説明

カーテンフック、及びカーテン廃材のリサイクル方法

【課題】 本発明は、カーテン廃材から得られた再生樹脂を原料として含み、ユーザーが色味の違いを見分けにくいカーテンフックを提供する。
【解決手段】 本発明のカーテンフックは、合成樹脂製カーテン廃材から得られた再生樹脂を含み、マンセル表色系における明度が3.0以下である。このカーテンフックは、前記再生樹脂が30質量%以上含まれ、好ましくは、黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材から得られた再生樹脂が5質量%以上含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン廃材を再生した再生樹脂を原料として含むカーテンフックに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂繊維の織物又は編み物、合成樹脂シートなどからなる合成樹脂製カーテンが広く使用されている。
近年の環境保護の観点から、合成樹脂製カーテンの使用後、その合成樹脂を再利用することが望まれている。
特許文献1には、合成樹脂製カーテン廃材から再生樹脂を得るためのリサイクル装置が開示されている。
このような再生樹脂は、例えば、カーテンフックの製造原料として用いることができる。
【0003】
ところで、市場においては、1色又は2色以上に着色又は色彩模様が施された合成樹脂製カーテンが流通している。このため、回収されるカーテン廃材の色彩も多種多様に亘っている。
【0004】
このように様々な色彩のカーテン廃材が混在するものから再生された再生樹脂は、その色彩がばらつくという問題点がある。
すなわち、カーテン廃材は、回収業者によって回収され、ある程度の量が集まったときに再生されるが、同じ色彩のカーテン廃材だけが集まる又は異なる色彩のカーテン廃材が一定の割合で集まることはない。従って、再生樹脂の生産ロットごとに色彩のばらつきが生じるから、これを用いて製造されたカーテンフックは生産ロットごとに色味がばらついてしまう。ユーザーは、このような色味の異なるカーテンフックを簡単に見分けてしまうので、商品として販売できない。
この点、カーテン廃材を回収した後、同じ色彩の廃材毎に仕分けすれば上記のような問題点は生じ難いが、このような仕分けは非常に煩雑であり、又、多種多様な色彩のカーテン廃材を色彩毎に分ける作業自体が難しい。
【0005】
また、カーテンフックは、フック部において弾性変形しうるものでなければならず、又、可動部を有するカーテンフックの場合には、可動部が弾性変形する必要がある。そのため、かかるカーテンフックを製造するため、変形に耐えうる強度を有する再生樹脂が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−149706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、カーテン廃材から得られた再生樹脂を原料として含み、ユーザーが色味の違いを見分けにくいカーテンフックを提供することである。
本発明の第2の目的は、カーテン廃材を利用してユーザーが色味の違いを見分けにくいカーテンフックを得ることができるカーテン廃材のリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカーテンフックは、合成樹脂製カーテン廃材から得られた再生樹脂を含み、マンセル表色系における明度が3.0以下である。
【0009】
本発明の好ましいカーテンフックは、IV値が0.45〜0.8である。
本発明の好ましいカーテンフックは、前記再生樹脂を30質量%以上含んでいる。
本発明の好ましいカーテンフックは、黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材から得られた再生樹脂を5質量%以上含んでいる。
【0010】
本発明の別の局面によれば、カーテン廃材のリサイクル方法を提供する。
本発明のカーテン廃材のリサイクル方法は、黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材を溶融し、黒色の再生樹脂を得る工程、前記黒色の再生樹脂を5質量%以上含む樹脂を成形することにより、マンセル表色系における明度が3.0以下であるカーテンフックを得る工程、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーテンフックは、カーテン廃材の再生樹脂を使用しているので、環境保護上好ましい。また、このカーテンフックの色味の相違は、ユーザーが見分けることができないので、同じ黒色の商品として市場に提供できる。
本発明のカーテン廃材のリサイクル方法によれば、様々な色彩が混在して回収されたカーテン廃材を色ごとに分別した上で再生樹脂を得なくても、ユーザーが色味の相違を見分けることができないカーテンフックを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カーテンフックの正面図。
【図2】同上面図。
【図3】カーテンフックの分解正面図。
【図4】カーテンフックのフック部を移動させている状態を示す正面図。
【図5】黒色カーテン再生樹脂の含有量に対するマンセル明度の変化を示すグラフ図。
【図6】黒色カーテン再生樹脂の含有量に対するマンセル彩度の変化を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図4において、1は、1つの実施形態に係るカーテンフックを示す。
このカーテンフック1は、カーテンに掛けるカーテン吊り部2と、カーテンレールなどに掛けるフック部3と、を有している。
このカーテンフック1は、カーテン吊り部2に対するフック部3の高さ位置を上下に変更できる所謂アジャスタータイプである。
カーテン吊り部2とフック部3とは、図3に示すように、別々に成形されており、使用に際して、フック部3がカーテン吊り部2に装着される。
カーテン吊り部2とフック部3は、同一の原料を用いて成形されていてもよいし、或いは、異なる原料を用いてそれぞれ成形されていてもよい。
【0014】
カーテン吊り部2は、略平行に且つ上下に延びる第1桿41及び第2桿42が下端部で連結された正面視U字状の吊り部本体4を有する。前記第1桿41と第2桿42の間に、カーテンを挿入可能な部分が形成されている。前記第2桿42は、略平行に且つ上下に延びる前板421及び後板422を有する上面視略H字状に形成されており、その第2桿42の後板422にフック部3のスライド部7が挿入可能である。第2桿42の前板421の、後板422に対向した面には、上下多段の複数の下向き爪5が形成されている。
【0015】
フック部3は、略平行に且つ上下に延びる第1棒61及び第2棒62が上端部で連結された正面視略逆U字状のフック本体6を有する。前記第1棒61と第2棒62の間に、カーテンレールに吊り下げる部分が形成されている。
前記第2棒62には、カーテン吊り部2の後板422を包んで嵌め合わされる、上面視略逆C字状のスライド部7が形成されている。このスライド部7には、前記カーテン吊り部2の下向き爪5に係合する板バネ状の上向き爪8が突設されている。
【0016】
図4に示すように、フック部3をカーテン吊り部2の第2桿42に対して下方に引くと、フック部3の上向き爪8が下向き爪5の傾斜面に沿って揺動し、フック部3が下方に移動する。
フック部3の上向き爪8が前記第2桿42の何れかの下向き爪5に係合することにより、フック部3をカーテン吊り部2の所望の位置で固定できる。
ただし、本発明のカーテンフックは、図1乃至図4に示すような形態に限られず、従来公知の形態を採用できる。
【0017】
本発明のカーテンフックは、合成樹脂製カーテン廃材から得られた再生樹脂を含む樹脂材料を溶融し、成型することによって得られた樹脂成形品である。
以下、合成樹脂製カーテン廃材から得られた再生樹脂を「カーテン再生樹脂」といい、合成樹脂製カーテン廃材を「カーテン廃材」という。
カーテン廃材としては、使用済みの合成樹脂製カーテン、合成樹脂製カーテンを縫製する際に発生した端切れなどが挙げられる。
【0018】
本発明のカーテンフックは、マンセル表色系における明度が3.0以下であり、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.7以下である。
また、カーテンフックは、好ましくはマンセル表色系における彩度が0.2以下であり、より好ましくは0.1以下である。
【0019】
前記明度は、色の明るさを表す指標であり、前記彩度は、色の鮮やかさを表す指標である。明度が低い場合は、黒っぽい色となり、明度が高い場合は、白っぽい色となる。彩度が低い場合は、黒ずんだ色となり、彩度が高い場合は、鮮やかな色となる。
【0020】
マンセル表色系の明度は、理想的な黒を0とし、理想的な白を10としたスケールで表し、明るさを色相に関係なく比較する度合いである。また、マンセル表色系の彩度は、その色の中の純色成分が含まれる度合いであり、無彩色を0とするが、色相及び明度に応じてその上限は異なる。
明度及び彩度は、JIS Z 8722に規定される方法に準じて測定した測定値を、JIS Z 8721に準拠した標準色票に照らして求めた、マンセル表色系の明度(V)及び彩度(C)の値を指す。
【0021】
前記明度が3.0以下のカーテンフックは、黒色に見え、又、ユーザーにその色味の違いを簡単に認識させない。
すなわち、明度が3.0以下の範囲でバラツキのある複数のカーテンフックを、ユーザー(人間)が見ても、ユーザーはその色味の違いを認識できず、全て同じ黒色と認識する。例えば、明度が2.6のカーテンフックと明度が2.3のカーテンフックとは、両者ともに濃い黒色を呈するために、その色味の違いをユーザーが簡単に見分けることができず、両者は、同じ黒色に見える。このため、本発明によれば、生産ロットごとに得られるカーテンフックに、ユーザーが認識できるような色味のバラツキが生じず、同じ黒色の正規の商品として提供できる。特に、明度が2.7以下のカーテンフックは、ユーザーにその色味の違いを簡単に認識させない。
さらに、彩度が0.2以下のカーテンフックによれば、さらに黒ずんだ色となり、ユーザーが色味をさらに見分けることが困難になる。
【0022】
本発明のカーテンフックのIV値(固有粘度)は、0.45〜0.8であることが好ましく、さらに、0.5〜0.6であることがより好ましい。
ただし、前記IV値は、カーテンフックとして成形した後の成形品の値である。IV値の測定方法は、下記実施例の通りである。
IV値が上記範囲内のカーテンフックは、適度な弾性と強度を有する。特に、カーテンフックが上記フック部3の上向き爪8のような可動部を有する場合には、その可動部が短期間で破損することを防止できる。IV値が0.45未満のカーテンフックは、強度が低く、可動部が破損し易い。さらに、IV値が0.45未満のカーテンフックは、使用に伴って可動部の形状復元力が弱くなるため、下向き爪5との係合が弱くなり、フック部3が脱落するおそれがある。一方、IV値が0.8を超えるカーテンフックは、加工性が悪い。
【0023】
本発明のカーテンフックに用いられるカーテン再生樹脂は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂であることが好ましい。
本発明のカーテンフックは、カーテン再生樹脂以外に、カーテン廃材以外の合成樹脂製廃材から得られた再生樹脂、バージン樹脂などの他の樹脂が含まれていてもよい。
以下、カーテン廃材以外の合成樹脂製廃材から得られた再生樹脂を「他の再生樹脂」という。
他の再生樹脂は、カーテン再生樹脂と均一に溶融して一体化するために、全てポリエステル系樹脂であることが好ましい。具体的には、他の再生樹脂は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート製ボトル型容器やポリエチレンテレフタレート製衣服などから再生された樹脂が挙げられる。
【0024】
本発明では、カーテン再生樹脂として、黒色のカーテン再生樹脂、及び、黒色以外のカーテン再生樹脂が用いられる。
黒色のカーテン再生樹脂は、黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材を溶融し、再生することにより得ることができる。
【0025】
黒色のカーテン再生樹脂を混合することにより、黒色のカーテンフックを作製できる。黒色のカーテン再生樹脂の含有量は特に限定されないが、カーテンフックの全量に対して5質量%以上含まれていることが好ましく、さらに、8質量%以上がより好ましい。黒色のカーテン再生樹脂を5質量%以上混合することにより、マンセル表色系における明度が3.0以下のカーテンフックを確実に得ることができる。黒色のカーテン再生樹脂の含有量の上限は、理論上は100質量%である。
【0026】
もっとも、黒色のカーテン再生樹脂を多量に入れたとしても得られるカーテンフックの明度は変わらず、又、黒色のカーテン再生樹脂は、様々なカーテン廃材の中から黒色のカーテン廃材を分別して得られる再生樹脂であるから再生作業が少し煩雑である。このような観点から、黒色のカーテン再生樹脂は、できるだけ少量であることが好ましく、その上限としては、カーテンフックの全量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0027】
また、明度を適正な範囲に調整する際に、黒色のカーテン再生樹脂の配合量を多くしすぎると、再生樹脂の原料によってはIV値が大きくばらつく場合がある。IV値のばらつきが大きいと、カーテンフックの品質が安定しないばかりでなく、可動部が短期間で破損したり、加工性が悪くなるなどの不具合が発生する場合がある。従って、明度値とともにIV値が適正な範囲になるように、黒色のカーテン再生樹脂の配合量や加工条件などを調整することが望ましい。
【0028】
黒色のカーテン再生樹脂は、マンセル表色系における明度が2.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.3以下の樹脂が用いられる。このようなマンセル表色系の黒色カーテン再生樹脂を原料に混合することにより、明度が3.0以下のカーテンフックを確実に得ることができる。
また、黒色のカーテン再生樹脂のマンセル表色系における彩度は、0.1以下であることが好ましい。
【0029】
黒色のカーテン再生樹脂は、例えば、黒色のカーテン廃材とそれ以外の色彩のカーテン廃材とを溶融し再生することにより得ることができる。前記黒色のカーテン廃材とそれ以外の色彩のカーテン廃材の比率は特に限定されないが、黒色のカーテン廃材が10質量%以上含まれていることが好ましく、15質量%以上含まれていることがより好ましく、20質量%以上含まれていることがさらに好ましい。
また、前記黒色のカーテン廃材の比率は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。黒色のカーテン廃材とそれ以外の色彩のカーテン廃材のうちで、黒色のカーテン廃材が10質量%〜40質量%含まれていれば、上記黒色のカーテン再生樹脂を得ることができる。
【0030】
なお、黒色のカーテン廃材自体も、マンセル表色系における明度が2.5以下であることが好ましく、2.4以下であるものがより好ましく、2.3以下であるものがさらに好ましい。
黒色のカーテン再生樹脂を得るために黒色のカーテン廃材と共に混合される、黒色以外の色彩のカーテン廃材としては、任意の1色のカーテン廃材でもよいし、任意の色彩のものが複数種含まれたカーテン廃材でもよい。つまり、黒色以外の色彩のカーテン廃材は、特に分別を行わずに、任意の色彩のカーテン廃材を用いればよい。
【0031】
本発明のカーテンフックは、上記カーテン再生樹脂を20質量%以上含み、好ましくは30質量%以上含む。カーテン再生樹脂の含有量が少なすぎると、リサイクルの意義を有しなくなる。本発明のカーテンフックに含まれるカーテン再生樹脂の上限は特に限定されず、理論上は100質量%であるが、カーテン再生樹脂のみでは強度面に不安があるので、他の再生樹脂及び/又はバージン樹脂を含んでいることが好ましい。特に、上記フック部3を成形するための原料は、バージン樹脂を含んでいることが好ましい。
本発明のカーテンフックは、カーテン再生樹脂を10質量%〜80質量%、他の再生樹脂を20質量%〜80%質量%、バージン樹脂を0〜30質量%含む樹脂原料から成形されていることが好ましい。
特に、上記フック部3は、カーテン再生樹脂を10質量%〜50質量%、他の再生樹脂を30質量%〜70%質量%、バージン樹脂を20〜50質量%含んでいることが好ましい。
【0032】
本発明のカーテン廃材のリサイクル方法は、黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材を溶融し、黒色の再生樹脂を得る工程、前記黒色の再生樹脂を5質量%以上含む樹脂を成形することにより、マンセル表色系における明度が3.0以下であるカーテンフックを得る工程、を有する。
【0033】
まず、回収された様々なカーテン廃材から、ポリエステル系樹脂製カーテン廃材とそれ以外のカーテン廃材を分別すると同時に、黒色のカーテン廃材とそれ以外の色彩のカーテン廃材に分別する。それ以外の色彩のカーテン廃材については、色彩毎に更に分別する必要はなく、青、黄、赤などの様々な色彩の複数種のカーテン廃材が無秩序に含まれる。
【0034】
黒色のカーテン廃材を破砕し、溶融押出成形機で溶融して押し出すことにより、黒色のカーテン再生樹脂が得られる。なお、黒色のカーテン廃材とそれ以外の色彩のカーテン廃材とを溶融し再生しても、同様に黒色のカーテン再生樹脂が得ることができる。
黒色のカーテン再生樹脂が、黒色のカーテン廃材とそれ以外の色彩のカーテン廃材から得られる場合、それらの混合比率は、上述の通りである。得られた黒色のカーテン再生樹脂は、ペレットに加工してもよい。
黒色のカーテン再生樹脂をペレット加工すると、黒色のカーテン再生樹脂をカーテン廃材の形態よりも遥かに少ない体積で安定的に貯蔵することが可能となる。このように、黒色のカーテン再生樹脂を予めペレット加工しておけば、これを黒色以外の色彩のカーテン廃材の色味に合わせて適宜投入することが可能となり、製造効率が増すばかりでなく、明度値などの色味とIV値を調整することが容易になる。
【0035】
一方、別途、黒色以外のカーテン廃材を破砕し、溶融押出成形機で溶融して押し出すことにより、黒色以外のカーテン再生樹脂が得られる。得られたカーテン再生樹脂は、ペレットに加工してもよい。
カーテン廃材からカーテン再生樹脂を得る方法及び装置は、特開2008−149706に開示された方法に従って実施できる。
【0036】
製造するカーテンフックの全量に対して黒色のカーテン再生樹脂を5質量%以上含むように、黒色のカーテン再生樹脂のペレットと黒色以外のカーテン再生樹脂のペレットの量を調製する。
なお、黒色のカーテン再生樹脂と黒色以外のカーテン再生樹脂を、上述のように別々にペレット化せず、製造するカーテンフックの全量に対して黒色のカーテン再生樹脂を5質量%以上含むように、黒色のカーテン廃材と黒色以外のカーテン廃材の量を調製しておいた上で、それらを一度に溶融することにより、黒色のカーテン再生樹脂を含むカーテン再生樹脂のペレットを予め製造しておいてもよい。
【0037】
黒色のカーテン再生樹脂のペレット及び黒色以外のカーテン再生樹脂のペレットに、必要に応じて配合される他の再生樹脂及びバージン樹脂を所定量混合し、これを溶融し、射出成形することにより、マンセル表色系における明度が3.0以下であるカーテンフックが得られる。
黒色のカーテン再生樹脂、黒色以外のカーテン再生樹脂、他の再生樹脂及びバージン樹脂の含有量は、上記カーテンフックの組成説明欄で述べた通りである。
また、カーテンフックを製造する際の溶融条件、射出成形法などは、従来公知の方法で行うことができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明を更に詳述する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるわけではない。
【0039】
[使用した樹脂ペレット]
<青色カーテン再生樹脂>
青色系のポリエチレンテレフタレート製カーテン廃材を約60kg準備し、これを押出成形機(ユニテックパロマ(株)製)を用いて、280℃で溶融し、樹脂ペレットを作製した。
<桃色カーテン再生樹脂>
桃色系のポリエチレンテレフタレート製カーテン廃材を約60kg準備し、これを押出成形機を用いて、280℃で溶融し、樹脂ペレットを作製した。
<黄色カーテン再生樹脂>
黄色系のポリエチレンテレフタレート製カーテン廃材を約60kg準備し、これを押出成形機を用いて、280℃で溶融し、樹脂ペレットを作製した。
<黒色カーテン再生樹脂>
黒色系のポリエチレンテレフタレート製カーテン廃材を約10kgと黒色以外の色彩のポリエチレンテレフタレート製カーテン廃材を約50kg準備し、これを押出成形機を用いて、280℃で溶融し、樹脂ペレットを作製した。なお、黒色以外の色彩のポリエチレンテレフタレート製カーテン廃材は、様々な色彩のカーテン廃材からなり、色彩に関して特別な選別を行わなかった。
<他の再生樹脂>
ポリエチレンテレフタレートの再生樹脂(ウツミリサイクルシステムズ(株)製、製品名「UK−31」)を用いた。この再生樹脂は無色透明であった。
【0040】
[試験例1−1〜1−5]
青色カーテン再生樹脂、黒色カーテン再生樹脂及び他の再生樹脂を、表1に示す割合(質量比)で混合し、これを射出成形機(日精樹脂工業(株)製、型式:FN3000)に投入して、260℃で溶融し射出し、厚み3mm、縦87mm、横12mmの成形板をそれぞれ作製した。
【0041】
[試験例2−1〜2−5]
桃色カーテン再生樹脂、黒色カーテン再生樹脂及び他の再生樹脂を、表1に示す割合(質量比)で混合し、これを上記射出成形機に投入して、265℃で溶融し射出し、厚み3mm、縦87mm、横12mmの成形板をそれぞれ作製した。
【0042】
[試験例3−1〜3−5]
黄色カーテン再生樹脂、黒色カーテン再生樹脂及び他の再生樹脂を、表1に示す割合(質量比)で混合し、これを上記射出成形機に投入して、265℃で溶融し射出し、厚み3mm、縦87mm、横12mmの成形板をそれぞれ作製した。
【0043】
[試験例4]
黒色カーテン再生樹脂及び他の再生樹脂を、表1に示す割合(質量比)で混合し、これを上記射出成形機に投入して、265℃で溶融し射出し、厚み3mm、縦87mm、横12mmの成形板を作製した。
【0044】
【表1】

【0045】
[マンセル明度及び彩度の測定]
上記各試験例の成形板について、下記測定法にてマンセル明度及び彩度を測定した。その結果を表1に示す。明度及び彩度の測定と同時に得られたL値及びY値も、表1に併記している。
また、試験例1−1〜1−5、2−1〜2−5、3−1〜3−5の明度及び彩度の変化については、図5及び図6にグラフで表している。図5の横軸は、成形板の全量に対する黒色カーテン再生樹脂の含有量(質量%)であり、同縦軸は、明度である。図6の横軸は、成形板の全量に対する黒色カーテン再生樹脂の含有量(質量%)であり、同縦軸は、彩度である。
【0046】
各試験例で得られた成形板についてのマンセル表色系の明度及び彩度は、JIS Z 8722に準拠した色彩色差計(コニカミノルタ社製、製品名「色彩測色システム(簡易型)CR−200)を用い、測定径8mmで測定した。
なお、明度及び彩度の測定と同時にL値及びY値も得た。
【0047】
図5から、黒色カーテン再生樹脂を4質量%以上混合すると、明度の値は緩やかに減少するようになり、黒色カーテン再生樹脂を8質量%以上混合すると、明度の値は殆ど変化しなくなることが判る。これは、青色カーテン再生樹脂、桃色カーテン再生樹脂、及び黄色カーテン再生樹脂の何れにおいても、同様であった。このため、様々な色彩が混在している任意のカーテン廃材から得られたカーテン再生樹脂に、黒色カーテン再生樹脂を少なくとも4質量%以上混合することにより、黒色のカーテンフックを得ることができることが判った。
【0048】
[外観の評価]
上記各試験例の成形板について、下記評価法にて外観を評価した。その結果を表1に示す。
外観の評価は、各試験例で得られた成形板の外観を、成人標準男性が目視することにより、色味の評価を行った。この評価にあたって、色味評価をより客観的にするために、試験例4で得られた成形板を比較標準として比較しながら評価を行った。その外観の色味評価結果は、下記の通りである。
A:黒色と明瞭に認識でき、比較標準との色味の相違を全く感じなかった。
B:黒色と明瞭に認識でき、製品としては問題なく使用できる色味であるが、比較標準と並べて対比すると、色味の相違を僅かに感じた。
C:黒色とは明らかに色味が異なり、比較標準との色味に大きな差異を感じた。
【0049】
各試験例の何れも、黒色カーテン再生樹脂が4質量%以下の場合には、黒色の色味に違いを感じ、黒色カーテン再生樹脂が8質量%以上の場合には、黒色の色味に殆ど違いを感じない又は全く感じなかった。
この結果と図5のグラフから、マンセル明度が3.0以下であれば、黒色の色味に殆ど違いを感じなくなると推定される。
【0050】
[IV値の測定]
上記各試験例の成形板について、下記測定法にてIV値を測定した。その結果を表1に示す。各試験例ともに、IV値は殆ど変化がなかった。なお、IV値が5.0〜6.0のカーテンフックは、適度な弾性と強度を有することが知られている。
【0051】
IV値の測定は、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール=50/50の混合溶媒に、溶解温度80℃、溶解時間1時間の条件で各試験例を溶解させて試料を調製し、ウベロード粘度計を用いて30℃で行った。
【0052】
[カーテンフックの作製]
各試験例で得られた成形板と同じ組成にて、図1に示すようなカーテンフックを成形し、その使用状態や強度を確認した。その結果、何れの試験例のものもカーテンフックとして使用できることが確認できた。
【符号の説明】
【0053】
1…カーテンフック、2…カーテン吊り部、3…フック部、4…吊り部本体、5…下向き爪、6…フック本体、7…スライド部、8…上向き爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製カーテン廃材から得られた再生樹脂を含み、
マンセル表色系における明度が3.0以下であることを特徴とするカーテンフック。
【請求項2】
IV値が0.45〜0.8である請求項1記載のカーテンフック。
【請求項3】
前記再生樹脂が30質量%以上含まれている請求項1又は2に記載のカーテンフック。
【請求項4】
黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材から得られた再生樹脂が5質量%以上含まれている請求項1〜3の何れかに記載のカーテンフック。
【請求項5】
黒色の合成樹脂製カーテン廃材を含むカーテン廃材を溶融し、黒色の再生樹脂を得る工程、
前記黒色の再生樹脂を5質量%以上含む樹脂を成形することにより、マンセル表色系における明度が3.0以下であるカーテンフックを得る工程、
を有するカーテン廃材のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−75502(P2012−75502A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221019(P2010−221019)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【出願人】(000147132)ユニテックパロマ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】