説明

カードスタッカ装置

【課題】カードを重ね合わせた状態で収容し、カードを回収する機能をもったカードスタッカ装置に関し、回収カードにソリ変形が生じていても収容カードにソリ変形が生じていても、回収カードをスタッカ部へ安定して回収する。
【解決手段】回収方向におけるカード通過口12とスタッカ部11との間であり、搬送路14の、収容カード厚み方向他端側に回動軸161を有するガイド部材16を備え、ガイド部材16は、回収カードCrの回収方向先端部Reに押されてスタッカ部11へ向かって回動し、最端収容カードCsにおける一方の面である、収容カード厚み方向一端側の面Scへ、回収カードCrの回収方向先端部Reが向かうように回収カードCrを案内するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを重ね合わせた状態で収容し、カードを回収する機能をもったカードスタッカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カードを重ね合わせた状態で収容するカードスタッカ装置の中には、重ね合わせた状態で収容されているカードに重なり合うようにカードを回収する機能をもったものがある。
【0003】
図1は、カードを回収する機能をもった従来のカードスタッカ装置の一例を模式的に示す図である。
【0004】
この図1では、図の左側から右側に向かってカードが回収されてくる。したがって、図1の左側がカード回収方向上流側になり、右側がカード回収方向下流側になる。図1に示すカードスタッカ装置9は、カード回収方向上流側で所定の処理をカードに行う不図示のカード処理装置に装着されるものである。図1には、カード処理装置に設けられたカード搬送路の一端側部分81や、一対の搬送ローラ82,83が示されている。一対の搬送ローラ82,83は、互いに接しており、下側の搬送ローラ82と上側の搬送ローラ83の間がニップ領域Nになる。一対の搬送ローラ82,83は、このニップ領域Nがカード搬送路の一端側部分81に臨むように配置されている。下側の搬送ローラ82は回転駆動し、上側の搬送ローラ83は下側の搬送ローラ82の回転に伴って従動回転する。
【0005】
図1に示す従来のカードスタッカ装置9は、カードCを積み重ねた状態で収容するスタッカ部91と、そのスタッカ部へつながるカード通過口92とを有する。このカードスタッカ装置9は、カード通過口92が一対の搬送ローラ82,83のニップ領域Nに臨むように不図示のカード処理装置に装着される。スタッカ部91の下方には、回転駆動するカード搬送ローラ93が設けられている。また、図示省略したが、スタッカ部91の上方には、スタッカ部91に収容されたカードを下方へ向けて付勢する圧縮バネが設けられており、スタッカ部91に積み重ねられたカードの一番下になる最下端収容カードCsは、カード搬送ローラ93に圧接している。図1に示す最下端収容カードCsは、ソリ変形を生じたカードであり、カード通過口92側の端部が下方へ曲がっている。
【0006】
不図示のカード処理装置から搬送されてきた回収カードの先端は、カード搬送路の一端側部分81を抜けると、下側の搬送ローラ82が時計回りの方向へ回転している一対の搬送ローラ82,83のニップ領域Nに引き込まれ、下側の搬送ローラ82が回転を続けることでカードスタッカ装置9へと送り込まれる。なお、図1には、スタッカ部91とカード通過口92との間に設けられた分離用ローラ94も示されている。この分離用ローラ94は、反時計回りの方向へ自由回転するものであり、搬送されてきた回収カードの通過に伴って自由回転する。図1には、先端がスタッカ部91の手前まで搬送されてきた回収カードCrも示されている。図1に示すカードスタッカ装置9では、回収カードCrは、スタッカ部91に収容されている最下端収容カードCsのさらに下に潜り込むように搬送され、やがて、回収カードCrの後端が一対の搬送ローラ82,83のニップ領域Nを抜ける。回収カードCrの先端は、後端がニップ領域Nを抜ける前に、最下端収容カードCsと時計回りの方向へ回転しているカード搬送ローラ93との間に達し、そのカード搬送ローラ93が回転を続けることで、回収カードCrは、最下端収容カードCsに重なり合う位置まで搬送される。
【0007】
ここで、図1に示すように、最下端収容カードCsのカード通過口側部分が下方へ曲がっていると、回収カードCrの先端部と最下端収容カードCsの端部とが干渉してしまい、搬送されてきた回収カードCrが最下端収容カードCsの下に潜り込むことができずにカード詰まり(ジャム)が発生してしまう。また、収容カードの曲がり具合によっては、回収カード先端が収容カード上面に当たり、収容カードの上側に入り込むことも有りうる。最下端収容カードが図1に示すようなソリ変形を生じたカードでなくても、回収カードが、その先端部分にソリ変形を生じ上方へ曲がっていると、ソリ変形を生じた回収カードも、最下端収容カードCsと干渉してしまい、最下端収容カードCsの下に潜り込むことができず、これもまたカード詰まりが発生してしまう。
【0008】
また、図1に示すカードスタッカ装置とは異なるものも知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1にはカード処理装置が開示されており、そのカード処理装置にはカードを回収する機能をもったカードスタッカ装置が組み込まれている。特許文献1に示されたカードスタッカ装置では、水平に重ね合わされた状態でスタッカ部に収容されているカードの一番上になる最上端収容カードのさらに上に回収カードを入れ込み、回収カードを最上端収容カードと重なり合うように回収する。特許文献1のカードスタッカ装置には、回収カードによって操作されるカード押圧レバーが設けられている。このカード押圧レバーには、搬送されてきた回収カードの先端部が突き当たる。カード押圧レバーはカード回収方向上流側に向けて付勢されているが、回収カードの先端部が突き当たると、カード押圧レバーはその回収カードによってカード回収方向下流側へ後退する。カード押圧レバーは、後退しながらスタッカ部の最上端収容カードを押し下げる。最上端収容カードが押し下げられると、最上端収容カードの上に回収カードの収容スペースが生まれる。
【0009】
ところが、上流側に向けて付勢されているカード押圧レバーを下流側へ後退させることができる回収カードは、ある程度の厚みをもった回収カードに限られ、薄手の腰が弱い回収カードでは、カード押圧レバーを後退させきれず、収容スペースを確保することが困難になる。
【0010】
しかも、先端部分にソリ変形を生じ上方へ曲がっている回収カードでは、その回収カードがカード押圧レバーに突き当たると、先端部分が上方へ曲がっているために回収カードが上方へ逃げてしまい、カード押圧レバーを後退させきれず、回収カードの収容スペースが確保されない恐れがある。
【特許文献1】特許第3898173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、回収カードにソリ変形が生じていても収容カードにソリ変形が生じていても、回収カードがスタッカ部へ安定して回収されるカードスタッカ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決する本発明のカードスタッカ装置は、カードが挿入されるカード通過口と、
カードを重ね合わせた状態で収容するスタッカ部と、
上記カード通過口から所定の回収方向に沿って上記スタッカ部まで延びた搬送路と、
上記搬送路を通って回収されてきた回収カードを、上記スタッカ部に既に収容されている収容カードの中でその収容カード厚み方向一端側の最端に位置する最端収容カードに重なり合うように回収する回収機構と、
上記回収方向における上記カード通過口と上記スタッカ部との間であり、上記搬送路の、上記収容カード厚み方向他端側に回動軸を有するガイド部材とを備え、
上記ガイド部材は、上記回収カードの上記回収方向先端部に押されて上記スタッカ部へ向かって回動し、上記最端収容カードにおける一方の面である、上記収容カード厚み方向一端側の面へ、その回収カードのその回収方向先端部が向かうようにその回収カードを案内するものであることを特徴とする。
【0013】
ここにいうスタッカ部は、上方向にカードを重ね合わせた状態で収容するものであっても、下方向にカードを重ね合わせた状態で収容するものであっても、横方向にカードを重ね合わせた状態で収容するものであってもよい。また、ここにいうガイド部材は、スタッカ部へ向かって回動するにあたり、上記回収カードの先端縁に押されて回動するものであっても、上記回収カードの上記接触面先端部分に押されて回動するものであってもよい。さらにガイド部材は、上記最端収容カードにおける上記カード通過口側部分に当接して上記回収カードを案内するものであってもよいが、当接しなくても上記回収カードを案内するものであればよい。
【0014】
本発明のカードスタッカ装置では、回収カードにソリ変形が生じていても収容カードにソリ変形が生じていても、上記ガイド部材によって、回収カードが、上記最端収容カードにおける上記一端側の面へ案内されるため、回収カードの先端と最端収容カードの上記カード通過口側の縁とが干渉することが抑えられる。さらに、上記回収カードが薄手の腰が弱いカードであったとしても、上記ガイド部材は、上記回収カードを案内しさえすればよいので、その回動範囲は小さくてすみ、回収カードによって押され上記スタッカ部へ向かって回動することができる。
【0015】
したがって、本発明のカードスタッカ装置によれば、回収カードにソリ変形が生じていても収容カードにソリ変形が生じていても、回収カードがスタッカ部へ安定して回収される。
【0016】
また、本発明のカードスタッカ装置において、上記ガイド部材は、上記最端収容カードの上記カード通過口側部分に当接するものである態様であってもよい。
【0017】
ここにいうガイド部材は、上記最端収容カードにおける上記カード通過口側の縁に当接するものであってもよいし、あるいは、上記回収カードがそのスタッカ部に回収されるとその回収カードに接することになる上記最端収容カード接触面における上記カード通過口側の部分に当接するものであってもよい。
【0018】
この態様によれば、例え、上記最端収容カードがソリ変形を生じ、上記スタッカ部における、上記最端収容カードに重なり合う回収カード収容スペースの回収口を、そのカード通過口側部分が塞ぐように曲がっていても、上記ガイド部材が、上記最端収容カードの上記カード通過口側部分に当接することで、回収カードの先端部と最端収容カードのカード通過口側部分とが干渉することが抑えられる。また、上記回収カードがソリ変形を生じ、その先端部が曲がっていても、上記ガイド部材は、回収カードによって押され上記スタッカ部へ向かって回動することができ、上記ガイド部材が上記最端収容カードに当接することで、回収カードと最端収容カードとが干渉することが抑えられる。
【0019】
さらに、本発明のカードスタッカ装置において、上記回収カードの上記回収方向先端部に押されて上記スタッカ部へ向かって回動した上記ガイド部材の回動軸を、上記カード通過口側に移動させる移動機構を備えたことが好ましい。
【0020】
上記移動機構を備えることで、上記スタッカ部へ回収カードを回収した後でも、上記ガイド部材が、次に回収される回収カードの上記回収方向先端部に押されてそのスタッカ部へ向かって回動する。このため、次に回収される回収カードもスタッカ部へ安定して回収することができる。
【0021】
ここで、上記移動機構が、上記収容カードの上記カード通過口側部分に当接しているガイド部材を、そのカード通過口側部分から上記カード通過口側へ向けてスライドさせるものであってもよい。
【0022】
さらに、本発明のカードスタッカ装置において、上記最端収容カードを上記スタッカ部から上記カード通過口へ向けて排出する排出機構を備え、
上記ガイド部材が、カード排出時には、上記スタッカ部から排出されてきたカードに押されてカード回収時とは逆方向に回動するものであることも好ましい態様である。
【0023】
この好ましい態様は、カードの回収と排出という全く正反対の機能を一つのカードスタッカ装置に持たせた態様である。この態様によれば、カード回収時に回収カードをスタッカ部へ安定して回収するために機能する上記ガイド部材が、カード排出時には、排出カードに押されてカード回収時とは逆方向に回動し、カードの排出を妨げることがないように工夫されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回収カードにソリ変形が生じていても最端収容カードにソリ変形が生じていても、回収カードがスタッカ部へ安定して回収されるカードスタッカ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態であるカードスタッカ装置を示す図である。
【0027】
図2に示す本実施形態のカードスタッカ装置1は、カードを回収する機能とカードを排出(発行)する機能とを併せた持ったものであり、カードはその長さ方向に沿って搬送される。本実施形態のカードスタッカ装置1で取り扱われるカードは可撓性のあるカードである。この図2では、図の左側から右側に向かってカードが回収され、右側から左側に向かってカードが排出される。したがって、図1の左側が回収方向上流側になるとともに排出方向下流側にもなり、右側が回収方向下流側になるとともに排出方向上流側にもなる。以下、回収方向上流側および排出方向下流側を前側と称し、回収方向下流側および排出方向上流側を後側と称することがある。
【0028】
図2に示すカードスタッカ装置1は、上方が開口したケーシング10と、そのケーシング10の開口を塞ぐ天板部材20とを有する。ケーシング10の前端には、カード通過口12が設けられている。このカードスタッカ装置1も、図1に示すカードスタッカ装置9と同じく、回収方向上流側で所定の処理をカードに行う不図示のカード処理装置に装着されるものである。図示省略したカード処理装置としては、例えば、熱を用いて可視像の記録と消去を繰返し行うことができるリライタブルカードに、可視像を記録したり消去したりするカード処理装置や、磁気カードに磁気情報を記録させたり磁気カードから磁気情報を読み取ったりするカード処理装置があげられる。図2にも、図1に示すカード搬送路の一端側部分81や一対の搬送ローラ82,83と同じものが示されており、以下、これらの構成要素には、図1で用いた符号を用い、図1における説明と重複する説明は省略する。図2に示すカードスタッカ装置1も、カード通過口12が一対の搬送ローラ82,83のニップ領域Nに臨むように不図示のカード処理装置に装着される。
【0029】
ケーシング10の内部にはスタッカ部11が設けられている。このスタッカ部11は、ケーシング10の底板部101の上方にカードCを積み重ねた状態で収容するものである。スタッカ部11の下方にはカード搬送ローラ13が設けられている。このカード搬送ローラ13は、外周面の一部が底板部101からスタッカ部11内に入り込むように設けられたものである。カード搬送ローラ13は、不図示のモータにより正逆回転する。すなわち、図2に示すカード搬送ローラ13は、カード回収時には時計回りの方向(矢印R方向)に回転し、カード排出時には反時計回りの方向(矢印F方向)に回転する。天板部材20には、スタッカ部11に収容されたカードを、押さえ板21を介して底板部101側へ向けて付勢する圧縮バネ22が設けられている。スタッカ部11に積み重ねられたカードCの一番下になる最下端収容カードCsは、カード搬送ローラ13に圧接している。図2に示す最下端収容カードCsは、スタッカ部11に既に収容されているカードCの中でカード厚み方向(図2中の矢印Th参照)一端側(下端側)の最端に位置するカードであり、本発明にいう最端収容カードの一例に相当する。
【0030】
また、ケーシング10内には、カード通過口12とスタッカ部11とを結ぶ搬送路14が設けられている。図2に示すスタッカ部11は、カード通過口12の位置よりも上方へオフセットした位置に設けられている。搬送路14には、スタッカ部11に近づくほど漸次上方へ向かう勾配部141が設けられている。
【0031】
図3は、カード通過口側からスタッカ部を見たときの図である。
【0032】
図3では、カードの回収方向は紙面手前側から奥側に向かう方向になる。この図3には、搬送路の勾配部141が示されている。図3に示す勾配部141は、紙面手前側から奥側に向かって漸次上方へ向かうものである。また、カードの、長さ方向に直交する幅方向(図3中の矢印W参照)は、図3の左右方向に相当する。勾配部141には、そのカード幅方向中央部分1411と両端部分1412との間に、凹部1413(図2も参照)が設けられている。図2は、この図3に示すカードスタッカ装置1のA−A’断面図である(この後に参照する図6〜図8においても同じ)。図3では、カード幅方向中央部分1411と両端部分1412が紙面手前側に突出しており、凹部1413が紙面奥側に窪んでいる。勾配部141を通過するカードは、カード幅方向中央部分1411と両端部分1412に案内されて勾配部141を通過する。
【0033】
勾配部141の上方には空間が設けられ、その空間内には分離用ローラ15と一対のガイド部材16が取り付けられている。図3に示すように、分離用ローラ15は、勾配部141のカード幅方向中央部分1411の真上に取り付けられたものである。この分離用ローラ15には不図示のワンウェイクラッチ機構が組み込まれており、分離用ローラ15は、図2に示すように反時計回りの方向(矢印R’方向)には自由回転し、時計回りの方向(矢印R’方向とは逆方向)には回転不能である。また、分離用ローラ15は、不図示のモータにより矢印R’方向に駆動回転することも可能である。
【0034】
図3に示すように一対のガイド部材16は、分離用ローラ15のカード幅方向両側に引っ張りバネ17を介して取り付けられたものであり、勾配部141の凹部1413の真上にそれぞれ位置する。すなわち、一対のガイド部材16は、回収方向におけるスタッカ部11とカード通過口12との間に設けられたものである。これら一対のガイド部材16それぞれは、引っ張りバネ17によって上方へ向けて付勢されている。引っ張りバネ17は、前後方向に揺動自在にケーシング10に吊り下げられている。ケーシング10には排出方向へ延びる長孔102が設けられている。ガイド部材16は、搬送路14よりも上方に回動軸161を有する。すなわち、ガイド部材16は、搬送路14の、カード厚み方向(図2中の矢印Th参照)他端側に回動軸161を有する。この回動軸161の一端は長孔102に挿入されており、ガイド部材16は、図2に示す垂下した状態から回動軸161を中心にして前後方向に回動することが自在である。以下、図2に示す垂下した状態のガイド部材16のことを初期待機位置にあるガイド部材16と称する。なお、勾配部141の凹部1413は、このガイド部材16の回動スペースを確保するために設けられたものである。ガイド部材16の回動軸161からは作用部162が直線状に延びている。初期待機位置にあるガイド部材16における作用部162は、搬送路14を通過するカードと接触する位置にある。図2の一点鎖線で囲んだ丸の中には、この作用部162の拡大図が示されている。この拡大図に示すように、作用部162の前側の側面1621と後側の側面1622それぞれには、先端1620で突き当たるように傾斜面が設けられている。
【0035】
さらに、本実施形態のカードスタッカ装置1は移動機構も備えているが、図2ではこの移動機構は図示省略されている。移動機構についての詳しい説明は後述するが、この移動機構は、リンク部材182(図3参照)を介してガイド部材16を排出方向へスライドさせるものである。
【0036】
次に、図2および図3に示すカードスタッカ装置1におけるカード回収について説明する。
【0037】
図2に示す、下側の搬送ローラ82が時計回りの方向(矢印R方向)へ回転している一対の搬送ローラ82,83によって、回収カードはカード通過口12に向けて搬送されてくる。回収カードの回収方向先端部(以下、単に先端部と称する)が、カード通過口12を通過し分離用ローラ15に到達すると、搬送されてきた回収カードの通過に伴って分離用ローラ15が矢印R’方向へ自由回転する。ガイド部材16は初期待機位置にあり、回収カードの先端部がそのガイド部材16の作用部162に到達すると、回収カードの先端部がガイド部材16の作用部162にぶつかる。
【0038】
図4は、回収カードの先端部がガイド部材の作用部にぶつかった様子を模式的に示す図である。
【0039】
この図4においても、回収カードCrは、図の左側から右側に向けて回収されている。なお、図4には、カード幅方向中央部分1411、両端部分1412、および凹部1413が図示されている。
【0040】
図4(a)には、ソリ変形を生じず先端部がまっすぐな回収カードCrが示されている。このまっすぐな回収カードCrは、その先端縁Reがガイド部材16における作用部162の前側の側面1621にぶつかり、さらに図2に示す一対の搬送ローラ82,83によって回収方向下流側へ向けて搬送される。すると、初期待機位置にある回動自在なガイド部材16は、回収カードCrの先端縁Reに押されてスタッカ部へ向かって回動する。
【0041】
図4(b)には、ソリ変形を生じ先端部が上方へ曲がっている回収カードCr’が示されている。この上方へ曲がった回収カードCr’も、その先端縁Re’がガイド部材16の前側の側面1621にぶつかり、図4(a)と同様に、ガイド部材16は、回収カードCr’の先端縁Re’に押されてスタッカ部へ向かって回動する。
【0042】
図4(c)には、ソリ変形を生じ先端部が図4(b)に示す回収カードCr’とは逆に下方へ曲がっている回収カードCr’’が示されている。この下方へ曲がった回収カードCr’’では、その上面先端部分Rfがガイド部材16の前側の側面1621にぶつかり、ガイド部材16は、回収カードCr’’の上面先端部分Rfに押されてスタッカ部へ向かって回動する。
【0043】
このように、本実施形態におけるカードスタッカ装置1では、ソリ変形を生じた回収カードCr’,Cr’’であっても、ガイド部材16はスタッカ部11へ向かって回動する。また、ガイド部材16は、回動方向には何ら付勢されておらず、回収カードが薄手の腰が弱いカードであったとしても、ガイド部材16は、回収カードによって押されスタッカ部11へ向かって回動する。
【0044】
図5は、ガイド部材がスタッカ部へ向かって回動し終えた直後の様子を示す図である。
【0045】
図5に示すカードスタッカ装置1は、図2に示すカードスタッカ装置の構成要素の一部を省略して示したものである(この後に参照する図6〜図8に示すカードスタッカ装置においても同様)。この図5においても、回収カードCrは、図の左側から右側に向けて回収されている。本実施形態のカードスタッカ装置1では、回収カードCrは、スタッカ部11に収容されている最下端収容カードCsのさらに下に潜り込むように搬送される。最下端収容カードCsの下に潜り込んだ回収カードCrの先端は、最下端収容カードCsと矢印R方向に回転するカード搬送ローラ13との間に引き込まれ、カード搬送ローラ13が矢印R方向に回転し続けることで回収カードCrは最下端収容カードCsに重なり合う位置まで搬送される。すなわち、最下端収容カードCsに重なり合う、その最下端収容カードCsと底板部101との間が、回収カードCrの収容スペースSになる。したがって、図5に示す搬送路14では、回収カードCrがスタッカ部11に回収されると最下端収容カードCsに接することになる回収カード接触面Rc側が上方になり、その接触面Rcとは反対の回収カード反対面Rr側が下方になる。矢印R方向に回転するカード搬送ローラ13は、本発明にいう回収機構の一例に相当する。
【0046】
ガイド部材16が回収カードCrに押されると、そのガイド部材16を上方へ付勢している引っ張りバネ17が前方へ揺動し、ガイド部材16は、スタッカ部11に収容されている最下端収容カードCsのカード通過口12側の縁Seに下方から当接する。すなわち、ガイド部材16は、スタッカ部11に収容されているカードCのカード厚み方向(矢印Th参照)一端側から当接する。図5には、ガイド部材16が、最下端収容カードCsのカード通過口12側の縁Seに当接した様子が示されている。スタッカ部11に収容されている最下端収容カードCsのカード通過口12側部分が、収容スペースSの回収口Siを塞ぐように下方へ曲がっていても、このように、収容カード厚み方向(矢印Th参照)他端側に回動軸161を有するガイド部材16が、最下端収容カードCsのカード通過口12側部分に、収容カード厚み方向一端側から当接する。こうすることで、ガイド部材16によってそのカード通過口12側部分が持ち上げられ、上記回収口Siが回収カードの厚さ分拡げられ、ガイド部材16は、最下端収容カードCsの、カード厚み方向(矢印Th参照)一端側の面(後述する接触面)へ、回収カードCrの先端部Reが向かうようにその回収カードCrを案内する。その結果、回収カードCrの先端部と最下端収容カードCsのカード通過口12側部分とが干渉することが抑えられる。また、回収カードが図4(b)や(c)に示すソリ変形を生じたカードであっても、ガイド部材16が、最下端収容カードCsのカード通過口12側部分に当接し、ソリ変形を生じた回収カードCrの先端部と最下端収容カードCsのカード通過口12側部分とが干渉することが抑えられる。
【0047】
収容スペースS内に先端が入り込んだ回収カードCrは、矢印R方向に回転するカード搬送ローラ13によって収容スペースSまで搬送される。したがって、本実施形態のカードスタッカ装置1によれば、回収カードCrにソリ変形が生じていても最下端収容カードCsにソリ変形が生じていても、回収カードCrがスタッカ部11へ安定して回収される。しかも、本実施形態のカードスタッカ装置1によれば、簡単な構造で回収カードCrをスタッカ部11へ安定して回収することができる。
【0048】
回収カードCrが収容スペースSまで搬送されると、その回収カードCrは最下端収容カードCsになる。
【0049】
図6は、回収カードが収容スペースまで搬送された様子を示す図である。
【0050】
この図6に示すように、これまで最下端収容カードであったカードCs’のカード通過口12側の縁Se’に下方から当接しているガイド部材16は、新たな最下端収容カードCrの端部と、これまで最下端収容カードであったカードCs’の端部とによって挟まれた状態になる。
【0051】
また、図6には、本実施形態のカードスタッカ装置1が備える移動機構18が示されている。この移動機構18は、ソレノイド181とリンク部材182とを有する。ソレノイド181のプランジャ1811は、前方(図6の右側から左側へ向かう排出方向)へ進出するものであるが、図6に示すソレノイド181のプランジャ1811は後方に引き込まれた状態のものである。このプランジャ1811の先にはL字状のリンク部材182が取り付けられている。リンク部材182には、前後方向に延びる2つの長孔1821が設けられている。これら2つの長孔1821それぞれにはガイドピン183が挿入されている。ガイド部材16における回動軸161の一端は、ケーシングに設けられた長孔102を通って、リンク部材182に接続している。図6に示すガイド部材16における回動軸161の一端は、その長孔102の後端側に寄っている。
【0052】
図7は、図6に示す移動機構18が駆動したときの様子を示す図である。
【0053】
この図7においても、カードの排出方向は図の右側から左側へ向かう方向である。本実施形態のカードスタッカ装置1には、搬送されてきた回収カードの位置を検出する不図示のセンサが設けられており、カードスタッカ装置1は、回収カードが図5に示す収容スペースSに収容されたことを検知することができる。カードスタッカ装置1がこのことを検知すると、ソレノイド181が駆動し、プランジャ1811が前方(排出方向)へ進出する。プランジャ1811が前方へ進出することで、ガイド部材16における回動軸161の一端は、ケーシングに設けられた長孔102に沿って排出方向へ移動し、引っ張りバネ17が前方へ大きく揺動するとともにガイド部材16が排出方向へ退避する。すなわち、ガイド部材16がカード通過口12側へ向けてスライドし、最下端収容カードCsとその上のカードCs’との間からガイド部材16が抜け出る。
【0054】
なお、回収カードの、回収方向上流側の端部がカード通過口12を通過したことを検出するセンサによって回収カード後端の通過を検出し、その検出を受けてソレノイド181を駆動するようにしてもよい。
【0055】
プランジャ1811は前方へ進出するとすぐさま引き戻り、ガイド部材16は引っ張りバネ17の付勢力により回動し、初期待機位置(図2参照)へと復帰する。こうして、次の回収カードが回収されるときにもガイド部材16は初期待機位置にあり、ガイド部材16は次の回収カードによっても押され、スタッカ部11へ向かって回動する。したがって、次の回収カードもスタッカ部11へ安定して回収される。
【0056】
続いて、図2および図3に示すカードスタッカ装置1におけるカード排出(発行)について説明する。
【0057】
図8は、スタッカ部に収容されていた最下端収容カードが排出されるときの様子を示す図である。
【0058】
この図8においても、カードの排出方向は図の右側から左側へ向かう方向である。スタッカ部11からのカード排出が始まる際にも、ガイド部材16は初期待機位置にある。本実施形態のカードスタッカ装置1にカード排出の信号が伝えられると、カード搬送ローラ13が矢印F方向に回転し始める。このカード搬送ローラ13の回転により、スタッカ部11に収容されていた最下端収容カードCsが、カード通過口12へ向かって搬送され始める。すなわち、本実施形態におけるカードスタッカ装置1では1枚ずつカードを排出する。矢印F方向に回転するカード搬送ローラ13は、本発明にいう排出機構の一例に相当する。排出される最下端収容カードCsのカード通過口12側先端部Stが、ガイド部材16の作用部162に到達すると、そのカード通過口12側先端部Stが、ガイド部材16の作用部162における後側の側面1622(図2参照)にぶつかる。続いて、回動自在なガイド部材16は、排出される最下端収容カードCsに押されてカード通過口12側へ向かって回動する。すなわち、カード排出時には、ガイド部材16はカード回収時とは逆方向の排出方向へ回動する。ガイド部材16は、最下端収容カードCsに押されて一定のところまでは排出方向へ回動するが、引っ張りバネ17によって上方へ向けて付勢されているため、図8に示す位置まで回動するとそれ以上は回動しない。排出される最下端収容カードCsは、図8に示す位置でまで回動したガイド部材16の作用部162に、その上面(最下端収容カードCsがスタッカ部11に収容されているカードと接触していた面)Scが接触しながら排出方向に搬送される。したがって、本実施形態のカードスタッカ装置1では、ガイド部材16によってカードの排出が妨げられることはない。図8に示す位置でまで回動したガイド部材16は、排出されるカードの後端が抜けると、引っ張りバネ17によって引き上げられ初期待機位置に復帰する。
【0059】
また、分離用ローラ15は、カード排出時には不図示のモータによって矢印R’方向に駆動回転し、カードが重なった状態で搬送される重送を防止する。
【0060】
カード通過口12を通過した最下端収容カードCsは、下側の搬送ローラ82が矢印F方向に回転している一対の搬送ローラ82,83のニップ領域Nに引き込まれ、下側の搬送ローラ82が回転を続けることで、不図示のカード処理装置に設けられたカード搬送路の一端側部分81へ送り込まれる。
【0061】
続いて、変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで使用した符号と同じ符号を用いることがある。また、これまでの説明と重複する説明についは省略することがある。
【0062】
図9は、ガイド部材の変形例を示す図である。
【0063】
この図9には、作用部162’が逆J字状のガイド部材16’が示されている。図9に示す作用部162’が逆J字状のガイド部材16’も、回収カードCrに押されてスタッカ部11へ向かって回動し、この変形例のガイド部材16’は、最下端収容カードCsの接触面Scにおけるカード通過口側部分に下方から当接する。ここにいう最下端収容カードCsの接触面Scとは、回収カードCrがスタッカ部11に回収されるとその回収カードCrに接することになる面である。なお、ガイド部材16の作用部162の形状はL字状等であってもよい。
【0064】
また、これまでの説明では、ガイド部材16,16’が、最下端収容カードCsのカード通過口12側部分に当接する態様について説明したが、ガイド部材16,16’は、最下端収容カードCsのカード通過口12側部分に当接するまで回動しなくても、回収カードCrの先端部と最下端収容カードCsのカード通過口12側部分とが干渉することが抑えられる。
【0065】
図10は、ガイド部材16が、最下端収容カードCsのカード通過口12側部分の手前までしか回動しない態様を説明する図である。
【0066】
図10に示すカードは、図4(b)に示す、ソリ変形を生じ先端部が上方へ曲がっている回収カードと同じカードである。この図10では、搬送されている回収カードの様子を3段階に分けて示してある(Cr’−1〜Cr’−3)。この態様のガイド部材16は、図2に示すガイド部材と同じものである。ソリ変形を生じた先端部Re’−1が、ガイド部材16の前側の側面1621にぶつかり、ガイド部材16がその回収カードCr’−1の先端部Re’−1に押されてスタッカ部11へ向かって回動する。この態様では、ガイド部材16が最下端収容カードCsのカード通過口12側部分に当接する前にそのガイド部材16に当接するストッパ部材19が設けられている。ガイド部材16は、このストッパ部材19に当接すると、スタッカ部11へ向けてのそれ以上の回動がそのストッパ部材19によって阻まれ、図10に示す状態になる。回収カードCr’−2は、回収方向へ搬送され続けているため、上方へ曲がった先端部Re’−2は、ガイド部材16の下に潜り込むように弾性変形し、さらに搬送される。弾性変形した回収カードCr’−3の先端部Re’−3は、完全に元の状態に戻る間もなく最下端収容カードCsの接触面Scに到達する。すなわち、図10に示すガイド部材16も、最下端収容カードCsの接触面Scへ、回収カードCr’−1の先端部Re’が向かうようにその回収カードCr’−1を案内する。
【0067】
図11は、図2に示すカードスタッカ装置1の変形例を示す図である。
【0068】
図11に示すカードスタッカ装置3は、図2に示すカードスタッカ装置1を上下逆さまにしたものである。すなわち、水平に重ね合わされた状態でスタッカ部31に収容されているカードC’の一番上になる最上端収容カードCuは、スタッカ部31に既に収容されているカードC’の中でカード厚み方向(図11中の矢印Th参照)一端側(上端側)の最端に位置するカードであり、本発明にいう最端収容カードの一例に相当する。図11に示すスタッカ部31は、カード通過口32の位置よりも下方へオフセットした位置に設けられている。
【0069】
また、この変形例のカードスタッカ装置3では、回収カードは、スタッカ部31に収容されている最上端収容カードCuのさらに上に乗り上げるように搬送され、回収カードの収容スペースS’は、最上端収容カードCuに重なり合う、その最上端収容カードCuと天板部301との間になる。したがって、図11に示す搬送路34では、回収カードがスタッカ部31に回収されると最上端収容カードCuに接することになる回収カード接触面側が下方になり、その接触面とは反対の回収カード反対面側が上方になる。
【0070】
さらに、図11に示すカードスタッカ装置3も、図6等に示す移動機構18と同じ機構を備えているが、この図11では移動機構を図示省略している。
【0071】
この変形例によれば、回収カード接触面側(下側)に回動軸361を有するガイド部材36が、最上端収容カードCuのカード通過口32側端部に回収カード反対面側(上側)から当接することで、回収カードの先端部と最上端収容カードCuのカード通過口32側端部とが干渉することが抑えられる。その結果、回収カードにソリ変形が生じていても最上端収容カードCuにソリ変形が生じていても、回収カードがスタッカ部31へ安定して回収される。
【0072】
なお、本発明のカードスタッカ装置は、横方向にカードを重ね合わせた状態で収容するものにも適用することができる。
【0073】
図12は、上方に図2に示すカードスタッカ装置1の構成を流用し、下方に図11に示すカードスタッカ装置3の構成を流用したカードスタッカ装置を示す図である。
【0074】
この図12を用いた説明においても、図12の左側を前側と称し、右側を後側と称することがある。
【0075】
図12に示すカードスタッカ装置5は、上方に設けられたスタッカ部11につながるカード通過口と下方に設けられたスタッカ部31につながるカード通過口とを共通にした共通通過口51を有し、この共通通過口51から2種類の異なるカードの回収と排出(発行)を行うことができる。このカードスタッカ装置5では、共通通過口51と各スタッカ部11,31とを結ぶ搬送路は、切替部材52によって形成される。切替部材52は、図12に上下に示す2つの分離用ローラ15,35の間に回動軸521を有する。この切替部材52は、回動軸521を中心にして回動することで、上方のスタッカ部11へ回収カードを導く図12に示す姿勢と下方のスタッカ部31へ回収カードを導く姿勢との間で姿勢を切替える。すなわち、カードスタッカ装置5に、上方のスタッカ部11へのカード回収あるいは上方のスタッカ部11からのカード排出の信号が伝えられると、切替部材52は上方のスタッカ部11へ回収カードを導く図12に示す姿勢になり、切替部材52の上面522が、共通通過口51と上方のスタッカ部11を結ぶ搬送路になる。一方、カードスタッカ装置1に、下方のスタッカ部31へのカード回収あるいは下方のスタッカ部31からのカード排出の信号が伝えられると、切替部材52は下方のスタッカ部31へ回収カードを導く姿勢になり、切替部材52の下面523が、共通通過口51と下方のスタッカ部31を結ぶ搬送路になる。
【0076】
また、図12に示すカードスタッカ装置5は、上方のスタッカ部11の下方に設けられるカード搬送ローラと下方のスタッカ部31の上方に設けられるカード搬送ローラを共通にした共通搬送ローラ53を有する。図12に示す上方のスタッカ部11に収容されたカードCは、圧縮バネ22によって共通搬送ローラ53へ向けて付勢されており、下方のスタッカ部31に収容されたカードC’は、圧縮バネ42によって共通搬送ローラ53へ向けて付勢されている。さらに、このカードスタッカ装置5は仕切機構54を備えている。この仕切機構54は、ガイド541とフラッパ542を有する。ガイド541は、共通搬送ローラ53よりも前側に設けられたものである。このガイド541は、水平状態で固定されており、上面5411が上方に設けられたスタッカ部11における底板部の前側部分を構成するとともに、下面5412が下方に設けられたスタッカ部31の天板部の前側部分を構成する。フラッパ542は、共通搬送ローラ53よりも後側に上下方向に回動自在に取り付けられたものである。このフラッパ542は、上面5421が上方のスタッカ部11における底板部の後側部分を構成するとともに、下面5422が下方のスタッカ部31における天板部の後側部分を構成する。フラッパ542は、前後方向中央部分の回動支点5420を中心に回動することで、上面5421が水平状態になる図12に示す上面水平姿勢と、下面5422が水平状態になる下面水平姿勢との間で姿勢を切替える。すなわち、カードスタッカ装置5に、上方のスタッカ部11へのカード回収あるいは上方のスタッカ部11からのカード排出の信号が伝えられると、フラッパ542は上面水平姿勢になる。図12に示すように、フラッパ542が上面水平姿勢になると、前端部分5423が、下方のスタッカ部31に収容されている最上端収容カードCuを、上方へ向けて付勢する圧縮バネ42の付勢力に抗して押し下げ、最上端収容カードCuが共通搬送ローラ53から離れる。共通搬送ローラ53は、上方のスタッカ部11に収容されている最下端収容カードCsには圧接しており、共通搬送ローラ53が回転することで、上方のスタッカ部11へのカード回収あるいは上方のスタッカ部11からのカード排出が行われる。一方、カードスタッカ装置5に、下方のスタッカ部31へのカード回収あるいは下方のスタッカ部31からのカード排出の信号が伝えられると、フラッパ542は下面水平姿勢になり、前端部分5423が、今度は上方のスタッカ部11に収容されている最下端収容カードCsを圧縮バネ22の付勢力に抗して押し上げ、最下端収容カードCsが共通搬送ローラ53から離れる。このときには、共通搬送ローラ53は、下方のスタッカ部31に収容されている最上端収容カードCuには圧接しており、共通搬送ローラ53が回転することで、下方のスタッカ部31へのカード回収あるいは下方のスタッカ部31からのカード排出が行われる。なお、フラッパ542の前端部分5423には、上下方向に延びる長孔5424が設けられており、共通搬送ローラ53の回転軸531は、この長孔5424に挿入されている。
【0077】
さらに、図12に示すカードスタッカ装置5は、上方のガイド部材16を共通通過口51側へ向けてスライドさせる移動機構と、下方のガイド部材36を共通通過口51側へ向けてスライドさせる移動機構とを共通にした共通移動機構を有するが、この図12では図示省略している。なお、ここでの共通移動機構は、図6に示すリンク部材182に相当するリンク部材をT字状にし、上方のガイド部材16と下方のガイド部材36を同時にスライドさせる機構にしてもよい。
【0078】
図12に示すカードスタッカ装置5でも、ガイド部材16,36は、搬送されてくるカードに押されて、点線で示すように、スタッカ部11,31側に回動したり、あるいは共通通過口51側に回動する。上方もしくは下方のスタッカ部11,31へのカード回収においては、ガイド部材16,36が、回収カードに押されて最端収容カード(最下端収容カードCsあるいは最上端収容カードCu)に当接し、回収カードの先端部と最端収容カードの共通通過口51側端部とが干渉することが抑えられる。その結果、回収カードにソリ変形が生じていても最端収容カードにソリ変形が生じていても、回収カードがスタッカ部11,31へ安定して回収される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】カードを回収する機能をもった従来のカードスタッカ装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態であるカードスタッカ装置を示す図である。
【図3】カード通過口側からスタッカ部を見たときの図である。
【図4】回収カードの先端がガイド部材の先端部分にぶつかった様子を模式的に示す図である。
【図5】ガイド部材がスタッカ部へ向かって回動し終えた直後の様子を示す図である。
【図6】回収カードが収容スペースまで搬送された様子を示す図である。
【図7】図6に示す移動機構が駆動したときの様子を示す図である。
【図8】スタッカ部に収容されていた最下端収容カードが排出されるときの様子を示す図である。
【図9】ガイド部材の変形例を示す図である。
【図10】ガイド部材が、最下端収容カードのカード通過口側部分の手前までしか回動しない態様を説明する図である。
【図11】図2に示すカードスタッカ装置の変形例を示す図である。
【図12】上方に図2に示すカードスタッカ装置の構成を流用し、下方に図11に示すカードスタッカ装置の構成を流用したカードスタッカ装置を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1,3,5 カードスタッカ装置
11,31 スタッカ部
12,32 カード通過口
13 カード搬送ローラ
14 搬送路
15 分離用ローラ
16 ガイド部材
161 回動軸
17 引っ張りバネ
18 移動機構
Cs 最下端収容カード
Sc 接触面
Cu 最上端収容カード
Cr 回収カード
Re 回収方向先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるカード通過口と、
カードを重ね合わせた状態で収容するスタッカ部と、
前記カード通過口から所定の回収方向に沿って前記スタッカ部まで延びた搬送路と、
前記搬送路を通って回収されてきた回収カードを、前記スタッカ部に既に収容されている収容カードの中で該収容カード厚み方向一端側の最端に位置する最端収容カードに重なり合うように回収する回収機構と、
前記回収方向における前記カード通過口と前記スタッカ部との間であり、前記搬送路の、前記収容カード厚み方向他端側に回動軸を有するガイド部材とを備え、
前記ガイド部材は、前記回収カードの前記回収方向先端部に押されて前記スタッカ部へ向かって回動し、前記最端収容カードにおける一方の面である、前記収容カード厚み方向一端側の面へ、該回収カードの該回収方向先端部が向かうように該回収カードを案内するものであることを特徴とするカードスタッカ装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記最端収容カードの前記カード通過口側部分に当接するものであることを特徴とする請求項1記載のカードスタッカ装置。
【請求項3】
前記回収カードの前記回収方向先端部に押されて前記スタッカ部へ向かって回動した前記ガイド部材の回動軸を、前記カード通過口側に移動させる移動機構を備えたことを特徴とする請求項1、2記載のカードスタッカ装置。
【請求項4】
前記最端収容カードを、前記スタッカ部から前記搬送路を経由させて前記カード通過口から排出する排出機構を備え、
前記ガイド部材が、カード排出時には、前記スタッカ部から送り出されたカードに押されてカード回収時とは逆方向に回動するものであることを特徴とする請求項3記載のカードスタッカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−199546(P2009−199546A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43269(P2008−43269)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】