通して細胞質内に輸送する。金属粒子は数層の細胞層を貫通するので、組織外植片の内部の細胞を形質転換することができる。組織外植片の形質転換はプロトプラスト段階で継代する必要がないため、トランスジェニック植物体の作製速度が上がる。
【0158】
核酸セグメントはZhouら(1983)Methods in Enzymology,101:433;Hess(1987)Intern Rev.Cytol.,107:367;Luoら(1988)Plant Mol.Biol.Reporter,6:165に記載されているように花粉への直接DNA導入により植物に導入することもできる。ポリペプチドコーディング遺伝子の発現はPenaら(1987)Nature,325.:274に記載されているように植物の生殖器官への核酸セグメントの注入により得ることができる。Neuhausら(1987)Theor.Apl.Genet.,75:30;及びBenbrookら,Proceedings Bio Expo 1986,Butterworth,Stoneham,Mass.,pp.27−54(1986)により記載されているように核酸セグメントを未成熟胚の細胞に直接注入し、乾燥した胚を再水和することもできる。
【0159】
あるいは、植物プラスチドを直接形質転換することもできる。クロロプラストの安定的形質転換が高等植物で報告されている。例えばSvabら(1990)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 87:8526−8530;Svabら(1993)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:913−917;Staubら(1993)Embo J.12:601−606参照。この方法は選択マーカーを含む核酸セグメントの粒子銃による送達を利用し、相同組換えにより核酸をプラスチドゲノムにターゲティングする。このような方法では、プラスチド遺伝子発現はプラスチド遺伝子プロモーターの使用により実施することができ、あるいは、サイレントプラスチドに導入したトランスジーンをT7 RNAポリメラーゼにより認識されるもの等の選択プロモーター配列から発現するように配置し、トランス活性化することにより実施することもできる。サイレントプラスチド遺伝子は核酸発現構築物に由来する特定RNAポリメラーゼの発現とトランジットペフチドの使用によるプラスチドへのポリメラーゼのターゲティングにより活性化される。このような方法では、核酸によりコードされ、プラスチドに特異的なRNAポリメラーゼを使用し、適切な植物組織特異的プロモーターから発現させることにより組織特異的発現が得られる。このようなシステムはMcBrideら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 91:7301−7305に報告されている。
(XI.トランスジェニックパイナップル植物体の再生と微細繁殖)
【0160】
核酸セグメントの送達後、胚形成又は器官形成細胞を培地に移すが、培地には選択物質(例えば除草剤等)を添加してもよく、選択物質はその発現産物が選択物質の作用を防止できるような遺伝子(例えば選択マーカー)を導入していないパイナップル細胞の増殖を阻止できるものとする。選択マーカーについては上記に詳述した通りである。培養期間後、一般に増殖し続ける胚形成又は器官形成カルス又は組織を増殖が減速又は終了した胚形成又は器官形成カルス又は組織から分離する。
【0161】
単一植物プロトプラスト又は種々の外植片からの植物の再生は当分野で周知である。例えばWeissbachら(Eds.),Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,Inc.(1988)参照。所定態様では、再生及び増殖プロセスは形質転換細胞及びシュートを選択する段階と、形質転換シュートから発根させる段階と、小植物を土壌で成長させる段階を含む。例えば、葉外植片からアグロバクテリウムにより導入された遺伝子を含む植物の再生はHorschら(1985)Science,227:1229−1231に記載されているように実施することができる。この方法では、Fraleyら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:4803に記載されているように形質転換下の植物種にシュートの再生を誘導する培地で選択物質の存在下に形質転換細胞を増殖させる。この方法では一般に2〜4週間以内にシュートが発生した後に、選択物質と細菌増殖を防止するための抗生物質を含有する適当な発根誘導培地にこれらの形質転換シュート移す。パイナップルでは、葉脚を使用して器官形成材料を作製し(Firoozabady and Moy(2003)“Regeneration of pineapple plants via somatic embryogenesis and organogenesis,”In Vitro,印刷中)、その後、これらの材料をアグロバクテリウムと接触させると、恐らく選択後にトランスジェニック器官形成材料を形成することができる。その後、これらの材料からシュートと完全植物体を形成させる。所定態様では、形質転換植物シュートを形成するには胚形成カルスの形質転換が好ましい。形質転換シュートを選択物質の存在下で発根させて小植物を形成した後に土壌又は他の発根用媒体に移植する。
【0162】
本発明の方法で使用するのに適した植物再生、微細繁殖、及び他の側面に関するその他の詳細は例えば米国特許第5,952,543号及びWO01/33943(前出)、米国特許第5,591,616号、6,037,522号、ヨーロッパ特許公開第604662(A1)号及び672752(A1)号、並びにWO01/12828に記載されている。Kyteら,Plants from Test Tubes:An Introduction to Micropropagation,Timber Press,Inc.(1996),Hudsonら,Hartmann and Kester’s Plant Propagation:Principles and Practices 7th Ed.,Pearson Education(2001),Bajaj(Ed.)High−Tech and Micropropagation I,Springer−Verlag New York,Inc.(1992),Jain,In Vitro Haploid Production in Higher Plants,Kluwer Academic Publishers(1996),及びDeberghら(Eds.),Micropropagation:Technology and Application,Kluwer Academic Publishers(1991)も参照されたい。
【0163】
場合により、本発明のカロテノイド生合成ポリペプチドは当分野で周知の多数の方法の任意のものにより形質転換パイナップル細胞培養又は形質転換パイナップル植物体組織(例えば果実組織等)から回収及び精製することができ、このような方法としては硫安又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられる。場合により、機能的産物を回収するために蛋白質をリフォールディングする必要がある。上記以外にも各種精製方法が当分野で周知であり、例えばSandana,Bioseparation of Proteins,Academic Press,Inc.(1997);Bollagら,Protein Methods,2nd Ed.,Wiley−Liss,NY(1996);Walker,The Protein Protocols Handbook,Humana Press,NJ(1996);Harris and Angal,Protein Purification Applications:A Practical Approach,IRL Press(1990);Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Springer Verlag(1993);及びJansonら,Protein Purification:Principles,High Resolution Methods and Applications,2nd Ed.,Wiley−VCH(1998)に記載されている方法が挙げられる。
(XII.実施例)
【0164】
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例により本発明を制限するものではない。
【0165】
培地は文字と数字で指定し、使用した培地成分を文字で示した後に特定成分の濃度を表す数字を記載する。例えば、B2N2は6−ベンジルアミノプリン(BA又はB)とα−ナフタレン酢酸(NAA又はN)を加えたMS培地である。下記実施例に記載する培地組成に関するより具体的な詳細(成分濃度等)は以下に記載する。
(実施例1)
タンジェリンに由来するフィトエンシンターゼ(PSY)遺伝子のパイナップル(トランスジェニック株16.5.9)への導入
1.柑橘類からのPSY遺伝子の単離
i.プライマー設計
【0166】
PSY−Naval(アクセション番号Gi 5959859)の配列情報に基づいて2種のプライマーを設計した:
フォワードプライマーPSY−F:5’−aaa ctg cag atg tct gtt aca ttg ctg tgg−3’
リバースプライマーPSY−R:5’−gat ate tta age ctt act ggt ata tat tct tg−3’。
ii.RNA単離
【0167】
Trizol溶液(Invitrogen,Inc.,CA,USA)でタンジェリン葉組織から全RNAを抽出した。抽出は製造業者の手順に従って実施した。
iii.逆転写反応
【0168】
反応容量20μl中で全RNA1μgと10μM PSY−Rプライマー1μlを使用して逆転写を実施した。
iv.PSY遺伝子を単離するためのPCR
【0169】
以下の反応混合物でPSY−F及びPSY−Rプライマーを使用してPCRを実施した:
PSY−F(10μM):1μl
PSY−R(10μM):1μl
逆反応液:1μl
DNTP(10mM):1μl
10×緩衝液:2.5μl
Pfu DNAポリメラーゼ:0.2μl
水を加えて25μl。
【0170】
PCRプログラムは92℃で2分間変性させた後に、
92℃で30秒、
55℃で20秒、
72℃で1.5分
を35サイクルとした。
v.PCRフラグメントのクローニング
【0171】
PCR反応産物又はフラグメントを0.8%アガロースゲルで泳動させた。PCRフラグメントを切り出し、Qiagenのゲル精製キット(Qiagen,Inc.,CA,USA)を使用して精製した。次にフラグメントをpGEM−Teasyベクター(Promega Corp.,WI,USA)にクローニングした。T7及びM13−Rプライマーを使用してシーケンシングを実施した。
2.シュート培養物の作製
【0172】
コスタリカの農場で生育させたデルモンテゴールドMD−2パイナップルのクラウンから単離した分裂組織を使用してシュート培養物を作製した。要約すると、クラウンから葉を手で抜いて捨て、クラウン(〜3×5cm)の芯又は茎を水洗し、33% Clorox+0.05% Tween 20で25分間撹拌下に表面を滅菌し、滅菌水で2回濯いだ。器具を頻繁に火炎滅菌しながら初生葉を1枚ずつ抜くことにより側部分裂組織とクラウン先端分裂組織を芯から切り離した。分裂組織ドームと、2〜3枚の小さな初生葉と、茎芯1cmを含むクラウン先端分裂組織外植片をシュート培地B2N2±CCに置床した。茎芯1cmと共に側部分裂組織も単離し、同一培地で培養した。CC(カルベニシリンとセフォタキシム各500mg/l)を使用して内在微生物汚染を根絶した。培養物を28℃で連続光照射下にインキュベートした。培養開始から9日後に組織をB2N2+Nに継代した。ナイアシン(N,40mg/l)を使用して内在酵母及び真菌汚染を根絶した。20日後にクラウン先端葉が伸びていたので、これらを引き抜いてクラウン先端分裂組織の増殖を促進し、新鮮なB2N2+NA培地に移した。更にアンピシリンB(A,5mg/l)を使用して残留内在酵母及び真菌汚染を根絶した。更に2週間後に芽が形成され(外植片当たり2〜3個)、次いで新しい小さいシュートが発生し、シュートクラスターを形成した。培養開始から合計4か月後にシュートクラスターを液体B1.5N.5培地に移し、月1回継代しながら保存した。
3.アグロバクテリウムとの同時培養のための外植片の前処理
【0173】
迅速に成長するシュートを外植片として使用した。長い葉(>15mm)の先端を切り落とし、小さい外植片とした。シュートを縦方向に切断して4〜6個の切片とし、P10T1.1B6(6%バナナ果肉添加)で8日間前処理(培養)した。葉脚と芯切片を作製し、同時培養のためにアグロバクテリウムと混合した。
4.Agrobacterium tumefaciens培養及び作製
【0174】
バイナリーベクターシステムを含むAgrobacterium tumefaciens株GV3101(Hellens(2000)“pGREEN:a versatile and flexible Ti vector for Agrobacterium−mediated plant transformation,”Plant Molecular Biology 42:819−832参照)を形質転換に使用した。ベクターシステムはクロロスルフロン耐性を付与するためのsurB遺伝子とフィトエンシンターゼ遺伝子を発現させるためのpsy遺伝子を含むベクターpDMから構成した。細菌を凍結グリセロールから取出し、培養し、10mg/lテトラサイクリンを加えた1.5% Bactoagarで凝固させたL−ブロス培地に保存した。同時培養の1日前に、ループを使用して固体培地から細菌を掻き取り、液体MinAsuc培地に懸濁し、シェーカー(120rpm)で28℃にて1日間培養した。同時培養前にスペクトロフォトメーター(Beckman DU−50)を使用して細菌濃度を測定した処、4×10細胞/mlであった。
5.同時培養培地での同時培養
【0175】
細菌を容量比4:1(植物組織:アグロバクテリウム細胞)で葉脚及び芯切片170本と混合し、組織をドライブロットし、同時培養培地P10T2.2As300の表面に載せた7.0cm滅菌Fisherbrand G6グラスファイバー濾紙に混合物を加えた。プレートをパラフィルムで密閉し、24℃に環境制御したインキュベーターに入れ、暗所で3日間保存した。
6.回収、選択及び植物再生
【0176】
同時培養後に組織(15〜20個/プレート)を回収培地P10T1.1Carb500に移し、低強度光条件下に7日間回収した(16時間/日)。次に、外植片を選択培地P10T2.2Carb300CS5に移し、17日後に細菌増殖が観察されたらP10T2.2Carb500CS5に移し、高強度光条件下にインキュベートした(16時間/日)。カルベニシリンを使用して残留アグロバクテリウム及びクロロスルフロン(CS)を根絶し、形質転換細胞を選択した。選択培地では、組織の大半は3〜6週間以内に茶変したが、組織の一部のセクターは正常なままであり、緑色の正常な形態形成組織を形成するように増殖し始めていた。形態形成組織はB3N.2Carb100CS10培地で30日以内にトランスジェニックシュートを形成した。次に、これらをB1Carb100CS10に移して伸長させた。シュートの一部をガラス化した後、B1A1%Carb100CS10に移し、14日間培養して伸長成長シュートを形成した。
7.形質転換の確認
【0177】
シュートが形質転換されたことを各種手段により確認した:1.CS耐性シュート又は初生シュートは致死レベルのCSの存在下に正常で緑色のままであった。2.CS耐性シュート又は初生シュート(2〜5mg/耐性片)をGUSアッセイ用にサンプリングした。形質転換組織は青色染色し、非形質転換組織は青色染色しなかった。例えばPCRやサザンブロッティング分析を使用して組織の形質転換を分子レベルで試験することもできる。
8.微細繁殖とトランスジェニック植物体の作製
【0178】
個々のシュート又は小さいシュートクラスターをGA−7キューブに入れた15ml液体培地B1Carb100CS20に移し(2〜3クラスター/キューブ)、繁殖及び増殖させた。場合により、30日後にシュートクラスターを微細繁殖させ、B1.5N.5CS20(逆選択物質不添加)に数カ月保存してもよい。個々のシュート(4〜6cm長)を分離し、液体発根培地N.5IBA.5CS10又はN.5IBA.5CS20(逆選択物質不添加)で2−4週間培養し、完全植物体を作製した。その後、植物体を土壌に移植し、徐々に環境に馴化させ、温室条件に移すことができる。
(実施例2)
タンジェリンに由来するフィトエンシンターゼ(PSY)遺伝子のパイナップル(13.18.2)への導入
1.柑橘類からのPSY遺伝子の単離
【0179】
実施例1に同じ。
2.材料組織の作製
i.シュート培養物の作製
【0180】
実施例1に同じ。
ii.アグロバクテリウムとの同時培養のための外植片の前処理
【0181】
上記のように4か月間培養した迅速に成長するシュートを外植片として使用した。長い葉(>15mm)の先端を切り落とし、小さい外植片とした。シュートを縦方向に切断して3〜8個の切片とし、P2T10A培地で10日間前処理(培養)した。葉脚と芯切片を作製し、再び同一培地で62日間前処理した後に別の前処理培地に移した。初生シュートを含む形態形成組織をもつ切片をT1.1I.1培地で24日間継代培養した。次に器官形成組織をB3N.2培地で22日間継代培養した後、3〜5mm切片に切断してB2N2培養で7日間培養した後、同時培養のためにアグロバクテリウムと混合した。
3.Agrobacterium tumefaciens培養及び作製
【0182】
バイナリーベクターシステムを含む上記Agrobacterium tumefaciens株GV3101を形質転換に使用した。上記のように、ベクターpDMはクロロスルフロン耐性を付与するsurB遺伝子とフィトエンシンターゼ遺伝子を発現するpsy遺伝子を含む。細菌を凍結グリセロールから取出し、培養し、10mg/lテトラサイクリンを加えた1.5% Bactoagarで凝固させたL−ブロス培地に保存した。同時培養の1日前に、ループを使用して固体培地から細菌を掻き取り、液体MinAsuc培地に懸濁し、シェーカー(120rpm)で28℃にて1日間培養した。同時培養前にスペクトロフォトメーター(Beckman DU−50)を使用して細菌濃度を測定した処、1.7×10細胞/mlであった。
4.同時培養培地での同時培養
【0183】
細菌を容量比4:1(植物組織:アグロバクテリウム細胞)で混合し、組織をドライブロットし、同時培養培地B3N.2AS300の表面に載せた7.0cm滅菌Fisherbrand G6グラスファイバー濾紙に混合物を加えた。プレートをパラフィルムで密閉し、24℃に環境制御したインキュベーターに入れ、暗所で3日間保存した。
5.回収、選択及び再生
【0184】
同時培養後、組織(20〜25個/プレート)を回収培地B3N.2Carb500及びB3N.2CEF400に移し、低強度光条件下に7日間回収した(16時間/日)。次に、外植片を選択培地B2N2CEF400CS5に移し、高強度光条件下に25日間インキュベートした(16時間/日)後にB3N.2CEF400CS5に移し、月1回継代しながら保存した。セフォタキシムを使用して残留アグロバクテリウム及びクロロスルフロン(CS)を根絶し、形質転換細胞を選択した。選択培地では、組織の大半は4〜6週間以内に茶変したが、組織の一部のセクターは正常なままであり、緑色の正常な形態形成組織を形成するように増殖し始めていた。実施例1に記載したように植物体を再生させた。
6.形質転換の確認
【0185】
実施例1に同じ。
7.微細繁殖とトランスジェニック植物体の作製
【0186】
実施例1に同じ。
【表1】

【0187】
組織培養用培地では、pHは約5〜7.5の範囲とすべきであり、約5.6が好ましい。培地はオートクレーブ滅菌後に使用するが、特定成分については濾過滅菌してからオートクレーブ滅菌後に添加する。
MS
MS塩 1X
B5ビタミン 1X
スクロース 30g/l
MES 600mg/l
Gel−rite(登録商標) 2.5g/l
pH 5.7

B1.5N.5
MS培地+
BA 1.5mg/l
NAA 0.5mg/l

B2N2
MS培地+
BA 2mg/l
NAA 2mg/l

B2N2+CC
MS培地+
BA 2mg/l
NAA 2mg/l
カルベニシリン 500mg/l
セフォタキシム 500mg/l

B2N2CEF400CS5
MS培地+
BA 2mg/l
NAA 2mg/l
セフォタキシム 400mg/l
クロロスルフロン 5μg/l

B2N2+N
B2N2+
ナイスタチン 40mg/l

B2N2+NA
B2N2培地+
ナイスタチン 40mg/l
アンホテリシンB 5mg/l

B3N.2
MS+
BA 3mg/l
NAA 0.2mg/l

B3N.2AS300
B3N.2+
アセトシリンゴン 300μM

B3N.2CARB500
B3N.2+
カルベニシリン 500mg/l

B3N.2CEF400
B3N.2+
セフォタキシム 400mg/l

B3N.2CEF400CS5
B3N.2Cef400+
クロロスルフロン 5μg/l

P2T10A
Gel−riteに代えて寒天を添加したMS+
ピクロラム 2mg/l
チジアズロン 10mg/l

P10T1.1B6
MS+
ピクロラム 10mg/l
チジアズロン 1.1mg/l
バナナ果肉 6%

P10T1.1CARB500
MS+
ピクロラム 10mg/l
チジアズロン 1.1mg/l
カルベニシリン 500mg/l

P10T2.2
MS+
ピクロラム 10mg/l
チジアズロン 2.2mg/l

P10T2.2A
Gel−riteに代えて寒天を添加したP10T2.2

P10T2.2AS300
MS+
ピクロラム 10mg/l
チジアズロン 2.2mg/l
アセトシリンゴン 300μM

P10T2.2CARB300CS5
MS+
ピクロラム 10mg/l
チジアズロン 2.2mg/l
カルベニシリン 300mg/l
クロロスルフロン 5μg/l

P10T2.2CARB500CS5
MS+
ピクロラム 10mg/l
チジアズロン 2.2mg/l
カルベニシリン 500mg/l
クロロスルフロン 5μg/l

P10B.5
MS+
ピクロラム 10mg/l
BA 0.5mg/l

N.51.5 LIQUID
Gel−riteを添加しないMS+
NAA 0.5mg/l
IBA 0.5mg/l

T1.1I.1
MS+
チジアズロン 1.1mg/l
IBA 0.1mg/l。
【0188】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記全技術及び装置は種々に組合せて使用することができる。本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1A】カロテノイド生合成経路の諸側面を模式的に示す。
【図1B】カロテノイド生合成経路の諸側面を模式的に示す。
【図1C】カロテノイド生合成経路の諸側面を模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積の調節方法であって、少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを前記パイナップル細胞に導入する段階を含み、前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を調節する前記方法。
【請求項2】
前記パイナップル細胞が胚形成細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パイナップル細胞が器官形成細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パイナップル細胞が胚形成カルス細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パイナップル細胞が器官形成カルス細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パイナップル細胞がSmooth Cayenne細胞、Red Spanish細胞、Perolera細胞、Pernambuco細胞、及びPrimavera細胞から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積に比較して前記パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を増加させる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積に比較して前記パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を減少させる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがフィトエン、フィトフルエン、ζ−カロテン、ニューロスポレン、δ−カロテン、γ−カロテン、α−カロテン、β−カロテン、アポカロテナール、リコペン、カンタキサンチン、ゼアサンチン、及びルテインから構成される群から選択される1種以上のカロテノイドの蓄積を調節する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の有機分子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の無機分子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがDNAを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがRNAを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが前記パイナップル細胞のゲノムに安定的に組込まれる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが選択マーカーに連結されている請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが構成的プロモーターに機能的に連結されている請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが誘導的プロモーターに機能的に連結されている請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、ζ−カロテンデサチュラーゼ、リコペンβ−シクラーゼ、リコペンε−シクラーゼ、β−カロテンヒドロキシラーゼ、及びε−ヒドロキシラーゼから構成される群から選択される少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のセンス核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のアンチセンス核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド転写因子をコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドプロモーター及び/又は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドエンハンサーをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも1種のプロモーター及び/又は少なくとも1種のエンハンサーと相同組換えする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが植物カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが細菌カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル細胞に対して異種の少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル細胞の少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチドに相同の少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがアグロバクテリウムによる送達を使用して前記パイナップル細胞に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが花粉による送達、前記パイナップル細胞の少なくとも1個のプロトプラストへの直接核酸導入、遺伝子銃、マイクロインジェクション、花房のマクロインジェクション、ひげによる受精、レーザーパーフォレーション、及び超音波から構成される群から選択される少なくとも1種の核酸送達技術を使用して前記パイナップル細胞に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の方法により作製されたパイナップル細胞。
【請求項31】
前記パイナップル細胞が少なくとも1種の分裂組織細胞を培養することにより作製された器官形成細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記分裂組織細胞が非頂端分裂組織細胞である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記培養が前記分裂組織細胞を培養して少なくとも1本のシュートを発生させる段階と、前記シュートからの少なくとも1個の外植片を培養して前記器官形成細胞を発生させる段階を含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記パイナップル細胞から少なくとも1種のパイナップル植物体を再生する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記パイナップル細胞がパイナップル細胞集団を含み、方法が更に
(i)前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを含む前記パイナップル細胞集団の1以上のメンバーを選択する段階と;
(ii)前記メンバーから1種以上のパイナップル植物体を再生する段階と;
(iii)前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル植物体におけるカロテノイド蓄積に対するカロテノイド蓄積の改変について前記パイナップル植物体をスクリーニングする段階を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記カロテノイド蓄積の改変が前記パイナップル植物体の果実組織に実質的に特異的である請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記パイナップル植物体を微細繁殖させる段階を更に含む請求項34に記載の方法。
【請求項38】
請求項34に記載の方法により作製されたパイナップル植物体。
【請求項39】
パイナップル植物体着色の改変方法であって、少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを少なくとも1種のパイナップル植物体に導入する段階を含み、前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル植物体における少なくとも1種のカロテノイドの蓄積を調節することにより前記パイナップル植物体の前記着色を改変する前記方法。
【請求項40】
前記パイナップル植物体がSmooth Cayenne植物体、Red Spanish植物体、Perolera植物体、Pernambuco植物体、及びPrimavera植物体から構成される群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル植物体における着色カロテノイド蓄積に比較して前記パイナップル植物体における着色カロテノイド蓄積を増加させる請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル植物体における着色カロテノイド蓄積に比較して前記パイナップル植物体における着色カロテノイド蓄積を減少させる請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記着色カロテノイドがフィトエン、フィトフルエン、ζ−カロテン、ニューロスポレン、δ−カロテン、γ−カロテン、α−カロテン、β−カロテン、アポカロテナール、リコペン、カンタキサンチン、ゼアサンチン、及びルテインから構成される群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の有機分子を含む請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の無機分子を含む請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがDNAを含む請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがRNAを含む請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが前記パイナップル植物体のゲノムに安定的に組込まれる請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが構成的プロモーターに機能的に連結されている請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが誘導的プロモーターに機能的に連結されている請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが前記カロテノイド生合成ポリペプチドの果実特異的発現を促進するプロモーターに機能的に連結されている請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、ζ−カロテンデサチュラーゼ、リコペンβ−シクラーゼ、リコペンε−シクラーゼ、β−カロテンヒドロキシラーゼ、及びε−ヒドロキシラーゼから構成される群から選択される少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項53】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のセンス核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項54】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のアンチセンス核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項55】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド転写因子をコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項56】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドプロモーター及び/又は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドエンハンサーをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも1種のプロモーター及び/又は少なくとも1種のエンハンサーと相同組換えする請求項39に記載の方法。
【請求項57】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが植物カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項58】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが細菌カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項59】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項60】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル植物体に対して異種の少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項61】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル植物体の少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチドに相同の少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項39に記載の方法。
【請求項62】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル植物体に注入される請求項39に記載の方法。
【請求項63】
前記着色の改変が前記パイナップル植物体の果実組織に実質的に特異的である請求項39に記載の方法。
【請求項64】
前記パイナップル植物体を微細繁殖させる段階を更に含む請求項39に記載の方法。
【請求項65】
請求項39に記載の方法により作製されたパイナップル植物体。
【請求項66】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを少なくとも1種のパイナップル細胞に導入し、前記細胞から前記パイナップル植物体を再生する請求項66に記載の方法。
【請求項67】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがアグロバクテリウムによる送達を使用して前記パイナップル細胞に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが花粉による送達、前記パイナップル細胞の少なくとも1個のプロトプラストへの直接核酸導入、遺伝子銃、マイクロインジェクション、花房のマクロインジェクション、ひげによる受精、レーザーパーフォレーション、及び超音波から構成される群から選択される少なくとも1種の核酸送達技術を使用して前記パイナップル細胞に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項66に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターを導入したパイナップル細胞であって、前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を調節する前記パイナップル細胞。
【請求項70】
前記パイナップル細胞が胚形成細胞である請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項71】
前記パイナップル細胞が器官形成細胞である請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項72】
前記パイナップル細胞が胚形成カルス細胞である請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項73】
前記パイナップル細胞が器官形成カルス細胞である請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項74】
前記パイナップル細胞がSmooth Cayenne細胞、Red Spanish細胞、Perolera細胞、Pernambuco細胞、及びPrimavera細胞から構成される群から選択される請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項75】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積に比較して前記パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を増加させる請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項76】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターをもたないパイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積に比較して前記パイナップル細胞におけるカロテノイド蓄積を減少させる請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項77】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがフィトエン、フィトフルエン、ζ−カロテン、ニューロスポレン、δ−カロテン、γ−カロテン、α−カロテン、β−カロテン、アポカロテナール、リコペン、カンタキサンチン、ゼアサンチン、及びルテインから構成される群から選択される1種以上のカロテノイドの蓄積を調節する請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項78】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の有機分子を含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項79】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の無機分子を含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項80】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがDNAを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項81】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがRNAを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項82】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが選択マーカーに連結されている請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項83】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが構成的プロモーターに機能的に連結されている請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項84】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが誘導的プロモーターに機能的に連結されている請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項85】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、ζ−カロテンデサチュラーゼ、リコペンβ−シクラーゼ、リコペンε−シクラーゼ、β−カロテンヒドロキシラーゼ、及びε−ヒドロキシラーゼから構成される群から選択される少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項86】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のセンス核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項87】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも一部に対応する少なくとも1個のアンチセンス核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項88】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチド転写因子をコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項89】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドプロモーター及び/又は少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドエンハンサーをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含み、前記核酸セグメントが少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチド遺伝子の少なくとも1種のプロモーター及び/又は少なくとも1種のエンハンサーと相同組換えする請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項90】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが植物カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項91】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが細菌カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項92】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが人工進化カロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項93】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル細胞に対して異種の少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項94】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが前記パイナップル細胞の少なくとも1種の内在カロテノイド生合成ポリペプチドに相同の少なくとも1種のカロテノイド生合成ポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項95】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターがアグロバクテリウムによる送達を使用して前記パイナップル細胞に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項96】
前記カロテノイド生合成ポリペプチド発現レギュレーターが花粉による送達、前記パイナップル細胞の少なくとも1個のプロトプラストへの直接核酸導入、遺伝子銃、マイクロインジェクション、花房のマクロインジェクション、ひげによる受精、レーザーパーフォレーション、及び超音波から構成される群から選択される少なくとも1種の核酸送達技術を使用して前記パイナップル細胞に導入される少なくとも1個の核酸セグメントを含む請求項69に記載のパイナップル細胞。
【請求項97】
請求項69に記載の前記パイナップル細胞から再生されたパイナップル植物体。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate


【公表番号】特表2006−508681(P2006−508681A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559306(P2004−559306)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/038664
【国際公開番号】WO2004/052085
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505212108)デル・モンテ・フレッシュ・プロデュース・カンパニー (1)
【Fターム(参考)】