説明

ガスコンロ

【課題】天板に設けられたバーナ用開口の周縁と前記開口から突出するガスバーナの外周面との間の隙間を覆うバーナリングを天板に水密的に固定されて備えるガスコンロにおいて、天板の温度上昇および降下に伴う天板の伸縮による不都合の発生を防止する。
【解決手段】点火プラグや炎検知器33が貫通する凹部または貫通口の周縁壁は、点火プラグや前記炎検知器33の中心軸に沿う方向にバーナリング5の厚みが大きい厚肉部で構成され、ガスバーナ2による加熱が行われない停止状態からガスバーナ2による加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程、および、加熱状態から停止状態に至る温度降下過程において、点火プラグや炎検知器33の断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部35が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から囲繞範囲の内に入り込まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用するガスコンロに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスコンロ本体の上面にトッププレートを被着すると共にトッププレートに設けた窓穴にガスコンロ本体のコンロ用バーナを挿通し、コンロ用バーナと上記窓穴縁との間にこれらの間を塞ぐ円環状のバーナリングを配置し、バーナリングをコンロ用バーナやトッププレートの窓穴に対して回転しないように所定位置に固定的に取り付けて、常に安定した防水性能を維持できるようにしたガスコンロが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−333146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来のガスコンロにおいて、トッププレートが、結晶化ガラスなどの温度変化による膨張や収縮の量が極めて小さく、しかも、高剛性の材料により構成されている場合には、バーナリングを上記トッププレートの窓穴に対して回転しないように所定位置に固定的に取り付けることで、バーナリングとバーナとの接触およびバーナリングとトッププレートの窓穴周縁との接触を水密的に行うことで、常に安定した防水性能を維持できるようにできるものであり、ガスコンロの使用に伴い上記トッププレートの温度が上昇した場合にも、トッププレートの熱変形は極めて小さいものであるから、バーナリングとバーナとの相対位置およびバーナリングとトッププレートの窓穴周縁との相対位置に変化が生じにくく、バーナリングとバーナとの水密的接触およびバーナリングとトッププレートの窓穴周縁との水密的接触が維持され好都合である。
【0005】
一方、結晶化ガラスは一般的に高価であるため、上記結晶化ガラスに代えて、厚手の鋼板に琺瑯コーティングを施したガラスコート鋼板(以下、Gコートプレートと称する)を用いることによって、トッププレートのコストを低減し、ガスコンロの低価格化を図ることが検討されている。
【0006】
因みに、上記Gコートプレートは、琺瑯コーティングを行う際に用いられる釉薬の調合によって、様々な色のガラスコーティング層が鋼板表面に形成されるものであり、意匠の美観を増すための装飾片をガラスコーティング層に分布させることも可能で、極めて美麗なトッププレートを備えたガスコンロが構成できる。
【0007】
しかし、上記Gコートプレートの下地となる鋼板の主成分である鉄の線膨張係数は10×10−6/℃程度であり、ガスコンロの使用に伴い上記Gコートプレートの温度が上昇した場合には熱変形を生じることが考えられ、バーナリングとバーナとの接触位置またはバーナリングとトッププレートの窓穴周縁との接触位置において大きな応力が生じるおそれがある。
【0008】
このような場合、上記応力が生じることを防止するために、Gコートプレート用のバーナリングとトッププレートの窓穴周縁との接触は水密的に行う一方、Gコートプレート用のバーナリングとバーナとの接触は水密に行なうのではなく、バーナリングとバーナとの間には多少の間隙を存して構成することが考えられる。
【0009】
一方、コンロ用バーナ周辺には、燃料ガスへの点火時に放電を行う点火プラグや、コンロ用バーナへの着火検出用の炎検知器が配置されるのであるが、当然Gコートプレート用のバーナリングには上記点火プラグや上記炎検知器との干渉を回避するための凹部や孔を設けておき、Gコートプレート用のバーナリングの上方に突出するように上記点火プラグや上記炎検知器を配設しておく必要があるが、ガスコンロの使用によってGコートプレートの温度が上昇した場合、Gコートプレート用のバーナリングの凹部や孔と配設された点火プラグや炎検知器との相対位置が変化すことになる。
【0010】
このような場合、ガスコンロの使用によるGコートプレートの温度膨張によって上記凹部や孔の配設箇所において、Gコートプレートが上下方向、つまり上記点火プラグや上記炎検知器が突出する方向に変位することが考えられる。
【0011】
また、上記点火プラグや上記炎検知器は、それらの性能上や取り付け構造上の理由により一般的に、Gコートプレートの下方から上方向に突出する方向に配されることになる中心軸を有しており、上記中心軸方向の位置によって略方形または略円形である断面の外径や断面積が変化するような形状に構成されていることが多いが、上記中心軸方向の位置によって略方形または略円形である断面の外径や断面積が急激に変化する段付き形状にその外形が構成される場合がある。
【0012】
このように、外形が上記段付き形状に構成される場合において、Gコートプレートの温度膨張によって上記凹部や孔の配設箇所においてGコートプレートが上下方向、つまり上記点火プラグや上記炎検知器が突出する方向に変位したとき、または、ガスコンロ使用の停止に伴う温度Gコートプレートの温度収縮によって上記凹部や孔の配設箇所において、Gコートプレートが上下方向、つまり上記点火プラグや上記炎検知器が突出する方向に変位した位置から元の位置に復帰するときに、上記凹部や孔の周縁部のGコートプレートが上記段付き形状にひっかかって干渉したときには、上記凹部や孔の周縁部のGコートプレートと上記段付き形状との間に生じる応力が急変し、「カチッ」や「パチッ」等の衝撃音が発生し、使用者に不快感を与えてしまうことになるおそれがあり、改善が望まれるものであった。
【0013】
本発明は、上記に鑑みて成されたものであり、その目的は、天板に設けられたバーナ用開口の周縁と前記バーナ用開口から突出するガスバーナの外周面との間の隙間を覆うバーナリングを天板に水密的に固定されて備えるガスコンロにおいて、天板の温度上昇および降下に伴う伸縮による不都合の発生を防止するガスコンロであり、上記段付き形状を有する点火プラグや炎検知器がバーナリングの上方に貫通する場合においても、衝撃音の発生するおそれがないガスコンロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の特徴は、コンロ本体の開放した上面に天板が取り付けられ、前記本体に固定されたガスバーナが前記天板に設けられたバーナ用開口から前記天板の上方に突出し、前記バーナ用開口の周縁と前記ガスバーナの外周面との間の隙間を覆うバーナリングが、前記バーナリングと前記天板との間にシール部材を挟持して前記天板と水密的に固定され、前記ガスバーナの周縁に備える点火プラグや炎検知器が前記バーナ用開口を通って前記バーナリングよりも上方に突出し、前記バーナリングに設けた凹部または貫通孔を通して前記点火プラグや前記炎検知器の先端を前記バーナリングの上方に臨ませて配設されるガスコンロにおいて、前記点火プラグ或いは前記炎検知器のいずれか一方、またはその両方が、前記天板の下方から上方向に突出する方向に配される中心軸を有しており、かつ、その断面が略方形または略円形であり、かつ、前記中心軸方向の位置によって前記断面の外径や一辺の寸法が急激に変化する段付き部を有する段付き形状体にその外形が構成され、さらに、前記凹部または前記貫通口の周縁壁は、前記中心軸に沿う方向に前記バーナリングの厚みが大きい厚肉部で構成されており、前記ガスバーナによる加熱が行われない停止状態から前記ガスバーナによる加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程、および、前記加熱状態から前記停止状態に至る温度降下過程において、前記断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まない点にある。
【0015】
上記ガスコンロによれば、ガスバーナによる加熱が行われない停止状態からガスバーナによる加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程、および、加熱状態から停止状態に至る温度降下過程において、上記断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、上記凹部または上記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まないから、ガスコンロによる加熱によって天板が熱膨張して上記凹部または上記貫通口の配設箇所において天板が上下方向、つまり点火プラグや炎検知器が突出する方向と沿う方向に変位したとき、または、ガスコンロの加熱の停止に伴う天板の温度収縮によって上記凹部や上記貫通孔の配設箇所において、天板が上下方向、つまり点火プラグや炎検知器が突出する方向と沿う方向に変位した位置から元の位置に復帰するときにも、断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、上記凹部や上記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まないから、上記凹部や上記貫通口の周縁壁と上記段付き部が引っかかることがなく、上記天板と上記段付き部との間に生じる応力が急変しないから、「カチッ」や「パチッ」等の衝撃音の発生が抑制でき、使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0016】
因みに、上記停止状態から上記加熱状態に至る温度上昇過程において、前記断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まない場合には、上記加熱状態から上記停止状態に至る温度降下過程において、前記断面の外径や一辺の寸法が減少する側の段付き部が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まないことのなり、また、上記加熱状態から上記停止状態に至る温度降下過程において、前記断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まない場合には、上記停止状態から上記加熱状態に至る温度上昇過程において、前記断面の外径や一辺の寸法が減少する側の段付き部が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まないことになる。
【0017】
上記ガスコンロにおいて、前記貫通口の周縁壁の下端が、下に向かって前記凹部または前記貫通口の開口寸法が増加する下広がりに構成されていることが好ましい。
【0018】
前記凹部または上記貫通口の周縁壁の下端を、下に向かって前記凹部または前記貫通口の開口寸法が増加する下広がりに構成することで、バーナリングが水密的に固定された状態で固定されている天板を、コンロ本体の開放した上面に装着する際の、点火プラグや炎検知器の前記凹部または前記貫通口への挿通を容易にし、ガスコンロの組立性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係るガスコンロよれば、ガスコンロによる加熱によって天板が熱膨張して上記凹部または上記貫通口の配設箇所において天板が上下方向、つまり点火プラグや炎検知器が突出する方向と沿う方向に変位したとき、または、ガスコンロの加熱の停止に伴う天板の温度収縮によって上記凹部や上記貫通孔の配設箇所において、天板が上下方向、つまり点火プラグや炎検知器が突出する方向と沿う方向に変位した位置から元の位置に復帰するときにも、断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、上記凹部や上記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まないから、上記凹部や上記貫通口の周縁壁と上記段付き部が引っかかることがなく、上記天板と上記段付き部との間に生じる応力が急変しないから、「カチッ」や「パチッ」等の衝撃音の発生が抑制でき、使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るガスコンロの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガスコンロのコンロバーナ付近の断面図である。
【図2A】本発明の実施形態に係るガスコンロのコンロバーナ付近の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガスコンロのコンロバーナ付近の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るガスコンロのトッププレートの熱膨張を説明する模式図である。
【図5】従来のガスコンロのコンロバーナ付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態のガスコンロは、上方開放の矩形箱体であるコンロ本体10内に2口のガスバーナ2が収容され、コンロ本体10の上方開放部は厚板の鉄板に琺瑯コーティングを施したガラスコートプレート(以下、Gコートプレートと称する)からなる天板3で被覆された構成を有している。天板3は、コンロ本体10の周縁に係止され、天板3にはガスバーナ2に対応する各位置にバーナ用開口31(図2参照)が形成されている。
【0022】
本実施の形態のガスコンロは左右2つのバーナ用開口31(図2参照)にそれぞれガスバーナ2を備えるものであるが、左右共に同様の構造を有するもので、以下、一方のガスバーナ2の周辺の構成について説明する。なお、他方のガスバーナ2の周辺も一方のガスバーナ2の周辺と同様に構成される。
【0023】
ガスバーナ2は、混合管(図示せず)の下流端部から上方に続くバーナ本体21と、バーナ本体21の上に載置されるバーナキャップ22とを具備し、バーナ本体21とバーナキャップ22との間の外周に多数の炎孔からなる炎孔(図示せず)が環状に形成されている。バーナキャップ22の中央部には鍋底温度センサ24がバーナキャップ22よりも上方に突設している。
【0024】
図1、図2に示すように、バーナ本体21の外周部には、点火プラグ32及び炎検知器33がそれぞれ配設されている。図2に示すように、ガスバーナ2は、バーナ本体21の下端がコンロ本体10内に固定されたバーナ固定台25にネジ止め(図示せず)で固定されることにより、コンロ本体10内に固定されている。
【0025】
天板3のバーナ用開口31の周縁とバーナ本体21の外周面との間には、リング状の隙間CRが形成されることになる。そして、このリング状の隙間CRを覆うリング状のアルミダイキャスト製のバーナリング5を備えており、バーナリング5と天板3との間にシール部材1を挟持して、また、天板3の下側に備えるバーナリング固定板34がバーナリング5の下端に具備する係合部と係合することで、バーナリング5が天板3の上面に圧接されて、バーナリング5が天板3上に水密的に固定されている。
【0026】
また、バーナリング5の周囲には、調理鍋等を載置する五徳6が載置されており、五徳6は、略だ円環状に成型した線材からなる五徳枠61に、6本の略コの字状の五徳爪62の下片の先端を溶接により接合して構成されている。
【0027】
バーナリング5には、点火プラグ32に対応する各位置に点火プラグ32を配置させる切欠き(図示せず)及び炎検知器33に対応する各位置に炎検知器33を配置させる切欠き(炎検知器用凹部)52(図2参照)が形成されている。
【0028】
本実施形態において、バーナリング5に設けられた切り欠き52を貫通して、熱電対によって構成される炎検知器33がバーナリング5の上方に臨ませて配設されるものであるが、この点について以下に詳述する。
【0029】
図2.図2Aに示すように、炎検知器33は、バーナリグ5の下方から上方に向けて突出する方向と略一致する方向に配設される中心軸xを有しており、この中心軸xを中心とした円形の断面を有している。また、この中心軸x方向の位置によって前記断面の外径や一辺の寸法が急激に変化する段付き部35を有する段付き形状体にその外形が構成されており、段付き部35の上下方向の位置は、ガスバーナ2による加熱が行われない停止状態において、バーナリング5の上面位置と略同一位置としてある。
【0030】
切欠き(炎検知器用凹部)52は、バーナリング5における厚肉部51に設けられており、切欠き(炎検知器用凹部)52の周縁壁が炎検知器33を囲繞する下端位置は、バーナリング5の上面位置と略同一位置である段付き部35の上下方向の位置から寸法h(本実施例では8mm)だけ下方と成るように構成されており、(図2A参照)切欠き(炎検知器用凹部)52によって炎検知器33を囲繞する範囲のバーナリング5の厚みの寸法はhとなるようにしてある。
【0031】
なお、図2、図3に示すように、切欠き(炎検知器用凹部)52が設けられている箇所以外においては、バーナリング5におけるリング状の隙間CRを覆う部分の主体は薄肉部50によって構成されており、バーナリング5におけるリング状の隙間CRを覆う部分の主体を薄肉部50によって構成することでアルミダイキャストに用いられるアルミの使用量を削減している。
【0032】
天板3の主体を結晶化ガラスとする場合に比べて低コストとするために、上述のように、天板3の主体がGコートプレート(厚板の鉄板に琺瑯コーティングを施したガラスコートプレート)としているが、ガスバーナ2による加熱を開始すると天板3におけるガスバーナ2周辺の温度が上昇して、10×10−6/℃程度の線膨張係数を有する鉄板が熱膨張することとなり、天板3におけるガスバーナ2周辺部分の上方、または、下方への変位が生じることになり、天板3におけるガスバーナ2周辺部分の上方、または、下方への変位が生じた場合には、切欠き(炎検知器用凹部)52も共に上方、または、下方へ変位することになる。
【0033】
例えば、ガスバーナ2から200mmの範囲にある天板3の温度が50℃一様に上昇して、10×10−6/℃の線膨張係数を有する鉄板が熱膨張した場合、200mmのGコートプレートが
(10×10−6/℃)×(50℃)×(200mm)=200.1mm
に膨張することになり、これをモデル化して図示すると図4のようになる。
【0034】
図4(1)は、ガスバーナ2の加熱前におけるGコートプレートPを示しており、ガスバーナ2の位置Cを中心としたGコートプレートPの加熱前の長さはA(=200mm)である。
【0035】
ガスバーナ2の加熱によってGコートプレートPの長さA(=200mm)の範囲全体が50℃上昇したとき、図4(2)に示すように加熱後のGコートプレートPの長さB(=200.1mm)の範囲全体が熱膨張しガスバーナ2の位置CにおいてGコートプレートPが上下方向(図4では上方向に変位する場合を示す)にHだけ変位する。このとき、加熱前のGコートプレートPと加熱後のGコートプレートPの成す角度をθとすると、
θ=COS−1(A/B)(アークコサイン(A/B))=0.031616ラジアン
であり、変位量Hは、
H=A×tanθ=6.3mm
となる。
【0036】
本実施例では、図2Aにおいて、h=8mmであるから、ガスバーナ2による加熱が行われない停止状態からガスバーナ2による加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程おいてバーナリング5が6.3mm上方向に変位しても、バーナリング5の下端が段付き部35より上方(図2Aにおけるhの範囲外)に移動することがないから、上記加熱状態から上記停止状態に至る温度降下過程において、段付き部35が図2Aにおけるhの範囲外から図2Aにおけるhの範囲内に移動することがない。したがって、多少バーナリング5の水平方向の位置ずれがあった場合においてガスバーナ2を使用したときにも、バーナリング5と段付き部35との干渉を防止できる。
【0037】
また、バーナリング5の下方には段付き部35がないから、ガスバーナ2による加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程おいてバーナリング5が6.3mm下方向に変位しても、バーナリング5と段付き部35との干渉は生じない。
【0038】
因みに、本発明によらない実施例として、切欠き(炎検知器用凹部)52を薄肉部50に設けた場合を図5に示すが、図5に示すように、切欠き(炎検知器用凹部)52を薄肉部50に設けた場合には、ガスバーナ2による加熱が行われない停止状態からガスバーナ2による加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程おいてバーナリング5が6.3mm上方向に変位したときに、バーナリング5の下端が段付き部35より上方に移動するおそれがある。
【0039】
そして、バーナリング5の下端が段付き部35より上方に移動するときに多少バーナリング5の水平方向の位置ずれがあった場合には、「カチッ」や「パチッ」等の衝撃音が発生し使用者に不快感を与えるおそれがある。さらに、図5に示すように、切欠き(炎検知器用凹部)52を薄肉部50に設けた場合には、ガスバーナ2による加熱が行われない停止状態からガスバーナ2による加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程おいてバーナリング5が6.3mm上方向に変位してバーナリング5の下端が段付き部35の上方に移動した後に、上記加熱状態から上記停止状態に至る温度降下過程において、バーナリング5の下端が段付き部35の上方から下方に移動するときにバーナリング5の下端が段付き部35と引っ掛かり、この引っ掛かりが外れたときには、さらに大きな「カチッ」や「パチッ」等の衝撃音が発生し使用者に不快感を与えるおそれがある。
【0040】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、切欠き(炎検知器用凹部)52の周縁壁の下端が、下に向かって前記凹部または前記貫通口の開口寸法が増加する下広がりになるように面取り54が施されている。面取り54が施されていることによって、バーナリング5が水密的に固定された状態で固定されている天板3をコンロ本体10の開放した上面に装着する際に、炎検知器33を切欠き(炎検知器用凹部)52に挿通することが容易に行なえる。
〔別実施例〕
【0041】
(1)切欠き(炎検知器用凹部)52の周縁に厚肉部を構成するためにリブを垂設して構成してもよい。
【0042】
(2)上記実施形態では、切欠き(炎検知器用凹部)52を貫通して炎検知器33をバーナリング5上に臨ませる構成を示したが、バーナリング5の厚肉部に貫通孔を形成しておき、この貫通孔を貫通して炎検知器33をバーナリング5上に臨ませる構成してもよい。
【0043】
(3)上記実施形態では、炎検知器33に段付き部35を有する場合について説明したが、点火プラグ32に段付き部を有する場合の点火プラグ32の周辺のバーナリング5の構成も、炎検知器33における切欠き(炎検知器用凹部)52と同様に構成できる。
【0044】
(4)上記実施例では、ガスコンロが、厚板の鉄板に琺瑯コーティングを施したガラスコートプレートからなる天板3で被覆された構成を示したが、天板3を別の材料によって構成してもよい。
【0045】
(5)上記実施例では、バーナリング5をアルミダイキャスト品で構成しているが、バーナリング5を鉄を材料とする鋳物、または、黄銅を材料とする鍛造品、または、金属の板材を材料とするプレス加工品によって構成するなど適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 シール部材
10 コンロ本体
2 ガスバーナ
21 バーナ本体
22 バーナキャップ
24 鍋底温度センサ
25 バーナ固定台
3 天板
31 バーナ用開口
32 点火プラグ
33 炎検知器
34 バーナリング固定板
35 段付き部
5 バーナリング
50 薄肉部
51 厚肉部
52 切欠き(炎検知器用凹部)
54 面取り
6 五徳
61 五徳枠
62 五徳爪
63 突出部
A 加熱前の長さ
B 加熱後の長さ
C バーナの位置
CR リング状の隙間
H バーナの位置における変位量
h 囲繞範囲の厚み
P モデル化したGコートプレート
x 中心軸
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロ本体の開放した上面に天板が取り付けられ、前記本体に固定されたガスバーナが前記天板に設けられたバーナ用開口から前記天板の上方に突出し、前記バーナ用開口の周縁と前記ガスバーナの外周面との間の隙間を覆うバーナリングが、前記バーナリングと前記天板との間にシール部材を挟持して前記天板と水密的に固定され、前記ガスバーナの周縁に備える点火プラグや炎検知器が前記バーナ用開口を通って前記バーナリングよりも上方に突出し、前記バーナリングに設けた凹部または貫通孔を通して前記点火プラグや前記炎検知器の先端を前記バーナリングの上方に臨ませて配設されるガスコンロにおいて、
前記点火プラグ或いは前記炎検知器のいずれか一方、またはその両方が、
前記天板の下方から上方向に突出する方向に配される中心軸を有しており、かつ、その断面が略方形または略円形であり、かつ、前記中心軸方向の位置によって前記断面の外径や一辺の寸法が急激に変化する段付き部を有する段付き形状体にその外形が構成され、さらに、
前記凹部または前記貫通口の周縁壁は、前記中心軸に沿う方向に前記バーナリングの厚みが大きい厚肉部で構成されており、
前記ガスバーナによる加熱が行われない停止状態から前記ガスバーナによる加熱が行われる加熱状態に至る温度上昇過程、および、前記加熱状態から前記停止状態に至る温度降下過程において、
前記断面の外径や一辺の寸法が増加する側の段付き部が、前記凹部または前記貫通口の周縁壁で囲繞される囲繞範囲の外から前記囲繞範囲の内に入り込まないことを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記凹部または前記貫通口の周縁壁の下端が、下に向かって前記凹部または前記貫通口の開口寸法が増加する下広がりに構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスコンロ。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50224(P2013−50224A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186774(P2011−186774)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)