ガスケット締結体の長期特性予測方法
【課題】ガスケット締結体としての将来のシール性を、比較的短い期間で予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【解決手段】内部流体を密封するために用いられるガスケット締結体において、ガスケットと、該ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成された前記ガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するガスケット締結体の長期特性予測方法であって、環境条件設定手順S1と、材料条件設定手順S2と、FEA手順S4と、を有し、環境設定手順S1において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの圧縮特性における温度依存性を考慮するとともに、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮するように構成した。
【解決手段】内部流体を密封するために用いられるガスケット締結体において、ガスケットと、該ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成された前記ガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するガスケット締結体の長期特性予測方法であって、環境条件設定手順S1と、材料条件設定手順S2と、FEA手順S4と、を有し、環境設定手順S1において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの圧縮特性における温度依存性を考慮するとともに、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管フランジ、圧力容器のマンホール、バルブのボンネットなどに用いられるガスケットの将来のシール性を、有限要素解析により予測計算するガスケットの長期特性予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管フランジのフランジ部、圧力容器のマンホール部、バルブのボンネット部などの部材間の接合部には、構造に気密性、水密性を持たせるために、ガスケットが用いられる。ガスケットは、長期間の使用によりそのシール性が低下するため、定期的に増し締め等のメンテナンスや、ガスケットの交換を行う必要があるが、このガスケットの交換周期は、これまでの使用実績に基づく経験則によって決められている場合が殆どであり、ガスケットの正確な寿命を把握して決められたものではない。
【0003】
近年、石綿規制により、非石綿製ガスケットの使用が急速に拡大しているが、これら非石綿製ガスケットにおいては、使用実績が少ないため、適当な交換周期を決定するのが困難である。このため、非石綿製ガスケットにあっては、長期使用に対する安全性を考慮して、比較的短い周期でガスケットの交換が行われているのが現状であり、これまでの経験則に代わるガスケット交換周期を設定する方法として、ガスケットの長期特性を予測する方法を構築することが強く望まれていた。
【0004】
非特許文献1には、石綿ジョイントシートガスケットにおける高温寿命評価方法として、高温下で使用される石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法が、本出願人により開示されている。
【0005】
この非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法は、評価対象である石綿ジョイントシートガスケットに対し、応力緩和試験および密封限界応力確認試験を行って、ガスケットの寿命を予測する方法であり、その内容は、概ね以下のとおりである。
【0006】
すなわち、応力緩和試験として、所定の圧縮力を作用させたガスケットを200℃に加熱し、この所定の圧縮力が作用した、200℃に加熱された状態のガスケットの残留応力を1000時間にわたり測定する。そして、測定された残留応力の経時変化を、図13に示したように、ガスケットの残留応力を線形軸、時間を対数軸とした片対数グラフに整理する。そして、片対数グラフに整理されたガスケットの残留応力と、時間軸とは、直線関係にあるとの経験則を適用することで、図14に示したような応力緩和線を描き、これにより、ガスケットの将来の残留応力を予測する。
【0007】
また、応力緩和試験とは別に、密封限界応力確認試験を行って、シール基準を超えない最小ガスケット応力の経時変化を測定する。具体的には、所定の圧縮力を作用させたガスケットを、所定の時間、例えば、100時間、500時間、1000時間にわたって、200℃で加熱する。そして、これら所定の時間加熱された各ガスケットについて、ガスケットに作用させた圧縮力を段階的に除去し、この除荷過程におけるガスケットの残留応力と、ガスケットからの漏洩量とを測定して、ガスケットからの漏洩量が、予め定めたシールの判定基準値となる際のガスケットの残留応力を、シール基準を超えない最小ガスケット応力と把握する。こうして把握したシール基準を超えない最小ガスケット応力を、ガスケットの残留応力を線形軸、時間を対数軸とした片対数グラフに整理して、密封限界応力の経時変化曲線を描く。
【0008】
そして、密封限界応力確認試験により把握したシール基準を超えない最小ガスケット応力の経時変化と、応力緩和試験により予測した将来のガスケットの残留応力とを対比することで、ガスケットの寿命を推定する。具体的には、図15に示したように、応力緩和試験により予測したガスケットの残留応力(応力緩和線)と、密封限界応力試験により把握したシール基準を超えない最小ガスケット応力(経時変化曲線)との交点、図15では約18年、をガスケットの寿命と推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山中 幸、"バルカー技術誌2003年秋号第10〜14頁"、[online]、日本バルカー工業株式会社、[平成20年6月18日検索]、インターネット<URL:http://www.valqua.co.jp/products/download/pdf/technews/vtn007.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、ガスケットの応力緩和試験を行って、ガスケットの将来の応力を推定するため、ガスケット挟持体を含めたガスケット締結体としてのシール性を評価することは出来なかった。すなわち、管フランジのフランジ部などのガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響を考慮することは出来なかった。
【0011】
また、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、実機の様々な使用条件に対応した寿命評価を行うことは出来なかった。すなわち、現実のガスケットの使用状態では、ガスケットにより密封された内部流体の温度や圧力は、内部流体の運転サイクル等により変化するため一定ではないが、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、内部流体の運転サイクル等に対応したガスケットの使用条件を考慮することはできなかった。
【0012】
また、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、ガスケットの残留応力に関する長期間のデータ収集が必要であり、応力緩和試験の試験期間として少なくとも1000時間(約42日)、好ましくはより長期の試験期間が必要となる。このデータ収集期間が短いと、ガスケットの残留応力の経時変化を精度よく予測することができないことから、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、ガスケットの寿命を予測するのに長い期間が必要であった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたものであって、管フランジのフランジ部などのガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響などを考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、内部流体の運転サイクル等、実機の様々な使用条件を考慮することができ、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、比較的短い期間で、ガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法は、
内部流体を密封するために用いられるガスケット締結体において、
ガスケットと、該ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成された前記ガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するガスケット締結体の長期特性予測方法であって、
有限要素解析に用いる入力条件として、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する環境条件設定手順と、
有限要素解析に用いる入力条件として、ガスケット締結体の材料条件を設定する材料条件設定手順と、
前記環境条件および材料条件を用いて、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算するFEA手順と、を有し、
前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの圧縮特性における温度依存性を考慮するとともに、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮することを特徴とする。
【0017】
このように構成することによって、ガスケットと、ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成されたガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するため、ガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響を考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することができる。
【0018】
また、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算するため、従来の方法と比べて、比較的短い期間でガスケットの将来のシール性を予測することができる。
【0019】
上記発明において、有限要素解析に用いる入力条件として、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件設定手順を有し、
前記FEA手順において、前記運転条件も用いることが望ましい。
【0020】
このように構成することによって、有限要素解析に用いる入力条件として、所定時間経過後に、環境条件および材料条件を再設定するとの運転条件設定手順を有するため、実機の様々な使用条件を考慮することができ、実際の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0021】
また、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件を考慮することができるため、最適な増し締め時期の検討など、効率的なメンテナンス方法についても検討することができる。
【0022】
また、上記発明において、前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定するとの運転サイクル条件を含むことが望ましい。
【0023】
このように構成することによって、ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定するとの運転サイクル条件を含むため、内部流体の運転サイクルが考慮された、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0024】
また、上記発明において、前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後にガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を含むことが望ましい。
【0025】
このように構成することによって、ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後にガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を含むため、ガスケット締結体の増し締め条件が考慮された、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0026】
また、上記発明においては、前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの材料条件の一つとして、クリープひずみ速度を下記式(1)により設定することが望ましい。
【0027】
εc=A・σn・tm (1)
(ここで、εcはクリープひずみ速度、σは応力、tは時間、A,n,mは実験により求
める定数である)
このように構成することによって、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を有限要素解析に適した数式として考慮することができるため、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮して、有限要素解析により、ガスケット応力の経時変化を計算することができる。
【0028】
また、上記発明において、前記ガスケット締結体が、ガスケットと、該ガスケットを挟持するフランジ部を備える管フランジと、該フランジ部同士を締結するボルトにより構成されていることが望ましい。
【0029】
このように構成することによって、ガスケットと、ガスケットを挟持するフランジ部を備える管フランジと、フランジ部同士を締結するボルトから構成されたガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析により予測計算するため、管フランジのフランジ部およびボルトの応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響を考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することができる。
【0030】
また、上記発明において、ガスケットに所定の荷重を載荷した後、徐々にガスケットの応力を減少させる除荷過程におけるガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定するシール性評価手順を有し、
前記シール性評価手順により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力と、前記FEA手順により計算したガスケット応力の経時変化とを対比して、ガスケットの寿命を予測することが望ましい。
【0031】
このように構成することによって、実機の使用態様に即したガスケットの寿命を予測することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、管フランジのフランジ部などのガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響などを考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、内部流体の運転サイクル等、実機の様々な使用条件を考慮することができ、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、比較的短い期間で、ガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法の基本的な手順を示したフロー図である。
【図2】本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法を示した概念図である。
【図3】本発明のガスケット締結体を示した部分破断斜視図である。
【図4】本発明のガスケットの応力−ひずみの関係を示したグラフである。
【図5】本発明のガスケットのクリープひずみの経時変化を示したグラフである。
【図6】本発明のガスケットの線膨張率−温度の関係を示したグラフである。
【図7】本発明のガスケットの比熱−温度の関係を示したグラフである。
【図8】図3のa部におけるガスケット締結体の有限要素モデルを示した図である。
【図9】有限要素解析の境界条件を示した図である。
【図10】有限要素解析により計算したガスケットの応力の経時変化を示したグラフである。
【図11】シール性評価試験装置の概要図である。
【図12】シール性評価にかかる実験結果を示したグラフである。
【図13】非特許文献1のガスケット応力の経時変化を示した図である。
【図14】非特許文献1のガスケット応力の応力緩和曲線を示した図である。
【図15】非特許文献1のガスケットの寿命を予測する方法を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、以下に説明した発明の実施の形態に限定されるものではない。
【0037】
図1は、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法の基本的な手順を示したフロー図、図2は、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法を示した概念図である。
【0038】
本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、図1に示したように、先ず、有限要素解析(Finite Element Analysis、以下FEAと称する場合もある)に用いる条件を設定するため、環境条件設定手順S1において、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する。また、材料条件設定手順S2において、少なくとも、ガスケット締結体の材料条件を設定する。さらに、運転手順設定手順S3において、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件を設定する。
【0039】
次に、FEA手順S4において、前述したS1〜S3で設定した環境条件、材料条件、及び運転条件を用いて、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算する。
【0040】
また、シール性評価手順S5において、ガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定する。なお、シール性評価手順S5は、図1のフロー図では、FEA手順S4の後に実施することになっているが、FEA手順S4と同時に実施してもよく、また、FEA手順S4の前に実施してもよい。
【0041】
そして、シール性評価手順S5により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力と、FEA手順S4により計算したガスケット応力の経時変化とを対比して、ガスケットの寿命を予測する。具体的には、図2に示したように、シール性評価手順S5により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力を示す線Bと、FEA手順S4により計算したガスケット応力の経時変化を示す線Aとを、縦軸をガスケット応力、横軸を時間としたグラフにプロットし、線Aと線Bとの交点をガスケットの寿命と推定する。
【0042】
以下、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法の説明として、環境条件設定手順S1、材料条件設定手順S2、運転手順設定手順S3、FEA手順S4、およびシール性評価手順S5について、詳細に説明する。
[環境条件設定手順S1]
環境条件設定手順S1では、有限要素解析に用いる環境条件として、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する。
【0043】
図3は、本発明のガスケット締結体を示した部分破断斜視図である。
【0044】
本発明におけるガスケット締結体とは、ガスケットと、ガスケットを挟持する挟持体とから構成されており、この挟持体は、一体または別体として、この挟持部同士を締結する締結手段を備えている。
【0045】
本実施例では、ガスケット締結体1は、図3に示したように、ガスケット2と、ガスケット2を挟持するフランジ部4aを備える管フランジ4とから構成され、管フランジ4は、別体として、フランジ部4a同士を締結するボルト6を備えており、管フランジ4の内部には内部流体が密封されている。
【0046】
本発明におけるガスケットの材質は、特に限定されず、例えば、石綿、メタル、ゴム、黒鉛、フッ素樹脂などを含む材料のものを好適に使用することができる。また、本発明は、例えば、渦巻き形ガスケットのように、2以上の材質を組み合わせて形成されたガスケットに対しても、適用可能である。本発明における特に好ましいガスケットの材質は、耐熱性に優れ、材料劣化が少なく、したがって、ガスケット応力の経時変化が、主としてガスケットのクリープ特性に依存する材質であり、例えば、フッ素樹脂やメタルなどを挙げることができる。
【0047】
本実施例では、ガスケット2は、主に黒鉛、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるガスケットであるGF300(日本バルカー工業社製品、厚さ3mm)を使用し、ガスケット2の締付け時の初期応力は35MPaと設定した。
【0048】
また、本発明における管フランジ4およびボルト6の寸法は、特に限定されるものではない。本実施例では、JIS規格の鋼製管フランジを使用することとし、管フランジおよびボルトの材質はSS400、管フランジの呼び径は600A、呼び圧力は10Kとし、フランジ部4aの継手形式はRF形とした。
【0049】
また、本発明における内部流体の圧力条件および温度条件は、特に限定されるものではなく、ガスケット締結体1の使用態様に応じて、種々の条件を設定することが可能であるが、本実施例では、内部流体の圧力条件および温度条件として、温度200℃、内圧1MPaの内部流体を作動させる場合を検討した。
【0050】
本実施例において設定した環境条件を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[材料条件設定手順S2]
材料条件設定手順S2では、有限要素解析に用いる材料条件として、ガスケット締結体の材料条件を設定する。
【0053】
図4は、本発明のガスケットの応力−ひずみの関係を示したグラフ、図5は、本発明のガスケットのクリープひずみ速度を示したグラフ、図6は、本発明のガスケットの線膨張率−温度の関係を示したグラフ、図7は、本発明のガスケットの比熱−温度の関係を示したグラフである。
【0054】
図4は、縦軸を応力、横軸をひずみとし、温度が室温、50℃、100℃、200℃の場合のガスケット2の応力−ひずみの関係を表したグラフである。この図4からも分かるように、ガスケット2は、応力が増加する過程において、温度が高くなるほど剛性が低下するという温度依存性を有する。また、応力の増加過程と減少過程とで、応力−ひずみ関係が変化するとのヒステリシス特性を有する。よって、本発明のガスケット締結体1の長期特性予測方法では、ガスケット2の材料条件を設定する際に、ガスケット2の圧縮特性における温度依存性とヒステリシス特性を考慮している。
【0055】
本実施例では、ガスケットの応力増加過程については、このガスケット2の温度依存性およびヒステリシス特性を考慮して、図4に示したように、温度条件毎にヤング率を設定し、ガスケットの応力減少過程ではヤング率を1GPaで一定として設定した。
【0056】
図5は、縦軸をクリープひずみ、横軸を時間とし、ガスケット2を200℃の温度条件下で35.0MPa、25.0MPa、12.5MPaで圧縮した場合のガスケット2のクリープひずみの経時変化を表したグラフである。図5におけるグラフの傾きは、クリープひずみ速度を表わす。この図5からも分かるように、ガスケット2のクリープひずみ速度は、ガスケット応力により変化するという応力依存性を有するため、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、ガスケット2の材料条件を設定する際に、ガスケット2のクリープ特性における応力依存性を考慮している。
【0057】
本実施例では、実験から得られたガスケット2の応力毎のクリープひずみ速度を、バネとダッシュポッドを用いた粘弾性モデルである、三要素粘弾性モデルにモデリングし、応力依存性を考慮した下記式(1)により同定した。有限要素解析には、この式(1)を入力して用いる。なお、図5には、同定した結果として、実験値と式(1)による計算値とを示している。
【0058】
εc=A・σn・tm (1)
ここで、εcはクリープひずみ速度[/s]、σは応力[MPa]、tは時間[s]、A,n,mは実験により求める定数であり、最小二乗法近似により、以下の値を特定した。
【0059】
A=4.96×10-7
n=1.98
m=−0.830
なお、本実施例におけるクリープひずみの実験期間は、図5に示したように、約95000秒(約11日)であり、非特許文献1で行われていた応力緩和試験の試験期間よりも短い期間で実験を行うことが可能である。
【0060】
このように、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を有限要素解析に適した式(1)として考慮することができるため、有限要素解析によりガスケット2の応力の経時変化を計算することができる。
【0061】
また、図6および図7に示したように、本発明のガスケット2の線膨張率および比熱は、温度依存性を有しており、本実施例では、材料条件を設定する際に、このガスケット2の線膨張率および比熱の温度依存性を考慮した。
【0062】
本実施例において設定した環境条件を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
[運転条件設定手順S3]
運転条件設定手順S3では、有限要素解析に用いる運転条件として、所定時間経過後に、環境条件および材料条件を再設定するとの運転条件を設定する。
【0065】
本実施例では、運転条件として、運転サイクル条件および増し締め条件の有無により、4ケース(ケース1〜4)の運転条件を設定した。
【0066】
運転サイクル条件とは、内部流体の運転サイクルに合わせて、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定することである。実機の使用においては、メンテナンス等のため、例えば、1年毎に内部流体の運転を停止して、ガスケット締結体を分解・点検することが行われる。
【0067】
本実施例では、かかる実機の使用態様を考慮すべく、運転条件として、1年毎に内部流体による内圧と温度の作用を停止し、1日後に内部流体の運転を再開する、すなわち、内部流体の内圧を大気圧に、温度を室温に再設定し、1日後に元の条件に戻すとの運転サイクル条件を設定した(ケース2)。
【0068】
増し締め条件とは、ガスケットの増し締めを想定して、所定時間経過後にガスケット応力を再設定することである。実機の使用においては、ガスケットの寿命を延ばすため、初期の締付け後、および所定時間経過後にガスケットを再度締付けて、ガスケットの圧縮応
力を増加させることが行われる。
【0069】
本実施例では、かかる実機の使用態様を考慮すべく、運転条件として、内部流体の運転開始の1日後に、初期締付けに相当するガスケット2の増し締めを行う、すなわち、ガスケット2の初期応力に相当するガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を設定した(ケース3)。
【0070】
なお、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、運転条件として、運転サイクル条件と増し締め条件とを併せて設定することも可能である。
【0071】
本実施例では、内部流体の運転開始後の1日後、および内部流体の運転再開の1日後に、ガスケット2の初期応力に相当するガスケット応力を再設定している(ケース4)。
【0072】
また、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、運転条件を設定せずに、ガスケット締結体の将来のシール性を予測することも可能である。
【0073】
本実施例では、この運転条件を設定しない場合、すなわち、内部流体の運転開始後は、環境条件および材料条件の再設定は行わない場合のガスケット2の寿命についても予測した(ケース1)。
[FEA手順S4]
FEA手順S4では、S1〜S3で設定した環境条件、材料条件、および運転条件を用いて、有限要素解析によりガスケット2の応力の経時変化を計算する。
【0074】
図8は、図3のa部におけるガスケット締結体1の有限要素モデルを示した図、図9は、有限要素解析の境界条件を示した図、図10は、有限要素解析により計算したガスケット2の応力の経時変化を示したグラフである。
【0075】
本実施例では、図8に示したように、ガスケット締結体1を軸対称体と仮定した軸対称モデルとして、有限要素モデルを構築した。また、図8に示したモデル断面では、フランジ部4aにボルト穴がなく、ボルト6は周方向に連続的に存在する形となっているが、かかるボルト穴およびボルト箇所数の影響については、実機とモデルとの断面積の割合からボルト6のヤング率を設定することで、有限要素解析上は考慮している。また、フランジ部4aおよびボルト6については、軸対称4節点伝熱弾性要素を用い、線形弾性体としてモデル化した。なお、有限要素解析は、汎用有限要素解析コードABAQUSを用いて解析した。
【0076】
また、本実施例では、図9(A)に示したように、締付け時には、ガスケット2の初期応力として、ガスケット応力35MPaに相当するボルト応力をモデル上のボルト6下端に与え、締付け完了時には軸方向に拘束する。なお、本実施例では、前述したように軸対称モデルを用いているため、周方向にある複数のボルト6を同時に締付ける条件となる。
【0077】
また、本実施例では、図9(B)に示したように、運転時の内部流体の影響は、管フランジ4に内圧と温度とを作用させることで、有限要素解析に反映させている。
【0078】
すなわち、本実施例のFEA評価手順S4では、締付け時には静的問題として扱い、締付け後の運転時には非定常問題として扱い、運転開始による内部流体によるガスケット締結体1の加熱、時間の影響を考慮している。
【0079】
このように、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、ガスケット2と、ガスケット2を挟持するフランジ部4aを備えるフランジ管4と、フランジ部4a同士を締
結するボルト6とから構成されたガスケット締結体1をモデル化し、有限要素解析を行っているため、管フランジ4およびボルト6の応力が、ガスケット2の応力に及ぼす影響を考慮することができ、ガスケット締結体1としての将来のシール性を予測することができる。
【0080】
また、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、有限要素解析によりガスケット2の応力の経時変化を計算するため、従来の方法と比べて、比較的短い期間でガスケット締結体1の将来のシール性を予測することができる。
【0081】
図10(A)〜(D)は、縦軸を平均ガスケット応力、横軸を時間とし、前述した4つの運転条件(ケース1〜4)におけるガスケット2の平均応力の経時変化を示したグラフである。ここで、図10(A)はケース1(運転条件を設定しない場合)、図10(B)
はケース2(運転サイクル条件)、図10(C)はケース3(増し締め条件)、図10(D)はケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)のガスケット2の平均応力の経時変化を、それぞれ示している。
【0082】
図10(A)〜(D)に示したように、ケース1(運転条件を設定しない場合)およびケース3(増し締め条件)では、ガスケット2の応力は、十分大きな応力を維持しているが、ケース2(運転サイクル条件)およびケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)では、内部流体の運転停止時にガスケット2の応力が大きく低下していることが分かる。しかしながら、ケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)では、増し締めによってガスケット2の応力が回復するため、ケース2(運転サイクル条件)と比べて、大きなガスケット応力を維持できるとの結果となった。
【0083】
また、図10(A)に示したように、ケース1(運転条件を設定しない場合)では、平均ガスケット応力が初期に約19MPaまで大きく低下し、その後は穏やかに低下しているが、この初期の大きな応力低下は、運転開始直後の温度変化時に生じたものと推察された。すなわち、初期はガスケット2のクリープが顕著であることに加え、温度変化時にはガスケット2、管フランジ4、ボルト6などの熱膨張、ガスケット2の剛性低下の影響がある。特にこのガスケット2の剛性低下によって、ガスケット2の厚さは小さくなり、ガスケット2が応力は大きく低下するものと考えられた。
【0084】
なお、図10(A)〜(D)の点線Bは、シール性評価手順S5において算定した、シール基準を超えない最小ガスケット応力を示した線であり、詳しくは後述する。
【0085】
このように、本願発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、内部流体の運転条件や、増し締め条件など、実機の様々な使用態様に即した運転条件を考慮することができるため、実際の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0086】
また、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、所定時間経過後に、環境条件および材料条件を再設定するとの運転条件を考慮することができるため、例えば、増し締め周期を複数のパターンで設定し、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算することで、最適な増し締め時期の検討など、効率的なメンテナンス方法についても検討することができる。
[シール性評価手順S5]
シール性評価手順S5では、ガスケット2に所定の荷重を載荷した後、徐々にガスケット2の応力を減少させる除荷過程におけるガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定する。
【0087】
図11は、シール性評価試験装置の概要図、図12は、シール性評価にかかる実験結
果を示したグラフである。
【0088】
本実施例では、シール性評価手順S5において、シール基準を超えない最小ガスケット応力を、図11に示したシール性評価試験装置8を用いて実験により求めた。
【0089】
シール性評価試験は、次のとおり行った。
【0090】
すなわち、初期ガスケット応力を19.7MPa、25.5MPa、35.0MPaとし、ガスケット2を挟みこんだフランジを圧縮試験機10(AUTOGRAPH500KND型、島津製
作所製)によって圧縮し、ボンベ12により供給される窒素ガスの漏洩量を測定した。漏洩量の測定には、ボンベ12とフランジとの間に設置したマスフローメーター14(ハイグレードマスフローメーターMODEL3100、コフロック社製)を用いた。ボンベ12に付属
した不図示のレギュレーターによってガスケット2とフランジとで囲まれた空間の内圧を一定にすると、ガスケット2から漏洩した同量のガスがボンベ6から供給されることとなり、この供給量をマスフローメーター14によって測定することで、ガスケット2の漏洩量を測定した。なお、このシール性評価試験装置8による漏洩検出感度は、5×10-5Pa・m3/sである。
【0091】
温度条件は、室温と200℃の2通りで実験を行った。200℃での測定では、圧縮負荷の前に予めガスケット2を挟み込んだフランジをバンドヒーター16によって加熱し、フランジに設置した熱電対18と加熱制御装置20によって温度を制御した。そして、初期ガスケット応力の付加後、段階的にガスケット2の応力を減少させていき、漏洩量とガスケット応力との関係を求めた。なお、シール基準は1.7×10-4Pa・m3/sとし
た。
【0092】
図12(A)、(B)は、漏洩量を対数軸に、ガスケット応力を線形軸とし、初期ガスケット応力を19.7MPa、25.5MPa、35.0MPaとした場合のガスケット2の応力−漏洩量の関係を表した片対数グラフである。ここで、図12(A)は温度条件を室温とした場合、図12(B)は温度条件を200℃とした場合のガスケット2の応力−漏洩量の関係を表している。
【0093】
図12(A)、(B)に示したように、室温に比べて200℃の方が、同じガスケット応力でも漏洩量が少なく、シール性が高くなっている。これは、高温になることで、ガスケット2の表面が軟化し、フランジ面とのなじみが向上するためと考えられた。また、図12(A)に示したように、室温時では、初期ガスケット応力が高いほどシール性は高いのに対し、図12(B)に示したように、200℃の場合では、初期ガスケット応力によるシール性の違いは殆ど見られない。これもガスケット2が軟化したことによりなじみが向上し、初期ガスケット応力の影響が小さくなったためと考えられた。
【0094】
このように、シール基準を超えない最小ガスケット応力は、温度条件により大きく異なるため、実機の使用態様に即した温度条件にて、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定するのが好ましい。本実施例では、ガスケット締結体1が使用される温度条件である200℃の場合のガスケット応力が、シール基準である1.7×10-4Pa・m3/
sとなる時のガスケット応力を、シール基準を超えない最小ガスケット応力とした。
【0095】
また、上述したように、温度条件が200℃の場合は、初期ガスケット応力によるシール性の違いは殆ど見られないため、本実施例では、初期ガスケット応力19.7MPa、25.5MPa、35.0MPaのガスケット応力の平均をとって、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定し、図12(B)に示したように、2.5MPaとした。
【0096】
このようにして算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力を、有限要素解析により計算したガスケット2の応力の経時変化と対比することで、実機の使用態様に即したガスケットの寿命を予測することができる。具体的には、図10(B)に示したように、運転条件のケース2(運転サイクル条件)の応力の経時変化を示した線と、シール基準を超えない最小ガスケット応力を示した点線Bとは、時間軸で約3年のところで交わっており、ケース2のガスケットの寿命は約3年と推定することができる。また、ケース1(運転条件を設定しない場合)、ケース3(増し締め条件)、ケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)のガスケット応力は、図10(A)、(C)、(D)に示したように、4年の計算期間内ではシール基準を超えない最小ガスケット応力を下回らないことから、ケース1、3、4のガスケットの寿命は少なくとも4年以上と推定することができる。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 ガスケット締結体
2 ガスケット
4 管フランジ
4a フランジ部
6 ボルト
8 シール性評価試験装置
10 圧縮試験機
12 ボンベ
14 マスフローメーター
16 バンドヒーター
18 熱電対
20 加熱制御装置
A 有限要素解析により計算したガスケット応力の経時変化
B シール基準を超えない最小ガスケット応力
【技術分野】
【0001】
本発明は、管フランジ、圧力容器のマンホール、バルブのボンネットなどに用いられるガスケットの将来のシール性を、有限要素解析により予測計算するガスケットの長期特性予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管フランジのフランジ部、圧力容器のマンホール部、バルブのボンネット部などの部材間の接合部には、構造に気密性、水密性を持たせるために、ガスケットが用いられる。ガスケットは、長期間の使用によりそのシール性が低下するため、定期的に増し締め等のメンテナンスや、ガスケットの交換を行う必要があるが、このガスケットの交換周期は、これまでの使用実績に基づく経験則によって決められている場合が殆どであり、ガスケットの正確な寿命を把握して決められたものではない。
【0003】
近年、石綿規制により、非石綿製ガスケットの使用が急速に拡大しているが、これら非石綿製ガスケットにおいては、使用実績が少ないため、適当な交換周期を決定するのが困難である。このため、非石綿製ガスケットにあっては、長期使用に対する安全性を考慮して、比較的短い周期でガスケットの交換が行われているのが現状であり、これまでの経験則に代わるガスケット交換周期を設定する方法として、ガスケットの長期特性を予測する方法を構築することが強く望まれていた。
【0004】
非特許文献1には、石綿ジョイントシートガスケットにおける高温寿命評価方法として、高温下で使用される石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法が、本出願人により開示されている。
【0005】
この非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法は、評価対象である石綿ジョイントシートガスケットに対し、応力緩和試験および密封限界応力確認試験を行って、ガスケットの寿命を予測する方法であり、その内容は、概ね以下のとおりである。
【0006】
すなわち、応力緩和試験として、所定の圧縮力を作用させたガスケットを200℃に加熱し、この所定の圧縮力が作用した、200℃に加熱された状態のガスケットの残留応力を1000時間にわたり測定する。そして、測定された残留応力の経時変化を、図13に示したように、ガスケットの残留応力を線形軸、時間を対数軸とした片対数グラフに整理する。そして、片対数グラフに整理されたガスケットの残留応力と、時間軸とは、直線関係にあるとの経験則を適用することで、図14に示したような応力緩和線を描き、これにより、ガスケットの将来の残留応力を予測する。
【0007】
また、応力緩和試験とは別に、密封限界応力確認試験を行って、シール基準を超えない最小ガスケット応力の経時変化を測定する。具体的には、所定の圧縮力を作用させたガスケットを、所定の時間、例えば、100時間、500時間、1000時間にわたって、200℃で加熱する。そして、これら所定の時間加熱された各ガスケットについて、ガスケットに作用させた圧縮力を段階的に除去し、この除荷過程におけるガスケットの残留応力と、ガスケットからの漏洩量とを測定して、ガスケットからの漏洩量が、予め定めたシールの判定基準値となる際のガスケットの残留応力を、シール基準を超えない最小ガスケット応力と把握する。こうして把握したシール基準を超えない最小ガスケット応力を、ガスケットの残留応力を線形軸、時間を対数軸とした片対数グラフに整理して、密封限界応力の経時変化曲線を描く。
【0008】
そして、密封限界応力確認試験により把握したシール基準を超えない最小ガスケット応力の経時変化と、応力緩和試験により予測した将来のガスケットの残留応力とを対比することで、ガスケットの寿命を推定する。具体的には、図15に示したように、応力緩和試験により予測したガスケットの残留応力(応力緩和線)と、密封限界応力試験により把握したシール基準を超えない最小ガスケット応力(経時変化曲線)との交点、図15では約18年、をガスケットの寿命と推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山中 幸、"バルカー技術誌2003年秋号第10〜14頁"、[online]、日本バルカー工業株式会社、[平成20年6月18日検索]、インターネット<URL:http://www.valqua.co.jp/products/download/pdf/technews/vtn007.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、ガスケットの応力緩和試験を行って、ガスケットの将来の応力を推定するため、ガスケット挟持体を含めたガスケット締結体としてのシール性を評価することは出来なかった。すなわち、管フランジのフランジ部などのガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響を考慮することは出来なかった。
【0011】
また、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、実機の様々な使用条件に対応した寿命評価を行うことは出来なかった。すなわち、現実のガスケットの使用状態では、ガスケットにより密封された内部流体の温度や圧力は、内部流体の運転サイクル等により変化するため一定ではないが、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、内部流体の運転サイクル等に対応したガスケットの使用条件を考慮することはできなかった。
【0012】
また、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、ガスケットの残留応力に関する長期間のデータ収集が必要であり、応力緩和試験の試験期間として少なくとも1000時間(約42日)、好ましくはより長期の試験期間が必要となる。このデータ収集期間が短いと、ガスケットの残留応力の経時変化を精度よく予測することができないことから、非特許文献1に記載されている石綿ジョイントシートガスケットの寿命予測方法では、ガスケットの寿命を予測するのに長い期間が必要であった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたものであって、管フランジのフランジ部などのガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響などを考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、内部流体の運転サイクル等、実機の様々な使用条件を考慮することができ、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、比較的短い期間で、ガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法は、
内部流体を密封するために用いられるガスケット締結体において、
ガスケットと、該ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成された前記ガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するガスケット締結体の長期特性予測方法であって、
有限要素解析に用いる入力条件として、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する環境条件設定手順と、
有限要素解析に用いる入力条件として、ガスケット締結体の材料条件を設定する材料条件設定手順と、
前記環境条件および材料条件を用いて、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算するFEA手順と、を有し、
前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの圧縮特性における温度依存性を考慮するとともに、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮することを特徴とする。
【0017】
このように構成することによって、ガスケットと、ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成されたガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するため、ガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響を考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することができる。
【0018】
また、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算するため、従来の方法と比べて、比較的短い期間でガスケットの将来のシール性を予測することができる。
【0019】
上記発明において、有限要素解析に用いる入力条件として、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件設定手順を有し、
前記FEA手順において、前記運転条件も用いることが望ましい。
【0020】
このように構成することによって、有限要素解析に用いる入力条件として、所定時間経過後に、環境条件および材料条件を再設定するとの運転条件設定手順を有するため、実機の様々な使用条件を考慮することができ、実際の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0021】
また、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件を考慮することができるため、最適な増し締め時期の検討など、効率的なメンテナンス方法についても検討することができる。
【0022】
また、上記発明において、前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定するとの運転サイクル条件を含むことが望ましい。
【0023】
このように構成することによって、ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定するとの運転サイクル条件を含むため、内部流体の運転サイクルが考慮された、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0024】
また、上記発明において、前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後にガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を含むことが望ましい。
【0025】
このように構成することによって、ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後にガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を含むため、ガスケット締結体の増し締め条件が考慮された、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0026】
また、上記発明においては、前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの材料条件の一つとして、クリープひずみ速度を下記式(1)により設定することが望ましい。
【0027】
εc=A・σn・tm (1)
(ここで、εcはクリープひずみ速度、σは応力、tは時間、A,n,mは実験により求
める定数である)
このように構成することによって、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を有限要素解析に適した数式として考慮することができるため、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮して、有限要素解析により、ガスケット応力の経時変化を計算することができる。
【0028】
また、上記発明において、前記ガスケット締結体が、ガスケットと、該ガスケットを挟持するフランジ部を備える管フランジと、該フランジ部同士を締結するボルトにより構成されていることが望ましい。
【0029】
このように構成することによって、ガスケットと、ガスケットを挟持するフランジ部を備える管フランジと、フランジ部同士を締結するボルトから構成されたガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析により予測計算するため、管フランジのフランジ部およびボルトの応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響を考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することができる。
【0030】
また、上記発明において、ガスケットに所定の荷重を載荷した後、徐々にガスケットの応力を減少させる除荷過程におけるガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定するシール性評価手順を有し、
前記シール性評価手順により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力と、前記FEA手順により計算したガスケット応力の経時変化とを対比して、ガスケットの寿命を予測することが望ましい。
【0031】
このように構成することによって、実機の使用態様に即したガスケットの寿命を予測することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、管フランジのフランジ部などのガスケット挟持体の応力が、ガスケットの応力に及ぼす影響などを考慮することができ、ガスケット締結体としての将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、内部流体の運転サイクル等、実機の様々な使用条件を考慮することができ、実機の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、比較的短い期間で、ガスケット締結体の将来のシール性を予測することが可能な、ガスケット締結体の長期特性予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法の基本的な手順を示したフロー図である。
【図2】本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法を示した概念図である。
【図3】本発明のガスケット締結体を示した部分破断斜視図である。
【図4】本発明のガスケットの応力−ひずみの関係を示したグラフである。
【図5】本発明のガスケットのクリープひずみの経時変化を示したグラフである。
【図6】本発明のガスケットの線膨張率−温度の関係を示したグラフである。
【図7】本発明のガスケットの比熱−温度の関係を示したグラフである。
【図8】図3のa部におけるガスケット締結体の有限要素モデルを示した図である。
【図9】有限要素解析の境界条件を示した図である。
【図10】有限要素解析により計算したガスケットの応力の経時変化を示したグラフである。
【図11】シール性評価試験装置の概要図である。
【図12】シール性評価にかかる実験結果を示したグラフである。
【図13】非特許文献1のガスケット応力の経時変化を示した図である。
【図14】非特許文献1のガスケット応力の応力緩和曲線を示した図である。
【図15】非特許文献1のガスケットの寿命を予測する方法を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、以下に説明した発明の実施の形態に限定されるものではない。
【0037】
図1は、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法の基本的な手順を示したフロー図、図2は、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法により、ガスケットの寿命を予測する方法を示した概念図である。
【0038】
本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、図1に示したように、先ず、有限要素解析(Finite Element Analysis、以下FEAと称する場合もある)に用いる条件を設定するため、環境条件設定手順S1において、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する。また、材料条件設定手順S2において、少なくとも、ガスケット締結体の材料条件を設定する。さらに、運転手順設定手順S3において、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件を設定する。
【0039】
次に、FEA手順S4において、前述したS1〜S3で設定した環境条件、材料条件、及び運転条件を用いて、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算する。
【0040】
また、シール性評価手順S5において、ガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定する。なお、シール性評価手順S5は、図1のフロー図では、FEA手順S4の後に実施することになっているが、FEA手順S4と同時に実施してもよく、また、FEA手順S4の前に実施してもよい。
【0041】
そして、シール性評価手順S5により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力と、FEA手順S4により計算したガスケット応力の経時変化とを対比して、ガスケットの寿命を予測する。具体的には、図2に示したように、シール性評価手順S5により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力を示す線Bと、FEA手順S4により計算したガスケット応力の経時変化を示す線Aとを、縦軸をガスケット応力、横軸を時間としたグラフにプロットし、線Aと線Bとの交点をガスケットの寿命と推定する。
【0042】
以下、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法の説明として、環境条件設定手順S1、材料条件設定手順S2、運転手順設定手順S3、FEA手順S4、およびシール性評価手順S5について、詳細に説明する。
[環境条件設定手順S1]
環境条件設定手順S1では、有限要素解析に用いる環境条件として、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する。
【0043】
図3は、本発明のガスケット締結体を示した部分破断斜視図である。
【0044】
本発明におけるガスケット締結体とは、ガスケットと、ガスケットを挟持する挟持体とから構成されており、この挟持体は、一体または別体として、この挟持部同士を締結する締結手段を備えている。
【0045】
本実施例では、ガスケット締結体1は、図3に示したように、ガスケット2と、ガスケット2を挟持するフランジ部4aを備える管フランジ4とから構成され、管フランジ4は、別体として、フランジ部4a同士を締結するボルト6を備えており、管フランジ4の内部には内部流体が密封されている。
【0046】
本発明におけるガスケットの材質は、特に限定されず、例えば、石綿、メタル、ゴム、黒鉛、フッ素樹脂などを含む材料のものを好適に使用することができる。また、本発明は、例えば、渦巻き形ガスケットのように、2以上の材質を組み合わせて形成されたガスケットに対しても、適用可能である。本発明における特に好ましいガスケットの材質は、耐熱性に優れ、材料劣化が少なく、したがって、ガスケット応力の経時変化が、主としてガスケットのクリープ特性に依存する材質であり、例えば、フッ素樹脂やメタルなどを挙げることができる。
【0047】
本実施例では、ガスケット2は、主に黒鉛、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるガスケットであるGF300(日本バルカー工業社製品、厚さ3mm)を使用し、ガスケット2の締付け時の初期応力は35MPaと設定した。
【0048】
また、本発明における管フランジ4およびボルト6の寸法は、特に限定されるものではない。本実施例では、JIS規格の鋼製管フランジを使用することとし、管フランジおよびボルトの材質はSS400、管フランジの呼び径は600A、呼び圧力は10Kとし、フランジ部4aの継手形式はRF形とした。
【0049】
また、本発明における内部流体の圧力条件および温度条件は、特に限定されるものではなく、ガスケット締結体1の使用態様に応じて、種々の条件を設定することが可能であるが、本実施例では、内部流体の圧力条件および温度条件として、温度200℃、内圧1MPaの内部流体を作動させる場合を検討した。
【0050】
本実施例において設定した環境条件を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[材料条件設定手順S2]
材料条件設定手順S2では、有限要素解析に用いる材料条件として、ガスケット締結体の材料条件を設定する。
【0053】
図4は、本発明のガスケットの応力−ひずみの関係を示したグラフ、図5は、本発明のガスケットのクリープひずみ速度を示したグラフ、図6は、本発明のガスケットの線膨張率−温度の関係を示したグラフ、図7は、本発明のガスケットの比熱−温度の関係を示したグラフである。
【0054】
図4は、縦軸を応力、横軸をひずみとし、温度が室温、50℃、100℃、200℃の場合のガスケット2の応力−ひずみの関係を表したグラフである。この図4からも分かるように、ガスケット2は、応力が増加する過程において、温度が高くなるほど剛性が低下するという温度依存性を有する。また、応力の増加過程と減少過程とで、応力−ひずみ関係が変化するとのヒステリシス特性を有する。よって、本発明のガスケット締結体1の長期特性予測方法では、ガスケット2の材料条件を設定する際に、ガスケット2の圧縮特性における温度依存性とヒステリシス特性を考慮している。
【0055】
本実施例では、ガスケットの応力増加過程については、このガスケット2の温度依存性およびヒステリシス特性を考慮して、図4に示したように、温度条件毎にヤング率を設定し、ガスケットの応力減少過程ではヤング率を1GPaで一定として設定した。
【0056】
図5は、縦軸をクリープひずみ、横軸を時間とし、ガスケット2を200℃の温度条件下で35.0MPa、25.0MPa、12.5MPaで圧縮した場合のガスケット2のクリープひずみの経時変化を表したグラフである。図5におけるグラフの傾きは、クリープひずみ速度を表わす。この図5からも分かるように、ガスケット2のクリープひずみ速度は、ガスケット応力により変化するという応力依存性を有するため、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、ガスケット2の材料条件を設定する際に、ガスケット2のクリープ特性における応力依存性を考慮している。
【0057】
本実施例では、実験から得られたガスケット2の応力毎のクリープひずみ速度を、バネとダッシュポッドを用いた粘弾性モデルである、三要素粘弾性モデルにモデリングし、応力依存性を考慮した下記式(1)により同定した。有限要素解析には、この式(1)を入力して用いる。なお、図5には、同定した結果として、実験値と式(1)による計算値とを示している。
【0058】
εc=A・σn・tm (1)
ここで、εcはクリープひずみ速度[/s]、σは応力[MPa]、tは時間[s]、A,n,mは実験により求める定数であり、最小二乗法近似により、以下の値を特定した。
【0059】
A=4.96×10-7
n=1.98
m=−0.830
なお、本実施例におけるクリープひずみの実験期間は、図5に示したように、約95000秒(約11日)であり、非特許文献1で行われていた応力緩和試験の試験期間よりも短い期間で実験を行うことが可能である。
【0060】
このように、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を有限要素解析に適した式(1)として考慮することができるため、有限要素解析によりガスケット2の応力の経時変化を計算することができる。
【0061】
また、図6および図7に示したように、本発明のガスケット2の線膨張率および比熱は、温度依存性を有しており、本実施例では、材料条件を設定する際に、このガスケット2の線膨張率および比熱の温度依存性を考慮した。
【0062】
本実施例において設定した環境条件を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
[運転条件設定手順S3]
運転条件設定手順S3では、有限要素解析に用いる運転条件として、所定時間経過後に、環境条件および材料条件を再設定するとの運転条件を設定する。
【0065】
本実施例では、運転条件として、運転サイクル条件および増し締め条件の有無により、4ケース(ケース1〜4)の運転条件を設定した。
【0066】
運転サイクル条件とは、内部流体の運転サイクルに合わせて、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定することである。実機の使用においては、メンテナンス等のため、例えば、1年毎に内部流体の運転を停止して、ガスケット締結体を分解・点検することが行われる。
【0067】
本実施例では、かかる実機の使用態様を考慮すべく、運転条件として、1年毎に内部流体による内圧と温度の作用を停止し、1日後に内部流体の運転を再開する、すなわち、内部流体の内圧を大気圧に、温度を室温に再設定し、1日後に元の条件に戻すとの運転サイクル条件を設定した(ケース2)。
【0068】
増し締め条件とは、ガスケットの増し締めを想定して、所定時間経過後にガスケット応力を再設定することである。実機の使用においては、ガスケットの寿命を延ばすため、初期の締付け後、および所定時間経過後にガスケットを再度締付けて、ガスケットの圧縮応
力を増加させることが行われる。
【0069】
本実施例では、かかる実機の使用態様を考慮すべく、運転条件として、内部流体の運転開始の1日後に、初期締付けに相当するガスケット2の増し締めを行う、すなわち、ガスケット2の初期応力に相当するガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を設定した(ケース3)。
【0070】
なお、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、運転条件として、運転サイクル条件と増し締め条件とを併せて設定することも可能である。
【0071】
本実施例では、内部流体の運転開始後の1日後、および内部流体の運転再開の1日後に、ガスケット2の初期応力に相当するガスケット応力を再設定している(ケース4)。
【0072】
また、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、運転条件を設定せずに、ガスケット締結体の将来のシール性を予測することも可能である。
【0073】
本実施例では、この運転条件を設定しない場合、すなわち、内部流体の運転開始後は、環境条件および材料条件の再設定は行わない場合のガスケット2の寿命についても予測した(ケース1)。
[FEA手順S4]
FEA手順S4では、S1〜S3で設定した環境条件、材料条件、および運転条件を用いて、有限要素解析によりガスケット2の応力の経時変化を計算する。
【0074】
図8は、図3のa部におけるガスケット締結体1の有限要素モデルを示した図、図9は、有限要素解析の境界条件を示した図、図10は、有限要素解析により計算したガスケット2の応力の経時変化を示したグラフである。
【0075】
本実施例では、図8に示したように、ガスケット締結体1を軸対称体と仮定した軸対称モデルとして、有限要素モデルを構築した。また、図8に示したモデル断面では、フランジ部4aにボルト穴がなく、ボルト6は周方向に連続的に存在する形となっているが、かかるボルト穴およびボルト箇所数の影響については、実機とモデルとの断面積の割合からボルト6のヤング率を設定することで、有限要素解析上は考慮している。また、フランジ部4aおよびボルト6については、軸対称4節点伝熱弾性要素を用い、線形弾性体としてモデル化した。なお、有限要素解析は、汎用有限要素解析コードABAQUSを用いて解析した。
【0076】
また、本実施例では、図9(A)に示したように、締付け時には、ガスケット2の初期応力として、ガスケット応力35MPaに相当するボルト応力をモデル上のボルト6下端に与え、締付け完了時には軸方向に拘束する。なお、本実施例では、前述したように軸対称モデルを用いているため、周方向にある複数のボルト6を同時に締付ける条件となる。
【0077】
また、本実施例では、図9(B)に示したように、運転時の内部流体の影響は、管フランジ4に内圧と温度とを作用させることで、有限要素解析に反映させている。
【0078】
すなわち、本実施例のFEA評価手順S4では、締付け時には静的問題として扱い、締付け後の運転時には非定常問題として扱い、運転開始による内部流体によるガスケット締結体1の加熱、時間の影響を考慮している。
【0079】
このように、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、ガスケット2と、ガスケット2を挟持するフランジ部4aを備えるフランジ管4と、フランジ部4a同士を締
結するボルト6とから構成されたガスケット締結体1をモデル化し、有限要素解析を行っているため、管フランジ4およびボルト6の応力が、ガスケット2の応力に及ぼす影響を考慮することができ、ガスケット締結体1としての将来のシール性を予測することができる。
【0080】
また、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、有限要素解析によりガスケット2の応力の経時変化を計算するため、従来の方法と比べて、比較的短い期間でガスケット締結体1の将来のシール性を予測することができる。
【0081】
図10(A)〜(D)は、縦軸を平均ガスケット応力、横軸を時間とし、前述した4つの運転条件(ケース1〜4)におけるガスケット2の平均応力の経時変化を示したグラフである。ここで、図10(A)はケース1(運転条件を設定しない場合)、図10(B)
はケース2(運転サイクル条件)、図10(C)はケース3(増し締め条件)、図10(D)はケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)のガスケット2の平均応力の経時変化を、それぞれ示している。
【0082】
図10(A)〜(D)に示したように、ケース1(運転条件を設定しない場合)およびケース3(増し締め条件)では、ガスケット2の応力は、十分大きな応力を維持しているが、ケース2(運転サイクル条件)およびケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)では、内部流体の運転停止時にガスケット2の応力が大きく低下していることが分かる。しかしながら、ケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)では、増し締めによってガスケット2の応力が回復するため、ケース2(運転サイクル条件)と比べて、大きなガスケット応力を維持できるとの結果となった。
【0083】
また、図10(A)に示したように、ケース1(運転条件を設定しない場合)では、平均ガスケット応力が初期に約19MPaまで大きく低下し、その後は穏やかに低下しているが、この初期の大きな応力低下は、運転開始直後の温度変化時に生じたものと推察された。すなわち、初期はガスケット2のクリープが顕著であることに加え、温度変化時にはガスケット2、管フランジ4、ボルト6などの熱膨張、ガスケット2の剛性低下の影響がある。特にこのガスケット2の剛性低下によって、ガスケット2の厚さは小さくなり、ガスケット2が応力は大きく低下するものと考えられた。
【0084】
なお、図10(A)〜(D)の点線Bは、シール性評価手順S5において算定した、シール基準を超えない最小ガスケット応力を示した線であり、詳しくは後述する。
【0085】
このように、本願発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、内部流体の運転条件や、増し締め条件など、実機の様々な使用態様に即した運転条件を考慮することができるため、実際の使用態様に即したガスケット締結体の将来のシール性を予測することができる。
【0086】
また、本発明のガスケット締結体の長期特性予測方法では、所定時間経過後に、環境条件および材料条件を再設定するとの運転条件を考慮することができるため、例えば、増し締め周期を複数のパターンで設定し、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算することで、最適な増し締め時期の検討など、効率的なメンテナンス方法についても検討することができる。
[シール性評価手順S5]
シール性評価手順S5では、ガスケット2に所定の荷重を載荷した後、徐々にガスケット2の応力を減少させる除荷過程におけるガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定する。
【0087】
図11は、シール性評価試験装置の概要図、図12は、シール性評価にかかる実験結
果を示したグラフである。
【0088】
本実施例では、シール性評価手順S5において、シール基準を超えない最小ガスケット応力を、図11に示したシール性評価試験装置8を用いて実験により求めた。
【0089】
シール性評価試験は、次のとおり行った。
【0090】
すなわち、初期ガスケット応力を19.7MPa、25.5MPa、35.0MPaとし、ガスケット2を挟みこんだフランジを圧縮試験機10(AUTOGRAPH500KND型、島津製
作所製)によって圧縮し、ボンベ12により供給される窒素ガスの漏洩量を測定した。漏洩量の測定には、ボンベ12とフランジとの間に設置したマスフローメーター14(ハイグレードマスフローメーターMODEL3100、コフロック社製)を用いた。ボンベ12に付属
した不図示のレギュレーターによってガスケット2とフランジとで囲まれた空間の内圧を一定にすると、ガスケット2から漏洩した同量のガスがボンベ6から供給されることとなり、この供給量をマスフローメーター14によって測定することで、ガスケット2の漏洩量を測定した。なお、このシール性評価試験装置8による漏洩検出感度は、5×10-5Pa・m3/sである。
【0091】
温度条件は、室温と200℃の2通りで実験を行った。200℃での測定では、圧縮負荷の前に予めガスケット2を挟み込んだフランジをバンドヒーター16によって加熱し、フランジに設置した熱電対18と加熱制御装置20によって温度を制御した。そして、初期ガスケット応力の付加後、段階的にガスケット2の応力を減少させていき、漏洩量とガスケット応力との関係を求めた。なお、シール基準は1.7×10-4Pa・m3/sとし
た。
【0092】
図12(A)、(B)は、漏洩量を対数軸に、ガスケット応力を線形軸とし、初期ガスケット応力を19.7MPa、25.5MPa、35.0MPaとした場合のガスケット2の応力−漏洩量の関係を表した片対数グラフである。ここで、図12(A)は温度条件を室温とした場合、図12(B)は温度条件を200℃とした場合のガスケット2の応力−漏洩量の関係を表している。
【0093】
図12(A)、(B)に示したように、室温に比べて200℃の方が、同じガスケット応力でも漏洩量が少なく、シール性が高くなっている。これは、高温になることで、ガスケット2の表面が軟化し、フランジ面とのなじみが向上するためと考えられた。また、図12(A)に示したように、室温時では、初期ガスケット応力が高いほどシール性は高いのに対し、図12(B)に示したように、200℃の場合では、初期ガスケット応力によるシール性の違いは殆ど見られない。これもガスケット2が軟化したことによりなじみが向上し、初期ガスケット応力の影響が小さくなったためと考えられた。
【0094】
このように、シール基準を超えない最小ガスケット応力は、温度条件により大きく異なるため、実機の使用態様に即した温度条件にて、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定するのが好ましい。本実施例では、ガスケット締結体1が使用される温度条件である200℃の場合のガスケット応力が、シール基準である1.7×10-4Pa・m3/
sとなる時のガスケット応力を、シール基準を超えない最小ガスケット応力とした。
【0095】
また、上述したように、温度条件が200℃の場合は、初期ガスケット応力によるシール性の違いは殆ど見られないため、本実施例では、初期ガスケット応力19.7MPa、25.5MPa、35.0MPaのガスケット応力の平均をとって、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定し、図12(B)に示したように、2.5MPaとした。
【0096】
このようにして算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力を、有限要素解析により計算したガスケット2の応力の経時変化と対比することで、実機の使用態様に即したガスケットの寿命を予測することができる。具体的には、図10(B)に示したように、運転条件のケース2(運転サイクル条件)の応力の経時変化を示した線と、シール基準を超えない最小ガスケット応力を示した点線Bとは、時間軸で約3年のところで交わっており、ケース2のガスケットの寿命は約3年と推定することができる。また、ケース1(運転条件を設定しない場合)、ケース3(増し締め条件)、ケース4(運転サイクル条件+増し締め条件)のガスケット応力は、図10(A)、(C)、(D)に示したように、4年の計算期間内ではシール基準を超えない最小ガスケット応力を下回らないことから、ケース1、3、4のガスケットの寿命は少なくとも4年以上と推定することができる。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 ガスケット締結体
2 ガスケット
4 管フランジ
4a フランジ部
6 ボルト
8 シール性評価試験装置
10 圧縮試験機
12 ボンベ
14 マスフローメーター
16 バンドヒーター
18 熱電対
20 加熱制御装置
A 有限要素解析により計算したガスケット応力の経時変化
B シール基準を超えない最小ガスケット応力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流体を密封するために用いられるガスケット締結体において、
ガスケットと、該ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成された前記ガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するガスケット締結体の長期特性予測方法であって、
有限要素解析に用いる入力条件として、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する環境条件設定手順と、
有限要素解析に用いる入力条件として、ガスケット締結体の材料条件を設定する材料条件設定手順と、
前記環境条件および材料条件を用いて、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算するFEA手順と、を有し、
前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの圧縮特性における温度依存性を考慮するとともに、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮することを特徴とするガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項2】
有限要素解析に用いる入力条件として、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件設定手順を有し、
前記FEA手順において、前記運転条件も用いることを特徴とする請求項1に記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項3】
前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定するとの運転サイクル条件を含むことを特徴とする請求項2に記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項4】
前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後にガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項5】
前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの材料条件の一つとして、クリープひずみ速度を下記式(1)により設定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
εc=A・σn・tm (1)
(ここで、εcはクリープひずみ速度、σは応力、tは時間、A,n,mは実験により求
める定数である)
【請求項6】
前記ガスケット締結体が、ガスケットと、該ガスケットを挟持するフランジ部を備える管フランジと、該フランジ部同士を締結するボルトにより構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のガスケットの長期特性予測方法。
【請求項7】
ガスケットに所定の荷重を載荷した後、徐々にガスケットの応力を減少させる除荷過程におけるガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定するシール性評価手順を有し、
前記シール性評価手順により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力と、前記FEA手順により計算したガスケット応力の経時変化とを対比して、ガスケットの寿命を予測することを特徴とする請求項1から6のいずれかにガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項1】
内部流体を密封するために用いられるガスケット締結体において、
ガスケットと、該ガスケットを挟持するガスケット挟持体とから構成された前記ガスケット締結体の将来のシール性を、有限要素解析を用いて予測計算するガスケット締結体の長期特性予測方法であって、
有限要素解析に用いる入力条件として、少なくとも、ガスケット締結体の寸法、ガスケットの初期応力、内部流体の圧力条件および温度条件を設定する環境条件設定手順と、
有限要素解析に用いる入力条件として、ガスケット締結体の材料条件を設定する材料条件設定手順と、
前記環境条件および材料条件を用いて、有限要素解析によりガスケット応力の経時変化を計算するFEA手順と、を有し、
前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの圧縮特性における温度依存性を考慮するとともに、ガスケットのクリープ特性における応力依存性を考慮することを特徴とするガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項2】
有限要素解析に用いる入力条件として、所定時間経過後に、前記環境条件および前記材料条件を再設定するとの運転条件設定手順を有し、
前記FEA手順において、前記運転条件も用いることを特徴とする請求項1に記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項3】
前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後に内部流体の圧力条件および温度条件を再設定するとの運転サイクル条件を含むことを特徴とする請求項2に記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項4】
前記運転条件設定手順において設定する前記ガスケット締結体の運転条件は、所定時間経過後にガスケット応力を再設定するとの増し締め条件を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
【請求項5】
前記材料設定手順において、ガスケットの材料条件を設定する際、ガスケットの材料条件の一つとして、クリープひずみ速度を下記式(1)により設定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガスケット締結体の長期特性予測方法。
εc=A・σn・tm (1)
(ここで、εcはクリープひずみ速度、σは応力、tは時間、A,n,mは実験により求
める定数である)
【請求項6】
前記ガスケット締結体が、ガスケットと、該ガスケットを挟持するフランジ部を備える管フランジと、該フランジ部同士を締結するボルトにより構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のガスケットの長期特性予測方法。
【請求項7】
ガスケットに所定の荷重を載荷した後、徐々にガスケットの応力を減少させる除荷過程におけるガスケットのシール性を実験により求め、シール基準を超えない最小ガスケット応力を算定するシール性評価手順を有し、
前記シール性評価手順により算定したシール基準を超えない最小ガスケット応力と、前記FEA手順により計算したガスケット応力の経時変化とを対比して、ガスケットの寿命を予測することを特徴とする請求項1から6のいずれかにガスケット締結体の長期特性予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図11】
【公開番号】特開2011−17392(P2011−17392A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162761(P2009−162761)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
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