説明

ガスの出入方法および貯蔵施設

【課題】 貯槽内に温度差が発生しないようにガスを均一に混合し、貯槽の損傷を防ぐことができるガスの出入方法および貯蔵施設を提供すること。
【解決手段】 パイプライン1から受入配管3にガスを送る。そして、ガスをコンプレッサ13で圧縮し、冷却器17で冷却して、入口用短配管23を用いて貯槽35の上部に充填する。また、パイプライン1から送られたガスを貯槽35に注入するのと同時に、または、パイプライン1から送られたガスを貯槽35に注入した後に、必要に応じて、貯槽35の下部から、出入口用長配管33にガスを取り出し、循環配管45に送る。そして、ガスをコンプレッサ11で圧縮し、冷却器17で冷却して、入口用短配管23を用いて貯槽35の上部に再充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの出入方法および貯蔵施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、岩盤内貯蔵施設からガスを払い出す場合には、貯槽内から取り出したガスの一部を加熱し貯槽内に再流入させる。また、岩盤内貯蔵施設にガスを圧入する場合には、貯槽内の一部のガスを取り出して冷却し貯槽内に再流入させる。
【0003】
図5は、従来の貯蔵装置のキャバーン71(貯槽)を示す図である。従来の貯蔵装置のキャバーン71は、図5に示すように、下端部がキャバーン71の内部73の上部に位置する出口配管75と、下端部がキャバーン71の内部73の下部に位置する入口配管77とを有する。ガスをキャバーン71に圧入する場合には、矢印Cに示すように、出口配管75を介してキャバーン71の上部から取り出したガスや、パイプラインから送られたガスを冷却した後、矢印Bに示すように、入口配管77を介してキャバーン71の底部に導入する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2002−503603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷却したガスを底部で導入すると、貯槽内に温度差が発生する。図6は、ガス圧入後のキャバーン71の内部73の温度分布を示す図である。図5に示すキャバーン71に、上述した方法でガスを圧入すると、図6に示すように、貯槽内の平均温度に対して局部的に低温、高温部分が発生することが確認できた。局部的な低温部分、高温部分の発生は、キャバーン71の背面の地下水凍結によるライニング材の損傷や、応力腐食割れ等を引き起こし、キャバーン71の構造に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、貯槽内に温度差が発生しないようにガスを均一に混合し、貯槽の損傷を防ぐことができるガスの出入方法および貯蔵施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地山内に配置された貯槽と、下端部が前記貯槽内の上部に配置された、前記貯槽内にガスを入れるための第1の配管と、を具備する貯蔵施設において、パイプラインから送られたガスを圧縮および冷却し、前記第1の配管を介して前記貯槽内に注入することにより、前記貯槽にガスを充填することを特徴とするガスの出入方法である。
【0008】
貯蔵施設には、下端部が貯槽内の下部に配置された、貯槽内にガスを出入するための第2の配管がさらに設けられる。貯槽にガスを充填する際には、第2の配管を介して貯槽からガスを取り出し、取り出したガスを圧縮および冷却して、第1の配管を介して貯槽内の上部に注入する。
【0009】
第2の配管を介して貯槽から取り出したガスは、パイプラインから送られたガスを貯槽に注入するのと同時に、または、パイプラインから送られたガスを貯槽に注入した後に、貯槽に注入される。貯蔵施設には、第2の配管を介して貯槽から取り出したガス、パイプラインから送られたガスの圧縮と冷却を行うために、コンプレッサと冷却機とが、それぞれ少なくとも1台設けられる。
【0010】
貯蔵施設には、下端部が貯槽内の上部に配置された、貯槽内からガスを出すための第3の配管がさらに設けられる。貯蔵施設では、第3の配管を介して貯槽から取り出したガスを加熱してパイプラインに払い出しつつ、取り出したガスの一部を第2の配管を介して前記貯槽内に戻す。貯蔵施設には、パイプラインに払い出すガス、第2の配管を介して貯槽内に戻すガスの加熱を行うために、ヒータが少なくとも1台設けられる。
【0011】
第2の発明は、地山内に配置された貯槽と、下端部が前記貯槽内の上部に配置された、前記貯槽内にガスを出入するための第1の配管と、を具備し、パイプラインから送られたガスを圧縮および冷却し、前記第1の配管を介して前記貯槽内に注入することにより、前記貯槽にガスを充填することを特徴とする貯蔵施設である。
【0012】
貯蔵施設は、下端部が貯槽内の下部に配置された、貯槽内にガスを出入するための第2の配管をさらに具備する。貯蔵施設は、貯槽にガスを充填する際に、第2の配管を介して貯槽から取り出したガスを圧縮および冷却し、第1の配管を介して貯槽内に注入することができる構成とする。
【0013】
貯蔵施設は、パイプラインから送られたガスの貯槽への注入の後に、または、パイプラインから送られたガスの貯槽への注入と同時に、第2の配管を介して貯槽から取り出したガスの貯槽への注入を行うものとする。貯蔵施設には、第2の配管を介して貯槽から取り出したガスや、パイプラインから送られたガスの圧縮と冷却を行うために、コンプレッサと冷却機とが、それぞれ少なくとも1台設けられる。
【0014】
貯蔵施設は、下端部が貯槽内の上部に配置された、貯槽内からガスを出すための第3の配管をさらに具備する。貯蔵施設は、第3の配管を介して貯槽から取り出したガスを加熱してパイプラインに払い出しつつ、取り出したガスの一部を第2の配管を介して貯槽内に戻すことができる構成とする。貯蔵施設には、パイプラインに払い出すガス、第2の配管を介して貯槽内に戻すガスの加熱を行うために、ヒータが少なくとも1台設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貯槽内に温度差が発生しないようにガスを均一に混合し、貯槽の損傷を防ぐことができるガスの出入方法および貯蔵施設を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、貯蔵施設Aの構成を示す図である。図1に示すように、貯蔵施設Aは、受入配管3、払出配管5、ヒータ9、コンプレッサ11、コンプレッサ13、ヒータ15、冷却器17、出口用短配管21、入口用短配管23、出入口用長配管33、貯槽35、循環配管45等からなる。
【0017】
受入配管3は、一方の端部49がパイプライン1に接続され、他方の端部51が入口用短配管23、出入口用長配管33に接続される。入口用短配管23は、途中にバルブ25を有し、下端部41が貯槽35の内部37の上部に配置される。出入口用長配管33は、途中にバルブ27を有し、下端部43が貯槽35の内部37の下部に配置される。
【0018】
受入配管3は、途中にコンプレッサ13を有する。また、コンプレッサ13より端部51側に、冷却器17を有する。さらに、冷却器17を迂回する枝管19を有し、枝管19にはヒータ15が設けられる。
【0019】
払出配管5は、一方の端部57がパイプライン1に接続され、他方の端部59が循環配管45に接続される。払出配管5は、途中に減圧弁7を有する。また、減圧弁7より端部59側に、ヒータ9を有する。
【0020】
循環配管45は、一方の端部53が、出入口用長配管33のバルブ27より下端部43側に接続される。また、他方の端部61が、受入配管3の、枝管19との分岐部分とコンプレッサ13との間に接続される。
【0021】
循環配管45は、払出配管5の端部59との接続部分と、受入配管3に接続される端部61との間にコンプレッサ11を有する。循環配管45の端部53の手前には、出口用短配管21の端部55が接続される。出口用短配管21は、途中にバルブ31を有し、下端部39が貯槽35の内部37の上部に配置される。循環配管45は、出口用短配管21の端部55との接続部分と、出入口用長配管33に接続される端部53との間にバルブ29を有する。
【0022】
パイプライン1から貯槽35にガスを充填する際には、受入配管3から出入口長配管33へのガスの流れを制御するバルブ27を閉め、受入配管3から入口用短配管23へのガスの流れを制御するバルブ25を開ける。
【0023】
パイプライン1から貯槽35にガスを充填する際には、図1に示すようにパイプライン1から受入配管3にガスを送る。そして、ガスをコンプレッサ13で圧縮し、冷却器17で冷却して、入口用短配管23を用いて貯槽35の上部に充填する。
【0024】
パイプライン1から送られたガスを貯槽35に注入するのと同時に、または、パイプライン1から送られたガスを貯槽35に注入した後に、必要に応じて、貯槽35の下部から、出入口用長配管33を用いてガスを取り出し、循環配管45に送る。そして、ガスをコンプレッサ11で圧縮して受入配管3に送り、冷却器17で冷却して、入口用短配管23を用いて貯槽35の上部に再充填する。このとき、出入口用長配管33から循環配管45へのガスの流れを制御するバルブ29を開け、出口用短配管21から循環配管45へのガスの流れを制御するバルブ31を閉める。
【0025】
図2は、ガス圧入後の貯槽35の内部37の温度分布を示す図である。貯蔵施設Aでは、上述したように、貯槽35の上部に圧縮・冷却したガスを入れる。また、貯槽35の上部にガスを入れると同時に、または、貯槽35の上部にガスを入れた後、必要に応じて、貯槽35の下部からガスを取り出す。図2から、この方法で貯槽35にガスを充填すると、貯槽35の内部37に温度分布が発生しないことが確認できた。
【0026】
図3は、貯蔵施設Aの構成を示す図である。貯槽35からパイプライン1にガスを払い出す際には、出入口用長配管33から循環配管45へのガスの流れを制御するバルブ29を閉め、出口用短配管21から循環配管45へのガスの流れを制御するバルブ31を開ける。
【0027】
貯槽35からパイプライン1にガスを払い出す際には、図3に示すように、貯槽35の上部から、出口用短配管21を用いてガスを取り出し、循環配管45を介して払出配管5に送る。そして、ガスをヒータ9で加熱し、減圧弁7で減圧して、パイプライン1に払い戻す。
【0028】
また、必要に応じて、出口用短配管21を用いて取り出したガスの一部を、循環配管45に設けられたコンプレッサ11で圧縮し、受入配管3に送る。そして、受入配管3に送ったガスを、枝管19に迂回させてヒータ15で加熱し、出入口用長配管33を用いて貯槽35の下部に再充填する。このとき、受入配管3から出入口長配管33へのガスの流れを制御するバルブ27を開け、受入配管3から入口用短配管23へのガスの流れを制御するバルブ25を閉める。
【0029】
貯蔵施設Aでは、上述したように、貯槽35の上部からガスを取り出す。また、必要に応じて、取り出したガスの一部を貯槽35の下部に入れる。これは、従来と同様の方法であり、この方法で貯槽35からガスを払い出した場合、貯槽35内には温度分布が発生しない。
【0030】
このように、本実施の形態では、貯槽35にガスを充填する際に、パイプライン1から受入配管3に送ったガスをコンプレッサ13で圧縮し、冷却器17で冷却して、入口用短配管23を用いて貯槽35の上部に充填する。また、貯槽35の上部にガスを入れると同時に、または、貯槽35の上部にガスを入れた後、必要に応じて、貯槽35の下部からガスを取り出す。
【0031】
また、貯槽35からガスを払い出す際に、貯槽35の上部からガスを取り出す。そして、必要に応じて、取り出したガスの一部を貯槽35の下部に入れる。本実施の形態で説明した方法で貯槽35にガスを充填したり、貯槽35からガスを払い出したりすることにより、貯槽35の内部37に温度差が発生しないようにガスを均一に混合し、貯槽35の損傷を防ぐことができる。
【0032】
なお、貯蔵施設の構成は、図1の貯蔵施設Aに示すものに限らない。図4は、貯蔵施設に必要な機能を示す図である。図4の(a)図は、ガスの充填時に必要な機能を、図4の(b)図は、ガスの払い出し時に必要な機能を示す。
【0033】
図4の(a)図に示す貯蔵施設Dは、受入配管3から送られたガスと、長配管63を用いて貯槽35の下部から取り出して循環配管45に送ったガスとを、コンプレッサ47で圧縮し、冷却器67で冷却して、短配管65を用いて貯槽35の上部に入れる機能を有する。
【0034】
図4の(b)図に示す貯蔵施設Dは、短配管65を用いて貯槽35の上部から取り出したガスをヒータ69aで加熱して払出配管5に送りつつ、取り出したガスの一部を循環配管45に送り、コンプレッサ47で圧縮し、ヒータ69bで加熱して、長配管63を用いて貯槽35の下部に入れる機能を有する。
【0035】
貯蔵施設は、図4の(a)図に示す機能と、図4の(b)図に示す機能との両方を持つものであればよい。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかるガスの出入方法および貯蔵施設を提供の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】貯蔵施設Aの構成を示す図
【図2】ガス圧入後の貯槽35の内部37の温度分布を示す図
【図3】貯蔵施設Aの構成を示す図
【図4】貯蔵施設に必要な機能を示す図
【図5】従来の貯蔵装置のキャバーン71(貯槽)を示す図
【図6】ガス圧入後のキャバーン71の内部73の温度分布を示す図
【符号の説明】
【0038】
1………パイプライン
3………受入配管
5………払出配管
9、15、69a、69b………ヒータ
11、13、47………コンプレッサ
17、67………冷却器
21………出口用短配管
23………入口用短配管
33………出入口用長配管
35………貯槽
37、73………内部
39、41、43………下端部
45………循環配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山内に配置された貯槽と、
下端部が前記貯槽内の上部に配置された、前記貯槽内にガスを入れるための第1の配管と、
を具備する貯蔵施設において、
パイプラインから送られたガスを圧縮および冷却し、前記第1の配管を介して前記貯槽内に注入することにより、前記貯槽にガスを充填することを特徴とするガスの出入方法。
【請求項2】
前記貯蔵施設が、下端部が前記貯槽内の下部に配置された、前記貯槽内にガスを出入するための第2の配管をさらに具備し、
前記貯槽にガスを充填する際に、前記第2の配管を介して前記貯槽から取り出したガスを圧縮および冷却し、前記第1の配管を介して前記貯槽内に注入することを特徴とする請求項1記載のガスの出入方法。
【請求項3】
前記貯蔵施設が、下端部が前記貯槽内の上部に配置された、前記貯槽内からガスを出すための第3の配管をさらに具備し、
前記第3の配管を介して前記貯槽から取り出したガスを加熱して前記パイプラインに払い出しつつ、前記取り出したガスの一部を前記第2の配管を介して前記貯槽内に戻すことを特徴とする請求項2記載のガスの出入方法。
【請求項4】
地山内に配置された貯槽と、
下端部が前記貯槽内の上部に配置された、前記貯槽内にガスを出入するための第1の配管と、
を具備し、
パイプラインから送られたガスを圧縮および冷却し、前記第1の配管を介して前記貯槽内に注入することにより、前記貯槽にガスを充填することを特徴とする貯蔵施設。
【請求項5】
下端部が前記貯槽内の下部に配置された、前記貯槽内にガスを出入するための第2の配管をさらに具備し、
前記貯槽にガスを充填する際に、前記第2の配管を介して前記貯槽から取り出したガスを圧縮および冷却し、前記第1の配管を介して前記貯槽内に注入することを特徴とする請求項4記載の貯蔵施設。
【請求項6】
下端部が前記貯槽内の上部に配置された、前記貯槽内からガスを出すための第3の配管をさらに具備し、
前記第3の配管を介して前記貯槽から取り出したガスを加熱して前記パイプラインに払い出しつつ、前記取り出したガスの一部を前記第2の配管を介して前記貯槽内に戻すことを特徴とする請求項5記載の貯蔵施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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