説明

カード処理装置

【課題】 カード処理装置において、部品点数を削減し、構造を簡素化する。
【解決手段】 長辺3bがカード挿入口8に挿入されたカード3は、そのままの姿勢でカード搬送路10内を自重によって落下し、支承部13aによって支承された状態でカード3のデータが処理される。データ処理後、押圧部材24を矢印C方向に移動させることにより、押圧部24がカード3の長辺3bの上端部を矢印C方向に押圧する。カード3の長辺3bの下端部が係止部材19の係止部19aに係止されることにより、カード3は時計方向に反転し、係止部材19の傾斜面19bに沿ってカード排出口18側に移動する。支承部13aによる支承を解除することにより、カード3はカード収納箱2内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内に取り込んだカードに記録されたデータを処理した後に装置外に排出するカード処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカード処理装置としては、カード挿入口に連通されたカード挿入路と、このカード挿入路に挿入されたカードに追従して移動する移動部材と、この移動部材をカード挿入口方向に付勢するカード返却用付勢手段と、このカード返却用付勢手段の付勢力に抗して前記移動部材が所定位置まで移動することによりこの移動部材のカード挿入口方向への復帰を係止する係止部材と、前記移動部材が所定位置まで移動することにより前記カード挿入口を閉じるシャッタと、前記係止部材による係止を解除するとともに前記カード挿入口を開放するようにシャッタを作動させる操作レバーとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−34594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のカード処理装置においては、カード挿入口から挿入されたカードをデータ処理手段まで取り込むために、挿入されたカードに追従して移動する移動部材や所定位置まで移動した移動部材を係止する係止部材が必要になる。また、取り込まれたカードがデータ処理中に故意または誤って抜き取られないようにするためのシャッタも必要になる。さらに、データ処理後のカードを再びカード挿入口から排出するために、カード返却用付勢手段や係止部材による係止を解除するとともにカード挿入口を開放するようにシャッタを作動させる操作レバーも必要としていた。このため、部品点数が増加するだけではなく、構造も複雑化するという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、部品点数を削減し、構造を簡素化したカード処理装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、長方形に形成されたカードの長辺が挿入されるカード挿入口と、このカード挿入口から挿入された姿勢のままカードを自重によって落下させるカード搬送路と、このカード搬送路を落下するカードを支承する支承部材と、この支承部材によって支承されたカードに記録されているデータを処理するデータ処理手段と、前記カード搬送路の側方に設けられ前記支承部材によって支承されているカードを排出するカード排出口と、このカード排出口へカードを移動させるカード排出手段とを備え、前記支承部材によって支承されたカードの前記カード排出口側の長辺の下端部を係止する係止部材を設け、前記カード排出手段を、前記支承部材によって支承されたカードの長辺を前記カード排出口側に押圧しカードを前記係止部材を反転中心として前記カード排出口側に90°反転させる押圧部材と、この押圧部材を駆動する駆動手段とによって構成したものである。
【0006】
本発明は、前記発明において、前記係止部材の上部に前記カード排出口側に向かって下方に傾斜する傾斜面を設けたものである。
【0007】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記支承部材を前記カード搬送路に対して進退自在に支持し、当該支承部材の下方にカードを収納するカード収納部を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カード挿入口から挿入されたカードは自重によってデータ処理手段によって処理される位置まで落下するため、カードを搬送させるための搬送手段が不要になる。また、データ処理手段による処理が終了したカードをカード挿入口へ戻すためのカード返却用付勢手段やこれを作動させるための部材も不要になる。さらに、データ処理後にカードを排出する際は、カードを90°反転させて短辺側をカード排出口に臨ませるようにしたので、データの処理中は、カード排出口からカードまでの距離を長くすることができる。このため、データ処理中にカード排出口からカードが抜き取られることがないから、カードの抜き取りを規制するシャッタが不要になる。したがって、部品点数を削減することができ、構造も簡素化することができる。
【0009】
前記発明のうちの一つの発明によれば、カード排出手段によって反転させたカードを係止部材の傾斜面に沿ってカード排出口側に移動させるため、カード排出口からカードを確実に取り出すことができる。
【0010】
前記発明のうちの一つの発明によれば、使用不能カードや使用済みカード等をカード収納部に収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係るカード処理装置を示し、同図(A)は側面図、同図(B)は正面図、図2ないし図4は図1(B)におけるII-II 線断面図であって、図2はカード挿入口からカードを挿入した直後の状態を示し、図3はカードをデータ処理手段によって処理している状態を示す、図4はカードを返却している状態を示している。図5は図1(A)におけるV-V 線断面図、図6は図1(A)におけるVI-VI 線断面図、図7は図1(A)におけるVII-VII 線断面図、図8は図1(A)におけるVIII-VIII 線断面図であって、同図(A)は支承部材によってカードを支承している状態を示し、同図(B)は支承部材による支承を解除した状態を示し、同図(C)はカードをカード収納部へ収納している状態を示している。
【0012】
図1に全体を符号1で示すカード処理装置は、下方に非接触型ICカード3(以下、単にカード3という)を収納するカード収納箱2を備えており、これらカード処理装置1およびカード収納箱2は、図示を省略した遊技台と遊技台との間の間隙である台間4に収納される。カード処理装置1は、図6に示すように後述するカード搬送路10を形成する左側板5および右側板6と、左側板5の後端部に取り付けられた左カバー7と、右側板6の後端部に取り付けられた右カバー8とによって筺体が形成されている。左側板5と右側板6とはカード3の厚みよりもわずかに大きい間隔を有して互いに対向され、図2に示すように上下方向(矢印A−B方向)に延在するカード搬送路10を形成している。
【0013】
このカード搬送路10の前後方向(矢印C−D方向)の幅L1は、カード3の短辺3aの全長L2よりもわずかに長く形成され、かつカード3の長辺3bの全長L3よりも短く形成されている。カード搬送路10の上部の前面側(矢印C方向側)には、高さ方向の寸法L4がカード3の長辺3bの全長L3よりもわずかに長く形成されたカード挿入口8が設けられている。このカード挿入口8に対応して、左右の側板5,6には、指を差し入れるための側面視半円形の切欠き5a,6aが設けられている。
【0014】
図8において、12は右カバー8に取り付けられた第1のソレノイドであって、進退自在なロッド12aには、中央部が軸14を介して右側板6に回動自在に支持された逆L字状の支承部材13の一端部が枢着されている。支承部材13の他端部には支承部13aが折り曲げ形成されており、この支承部13aは右側板6のカード搬送路10の下端に対応した部位に設けられた窓6cに臨んでいる。
【0015】
このような構成において、ソレノイド12のロッド12aが前進することにより、同図(A)に示すように、支承部材13が軸14を回動中心として図中時計方向に回動するので、支承部13aが窓6cからカード搬送路10内に進出する。したがって、後述するようにカード搬送路10内を落下してきたカード3は、支承部13aによって支承される。一方、ソレノイド12のロッド12aが後退することにより、同図(B)に示すように、支承部材13が軸14を回動中心として図中反時計方向に回動するので、支承部13aがカード搬送路10から退出する。したがって、同図(C)に示すように支承部13aによって支承されていたカード3は下方に落下する。
【0016】
図8において、15は図示を省略したスリーブを介して右側板6に固定されたアンテナ基板であって、支承部材13の支承部13aに支承されたカード3と非接触状態で通信を行い、カード3に記録されているデータの読み、書きを行うデータ処理手段として機能する。
【0017】
カード搬送路10の窓6cの矢印C方向には、図2に示すようにカード搬送路10に連通するカード返却路17が延設されており、このカード返却路17の矢印C方向の端部には、高さ方向の寸法L5がカード3の短辺3aの長さL1よりもわずかに長く形成されたカード排出口18が設けられている。このカード排出口18に対応して、左右の側板5,6には、指を差し入れるための側面視長方形の切欠き5b,6bが設けられている。切欠き5b,6bの矢印D方向の端部は、後述する係止部材19の係止部19aから距離L6だけ矢印C方向へ離間した位置に位置付けられている。また、この距離L6は、カード3の長辺3bの全長L3よりも短く形成されている。
【0018】
19はカード返却路17の底部に突設された係止部材であって、図3に示すように支承部材13の支承部13aに支承されたカード3の長辺3bの下端部に対向する係止部19aが設けられており、上部にはカード排出口18側(矢印C方向)に向かって下方に傾斜する傾斜面19bが設けられている。この係止部材19の係止部19aは、後述するように押圧部材24の押圧部24aにカード3が押圧されるときにカード3の長辺3bの下端部に係止してカード3を反転させる機能と、カード搬送路10内を落下してきたカード3が支承部13aに支承された状態を保持する機能とを有する。
【0019】
図2および図6において、20は左カバー7に固定された駆動手段としての第2のソレノイドであって、進退自在なロッド20aの先端部には、軸21を介して左カバー7に揺動自在に支持されたレバー22の下端部が枢着されている。レバー22の上端部に設けた長孔には、左カバー7に設けた案内部材23,23によって矢印C−D方向に移動自在に支持された押圧部材24の一端部が枢着されている。この押圧部材24の他端部は、右側板6に矢印C−D方向に延在するように設けられた案内溝6d内に臨んでいる。また、押圧部材24の略中央部には、図3に示すように支承部材13の支承部13aに支承されたカード3の矢印D方向の長辺3bの上端部を矢印C方向に押圧する押圧部24aが突設されている。
【0020】
このような構成において、第2のソレノイド20のロッド20aが前進することにより、レバー22が軸21を回動中心として図2中反時計方向に回動し、押圧部材24が矢印D方向に移動するので、押圧部24aはカード搬送路10から退避する。一方、第2のソレノイド20のロッド20aが後退することにより、レバー22が軸21を回動中心として図4中時計方向に回動し、押圧部材24が矢印C方向に移動するので、押圧部24aはカード搬送路10内に進出する。
【0021】
カード収納箱2の上部には、図8に示すように開口2aが形成されており、内部に傾斜した底板25が設けられている。このカード収納箱2は、開口2aがカード搬送路10の下方に位置付けられるように設けられている。
【0022】
次に、このように構成されたカード処理装置において、カードの処理動作について説明する。予め、第1のソレノイド12のロッド12aを前進させることにより、図8(A)に示すように支承部材13を軸14を回動中心として時計方向に回動させ、支承部13aを窓6cからカード搬送路10内に進出させておく。また、第2のソレノイド20のロッド20aを前進させることにより、図2に示すようにレバー22を軸21を回動中心として反時計方向に回動させ、押圧部材24を矢印D方向に移動させて押圧部24aをカード搬送路10から退避させておく。
【0023】
この状態で、カード3を把持し、図2に示すように長辺3bをカード挿入口8へ挿入し、把持を解除することにより、カード3をカード搬送路10内に挿入する。カード搬送路10の幅L1が、カード3の短辺3aの全長L2よりもわずかに長く形成され、かつカード3の長辺3bの全長L3よりも短く形成されているため、カード3はカード挿入口8から挿入された姿勢のまま、すなわち短辺3a,3aが上下方向を指向した状態で自重によってカード搬送路10内を落下する。
【0024】
カード搬送路10内を落下してきたカード3は、図3に示すようにカード搬送路10内に進出している支承部材13の支承部13aに支承されることにより落下が停止する。このとき、カード3の矢印C方向の長辺3bの下端部が係止部材19の係止部19aに対向するため、カード3は矢印C−D方向の移動が規制され支承部13aに支承された状態が保持される。
【0025】
支承部13aに支承されたカード3は、アンテナ基板15と非接触状態で通信が行われ、カード3に記録されているデータが書き換えられる。ここで、切欠き5b,6bの矢印D方向の端部が係止部材19の係止部19aから距離L6だけ矢印C方向へ離間した位置に位置付けられているため、データの書き換え中にカード3を故意または誤って取り出すことができない。データの書き換えが終了すると、第2のソレノイド20のロッド20aが後退し、レバー22が軸21を回動中心として図3中時計方向に回動するので、押圧部材24が矢印C方向に移動して押圧部24aがカード搬送路10内に進出する。
【0026】
カード搬送路10内に進出した押圧部24aは、支承部13aに支承されたカード3の矢印D方向側の長辺3bの上端部を矢印C方向に押圧する。この押圧により、カード3全体が支承部13a上を矢印C方向にわずかに移動し、カード3の矢印C方向の長辺3bの下端部が係止部材19の係止部19aに係止される。さらに、押圧部24aがカード3の矢印D方向側の長辺3bの上端部を矢印C方向に押圧するため、カード3は係止部材19の係止部19aに係止された長辺3bの下端部を反転中心として、図4に示すように時計方向に90°だけ反転し、長辺3bが係止部材19の傾斜面19b上に載置されるように転倒する。
【0027】
傾斜面19bがカード排出口18側(矢印C方向)に向かって下方に傾斜しているため、長辺3bがこの傾斜面19bに沿って滑落することにより、傾斜面19b上に転倒したカード3はカード排出口18側(矢印C方向)に向かって確実に移動する。ここで、切欠き5b,6bの矢印D方向の端部と係止部材19の係止部19aとの距離L6が、カード3の長辺3bの全長L3よりも短く形成されているから、カード3の短辺3aが左右の側板5,6の切欠き5b,6bに確実に臨む。したがって、この切欠き5b,6bに指を差し入れることにより、カード排出口18からカード3を取り出すことができる。
【0028】
ここで、支承部材13の支承部13aに支承されたカード3に記録されたデータをアンテナ基板15によって読み取った結果、記録されたデータが「ゼロ」となる、いわゆる使用済みカードであったり、記録されているデータが読み取れない使用不能カード等の場合には、カード排出口18からカード3を排出することなく、カード収納箱2内に収納する。すなわち、第1のソレノイド12のロッド12aを後退させ、図8(B)に示すように支承部材13を軸14を回動中心として反時計方向に回動させることにより、支承部13aをカード搬送路10から退避させ、同図(C)に示すようにカード3をカード収納箱2内に収納する。
【0029】
このように、カード挿入口8から挿入されたカード3は自重によってアンテナ基板15によって処理される位置まで落下するため、カード3を搬送させるための搬送手段が不要になる。また、アンテナ基板15による処理が終了したカード3をカード挿入口8へ戻すためのカード返却用付勢手段やこれを作動させるための部材も不要になる。さらに、データ処理後にカード3を排出する際は、カードを90°反転させることにより、短辺3a側をカード排出口18に臨ませるようにしたので、データの処理中は、カード排出口18からカード3までの距離を長くすることができる。このため、データ処理中にカード排出口18からカード3が抜き取られることがないから、カード3の抜き取りを規制するシャッタが不要になる。したがって、部品点数を削減することができ、構造も簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るカード処理装置を示し、同図(A)は側面図、同図(B)は正面図である。
【図2】図1(B)におけるII-II 線断面図であって、カード挿入口からカードを挿入した直後の状態を示している。
【図3】図1(B)におけるII-II 線断面図であって、カードをデータ処理手段によって処理している状態を示している。
【図4】図1(B)におけるII-II 線断面図であって、カードを返却している状態を示している。
【図5】図1(A)におけるV-V 線断面図である。
【図6】図1(A)におけるVI-VI 線断面図である。
【図7】図1(A)におけるVII-VII 線断面図である。
【図8】図1(A)におけるVIII-VIII 線断面図であって、同図(A)は支承部材によってカードを支承している状態を示し、同図(B)は支承部材による支承を解除した状態を示し、同図(C)はカードをカード収納部へ収納している状態を示している。
【符号の説明】
【0031】
1…カード処理装置、2…カード収納箱、3…非接触型ICカード(カード)、3a…短辺、3b…長辺、8…カード挿入口、10…カード搬送路、12…第1のソレノイド、13…支承部材、13a…支承部、15…アンテナ基板、17…カード返却路、18…カード排出口、19…係止部材、19a…係止部、19b…傾斜面、20…第2のソレノイド、24…押圧部材、24a…押圧部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形に形成されたカードの長辺が挿入されるカード挿入口と、このカード挿入口から挿入された姿勢のままカードを自重によって落下させるカード搬送路と、このカード搬送路を落下するカードを支承する支承部材と、この支承部材によって支承されたカードに記録されているデータを処理するデータ処理手段と、前記カード搬送路の側方に設けられ前記支承部材によって支承されているカードを排出するカード排出口と、このカード排出口へカードを移動させるカード排出手段とを備え、
前記支承部材によって支承されたカードの前記カード排出口側の長辺の下端部を係止する係止部材を設け、
前記カード排出手段を、前記支承部材によって支承されたカードの長辺を前記カード排出口側に押圧しカードを前記係止部材を反転中心として前記カード排出口側に90°反転させる押圧部材と、この押圧部材を駆動する駆動手段とによって構成したことを特徴とするカード処理装置。
【請求項2】
前記係止部材の上部に前記カード排出口側に向かって下方に傾斜する傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1記載のカード処理装置。
【請求項3】
前記支承部材を前記カード搬送路に対して進退自在に支持し、当該支承部材の下方にカードを収納するカード収納部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のカード処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−73131(P2010−73131A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242788(P2008−242788)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】