説明

カンタキサンチンの新規な使用

本発明は、動物組織の赤みを帯びた色を増加させるための、カンタキサンチンおよびカンタキサンチン含有化合物の使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、鳥、特に家禽における筋組織を着色するための、カンタキサンチンの使用に関する。カンタキサンチンは潜在的なビタミンA前駆物質として作用し、その抗酸化特性のために家禽の代謝においてフリーラジカル捕捉剤として重要な役割を果たすことは十分に認められている。これらの目的のために、カンタキサンチンは、通常の家禽の食餌に8〜10ppmの量で使用される。驚くべきことに、鳥の食餌に少なくとも10ppm、好ましくは12〜25ppmの量でカンタキサンチンを使用することによって、筋組織が著しく着色されることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、動物の組織の赤みを帯びた色を増加させるカンタキサンチンおよびカンタキサンチン含有化合物の使用に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、鳥、特に家禽の筋組織を着色するためのカンタキサンチンの使用に関する。
【0003】
カンタキサンチンは、潜在的なビタミンA前駆物質として作用し、その抗酸化特性のために、家禽の代謝においてフリーラジカル捕捉剤として重要な役割を果たすことは十分に認められている。これらの目的のために、通常の家禽の食餌において8〜10ppmの量でカンタキサンチンが使用される。
【0004】
驚くべきことに、鳥の食餌に少なくとも10ppm、好ましくは12〜25ppmの量でカンタキサンチンを使用することによって、筋組織が著しく着色されることが見出された。
【0005】
したがって、一態様において、本発明は動物組織の赤みを帯びた色を増加させるために、食餌において少なくとも10ppmの量でカンタキサンチンを使用することに関する。
【0006】
さらに他の態様において、本発明は、鳥、特に家禽において筋組織を着色するために、食餌に10〜25ppmの量でカンタキサンチンを使用することに関する。
【0007】
さらに他の態様において、本発明は、カンタキサンチンを少なくとも10ppm含有する動物の食餌、ならびに動物、特に鳥において筋組織を着色する方法であって、かかる動物に有効量の少なくとも10ppmのカンタキサンチンを投与することを含む方法に関する。
【0008】
本明細書において使用される「鳥」という用語は、家禽、シチメンチョウおよびカモを含む。
【0009】
本発明の目的のために、カンタキサンチンは、動物の飼料または食餌にサプリメントとして適切に投与される。例えば商標CAROPHYLL(登録商標)Red(登録商標)10%で入手可能な市販の配合物としてカンタキサンチンを通常の飼料に混合することによって、または飼料成分とカンタキサンチンとのプレミックスを最初に調製し、続いて他の食物成分とそのプレミックスを混合することによって、飼料または食餌を補足することができる。その食物は、従来のあらゆる鳥の飼料であることができる。
【0010】
本明細書で使用される飼料または食餌という用語は、固形および液体食物の両方、ならびに飲料水などの飲用液体を含む。特に、カンタキサンチンは、他のミネラル、ビタミン、アミノ酸および微量の成分を含有するプレミックスに配合粉末として添加することができ、そのプレミックスは、通常の動物の食物に添加され、混合することによって、その中で均一な分布を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】皮膚におけるカンタキサンチン濃度を示す。
【図2】腹腔脂肪におけるカンタキサンチン濃度を示す。
【図3】血漿試料におけるカンタキサンチン濃度を示す。
【図4】肝臓におけるカンタキサンチン濃度を示す。
【図5】腎臓におけるカンタキサンチン濃度を示す。
【図6】胸筋におけるカンタキサンチン濃度を示す。
【図7】A〜G群からのブロイラーの胸筋試料および脛の着色を示す。
【0012】
本発明による鳥の処置の効率は、以下に記載の実験から分かる。
【0013】
[実施例:ブロイラーの種々の組織において、カンタキサンチンの濃度に対して、カンタキサンチン50mg/飼料1kgのレベルまで量を増加させる効果]
ブロイラーの着色研究において、種々の組織におけるカンタキサンチンの沈着を評価した。1.56、3.13、6.25、12.5、25.0および50mg/飼料kgの増加レベルで、低カロテノイド基礎食にカンタキサンチンを補足した。1日目から36日目までの全試験期間にわたって、補足を行った。さらに、処置1回の鳥は、実験の最後の3週(15〜36日目)にのみ、カンタキサンチン25mg/飼料kgを摂取した。対照の食餌は、カンタキサンチンを全く補足することなく配合された。
【0014】
レベル50mg/飼料kgまでの増加量のカンタキサンチンを飼料に補足することによって、ブロイラーの皮膚、腹腔脂肪、血漿、肝臓、腎臓および胸筋におけるカンタキサンチンの濃度が直線的に増加した。皮膚、腹腔脂肪および血漿におけるこのカンタキサンチン濃度は、以前の研究結果を完全に裏付ける。全試験期間にわたるカンタキサンチンの補足によって、15〜36日目のみに同レベルのカンタキサンチンを摂取した鳥と比較して、皮膚および胸筋におけるカンタキサンチンの濃度が著しく高くなった。
【0015】
それにもかかわらず、腹腔脂肪、血漿、肝臓および腎臓としての組織試料において、これらの群間での差はなかった。さらに、脛および胸筋のより強い着色が、カンタキサンチン12.5、25および50mg/飼料kgの増加レベルで確認された。
【0016】
[対象および方法]
商用の孵化場から初生ブロイラーを入手した(Joseph Grelier S.A.,Elevage avicole de la Bohadiere,F−49290 Saint−Laurent de la Plaine,France)。ニワトリを性別で分けた。到着した日(1日目)に、鳥20匹(雄10匹、雌10匹)を重量によって群に分けた。羽に赤色で雌を識別した。かんな屑を知らした1つの床の檻に各群を置き、8種の異なる食餌処置のうちの1つに割り当てた。各処置は2つの群で繰り返された(A=A1+A2,B=B1+B2,…)。環境的に制御された部屋にニワトリを収容した。鳥の年齢に室温を合わせた。最初の数日後、各檻に追加の赤外光を置いた。飼料および水道水を無制限に提供した。第1週目の間、飼料は、砕かれた飼料として、後にペレット化された飼料として与えられた。試験期間の最初(1日目)、15日目および試験の最後(36日目)に動物の体重を計った。群当たりの飼料消費量を決定した。体重増加および飼料要求率を計算した。
【0017】
すべての動物が低カロテノイド基礎食を摂取した(表1)。試験の5週間の間、試験計画に従ってB〜G群の食餌にカンタキサンチンを補足した。処置Hの動物は、15から36日目のみカンタキサンチンの補足を受けた。対照処置(A群)は、追加のカンタキサンチンを全く含有しなかった。
【0018】
B〜G群に、含有レベル0、1.56、3.13、6.25、12.5、25および50mg/餌kgにてカンタキサンチン(CAROPHYLL(登録商標)Red10%、(10.5%カンタキサンチン))を与えた。H群の動物は、カンタキサンチン(CAROPHYLL(登録商標)RED10%,10.4%カンタキサンチン)25mg/餌kgを摂取した。次いで、目的の濃度を達成するために、最終的な飼料に添加されるプレミックスとして、基礎食1kgを適切な量の製品と混合した。混合後、飼料を温度70℃でダイでペレット化した(3×25mm)。
【0019】
試験の最後に(36日目)、ニワトリ10匹/群(各性別5匹)をランダムに選択し、ラベル付けし、頚静脈から血液試料を採取した。その翌日、動物を屠殺し、屠殺体の羽根を一部、むしり取った。背部皮膚、胸筋、大腿筋および腹腔脂肪の試料を採取した。各群の試料をプールした。さらに、肝臓および腎臓も採取し、プールした。
【0020】
試料中のカロテノイドの濃度をHPLCによって決定した。血漿、皮膚および腹腔脂肪を抽出し、インフィード(in−feed)アッセイに用いられるHPLC法によってカロテノイドについて分析した。同じ方法で、胸筋、肝臓および腎臓試料におけるカロテノイド濃度を決定した。後の段階で最終的なカンタキサンチンを決定するために、大腿筋を−20℃で保管した。
【0021】
データの統計的評価のために、「Stat Box Pro」version5.0(Grimmersoft,1995)のソフトウェアを用いて、一要因(包含レベル)分散分析を行った。有意な処置効果がp<0.05の確率レベルで示された場合、ニューマン・クールズ(Newman Keuls)検定を用いて、処置方法間の差を比較した。
【0022】
[結果および考察]
飼料の試料において分析されたカロテノイド濃度を表2に示す。この結果は、目標レベルと一致した。カンタキサンチン製品に関して、最終的な飼料における平均回収率95%が確認された。
【0023】
皮膚、腹腔脂肪および血漿試料におけるカンタキサンチン濃度は、表3、4および5に示される。カンタキサンチンが12.5、25または50mg/飼料kgで含有された場合、処置群間の差は、それより低い用量と比較して皮膚および腹腔脂肪において有意であった。血漿においては、効果は、低い用量と比較して含有レベル6.25mg/kgで既に有意であった。カンタキサンチン補足のこれらの有意な効果に加えて、組織におけるカンタキサンチン濃度の直線的な用量依存的増加もあった(図1〜3)。
【0024】
カンタキサンチン25mg/飼料kgを全試験期間を通して添加したF群については、同量のカンタキサンチンを15日目から36日目のみ与えたH群と比較して、皮膚において有意に高い濃度のカンタキサンチンが見られた。腹腔脂肪および血漿試料において、これら2つの特定の群の間で差は見られなかった。
【0025】
表6は、HPLCアッセイにより決定された皮膚、腹腔脂肪および血漿における含有量と、カンタキサンチンが0〜20mg/飼料kgのレベルで添加された、先立って行われた3つの着色研究をベースとして線形回帰式で計算された値との比較を示す。皮膚、腹腔脂肪および血漿試料におけるカンタキサンチン含有量の分析的決定の結果は、上記の線形回帰で計算されたデータと完全に一致する。最高レベル(50mg/飼料kg)のカンタキサンチン補足でさえ、回帰から推定された計算レベルが、分析レベルと一致した。
【0026】
肝臓、腎臓および胸筋におけるカンタキサンチンの濃度を表7、8および9に示す。カンタキサンチン製品が6.25mg/飼料kgを超えて含有された場合、それより低い補足レベルと比較して、腎臓および胸筋において有意に高い濃度のカンタキサンチンが測定された。肝臓においては、カンタキサンチン12.5mg/飼料kgを超えた場合に、カンタキサンチン濃度の有意な差が確認された。カンタキサンチン補足のこれらの有意な効果に加えて、上記の組織におけるカンタキサンチン濃度の直線的な用量依存的増加もあった(図4〜6)。
【0027】
カンタキサンチン25mg/飼料kgを全試験期間を通して添加したF群については、同量のカンタキサンチンを15日目から36日目のみ与えたH群と比較して、胸筋において有意に高い濃度のカンタキサンチンが見られた。肝臓および腎臓試料において、これら2つの特定の群の間で差は見られなかった。
【0028】
A〜G群からのブロイラーの胸筋試料および脛の着色を図7に示す。特に、高い含有レベル(12.5〜50mg/飼料kg)で、筋肉および脛の赤みを帯びた色がより強くなった。
【0029】
食餌へのカンタキサンチンの補足は、鳥の発育性能に全く影響しなかった(表10)。
【0030】
レベル50mg/飼料kgまでの増加レベルのカンタキサンチンを飼料に補足することによって、ブロイラー組織におけるカンタキサンチン濃度が直線的に増加することが、この試験から結論付けられる。
【0031】
カンタキサンチンの補足を増加させると、皮膚、血漿および腹腔脂肪のみならず、肝臓、腎臓および胸筋においても濃度が増加する。
【0032】
組織におけるカンタキサンチン濃度の増加と同様に、カンタキサンチン12.5〜25mg/飼料kgの増加補足レベルで、脛および胸筋のより強い着色が認められた。
【0033】
全試験期間にわたってカンタキサンチンを補足することによって(F群;カンタキサンチン25mg/飼料kg)、同レベルのカンタキサンチンを15日目から36日目のみ摂取したH群の鳥と比較して、皮膚および胸筋におけるカンタキサンチン濃度が有意に高くなった。それにもかかわらず、組織試料脂肪、血漿、肝臓および腎臓において、これらの群間での差はなかった。
【0034】
食餌へのカンタキサンチンの補足は、動物の性能に全く影響しなかった。
【0035】
【表1】



【0036】
【表2】



【0037】
【表3】



【0038】
【表4】



【0039】
【表5】



【0040】
【表6】



【0041】
【表7】



【0042】
【表8】



【0043】
【表9】



【0044】
【表10】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物組織の赤みを帯びた色を増加させるための、鳥の食餌における、少なくとも10ppmの量のカンタキサンチンの使用。
【請求項2】
鳥の筋組織を着色するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記動物が、鳥、好ましくは家禽である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
カンタキサンチンが、少なくとも12〜25ppmの量で前記動物に与えられる、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
動物組織の赤みを帯びた色を増加させるために、カンタキサンチンを少なくとも10ppm含む、動物の食餌または飼料。
【請求項6】
家禽の食餌である、請求項5に記載の動物の食餌または飼料。
【請求項7】
動物、特に鳥の筋組織を着色する方法であって、有効量の少なくとも10ppmのカンタキサンチンをかかる動物に投与することを含む、方法。
【請求項8】
有効量のカンタキサンチン12〜25ppmを前記動物に投与することを含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−520459(P2011−520459A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509978(P2011−509978)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056141
【国際公開番号】WO2009/141380
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】