説明

カード情報取込装置

【課題】 撮像精度を高くし易い、小形・薄型で利便性が高いカード情報取込装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、カードの一面を撮像カメラによって撮像し、カード画像を取り込むカード情報取込装置に関する。そして、板状の装置本体と、少なくとも一方が移動可能な2つの壁面によってカードの一辺の一部又は全部に渡って挟み込んでカードを上記装置本体に立設させるカード保持部とを有し、撮像カメラが、立設されているカードの一面を撮像できることを特徴とする。保持状態のカードを撮像カメラ側に前傾させ、撮像カメラの光軸が前傾状態のカードに対して垂直に交わるようにすることが好ましい。また、撮像カメラが、装置本体に収容した状態と、装置本体から突出した状態のいずれをも取ることができ、突出状態で撮像を可能とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカード情報取込装置に関し、例えば、定形サイズが定まっているカード(名刺、葉書、メモカードなど)に記載されている情報を取り込んで管理する場合に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、名刺の情報を取り込んで管理する装置が種々提案されているが、その中には、名刺情報の取込みを撮像カメラやラインスキャナによる撮像で行う装置がある。特許文献1〜特許文献4にはそれぞれ、そのような装置が記載されている。
【0003】
特許文献1には、名刺の画像情報を取得できるカメラ付き筐体折畳み形携帯電話機が記載されている。このカメラ付き筐体折畳み形携帯電話機においては、上筐体と下筐体の開閉角度をヒンジ部に設けられた開閉角度マーキングに合わせ、かつ、上筐体に回動自在に取り付けられたカメラの方向を上筐体に設けられたカメラ方向マーキングに合わせることにより、カメラを適切な焦点距離及び画角をもって下筐体の上面に置かれた名刺に正対させて撮像する。
【0004】
特許文献2には、パソコンに装着できるPCカードが取り付いた撮像カメラを収容する、概ね上蓋及び下蓋でなる収容ケースが記載されている。この収容ケースの下蓋には、PCカードがパソコンに装着されている撮像カメラを固定する固定部と、名刺を固定する固定部とが設けられている。そして、固定された名刺を固定された撮像カメラで撮像することにより、名刺画像をパソコンに入力させる。
【0005】
特許文献3には、名刺の撮像モードを有するデジタルカメラが記載されている。名刺の撮像時には、常時はデジタルカメラ本体に仕舞われている4本の支柱を取り出す。そして、4本の支柱の先端で規定されている領域に名刺を置いて撮像することにより、名刺画像を得る。
【0006】
特許文献4には、名刺の読取り機能を有する携帯電話機が記載されている。携帯電話機の左右の側面の一方には名刺を挿入するスリットが設けられ、他方には名刺を排出するスリットが設けられ、内部には、挿入用スリットから挿入された名刺を排出用スリットに移動させるローラと、移動中の名刺を読取るラインセンサとが設けられている。すなわち、挿入用スリットから排出用スリットへ連通している通路に沿って移動している名刺を、ラインセンサが繰り返し読取ることにより名刺画像を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−45317号公報
【特許文献2】特開平10−173968号公報
【特許文献3】特開2000−10184号公報
【特許文献4】特開2002−11793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の携帯電話機の技術は、専用の名刺情報取込管理装置として適用し難いものである。すなわち、上筐体が下筐体に対して60°近い角度を持って取り付けられるため、装置が大型化してしまう。上筐体が下筐体に対して回動自在に取り付けることで上述した課題を解決したとしても、以下のような種々の課題は残る。撮像開始前に、上筐体を下筐体に対して所定角度に設定すると共に、上筐体の先端のカメラの向きを所定方向に設定することを要し、撮像時のセッティングが面倒になっている。また、読取対象の名刺の固定方法はなく、名刺が下筐体の上面に単に置かれるが、その載置位置の基準がないため、置かれた位置によっては所定角度や所定方向を設定しても撮像性能が十分に発揮できない。下筐体の上面に位置規制用の突起を複数設けて名刺の位置を所定位置に規制するようにすると、位置規制用の突起のため、上筐体を下筐体に対して閉じた際に塵埃が入り込む隙間ができてしまう。上筐体が下筐体に対して60°近い角度を持って取り付けられるため、上筐体が室内光による影を落として撮像品質を低下させることもあり得る。上筐体の表示部を照明代りに適用して影を防止するようにしても、上筐体と下筐体との距離によって照明強度を変更しなければならず、そのような照明を表示パターンで実現するのは容易なことではない。さらに、表示部を有する上筐体が下筐体に対して60°近い角度を持って取り付けられているため、撮像した名刺画像をユーザが確認するのに不便である。
【0009】
特許文献2の記載技術を専用の名刺情報取込管理装置として実現した場合には、装置はかなり大きなものとなってしまう。少しでも小形化のために読取り機能だけの装置として実現した場合には、情報の管理のために外部装置(パソコン)が必要となってしまう。また、特許文献2の記載技術では、名刺情報を取り込むためには、PCカードを外部装置に装着し、撮像カメラを収容ケースのカメラ固定部に固定し、名刺を収容ケースの名刺固定部に固定しなければならず、撮像時のセッティングが面倒になっている。名刺の固定部を有するが、その固定部は、名刺の上下方向の位置を規制しても左右方向の位置を規制していないため、左右方向の固定位置によっては、撮像品質を低下させることもあり得る。
【0010】
特許文献3に記載のデジタルカメラの技術を専用の名刺情報取込管理装置として実現した場合において、支柱を常設した装置にすれば、装置が大きなものとなってしまい、支柱を組立式にした装置にすれば、撮像時に支柱を組立てなければならなくなってしまう。また、撮像時に、装置本体が名刺の上方に覆い被さるので、専用装置とした場合でもフラッシュは必須の構成要素となり、装置を大型、高価なものにしてしまう。また、4本の支柱の先端で規定されている領域内に名刺を位置させることを前提としているが、その領域内の最適位置を示すことを行っておらず、名刺が置かれた位置によっては、撮像品質を低下させることもあり得る。
【0011】
特許文献4に記載の携帯電話機の技術を専用の名刺情報取込管理装置として実現した場合には、名刺を移動させるための構成により、装置が厚いものとなってしまう。また、ラインセンサを適用して得た名刺画像が、撮像カメラによる名刺画像より画質が低下せざるを得ない。例えば、名刺画像の情報から、光学式文字認識(OCR)機能により文字情報を得る場合、名刺画像の画質が低い場合ほど正答率が低くなってしまう。特に、名刺は、住所や電話番号など小さい文字が多く、ただでさえ正答率が低くなり易いものであるので、画質低下の問題は大きい。
【0012】
名刺情報の電子的な取得、管理の方法としては、上述した特許文献1〜特許文献4に留まらず、多くのアイデアが提案され、製品化されたものもあったが、どれも実用性が低く、市場に受け入れられているとは言い難い。
【0013】
また、今日、携帯電話機の撮像カメラで得た名刺画像を取り込んで処理できる、種々の名刺読取ソフトも販売されているが、撮像精度の問題がある。例えば、携帯電話機の撮像カメラで得た名刺画像はその輪郭が台形となってしまうため、その台形を矩形に戻す補正を行ってから、OCR機能にかける必要がある。
【0014】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、撮像精度を高くし易い、小形・薄型で利便性が高いカード情報取込装置を提供しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、カードの表面又は裏面の少なくとも一方の面を撮像カメラによって撮像し、上記カードの画像を取り込むカード情報取込装置において、(1)板状の装置本体と、(2)少なくとも一方が移動可能な2つの壁面によって上記カードの一辺の一部又は全部に渡って挟み込んで(上記カードの下辺近傍を、下辺の長手方向の一部又は全部に渡って挟み込んで)、上記カードを上記装置本体に立設させるカード保持部とを有し、(3)上記撮像カメラが、カードの立設位置から距離を置いた上記装置本体の位置に設けられ、立設されている上記カードの一面を撮像できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カードの一辺を2つの壁面で挟み込んでカードを設定するので安定に設定でき、安定に設定できたカードを撮像するので撮像精度を高くし易い。また、2つの壁面でカードを挟み込む設定方法であるので、設定が容易であって利便性が高い。さらに、板状の装置本体を基本構成としているので、装置を小形・薄型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の名刺情報取込管理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】実施形態の名刺情報取込管理装置の外観を示す六面図である。
【図3】実施形態における撮像カメラ部の構成例を示す説明図である。
【図4】実施形態におけるストッパ近傍の詳細を示す部分斜視図である。
【図5】実施形態において保持名刺の前後方向の位置を規定すると共に、名刺を前傾して保持することとした理由の説明図である。
【図6】実施形態の名刺情報取込管理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態の名刺情報取込管理装置が名刺情報を取り込む際の動作をユーザの操作と共に示すシーケンス図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(A)主たる実施形態
以下、本発明によるカード情報取込装置を名刺情報取込管理装置に適用した一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、実施形態の名刺情報取込管理装置の外観を示す斜視図であり、情報の取込み対象である名刺をセッティング(保持)している状態を示している。図2は、実施形態の名刺情報取込管理装置の外観を示す六面図である。以下では、図2の六面図での上下左右前後などに従って、「上下左右前後」、「手前、「奥」の方向に言及することとする。
【0020】
図1及び図2において、実施形態の名刺情報取込管理装置1は、概ね、標準的な名刺サイズ(普通型4号;55×91mm)より一回り大きい矩形に、1cm程度の厚みを持たせた筐体形状を有する。名刺情報取込管理装置1(主に、上面)には、ディスプレイ2、キー操作部3、撮像カメラ部4、名刺保持部5などが設けられている。
【0021】
ディスプレイ2には、例えば、白色表示時の照度を変更できる、バックライト付液晶ディスプレイやOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイを適用する。ディスプレイ2の表示面2aは、画面表示領域と、1、2行程度の属性表示用のツールバー領域とに分けられる。画面表示領域は、撮像されたり検索されたりした名刺画像が表示されたり、名刺情報を登録したり検索したりするための各種のメニュー画面やガイダンス画面など(以下、これらをまとめてメニュー画面と呼ぶ)が表示されたりするものである。このような画面表示領域の手前には、属性(例えばコントラスト)と、その属性を変化させるキーの種類との対応や、電池の残容量や、マイクロSDカードなどの記録媒体の装着有無などを表示する上述した属性表示用のツールバー領域が設けられている。ディスプレイ2の表示面2aは、例えば、標準的な名刺サイズの名刺の縦横とほぼ同様な縦横比を有し、左右方向の長さを前後方向の長さより長く選定している。この表示面2aの長手方向(左右方向)の長さは、例えば、撮像カメラ部4における焦点距離に応じて選定されている。若しくは、この表示面2aの長手方向の長さに応じて、撮像カメラ部4における焦点距離が選定されている。ここで、撮像カメラ部4における後述する撮像カメラ30(図3参照)がカラー用であれば、ディスプレイ2としてカラー用を適用すれば良く、撮像カメラ30がモノクロ用であれば、ディスプレイ2としてモノクロ用を適用すれば良い。以下では、登録する名刺画像はカラー画像であってディスプレイ2としてカラー用を適用しているとして説明する。
【0022】
キー操作部3は、ユーザが操作する各種のキーを配置したものであり、撮像カメラ部4と共に、当該名刺情報取込管理装置1の右側に設けられている。この実施形態の場合、キー操作部3は、上下左右に係る4種類の移動キー20U、20D、20R、20L、選択・決定キー21、プラスキー22、マイナスキー23、メニューキー24、バックキー25、電源スイッチ26及びキーロックキー27を有している。移動キー20U、20D、20R、20L、選択・決定キー21、プラスキー22、マイナスキー23、メニューキー24及びバックキー25は、名刺情報取込管理装置1の上面に設けられ、電源スイッチ26及びキーロックキー27は、名刺情報取込管理装置1の右側面に設けられている。
【0023】
移動キー20U、20D、20R、20Lは、種々の機能で利用され、その機能は移動に係る機能に限定されない。移動キー20U、20D、20R、20Lは、例えば、メニュー画面上の各種アイコンやタブのうち、その時点で選択候補対象となっている(すなわち、フォーカスされている)アイコン又はタブを、上下左右に隣接するアイコン又はタブに切り替えることを指示する際に利用される。また、移動キー20U、20D、20R、20Lは、例えば、メニュー画面で表示された50音配列を利用した検索文字列の入力動作などでは、カーソル移動キーとして利用される。さらに、例えば、名刺画像が画面表示領域に表示されている際には、左右の移動キー20R、20Lがコントラスト調整に利用され、上下の移動キー20U、20Dが明るさ調整に利用される。
【0024】
なお、この明細書において、用語「フォーカス」はアイコン又はタブの選択に関連して用い、用語「焦点」は撮像カメラ部4に関連して用いている。
【0025】
選択・決定キー21は、主として、種々の項目の選択や決定に用いられる。選択・決定キー21は、例えば、フォーカスされているアイコン又はタブの選択を決定し、そのアイコン又はタブに割り当てられている機能を起動させる際に利用される。また、選択・決定キー21は、文字列入力動作などではカーソルが位置している漢字候補の選択の決定など、カーソルに関連する選択、実行などに利用される。
【0026】
プラスキー22及びマイナスキー23は、主として、2値若しくは2種類の変化が可能な属性項目の属性変化に利用される。例えば、プラスキー22は、ディスプレイ2に表示されている名刺画像の全体又は一部を拡大させることを指示し、マイナスキー23は、ディスプレイ2に表示されている名刺画像の全体又は一部を縮小させることを指示するように利用される。この実施形態の場合、撮像カメラ部4として光学的なズーム機能を備えていないものを適用しており(但し、撮像カメラ部4として光学的なズーム機能やオートフォーカス機能を備えたものは本発明の他の実施形態となる)、名刺画像のズーム機能を画像処理により提供し得るようにしており、プラスキー22及びマイナスキー23は画像処理によるズームを指示する際に利用される。また例えば、プラスキー22は後述する連続撮像をオンにし、マイナスキー23は連続撮像をオフにするように利用される。
【0027】
メニューキー24は、新たなメニュー画面の表示(例えば、ポップアップ表示)を指示するものであり、バックキー25は、現在表示されているメニュー画面へ遷移させた元のメニュー画面に表示を戻すことを指示するものである。その他、メニューキー24は、処理の段階を1段階進めるために用いられ、バックキー25は、処理の段階を1段階戻すために用いられる。
【0028】
電源スイッチ26は、例えば、自動復帰型のプッシュスイッチでなり、当該名刺情報取込管理装置1の電源のオン又はオフを指示するものである。
【0029】
キーロックキー27は、例えば、スライドにより第1又は第2の位置を取り得るものであり、第1の位置にあるときには、後述する制御部(図6参照)は、移動キー20U、20D、20R、20L、選択・決定キー21、プラスキー22、マイナスキー23、メニューキー24、バックキー25及び電源スイッチ26の操作を有効として扱い、第2の位置にあるときには、後述する制御部が、移動キー20U、20D、20R、20L、選択・決定キー21、プラスキー22、マイナスキー23、メニューキー24、バックキー25及び電源スイッチ26の操作を無効として扱う。
【0030】
図3は、撮像カメラ部4の構成例を示す説明図であり、図3(A)は当該名刺情報取込管理装置1を保管したり携帯したりする際の状態(以下、収容状態と呼ぶ)を示し、図3(B)は撮像を実行し得る状態(以下、突出状態と呼ぶ)を示している。
【0031】
図3において、小型の撮像カメラ(例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサでなる)30は、対物レンズ(若しくは対物レンズ群)31と共に、筒体(以下では、角筒体として説明する)32に収められている。撮像カメラ30は、静止画用、動画用のいずれであっても良いが、以下では、撮像カメラ30が動画用であるとして説明する。
【0032】
筒体32における右上部には、回動軸33が設けられており、筒体32は、この回動軸33を中心として回動し得るようになされている。回動軸33は、筒体32を貫通しているものであっても良く、また、筒体32の手前側の側面と奥側の側面に垂設されたものであっても良い。図示は省略しているが、当該名刺情報取込管理装置1の本体側には、回動軸33を回動自在に受け入れる軸受け部が設けられている。
【0033】
撮像カメラ部4の収容状態から突出状態への変換時に、筒体32に回動力を付与するばね部材34が設けられている。ばね部材34は、つる巻きばね、板ばねなど、いずれの形式のものであっても良い。ばね部材34は、例えば、名刺情報取込管理装置1の外郭を構成する筐体の内部下面に一端が固定され、上方に付勢力を働かせて筒体32をその下面から上方に移動させようとするものであるが、筒体32の回動軸33が軸受け部に受け入れられているため、回動軸33を中心として筒体32を回動させる。撮像カメラ部4の突出状態から収容状態への変化では、ばね部材34は、筒体32の下面で押圧させて付勢力を蓄勢する。
【0034】
筒体32の手前側の側面又は奥側の側面の少なくとも一方には位置規制用突起35が固着されている。この位置規制用突起35は、撮像カメラ部4の突出状態においては、名刺情報取込管理装置1の外郭を構成する筐体の内部上面に接してばね部材34の付勢力に抗して、筒体32を突出状態の所定位置に位置させる。筐体の内部には、位置規制用突起35を係止し得る爪部材36が設けられている。爪部材36は、図示しない案内部などに沿って、左右方向にスライド可能なものとなっている。爪部材36は、図1や図2に描かれているスライドレバー37と連結されており、スライドレバー37の移動に伴って、左右方向にスライドする。爪部材36は、つる巻きばねなどでなるばね部材38の一端に取り付けられており、このばね部材38の他端は、例えば、筐体の内部右側面に取り付けられている。撮像カメラ部4の収容状態では、爪部材36の爪36aが位置規制用突起35を係止している。爪部材36の爪36aの上部形状は、位置規制用突起35が上方から下方に移動しながら接した際には、爪部材36を左方向に移動させる力が働くような形状になっている。
【0035】
図3では省略しているが、少なくとも、撮像カメラ部4が突出状態にあることを検知する撮像可能検知センサ(後述する図6の符号58参照)が設けられている。このセンサとして、筒体32が突出状態になることでアクチュエータが移動するリミットスイッチや、筒体32が突出状態になることで光線を授受できるようになるフォトカプラなどを適用することができる。
【0036】
図3(A)に示す撮像カメラ部4の収容状態において、スライドレバー37がユーザの指によって左方向にスライドされると、スライドレバー37に連結されている爪部材36も左方向に移動する。これにより、爪部材36の爪36aと位置規制用突起35との係止状態が解放され、ばね部材34の付勢力により、回動軸33を中心として筒体32が時計回りに回動する。位置規制用突起35が、筐体の内部上面に接したときに回動が終了し、筒体32が突出状態の所定位置に位置するようになる。筒体32の突出を確認すると、ユーザはスライドレバー37から指を離す。このとき、ばね部材38の引っ張り力により、爪部材36が右方向に移動するが、このときには、位置規制用突起35は筐体の内部上面に接しているので、爪部材36の爪36aと係止することはない。
【0037】
図3(B)に示す撮像カメラ部4の突出状態において、ユーザが筒体32の上面を押圧すると、回動軸33を中心として筒体32が反時計回りに回動していく。この回動により、位置規制用突起35が下方に移動して爪部材36の爪36aの上部に接触するようになると、上部面がカム面として機能して爪部材36を左方向に移動させながら、位置規制用突起35はさらに下降する。この下降によって、位置規制用突起35が爪部材36の爪36aより低い位置になると、ばね部材38の引っ張り力により、爪部材36が右方向に移動し、爪部材36の爪36aが位置規制用突起35と係止する。このような係止状態になると、ユーザが筐体32の上面への押圧を止めても、係止状態、すなわち、収容状態を継続させる。
【0038】
名刺保持部5は、撮像カメラ部4による撮像対象の名刺を保持する部分であり、ディスプレイ2を挟んで、撮像カメラ部4の反対側に設けられている。今日では、名刺の大半が横書きであり、ディスプレイ2の表示面2aの形状は、横書きの名刺画像が見易くなることを考慮して選定されている。一方、撮像カメラ部4における焦点距離が短い場合、撮像された名刺画像の品質が低下し易いので(例えば、歪曲ひずみ)、撮像カメラ部4及び名刺保持部5を、ディスプレイ2の表示面2aの長手方向に沿って、ディスプレイ2の表示面2aを挟むように配置させている。
【0039】
名刺保持部5は、図1に示す固定壁面41と可動壁面部材42の可動壁面42aとで、名刺6の一辺(より正確に言えば一方の長辺近傍)を挟み込むことによって名刺6を保持する。固定壁面41の方が可動壁面部材42の可動壁面42aよりディスプレイ2に寄っている。可動壁面部材42は、左右方向にスライド可能なものである。左方向への移動は、名刺情報取込管理装置1の外郭を構成する筐体内部に設けられたばね部材(図示せず)の右方向への付勢力を超えた外力の印加により可能であり、外力が解放された際の右方向への移動は、図示しないばね部材の右方向への付勢力による。上述した付勢力が印加されている挟み込みによる保持方式により、厚みが一様でない多種多様な名刺を保持することが可能となり、また、厚みが薄いなど単独では姿勢を維持することができない名刺を取り付けた台紙を保持することが可能となる。さらに、名刺を挟み込んだ幅が後述するように狭くても(例えば、1.5mm程度)、安定した名刺の保持が可能となる。
【0040】
上述した台紙として、例えば、背景紙と透明表紙とを1辺で連結し、これらの間に名刺を挟み込むものを適用できる。台紙は、薄い名刺に対応できるだけでなく、透けて撮像品質を低下させる名刺にも背景紙の色選定により対応できるものであり、外形が矩形でないため立設し難い名刺にも対応できるものである。
【0041】
上述とは異なり、ディスプレイ2寄りに可動壁面を設け、ディスプレイ2の遠くに固定壁面を設けるようにしても良く、両壁面共に可動壁面とするようにしても良い。但し、このようにした場合、僅かではあるが、名刺の厚みによって、名刺表面と撮像カメラ部4との距離が変化するので、名刺表面と撮像カメラ部4との距離が変化しない、固定壁面41の方をディスプレイ2寄りにした上述した配置の方が好ましい。
【0042】
この実施形態では、登録対象の名刺6を横置きで立設するものを示したが、縦置きで立設させることを基本として装置を構成しても良いことは勿論である。また、横置きで立設させる場合において、下辺の全部分を挟むように、名刺情報取込管理装置1の前後方向の長さが選定されていても良い。
【0043】
この実施形態の場合、突出状態での撮像カメラ部4の仰角(撮像カメラ部4の光軸と名刺情報取込管理装置1の上面とのなす角)を抑えるため、名刺6の長辺側を挟み込む側の辺としている。上述したように、名刺情報取込管理装置1の前後方向の長さを規定するディスプレイ2の前後方向の長さは、標準的な名刺サイズの名刺の短辺側の長さに近い長さである。そのため、仮に、標準的な名刺サイズの名刺を保持しようとする場合、挟み込まれる辺であってもその辺の一部は挟み込まれない。このような挟み込まれない部分をユーザに委ねた場合、ユーザによって、また、同じユーザであっても時期によって、挟み込み方が変化し、撮像品質が低下することをあり得る。
【0044】
そこで、この実施形態の場合、名刺情報取込管理装置1の外郭を構成する筐体の奥側の側面近傍に、名刺6の奥側の辺を当接させるストッパ43を設けることとし、仮に、標準的な名刺サイズの名刺を挟持する場合には、図1に示すように、挟み込まれる辺の手前側が挟み込まれない部分になるようにしている。
【0045】
固定壁面41と、可動壁面部材42の可動壁面42aとは平行面であるが、これらの固定壁面41と可動壁面42aとは、名刺6を、撮像カメラ部4側に前傾させて保持するように平行面が選定されている。ここで、可動壁面部材42の可動壁面42aの高さを固定壁面41の高さより高くしている。これは、第1に、仮に保持されている名刺6の上端に逆方向の力が働いてもその力が解放されたときに所定の前傾に復帰し易くするためであり、第2に、挟み込まれて撮像カメラ部4側から見えなくなっている名刺部分を極力少なくするためである。固定壁面41の幅、言い換えると、固定壁面41によって見えなくなる部分の幅を例えば1.5mm程度に選定し、可動壁面42aの幅を例えば2.5mm程度に選定する。名刺の大半は、文字列のレイアウトを考慮して端に近い文字でも、端から1.5mm以上離れて位置されている。このような現実を考慮し、固定壁面41の幅を定めている。
【0046】
図4は、ストッパ43近傍の詳細を示す部分斜視図である。図4は、固定壁面41と可動壁面42aとが最大限離間した状態を示している。
【0047】
ストッパ43は、可動壁面42aに向かって固定壁面41から突出している板状凸部43aと、この板状凸部43aと嵌合する、可動壁面42aから可動壁面部材42の内方に向かっている凹部43bとを有する。板状凸部43aの上面は、例えば、名刺情報取込管理装置1におけるディスプレイ2が設けられている側の上面と連続している。可動壁面42aと固定壁面41とが最も開いた状態で、板状凸部43aの先端が可動壁面42aの表面が存する面上若しくは凹部43b内に位置するようになされている。以上のような板状凸部43a及び凹部43bでストッパ43を構成することにより、種々の厚みの名刺6や、名刺を保持した台紙の奥側の辺縁が確実に当接し、名刺6や台紙を前後方向に確実に位置決めすることができる。可動壁面部材42の可動壁面42aの高さを固定壁面41の高さより高くしていることにより、上述したストッパ43の構造を適用することが可能となっている。
【0048】
固定壁面41と可動壁面42aとが接触している状態においても、名刺6や台紙の縁部の停止位置をユーザが認識し得るように、板状凸部43aの延長上の、ディスプレイ2が設けられている側の上面には小さな半球状のマーカ44が設けられている。
【0049】
図4とは逆に、可動壁面42aに板状凸部43aを設け、固定壁面41に凹部43bを設けるようにしても良い。また、板状凸部43aとして機能する部材として、1本又は複数本の棒部材を適用することもできる。但し、固定壁面41の幅(高さ)は1.5mm程度であり、このような固定壁面41に設ける棒状部材はかなり細くなり、信頼性が低いので、実施形態のように板状部材を適用することが好ましい。
【0050】
図5は、保持名刺6の前後方向の位置を規定すると共に、名刺6を前傾して保持することとした理由の説明図である。
【0051】
図5において、1点鎖線AXは撮像カメラ部4の光軸を表している。名刺6の前傾角度は、撮像カメラ部4の光軸AXが名刺6に直角に交わるように選定されている。また、撮像カメラ部4の前後方向の位置は、光軸AXが名刺6に交わる点Pが名刺6の前後方向(長手方向)の長さAを2分する線上にあるように選定されている。さらに、撮像カメラ部4の突出状態での仰角は、光軸AXが名刺6に交わる点が名刺6の上下方向(短手方向)の長さ(若しくはそれより保持のために挟み込まれている長さを減じた長さ)Bを2分する線上にあるように選定されている。
【0052】
撮像カメラ部4の焦点距離(対物レンズ31の焦点距離)は、保持されている名刺6の画像が撮像カメラ30の受光面上に結像するように選定されている。
【0053】
図1及び図2において、後述する名刺情報データベースを構成する記録媒体(例えば、マイクロSDカード)を着脱する際の蓋部7や電源のオンオフ状態などを示すインジケータ(例えば、LED素子でなる)8なども、名刺情報取込管理装置1の外部から見える位置に設けられている。
【0054】
図6は、実施形態の名刺情報取込管理装置1の電気的構成を示すブロック図であり、既述した図面との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
【0055】
図6において、CPUを中心に構成されている制御部50には、システムバス(図示せず)を介してプログラムメモリ51、ワークメモリ52、入出力インタフェース53が接続されている。入出力インタフェース53には、上述したディスプレイ2を駆動するディスプレイドライバ54、上述した撮像カメラ30を駆動するカメラドライバ55、上述したキー操作部3、上述したインジケータ8を駆動するLEDドライバ56、名刺情報データベース57、各種センサ58が接続されている。
【0056】
プログラムメモリ51は、例えば、1又は複数個のROMチップでなり、プログラムメモリ51には、各種の処理プログラムや、処理プログラムが利用する固定データが格納されている。プログラムメモリ51には、例えば、撮影された名刺の情報を登録する登録プログラム(後述する図7参照)や、登録されている名刺情報の中から所望する名刺情報を検索する検索プログラムが格納されている。また、プログラムメモリ51には、例えば、表示するガイダンスやメッセージのデータや、ツールバーに表示するアイコンデータや、文字入力モードで文字を選択させる50音の一覧表示用データなどの固定データが格納されている。
【0057】
ワークメモリ52は、1又は複数個のRAMチップやフラッシュメモリチップなどでなり、制御部50がプログラムメモリ51に格納されているいずれかの処理プログラムを実行する際に作業エリアとして用いるものであり、また、ユーザ入力に係る固定データ等も格納するものである。ワークメモリ52には、ディスプレイ2に表示させる表示画像を格納する表示バッファや、撮像カメラ30による撮像画像をバッファリングする撮像画像バッファや、検索時のキーワードを格納するキーワードバッファや、検索時に名刺情報データベース57から取り出した名刺情報を格納する検索情報バッファなどが、実行する処理プログラムなどによって適宜設定される。
【0058】
名刺情報データベース57は、例えば、マイクロSDカードを着脱可能であってマイクロSDカードの装着時にマイクロSDカードをアクセスできるカードアダプタ部と、マイクロSDカードとでなる。名刺情報データベース57としてHDD(ハードディスクドライブ装置)を適用しても良いが、マイクロSDカード用のカードアダプタ部と、マイクロSDカードとで名刺情報データベース57を構成した方が、当該名刺情報取込管理装置1を小形、薄型にできて好ましい。また、マイクロSDカードを適用することにより、名刺情報データベース57の容量をユーザが選択したり変更したりすることができる。なお、記録媒体はマイクロSDカードに限定されず、また、着脱できずに装置に固定的に設けられているものであっても良い。名刺情報データベース57の1レコードは、例えば、登録日時と、名刺における法人名などの組織名(部署などの下位の組織名部分を除く)と、その組織名の読みと、名刺における氏名と、その氏名の読みと、少なくとも表面の名刺画像(例えば、裏面の名刺画像を登録情報に含めるか否かを任意事項とする)とでなっている。
【0059】
名刺情報データベース57に格納する情報として、部署、電話番号、FAX番号、eメールアドレス、URLを含めないようにしたのは、第1に、これらの文字は比較的小さな文字サイズの文字で記載されているため、OCRでの認識精度が低くなり易いためであり(特に、数字が他の数字に誤認識された場合、表示されても誤認識されたことをユーザが気付かないことが多い)、第2に、データベース容量の有効利用のためであり、第3に、必要ならば名刺画像そのものから確認できるためである。
【0060】
制御部50に検知信号を与える各種センサ58としては、例えば、撮像カメラ部4が突出状態にあるか収容状態にあるかを検出する撮像可能検知センサを挙げることができる。なお、マイクロSDカードの装着有無は、例えば、マイクロSDカード用のカードアダプタ部が判断しているが、装着有無を検知する専用のセンサを設けるようにしても良い。
【0061】
制御部50は、キー操作部3や各種センサ58からの入力信号やそのときの処理段階に応じて定まるプログラムメモリ51内の処理プログラムを、ワークメモリ52を利用しながら、また、必要ならばプログラムメモリ51やワークメモリ52に格納されている固定データを適宜用いて処理するものであり、その処理状況や処理結果等をディスプレイ2に表示させたり、名刺情報データベース57をアクセスしたりするものである。なお、制御部50には日時などを計時するタイマも設けられている。
【0062】
次に、実施形態の名刺情報取込管理装置1が名刺情報を取り込む際の動作をユーザの操作と共に、図7のシーケンス図をも参照しながら説明する。以下では、名刺情報取込管理装置1の電源がオフで、撮像カメラ部4が収容状態にあり、かつ、マイクロSDカードが装着されている状態からの動作を説明する。
【0063】
ユーザは、新たな名刺を入手し、その名刺情報を登録したくなった場合には、電源スイッチ26をオン操作し、名刺情報取込管理装置1の電源をオンとする(S1)。
【0064】
これにより、名刺情報取込管理装置1の制御部50は電源オン時の処理プログラムを実行する(S2)。撮像カメラ部4が収容状態にあり、かつ、マイクロSDカードが装着されているので、制御部50は、例えば、名刺情報を登録する場合には名刺を所定位置にセッティングさせて撮像カメラ部4を突出状態に変化させること、既に登録済の名刺情報を検索する場合には所定のキーを操作することを求めるメニュー画面をディスプレイ2に表示させる。なお、電源オン時にマイクロSDカードが装着されていない場合には、当初の表示内容は、マイクロSDカードの装着を促すものとなる。また、電源オン時点で既に撮像カメラ部4が突出状態にあれば、制御部50は、名刺情報の登録モードが選択されたとして扱う。また、ユーザは、後述するようにして登録対象の名刺を撮像カメラ部4の読取位置に位置決めした後に、電源スイッチ26をオン操作するようにしても良い。
【0065】
名刺情報を登録する場合には名刺を所定位置にセッティングさせて撮像カメラ部4を突出状態に変化させること、既に登録済の名刺情報を検索する場合には所定のキーを操作することを求めるメニュー画面が表示されたとき、ユーザは、名刺情報の登録を望んでいるので、登録対象の名刺6の所定位置へのセッティングと、撮像カメラ部4の突出状態への変化操作とを行う(S3)。名刺6の所定位置へのセッティングと、撮像カメラ部4の突出状態への変化操作とはいずれを先に行っても良いものである。
【0066】
例えば、一方の手で可動壁面部材42を左方に移動させて可動壁面42aと固定壁面41とを開いて隙間を作り、その状態で、他方の手で、登録対象の名刺6の一辺を隙間の底部に当接させ、その状態でストッパ43に当たるまで名刺6を後方に移動させ、ストッパ43に当たったときに、可動壁面部材42から一方の手を離し、可動壁面部材42をホームポジションに復帰させるように移動させ、これにより、可動壁面42aと固定壁面41とで、登録対象の名刺6の下辺を部分的に挟み込んで、名刺6を所定位置へセッティングする。ユーザは、薄い名刺や、背景が透けている名刺や、標準的な名刺サイズより小さい名刺などについては、適宜、台紙に取り付けた上で名刺情報取込管理装置1にセッティングする。なお、縦書き名刺も、横書き名刺と同様に、長辺が上下に平行になるように横置きでセッティングさせる。この際、縦書きでの上側の位置を横置でどちらのサイドに向けるかを、所定位置へのセッティングを求める表示画像でユーザに通知する。例えば、縦書きでの上側の位置が、撮像カメラ部4から見て左側に位置するように横置きにセッティングさせる。縦書き名刺での横置きでの向きを1種類とすることにより、OCR機能による処理を簡単なものとすることができる。すなわち、縦書きでの上側の位置が、撮像カメラ部4から見て左側に位置しているのか、右側に位置しているのかをOCR時に判別することが不要となる。
【0067】
撮像カメラ部4を突出状態へ変化させるには、一方の手の指によって、上述したようにスライドレバー37を左方に移動させた後、指を離せば良い。
【0068】
撮像カメラ部4を突出状態へ変化させることを、この実施形態の場合、その直前の動作モードを問わず、名刺情報の登録モードに移行させたことを意味するようにしている。
【0069】
制御部50は、撮像可能検知センサからの検知信号により撮像カメラ部4が突出状態へ変化したことを認識すると、撮像カメラ30を起動し、撮像カメラ30が得た動画の撮像画像を登録候補画像としてディスプレイ2に表示させる(S4)。このような登録候補画像の表示では、手前側のツールバー領域に、プラスキー22又はマイナスキー23の操作によって画像を拡大/縮小できることや、左移動キー20L又は右移動キー20Rの操作によって画像のコントラストを変化(高低)できることも表示する。ユーザは、適宜、電話番号やeメールアドレスやURLなどが小さくても拡大した場合に十分に認識できることを確認したり、文字部分と背景部分とのコントラストを調整したりする。ここで、表示している名刺画像を前後左右に移動できる機能をも持たせるようにしても良い。
【0070】
表示されている登録候補画像を登録画像として決定したユーザは、選択・決定キー21を操作する(S5)。
【0071】
このとき、制御部50は、撮像カメラ30に静止画撮像を実行させ、得られた名刺画像を表示させ、その後、所定時間だけ経過してから、この名刺画像を使用するか否かをユーザに問い合わせる(S6)。この際の静止画撮像では、制御部50は、ディスプレイ2の表示面2aの全面を最大照度にして白色表示させ、そのようなディスプレイ2の白色表示で照明された名刺6を撮像カメラ30で撮像させる。全面を白色表示させることにより、例えば、太陽光や室内光がセッティングされている名刺6の裏面から表面へ向かっていて、薄い名刺などの名刺6を透過するいわゆる逆光状態になっていても、その逆光状態を緩和して高品質の名刺画像を取り込むことができるようになり、また、太陽光や室内光による照明では不十分な場合にも高品質の名刺画像を取り込むことができるようになる。
【0072】
ユーザが、静止画撮像された名刺画像の使用を求めると(S7)、制御部50は、その名刺画像に対するOCRを実施し、組織名及び氏名の文字列を得るとともに、組織名及び氏名の読みを決定し、組織名及び氏名の文字列、組織名及び氏名の読み、並びに、名刺画像のサムネイルを含む確認画像をディスプレイ2に表示させる(S8)。
【0073】
表示された確認画像に納得したユーザは、最終的に登録を指示し(S9)、制御部50は、名刺情報データベース57に今回の名刺情報を格納した後、登録した旨のメッセージを所定時間だけ表示し、その後、静止画撮像の前の表示画面に戻る(S10)。
【0074】
以上では、登録まで最短コースの流れを示したが、バックキーの操作によって、直前の処理段階に戻すこともでき、また、登録へ向かう選択を否定することによっても直前の処理段階に戻すこともできる。さらに、組織名、氏名や、その読みを修正させるようなことも可能である。
【0075】
また、上記では、1枚ごと、撮像、OCR、名刺情報の格納を繰り返す場合を示したが、撮像だけを複数枚の名刺に繰り返した後(但し、上限枚数は設定されている)、各名刺画像に対するOCR及び名刺情報の格納を繰り返し実行する、連続撮像による登録を行うこともできる。
【0076】
名刺情報データベース57からの検索は、組織名、氏名の文字列、その読みのうち、いくつかを入力させることにより実行させることができる。
【0077】
上記実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0078】
上記実施形態によれば、名刺画像を取り込む対象の名刺を、その一辺(下辺に位置する長辺)の一部を2つの壁面で挟み込んでセッティングするようにしたので、名刺を安定に立設することができる。このように安定に設定されている名刺に対し、左右方向に距離を置いて撮像カメラの指向性を向ければ良い。言い換えると、名刺を撮像するための構成要素は高さ方向には存在せず、名刺情報取込管理装置を薄型化することができる。
【0079】
また、上記実施形態によれば、名刺を撮像カメラ部側に前傾して立設させ、その前傾状態において、撮像カメラ部の光軸が、標準的な名刺サイズの名刺の中心に直角に交わるようにしているので、撮像品質を高めることができる。すなわち、撮像された名刺画像の輪郭が台形になることはないのでそれを矩形に補正するようなことを不要にでき、また、仮に、名刺サイズが標準的な名刺サイズではなくて撮像された名刺画像の輪郭が台形になったとしても、矩形からの相違はごく僅かであり、画像処理による矩形への補正も少しの補正で済むことができる。
【0080】
ここで、装置の後側面の近傍に設けたストッパによって名刺の立設位置を一定にすることができ、精度の高い名刺撮像を行うことができる。
【0081】
名刺を立設させる2つの壁面のうち、一方の壁面が左右に移動し得る可動壁面であって他方の固定壁面との間隔を変化することができるので、種々の厚みの名刺を安定して立設することができ、また、名刺を取り付けた台紙をも安定して立設することができる。台紙を利用可能としたことにより、名刺サイズが標準的な名刺サイズからかなり異なっている名刺や、名刺の輪郭が矩形ではない名刺や、名刺の背景が透明になっている名刺などの変形名刺も、撮像対象とすることができるようになる。
【0082】
装置の後側面の近傍に設けたストッパは、固定壁面から突出している板状凸部と、その板状凸部に係合する可動壁面部に設けられた凹部とを備え、固定壁面と可動壁面部の可動壁面とが最大限離れたときでも、その隙間を渡るように板状凸部を設けているので、可動壁面の開き具合によらずに名刺の奥側位置を正しく規制することができる。
【0083】
上記実施形態によれば、撮像カメラ部は突出状態と収容状態のいずれかをとることができ、撮像時に突出状態にすれば良い。これにより、名刺情報取込管理装置を小形、薄型化することができる。また、撮像カメラ部を収容状態にすれば、名刺情報取込管理装置を衣服のポケットに入れ、又は、カバンに入れて持ち運ぶのに都合が良い。
【0084】
名刺のセッティングは可動壁面部を移動させて2つの壁面に挟むことででき、撮像カメラ部の突出状態への変化はスライドレバーを1回操作することででき、撮像可能状態へのセッティングが非常に容易である。なお、名刺情報取込管理装置を使用しない状態に戻すには、名刺が立設されていればそれを上方に引き上げて抜取り(可動壁面の移動を伴っても良い)、撮像カメラ部が突出状態にあれば撮像カメラ部の上面に下方への力を加えて収容状態に変化させ、電源スイッチをオフ操作すれば良く(これらの3種類の操作順序は問わない)、戻す際の操作も容易になっている。
【0085】
また、上記実施形態によれば、ディスプレイとして白色表示時の照度を変更できるものを適用し、登録用の撮像時にはディスプレイを照明手段として利用するようにしたので、逆光に対する画像処理を不要にでき、また、ストロボランプなどの暗い環境下に対応する構成要素を不要にできる。
【0086】
さらに、上記実施形態によれば、撮像カメラ部の突出状態では名刺の撮像前であっても、撮像カメラ部及び名刺保持部間に設けられたディスプレイにその時点の名刺画像を表示するようにしたので、登録される名刺画像を精度良く推測しながら登録のための撮像を起動することができ、無駄な撮像を少なくすることができる。因みに、特許文献1に記載のようなディスプレイが下向きに傾いた状態では候補画像を表示しても見難い。また、特許文献2に記載のような撮像を行う箇所から離れているパソコン上に候補画像を表示しても、候補画像で発見した気に入らない事項に対する修正操作などを簡単に実行できない。例えば、候補画像を見て、室内光の方向を考慮して装置の向きを変える場合、実施形態の装置では、撮像カメラ部及び名刺保持部間にディスプレイが設けられているので容易にできるが、特許文献2の記載技術ではパソコンに表示された候補画像を見て撮像装置の固定装置の向きを調整し、その後、再びパソコンの画像を見、必要ならばこれら装置を繰り返すこととなり、操作は煩雑になってしまう。
【0087】
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明においても、種々変形実施形態を示したが、さらに以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0088】
上記実施形態では、撮像カメラ部が回動することで突出状態と収容状態の2状態間で変化できるものを示したが、スライドによって、突出状態と収容状態の2状態間で変化できるようにしても良い。
【0089】
また、上記実施形態では、全体が1枚の平板状で構成されている名刺情報取込管理装置を示したが、撮像カメラ部及び名刺保持部が上記実施形態と同様な技術思想に従っているものであれば、全体構成はこれに限定されるものではない。例えば、携帯電話や電子手帳などで採用されているような2つ折り構成を適用しても良い。この場合に、各種のキーが配置されている下蓋側に撮像カメラ部及び名刺保持部を設けるようにすれば良い。
【0090】
さらに、上記実施形態では、名刺情報の管理機能(OCR機能、登録機能、検索機能)をも備えた装置を示したが、名刺画像の撮像機能(取込機能)だけを備えた装置に、本発明を適用することができる。このような場合には、名刺情報の管理機能(OCR機能、登録機能、検索機能)を、ケーブル接続された、若しくは、インターネットなどのネットワークを介して接続された外部のパソコンやサーバなどが備えていれば良い。
【0091】
上記実施形態では、横書き名刺も縦書き名刺も横置きで立設させるものを示したが、横書き名刺を横置きで立設させ、縦書き名刺を縦置きで立設させるようにして撮像させるようにしても良い。例えば、このような場合、横書き名刺と縦書き名刺とで撮像カメラ部の突出量を変化させると共に、奥側の辺の位置を規制するストッパとして前後方向に移動でき、横書き名刺用の位置と縦書き名刺用の位置とを取り得るものを適用するようにすれば良い。
【0092】
また、上記実施形態では、ディスプレイは表示機能しかない備えないものであったが、タッチパネル機能を備えたディスプレイを適用しても良い。
【0093】
上記実施形態では、カードが名刺の場合を示したが、他の種類のカード用の装置に対して本発明を適用することができる。例えば、葉書きやレシピ用カードや学習カード(例えば単語帳カード)などのカード情報取込装置に本発明を適用することができる。また、カードではないが、定形の封筒、出金伝票などの表面、裏面情報を取り込むような場合にも本発明を適用することができる(特許請求の範囲の「カード」の用語は、このような表面若しくは裏面の情報に意味があるカードと同様に取り扱うことができる封筒などを含むものとする)。
【符号の説明】
【0094】
1…名刺情報取込管理装置、2…ディスプレイ、3…キー操作部、4…撮像カメラ部、5…名刺保持部、30…撮像カメラ、41…固定壁面、42…可動壁面部材、42a…可動壁面、43…ストッパ、43a…板状凸部、43b…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの表面又は裏面の少なくとも一方の面を撮像カメラによって撮像し、上記カードの画像を取り込むカード情報取込装置において、
板状の装置本体と、
少なくとも一方が移動可能な2つの壁面によって上記カードの一辺の一部又は全部に渡って挟み込んで、上記カードを上記装置本体に立設させるカード保持部とを有し、
上記撮像カメラが、カードの立設位置から距離を置いた上記装置本体の位置に設けられ、立設されている上記カードの一面を撮像できる
ことを特徴とするカード情報取込装置。
【請求項2】
上記カード保持部は、上記カードを上記撮像カメラ側に前傾して立設するものであり、上記撮像カメラの光軸が前傾状態のカードに対して垂直に交わることを特徴とする請求項1に記載のカード情報取込装置。
【請求項3】
上記撮像カメラを保持している保持体を備え、上記保持体を上記装置本体に収容した収容状態と、上記保持体を上記装置本体から突出させ、上記撮像カメラによる撮像を可能とする突出状態との間で上記保持体の状態を変化し得る保持体状態変更機構を有することを特徴とする請求項1に記載のカード情報取込装置。
【請求項4】
上記カード保持部における移動可能な壁面の移動可能量は、上記カードを取り付けた台紙の保持を可能とする量に選定されていることを特徴とする請求項1に記載のカード情報取込装置。
【請求項5】
上記カード保持部は、上記カードにおける挟み込んだ辺の一端の装置本体における相対位置を規制するストッパを有することを特徴とする請求項1に記載のカード情報取込装置。
【請求項6】
上記ストッパは、一方の上記壁面から他方の上記壁面へ向かって伸びている板状凸部と、他方の上記壁面に設けられており、上記板状凸部と嵌合する凹部とを有し、一方の上記壁面と他方の上記壁面とが最も開いた状態で、上記板状凸部の先端が他方の上記壁面の表面が存する面上若しくは上記凹部内に位置していることを特徴とする請求項5に記載のカード情報取込装置。
【請求項7】
上記装置本体における上記カード保持部がカードを保持する面において、上記カード保持部と上記撮像カメラとの間の上記装置本体の位置に、輝度を変更可能なディスプレイが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカード情報取込装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−8282(P2012−8282A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143081(P2010−143081)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000129437)株式会社キングジム (241)
【Fターム(参考)】