説明

カードリーダのクリーニング構造

【課題】 カードの挿入に伴って移動するクリーニング部材を設けることにより、簡素な構成を維持しつつ、本体側の固定端子部及びカード側の移動接点部に付着した汚れ等を効率よくクリーニングできるカードリーダのクリーニング構造を提供する。
【解決手段】 ETCカードCが挿入方向に沿ってカードスロット2からカード挿入通路3に挿入されるとき、移動体14がETCカードCの先端に接触して押圧され、ガイド溝6に沿って移動することにより、連結棒15を介してクリーニング部材10がガイド溝6と相似(又は合同)な閉鎖状ループを周回移動する。クリーニング部材10が閉鎖状ループ(ガイド溝6)を一周する間に、第一清掃体11がETCカードCの上面C1(カード接点C0)に接触し、第二清掃体12がケース端子4に接触して、それらをクリーニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ETC車載器等のカードリーダに用いられるクリーニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ETC(Electronic Toll Collection:自動料金収受システム)や電子引き落としシステムのような高度キャッシュレスシステムが急速に普及している。これらのシステムでは、主としてICカードを媒介としてETC車載器、店頭精算器(店頭決済器)等のカードリーダ(カードリーダアンドライタともいう)によってデータ(取引情報)の記憶(入力)・読出(出力)が行われる。その際、ケース端子(ケース体の固定端子部)とカード接点(カードの移動接点部)とが一定の接触圧で当接することでデータの記憶・読出が可能となる。したがって、ケース体の内部に異物が侵入したり、ケース端子やカード接点(あるいはカードの主表面)に汚れ・塵埃・水分等が付着していたりすると、接触不良・導通不良・短絡等によりデータの記憶・読出が不能となったり、データが破壊されたり、制御の誤作動(暴走)を生じたりする。また、最近ではシステムを相互に共用化する試みもなされているので、カードリーダやICカードを媒介としてこれらの汚れ等が次々と伝染するおそれもある。
【0003】
特にETC車載器では、車両のインストルメントパネル等に半ば埋め込まれる形で固定されて容易に取外しができないため、一旦異物が侵入したり汚れ等が付着したりするとそれらの除去が極めて困難となる場合がある。さらに、ETC車載器では走行時の車両の振動に伴うICカードのばたつき(場合によってはカードリーダからの抜け)を防止し耐振性能を向上させるために、ケース端子とカード接点との接触圧を高くすると、カード接点の摩耗・損傷を生ずる場合がある。
【0004】
そこで、コイン等の異物を除去するための異物除去空間を設けたり、クリーニングカードを用いてケース端子(ヘッド接点)を清掃したりする技術が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3082698号公報
【特許文献2】特開2001−67631号公報
【0006】
これらのクリーニング手段によれば、ケース端子とカード接点とを所定の接触圧で相対移動させることによって汚れ等を除去する場合と比較して、接触圧を高めなくても清掃できるため、カード接点(カードの主表面)の摩耗・損傷を抑制できる。しかし、特許文献1に記載の技術では、ケース端子やカード接点に付着した汚れ等については他のクリーニング手段を講じる必要があるので、構造が複雑になってコストが嵩むとともに、クリーニング操作も煩雑になる。また、特許文献2に記載の技術では、クリーニングカードを常備したり、カード接点(カードの主表面)のクリーニング手段を別途設ける必要があるので、構造が複雑になってコストが嵩むとともに、クリーニング操作も煩雑になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、カードの挿入に伴って移動するクリーニング部材を設けることにより、簡素な構成を維持しつつ、本体側の固定端子部及びカード側の移動接点部に付着した汚れ等を効率よくクリーニングできるカードリーダのクリーニング構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカードリーダのクリーニング構造は、
ケース体に開口されたカードスロットから内部に向かうカード挿入通路に沿って挿入されるカードの主表面に露出形成された移動接点部と、前記ケース体から前記カード挿入通路に突入可能に対向配置されて前記カードの主表面を弾圧保持する固定端子部とを当接させることによって、前記カードに対する情報の記憶・読出を可能となすカードリーダのクリーニング構造であって、
前記ケース体の内部において前記カード挿入通路に配置されるとともに、前記カードの挿入方向において前記固定端子部が弾性変形する方向と平行な面上に形成された閉鎖状ループに沿って移動することにより、前記カードの主表面及び前記固定端子部とそれぞれ接触可能なクリーニング部材を備え、
前記カードが前記挿入方向に沿って前記カードスロットから前記カード挿入通路に挿入されるとき、前記クリーニング部材は前記閉鎖状ループに沿って周回移動する間に前記カードの主表面及び前記固定端子部と個別に接触しかつ摺動してそれらをクリーニングすることを特徴とする。
【0009】
このように、カードの挿入に伴ってクリーニング部材が閉鎖状ループを周回移動し、カードの主表面に形成された移動接点部(例えばカード接点)とケース体側の固定端子部(例えばケース端子)とをクリーニングしてから、挿入完了状態(移動接点部と固定端子部との当接状態)に至る。したがって、カードの挿入が完了した状態では、常にクリーニングを終えた移動接点部と固定端子部とが当接するので、カードに対する情報の記憶・読出に誤作動が発生しにくくなり、カードリーダ(例えばETC車載器)の信頼性が向上する。
【0010】
なお、「カードリーダ」にはETC車載器の他に店頭精算器等も含まれる。また、「カード」にはICカードの他に磁気カード等も含まれる。さらに、「カードの主表面」というとき、板状のカードの表面及び裏面のうちのいずれか一方を指す。
【0011】
このようなクリーニング部材の閉鎖状ループは、カードの主表面と平行状に配置され挿入方向の奥側に向かう前進ルートと、その前進ルートよりも主表面から離間して平行状に配置され挿入方向の手前側に引き返す戻りルートと、前進ルートの先頭と戻りルートの末尾とを連結する第一接続ルートと、戻りルートの先頭と前進ルートの末尾とを連結する第二接続ルートとを含み、前進ルートと戻りルートとがケース体の内部において扁平状に配置された環状のループに形成されていることが望ましい。
【0012】
このように、クリーニング部材の移動に係る閉鎖状ループが扁平な環状のループに形成されているので、ケース体の狭い内部空間にクリーニング部材をコンパクトに収納できる。なお、「閉鎖状ループ」は、例えばガイド溝のようなガイド部の形態で、ケース体に形成することができる。
【0013】
また、クリーニング部材は、移動接点部が位置する側に対向配置された第一清掃体と、固定端子部が位置する側に対向配置された第二清掃体とが、カードの主表面に対して垂直な方向に沿って積層状に一体形成され、
カードが挿入方向に沿って挿入され、クリーニング部材が閉鎖状ループを一周する間に、第一清掃体がカードの主表面に接触し、第二清掃体が固定端子部に接触してそれらのクリーニングを実行することができる。
【0014】
クリーニング部材を積層状に一体形成することにより、移動接点部をクリーニングする第一清掃体と固定端子部をクリーニングする第二清掃体とを異なる材質(材料・硬度等)で構成することが容易であり、かつ安価に行なえる。
【0015】
具体的には、移動接点部(カードの主表面)の摩耗・損傷を生じにくくするため第一清掃体を軟質弾性材料(例えばスポンジ)で構成する一方、固定端子部に付着した頑固な汚れを除去しやすくするため第二清掃体を硬質弾性材料(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の硬質樹脂材料)で構成することができる。このように、種々の条件に合わせて両清掃体の材質を選択することができる。
【0016】
さらに、カードが挿入方向に沿って挿入されるとき、クリーニング部材は閉鎖状ループに沿って周回し、カードの挿入完了状態において、戻りルートの先頭又は第二接続ルートにて待機し、
カードの挿入完了状態からカード取り出し状態に移行するとき、第一清掃体によりカードの主表面をクリーニングすることができる。
【0017】
クリーニング部材の第一清掃体によってカードの取り出し(引き抜き)時にもカードの主表面がクリーニングされるので、カードを清浄な状態で保管したり他のカードリーダに挿入したりできる。このように、カード(ひいてはカードリーダ)の耐久性向上を図ることができる。
【0018】
以上のようなケース体の内部には固定端子部の基端部を固定保持するための保持部が配置され、その保持部には閉鎖状ループを構成するガイド部が形成されるとともに、
そのガイド部に沿って移動可能な移動体と、その移動体をクリーニング部材と連結するための連結体とが設けられ、
カードが挿入方向に沿って挿入されるとき、移動体がガイド部に沿って移動することにより、連結体を介してクリーニング部材が閉鎖状ループを周回移動することができる。
【0019】
このように、ケース体を構成する保持部(例えば保持枠)に閉鎖状ループを構成するガイド部(例えばガイド溝)を形成することにより、ケース体の狭い内部空間にクリーニング部材をコンパクトに収納できる。その際、移動体はカード挿入通路に挿入されたカードに接触することにより、保持部のガイド部に沿って移動してもよい。
【0020】
その際、保持部には、カード挿入通路との対面側に開口してカード挿入通路と一体化された空間を形成する凹部が形成され、
その凹部には、クリーニング部材が挿入方向の手前側に位置し、固定端子部が挿入方向の奥側に位置してそれぞれ保持され、
それらクリーニング部材と固定端子部とを、凹部とカード挿入通路とに跨って配置することができる。
【0021】
このように、保持部の凹部にクリーニング部材と固定端子部とが保持(収納)されるので、ケース体の狭い内部空間にクリーニング部材や固定端子部をコンパクトに収納できる。
【0022】
固定端子部は、基端部が保持部の凹部に保持(収納)され、かつ先端部がカード挿入通路に突入してクリーニング部材の第二清掃体及びカードの主表面(移動接点部)と接触可能な自由端を形成する板ばねで構成することができる。これにより固定端子部の弾性変形能を大きくとれるので、クリーニング部材の第一清掃体とカードの主表面との接触圧及び第二清掃体と固定端子部との接触圧を高め、クリーニング部材による汚れの拭き取り性を向上させることができる。また、カードの移動接点部の摩耗・損傷を生じにくくすることができ、固定端子部と移動接点部との接触圧を高めてETC車載器等の耐振性能を向上させることができる。
【0023】
そして、保持部にはカードの主表面の横幅と同等以上の幅を有する掻き出し部が形成され、その掻き出し部をケース体の内部で挿入方向に往復移動可能に配置することができる。クリーニング部材では容易に除去できない異物(例えばコイン)がケース体の内部空間に侵入しても、保持部に形成された掻き出し部によって外部に掻き出すことができる。なお、保持部と掻き出し部とを一体形成することによって、これらをカード挿入通路で挿入方向に往復移動可能、あるいはカードスロットから外部に取り出し可能としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施例)
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明に係るカードリーダの一例としてのETC車載器の外観を示す斜視説明図、図2はETCカードの挿入前の状態における断面図、保持枠の底面図及びガイド溝の説明図である。図1及び図2に示すETC車載器100(カードリーダ)のケース体1は直方体の箱状を呈し、操作者側の前壁1aの中央下部に厚さ方向(壁面に直交する方向;カードの挿入方向)に貫通形成されたカードスロット2(カード挿入口)から、内部に向かうカード挿入通路3に沿ってETCカードC(ICカード)が挿入される。そして、ETCカードCの上面C1(表面;主表面)に露出形成されたカード接点C0(移動接点部)が、ケース体1からカード挿入通路3に突入可能に対向配置されてETCカードCの上面C1を弾圧保持するケース端子4(固定端子部)と当接する。これによって、ETCカードCに対する情報(主として料金データ)の記憶(入力)・読出(出力)が可能となる。
【0025】
図2に示すように、ケース端子4は挿入方向において対をなし、挿入されるETCカードCの幅方向に1列又は複数列(例えば3列)配置されて、弾性変形能の大きい(すなわちばね定数の小さい)板ばねで構成されている。各ケース端子4は、基端部4aがケース体1内面に固定され、先端部4bがカード挿入通路3に突入してETCカードCの上面C1(カード接点C0)及び後述するクリーニング部材10の第二清掃体12と接触可能な自由端を形成し、対をなすケース端子4,4の先端部4b,4b同士が向き合うように対向配置されている。板ばねで構成されたケース端子4の先端部4bが自由端に形成されているので、ケース端子4の弾性変形能を大きくでき、ETCカードCのカード接点C0の摩耗・損傷が生じにくくなる。
【0026】
ETC車載器100には、ETCカードCの上面C1(カード接点C0)及びケース端子4に摺動してセルフクリーニングするためのクリーニング部材10が、ケース体1の内部においてカード挿入通路3に配置されている。図2に示すように、クリーニング部材10は、ETCカードCの挿入方向においてケース端子4が弾性変形する方向と平行な面上に形成されたガイド溝6(ガイド部;閉鎖状ループ)に沿って移動することにより、ETCカードCの上面C1(カード接点C0)及びケース端子4の先端部4bとそれぞれ接触可能である。
【0027】
具体的には、ケース体1の内部にはケース端子4の基端部4aを固定保持するための保持枠5(保持部)が固定配置され、保持枠5に閉鎖状ループを構成するガイド溝6が形成されている。保持枠5には、カード挿入通路3との対面側に開口してカード挿入通路3と一体化された空間を形成する凹部7が形成され、凹部7には、クリーニング部材10が挿入方向の手前側に位置し、対をなすケース端子4,4が挿入方向の奥側に位置してそれぞれ収容保持されている。なお、クリーニング部材10とケース端子4とは、凹部7とカード挿入通路3とに跨って配置されている。なお、凹部7の形成側とは反対側となる保持枠5の上面には、制御回路等が搭載された配線基板1bが載置され、カード接点C0とケース端子4とは配線基板1bと電気的に接続されて、ETCカードCに対する情報の記憶・読出等が実行される。
【0028】
このように、ケース体1を構成する保持枠5に閉鎖状ループを構成するガイド溝6が形成され、保持枠5の凹部7にクリーニング部材10とケース端子4とが保持(収納)されるので、ケース体1の狭い内部空間にクリーニング部材10やケース端子4をコンパクトに収納できる。また、ケース端子4は、基端部4aが保持枠5の凹部7に保持(収納)され、先端部4bがカード挿入通路3に突入してクリーニング部材10の第二清掃体12及びETCカードCの上面C1(カード接点C0)と接触可能な自由端を形成する板ばねで構成されている。これによってケース端子4の弾性変形能を大きくとれるので、クリーニング部材10の第一清掃体11とETCカードCの上面C1との接触圧及び第二清掃体12とケース端子4との接触圧を高め、クリーニング部材10による汚れの拭き取り性を向上させることができる。また、カード接点C0の摩耗・損傷を生じにくくすることができ、ケース端子4とカード接点C0との接触圧を高めてETC車載器100の耐振性能を向上させることができる。
【0029】
クリーニング部材10は、カード接点C0が位置するカード挿入通路3側に対向配置された第一清掃体11と、ケース端子4が位置する凹部7側に対向配置された第二清掃体12と、両清掃体11,12に挟まれて両者を連結する中間部材13とが、ETCカードCの上面C1に対して垂直な方向に沿って積層状に一体形成されている。
【0030】
第一清掃体11は、カード接点C0(ETCカードCの上面C1)の摩耗・損傷を生じにくくするために、相対的に軟質の弾性材料であるスポンジで構成されている。一方、第二清掃体12は、ケース端子4に付着した頑固な汚れを除去しやすくするために、相対的に硬質の弾性材料であるポリプロピレン(PP)で構成されている。
【0031】
保持枠5のガイド溝6には、ガイド溝6と係合するガイドピン14aを有し、そのガイド溝6に沿って移動可能な移動体14が配置されている。また、移動体14とクリーニング部材10の中間部材13とは、中間部材13側の回動軸15a(回動軸線O)周りに回動可能な形態で、連結棒15(連結体)によって連結されている。なお、連結棒15の回動軸15aと凹部7の壁面との間には、回動軸15a(連結棒15)を挿入方向と逆方向に付勢する引張コイルばね16(付勢部材)が介装されている。
【0032】
図2(c)に拡大して示すように、保持枠5に形成されたガイド溝6(閉鎖状ループ)は、全体として扁平な平行四辺形状(又は菱形状)の環状ループを呈している。具体的には、ガイド溝6は、ETCカードCの上面C1と平行状に配置され挿入方向の奥側に向かう前進ルートRFと、前進ルートRFよりもETCカードCの上面C1から上方へ離間して平行状に配置され挿入方向の手前側に引き返す戻りルートRBと、前進ルートRFの先頭と戻りルートRBの末尾とを連結する第一接続ルートR1と、戻りルートRBの先頭と前進ルートRFの末尾とを連結する第二接続ルートR2とを含む。そして、前進ルートRFと戻りルートRBとが保持枠5の内部において扁平状に配置されているので、ケース体1の狭い内部空間にクリーニング部材10をコンパクトに収納できる。
【0033】
図2に示すように、ETCカードCが挿入方向に沿ってカードスロット2からカード挿入通路3に挿入されるとき、移動体14がETCカードCの先端に接触して押圧され(図3参照)、ガイド溝6に沿って移動することにより、連結棒15を介してクリーニング部材10がガイド溝6と相似(又は合同)な閉鎖状ループを周回移動する。このとき、クリーニング部材10が閉鎖状ループ(ガイド溝6)を一周する間に、第一清掃体11がETCカードCの上面C1(カード接点C0)に接触し、第二清掃体12がケース端子4に接触して、それらをクリーニングする(図3,図4参照)。
【0034】
このように、ETCカードCの挿入に伴ってクリーニング部材10が閉鎖状ループ(ガイド溝6)を周回移動し、ETCカードCの上面C1に形成されたカード接点C0とケース体1側のケース端子4とをクリーニングしてから、挿入完了状態(カード接点C0とケース端子4との当接状態)に至る。したがって、ETCカードCの挿入が完了した状態では、常にクリーニングを終えたカード接点C0とケース端子4とが当接するので、ETCカードCに対する情報の記憶・読出に誤作動が発生しにくくなり、ETC車載器100の信頼性が向上する。
【0035】
また、閉鎖状ループ(ガイド溝6)に沿って周回するクリーニング部材10は、ETCカードCの挿入完了状態において、戻りルートRBの先頭又は第二接続ルートR2の途中にて待機する(図4(b)参照)。さらに、ETCカードCの挿入完了状態からカード取り出し状態に移行するとき、第一清掃体11によりETCカードCの上面C1をクリーニングする(図5参照)。このように、クリーニング部材10の第一清掃体11によってETCカードCの取り出し(引き抜き)時にもETCカードCの上面C1がクリーニングされるので、ETCカードCを清浄な状態で保管したり他のカードリーダに挿入したりできる。
【0036】
図2に戻り、保持枠5には、ETCカードC(の上面C1)の横幅と同等以上の幅を有する排出板8(掻き出し部)が一体形成されている。排出板8と保持枠5とは、ロック解除ボタン9(図1参照)の操作によって、カード挿入通路3(ケース体1)の内部で挿入方向に往復移動可能に配置されている。したがって、クリーニング部材10では容易に除去できない異物(例えばコイン)がケース体1(カード挿入通路3)の内部空間に侵入しても、保持枠5に一体形成された排出板8によって外部に掻き出すことができる。なお、排出板8と保持枠5とは、ロック解除ボタン9の操作によって、カードスロット2から外部に取り出すことも可能である。
【0037】
次に、図2〜図5を用いて、ETCカードCの挿入・取り出しとクリーニング部材10の作動について説明する。
【0038】
<ETCカードCの挿入前>
図2(a)に示すETCカードCの挿入前の状態では、移動体14のガイドピン14aが前進ルートRFの末尾にあって、クリーニング部材10(回動軸15a)は引張コイルばね16で付勢されて、凹部7の挿入方向手前側に位置している。そのため、ケース端子4の先端部4bはカード挿入通路3に突入配置されている。
【0039】
<ETCカードCの挿入時>
図2(a)において、ETCカードCをカードスロット2からカード挿入通路3に沿って挿入すると、ETCカードCは、先端が移動体14に接触するまで挿入方向奥側に移動する。この間、クリーニング部材10はほとんど位置変更しないため、ETCカードCの上面C1(カード接点C0)が第一清掃体11(の下面)を摺動してクリーニングする(図3(a))。
【0040】
さらにETCカードCを挿入すると、移動体14はETCカードCの先端で押されて、ガイドピン14aがガイド溝6の前進ルートRFに沿って挿入方向奥側に移動する。クリーニング部材10(回動軸15a)は、連結棒15を介して移動体14に連結されているため、移動体14の動きにつれて挿入方向奥側に移動する。これによって、クリーニング部材10の第二清掃体12はケース端子4を弾性変形させ、下側から摺動してクリーニングする(図3(b))。なお、この間、第一清掃体11とETCカードCの上面C1(カード接点C0)とは接触しているが、挿入方向奥側にほぼ同一速度で移動する。
【0041】
引き続きETCカードCを挿入すると、移動体14のガイドピン14aはガイド溝6の第一接続ルートR1に沿って斜め上方に移動する。このとき、連結棒15は回動軸15a(回動軸線O)周りに上向き回動するので、移動体14はETCカードCの先端と接触しなくなる。ただし、ETCカードCの挿入方向奥側への移動は、第一清掃体11とETCカードCの上面C1との間及び第二清掃体12とケース端子4との間の摩擦力が引張コイルばね16の付勢力に打ち勝ってクリーニング部材10へ伝達され、連結棒15を介して移動体14(ガイドピン14a)の第一接続ルートR1に沿う斜め移動に方向変換される(図4(a))。
【0042】
<ETCカードCの挿入完了状態>
ETCカードCが挿入端(最奥側)に達したとき、移動体14のガイドピン14aはガイド溝6において第一接続ルートR1の先頭(すなわち戻りルートRBの末尾)に位置する(図4(a))。このとき、引張コイルばね16の付勢力が第一清掃体11とETCカードCの上面C1との間及び第二清掃体12とケース端子4との間の摩擦力に打ち勝って、クリーニング部材10(回動軸15a)を挿入方向手前側に移動させ、ケース端子4は弾性復帰する。クリーニング部材10の動きは連結棒15を介して移動体14に伝達され、ガイドピン14aが戻りルートRBの先頭(第二接続ルートR2の末尾)まで移動する(図4(b))。なお、クリーニング部材10が挿入方向手前側に移動する間ETCカードCはほとんど位置変更しないため、第一清掃体11はETCカードCの上面C1(カード接点C0)を摺動してクリーニングし、第二清掃体12はケース端子4を摺動してクリーニングする。
【0043】
このように、ETCカードCの挿入に伴ってクリーニング部材10(ガイドピン14a)が閉鎖状ループ(ガイド溝6)を周回移動し、ETCカードCの上面C1に形成されたカード接点C0とケース体1側のケース端子4とをクリーニングする。そして、図4(b)に示すETCカードCの挿入完了状態となったとき、クリーニング後のカード接点C0とケース端子4とは当接状態(通電状態;信号伝達状態)となる。したがって、ETCカードCの挿入完了状態では、常にクリーニングを終えたカード接点C0とケース端子4とが当接するので、ETCカードCに対する情報の記憶・読出に誤作動が発生しにくくなり、ETC車載器100の信頼性が向上する。
【0044】
<ETCカードCの取り出し時>
図4(b)においてETCカードCが取り出されるとき、ETCカードCの挿入方向手前側への移動に伴って、クリーニング部材10は凹部7の手前側壁面に当接するまで移動する。クリーニング部材10の動きは連結棒15を介して移動体14に伝達され、ガイドピン14aが第二接続ルートR2の先頭(前進ルートRFの末尾)まで移動する(図5)。なお、凹部7の手前側壁面に当接後にクリーニング部材10は位置変更しないため、ETCカードCの上面C1(カード接点C0)が第一清掃体11(の下面)を摺動してクリーニングする。このようにして、ETCカードCの取り出しが完了したとき(図5)、ETCカードCの挿入前の状態(図2(a))に戻る。
【0045】
<異物を除去するとき>
図2(a)において、カード挿入通路3にコイン等の異物が侵入したときには、ロック解除ボタン9(図1参照)を操作し、排出板8(及び保持枠5)をカード挿入通路3の内部で挿入方向に往復移動して、異物をカードスロット2から外部へ掻き出す。あるいは、ロック解除ボタン9の操作によって、排出板8と保持枠5とをカードスロット2から外部へ取り出した後、カード挿入通路3内の異物を取り出す。
【0046】
なお、以上の実施例では、カードリーダとしてETC車載器についてのみ説明したが、店頭精算器(店頭決済器)等に適用してもよい。また、ガイド溝6(閉鎖状ループ)が平行四辺形状の環状ループの場合について説明したが、その他の形状(例えば楕円形状)でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るカードリーダの一例としてのETC車載器の外観を示す斜視説明図。
【図2】ETCカードの挿入前の状態における断面図、保持枠の底面図及びガイド溝の説明図。
【図3】図2(a)の状態からETCカードを順次挿入するときの断面図。
【図4】図3に続いてさらにETCカードを挿入するときの断面図。
【図5】図4(b)の挿入完了状態からETCカードの取り出しを完了した状態における断面図。
【符号の説明】
【0048】
1 ケース体
1a 前壁
1b 配線基板
2 カードスロット(カード挿入口)
3 カード挿入通路
4 ケース端子(固定端子部)
4a 基端部
4b 先端部
5 保持枠(保持部)
6 ガイド溝(ガイド部;閉鎖状ループ)
7 凹部
8 排出板(掻き出し部)
9 ロック解除ボタン
10 クリーニング部材
11 第一清掃体
12 第二清掃体
13 中間部材
14 移動体
14a ガイドピン(ガイド部)
15 連結棒(連結体)
15a 回動軸
16 引張コイルばね(付勢部材)
100 ETC車載器(カードリーダ)
C ETCカード(ICカード)
C0 カード接点(移動接点部)
C1 上面(表面;主表面)
O 回動軸線
RF 前進ルート
RB 戻りルート
R1 第一接続ルート
R2 第二接続ルート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体に開口されたカードスロットから内部に向かうカード挿入通路に沿って挿入されるカードの主表面に露出形成された移動接点部と、前記ケース体から前記カード挿入通路に突入可能に対向配置されて前記カードの主表面を弾圧保持する固定端子部とを当接させることによって、前記カードに対する情報の記憶・読出を可能となすカードリーダのクリーニング構造であって、
前記ケース体の内部において前記カード挿入通路に配置されるとともに、前記カードの挿入方向において前記固定端子部が弾性変形する方向と平行な面上に形成された閉鎖状ループに沿って移動することにより、前記カードの主表面及び前記固定端子部とそれぞれ接触可能なクリーニング部材を備え、
前記カードが前記挿入方向に沿って前記カードスロットから前記カード挿入通路に挿入されるとき、前記クリーニング部材は前記閉鎖状ループに沿って周回移動する間に前記カードの主表面及び前記固定端子部と個別に接触しかつ摺動してそれらをクリーニングすることを特徴とするカードリーダのクリーニング構造。
【請求項2】
前記クリーニング部材の閉鎖状ループは、前記カードの主表面と平行状に配置され前記挿入方向の奥側に向かう前進ルートと、その前進ルートよりも前記主表面から離間して平行状に配置され前記挿入方向の手前側に引き返す戻りルートと、前記前進ルートの先頭と前記戻りルートの末尾とを連結する第一接続ルートと、前記戻りルートの先頭と前記前進ルートの末尾とを連結する第二接続ルートとを含み、前記前進ルートと戻りルートとが前記ケース体の内部において扁平状に配置された環状のループに形成されている請求項1に記載のカードリーダのクリーニング構造。
【請求項3】
前記クリーニング部材は、前記移動接点部が位置する側に対向配置された第一清掃体と、前記固定端子部が位置する側に対向配置された第二清掃体とが、前記カードの主表面に対して垂直な方向に沿って積層状に一体形成され、
前記カードが前記挿入方向に沿って挿入され、前記クリーニング部材が前記閉鎖状ループを一周する間に、前記第一清掃体が前記カードの主表面に接触し、前記第二清掃体が前記固定端子部に接触してそれらのクリーニングを実行する請求項2に記載のカードリーダのクリーニング構造。
【請求項4】
前記カードが前記挿入方向に沿って挿入されるとき、前記クリーニング部材は前記閉鎖状ループに沿って周回し、前記カードの挿入完了状態において、前記戻りルートの先頭又は前記第二接続ルートにて待機し、
前記カードの挿入完了状態からカード取り出し状態に移行するとき、前記第一清掃体により前記カードの主表面をクリーニングする請求項3に記載のカードリーダのクリーニング構造。
【請求項5】
前記ケース体の内部には前記固定端子部の基端部を固定保持するための保持部が配置され、その保持部には前記閉鎖状ループを構成するガイド部が形成されるとともに、
そのガイド部に沿って移動可能な移動体と、その移動体を前記クリーニング部材と連結するための連結体とが設けられ、
前記カードが前記挿入方向に沿って挿入されるとき、前記移動体が前記ガイド部に沿って移動することにより、前記連結体を介して前記クリーニング部材が前記閉鎖状ループを周回移動する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカードリーダのクリーニング構造。
【請求項6】
前記保持部には、前記カード挿入通路との対面側に開口してカード挿入通路と一体化された空間を形成する凹部が形成され、
その凹部には、前記クリーニング部材が前記挿入方向の手前側に位置し、前記固定端子部が前記挿入方向の奥側に位置してそれぞれ保持され、
それらクリーニング部材と固定端子部とは、前記凹部とカード挿入通路とに跨って配置されている請求項5に記載のカードリーダのクリーニング構造。
【請求項7】
前記保持部には前記カードの主表面の横幅と同等以上の幅を有する掻き出し部が形成され、その掻き出し部は前記ケース体の内部で前記挿入方向に往復移動可能に配置されている請求項5又は6に記載のカードリーダのクリーニング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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