説明

ガスクラスレート製造方法及び装置

【課題】原料ガスがクラスレートに転換される割合を十分に高めることができるガスクラスレート製造方法および装置を提供する。
【解決手段】原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を前記反応管路の途中で破砕するガスクラスレート凝集体破砕工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば天然ガスなどの原料ガスと原料液(淡水、海水、不凍液、液体ホスト物質、ホスト物質溶液等)とを反応させてガスクラスレート(ホスト物質が水の場合にはガスハイドレートをいうが、本明細書においてガスクラスレートという場合にはガスハイドレートを含む。)を製造するガスクラスレートの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクラスレートは、水分子が構成する籠状構造の内部に天然ガス、二酸化炭素などの気体分子を高濃度に包蔵する氷状の物質である。ガスクラスレート、主にガスハイドレートは、単位体積当たり多量の気体を包蔵でき、しかも、液化天然ガスに比較して、大気圧下比較的高温にて貯蔵・輸送できることから、天然ガス等の輸送、貯蔵への応用が注目されている。
このため、従来は天然に存在するガスクラスレートの利用に関する検討が中心であったが、近年この性質に着目してこれを工業的に製造する試みが行われている。
【0003】
ガスクラスレートの工業的な製造方法として、原料ガスを微細気泡状にしてライン途中で原料水と混合して原料ガスを原料水に溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスハイドレートを生成する工程とを備えたガスハイドレート製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
このガスハイドレート製造方法は、原料水へのガス拡散・溶解と生成反応熱の除去を効率よく行うことができ、かつ装置を単純でコンパクトにできるというものである。
【特許文献1】特開2002−356685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスクラスレートの製造工程において、ガスクラスレートの生成速度を規律する重要なファクタとしてガスの原料水への拡散溶解速度が挙げられる。
この点、上記特許文献1において提案された方法においては、ガスの原料水への拡散溶解速度を増すために、原料ガスを微細気泡状にして原料ガスと原料水との接触面積を大きくしている。
【0005】
ところが、微細気泡流方式でガスクラスレートを生成する場合、原料ガスと原料液の界面、すなわち微細気泡の外周面でガスクラスレートが生成し、これが外周面全体を覆って殻状クラスレートが生成されることが考えられる。殻状クラスレートが生成されると、殻の内部の原料ガスが周囲の原料液との接触を妨げられ、ガスクラスレート生成反応がそれ以上進行しないおそれがある。
また、上記のように規則正しく殻状クラスレートが生成される場合以外でも、ガスクラスレート同士が凝集してその凝集したクラスレートの隙間に原料ガスが閉じ込められることも考えられ、この場合も上述したのと同様に、内部に閉じ込められた原料ガスと原料液との接触が妨げられ、生成反応がそれ以上進行しないおそれがある。
このため、殻状クラスレート内部の原料ガスやガスクラスレート凝集体(本明細書において、殻状クラスレートおよびガスクラスレート凝集体の両方を含む概念として「ガスクラスレート凝集体」という)の隙間に閉じ込められた原料ガスは未反応のままで残るので、微細気泡として供給した原料ガスがクラスレートに転換される割合(転換率)を十分に高めることができないという問題がある。
【0006】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、原料ガスがクラスレートに転換される割合を十分に高めることができるガスクラスレート製造方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題は、一旦生成したガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を破砕して内部の原料ガスを原料液中に解放し、解放したガスを再び反応管路に流してクラスレート生成反応を更に進行させることで解決できる。
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下の構成を有する。
【0008】
(1)本発明に係るガスクラスレート製造方法は、原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を前記反応管路の途中で破砕するガスクラスレート凝集体破砕工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を抜き出して破砕するガスクラスレート凝集体抽出・破砕工程と、破砕されたガスクラスレート凝集体および解放されたガスを前記反応管路に注入するガスクラスレートおよびガス注入工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、破砕されたガスクラスレート凝集体から解放されたガスを微細気泡にすることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されたガスクラスレート凝集体を抜き出して前記混合・溶解工程に供される原料液中に注入するガスクラスレート注入工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(5)本発明に係るガスクラスレート製造装置は、原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する装置において、原料液と原料ガスとをライン途中において混合して原料ガスの微細気泡を発生させて原料水に溶解させる微細気泡発生器と、混合・溶解された原料液と原料ガスの混合物を冷却する反応管路と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を前記反応管路の途中で破砕するガスクラスレート凝集体破砕装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する装置において、原料液と原料ガスとをライン途中において混合して原料ガスの微細気泡を発生させて原料水に溶解させる微細気泡発生器と、混合・溶解された原料液と原料ガスの混合物を冷却する反応管路と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を抽出するガスクラスレート抽出装置と、抽出されたガスクラスレート凝集体を破砕するガスクラスレート凝集体破砕装置と、破砕されたガスクラスレート凝集体および解放されたガスを前記反応管路に注入するガスクラスレートおよびガス注入装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
(7)上記(6)に記載のガスクラスレート抽出装置は、反応管路の下流側の流路における鉛直方向上部側に設けられた分岐管と、該分岐管に設けられたポンプと、を備えてなることを特徴とするものである。
なお、流路の鉛直方向上部側とは、分岐管の中心が反応管路下流側の流路の中心よりも鉛直方向上方にあることを意味する。
【0015】
(8)上記(6)に記載のガスクラスレート抽出装置は、ガスクラスレート抽出装置は、密度差を利用した濃縮装置を備えてなることを特徴とするものである。
【0016】
(9)また、上記(5)〜(8)のいずれかに記載のものにおいて、破砕されたガスクラスレート凝集体から解放されたガスを微細気泡にする微細気泡生成装置を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
(10)また、原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する装置において、原料液と原料ガスとをライン途中において混合して原料ガスの微細気泡を発生させて原料水に溶解させる微細気泡発生器と、混合・溶解された原料液と原料ガスの混合物を冷却する反応管路と、生成されたガスクラスレートによって形成されたガスクラスレート凝集体を前記微細気泡発生器の上流側に戻すガスクラスレート再循環路と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を破砕して内部の原料ガスを解放し、解放したガスを再び反応管路に流すようにしたので、クラスレート生成反応を更に進行させることができ、生成効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態の主要な構成機器を示した系統図である。まず、図1に基づいて本実施の形態の構成機器について説明する。なお、以下の説明では、天然ガスの新たな輸送、貯蔵媒体として注目されている天然ガスハイドレート(原料ガスが天然ガス、原料液が水(淡水または海水))の場合(以下、単に「ハイドレート」という。)について説明する。
本実施の形態のハイドレート製造装置は、天然ガス等の原料ガスの圧力を昇圧するガス昇圧機1、原料水を昇圧供給する原料水ポンプ3、5、原料水と原料ガスを混合して原料ガスを原料水に溶解させるラインミキサー7、ラインミキサー7でミキシングされたものを流しながら冷却してハイドレートを生成する反応管路9、反応管路9を冷却する冷却装置としてのチラー11、を備えている。
また、反応管路で生成されたハイドレートによって形成されるハイドレート凝集体を反応管路9に戻すことによってハイドレートの一部を再循環させるハイドレート再循環装置15を有している。
さらに、生成されたハイドレートの後処理を行う後処理装置17が設けられている。
各構成機器は図中矢印を付した実線で示した配管によって連結されている。
なお、図1においては図面の複雑化を避けるために各種の制御弁等は省略してある。
【0020】
上記の各構成機器のうち主要なものの構成をさらに詳細に説明する。
<ラインミキサー>
本実施の形態のラインミキサー7は、図2(西華産業株式会社「OHRラインミキサー」カタログ第7頁より引用)に示すように、入り口側が大径で出口側が小径になった2段状の筒状体21からなり、この筒状体21の大径部21a中にガイドベーンと呼ばれる翼体23を有し、その先の小径部21b内に筒の内周面から中央に延びる複数のキノコ状の衝突体25を有している。
このようなラインミキサー7においては、原料水ポンプ3によってラインミキサー7に供給された原料水が翼体23によって旋回流となり、猛烈な遠心力によって外側へ押しやられ、それがキノコ状の衝突体25によってさらに強烈に攪拌され、その中に原料ガスが巻き込まれて超微細な気泡群に砕かれ、原料水と原料ガスとが混合される。これによって、原料ガスと原料水との接触面積が大きくなり原料ガスは原料水に効率よく溶け込む。
【0021】
なお、微細気泡発生器としては、ラインミキサー7に代えて、ベンチュリ管を用いてもよいし、またガスを微細気泡化できるその他の装置を用いることができる。
【0022】
<反応管路>
反応管路9は単数または複数の屈曲した管からなり、この管の周面をチラー11で冷却するようになっている。このように、反応管路9を用いたことで、周囲からの冷却を効率よく行えるので、装置の構成が単純かつコンパクト化できる。
反応管路9の具体例としては、原料ガスと原料液が流れる管路の周囲に冷媒が流れる通路を形成した二重管熱交換器や、シェル・アンド・チューブ熱交換器(多管円筒式熱交換器)などがある。
【0023】
<ハイドレート再循環装置>
ハイドレート再循環装置15は既に生成されたハイドレートによって形成されるハイドレート凝集体を反応管路内に戻して再循環させるための装置である。この実施形態におけるハイドレート再循環装置15は、一端が反応管路9の下流側の抜出管40に接続され、他端側が反応管路9の途中に接続されてハイドレート凝集体の一部を反応管路9に戻す戻り配管51と、該戻り配管51に設けられてハイドレート凝集体を反応管路側に送るポンプ53と、該戻り配管51に設けられてポンプ53によって送られたハイドレート凝集体を破砕すると共に破砕によって解放されたガスを微細気泡化するハイドレート破砕・気泡微細化器55を主な構成として備えている。
【0024】
戻り配管51における反応管路9との接続位置は、好ましくは反応管路内流体の過冷却度が4℃以下、より好ましくは2℃以下となる位置である。戻り配管51をこの位置に接続することにより、破砕されたハイドレートがこの位置で注入されることになる。この位置は過冷却状態であることから注入されたハイドレートを結晶核としてハイドレートの生成が始まる。詳細は後述する。
【0025】
戻り配管51側に戻すハイドレート凝集体の量はポンプ53の流量によって調整できる。
ハイドレート破砕・気泡微細化器55は、ハイドレート凝集体を破砕すると共に破砕によって解放されたガスを微細気泡化する。
このような、ハイドレート破砕・気泡微細化器55の具体例としては、前述の微細気泡発生器と同様のもの、すなわちラインミキサーやベンチュリ管などを用いることができ、このようなものを用いた場合には一つの装置でハイドレート凝集体の破砕と解放されたガスの気泡微細化を実現することができる。これらの装置における破砕と気泡微細化のメカニズムは以下の通りである。
ラインミキサーを用いた場合には、激しい剪断によってハイドレートが破砕されると同時に解放されたガスも剪断によって微細気泡化される。
また、ベンチュリ管を用いた場合には、低圧部において殻状ハイドレートや凝集体隙間の内圧によって破砕され、解放されたガスはベンチュリ管内の急激な圧力回復部の衝撃で微細気泡化される。
【0026】
<後処理装置>
後処理装置17は、生成されたハイドレート、未反応ガス、未反応水の混合物からハイドレート、未反応ガス、未反応水を分離する分離装置、分離装置で分離脱水処理されたハイドレートを集塊化する集塊化装置、集塊化されたハイドレートを−15℃程度の温度で凍結処理する凍結処理装置を含む。
【0027】
次に、上記のように構成された本実施の形態の装置によってハイドレートを製造する製造工程を説明する。
天然ガス等の原料ガスの圧力をガス昇圧機1によってハイドレート生成に十分な所定の圧力に昇圧する。また、原料水(分離装置で分離された未反応水および/または補給水)も原料水ポンプ3によって所定の圧力に昇圧する。これら、昇圧された原料ガスと原料水を図示しないクーラーによって冷却し、それぞれラインミキサー7に供給する。
ラインミキサー7に供給された原料ガスと原料水とは、前述したメカニズムによって猛烈な勢いで混合される。このとき、原料ガスは微細気泡となって原料水の中に混じり込み、原料ガスの溶解が促進される。
【0028】
原料水に原料ガスが溶け込んだもの(未溶解の微細気泡も含んだ状態のもの)が反応管路9に送られ、チラー11によって冷却され、原料水に混合・溶解された原料ガスのハイドレート化が開始される。
反応管路9の出口では抜出管40に接続された戻り配管51に反応管路出口の流体(ハイドレート、未反応ガス、未反応水の混合物)の一部が送られる。この混合物の中のハイドレートはハイドレート凝集体を形成しており、未反応のガスを閉じ込めた状態にある。混合物をハイドレート破砕・気泡微細化器55に供給すると、ハイドレート凝集体が破砕され、閉じ込められていたガスが解放されると共に解放されたガスが未反応水中に微細気泡となって混合・溶解する。これが再び反応管路9の途中に戻されるので、解放されたガスのハイドレート化が可能となり、ハイドレートへの転換効率が向上する。
【0029】
また、ハイドレート凝集体を破砕して反応管路9に戻すことはハイドレート転換効率の向上という効果に加えて、反応管路9の閉塞防止という効果もある。この点を以下説明する。なお、反応管路9の閉塞防止効果をより効果的に期待するためには、前述したように、反応管路9の途中、過冷却度が4℃以下の位置に戻すのが好ましい。
ハイドレートが反応管路9に戻されると、これが結晶核となって、原料水に混合・溶解された原料ガスのハイドレート化が開始される。
【0030】
このときの過冷却度は4℃以下であり、比較的過冷却度が小さいため、生成反応は急激ではなく緩やかに進行する。しかも、注入した結晶核は反応管路断面の全体に行き渡り、この結晶核によってハイドレート化が進行するため、反応管路断面内で最も過冷却度が大きい反応管路壁面だけではなく、壁から十分に離れた反応管路中央部でも生成反応が進行することになる。
このように、生成反応自体が緩やかであることから、大量のハイドレートが急激に生成することによる反応管路9の閉塞が防止される。
また、反応管路断面内の全領域でハイドレートが生成されるので、反応管路断面内で過冷却度が最大である壁面とその極めて近傍でハイドレートが集中的に生成することによる壁面への付着、成長による閉塞も防止される。
【0031】
反応管路9の出口において、戻り配管51にもどされなかったハイドレート、未反応ガスは後処理装置17に送られて後処理がなされる。後処理装置で分離されたハイドレートは、その装置内または別な装置において更に脱水、安定化、成型等の処理が加えられ、次の工程に移される。
後処理装置17で分離された未反応水はポンプ5によって再び微細気泡発生器7に送られ原料水となる。
また、後処理装置17で分離した未反応ガスは図示しない配管を経由して図示しない昇圧装置によって昇圧後、再び微細気泡発生器7に供給される。
【0032】
以上のように本実施の形態においては、ハイドレート凝集体を破砕してハイドレート凝集体内に封じ込められていたガスを解放して再び反応管路9に戻すようにしたので、本発明を用いなければ殻状ハイドレートの内部やハイドレート凝集体の隙間に未反応のまま残っていたガスをハイドレート化することが可能となり、原料ガスのハイドレート転換率が向上する。
【0033】
また、反応管路9に破砕したハイドレートを戻すようにしたので、比較的小さい過冷却度でハイドレート生成反応を緩やかに進行させることができ、また、反応管路断面内で最も低温で過冷却度が大きい壁面、あるいはその極めて近傍だけではなく、管路断面中心部においてもハイドレート生成反応を進行させることができる。
その結果、反応管路9の閉塞を防止することが可能となり、微細気泡流方式の特長を最大限に発揮させることが可能となる。
【0034】
なお、上記の実施の形態においては、原料水の種類を明示しなかったが、例えば、淡水、海水、不凍液等が考えられる。また、原料水に代えて、液体ホスト物質やホスト物質溶液のような原料液を用いることも考えられる。その場合に生成される物質の名称はガスハイドレートではなく、ガスクラスレートであることは言うまでもない。
【0035】
なお、反応管路出口で流体の一部を抜き出す際に、抜出配管40の比較的上部から抜き出すようにすれば、本発明の効果を一層高めることができる。
すなわち、殻状ハイドレートや隙間に未反応ガスが閉じ込められているハイドレート凝集体は、内部や隙間にガスあるため、そうでないハイドレートよりも見かけの密度が小さく、配管内では重力によって比較的上部に多く集まり、また、そのような閉じ込められたガス以外の未反応ガスも配管上部に多く存在するため、それらも再びハイドレート破砕・気泡微細化器55に導かれて微細気泡化され、再び反応管路を流れてハイドレート化されることになるからである。
【0036】
また、上述した抜出配管40の比較的上部から抜き出すのと同様の効果は、抜出部に密度差を利用した濃縮器(例えば遠心力による濃縮器)を設けることによっても実現できる。
濃縮装置は、反応管路の出口を流れ出るハイドレート、未反応ガス、未反応水の混合物から主として未反応水を分離できるものであればよい。このようなものとしては、例えば旋回流方式の濃縮装置を用いることができる。
図3は、旋回流方式の濃縮装置の説明図である。図3に基づき、同装置の機能を概説する。
ハイドレート、未反応ガス、未反応水の混合物は接線流入管31から流入部大径円筒33の接線方向に流入し、その流入部大径円筒33内で旋回流が形成される。その後、ハイドレート、未反応ガス、未反応水の混合物は漸縮小管35を通過することにより、旋回流が強化され、旋回流管路37内には自由渦成分の大きい強力な旋回流が形成される。
【0037】
旋回流が形成されると、水よりも比重が小さいハイドレートや未反応ガスが中心付近に集中し、この集中したハイドレート、未反応ガスは旋回流管路37内に設けた同心の下流側抜出管39から抜き出される。このように、下流側抜出管39から抜き出されたものの一部を戻り配管51に戻し、残りを後処理装置17に送るようにする。
他方、ハイドレート、未反応ガスから分離された未反応水は旋回流管路37の下流側側壁に設けられた下流側抜出管41から排出されて、図示しないポンプによって再び微細気泡発生器7に送られ原料水となる。
【0038】
なお、濃縮装置を用いることにより、ハイドレート、未反応ガス、未反応水の混合物から未反応水を分離して、微細気泡発生器7側に戻すことができるので、後処理装置17(特に脱水部分)の大きさや処理容量を減少させることができ、後処理装置17の負荷を軽減でき、設備をコンパクトにできるという効果もある。
【0039】
[実施の形態2]
図4は本発明の実施の形態2の説明図であり、実施の形態1と同一部分または相当部分には同一の符号が付してある。
本実施の形態においては、ハイドレート再循環装置15における戻り配管51をラインミキサー7の上流側に接続し、実施の形態1におけるハイドレート破砕・気泡微細化器55を省略したものである。
【0040】
本実施の形態においては、微細気泡発生器7が実施の形態1におけるハイドレート破砕・気泡微細化器55として機能する。したがって、別途ハイドレート破砕・気泡微細化器55を設置する必要がないので、装置構成を単純化できるという効果がある。
【0041】
なお、上記の実施の形態においては、一旦反応管路9を通過した後にハイドレート凝集体を抜き出して再び反応管路に戻すようにしたが、反応管路9の途中にハイドレート破砕・気泡微細化器を設置することによって、反応管路9の途中でハイドレート凝集体の破砕と気泡微細化を行うようにしてもよい。このように、反応管路9の途中にハイドレート破砕・気泡微細化器を設置する方式は、これ単独で行ってもよいし、実施の形態1、2と併用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係る装置構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るラインミキサ−の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いる濃縮装置の説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る装置構成の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
7 微細気泡発生器、9 反応管路、11 チラー、13 濃縮装置、15 ハイドレート再循環装置、51 戻り配管、53 ポンプ、55 ハイドレート破砕・気泡微細化器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を前記反応管路の途中で破砕するガスクラスレート凝集体破砕工程と、を備えたことを特徴とするガスクラスレート製造方法。
【請求項2】
原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を抜き出して破砕するガスクラスレート凝集体抽出・破砕工程と、破砕されたガスクラスレート凝集体および解放されたガスを前記反応管路に注入するガスクラスレートおよびガス注入工程と、を備えたことを特徴とするガスクラスレート製造方法。
【請求項3】
破砕されたガスクラスレート凝集体から解放されたガスを微細気泡にすることを特徴とする請求項1または2に記載のガスクラスレート製造方法。
【請求項4】
原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する方法において、原料ガスを微細気泡にして原料液に混合・溶解させる混合・溶解工程と、混合・溶解されたものを反応管路に流しながら冷却してガスクラスレートを生成するガスクラスレート生成工程と、生成されたガスクラスレートによって形成されたガスクラスレート凝集体を抜き出して前記混合・溶解工程に供される原料液中に注入するガスクラスレート注入工程と、を備えたことを特徴とするガスクラスレート製造方法。
【請求項5】
原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する装置において、原料液と原料ガスとをライン途中において混合して原料ガスの微細気泡を発生させて原料水に溶解させる微細気泡発生器と、混合・溶解された原料液と原料ガスの混合物を冷却する反応管路と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を前記反応管路の途中で破砕するガスクラスレート凝集体破砕装置と、を備えたことを特徴とするガスクラスレート製造装置。
【請求項6】
原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する装置において、原料液と原料ガスとをライン途中において混合して原料ガスの微細気泡を発生させて原料水に溶解させる微細気泡発生器と、混合・溶解された原料液と原料ガスの混合物を冷却する反応管路と、生成されたガスクラスレートによって形成されるガスクラスレート凝集体を抽出するガスクラスレート抽出装置と、抽出されたガスクラスレート凝集体を破砕するガスクラスレート凝集体破砕装置と、破砕されたガスクラスレート凝集体および解放されたガスを前記反応管路に注入するガスクラスレートおよびガス注入装置と、を備えたことを特徴とするガスクラスレート製造装置。
【請求項7】
ガスクラスレート抽出装置は、反応管路の下流側の流路における鉛直方向上部側に設けられた分岐管と、該分岐管に設けられたポンプと、を備えてなることを特徴とする請求項6に記載のガスクラスレート製造装置。
【請求項8】
ガスクラスレート抽出装置は、密度差を利用した濃縮装置を備えてなることを特徴とする請求項6に記載のガスクラスレート製造装置。
【請求項9】
破砕されたガスクラスレート凝集体から解放されたガスを微細気泡にする微細気泡生成装置を備えたことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載のガスクラスレート製造装置。
【請求項10】
原料液と原料ガスとを反応させてガスクラスレートを製造する装置において、原料液と原料ガスとをライン途中において混合して原料ガスの微細気泡を発生させて原料水に溶解させる微細気泡発生器と、混合・溶解された原料液と原料ガスの混合物を冷却する反応管路と、生成されたガスクラスレートによって形成されたガスクラスレート凝集体を前記微細気泡発生器の上流側に戻すガスクラスレート再循環路と、を備えたことを特徴とするガスクラスレート製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−332064(P2007−332064A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164218(P2006−164218)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、石油・天然ガス開発・利用促進型特別研究提案公募事業、「天然ガス有効利用技術」に関する共同研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】