説明

ガスの採取方法及び装置

【課題】接ガス部の汚染や劣化を最小限にし、人為的ミスによるサンプルバックの破損を防止できるガスの採取方法と装置を提供する。
【解決手段】吸気管1に接続された第一のサンプルバック2aを機密性のある構造のサンプルボックス3内に収容し、該3内のガスを排出することで、前記2a内にガスを採取する方法において、(a)前記3の内容積を、該2aの規定容積以下とするか、(b)前記3内に、排気管5に接続された第二のサンプルバック2bを収容し、前記2aはガスを内包せずに収容され、前記2bはガスを内包して収容され、2bのガスを排出して前記2aにガスを採取するか、(c)前記(b)で、該3外に、前記5に接続して第三のサンプルバック2cを配し、前記2bのガスを前記5により前記2cに移送して前記2aにガスを採取することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの採取方法および採取装置に関し、特に可燃性ガス、毒性ガス、特殊高圧ガスなどの危険性の高い成分を含むガス、燃焼排ガスなどの粉塵や水分を含むガスの採取方法及び採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの採取方法には、以下の3つの方法が知られている。
(1) 真空容器内を予め真空とし、バルブを開けて対象ガスを吸引し、採取する方法。
真空容器は、ガラス、金属、樹脂などの材料で、真空に絶えうる強度で製造されている。
そのため、ガスの採取量は、真空容器の内容積以下であること、容器が重いため、多量のガスを採取するには不向きなこと、真空容器内が汚染されても、内部の洗浄に手間がかかるか洗浄が不可能なことなどの問題点があった。
(2) ポンプを用いガスを吸引し、サンプルバックに採取する方法。
この方法は最も汎用的であり、ポンプの種類及び接ガス部の材質、サンプルバックの材質や容量を任意に選定することで、多種類のガスを採取することができる。
しかしながら、可燃性ガス・毒性ガス・特殊高圧ガスなどの危険性の高い成分を含むガスを採取する場合や、燃焼排ガスなどの粉塵や水分を含むガスを採取する場合は、ポンプの接ガス部の材質選定が難しいこと、接ガス部の汚染や劣化が著しいことなどの問題点があった。
【0003】
(3) サンプルバックをサンプルボックスに入れ、サンプルボックスをポンプで減圧してサンプルバックにガスを採取する方法。
ポンプはガスに汚染されないものの、ポンプの吸引圧がサンプルバックの耐圧よりも高く、サンプルバックの規定容積以上のガスを採取した場合、サンプルバックが破損する問題点があった。
そこで、ポンプにタイマ停止機能やマスフロー制御機能を付加し、サンプルバックの規定容積のガスを採取する方法が実用化されている。
しかし、それらの機能を付加したポンプは高価であること、誤設定などの人為的ミスにより過剰のガスを採取しサンプルバックが破損する可能性があることなどの問題点があった。
【特許文献1】特開平5−52719号公報
【特許文献2】特開平8−110287号公報
【特許文献3】特開平11−153525号公報
【特許文献4】特開2003−57155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記公知技術の問題点を解消して、接ガス部の汚染や劣化を最小限にし、高価な機能を使用せず、人為的ミスによるサンプルバックの破損を防止することができるガスの採取方法及び採取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明では、 吸気管に接続されたサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記サンプルバック内にガスを採取する方法において、前記サンプルボックスの内容積は、前記サンプルバックの規定容積以下であることを特徴とするガスの採取方法、及び、吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバック内にガスを採取する方法において、前記サンプルボックス内に、排気管に接続された第二のサンプルバックを収容し、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックはガスを内包して収容され、該第二のサンプルバックのガスを排出することで、前記第一のサンプルバックにガスを採取することを特徴とするガスの採取方法としたものである。
【0006】
また、本発明では、吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバック内にガスを採取する方法において、前記サンプルボックス内に、排気管に接続された第二のサンプルバックを収容し、該サンプルボックス外に、前記排気管に接続して第三のサンプルバックを配し、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックはガスを内包して収容され、該第二のサンプルバックのガスを前記排気管により前記第三のサンプルバックに移送することにより、前記第一のサンプルバックにガスを採取することを特徴とするガスの採取方法としたものである。
前記ガスの採取方法において、第二のサンプルバックの容積は、第一のサンプルバック規定容積以下とし、また、前記第三のサンプルバックの容積は、第二のサンプルバック規定容積以下とするのがよい。
【0007】
また、本発明では、吸気管に接続されたサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記サンプルバック内にガスを採取する装置において、前記サンプルボックスは、ガスを排出するための排気手段を備えた排気管に接続されると共に、該サンプルボックス内の容積が、前記サンプルバックの規定容積以下であることを特徴とするガスの採取装置、及び、吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバック内にガスを採取する装置において、前記サンプルボックス内に、排気手段を備えた排気管に接続された第二のサンプルバックを収容すると共に、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックはガスを内包して収容されており、前記第二のサンプルバックのガスを排気手段により排出することで、前記第一のサンプルバックにガスを採取するように構成したことを特徴とするガスの採取装置としたものである。
【0008】
さらに、本発明では、吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバックにガスを採取する装置において、前記サンプルボックス内に、排気手段を備えた排気管に接続された第二のサンプルバックを収容し、該サンプルボックス外に、前記排気管に接続して第三のサンプルバックを配備すると共に、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックは、ガスを内包して収容されており、前記第二のサンプルバックのガスを前記排気管により前記第三のサンプルバックに回収することにより、前記第一のサンプルバックにガスを採取するように構成したことを特徴とするガスの採取装置としたものである。
前記ガスの採取装置において、吸気管、サンプルバック、サンプルボックス、排気管及び排気手段は、それぞれ脱着可能であり、前記サンプルボックスは、開閉してサンプルバックが交換可能でかつ機密性を保持する構造であり、また、排気手段による減圧では変形しない構造であるのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポンプなどの接ガス部の汚染や劣化を防止することでポンプなどの洗浄の労力を低減できると共に、人為的ミスでガスを過剰量採取し、サンプルバックを破損する事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を図面を用いて具体的に説明する。
まず、公知技術を図4を用いて説明すると、図4(a)はガス採取前、図4(b)はガス採取後を示す。
図4は、吸気管に接続されたサンプルバック2をサンプルボックス3に収容し、排気管5に接続された排気手段4によりサンプルボックス3内のガスを排出することで、サンプルバック2にガスを採取する方法である。
サンプルボックス3内の気体は、排気管5を経由して排気手段4により排出され、それに伴い吸気管1を経由してサンプルバック2にガスが採取される。
この方法において、サンプルボックス3の内容積は、サンプルバック2の規定容積よりも大きいため、排気手段4の排気圧がサンプルバック2の耐圧よりも高く、かつ排気手段4による排気量がサンプルバック2の規定容積よりも多くなった場合、サンプルバックは破損する。
【0011】
次に、本発明を図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の第一の様態を示したものであり、図1(a)はガス採取前、図1(b)はガス採取後である。
図1において、サンプルボックス3内の気体は、排気管5を経由して排気手段4により排出され、それに伴い吸気管1を経由してサンプルバック2にガスが採取される。
図1では、サンプルボックス3は、サンプルバックの規定容積以下のため、排気手段4による排気量は、サンプルバック2の規定容積を超えることはなく、サンプルバックは破損せず、危険性の高いガスを安全に採取することができる。
【0012】
図2は、本発明の第二の様態を示したものであり、図2(a)はガス採取前、図2(b)はガス採取後である。
図2において、サンプルボックス3内の第二のサンプルバック2bの気体は、排気管5を経由して排気手段4により排出され、それに伴い吸気管1を経由して第一のサンプルバック2aにガスが採取される。
図2では、排気手段4の排気圧が、第一のサンプルバック2aの耐圧より高い場合でも、第一のサンプルバック2aには第二のサンプルバック2bが予め内包していたガス量以下しか採取されないため、サンプルバックは破損しない。
さらに、第一のサンプルバック2aが破損しても、ガスは第二のサンプルバック2bにより閉止され、サンプルボックス3内に留まるため、危険性の高いガスを安全に採取することができる。
【0013】
図3は、本発明の第三の様態を示したものであり、図3(a)はガス採取前、図3(b)はガス採取後である。
図3において、サンプルボックス3内の第二のサンプルバック2bの気体は、排気管5を経由して排気手段4により第三のサンプルバック2cに移送され、それに伴い吸気管1を経由して第一のサンプルバック2aにガスが採取される。
図3では、排気手段4の排気圧が第一のサンプルバック2aの耐圧より高い場合、第一のサンプルバック2aには第二のサンプルバック2bが予め内包していたガス量以下しか採取されないため、サンプルバックは破損しない。
さらに、第一のサンプルバック2a及び第二のサンプルバック2bが破損しても、ガスは第三のサンプルバック2cにより閉止され、サンプルボックス3内に留まるため、危険性の高いガスを安全に採取することができる。
【0014】
さらに、図1から図3に示すサンプルボックスを開閉可能で機密性のある構造とし、吸気管、サンプルバック、サンプルボックス、排気管及び排気手段をそれぞれ脱着可能な構造とすることで、サンプルバックを順次交換し、繰返しガスを採取することができる。
吸気管及び排気管は、ゴム、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、金属などの材質の管を使用することができる。
吸気管及び排気管の耐圧は、ゲージ圧で−100kPaから100kPaが好ましく、ゲージ圧で−10kPaから10kPaがより好ましい。
サンプルバックは、フッ化ビニル樹脂、4フッ化エチレンと6フッ化プロピレンの共重合体、ナイロン、ポリエチレン、アルミニウム、ポリスチレン、ポリエステルなどの材質を使用することができる。
サンプルバックの耐圧は、ゲージ圧で−100kPaから100kPaが好ましく、ゲージ圧で−30kPaから30kPaがより好ましい。
【0015】
サンプルボックスは、塩化ビニル樹脂、金属などの容器を使用することができ、開閉可能で気密性があり、吸気管、サンプルバック、排気管が脱着可能な構造が好ましい。
サンプルボックスの耐圧は、ゲージ圧で−100kPaから100kPaが好ましく、ゲージ圧で−60kPaから20kPaがより好ましい。
排気手段は、バルブ、各種ポンプを使用することができる。
排気手段の吸引圧力は、ゲージ圧で−99kPaから−3kPaが好ましく、ゲージ圧で−60kPaから−10kPaがより好ましい。
排気手段の排気圧力は、ゲージ圧で3kPaから100kPaが好ましく、ゲージ圧で10kPaから60kPaがより好ましい。
【実施例】
【0016】
実施例1
図4に示す従来例と図2に示す本発明例との採取ガス量を比較した。
吸気管及び排気管にはフッ素樹脂管、サンプルボックスには立方体の透明塩化ビニル製の容器を使用した。
排気手段のポンプには、吸引圧力−30kPa、大気開放時の排気量2.4L/minを使用した。サンプルバックには、ポリエステル製多層フィルムの外周を融着した規定容積5Lのものを使用した。
実験結果を表1に示す。
【0017】
【表1】

*単位:採取ガス量(L)

従来例では、吸引ガス圧力0kPaの場合、採取時間2.6分でサンプルバックが破損し、吸引ガス圧力−2kPaの場合、採取時間3.3分でサンプルバックが破損した。
一方、本発明の例ではサンプルバックは破損しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のガスの採取装置の一例を示す構成図。
【図2】本発明のガスの採取装置の他の例を示す構成図。
【図3】本発明のガスの採取装置の他の例を示す構成図。
【図4】公知のガスの採取装置の一例を示す構成図。
【符号の説明】
【0019】
1:吸気管、2:サンプルバック、2a:第一のサンプルバック、
2b:第二のサンプルバック、2c:第三のサンプルバック、
3:サンプルボックス、4:排気手段、5:排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管に接続されたサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記サンプルバック内にガスを採取する方法において、前記サンプルボックスの内容積は、前記サンプルバックの規定容積以下であることを特徴とするガスの採取方法。
【請求項2】
吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバック内にガスを採取する方法において、前記サンプルボックス内に、排気管に接続された第二のサンプルバックを収容し、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックはガスを内包して収容され、該第二のサンプルバックのガスを排出することで、前記第一のサンプルバックにガスを採取することを特徴とするガスの採取方法。
【請求項3】
吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバック内にガスを採取する方法において、前記サンプルボックス内に、排気管に接続された第二のサンプルバックを収容し、該サンプルボックス外に、前記排気管に接続して第三のサンプルバックを配し、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックはガスを内包して収容され、該第二のサンプルバックのガスを前記排気管により前記第三のサンプルバックに移送することにより、前記第一のサンプルバックにガスを採取することを特徴とするガスの採取方法。
【請求項4】
前記第二のサンプルバックの容積は、前記第一のサンプルバックの規定容積以下であることを特徴とする請求項2又は3記載のガスの採取方法。
【請求項5】
前記第三のサンプルバックの容積は、前記第二のサンプルバックの規定容積以下であることを特徴とする請求項3記載のガスの採取方法。
【請求項6】
吸気管に接続されたサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記サンプルバック内にガスを採取する装置において、前記サンプルボックスは、ガスを排出するための排気手段を備えた排気管に接続されると共に、該サンプルボックス内の容積が、前記サンプルバックの規定容積以下であることを特徴とするガスの採取装置。
【請求項7】
吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバック内にガスを採取する装置において、前記サンプルボックス内に、排気手段を備えた排気管に接続された第二のサンプルバックを収容すると共に、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックはガスを内包して収容されており、前記第二のサンプルバックのガスを排気手段により排出することで、前記第一のサンプルバックにガスを採取するように構成したことを特徴とするガスの採取装置。
【請求項8】
吸気管に接続された第一のサンプルバックを機密性のある構造のサンプルボックス内に収容し、該サンプルボックス内のガスを排出することで、前記第一のサンプルバックにガスを採取する装置において、前記サンプルボックス内に、排気手段を備えた排気管に接続された第二のサンプルバックを収容し、該サンプルボックス外に、前記排気管に接続して第三のサンプルバックを配備すると共に、前記第一のサンプルバックはガスを内包せずに収容され、前記第二のサンプルバックは、ガスを内包して収容されており、前記第二のサンプルバックのガスを前記排気管により前記第三のサンプルバックに回収することにより、前記第一のサンプルバックにガスを採取するように構成したことを特徴とするガスの採取装置。
【請求項9】
前記吸気管、サンプルバック、サンプルボックス、排気管及び排気手段は、それぞれ脱着可能であり、前記サンプルボックスは、開閉してサンプルバックが交換可能でかつ機密性を保持する構造であることを特徴とする請求項6、7又は8記載のガスの採取装置。
【請求項10】
前記サンプルボックスは、排気手段による減圧では変形しない構造であることを特徴とする請求項6、7又は8記載のガスの採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−270906(P2009−270906A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121018(P2008−121018)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】