説明

カードキー装置

【課題】セキュリティ対策、ピッキング防止対策等の点で有利となるカードキー装置を提供する。
【解決手段】カードキー装置は、複数の板状タンブラ部材および該タンブラ部材を揺動可能に並列配置して担持する内部ケースで形成される内部ユニットと、この内部ユニットを収納する外部ケースと、内部ユニットに抜き挿しされるカードキー1と、を備える。また、内部ケースと外部ケースとの間に、カードキー1の抜け位置を判定する1点抜け制御手段18を設け、この1点抜け制御手段18により、カードキー1が解錠位置にあると判定されたとき、該カードキー1は内部ケースから引き抜かれるのを阻止し、カードキー1が施錠位置にあると判定されたときのみ、カードキー1が内部ケースから引き抜かれるのを許容するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オフィス向けの机、ワゴン、ロッカー、キャビネット等に使用される収納装置の施解錠機構におけるカードキー装置に係り、特に、カードキーの抜き挿しを常に施錠位置の1点でのみ行うことでセキュリティ向上を図ったカードキー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、机のキー装置は、いわゆる2点抜け機構を有するキー装置、すなわち、キーを施錠位置および解錠位置のいずれの位置でも抜き挿しできる機構のものが主流である。係る2点抜け機構のキー装置では、仕事中は解錠状態にあるキー装置からキーを抜いて、引き出しの出し入れ操作を行い、仕事を終えた後は引き出しを閉め、キー装置を施錠状態に復帰させてからキーを抜くことで、防犯に対処している。
【0003】
また、カードキー装置として、例えば特許文献1〜3に記載された技術が知られている。これら技術は、カードキーを錠本体に抜き挿しして使用することで、錠装置を施解錠する構成のものである。また、カードキーを用いて内筒を交換可能に構成した技術として特許文献4の技術が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−13866号公報
【特許文献2】特開昭58−123980号公報
【特許文献3】特開平4−26388号公報
【特許文献4】実用新案登録第3059496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記2点抜け機構のキー装置にあっては、閉められている引き出しをみて、解錠状態であるにもかかわらず、施錠状態であると誤認し、施錠操作をしないで仕事場から帰宅する事態を生じる。そのため、引き出し内の、例えば個人情報に関する書類などが紛失する虞があり、セキュリティ対策上不利となる問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1のカードキーシステムにあっては、本体ケースの鍵片挿通空隙部にカードキーを抜き挿しするだけで錠の施解錠を行う構成であるため、本体ケースの奥行き寸法が大きくなる。その結果、本体ケースはその奥行き方向に大型化し、カードキーシステムを取り付けるスペースが大きくなる問題がある。特許文献2および特許文献3の技術に使用されるタンブラはディスク型ではなく、逆T字型形状のタンブラである。これによりタンブラの両側からカードキーを抜き挿しすることで施解錠を行うため、カードキー装置自体の外形寸法が大型化する問題がある。さらに、特許文献4はキー孔に内筒交換キーを挿し込んで内筒を外筒から抜き出して交換できる構成ではあるが、開示された技術はシリンダ錠をベースにした技術であり、キーをスライドさせて施解錠を行うシステムにはなっておらず、スマート感のあるデザイン性に劣る問題がある。勿論、上記の各特許文献には、上記2点抜へ機構のキー装置と同様に、セキュリティ対策を施した機構のものは開示されていない。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであって、セキュリティ対策、ピッキング防止対策等の点で有利となるカードキー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、複数のタンブラ部材および該タンブラ部材を揺動可能に並列配置して担持する内部ケースで形成される内部ユニットと、前記内部ユニットを収納する外部ケースと、前記内部ユニットに抜き挿しされるカードキーと、を具備し、前記内部ケースと前記外部ケースとの間に、前記カードキーの抜け位置を判定する1点抜け制御手段を設け、前記1点抜け制御手段により、前記カードキーが解錠位置にあると判定されたとき、前記カードキーは前記内部ケースから引き抜かれるのを阻止し、前記カードキーが施錠位置にあると判定されたときのみ、前記カードキーが前記内部ケースから引き抜かれるのを許容するように制御されることを特徴とする、カードキー装置である。
【0009】
(2)本発明はまた、複数のタンブラ部材および該タンブラ部材を揺動可能に並列配置して担持する内部ケースで形成される内部ユニットと、前記内部ユニットを施錠位置と解錠位置との間に亘ってスライドさせるように収納する外部ケースと、前記外部ケースに凹設され、前記施錠位置および前記解錠位置にある前記内部ユニットにカードキーが挿し込まれないときのみ前記タンブラ部材が係合して前記内部ユニットのスライドを拘束する溝状の判別部と、前記内部ユニットに設けられ、前記内部ユニットが前記施錠位置にあるとき前記外部ケースから出っ張り、前記内部ユニットが前記解錠位置にあるとき前記外部ケース内に引っ込む閂部材と、を具備するカードキー装置であって、前記内部ケースと前記外部ケースとの間に前記カードキーの抜け位置を判定する1点抜け制御手段を設け、前記1点抜け制御手段により、前記カードキーが前記解錠位置にあると判定されたとき、前記カードキーは前記内部ケースから引き抜かれるのを阻止されるが、前記カードキーが前記施錠位置にあると判定されたときのみ、前記カードキーが前記内部ケースから引き抜かれるのを許容するように制御されることを特徴とする、カードキー装置である。
【0010】
上記(1)および(2)の発明によれば、内部ケースと外部ケースとの間に設けた1点抜け制御手段により、カードキーと一体の内部ユニットが施錠位置にあるか、解錠位置にあるかが判定される。1点抜け制御手段がカードキーの位置を解錠位置にあると判定した場合には、カードキーは、内部ケースから引き抜かれないように内部ケース内に保持(ロック)する。一方、1点抜け制御手段によりカードキーが施錠位置にあると判定された場合には、カードキーは内部ケースから自由に引き抜くことできるようになる。1点抜け制御手段により、カードキーは解錠位置では抜き挿しができず、施錠位置でのみ抜き挿しが行えるように制御する。カードキーがカードキー装置に付いているか、付いていないかを視認するだけで、容易に解錠状態または施錠状態を判断でき、解錠状態にあるのを施錠状態であると錯覚するのを未然に防止でき、セキュリティを向上できるようになる。
【0011】
(3)本発明はまた、前記1点抜け制御手段は、前記内部ケースに揺動可能に担持され、前記タンブラ部材に並列配置した判定タンブラと、前記外部ケースの天井に凹設された判定凹部とで形成され、前記内部ユニットが前記施錠位置にあるとき、前記カードキーの抜き挿しに応じて前記判定タンブラを前記判定凹部に入り込むように揺動するが、前記内部ユニットが前記解錠位置にあるとき、前記判定タンブラを前記外部ケースの天井に衝合させることにより、前記カードキーが前記内部ケースから引き抜かれるのを阻止することを特徴とする前記(1)または(2)記載のカードキー装置である。
【0012】
本発明では、上記の1点抜け制御手段を、内部ケースに担持した判定タンブラと、カードキーが施錠位置にあるとき、判定タンブラの位置に対応する外部ケースの天井に設けた判定凹部とで形成した。カードキーが解錠位置にあるときは、判定タンブラは外部ケースの天井に衝合することで、判定タンブラの揺動が拘束される。これにより、解錠位置におけるカードキーは判定タンブラに阻止され、内部ケースから引き抜かれない。他方、カードキーが施錠位置にあるときは、判定タンブラは判定凹部に入り込むので、その分、揺動変位量は大きくなる。その結果、カードキーは判定タンブラに拘束されることなく、内部ケースから引き抜くことができ、施錠位置での1点抜け制御を行うことができるようになる。
【0013】
(4)本発明はまた、前記内部ケースと前記外部ケースとの間にワンウェイクラッチ機構を設け、通常時、前記解錠位置から前記施錠位置への前記内部ユニットのスライドは拘束するが、前記カードキーを挿し込んだときのみ、前記解錠位置へのスライドを許容することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のカードキー装置である。
【0014】
本発明によれば、内部ユニットは解錠位置から施錠位置へ自由にスライドできるが、施錠状態にある内部ユニットはカードキーが挿し込まれない間はワンウェイクラッチ機構によりスライドが拘束される。しかし、カードキーを挿し込むことにより、ワンウェイクラッチ機構が作動して外部ケースと内部ケースとの間の拘束力が解除される。そのため、施錠位置にある内部ケースのスライドが許容され、解錠位置への移動を可能にする。したがって、施錠位置においては、外部ケースの判別部に対するタンブラ部材の係合だけでなく、ワンウェイクラッチ機構による拘束力によっても内部ケースのスライドを拘束するため、内部ユニットが不用意に解錠位置へ操作されるのを禁止でき、一層セキュリティ性能に優れたカードキー装置を実現できるようになる。
【0015】
(5)本発明はまた、前記ワンウェイクラッチ機構は、前記外部ケースに設けた弾性変形可能な爪と、前記内部ケースに設けられ前記爪を係脱させる係合部とで形成され、前記施錠位置では前記爪は前記係合部に係合しているが、前記内部ユニットに前記カードキーが挿し込まれたとき、前記爪が前記係合部から解脱することを特徴とする前記(4)記載のカードキー装置である。
【0016】
本発明によれば、カードキーの抜き挿しで弾性変形する爪を外部ケースに設けたので、施錠位置でカードキーを挿し込まない場合には、爪が内部ユニットに形成した係合部に係合するので施錠状態を維持できる。
【0017】
(6)本発明はまた、前記内部ケースに、前記タンブラ部材に並列配置されて揺動するピッキング対策タンブラを担持する一方で、前記外部ケースに前記ピッキング対策タンブラに係脱するピッキング対策凹部を設け、ピッキング時には、揺動する前記ピッキング対策タンブラが前記ピッキング対策凹部に入り込むことにより、前記内部ユニットが解錠位置へスライドするのを拘束されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のカードキー装置である。
【0018】
本発明では、内部ケースにピッキング対策タンブラを、外部ケースにピッキング対策タンブラに係脱するピッキング対策凹部をそれぞれ設けた。ピッキング時にピッキング道具によりタンブラ部材が揺動操作され、それまで係合していた判別部から解脱してスライド可能状態にされても、必ずピッキング対策タンブラも揺動されるようにしている。その結果、ピッキング対策タンブラはピッキング対策凹部に嵌り込んでいるので、内部ユニットが施錠位置から解錠位置へ強制的にスライドされるのを拘束する。したがって、セキュリティ対策上有利なカードキー装置を得ることができるようになる。
【0019】
(7)本発明はまた、前記内部ケースに、互いに隣り合う前記タンブラ部材を仕切る仕切り壁を設けると共に、該仕切り壁に段差を設け、前記施錠位置にある前記内部ユニットに、前記解錠位置へスライドさせるピッキング強制力が作用したときに、前記タンブラ部材が前記段差に干渉することにより、前記判別部に係合する状態を維持することを特徴とする前記(2)〜(6)のいずれかに記載のカードキー装置である。
【0020】
本発明では、タンブラ部材を仕切るように内部ケースに形成した仕切り壁に段差を設けた。内部ユニットにスライドする力を与えながらピッキング強制力を作用させると、タンブラ部材に対して内部ケースがスライド偏倚する。これにより、タンブラ部材が段差に干渉可能な位置まで偏倚し、タンブラ部材を強制的に揺動させようとしても段差に干渉して揺動できなくする。したがって、ピッキング対策に有利なカードキー装置を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、部品点数が少なく、構成がシンプルで、奥行き長さが小さな取り付けスペースによる制約を受けることなく取り付けることができ、スライド方式というスマート感にあふれた操作性に優れ、かつ、ピッキング防止等セキュリティ対策の点でも有利なカードキー装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るカードキー装置の外観図である。
【図2】同じく、(a)は施錠位置でカードキーを挿入した状態におけるカードキー装置の外観図、(b)はカードキーを解錠位置に挿入した状態における外観図、(c)は変換用カードキーを挿入したまま内部ケースを取り出した状態を示す外観図である。
【図3】同じく、外部ケースのケースと内部ケースとの外観図である。
【図4】同じく、外部ケースのカバーに係り、(a)はカバーの外観図、(b)は (a)のB−B線における矢視縦断面図、(c)は(a)のC−C線における矢視縦断面図である。
【図5】同じく、外部ケースのカバーに係り、(a)はカバーを裏返しにした天井の平面 図、(b)はカードキーのスライドを説明する作用図である。
【図6】同じく、施錠位置においてカードキーを挿し込む前の判定タンブラの作用を説明する横断面図である。
【図7】同じく、施錠位置においてカードキーが挿し込まれるときの判定タンブラの作用を説明する横断面図である。
【図8】同じく、解錠位置における判定タンブラの作動を説明する横断面図である。
【図9】同じく、(a)は内部ケースの外観図、(b)は内部ケースを裏返しにした外観図、(c)は板バネの外観図、(d)は板バネの平面図、(e)は板バネの側面図、(f)は閂部材単体の外観図である。
【図10】同じく、タンブラ部材に係り、(a)は1番山用タンブラの側面図、(b)は2番山用タンブラの側面図、(c)はダミータンブラの側面図、(d)は変換用タンブラの側面図、(e)は判定タンブラの側面図、(f)はピッキング対策タンブラの側面図である。
【図11】同じく、(a)はカードキー装置における(b)のA−A線における矢視平断面図、(b)はカードキー装置の正面図、(c)は(b)のB−B線における矢視横断面図、(d)はC−C線における矢視横断面図である。
【図12】同じく、1番山用タンブラを組み込んだカードキー装置の作用を説明する横断面図である。
【図13】同じく、2番山用タンブラを組み込んだカードキー装置の作用を説明する横断面図である。
【図14】同じく、ダミータンブラを組み込んだカードキー装置の作用を説明する横断面図である。
【図15】同じく、(a)はカードキー装置の正面外観図、(b)および(c)は変換用タンブラを組み込んだカードキー装置の作用を説明する横断面図である。
【図16】同じく、ピッキング対策タンブラがピッキング対策凹部から解脱している状態を示す横断面図である。
【図17】同じく、ピッキング対策タンブラがピッキング対策凹部に係合している状態を示す横断面図である。
【図18】同じく、ワンウェイクラッチ機構を説明する平断面図である。
【図19】同じく、ワンウェイクラッチ機構の係合部を示す外観図である。
【図20】同じく、内部ケースの仕切り壁に段差を設けた構成を示す外観説明図である。
【図21】同じく、上記段差にタンブラ部材が干渉する状態を説明する拡大平面図である。
【図22】同じく、段差にタンブラ部材が干渉する状態を説明する拡大側面図である。
【図23】同じく、(a)は施解錠用カードキーの平面図、(b)は変換用カードキーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のカードキー装置に係る実施形態を図に基づいて詳述する。カードキー装置の構成要素を説明する前に、カードキー装置の概要構成を使用態様を含めて簡略に説明する。なお、本実施形態に使用されるカードキーとしては、施解錠用カードキーと変換用カードキーの二種類があるが、断りのない限り単に「カードキー」と称するときは、両カードキーを含めた「施解錠用カードキー」を指すものとする。また、タンブラ部材6とは、後述する種々のタンブラを含めた総括名称である。
【0024】
図1は上記カードキー1を施錠位置にあるカードキー装置本体2に挿し込む(挿入する)直前の状態を示す外観図、図2(a)は図1のカードキー装置本体2にカードキー1を挿入した状態を示す外観図、同図(b)はカードキー1を施錠位置から同図(a)の矢印Aに示す解錠位置へスライドさせた状態を示す外観図、同図(c)は外部ケース3から内部ユニット4を変換用カードキー5と一体に引き抜いた状態を示す外観図である。
【0025】
カードキー装置本体2はほぼ箱状の外部ケース3と、この外部ケース3に着脱自在に収納される内部ユニット4とからなる。内部ユニット4は内部ケース7と、この内部ケース7に組み込まれた複数の板状タンブラ部材6等とから成る。内部ユニット4は外部ケース3に対してカードキー1の抜き挿しする方向にほぼ直交する方向、すなわち、図1に示す長手方向L、換言すると、図2(a)の矢印Aまたはその反対方向へスライドするように収納される。こうしてカードキー装置本体2は例えば不図示の机の引き出し前面部位に装設され、後述する1点抜け制御手段により施錠位置においてのみカードキー1や変換用カードキー5を抜き挿し口(挿入口)8から図2(c)の矢印Bまたはその反対方向の奥へ抜き挿しできるようになっている。外部ケース3には内部ユニット4のスライドに連動して図2(a)の矢印Cまたはその反対方向へ出没する閂部材(デッドボルト)9が収容され、不図示の錠前に係脱するようになっている。
【0026】
上記概要構成を有するカードキー装置において、図1に示す施錠状態から解錠操作を行うときは、カードキー1を図2(a)のように抜き挿し口8に挿入する。その状態から図2(b)に示す解錠位置まで矢印A方向へ内部ユニット4をスライドさせる。これにより、それまで出っ張っていた閂部材9は外部ケース3内部へ没入し、相手側の不図示の錠前から解脱し、解錠が行われる。こうして、引き出しを開けることができる。なお、後で詳述する1点抜け制御手段18により、解錠位置においてはカードキー1を抜き挿し口8から抜くことができず、内部ケース7に保持される状態が維持される機構になっている。引き出しを締めてロック(施錠)する場合には、上記と逆の操作、換言するとカードキー1を内部ユニット4と共に矢印Aの反対方向へスライドさせる。これにより、閂部材9が内部ユニット4から出っ張り、錠前との間で施錠が行われる。
【0027】
図2(c)のように内部ユニット4を外部ケース3から取り出す場合には、カードキー1にはない変換用キー溝を有する変換用カードキー5を使用して行われる。なお、カードキー1,5については後述する。図1に示す施錠位置にある内部ユニット4に変換用カードキー5を挿入する。次いで、変換用カードキー5を図2(a)に示す施錠位置の状態から矢印A方向へスライドさせる。内部ユニット4を解錠位置までスライドさせると、閂部材9が錠前から引っ込み、解錠操作が行われる。シャーラインがそろい、外部ケース3と閂部材9を取り残したまま、変換用カードキー5と一体の内部ユニット4を矢印B方向へ取り出すことができる。これにより、上記の変換用カードキー5とはキー溝の異なる別の変換用カードキーが挿し込まれた内部ユニット4を、外部ケース3に装着する。すると、図2(b)に示す解錠位置の状態から上記矢印Aと逆方向の施錠位置の方向へ変換用カードキー5をスライドさせる。同図(a)に示す位置に内部ユニット4が移動すると、閂部材9が外部ケース3から出っ張り施錠が行われる。それ以後は、新たなユーザが有する別の新たなカードキー1により、施解錠操作が行われていくこととなる。すなわち、新たなカードキー1および変換用カードキー5による施解錠操作が可能となる。
【0028】
以下、順次、本実施形態におけるカードキー装置の構成を説明していく。
【0029】
<外部ケース>
図2に示す外部ケース3は、図3に示すケース3aと、図4で示されるカバー3bとの二部品を組み合わせて形成される。すなわち、カバー3bのビス孔3fに通したビス3g(図1参照)をケース3a側のビス孔3hにねじ込むことで図2に示される外部ケース3が形成される。外部ケース3の前面には、内部ユニット4の出し入れを行う開口部3cが形成される。
【0030】
図5(a)は外部ケース3の一構成要素であるカバー3bをひっくり返したときに見える裏面、すなわち天井17を示す平面図である。天井17には、複数の溝状の判別部3dが並列に凹設される。判別部3dは長手方向L、すなわち上記スライド方向にほぼ直交する方向で、かつ、後述するタンブラ部材6が設置される位置に対応する位置に設けられる。タンブラ部材6が揺動するとき、判別部3dに係脱するか否かで、内部ユニット4のスライドが拘束または許容される。
【0031】
また、天井17には図6〜図8に示すように、上記判別部3dとは別の溝状の形状を有する1点抜け制御手段18の一部である判定凹部19が凹設される。より具体的には、判定凹部19はカードキー1が挿し込まれる施錠位置に対応する領域に設けた2個の大穴判定部19aと、解錠位置に対応する領域に凹設した、大穴判定部19aより小さな2個の小穴判定部19b(図8参照)とで構成される。施錠位置においては、1点抜け制御手段18の一部である判定タンブラ20の爪20cは図6と図7に示すように、カードキー1の抜き挿しに応じて大穴判定部19aに出入りして揺動する。解錠位置においては、判定タンブラ20の爪20cは図8に示すように、小穴判定部19b近傍の天井17に当接することで、判定タンブラ20の揺動がロックされるようになっている。
【0032】
なお、上記では小穴判定部19bを凹設している場合を説明したが、判定タンブラ20の揺動が拘束されればよいので、小穴判定部19bを設けない態様であってもよい。
【0033】
また、外部ケース3には、後述するワンウェイクラッチ機構23の一構成要素である爪24が形成されている(図3参照)。
【0034】
<スライド用レール部>
カバー3bには、図5(a)、(b)、図15(c)に示すようにスライド用レール部3eがスライド方向に沿って設けられる。スライド用レール部3eに変換用タンブラ15がカム接触的に係脱するようになっている。すなわち、図15(b)のように、通常のカードキー1を挿入したときは変換用タンブラ15がカードキー1により押し上げられるように揺動する。これにより、変換用タンブラ15がスライド用レール部3eにカム接触し、スライド可能な状態となる。この状態では内部ユニット4を自由にスライド動作させて施解錠操作できるが、内部ユニット4を取り出すことはできない。
【0035】
変換用カードキー5を挿入すると、図15(c)に示すように変換用タンブラ15はスライド用レール部3eから外れ干渉しなくなる。この状態になると、内部ユニット4を施解錠操作できると共に、解錠位置において内部ユニット4を変換用タンブラ15と一体にして外部ケース3から取り出すことができるようになっている。
【0036】
また、外部ケース3には、図9(f)に示す閂部材9の出没を許容するガイド溝3jが図3(a)のように設けられている。
【0037】
<内部ユニット>
内部ユニット4は内部ケース7と、内部ケース7に担持されるバネ部材としての板バネ10と、板バネ10に支持されて内部ケース7に組み込まれるタンブラ部材6とで成る。
【0038】
<内部ケース>
内部ケース7は図9(a)および同図(b)に示すように、前面にカードキー1や変換用カードキー5を抜き挿しする抜き挿し口8(挿入口)が設けられる。抜き挿し口8の後方には、有底の箱部7aが形成される。箱部7aに穿った軸孔7bに、長手方向Lに指向する二本の二点鎖線で示す平行配置した円柱棒状のタンブラ軸11が軸支される。
【0039】
内部ケース7には図19〜図22に示すように、並列配置されるタンブラ部材6を交互に仕切る仕切り壁7bが形成され、各仕切り壁7bに段差7cが設けられる。カードキー以外の解錠工具(ピッキングツール)によるピッキング時には、内部ケース7に解錠方向へのテンション(ピッキング強制力)を作用させながらタンブラ部材6を強制的に揺動させる。ダミータンブラ14以外のタンブラ部材6は、図21のように仕切り壁7bへ相対変位する。しかし、図22に示すようにタンブラ部材6は段差7cに干渉し、その揺動が拘束され、ピッキングができないようにしている。
【0040】
<板バネ>
板バネ10は図9(c)〜同図(e)のように、全体がほぼ肋骨形状に形成され、長手方向Lに沿う基部10aと、基部10aの両側を斜め上方に互い違いに伸ばした複数の枝部10bと、基部10aの両端に設けた端部10cとからなる。
【0041】
端部10cには2つの孔10dが穿たれ、この孔10dにタンブラ軸11が挿通される。これにより、板バネ10はタンブラ軸11を介して内部ケース7に宙吊り状態で担持される。このとき、タンブラ軸11には、後述するように種々の外形形状を有する板状のタンブラ12〜15がタンブラ軸11に揺動可能に枢支される。
【0042】
<タンブラ部材>
次に、タンブラ部材6について説明する。タンブラ部材の種類には、図10(a)に示す1番タンブラ12,同図(b)の2番タンブラ13,同図(c)のダミータンブラ14,同図(d)に示される変換用タンブラ15、同図(e)の判別タンブラ20,および同図(f)に示すピッキング対策用タンブラ21がある。各タンブラ12〜15、20、21は上記したタンブラ軸11に揺動可能に枢支されるための孔12a〜15a、20a、21a、カードキー1や変換用カードキー5とカム接触するカム部12b〜15b、20b、21bが設けられる。
【0043】
タンブラ12および13には判別部3dに係脱する爪12c、13c、および補助爪12d、13dが、タンブラ15には判定部3dに係脱する爪15cおよびスライド用レール部3eに係脱する補助カム部15dがそれぞれ設けられる。
【0044】
さらに、判定タンブラ20には大穴判定部19aに係脱(出没)する爪20cが、また、ピッキング対策タンブラ21には図16、図17に示すピッキング対策凹部22に係脱する爪21cが設けられる。
【0045】
カードキー装置に符合しないカードキーが挿入された場合に、爪12c、13c、15cは判別部3dに入り込み、内部ユニット4のスライドを拘束するようになっている。これにより、不用意な施解錠が行われるのが禁止される。
【0046】
ピッキング対策タンブラ22は、ピッキングツールが挿入されたときに、同タンブラ22が揺動され、爪21cが少しでもピッキング対策凹部22に係合することで、内部ユニット4が解錠方向へ操作されるのを阻止するようにしている。
【0047】
ダミータンブラ14は上記のような爪を一切有しないタンブラである。判別部3dに入り込んだりして係脱することがない。ダミータンブラ14は判別部3dに対してなにも作用しないタンブラであり、1番タンブラ12や2番タンブラ13の設けられる位置が悟られないようにしている。
【0048】
<変換用タンブラ>
変換用タンブラ15は、そのカム部15b側に、補助カム部15dを設けている。補助カム部15dはスライド用レール部3eにカム接触をしながら係脱するように形成される。すなわち、施錠位置でカードキー1を挿入すると、変換用タンブラ15は図15(b)に示す状態に駆動制御される。これにより、補助カム部15dは該レール部3eに係合することとなり、その状態で内部ユニット4のスライドによる施解錠操作を許容するが、シャーラインがそろわないので内部ユニット4の抜脱は禁止される。
【0049】
カードキー1ではなく変換用カードキー5を挿入すると、変換用タンブラ15は図11(c)に示す状態に制御される。すなわち、補助カム部15dはスライド用レール部3eから解脱し、内部ユニット4は変換用カードキー5と共に図1に示す長手方向Lへのスライドが許容され施解錠が可能となると共に、内部ユニット4をカードキー5と共に図2(c)に示す矢印B方向への抜脱できるようになる。
【0050】
上記各タンブラ12〜15、20,21の配列を適宜組み合わせ、タンブラ軸11に積層配列し、板バネ10と一体に内部ケース7に組み込むことで、内部ユニット4が形成される。この内部ユニット4を外部ケース3に組み込むと、図11(a)に示す構造を有するカードキー装置を組み立てることができる。なお、上記の各タンブラ12〜15は、タンブラ軸11の方向に交互に左右対称配置して設けられる。
【0051】
こうして、カードキー装置に組み込まれた各タンブラの状態を具体的に示すと、1番タンブラ12については図12(a)、2番タンブラ13は図13(a)、ダミータンブラ14は図14、変換用タンブラ15は図15(b)、判定タンブラ20は図6、およびピッキング対策タンブラ21は図16に示す横断面図のようになる。
【0052】
すなわち、各タンブラ12〜15、20,21は板バネ10の自由状態ではそのバネ力に付勢され、爪12c、13c、15cは判別部3dに入り、判定タンブラ20の爪20cは大穴判定部19aに入り、ピッキング対策タンブラ21の爪21cはピッキング対策凹部22に入り込むようになっている。一方、カム部12b、13b、15b、20b、21bはカードキーの挿し込み路(挿入路)16に臨み、カードキー1に接触することで、各タンブラを板バネ10の弾性力に抗して揺動させるようになる。
【0053】
<1点抜け制御手段>
1点抜け制御手段18は図6〜図8に示すように、大穴判定部19aおよび小穴判定部19bよりなる判定凹部19と、判定タンブラ20とで構成される。図5(b)および図6に示すように、内部ユニット4が施錠位置にあるとき、カードキー1を一点鎖線に状態に挿し込むと、判定タンブラ20は図7に示すように、大穴判定部19aに対応する位置にあり、かつ、カードキー1に刻設した不図示の判定タンブラ20用のキー溝に弾接する。この状態でカードキー1を点線に示す解錠位置の方向へスライドさせると、図8に示す状態にすることができるようになっている。
【0054】
<ワンウェイクラッチ機構>
図3,図18,図19に示すように、内部ユニット4、すなわち内部ケース7と、外部ケース3との間にワンウェイクラッチ機構23が設けられる。ワンウェイクラッチ機構23は外部ケース3の開口部3cの奥に設けられ、カードキー1の抜き挿しする方向に弾性変形が可能な2個の爪24と、内部ケース7の背面7aに切り欠いて設けられ、爪24を係脱させる係合部25とで形成される。図18で示すように、内部ケース7が施錠位置にあるとき、爪24は係合部25に係合しており、不用意に内部ケース7が解錠位置の方向へ移動(シフト)するのを拘束するストッパとしての機能を有する。内部ユニット7にカードキー1が矢印方向へ挿し込まれると、カードキー1の前端縁が内部ケース7の背面7a(図19参照)まで進入する。これにより、係合部25に臨んでいる爪24は係合部25から押し出されて解脱し、この状態を維持してカードキー1を内部ケース7と一体に解錠位置の方向へスライドできるようになる。なお、解錠位置から施錠位置へ復帰するときは、なんら抵抗なく爪24は係合部材25に係合し、自動的に内部ケース7の移動が拘束されるようになっている。
【0055】
<カードキーおよび変換用カードキー>
図23に示すカードキー1および変換用カードキー5を説明する。なお、図23(a)のカードキー1および同図(b)の変換用カードキー5には、図8に示す1点抜け制御用のキー溝1eの図示を省略している。
【0056】
カードキー1および変換用カードキー5は透明の合成樹脂材を成形して形成される。カードキー1は図23(a)に示す平面形状を有し、各タンブラのカム部12b〜15b、20b、21bにカム接触し易いように、先端縁に例えば約20°の傾斜角を有するテーパ部1aが形成される。上面には1番山用タンブラ12のカム部12bに係合する断面山形のキー溝1bと、2番山用タンブラ13のカム部13bに係合する断面山形のキー溝1cとが刻設される。2番山用のキー溝1cの深さは、1番山用のキー溝1bのそれよりも大きく設定される。
【0057】
変換用カードキー5は図23(b)に示す平面形状を有し、その上面には上記カードキー1と共通する形状のキー溝1b、1cが配置される。カードキー1と異なる点は、変換用タンブラ15のカム部15bに係合する断面山形のキー溝1dが刻設される点のみである。
【0058】
<閂部材>
閂部材9は図5(f)および図7(a)に示すように、門型部9aと、門型部9aから伸びるL型部9bとで形成される。門型部9aは内部ケース7の箱部7aの両側を抱き込むように設けられる。L型部9bは外部ケース3のガイド溝3jを出没自在となるように設けられる。これにより、図7(a)のようにカードキー1、15が施錠位置にあるときは、L型部9bは外部ケース3から出っ張り、不図示の錠前を施錠する。逆に、カードキー1、15が左方の解錠位置へスライドされると、L型部9bは外部ケース3内に没し、錠前を解錠する。
【0059】
なお、変換用カードキー5を使用して上記の解錠位置において、内部ユニット4を外部ケース3から取り出し他の内部ユニット4と交換する場合には、閂装置9は外部ケース3に取り残されるように構成される。
【0060】
<カードキー装置の作用>
次に、カードキー装置の作用を図8〜図11を参照して説明する。図12(a)の状態においてカードキー1を挿し込み路16に挿入すると、1番山用タンブラ12は図12(b)に示すように、カム部12bが1番山用のキー溝1aに乗りあがる。板バネ10の付勢力に抗してタンブラ12はタンブラ軸11を中心にして反時計回りの方向へ揺動駆動される。それまで、判別部3dに入り込んでいた爪12cが解脱する。補助爪12dは判別部3dに入り込まない。これにより、内部ケース7はカードキー1と一体に図1の長手方向Lへのスライドが可能な状態となり、施解錠操作が可能となる。
【0061】
なお、キー溝が一致しない場合には、図12(c)に示すように、爪12cは判別部3dに残ったままとなり、スライド不可の状態となる。また、図示はしないが、カム部12bがキー溝でないカードキー1の平坦面に乗り上げた場合には、補助爪12dが判別部3dに入り込み、スライドを不可能にする。
【0062】
2番山用タンブラ13の挙動については、カードキー1が図13(a)に示す状態にあるとき、カードキー1を挿入すると、同図(b)のようにカム部13bはカードキー1の2番山用のキー溝1cに乗り上がる。上記1番山用タンブラ12の場合と同様にして、タンブラ13の爪13cおよび補助爪13dは判別部3dから解脱した状態となる。これにより、それまで拘束状態にあった内部ユニット4はスライドが可能、すなわち施解錠操作が可能な状態となる。なお、同図(c)に示すように、キー溝1cと異なるキー溝に乗り上げた場合には、補助爪13dは判別部3dに入り込む。これにより、内部ユニット4のスライド、すなわち施解錠操作は拘束される。
【0063】
ダミータンブラ14の挙動については、図14に示すように、施解錠用カードキー1または変換用カードキー5のいずれのカードキーを挿入しても、ダミータンブラ14はカードキーの平坦面に乗り上げ揺動する。しかし、ダミータンブラ14には爪を有しないので、判別部3dに入り込むことはない、換言すると、判別部3dに対しては何もしない。このように、ダミータンブラ14は1番山用タンブラおよび2番山用タンブラの位置を外部からわからないようにするためのダミータンブラとして機能するもので、内部ユニット4のスライドは許容されはするが、拘束されることはない。
【0064】
こうして、カードキー1が完全に奥まで挿し込まれると、図18に示すように、係合部25に係合していた爪24は、カードキー1の前端縁で押し出されるように弾性変形する。これにより、爪24による内部ケース7に対する拘束力が解除され、カードキー1は内部ケース7と一体になって解錠位置の方向へスライドできるようになる。
【0065】
次に、変換用タンブラ15の挙動について説明する。図15(a)のように、挿入口8が施錠位置にあるとき、図15(b)に示すようにカードキー1を挿入する。すると、タンブラ15のカム部15bはカードキー1の平坦面に乗り上がる。変換用タンブラ15は板バネ10の付勢力に抗してタンブラ軸11を中心に時計回りの方向へ揺動する。補助カム部15dはスライド用レール部3eに対面して接触(干渉)する。これにより、シャーラインがそろわないので内部ユニット4が図面に向かって左方向(長手方向Lと直交する方向)へ抜脱するのを拘束するが、補助カム部15dはスライド用レール部3eに沿う方向には拘束力が作用しないので、内部ユニット4のスライドのみを可能にする。
【0066】
図15(c)に示すように、変換用カードキー5を上記施錠位置において挿入した場合には、カム部15bは変換用山のキー溝1dに嵌り込む。すると、補助カム部15dはスライド用レール部3eと干渉しない位置へ解脱する。このとき、他の1番山用タンブラおよび2番山用タンブラはいずれも判別部3dに係合しないようにシャーラインが揃っている。同時に、変換用カードキー5は完全に奥まで挿し込まれるので、爪24は変換用カードキー5の前端縁により押し出されるように弾性変形する。これにより、内部ケース7には各タンブラ部材6および外部ケース3からの拘束力が働かないのでスライドフリーな状態となる。このため、内部ユニット4は施錠位置から解錠位置へ、またその逆方向へのスライドが可能となる。そして、施錠位置から解錠位置へスライドさせたとき、閂装置9は不図示の錠装置から外部ケース3へ引っ込む。これにより、内部ユニット4は変換用カードキー5と一体になった状態で、外部ケース3から取り出すことができるようになっている。
【0067】
その結果、取り出した外部ケース3を持ち運びできると共に、新たなユーザが管理する別の内部ユニット4を外部ケース3に収納セットして、新たなユーザ用のカードキー装置として使用することができる。
【0068】
すなわち、新たな内部ユニット4をセットした場合には、変換用カードキー5を挿入したまま、変換用カードキー5を内部ユニット4と共に解錠位置から施錠位置へスライドさせる。施錠位置までスライドさせた後に、変換用カードキー5だけを引き抜けば、閂装置9を施錠できる。以後、新たな内部ユニット4に見合ったキー溝を有するカードキー1を使用し、カードキー装置の施解錠操作を再び行えるようになる。
【0069】
次に1点抜け制御手段18の作用を説明する。図6に示すように内部ケース7が施錠位置にあるとき、カードキー1が図7のように挿し込まれると、その挿し込み過程において判定タンブラ20のカム部20bは、カードキーのキー溝の凹凸を上下し、爪20cは大穴判定部19aを出入りする。カードキー1が完全に奥まで挿し込まれると、図8に示すように爪20bは1点抜け制御用のキー溝1eに弾接する。この状態から、カードキー1を抜くとき、上記と同様にして判定タンブラ20をタンブラ軸11回りを中心に揺動させながら引き抜くことができる。こうして、図5(b)に示すようにカードキー1を判定タンブラ20に邪魔されることなく一点鎖線で示す位置まで挿し込んだり抜いたりできる。
【0070】
図5(b)に示すように、挿し込んだカードキー1を点線で示す解錠位置へ距離Hだけスライドさせる。この場合、判定タンブラ20は板バネ10のバネ力により常時カードキー1側に付勢されており、カム部20bは図8に示すように天井17より下側に存するようカードキー1のキー溝1eに弾接する。これによりカードキー1を解錠位置までスライドできる。
【0071】
解錠位置において、カードキー1を抜こうとすると、カードキー1を介して判定タンブラ20に揺動させる力が作用する。しかし、爪20cが小穴判定部19b近傍の天井17面に当接するため、判定タンブラ20の揺動が拘束される。すなわち、解錠位置においては、カードキー1を内部ケース7から引き抜くことができない。これは変換用カードキー5についても同様である。
【0072】
こうして、カードキー1、5が施錠位置にあるときだけ、カードキー1、5を内部ユニット4から引き抜くことが可能であるが、解錠位置にあるときにはそれを不可能にする。
【0073】
本実施形態によれば、従来のようにキーブランクを回転させて使用する態様のものと異なり、カードキー1をスライドすることにより施解錠操作を行う。このため、他社製品との差別化が図れ、使用感においてもスマート感覚にあふれた操作性能を得ることができる。 また、カードキーの挿入方向における奥行きの浅い設置スペースがあればカードキー装置を容易に取り付けが可能となる。また変換用カードキー5を使用することで、内部ユニット4を交換してカードキー装置を利用でき、セキュリティを確保しつつ便利性の良いカードキー装置を得ることができる。
【0074】
また、多数のタンブラを使用しているが、一枚の板バネ10ですべてのタンブラ12〜15の揺動を制御するため、部品点数の大幅な削減が可能で、構成のシンプルなカードキー装置を実現できる。さらに、カードキー1、5を透明にすることで、デザイン性を向上できる。また、変換用カードキー5を施解錠用カードキー1と同じカードを使用して製造できるので、コスト安価なカードキー装置を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、内部ケース7と外部ケース3との間に1点抜け制御手段18を設けたので、カードキー1,5は解錠位置では抜き挿しができず、施錠位置でのみ抜き挿しが行える。そのため、カードキーがカードキー装置に付いているか、付いていないかを視認するだけで、容易に解錠状態または施錠状態を判断できる。したがって、施錠位置での1点においてのみ、カードキーを引き抜くことができるので、例えば帰社時に机の引き出しを施錠しないで帰宅する事態を未然に防止でき、セキュリティの向上を図ることができる。
【0076】
また、爪24と係合部25とでなるワンウェイクラッチ機構23を設けたので、施錠位置においては、外部ケースの判別部に対するタンブラ部材の係合だけでなく、ワンウェイクラッチ機構23による拘束力によっても内部ケースのスライドを拘束するため、内部ユニットが不用意に解錠位置へ操作されるのを禁止でき、セキュリティ性能を高める利点を有する。
【0077】
また、ピッキング対策タンブラ21と、これに係脱するピッキング対策凹部22を設けたので、ピッキングツールに触れてピッキング対策タンブラ21が少しでも揺動すると、爪21cはピッキング対策凹部22に嵌り込む。このため、内部ユニットが施錠位置から解錠位置へ強制的にスライドされるのを拘束し、セキュリティ対策上有利となる効果を有する。
【0078】
また、タンブラ部材6を仕切る内部ケース7の仕切り壁7bに段差7cを設けたので、ピッキング対策に有利となる効果を有する。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態では、1点抜け制御手段18により、施錠位置においてのみ、カードキー1をカードキー装置から抜き挿しでき、解錠位置ではカードキー1を引き抜くことができない構成としたが、この代わりに、施錠位置に加えて解錠位置でもカードキーの抜き挿しが行える、いわゆる2点抜け制御手段を具備する構成の変形例とすることも可能である。
【0081】
すなわち、図5(a)および同図(b)において、上記実施形態では、判定凹部19を、大穴判定部19aと小穴判定部19bとで形成したが、本変形例では上記の小穴判定部19bも、図6,図7に示される大穴判定部19aとほぼ同様の大きさ(長さ)の溝形状とする判定部に形成する。これにより、施錠位置だけでなく、解錠位置においても判定タンブラ20の爪20cを係脱させることが可能な2点抜け制御を得ることができる。
【0082】
係る変形例により、施錠位置および解錠位置の2点においてカードキー1の抜き挿しを自在に行うことができ、使い勝手の良好なカードキー装置を実現できる。
【0083】
また、上記実施形態ではタンブラ軸11を2本設けたが、1本にして各タンブラの向きを交互に配置しない構成にしてもよい。
【0084】
また、変換用タンブラ15を設ける位置は上記実施形態に限定されず、スライド方向に沿ったいずれの位置であってもよい。
【0085】
また、上記では閂部材9をスライドさせて錠前に施解錠させる態様であったが、閂部材としては、例えば、外部ケース3と内部ユニット4との間に、外部ケース3または内部ユニット4のいずれか一方にラック歯を、いずれか他方にピニオン歯車を設けたラック・アンド・ピニオン機構を使用して内部ユニット4のスライドを回転運動に変換する閂機構としてもよい。
【0086】
また、カードキー1、5を合成樹脂材を使用して形成したが、メタルを使用してもよい。
【0087】
また、板バネ10はタンブラ軸11を利用して内部ケース7の箱部7aに軸支したが、タンブラ軸11を介することなく箱部7aに取り付ける構成にしてもよい。
【0088】
上記では、バネ部材として一本の板バネ10を使用したが、タンブラごとにタンブラを揺動付勢する板バネ、コイルバネ等を設ける態様とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明はオフィス向けの机、ワゴン、ロッカー、キャビネット、食器棚等の各種装置類に採用される施解錠装置としてのカードキー装置に利用される。
【符号の説明】
【0090】
1 カードキー(施解錠カードキー)
2 カードキー装置本体
3 外部ケース
3d 判別部
3e スライド用レール部
4 内部ユニット
5 変換用カードキー
6 タンブラ部材
7 内部ケース
7a 箱部
7b 仕切り壁
7c 段差
8 抜き挿し口(挿入口)
9 閂部材(デッドボルト)
10 板バネ
10a 基部
10b 枝部
11 タンブラ軸
12 1番山用タンブラ
13 2番山用タンブラ
14 0番タンブラ
15 変換用タンブラ
15d 補助カム部
16 挿し込み路
17 天井
18 1点抜け制御手段
19 判定凹部
19a 大穴判定部
19b 小穴判定部
20 判定タンブラ
21 ピッキング対策タンブラ
23 ワンウェイクラッチ機構
24 爪
25 係合部
H スライド距離
L 長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタンブラ部材および該タンブラ部材を揺動可能に並列配置して担持する内部ケースで形成される内部ユニットと、
前記内部ユニットを収納する外部ケースと、
前記内部ユニットに抜き挿しされるカードキーと、を具備し、
前記内部ケースと前記外部ケースとの間に、前記カードキーの抜け位置を判定する1点抜け制御手段を設け、
前記1点抜け制御手段により、前記カードキーが解錠位置にあると判定されたとき、前記カードキーは前記内部ケースから引き抜かれるのを阻止し、前記カードキーが施錠位置にあると判定されたときのみ、前記カードキーが前記内部ケースから引き抜かれるのを許容するように制御されることを特徴とする、
カードキー装置。
【請求項2】
複数のタンブラ部材および該タンブラ部材を揺動可能に並列配置して担持する内部ケースで形成される内部ユニットと、
前記内部ユニットを施錠位置と解錠位置との間に亘ってスライドさせるように収納する外部ケースと、
前記外部ケースに凹設され、前記施錠位置および前記解錠位置にある前記内部ユニットにカードキーが挿し込まれないときのみ前記タンブラ部材が係合して前記内部ユニットのスライドを拘束する溝状の判別部と、
前記内部ユニットに設けられ、前記内部ユニットが前記施錠位置にあるとき前記外部ケースから出っ張り、前記内部ユニットが前記解錠位置にあるとき前記外部ケース内に引っ込む閂部材と、を具備するカードキー装置であって、
前記内部ケースと前記外部ケースとの間に前記カードキーの抜け位置を判定する1点抜け制御手段を設け、
前記1点抜け制御手段により、前記カードキーが前記解錠位置にあると判定されたとき、前記カードキーは前記内部ケースから引き抜かれるのを阻止されるが、前記カードキーが前記施錠位置にあると判定されたときのみ、前記カードキーが前記内部ケースから引き抜かれるのを許容するように制御されることを特徴とする、
カードキー装置。
【請求項3】
前記1点抜け制御手段は、
前記内部ケースに揺動可能に担持され、前記タンブラ部材に並列配置した判定タンブラと、前記外部ケースの天井に凹設された判定凹部とで形成され、
前記内部ユニットが前記施錠位置にあるとき、前記カードキーの抜き挿しに応じて前記判定タンブラを前記判定凹部に入り込むように揺動するが、前記内部ユニットが前記解錠位置にあるとき、前記判定タンブラを前記外部ケースの天井に衝合させることにより、前記カードキーが前記内部ケースから引き抜かれるのを阻止することを特徴とする、
請求項1または2に記載のカードキー装置。
【請求項4】
前記内部ケースと前記外部ケースとの間にワンウェイクラッチ機構を設け、
通常時、前記解錠位置から前記施錠位置への前記内部ユニットのスライドは拘束するが、前記カードキーを挿し込んだときのみ、前記解錠位置へのスライドを許容することを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載のカードキー装置。
【請求項5】
前記ワンウェイクラッチ機構は、
前記外部ケースに設けた弾性変形可能な爪と、前記内部ケースに設けられ前記爪を係脱させる係合部とで形成され、
前記施錠位置では前記爪は前記係合部に係合しているが、前記内部ユニットに前記カードキーが挿し込まれたとき、前記爪が前記係合部から解脱することを特徴とする、
請求項4に記載のカードキー装置。
【請求項6】
前記内部ケースに、前記タンブラ部材に並列配置されて揺動するピッキング対策タンブラを担持する一方で、
前記外部ケースに前記ピッキング対策タンブラに係脱するピッキング対策凹部を設け、 ピッキング時には、揺動する前記ピッキング対策タンブラが前記ピッキング対策凹部に入り込むことにより、前記内部ユニットが解錠位置へスライドするのを拘束されることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれかに記載のカードキー装置。
【請求項7】
前記内部ケースに、互いに隣り合う前記タンブラ部材を仕切る仕切り壁を設けると共に、該仕切り壁に段差を設け、
前記施錠位置にある前記内部ユニットに、前記解錠位置へスライドさせるピッキング強制力が作用したときに、前記タンブラ部材が前記段差に干渉することにより、前記判別部に係合する状態を維持することを特徴とする、
請求項2〜6のいずれかに記載のカードキー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−32709(P2011−32709A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179130(P2009−179130)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000131038)株式会社オプナス (51)